特許第6106821号(P6106821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6106821切刃加工用ピン及び切刃の製造方法並びに切刃付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106821
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】切刃加工用ピン及び切刃の製造方法並びに切刃付き容器
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/10 20060101AFI20170327BHJP
   B65D 5/72 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   B21D28/10 Z
   B65D5/72 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-75592(P2013-75592)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-200789(P2014-200789A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177911
【氏名又は名称】山下印刷紙器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100097054
【弁理士】
【氏名又は名称】麻野 義夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 敏次
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−012104(JP,A)
【文献】 特開2003−039125(JP,A)
【文献】 実開平03−120921(JP,U)
【文献】 特開平07−052945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/10
B21D 28/14
B21D 28/34
B21D 19/08
B21D 39/00
B65D 5/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板状の切刃の厚さ方向の一方面から他方面に貫通されその貫通される際に前記他方面側に略三角形状の4つの切り起こし片を突出形成する切り起こし片形成用軸部を備え、
切り起こし片形成用軸部は、断面において、向かい合う一対の対面が2組できるように形成された4面であって、互いの幅長さが略同じで、隣接する2面が略垂直且つ前記2組の対面同士の距離が互いに略同じになるように配置された4面を備え、
前記4面は、前記幅長さをL1とし、前記対面の距離をL2としたときの比L2/L1が1.6〜5.0になるように構成されていることを特徴とする切刃加工用ピン。
【請求項2】
断面において、向かい合う一対の対面が2組できるように形成された4面であって、互いの幅長さが略同じで、隣接する2面が略垂直且つ前記2組の対面同士のそれぞれの距離が略同じになるように配置された4面を備え、前記4面は、前記幅長さをL1とし、前記対面の距離をL2としたときの比L2/L1が1.6〜5.0になるように構成された切り起こし片形成用軸部を備えた切刃加工用ピンを用い、紙製の容器本体に剥離可能に取り付けられる複数の容器取付部を有する金属製の長尺板状の切刃を製造する切刃の製造方法であって、
前記切刃の厚さ方向の一方面から他方面に、前記切り起こし片形成用軸部を貫通させるようにして、前記切刃の一部を前記他方面側に切り起こして略三角形状の4つの切り起こし片を突設させることにより前記容器取付部を形成することを特徴とする切刃の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の切刃加工用ピンを用いて製造された切刃と、前記切刃が取り付けられた紙製の容器本体とを備え、
前記切刃は、前記容器本体に剥離可能に取り付けられた容器取付部を備え、
前記容器取付部は、前記切刃の厚さ方向の一方面から他方面に、前記切り起こし片形成用軸部を貫通させるようにして、前記切刃の一部を前記他方面側に切り起こして略三角形状の4つの切り起こし片を突設させるようにして形成されたものであることを特徴とする切刃付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルムを収納した容器本体に取り付けられ容器本体から引き出されたフィルムを切断する切刃の容器取付部を成形加工する切刃加工用ピン及び切刃の製造方法並びに切刃付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば軸部材に巻回したフィルムを収納した容器本体に取り付けられ、その容器本体から引き出されたフィルムを切断する切刃が知られている。又、この切刃の容器取付部を成形加工する切刃加工用ピンを用いて切刃を製造する方法が、例えば特許文献1に開示されている(特許文献1、図12)。この特許文献1に開示された切刃を製造する方法は、切刃加工用ピン300を用い、図13に示すように幅方向の一端に歯部を形成した金属製の長尺板状(厚さが0.17mm程度)の切刃310の厚さ方向の一方面から他方面310aに、切刃加工用ピン300の先端301からその切刃加工用ピン300に設けた切り起こし片形成用軸部302を貫通するようにして、切刃310の一部を他方面310a側に切り起こして略三角形状の4つの切り起こし片311aを形成することによって容器取付部311を形成する。その後、その容器取付部311を容器本体に押し付けてかしめ加工することにより、容器本体に切刃310を引き離し可能に取り付けるようにしたものである。このようにして、フィルムを使い終えた後、紙製の容器本体と金属製の切刃310とを分離して廃棄できるようにしている。
【0003】
このような切刃の製造方法において用いられる切刃加工用ピン300における切り起こし片形成用軸部302は、図14に示すように断面において、向かい合う一対の対面が2組できるように形成された4面301a〜301dであって、互いの幅長さL10が略同じで、隣接する2面が垂直且つ前記2組の対面同士の距離L11が互いに略同じ(2.3mm程度)になるように配置された4面301a〜301dを備えたものとされ、そして、4面の幅長さL10と対面の距離L11との比L11/L10が1.4程度になるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−235906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような切刃加工用ピン300の切り起こし片形成用軸部302によって加工した切刃310の容器取付部311を容器本体にかしめ加工して取り付けると、容器取付部311のそれぞれの引き剥がし強度のばらつきが大きく、弱いものと強いものとができてしまうという問題点がある。強いものがあると、引き剥がしが困難になってしまうとともに、引き剥がしに際して切刃310が大きく屈曲して引き剥がし後の切刃310が嵩張ったものになってしまう。その一方、最も強いものを、引き剥がしをし易いように設定すると、全体の引き剥がし強度が弱くなって、使用中に切刃が容器本体から剥がれてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、1つの切刃における複数の容器取付部のそれぞれの容器本体からの引き剥がし強度のばらつきを小さくでき、容器本体から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る切刃加工用ピン及び切刃の製造方法並びに切刃付き容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の切刃加工用ピンは、金属板状の切刃の厚さ方向の一方面から他方面に貫通されその貫通される際に前記他方面側に略三角形状の4つの切り起こし片を突出形成する切り起こし片形成用軸部を備え、切り起こし片形成用軸部は、断面において、向かい合う一対の対面が2組できるように形成された4面であって、互いの幅長さが略同じで、隣接する2面が略垂直且つ前記2組の対面同士の距離が互いに略同じになるように配置された4面を備え、前記4面は、前記幅長さをL1とし、前記対面の距離をL2としたときの比L2/L1が1.6〜5.0になるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、従来の切刃加工用ピンと対面同士の距離が同じであれば、この切刃加工用ピンにより切刃に形成した切り起こし片の基端部の長さが、従来の切刃加工用ピンにより切刃に形成した切り起こし片の基端部の長さよりも短くできる。そのため、かしめ加工時の押圧に際して、従来の切刃加工用ピンによる切り起こし片が基端部と先端部との間の一部分を略中心に湾曲状に変形する変形量が多く、曲率半径の小さい湾曲状に変形するのに対し、この切刃加工用ピンによる切り起こし片は、基端部と先端部との間の一部分を略中心に湾曲状に変形する変形量が上記従来のものよりも少なく、上記従来のものよりも曲率半径が大きい湾曲状に変形する。その結果、かしめ加工時に、切り起こし片の先端の容器本体への食い込み深さがほぼ一定にできる。従って、この切刃加工用ピンによる切り起こし片は、従来の切刃加工用ピンによる切り起こし片に較べて引き剥がし強度のばらつきを小さくできる。
【0009】
又、本発明の切刃の製造方法は、断面において、向かい合う一対の対面が2組できるように形成された4面であって、互いの幅長さが略同じで、隣接する2面が略垂直且つ前記2組の対面同士のそれぞれの距離が略同じになるように配置された4面を備え、前記4面は、前記幅長さをL1とし、前記対面の距離をL2としたときの比L2/L1が1.6〜5.0になるように構成された切り起こし片形成用軸部を備えた切刃加工用ピンを用い、紙製の容器本体に剥離可能に取り付けられる複数の容器取付部を有する金属製の長尺板状の切刃を製造する切刃の製造方法であって、前記切刃の厚さ方向の一方面から他方面に、前記切り起こし片形成用軸部を貫通させるようにして、前記切刃の一部を前記他方面側に切り起こして略三角形状の4つの切り起こし片を突設させることにより前記容器取付部を形成することを特徴とする。
【0010】
これによれば、幅長さと対面の距離との比L2/L1が1.6〜5.0になるように構成された切り起こし片形成用軸部を備えた切刃加工用ピンを用い、容器取付部を加工して切刃を製造することにより、容器本体からの引き剥がし強度のばらつきが小さい切刃を容易に得ることができる。
【0011】
従って、切刃を容器本体に取り付け場合に、切刃を屈曲しない状態で、つまり弾性変形の範囲内で引くことができ、容器本体と完全に分離させた切刃が真っ直ぐ、またはそれに近い状態になり、容器本体から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る。
【0012】
又、本発明の切刃付き容器は、請求項1記載の切刃加工用ピンを用いて製造された切刃と、前記切刃が取り付けられた紙製の容器本体とを備え、前記切刃は、前記容器本体に剥離可能に取り付けられた容器取付部を備え、前記容器取付部は、前記切刃の厚さ方向の一方面から他方面に、前記切り起こし片形成用軸部を貫通させるようにして、前記切刃の一部を前記他方面側に切り起こして略三角形状の4つの切り起こし片を突設させるようにして形成されたものであることを特徴とする。
【0013】
これによれば、切刃を屈曲しない状態で、つまり弾性変形の範囲内で引くことができ、容器本体と完全に分離させた切刃が真っ直ぐ、またはそれに近い状態になり、容器本体から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、1つの切刃における複数の容器取付部のそれぞれの引き剥がし強度のばらつきを小さくでき、容器本体から切刃のみを嵩張ることなく分離させ得る切刃加工用ピン及び切刃の製造方法並びに切刃付き容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の切刃加工用ピンの正面図である。
図2】(a)は、図1の切刃加工用ピンの平面図、(b)は、図1のA−A線断面図である。
図3】切刃の製造装置の概略説明図である。
図4】(a)〜(d)は、切刃加工用ピンにより切刃に容器取付部を形成する形成過程の説明図である。
図5図4(d)の概略の平面図である。
図6】(a)〜(c)は、切刃の容器取付部を容器本体にかしめ加工するかしめ加工過程の説明図である。
図7】容器本体に切刃を取付けた切刃付き容器の斜視図である。
図8図7のH−H線断面図である。
図9図7の切刃付き容器に取付けられた切刃の側面図である。
図10】取付けた切刃を容器本体から引き剥がす際の斜視図である。
図11】切刃の容器本体からの引き剥がし強度値を示すデータを表した表である。
図12図11の引き剥がし強度値を折れ線グラフで表した図表である。
図13】従来の切刃加工用ピンにより切刃に容器取付部を形成する際の説明図である。
図14】従来の切刃加工用ピンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の切刃加工用ピンの正面図、図2(a)は、図1の切刃加工用ピンの平面図、図2(b)は、図1のA−A線断面図である。
【0017】
本発明の切刃加工用ピン1は、先端側に形成された切断用部2と、切断用部2の軸方向の図1の下方側に形成された切り起こし片形成用軸部3と、切り起こし片形成用軸部3の軸方向の図1の下方側に形成された被保持部4とを備えている。切断用部2は、切刃100の一部を切断する部分で、四角錘状を呈している。
【0018】
切り起こし片形成用軸部3は、切断用部2により切断した部分を切り起こして切刃100(図9参照)に、図5に示す切り起こし片111aからなる容器取付部111を形成するためのもので、この実施形態の切り起こし片形成用軸部3の軸方向の長さは、15mm程度とされている。
【0019】
又、この切り起こし片形成用軸部3は、図2に示すように、第1面31〜第4面34の4面と、隣接する面同士間に形成された4つの面取り部35とを備えている。
【0020】
第1面31〜第4面34は、それぞれ、同じ幅長さL1である。又、第1面31と第3面33、及び第2面32と第4面34とは、図2(b)に示すように、断面において、それぞれ、向かい合う一対の対面をなしており、一対の対面を2組、備えたものとされている。
【0021】
又、第1面31〜第4面34は、隣接する2面が互いに垂直になるように構成されている。又、互いに対面をなす第1面31と第3面33、第2面32と第4面34との対面同士の距離L2が互いに同じになるように配置されている。この実施形態では、第1面31と第3面33、第2面32と第4面34との対面同士の距離L2は、2.25mmに設定されている。
【0022】
又、これらの第1面31〜第4面34は、幅長さL1と対面同士の距離L2との比L2/L1が1.6〜5.0(1.6≦L2/L1≦5.0)に設定されている。L2/L1が1.6よりも小さくなると、この切り起こし片形成用軸部3で形成した切刃100の後述の引き剥がし強度のばらつきが大きくなってしまい、一方、L2/L1が5.0を超えると、かしめ加工時に切り起こし片111aが折れてしまうおそれがあるからである。好ましくは、L2/L1が1.70〜2.80である。
【0023】
面取り部35は、この実施形態では、全部同じ形状に形成されており、円弧面に形成されている。尚、この面取り部35は、円弧面に形成される形態のもの(R面取り)に限らず、例えば平面状に形成されるもの(C面取り)でもよく、適宜変更できる。
【0024】
被保持部4は、ピン保持部材247(図3に図示)に保持される部分で、この実施形態では、被保持部4は、円柱状のものから構成されている。
【0025】
次に、この切刃加工用ピン1を有する切刃製造装置200を用いて、切刃100を製造する方法について説明する。この実施形態で用いる切刃製造装置200は、紙から所定の形状に形成された容器本体210を搬送する第1搬送装置240と、巻回された厚さ0.17mmのブリキコイル241を解きつつ第1搬送装置240の下側に配した切断機242に逆方向から導く第2搬送装置243と、ブリキコイル241の幅方向の片方の端部に貼着される樹脂テープ244を、第2搬送装置243の切断機242よりも上流側に案内する第3搬送装置245とにより構成されている。上記樹脂テープ244は、切刃を引き剥がす際に把持するもので、切刃100の一端に取付けられる。
【0026】
切断機242は一定高さ位置に設けた固定刃242aと、昇降可能に設けた移動刃242bとを有して構成され、移動刃242bは昇降部材246により昇降される。また、昇降部材246における第2搬送装置243の搬送方向上流側に、ブリキコイル241の幅方向に複数(この実施形態では、16個)の切刃加工用ピン1が配設されていている。
【0027】
これらの複数の切刃加工用ピン1は、昇降自在なピン保持部材247に、切断用部2及び切り起こし片形成用軸部3が上方に突出するようにして、等ピッチ間隔で一列に配置されている。
【0028】
そして、第2搬送装置243により搬送されてきたブリキコイル241の先端部に、ピン保持部材247を上昇させて切刃加工用ピン1によりブリキコイル241の幅方向に複数の容器取付部111を形成する。
【0029】
詳しくは、図4(a)に示すようにブリキコイル241の下面(一方面)側から切刃加工用ピン1の切断用部2の先端がブリキコイル241の一部に当接して切断し始める。更に、ピン保持部材247の上昇に伴い、図4(b)、図4(c)に示すように切断用部2がブリキコイル241の一部を四つの分断片111bに分断しながら上方面(他方面)側に貫通していく。
【0030】
更に、ピン保持部材247が上昇すると、図4(d)、図5に示すように切刃加工用ピン1の切り起こし片形成用軸部3が切断用部2で切断した分断片111bを起こして三角片状の切り起こし片111aを形成する。この切り起こし片111aの基端部の長さL3は、切り起こし片形成用軸部3の幅長さL1と略同じになる。
【0031】
次に、ブリキコイル241を少し送り出して、昇降部材246を上昇させて固定刃242aと移動刃242bとによりブリキコイル241を切断し、切刃100を作製する。その際、固定刃242aと移動刃242bには、ギザギザ状の刃部121を形成する刃が設けられており、切断に際して切刃100の刃先に刃部121(図9参照)を形成する。形成された切刃100は、この実施形態では、厚さが0.17mm、全長が304mm、幅が8mmで、容器取付部111が一列に配置されている。尚、この実施形態では、両端それぞれの容器取付部111とその隣の容器取付部111とのピッチ間隔は、他のピッチ間隔よりも短く設定されている。
【0032】
その後、昇降部材246が更に上昇する。又、この上昇に先立って、第1搬送装置240により搬送された所定の形状の容器本体210が第1搬送装置240に設けたストッパ248により所定位置に止められていて、上記昇降部材246の上昇により、切り起こし形成された容器取付部111が容器本体210に押し付けられるようにしてかしめられる。
【0033】
詳しくは、図6(a)に示すように、昇降部材246の上昇により、切刃100の切り起こし片111aが容器本体210に近づく。更に、昇降部材246の上昇により、図6(b)に示すように切り起こし片111aが湾曲状になりながら容器本体210に押し付けられていく。
【0034】
更に、昇降部材246の上昇により、図6(c)に示すように切り起こし片111aの先端が、容器本体210の一部に食い込んだ食い込み部212が容器本体210に形成されるようにして、切り起こし片111aが容器本体210にかしめられる。これにより、図9に示すように切刃100が容器本体210に取り付けられた切刃付き容器が得られる。
【0035】
尚、図3において、上記ストッパ248は、容器本体210を前記所定位置に止めるときに降下し、その他のときは上昇する。又、第1搬送装置240には、ストッパ248で止められた容器本体210を上側から押し当てる押し当て部材249が設けられている。
【0036】
このようにして、切刃100が取り付けられた容器本体210は、図7に示すように折り曲げられて箱状にされ、図8に示すように、例えば内部に、軸部材232に巻回した樹脂フィルム233を収納する。
【0037】
詳しくは、容器本体210は、図示例では、5つの広面210a、210b、210c、210d、210eのうちの1つの広面210aが、他の広面210eの外側に重ねあわされるように配置されている。そして、その重ねあわされた1つの広面210aの内面側に切刃100が取付けられている。
【0038】
そして、容器本体210に、軸部材232に巻回した樹脂フィルム233が重ねあわされたる広面210a、210eの間から外に引き出し可能に収納される。又、容器本体210の外に所定長さだけ引き出された樹脂フィルム233は切刃100の刃部121で切断されるようになっている。
【0039】
収納した樹脂フィルム233が使い終えられて無くなると、切刃100が容器本体210から引き剥がされ、金属製の切刃100と紙製の容器本体210とが分離されて廃棄される。
【0040】
この切刃100の容器本体210からの引き剥がしは、例えば図10に示すように、切刃100の端部に貼着された樹脂テープ244を持って、容器本体210の広面210aを下方にして切刃100を広面210aに対して上向きかつ右方から左方へ向かう方向Dに引っ張る。これにより、切刃100の全体を引き剥がすことができる。尚、方向Dと反対方向にも切刃100の全体を引き剥がすこともできる。
【0041】
ここで、切刃100の容器本体210からの引き剥がし強度について、試験を行ったので、以下に説明する。尚、引き剥がし強度とは、切刃100の長手方向の端を把持して切刃100を引き剥がすときに要する力をいう。
【0042】
この試験は、本発明の切刃加工用ピン1を用いて製造した実施品切刃3つ(実施品切刃No1〜実施品No3)と、比較例3つ(比較例No1〜比較例No3)について行った。
【0043】
実施品切刃No1は、上述の切刃加工用ピン1における幅長さL1と対面同士の距離L2との比L2/L1が2.06のものを16個、用い、16mmのピッチ間隔で配置して16個の容器取付部111が形成されたものである。
【0044】
実施品切刃No2は、上述の切刃加工用ピン1における上記L2/L1が1.85のもの(実施品切刃No1に用いた切刃加工用ピン1とはL2/L1だけが異なるもの)を16個用い、16mmのピッチ間隔で配置して16個の容器取付部111が形成されたものである。
【0045】
実施品切刃No3は、切刃加工用ピン1における上記L2/L1が1.73のもの(実施品切刃No1に用いた切刃加工用ピン1とはL2/L1だけが異なるもの)を16個用い、16mmのピッチ間隔で配置して16個の容器取付部111が形成されたものである。
【0046】
比較例No1〜3は、それぞれ、上記L2/L1が1.44で、その他は実施品切刃No1に用いた切刃加工用ピン1と同じの寸法の切刃加工用ピンを、16個を製作し、16mmのピッチ間隔で配置して16個の容器取付部が形成されたものである。
【0047】
尚、実施品切刃No1〜実施品切刃No3、及び比較例No1〜比較例No3のかしめ加工等の条件は、同じである。
【0048】
その結果を図11及び図12に示す。実施品切刃No1では、16個の容器取付部の引き剥がし強度の最小値が0.07kgで、最大値が0.16kgで、そのばらつきが0.09kgであった。
【0049】
又、実施品切刃No2では、16個の容器取付部の引き剥がし強度の最小値が0.08kgで、最大値が0.28kgで、そのばらつきが0.20kgであった。
【0050】
又、実施品切刃No3では、16個の容器取付部の引き剥がし強度の最小値が0.07kgで、最大値が0.38kgで、そのばらつきが0.31kgであった。
【0051】
一方、比較例No1では、16個の容器取付部の引き剥がし強度の最小値が0.10kgで、最大値が0.70kgで、そのばらつきが0.60kgであった。
【0052】
又、比較例No2では、16個の容器取付部の引き剥がし強度の最小値が0.16kgで、最大値が0.70kgで、そのばらつきが0.54kgであった。
【0053】
又、比較例No3では、16個の容器取付部の引き剥がし強度の最小値が0.12kgで、最大値が0.68kgで、そのばらつきが0.56kgであった。
【0054】
以上のように、実施品切刃No1〜No3は、実施品切刃No1〜No3に較べて引き剥がし強度のばらつきが小さかった。これは、実施品切刃No1〜No3の切り起こし片111aの基端部の長さL3が、比較例No1〜No3の切り起こし片の基端部の長さに較べて短くなっているため、実施品切刃No1〜No3の切り起こし片111aでは、基端部の折れ曲げ強度が比較例No1〜No3の切り起こし片に較べて弱い。そのため、かしめ加工時の押圧に際して、図6(b)に示すように比較例No1〜No3の切り起こし片311a(図6(b)中に一点鎖線で示す)は基端部と先端部との間の一部分を略中心に湾曲状に変形する変形量が多く、曲率半径の小さい湾曲状に変形するのに対し、実施品切刃No1〜No3の切り起こし片111aは、基端部と先端部との間の一部分を略中心に湾曲状に変形する変形量が比較例No1〜No3の切り起こし片311aよりも少なく、比較例No1〜No3の切り起こし片311aよりも曲率半径が大きい湾曲状に変形する。
【0055】
その結果、実施品切刃No1〜No3の切り起こし片111aでは、容器本体210の食い込み部212における切り起こし片111aの先端の食い込み深さt(図6(c))がほぼ一定になるのに対し、比較例No1〜No3の切り起こし片311aでは、食い込み部212における切り起こし片311aの先端の食い込み深さがばらついてしまうと考えられ、実施品切刃No1〜No3は、比較例No1〜No3に較べて引き剥がし強度のばらつきが小さくなると考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1 切刃加工用ピン
2 切断用部
3 切り起こし片形成用軸部
31 第1面
32 第2面
33 第3面
34 第4面
111 容器取付部
111a 切り起こし片
100 切刃
210 容器本体
図1
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