(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106857
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】車両用充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170327BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20170327BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20170327BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20170327BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/04 A
H01M10/44 Q
B60L11/18 C
H02M3/00 P
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-38180(P2013-38180)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166118(P2014-166118A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】岩田 泰城
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩久
(72)【発明者】
【氏名】浅野 利幸
【審査官】
高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−217292(JP,A)
【文献】
特開2012−060778(JP,A)
【文献】
特開2012−060752(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/089844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
B60L 11/18
H01M 10/44
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ケーブルを介して充電自動車に充電を行う車両用充電装置であって、充電ケーブルに流れる充電電流を計測する電流計測手段と、車両に流れる充電電流を制御する充電制御部を有し、
この充電制御部は、
充電自動車の充電に使用する設定電流値を決定する充電電流設定部と、
充電自動車に設定電流値の情報をパルス信号によって出力するパルス出力回路と、
電流計測手段で計測された計測電流値と、設定電流値とを比較する電流比較部と、
計測電流値と設定電流値が一致するように前記パルス信号のデューティ比をフィードバック制御するデューティ比調整機構を備えることを特徴とする車両用充電装置。
【請求項2】
電流比較部は、計測電流値と設定電流値との比較を所定時間ごとに、繰り返し行うことを特徴とする請求項1記載の車両用充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に流れる充電電流を制御する充電制御部を備えた車両用充電装置に関するものである。
【0002】
車両用充電装置の内部にCPLT回路を内蔵した「モード3」型の車両用充電装置は、充電自動車との間でCPLT信号と呼ばれる充電制御信号による通信により行い、充電自動車に充電コネクタを接続後、充電自動車への充電が自動的に開始される。
【0003】
「モード3」型の車両用充電装置は、その仕様に応じた許容電流値の情報を充電自動車に与え、充電自動車は、その許容電流値の範囲内で車載電池への充電を行う。充電開始直後は定電流にて充電し、充電満了が近くなると定電圧による充電が行われて充電が完了する方式が取られている(特許文献1)。
【0004】
充電時における充電電流の許容値は、車両用充電装置に設置されている充電ケーブルの容量等により定められている。このために車両用充電装置には充電電路の電流値を検出し、許容値を超える過大な電流が流れたときに充電電路を遮断するブレーカを設け、充電ケーブル等の損傷を防止している。
【0005】
また、充電自動車の充電は、外部電源から幹線盤に引き込まれた母線を複数に分岐させた分岐線を介して行われるため、他の分岐線から電力供給を行っている一般負荷(充電自動車以外の負荷)の電力使用量が増加し、充電自動車の充電に使用される充電電力との合計値が契約電力を上回る恐れがある場合には、充電装置側の充電制御部でCPLT信号のデューティ比を制御して充電電流値を下げる制御が行われている。
【0006】
しかし、充電ケーブル内には、電源線に隣接して信号線が配置されているため、実際に充電自動車に流れる充電電流にノイズがのってひずみが生じるケースもある。その結果、実際に充電ケーブル内を流れる充電電流と、充電装置側の充電制御部で決定された設定電流値との間に計測ズレが生じ、特に、充電電流が設定電流を超過している場合、実際の電力使用量が契約電流を超過して主幹ブレーカが遮断され、予期せぬ停電の原因となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−060778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、実際に充電ケーブル内を流れる電流の充電電流と、充電装置側の充電制御部で決定された設定電流値とのズレに起因する予期せぬ停電を回避できる車両用充電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の車両用充電装置は、充電ケーブルを介して充電自動車に充電を行う車両用充電装置であって、充電ケーブルに流れる充電電流を計測する電流計測手段と、車両に流れる充電電流を制御する充電制御部を有し、この充電制御部は、充電自動車の充電に使用する設定電流値を決定する充電電流設定部と、充電自動車に設定電流値の情報をパルス信号によって出力するパルス出力回路と、電流計測手段で計測された計測電流値と設定電流値とを比較する電流比較部と、計測電流値と設定電流値が一致するように
前記パルス信号のデューティ比をフィードバック制御するデューティ比調整機構を備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用充電装置において、電流比較部は、計測電流値と設定電流値との比較を所定時間ごとに、繰り返し行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用充電装置は、充電ケーブルに流れる充電電流を電流計測手段で計測し、計測された計測電流値と、電流計測前に予め設定されていた設定電流値を比較し、計測電流値と設定電流値が一致するようにパルス信号のデューティ比をフィードバック制御する。すなわち、本発明の車両用充電装置では、設定電流値以上の電流が充電ケーブルに流れた場合には、計測電流値を下げて設定電流値に近づける制御が行われるため、実際の電力使用量が契約電流を超過したことに起因した予期せぬ停電を回避することができる。
【0012】
特に、複数台の車両を充電することができる車両用充電装置では、設定電流値に対する超過分が、複数台分累積するため、主幹ブレーカの遮断に繋がる超過電流の問題が顕在化しやすいところ、本発明によれば、当該問題を効果的に回避することができる。
【0013】
請求項2記載の発明のように、計測電流値と設定電流値との比較を所定時間ごとに、繰り返し行うことにより、設定電流値に対する超過分が大きくなる前に電流値を調整し、主幹ブレーカの遮断に繋がる超過電流の発生を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】充電制御信号のデューティ比の変化と、それに伴う電流値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の実施形態を示すブロック図であり、破線で囲んだ1が車両用充電装置、2が充電自動車、3が充電ケーブル、4は充電自動車2の車載電池、5は充電自動車2の車両側制御回路である。この実施形態では充電自動車2はモード2型の車両(車両内にCPLT信号による通信をやり取りする回路を有するもの)として図示されている。交流電源6から供給される電力は、充電電路8から充電ケーブル3を介して充電自動車2の車載電池4に供給され充電を行う。この充電電路8には通電をオンオフするためのリレー(電磁接触器)9が設けられており、以下に説明する車両に流れる充電電流を制御する充電制御部10により充電電流のオンオフが制御される。
【0016】
まず本発明の前提となる車両用充電装置1と充電自動車2との間の充電制御信号のやり取りについて説明する。
【0017】
図2に示すように、充電制御部10はパルス出力回路12を備え、車両側制御回路5との間で充電制御信号(CPLT)をやり取りする。パルス出力回路12は初期値として予め定められたデューティ比(パルス幅)の充電制御信号を発振する。
【0018】
充電制御信号のデューティ比の初期値は、充電制御部10の充電電流設定部11において、充電ケーブル3の種類や、車両用充電装置で使用可能な最大許容電流等の情報に基づいて予め定められている。
【0019】
充電ケーブル3を自動車に接続していない状態における充電制御端子13の電圧は、抵抗R1によって12Vに調整されているが、充電ケーブル3を充電自動車2に接続すると車両側制御回路5に内蔵されている抵抗R2が抵抗R1と直列に接続されることから分圧され、充電制御端子13の電圧は9Vに低下する。
【0020】
充電制御部10の車両接続検出部7が、接続車両をモード2の充電自動車であると識別したときには、パルス出力回路12から発振される電圧は発振器を発振させて9Vに調整され、充電自動車2側に9Vの充電制御信号が入力されると、車両側制御回路5に内蔵された充電許可スイッチ5aがオンとなる。その結果、充電制御信号の電圧は車両側制御回路5に内蔵されている別の抵抗R3によって分圧されて充電制御端子13の電圧は6V発振となり、受電準備完了となる。この状態において充電制御部10は
図1に示すリレー9にオン信号を出力し、充電が開始される。なおパルスの周波数、電圧やデューティ比は規格化されている。
【0021】
上記した充電制御信号のデューティ比(パルス幅)は、
図2に示す充電制御部10の充電電流制御部15のデューティ比調整機構によって変更可能である。デューティ比(パルス幅/パルス周期)が大きいほど大きな充電電流が供給可能であることを意味する。このため充電自動車2の車両側制御回路5は、車両用充電装置1から出力される充電制御信号のデューティ比を読み取り、デューティ比に対応する充電電流の範囲内で、搭載した蓄電池への充電電流を制御する。換言すれば、充電自動車2は充電ケーブル3を介して車両用充電装置1との間で通信される充電制御信号のデューティ比が大きい車両用充電装置1に対しては充電電流の最大値を大きな電流値として充電を制御することができるが、デューティ比が小さい車両用充電装置1に対しては、充電電流の最大値は小さな電流値として充電を制御することとなる。このようにして、充電制御信号のデューティ比により車両用充電装置1の許容電流値の情報が充電自動車2側に送られる。
【0022】
車両側制御回路5は、この許容電流値の範囲内で充電が行われるように充電電流を制御する。車両側制御回路5は一定時間間隔でデューティ比を検知し、充電電流を制御する。また充電制御部10は充電電路8を流れる電流値を検出するCT16を備えており、所定値以上の電流を検出しないときにはリレー5をオフとして充電を停止する。なお、操作者が充電ケーブル3と充電自動車側の充電コネクタとの間のロックを解除した場合にはスイッチでロック解除を検出し、充電制御端子13の電圧を12Vとして充電を停止させる。
【0023】
以下に本発明の特徴的部分を説明する。
【0024】
上記のように、パルス出力回路12は初期値として予め定められたデューティ比(パルス幅)の充電制御信号を発振し、充電自動車2の車両側制御回路5は、車両用充電装置1から出力される充電制御信号のデューティ比を読み取り、デューティ比に対応する充電電流の範囲内で、搭載した蓄電池への充電電流を制御するが、充電ケーブル3に流れる電流は、他の充電装置が接続された際のノイズ、ひずみなどにより、デューティ比に対応する充電電流とは異なる場合がある。本発明は、
図3のフローに示すように、充電ケーブル3に流れる充電電流を電流計測手段16で計測し、計測された計測電流値と、充電制御信号のデューティ比の初期値として予め設定されていた設定電流値を比較し、計測電流値と設定電流値が一致するようにパルス信号のデューティ比をフィードバック制御するものである。
【0025】
図1、
図2に示すように、本発明の車両用充電装置1の内部には、充電ケーブル3に流れる充電電流を計測する電流計測手段としてCT16を備えている。CT16で計測された計測電流値は、電流検出部17でデジタル信号に変換されて電流比較部18に入力される。なお、本実施形態の電流計測手段としてCT16として説明したものであるがこの測定方法に限定するものではない。
【0026】
電流比較部18では、CT16で計測された計測電流値と、予め設定されていた設定電流値の比較が行われる。電流比較部18は、計測電流値と設定電流値が一致するようにパルス信号のデューティ比をフィードバック制御するデューティ比調整機構を備えており、例えば、
図4に示すように、計測電流値が設定電流値よりも大きい場合には、充電電流制御部15のデューティ比調整機構が、パルス周期におけるパルス幅の間隔を小さくし、パルス信号のデューティ比を小さくする制御を行う。一方、計測電流値が設定電流値よりも小さい場合には、超過電流に起因した主幹ブレーカの遮断の危険性はないが、安定した計測電流値を維持するために、パルス信号のデューティ比を大きくする制御を行うことも可能である。なお、計測電流値と設定電流値を一致する制御として、計測電流値が設定電流値の所定範囲内になるように制御をするようなものであっても良い。
【0027】
電流比較部における上記の制御は、例えば10分ごと等の所定時間ごとに、繰り返し行うことにより、設定電流値に対する超過分が大きくなる前に電流値を調整し、主幹ブレーカの遮断に繋がる超過電流の発生を確実に回避することができる。
【0028】
以上に説明したように、本発明の車両用充電装置は、設定電流値以上の電流が充電ケーブルに流れた場合には、計測電流値を下げて設定電流値に近づける制御が行われるため、実際の電力使用量が契約電流を超過したことに起因した予期せぬ停電を回避することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用充電装置
2 充電自動車
3 充電ケーブル
4 車載電池
5 車両側制御回路
6 交流電源
7 車両接続検出部
8 充電電路
9 リレー
10 充電制御部
11 充電電流設定部
12 パルス出力回路
13 充電制御端子
15 充電電流制御部
16 CT
17 電流検出部
18 電流比較部