(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106869
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】帯域制御装置、及び帯域制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/18 20060101AFI20170327BHJP
H04N 5/44 20110101ALI20170327BHJP
【FI】
H04B1/18 C
H04N5/44 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-49395(P2013-49395)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-176018(P2014-176018A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】金田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】岩畑 剣
(72)【発明者】
【氏名】正時 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】海沼 義彦
(72)【発明者】
【氏名】寶満 剛
【審査官】
大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−228298(JP,A)
【文献】
特開2011−146812(JP,A)
【文献】
実開昭60−004048(JP,U)
【文献】
特開平08−163019(JP,A)
【文献】
特表2012−503921(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/111259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/18
H04N 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線通信装置が有線信号の伝送に使用している伝送線であって無線通信装置とアンテナ装置との間の無線周波数信号の伝送に使用されている伝送線に接続されている帯域制御装置において、
前記有線通信装置に接続されている第1のサーキュレータと、
前記有線通信装置に接続されていない第2のサーキュレータと、
前記第2のサーキュレータを介して、前記伝送線から入力される信号に含まれる第1の信号であって前記有線信号に割り当てられている周波数帯域の第1の信号を増幅して出力する増幅部と、
前記第2のサーキュレータを介して、前記伝送線から入力される信号のうち前記第1の信号以外の信号と、前記増幅部が出力する信号とを合成して出力する信号合成部と、
を備え、
前記第1のサーキュレータは、前記信号合成部から出力される信号を前記有線通信装置に向けて出力し、前記有線通信装置側から入力される信号を前記第2のサーキュレータに向けて出力し、
前記第2のサーキュレータは、前記第1のサーキュレータから入力される信号を前記伝送線へ出力する、
ことを特徴とする帯域制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の帯域制御装置であって、
前記第1の信号の信号レベルと、前記無線周波数信号の信号レベルとを検出するレベル検出部を更に備え、
前記増幅部は、
前記第1の信号の信号レベルに対する前記無線周波数信号の信号レベルの比に基づいて、前記第1の信号に対する増幅率を変化させる
ことを特徴とする帯域制御装置。
【請求項3】
有線通信装置が有線信号の伝送に使用している伝送線であって無線通信装置とアンテナ装置との間の無線周波数信号の伝送に使用されている伝送線に接続され、前記有線通信装置に接続されている第1のサーキュレータと前記有線通信装置に接続されていない第2のサーキュレータと増幅部と信号合成部とを備えている帯域制御装置における帯域制御方法であって、
前記第2のサーキュレータが、前記伝送線から入力される信号を前記増幅部及び前記信号合成部とへ出力する第1の出力ステップと、
前記増幅部が、前記第2のサーキュレータから出力される信号に含まれる第1の信号であって前記有線信号に割り当てられている周波数帯域の第1の信号を増幅する増幅ステップと、
前記信号合成部が、前記第2のサーキュレータから出力される信号のうち前記第1の信号以外の信号と、前記増幅ステップにおいて増幅された信号とを合成し、合成により得られた信号を出力する信号合成ステップと、
前記第1のサーキュレータが、前記信号合成ステップにおいて出力された信号を前記有線通信装置に向けて出力する第2の出力ステップと、
前記第1のサーキュレータが、前記有線通信装置側から入力される信号を前記第2のサーキュレータに向けて出力する第3の出力ステップと、
前記第2のサーキュレータが、前記第3の出力ステップにおいて出力された信号を前記伝送線へ出力する第4の出力ステップと、
を有することを特徴とする帯域制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯域制御装置、及び帯域制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いてデータの送受信を行う無線LAN(Local Area Network)が普及し、一般家庭でも利用されるようになっている。無線LANのアクセスポイントが設置されている居室と異なる居室でステーション(例えば、ノート型コンピュータやスマートフォン)を利用する場合には、無線通信の距離が長くなり壁越しで無線通信を行うため、ステーションが十分な受信電力を得られないことがある。このような場合には、通信速度の低下や無線通信の切断が生じることがあり、無線LANの利便性を損なうことになってしまう。
【0003】
そこで、住居等に既に設けられている電力線やテレビの同軸線などを用いて居室間における無線LAN信号の伝送を行い、各居室に設けられたアンテナを介して、ステーションとアクセスポイントとの無線通信の品質を向上させる技術が検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。この技術を用いることにより、宅内における無線LANの通信環境を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−318278号公報
【特許文献2】特開2004−186920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、テレビ信号を伝送する同軸線を用いて無線LAN信号を居室間で伝送する場合、無線LAN信号の信号レベルによってはテレビ信号の受信に影響を及ぼし、テレビ信号の復調や復号が正しく行えないことがある、という問題がある。すなわち、無線LAN等の無線通信装置間で伝送する信号を、テレビ等の有線通信装置が利用している伝送線(同軸線など)で伝送する際に、有線通信装置が正しく受信できなくなることがある、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、無線通信を行う無線通信装置間で伝送する信号を有線通信装置が利用している伝送線で伝送する際に、有線通信装置が受ける影響を低減することができる帯域制御装置、及び帯域制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明は、有線通信装置が有線信号の伝送に使用している伝送線であって無線通信装置とアンテナ装置との間の無線周波数信号の伝送に使用されている伝送線に接続されている帯域制御装置において、前記伝送線で伝送される信号に含まれる第1の信号であって前記有線信号に割り当てられている周波数帯域の第1の信号を増幅して出力する増幅部と、前記伝送線で伝送される信号のうち前記第1の信号以外の信号と、前記増幅部が出力する信号とを合成し、合成により得られた信号を前記有線通信装置に向けて出力する信号合成部とを備えることを特徴とする帯域制御装置である。
【0008】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記第1の信号の信号レベルと、前記無線周波数信号の信号レベルとを検出するレベル検出部を更に備え、前記増幅部は、前記第1の信号の信号レベルに対する前記無線周波数信号の信号レベルの比に基づいて、前記第1の信号に対する増幅率を変化させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、有線通信装置が有線信号の伝送に使用している伝送線であって無線通信装置とアンテナ装置との間の無線周波数信号の伝送に使用されている伝送線に接続されている帯域制御装置における帯域制御方法であって、前記伝送線で伝送される信号に含まれる第1の信号であって前記有線信号に割り当てられている周波数帯域の第1の信号を増幅する増幅ステップと、前記伝送線で伝送される信号のうち前記第1の信号以外の信号と、前記増幅ステップにおいて増幅された信号とを合成し、合成により得られた信号を前記有線通信装置に向けて出力する信号合成ステップとを有することを特徴とする帯域制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、無線周波数信号の信号レベルを変化させることなく、有線通信装置が送信又は受信する第1の信号の信号レベルを高めることができるので、第1の信号に対して無線周波数信号が重畳される場合においても、有線通信装置が受ける影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る本実施形態の帯域制御装置を適用した宅内の通信システムを示すブロック図である。
【
図2】ホームゲートウエイ1が放送信号にRF信号を重畳した場合の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態における帯域制御装置5の構成を示すブロック図である。
【
図4】帯域制御装置5の変形例としての帯域制御装置5Aを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における帯域制御装置、及び帯域制御方法を説明する。本実施形態においては、無線通信を行う無線通信装置として無線LAN機器を用い、有線通信装置としてテレビ受像器を用いて説明をする。
【0013】
図1は、本発明に係る本実施形態の帯域制御装置5を適用した宅内の通信システムを示すブロック図である。同図に示す通信システムでは、宅内の各居室R1〜R4に設けられた端子C1〜C4を接続する同軸線であってテレビ放送等の信号を伝送するために既に設けられている同軸線を利用している。通信システムは、ホームゲートウエイ1、分配器2、アンテナ装置3a及び3b、無線端末装置4a〜4c、帯域制御装置5、並びに、テレビ受像機6を備えている。また、通信システムは、コンピュータネットワーク91と放送波受信装置92とに接続された混合器93に接続されている。
【0014】
居室R1には、ホームゲートウエイ1と無線端末装置4aとが位置し、端子C1が設けられている。居室R2には、アンテナ装置3aと無線端末装置4bとが位置し、端子C2が設けられている。居室R3には、帯域制御装置5とテレビ受像機6とが位置し、端子C3が設けられている。居室R4には、アンテナ装置3bと無線端末装置4cとが位置し、端子C4が設けられている。
【0015】
コンピュータネットワーク91は、例えばインターネットや商用プロバイダが保守しているネットワークである。放送波受信装置92は、衛星放送(BS(Broadcasting Satellite)放送やCS(Communications Satellite)放送)や地上波放送の信号を受信し、受信した信号を放送信号として出力する。放送波受信装置92は、例えばアンテナと増幅器とを用いて構成される。混合器93は、コンピュータネットワーク91から受信する情報信号と、放送波受信装置92が出力する放送信号とをひとつの信号にまとめてホームゲートウエイ1に出力する。また、混合器93は、ホームゲートウエイ1から入力される情報信号をコンピュータネットワーク91に出力する。
【0016】
ホームゲートウエイ1は、混合器93から出力される信号に含まれる情報信号を抽出し、抽出した情報信号を無線端末装置4a〜4cが受信可能なRF信号(Radio Frequency信号:無線周波数信号)に変換して送信する。また、ホームゲートウエイ1は、混合器93から出力される信号に含まれる放送信号とRF信号と混合する。ホームゲートウエイ1は、端子C1に接続されている同軸線を通じて、混合により得られた信号を分配器2に出力する。また、ホームゲートウエイ1は、分配器2から入力されるRF信号を、コンピュータネットワーク91において用いられるフォーマットの情報信号に変換し、当該情報信号を混合器93に出力する。すなわち、ホームゲートウエイ1は、無線LANにおけるアクセスポイントの機能を有している。
【0017】
分配器2は、各居室R1〜R4それぞれに設けられている端子C1〜C4に同軸線を介して接続されている。分配器2は、端子C1〜C4のいずれかの端子から入力される信号を、他の端子に出力する。
アンテナ装置3aは、端子C2及び同軸線を介して分配器2に接続されている。アンテナ装置3aは、端子C2を介して入力される信号に含まれるRF信号を抽出し、抽出したRF信号をアンテナから送信する。また、アンテナ装置3aは、アンテナで受信したRF信号を端子C2を介して分配器2に出力する。アンテナ装置3bは、アンテナ装置3aと同じ構成を有している。アンテナ装置3bは、端子C4及び同軸線を介して分配器2から入力される信号のRF信号をアンテナから送信し、アンテナで受信したRF信号を分配器2に出力する。
【0018】
無線端末装置4a〜4cは、ホームゲートウエイ1又はアンテナ装置3a、3bとの間でRF信号を送受信する。無線端末装置4a〜4cは、無線LANにおけるステーションであり、例えばノート型コンピュータやスマートフォン、ゲーム機などである。
帯域制御装置5は、端子C3及び同軸線を介して分配器2に接続されている。帯域制御装置5は、ホームゲートウエイ1が放送信号に重畳するRF信号の影響をテレビ受像機6が受けないように、端子C3を介して入力される信号に対して帯域制御をしてテレビ受像機6に出力する。
【0019】
テレビ受像機6は、帯域制限装置5から入力される信号の信号レベルの調整などを行った後に、該信号に含まれる放送信号を復調復号して、画像表示や音声出力を行う。また、テレビ受像機6は、信号に含まれるRF信号を復調復号して、コンピュータネットワーク91から受信又は配信される情報を画像表示したり、音声出力したりする。
【0020】
図1に示す宅内の通信システムでは、無線LANの通信で利用されるRF信号を、宅内に設けられている同軸線を通じて伝送し、各居室R1〜R4におけるRF信号の受信感度を向上させ、無線通信環境を改善している。
【0021】
図2は、ホームゲートウエイ1が放送信号にRF信号を重畳した場合の周波数スペクトルの一例を示す図である。同図において横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は信号レベル[dBm/Hz]を示している。ここでは、無線LANのRF信号には2.4GHz帯が使用され、BS/CS帯の放送信号には約1.7GHzから2.1GHzの周波数帯域が使用されている。
【0022】
ところで、テレビ受像機6は、内部の復調復号器に対して過入力とならないように、入力される信号に含まれる白色ノイズに対して有効な信号の信号レベルが復調復号可能上限レベルを超えないように調整する。例えば、55dB(復調復号可能上限レベル)から11dB(復調復号可能下限レベル)までの信号レベルに対して復調復号が可能である場合、テレビ受像機6内の信号レベル調整回路が入力される信号に対して増幅又は減衰を行い、入力される信号の最大信号レベルが55dBを超えないように調整を行う。
テレビ受像機6に入力される信号が、
図2に示す周波数スペクトルを有する場合には、RF信号の信号レベルのピークが白色ノイズに対して55dB以内に収まるように信号レベルの調整が行われる。信号レベルの調整の結果、放送信号の受信レベルが11dB未満であると、放送信号の復調復号が正しく行われなくなってしまう。
【0023】
本実施形態における帯域制御装置5は、放送信号にRF信号が重畳された場合においても、テレビ受像機6が入力される信号に含まれる放送信号を正しく復調復号できるように、信号処理を行う。
図3は、本実施形態における帯域制御装置5の構成を示すブロック図である。帯域制御装置5は、信号入力部51、帯域通過フィルタ部52、増幅部53、信号バッファ部54、帯域除去フィルタ部55、信号合成部56、及び、信号出力部57を有している。
【0024】
信号入力部51は端子C3を介して伝送される信号を入力する。信号入力部51に入力される信号は、帯域通過フィルタ部52と信号バッファ部54とに入力される。帯域通過フィルタ部52は、入力される信号に対して、放送信号が利用する周波数帯域の信号を通過させ、他の周波数帯域の信号を抑圧する。すなわち、帯域通過フィルタ部52は、放送信号を抽出して増幅部53に出力することになる。例えば、
図2に示したように周波数帯域が割り当てられている場合、帯域通過フィルタ部52は、約1.7GHzから2.1GHzの周波数帯域の信号を抽出し、抽出した信号を増幅部53に出力する。
【0025】
増幅部53は、帯域通過フィルタ部52から出力される信号を所定の増幅率で増幅して信号合成部56に出力する。増幅部53における増幅率は、例えば、ホームゲートウエイ1が放送信号に重畳するRF信号の信号レベルに基づいて定められる。具体的には、テレビ受像機6においてレベル調整回路が信号レベルの調整を行った際に、放送信号が復調復号可能下限レベル)を超えるように増幅率が定められる。
【0026】
信号バッファ部54は、入力される信号に対して遅延を与えて帯域除去フィルタ部55に出力する。信号バッファ部54が与える遅延量は、帯域通過フィルタ部52と信号バッファ部54とに分岐して入力される信号が帯域通過フィルタ部52及び増幅部53を経由して信号合成部56に入力されるタイミングと、分岐した信号が信号バッファ部54及び帯域除去フィルタ部55を経由して信号合成部56に入力されるタイミングとを一致させる遅延量である。帯域通過フィルタ部52、増幅部53、及び帯域除去フィルタ部55における処理時間に応じて、信号バッファ部54を増幅部53と信号合成部56との間に設けるようにしてもよい。
【0027】
帯域除去フィルタ部55は、信号バッファ部54から出力される信号に対して、放送信号が利用する周波数帯域の信号を抑圧し、他の周波数帯域の信号を通過させる。すなわち、帯域除去フィルタ部55は、信号バッファ部54から出力される信号のうち、放送信号以外の信号を抽出して信号合成部56に出力することになる。例えば、
図2に示したように周波数帯域が割り当てられている場合、帯域除去フィルタ部55は、約1.7GHzから2.1GHzの周波数帯域の信号以外を信号合成部56に出力する。
【0028】
信号合成部56は、増幅部53から出力される信号と、帯域除去フィルタ部55から出力される信号とを合成し、合成により得られた信号を信号出力部57に出力する。信号出力部57は、信号合成部56において得られた信号をテレビ受像機6に出力する。
【0029】
帯域制御装置5は、上記の構成を有することにより、RF信号と放送信号とが重畳された信号において、RF信号の信号レベルを維持しつつ放送信号を増幅する。これにより、帯域制御装置5の後段に接続されているテレビ受像機6において、RF信号の信号レベルが高い場合に入力される信号を減衰させたとしても、放送信号の信号レベルが復調復号可能下限レベルを下回らないようにすることができ、放送信号を正しく復調復号することができる。すなわち、帯域制御装置5が放送信号の信号レベルを高めた信号をテレビ受像機6に向けて出力することにより、放送信号にRF信号を重畳させた場合においてもテレビ受像機6が受ける影響を低減させることができる。
【0030】
本実施形態における帯域制御装置5を用いることにより、宅内に既設の同軸線を用いて無線LANのRF信号を各居室に伝送して無線通信環境を安価に改善しつつ、放送信号を利用するテレビ受像機6に与える影響を低減させることができる。
【0031】
なお、本実施形態の通信システムでは、帯域制御装置5をテレビ受像機6の直前に設ける構成について説明したが、これに限ることなく、ホームゲートウエイ1とテレビ受像機6との間であれば、いずれの位置に設けてもよい。また、ホームゲートウエイ1と帯域制御装置5とをひとつの装置として構成してもよい。
また、本実施形態における帯域制御装置5において、帯域通過フィルタ部52、増幅部53、信号バッファ部54、帯域除去フィルタ部55、及び、信号合成部56は、入力される信号に対してアナログ処理を行うように構成してもよいし、デジタル処理を行うように構成してもよい。デジタル処理を行う場合には、例えば、信号入力部51の後段にFFT(Fast Fourier Transform)部を設け、信号出力部57の前段にIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部を設けるようにしてもよい。
【0032】
また、本実施形態における帯域制御装置5において、RF信号の周波数帯域における信号レベルと、放送信号の周波数帯域における信号レベルとを検出するレベル検出部を更に設け、増幅部53における増幅率をレベル検出部が検出した信号レベルにおいて変化させるようにしてもよい。この場合、増幅部53は、例えば、RF信号の信号レベルに対する放送信号のレベルの比(=RF信号/放送信号)に比例するように増幅率を変化させる。あるいは、増幅部53は、RF信号の信号レベルと放送信号の信号レベルとを同じにするように増幅率を変化させる。
【0033】
また、本実施形態では、帯域制御装置5の後段にテレビ受像機6のみを接続した構成について説明したが、帯域制御装置5の後段にアンテナ装置も設け、居室R3に位置する無線端末装置に無線通信環境を提供するようにしてもよい。すなわち、帯域制御装置5の後段にテレビ受像機6とアンテナ装置とを並列して接続する。この場合における帯域制御装置5は、
図4に示すように構成される。
図4は、帯域制御装置5の変形例としての帯域制御装置5Aを示す図である。同図に示すように、帯域制御装置5Aは、信号入力部51に代えてサーキュレータ58を有し、信号出力部57に代えてサーキュレータ59を有する。サーキュレータ58は、端子C3を介して入力される信号を帯域通過フィルタ部52及び信号バッファ部54に出力し、サーキュレータ59から入力される信号を端子C3を介して分配器2に出力する。サーキュレータ59は、信号合成部56から入力される信号をテレビ受像機6及びアンテナ装置に出力し、テレビ受像機6側に接続されるアンテナ装置から入力される信号をサーキュレータ58に出力する。これにより、テレビ受像機6が位置する居室R4においても無線通信環境を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態では、放送信号を利用するテレビ受像機6における影響を低減させる構成について説明したが、これに限ることなく、テレビ受像機6以外の有線通信装置が利用している伝送線に無線LANのRF信号を重畳させた際に生じうる影響を低減させるために帯域制御装置5を用いるようにしてもよい。この場合、有線通信装置がRF信号を復調復号して、RF信号で伝送される情報を利用するものであってもよい。
また、本実施形態では、同軸線でRF信号を伝送する構成について説明したが、同軸線以外の伝送線であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ホームゲートウエイ
2…分配器
3a、3b…アンテナ装置
4a、4b、4c…無線端末装置
5、5A…帯域制御装置
6…テレビ受像機
91…コンピュータネットワーク
92…放送波受信装置
93…混合器
51…信号入力部
52…帯域通過フィルタ部
53…増幅部
54…信号バッファ部
55…帯域除去フィルタ部
56…信号合成部
57…信号出力部
58、59…サーキュレータ