(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
LEDは発光効率が良いため家庭用照明器具、街路灯、スポット照明装置等の多くの分野で使われるようになってきたが、蛍光灯や水銀灯などと比べて輝度が低く、価格が高いため、効率良く集光して必要な部分だけを照明する技術が開発されてきた。
【0003】
特許文献1及び2等には、LEDなどの発光を効率良く集光するバルク型レンズが開示されている。バルク型レンズは、LED等の光源からの光を効率良く集光するため、街路灯やスポット照明機器として適している。
【0004】
図13は、従来のバルク型レンズ100の構造を示す断面図である。
図13に示すように、従来のバルク型レンズ100(特許文献1参照)は、頂部102とレンズ内部にLED等の光源107を収納する凹部105とから構成されている光学媒体である。凹部105は天井部分の第1湾曲面105a(光入射部)と内周部105bとから構成されている。頂部102は、第1湾曲面105aから入射した光を光軸方向に出射する第2湾曲面102aからなる出射面を有している。凹部105の内周部105bは光源107の迷光成分の入射面として機能する。
【0005】
従来のレンズ状の樹脂コートしたLED107に特許文献1及び2等で公知のバルク型レンズ100を装着すると、第1湾曲面105a(凹部天井)、第2湾曲面102a(凹部天井)、光伝送路長さ(第1湾曲面105aと第2湾曲面間102aの光軸上の距離)等の設計により、1/2ビーム角が7度〜40度で光利用効率が約90%という非常に優れた特性が実現できる。
【0006】
図14は、従来のバルク型レンズ110とレンズ状の樹脂コートしたLED107を組み合わせた発光体の光放射特性の一例を示す図である。バルク型レンズ110は、頂部102と底部103との間にさらに側壁部104を備えている。
バルク型レンズ110の第2湾曲面102aの曲率半径8.25mm、第1湾曲面105aの曲率半径5mm、第1湾曲面105aと第2湾曲面102aとの間の光軸上の長さ(導光路長さ)10.6mm、外径15mmのアクリル樹脂製(n=1.49)のバルク型レンズ110に、レンズ状の樹脂コートしたLED107を組み合わせたものである。
【0007】
レンズ状のLED107の光放射相対強度は、出射角0度:1、±20度:0.9、±40度:0.55、±60度:0.09、±70度:0.05であり、バルク型レンズ110を装着した時の光放射相対強度は出射角0度:2.7、±20度:1.35、±40度:0.09、±60度:0.05、±70度:0.03であった。1/2ビーム角は、LED単体で約85度であったものが、バルク型レンズ110を付けると約40度となった。バルク型レンズ110を付けた場合の1/2ビーム角内の光束は、LED107単体の光束の約90%を集光しているという非常に優れた集光性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を具体的に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るバルク型レンズ1の構成を示す断面図であり、
図2は、本発明のバルク型レンズ1を用いた発光体10の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本発明のバルク型レンズ1は、頂部2と、底部3と、側壁部4と、底部3から頂部2に向かって形成された天井部5aと内周部5bとからなる凹部5と、を有している。バルク型レンズ1は、光学媒体からなる。凹部5は、
図2に示すLED等からなる光源7の収納部となる。
【0024】
図2に示すように、本発明のバルク型レンズ1を用いた発光体10には、バルク型レンズ1の凹部5にLED等からなる光源7が収容されている。凹部5には、バルク型レンズ1とは異なる屈折率を有している空気8、空気以外の流体若しくは流動体9の何れかを介して収納されるようになっている。バルク型レンズ1の材料である光学媒体の屈折率(n
1)は、空気8等の流体の屈折率(n
0)よりも大きい。LED7aは、平面型LEDであり、基板上に複数のLEDチップが多数配設されている。
図2では、平面型LED7aが、さらに、放熱板12に搭載されている。バルク型レンズ1の底部3は放熱板12に接着剤等で固定されている。平面型LED7aの形状は、円形、楕円形又は四角形等である。平面型LED7aの面積は、例えば直径が5mm〜30mmである。以下の説明では、平面型LED7aは直径が20mmとして、バルク型レンズ1の凹部5には、空気8を介して収納されているものとして説明する。
【0025】
凹部5の天井部5aは、第1湾曲面となり、平面型LED7aの光入射部となる。凹部5の天井部5aと平面型LED7aとの間には、バルク型レンズ1より屈折率が低い空気8が挿入されているので、第1湾曲面が平面であっても、平面型LED7aから出射した光は光軸方向に屈折して集光し、第1のレンズ面として作用する。凹部5の天井部5aの第1湾曲面(光入射面)は、平面又は曲面とすればよい。平面型LED7aから出射した光を光軸方向により収束させたい場合には、曲率を大きくすればよい。凹部5の天井部5aの光入射面を平面とすれば、曲率が無限大(∞)となるので、光軸方向の集光性を高くすることができる。逆に、凹部5の天井部5aの光入射面を曲面とすれば集光性を低くすることができる。
【0026】
側壁部4及び底部3は反射面として作用し、平面型LED7aから出射した光の内光軸からずれ側壁部4及び底部3方向への光(迷光)を頂部2へ伝送する、つまり光伝送作用を有しているので、側壁部4及び底部3は迷光を頂部2に集光する作用を有している。
【0027】
頂部2は、光軸側の中央部2aと中央部2aから側壁部4に接続する接続部2bとからなる。中央部2aは第2湾曲面となる。
図1のバルク型レンズ1では、中央部2aは球面又は楕円球面である。
図1に示すように、接続部2bは、光軸に対して角度θで中央部2aの曲面に接する直線からなる曲面であり、光軸に頂点がある円錐形状を有している。
中央部2a及び接続部2bは、第1湾曲面から入射する光、側壁部4及び底部3から反射してくる光源7から光束を、バルク型レンズ1の光軸方向に収束して出射する。つまり、バルク型レンズ1の外側は空気8であるので、頂部2の中央部2a及び接続部2bは、第2のレンズ面として作用する。
【0028】
バルク型レンズ1の頂部2の光軸に近いレンズ出射面、つまり、中央部2aの断面は、ほぼ円形又は楕円形で全体としては球状である。バルク型レンズ1の頂部2、つまり、接続部2bにおいて、光軸から所定の距離以上離れたレンズ出射面の断面は前記円形又は楕円形の端部の接線から形成される直線で全体としては円錐状である。頂部2の端部は、中央部2aと接続部2bとが接続される境界部分である。
【0029】
本発明のバルク型レンズ1では、例えば直径が5mm以上の平面型LED7aからなる光源7をバルク型レンズ1の内部の光軸を中心として設置した場合について説明する。平面型LED7aからなる光源7の光軸から最も外側の位置から放射した光で有効に前方に集光したい所定の照射角度の光は、凹部5の天井部5aの光入射面からレンズ内部に入射し、球状及び円錐状のレンズ出射面に到達するようになっている。このレンズ出射面に到達した光がレンズ出射面で全反射しないようなレンズ出射面角度になっている。
【0030】
第1の実施形態では、円形の発光面の光源7を想定しているが、長方形や楕円形の発光面の光源7の場合は光軸と垂直方向のレンズ断面を楕円形にすると良い。
【0031】
楕円形レンズの場合もレンズ出射面の断面形状を同様に設計すれば良く、レンズの光軸断面の光軸付近、つまり中央部2aを楕円形とし、接続部2bを光軸付近の楕円形の境界部分の接線となる直線にする。
【0032】
また、光軸付近のレンズ出射面の光軸断面形状が完全な円形でなくとも、周辺部のレンズ出射面の光軸との角度が小さいと光軸から外れた発光面からの放射光が全反射するので、レンズ出射面の周辺部断面を直線にして光軸との角度を大きくし、全反射を防止して光集光率を高くすることができる。
【0033】
バルク型レンズ1は、レンズ作用及び入射面(凹部5の天井部5a)と出射面(頂部2)とを接続する光伝送作用を有するので、バルク型レンズ1に用いる光学媒体の材料は、光の波長に対して透明な材料である。光学媒体としては、アクリル樹脂等の透明樹脂、つまり、透明プラスチック材料、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、炭化珪素(SiC)等の結晶性材料を用いてもかまわない。また、可とう性、屈曲性や伸縮性のある透明ゴムのような材料でもかまわない。
【0034】
(バルク型レンズの光放射特性)
バルク型レンズ1の光放射特性について説明する。
図1のバルク型レンズ1は、アクリル樹脂で作製した。バルク型レンズ1の各部の寸法を以下に示す。
第1湾曲面5aの曲率半径:∞(平面)
頂部2の中央部2a(第2湾曲面):曲率半径30mmで角度θが46度以下の部分(
図1参照)
頂部2の接続部2b:第2湾曲面の角度θ46度で接線となる円錐形状(
図1参照)
導光路長さ:55mm
側壁部4の直径:66mm
平面型LED7aの寸法:直径20mm
平面型LED7aと第1湾曲面5aとの距離:約2mm
【0035】
平面型LED7aから放射した光(出射角度0、±20度、±40度、±60度、±70度)の光放射を試算した。平面型LED7aの発光面7bの位置が光軸から外れるほどレンズ出射面で全反射し、出射光が光軸から外れるので、以下では光軸から10mmの位置の発光で説明する。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係るバルク型レンズ1の光放射特性を示す図である。
図3に示すように、光軸から10mmの発光面7bから外側20°、40°、60°、70°で出射した光は、レンズ入射面から約13度、26度、36度、39度で入射する。レンズ出射面で全反射となる入射角度は約42度であるので、全反射臨界角になるレンズ面の光軸との角度は、それぞれ約35度、22度、12度、9度となる。
【0037】
光軸から外側20度に出射した光はレンズ入射面から約13度で入射し、レンズ出射面の中心角約46度の位置で光軸の反対方向約8度で出射する(光放射の軌跡16参照)。
【0038】
後述する比較例の
図5等に示すように、LEDからの出射角がより大きくなるとレンズ出射面で全反射するので、
図3に示すように、レンズ出射面の球面中心角θが約46度以上のレンズ表面の角度を光軸に対して44度(球面中心角46度の接線)の円錐状にすれば、より大きな出射角の光に対しても全反射臨界角より小さな入射角となるため、全反射は防止できる。
【0039】
図3に示すように、光軸から外側40度、60度、70度で出射した光はレンズ入射面から約26度、36度、39度で入射する。光軸に44度の円錐状表面2bでの入射角はそれぞれ約20度、10度、7度で全反射の臨界角以下で、屈折角はそれぞれ約31度、16度、10度であり、光軸に対する光放射角はそれぞれ約15度、30度、36度となる。
【0040】
光軸から10mmの発光面7bから外側70度に出射した光は、光軸から66mmの位置で円錐上のレンズ出射面2bに到達するので、この光を有効に放射するレンズの直径としては、66mm以上が必要となることが分かる(光放射の軌跡17参照)。本実施例では、レンズ直径をなるべく小さくするために、LED放射光強度が光軸の約34%となる放射角70度までの放射光を有効に集光するレンズ直径66mmとした。
【0041】
本発明のバルク型レンズ1によれば、
図3に示すように、直径20mmの発光面7bを有する平面型LED17aからの光がレンズ出射面2bで全反射せず、損失が少ないレンズが得られる。
【0042】
(比較例)
次に、本発明のバルク型レンズ1に対する比較例として、従来型のバルク型レンズ120の光放射特性について説明する。
平面型LEDを使用した場合に光軸からのズレの影響を小さくするため、比較例のバルク型レンズ120を、従来の砲弾型LED用のバルクレンズ110(
図14参照)よりも比較的大きな口径として、光放射特性を調べた。
【0043】
比較例のバルク型レンズ120は、アクリル樹脂で作製した。比較例のバルク型レンズ120における各部の寸法を以下に示す(
図4参照)。
第1湾曲面105aの曲率半径:∞(平面)
第2湾曲面102aの曲率半径:30mm
導光路長さ:55mm
平面型LEDの寸法:直径20mm
平面型LEDと第1湾曲面35との距離:約2mm
側壁部104の直径:60mm
【0044】
図4〜6は、比較例のバルク型レンズ120で、それぞれ、光軸上の発光面107aからの光線の軌跡、光軸から5mm離れた発光面107aから放射した光線の軌跡、及び、光軸から10mm離れた発光面107aから放射した光線の軌跡を示す図である。図には、平面型LED107の発光面107aから放射した光の出射角度を、光軸に対して0、±20度、±40度、±60度、±70度として計算した光線の軌跡を示している。
【0045】
図4に示すように、レンズ光軸上の発光面107aから放射した光線の軌跡112は、集光性が優れているが、60度以上の光線ではやや内側方向へ光が放射する傾向がある。
【0046】
図5に示すように、レンズ光軸から5mm離れた発光面107aから放射した光線の軌跡113は、垂直放射の光もレンズ境界で内側方向に曲げられ、光軸の外方向に60度以上で放射する光は、レンズ出射面で全反射し、その後はレンズ光軸から大きく外れた方向に放射して照明に有効な光とはならない。
【0047】
図6に示すように、レンズ光軸から10mm離れた発光面107aから放射した光線の軌跡114においては、光軸の外方向に40度以上で放射する光は、レンズ出射面で全反射するため、照明としての損失がより大きくなる。
【0048】
従来の直径15mm程度の大きさのバルク型レンズ110では、レンズ光軸からの発光点のズレが上記試算の4倍となるため、発光点の光軸からのズレが2.5mm、光源の直径が5mmでも光損失が大きく、かつ光放射角が大きくなった。
【0049】
発光体を大型化するために、平面型LEDを使用しないで単に小型のLED素子を平面上に並べて実装した光源も検討した。この場合も、従来の1つの大きなバルク型レンズに収納すると、光軸から離れた部分の小型のLEDからの放射光が、レンズ放射面で全反射して損失になり、また光軸から離れた方向に放射された。
【0050】
以上のように、本発明のバルク型レンズ1では、
図3に示すように、従来の頂部2と側壁部4との間にさらに円錐形状の接続部2bを備えているので、レンズ光軸から10mm離れた発光面7bから放射した±70度の光を光軸方向に幅約70度程度の放射角に集光して出射できる。
一方、比較例に示す従来のバルク型レンズ120では、大面積で発光するLED107を従来のバルク型レンズ120で集光すると、光軸から外れた発光部からの放射角度の大きい光がレンズ出射面で全反射して損失が大きくなり、光放射角が大きくなることがわかる。
【0051】
第1の実施形態では、光源7のレンズ光軸からのズレが10mm、光源7の直径が20mmで説明しているが、直径15mm程度の従来のバルク型レンズ110では直径5mmの発光面の光源でも収束性が低下した。このため、直径5mmの発光面の光源の光を有効に集光するためには、第1の実施形態のバルク型レンズ1と同様な設計が必要である。
【0052】
第1の実施形態では、LED7aからのレンズへの入射角をできるだけ光軸方向に近づけるため、凹部5の第1湾曲面(天井の光入射部)5aは平面としたが、より広角の放射特性を実現するためには球面であっても良い。
【0053】
第1湾曲面(天井の光入射部)5aが球面の場合は、レンズへの入射角が平面の場合と比べて少しだけ小さくなり、屈折角も少し小さいので、円錐状のレンズ出射面へのLED7aの放射光の到達位置がより外側に、光放射角が少し大きく、必要なレンズ直径も少し大きくなる。
【0054】
また、第1の実施形態では、第2湾曲面(光出射部)2aの中心角θ以上の周辺部2bを円錐形状にしたが、円錐状の場合、
図3のように、光出射角が大きくなると光放射角も大きくなり、またレンズ外形も大きくなる。
【0055】
(第1の実施形態の変形例)
図7は、本発明のバルク型レンズ1を用いた発光体の変形例の構成を示す断面図である。
図7に示すように、本発明のバルク型レンズ1を用いた発光体20が
図2のバルク型レンズ1を用いた発光体10と異なるのは、バルク型レンズ1の凹部5に空気8を介してLEDを配置しないで、凹部5の空隙、つまり、凹部5と平面型LED7aとの間に、レンズ媒体の屈折率より小さな屈折率を有する透明な樹脂やゲル22を介して平面型LED7aを配置している点である。
【0056】
バルク型レンズ1の凹部5と平面型LED7aとの間に、透明な樹脂やゲル22を挿入すると、バルク型レンズ1とジェル22の屈折率の差が小さくなるので、入射面となる第1湾曲面5aで光軸方向に屈折させる効果は小さくなる。しかしながら、バルク型レンズ1への入射面での反射が非常に小さくなり、さらに、平面型LED7aの発熱をバルク型レンズ1により放熱し易くなるという効果が生じる。
【0057】
光軸方向に角度の狭い光照射を行わない場合などには、透明な樹脂やゲル22を介して平面型LED7aを配置する方が良い。例えば、シリコーン製のゲル22は透明で耐熱性や信頼性も優れている。
【0058】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るバルク型レンズ30の構成を示す断面図で、
図9は、本発明のバルク型レンズ30を用いた発光体40の構成を示す断面図である。
図8に示すバルク型レンズ30が、
図1のバルク型レンズ1と異なる点は、頂部32の接続部32bであり、円錐状の面としていない点である。
【0059】
具体的には、
図8に示すバルク型レンズ30の接続部32bは、光軸から所定の距離離れたレンズ出射面の断面が円形の端部の接線から形成される直線からなる面、つまり、これらの直線が集まって全体としては円錐状の面Aと、断面の円形の延長線上の垂直の接線Bからなる円柱との間に形成される面からなる。この円柱は、第2湾曲面に接続される。接続部32bは、レンズ出射面の光軸との角度が、レンズ出射面が光軸から離れるにつれて徐々に小さくなるように形成されている。他の構成は、
図1のバルク型レンズ1と同様に構成されているので説明は省略する。
【0060】
図8に示すバルク型レンズ30では、直径5mm以上の大面積平面発光の光源7をバルク型レンズ30の内部の光軸を中心として設置した時に、光源7の光軸から最も外側の位置から放射した光で有効に前方に集光したい所定の放射角度の光は、凹部35の天井部35aの光入射面からレンズ内部に入射し、レンズ出射面に到達するようになっており、レンズ出射面に到達した光がレンズ出射面で全反射せず、レンズからの出射光が光軸に近い方向に出射するようなレンズ出射面角度になっている。
【0061】
(第2の実施形態に係るバルク型レンズの光放射特性)
バルク型レンズ30の光放射特性について説明する。
バルク型レンズ30は、アクリル樹脂で作製した。バルク型レンズ30の各部の寸法を以下に示す。
第1湾曲面35aの曲率半径:∞(平面)
頂部32の中央部32a(第2湾曲面):曲率半径30mmで角度θが46度以下の部分
頂部32の接続部32b:第2湾曲面の角度θが46度で接線となる円錐形状と、第2湾曲面の延長線との間で、周辺ほど徐々に光軸との角度が小さくなる形状
導光路長さ:55mm
側壁部34の直径:63mm
平面型LED7aの寸法:直径20mm
平面型LED7aと第1湾曲面35aとの距離:約2mm
【0062】
図10は、第2の実施形態に係るバルク型レンズ30の光放射特性を示す図である。
図10に示すように、レンズ出射面で全反射臨界角とならない中央部の中心角度θ以上では、レンズ出射面の接続部32bから光を出射させることができる。第2湾曲面の延長線に接続する垂直接線Bと中央部32aの端部の接線Aとの間に接続部32bを設けることにより、この接続部32bの形状を調整することで中心角度θを徐々に大きくすることができる。これにより、従来のバルク型レンズ120で生じた全反射を防止し、光放射角度もより小さくすることができる。
【0063】
例えば、光軸から10mmの発光面7bから外側20度、40度、60度、70度で出射した光は、レンズ入射面から約13度、26度、36度、39度で入射する。レンズ出射面の光軸との角度をそれぞれ約44度、38度、30度、26度にすれば、レンズ出射面の入射角はそれぞれ約33度、26度、24度、25度となり全反射の臨界角以下であり、屈折角は、それぞれ約53度、42度、38度、39度となる。
光放射角の光軸との角度は、それぞれ約−8度(光軸と逆方向、
図10の光放射の軌跡36参照)、10度、22度、25度(
図10の光放射の軌跡37参照)となり、
図3に示すバルク型レンズ1の接続部2bが円錐状の場合と比べてより光軸方向に近い光放射となることが分かる。
【0064】
図10に示すように、第2の実施形態に係るバルク型レンズ30によれば、より集光性が良くなるとともに、必要なレンズ直径も小さくすることができる。
【0065】
(第2の実施形態の変形例)
図11は、本発明のバルク型レンズ30を用いた発光体の変形例の構成を示す断面図である。
図11に示すように、このバルク型レンズ30を用いた発光体45が
図9に示したバルク型レンズ1を用いた発光体10と異なるのは、バルク型レンズ30の凹部35に空気8を介してLEDを配置しないで、凹部35の空隙、つまり、凹部35と平面型LED7aとの間に、光学媒体の屈折率より小さな屈折率を有する透明な樹脂やゲル22を介して平面型LED7aを配置した点である。透明な樹脂やゲル22を介して平面型LED7aを配置することによる効果は、第1の実施形態の変形例のバルク型レンズ1を用いた発光体10と同じであるので、説明は省略する。
【0066】
以上の説明では大面積平面発光の光源7は均一な面発光として説明した。光源7としては、平面型LED7aの代わりに、小型のLED素子を平面上に並べた光源を本実施例のバルク型レンズ1、30に収納した場合も同様な効果がある。この場合には、光軸から離れた部分の小型のLEDからの放射光がレンズ放射面で全反射することがなく、光軸から離れた方向に放射されることがなくなる。大面積平面発光の光源7としては、小型のLED素子を平面上に並べたような均一な面発光でない光源も含む。
【0067】
本発明のバルク型レンズ1、30の効果や各部の変形例について説明する。以下の説明では、バルク型レンズ30で説明するが、バルク型レンズ1にも適用できる。
バルク型レンズ30の凹部35の内周部35b及び外壁を形成する側壁部34は、有効に集光するLED放射光の主な経路とはなり得ず、第1に、バルク型レンズ30と平面型LED7aを近接して位置決めする構造物として、第2に、平面型LED7やバルク型レンズ30内部で乱反射した光を外に取り出す透明体として、第3に、バルク型レンズ30が平面型LED7aから受けた熱を基板や放熱板12に逃がす熱伝導体として、の効果がある。
【0068】
第2の実施形態では、凹部35の内周部35bとレンズの側壁部34は光軸と平行になっている。しかし、バルク型レンズ1、30の主な光放射の経路は、凹部35の天井部35aから頂部32のレンズ出射面を通ることから、凹部35の内周部35bとレンズの側壁部34は、特に光軸と平行である必要はない。
【0069】
バルク型レンズ30の側壁部34には、バルク型レンズ30と平面型LED7aを固定させる溝や穴を設けても良い。
【0070】
バルク型レンズ30において、凹部35の内周部35bと外壁34がほぼ光軸と並行になっていると、バルク型レンズ30の製造が容易である。さらに、バルク型レンズ30がLED7aから受けた熱を有効に放熱板12に逃がすことができるという利点がある。
【0071】
また、バルク型レンズ30の側壁部34が円柱に近い場合は、平面型LED7aから直接側壁部34に当たる光は非常に大きな角度で放射するか、全反射して後方散乱や損失となるので、外壁表面を荒らすか、酸化チタン粉末などを含む塗料などで塗装して光を散乱させれば、光がより有効に前方に放射するようにできる。
【0072】
第2の実施形態では、バルク型レンズ1、30の材質を一般的なアクリル樹脂製としたが、透明であれば何でも良く、例えば、ポリカーボネートは耐熱性に優れており、また、ガラスは耐熱性も信頼性も優れている。
【0073】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る照明装置50について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る照明装置50を模式的に示すブロック図である。
図12に示すように、照明装置50は、上記の何れかに記載の少なくとも1つ以上の発光体10と、発光体10に接続された電源部52と、から成る。照明装置50は、発光体10の光照射がされる側や、さらに放熱板12側に樹脂等からなるカバー部54を備えていてもよい。
【0074】
本発明の発光体10は、大面積LED光源7の発光を有効に集光することができ、且つ様々な放射特性が実現できるので、複数の発光体10の特性、設置位置、設置角度を調整することにより、均一な広範囲の照明や、道路面に沿って細長い均一な照明など幅広い照明特性を実現できる。照明装置50は、従来のLEDを用いた照明装置と同様に、バルク型レンズの底部3に、更に背面鏡53を備えて構成されてもよい。背面鏡53としては、鏡板、金属や樹脂材料に金属薄膜を蒸着やメッキで被覆した構造等の種々の鏡が使用できる。
なお、発光体10は
図2の構成の他に、
図7に示す発光体20、
図9に示す発光体40、
図11に示す発光体45を用いてもよい。
【0075】
平面型LED7aはLED単体を直列接続したユニットをさらに並列接続して構成されている。平面型LED7aの順電圧は、例えば9.6V〜50V程度の製品が市販されている。発光体10に接続された電源部52は、平面型LED7aの順電圧に応じた電圧及び順電流を供給できる電源であればよい。このような電源部52は、商用電源(100V〜200V)又は蓄電池等を電源とする。
【0076】
照明装置50は、さらに、センサ56を備えていてもよい。センサ56が日照を検知する照度センサの場合には、照度センサ56で電源52を駆動するような電源制御回路58を備えていてもよい。この場合には、照明装置50を夜間だけ照明することができる。
【0077】
本発明の照明装置50によれば、大出力LEDの光を効率良く集光することができ、光利用効率が向上することにより、大出力LEDの高発光効率の特性を活かした照明装置、街路灯、灯光器等が実現できる。
【0078】
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。