特許第6106875号(P6106875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106875
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】分割型ステータコアの固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20170327BHJP
   H02K 1/06 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   H02K1/18 C
   H02K1/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-278877(P2012-278877)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-124044(P2014-124044A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】川口 雅行
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−299271(JP,A)
【文献】 特開昭51−137805(JP,A)
【文献】 特開2007−252076(JP,A)
【文献】 実開昭56−156346(JP,U)
【文献】 特開2012−120350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に分割された複数の分割型ステータコアをフレームの内周面に円筒状に配置する分割型ステータコアの固定構造において、前記分割型ステータコアには、前記分割型ステータコアの厚みより長い軸方向ピンが軸方向に差し込まれると共に前記軸方向ピンが前記分割型ステータコアの両端面から突出する突出部を収容するピン用穴を持つ円環状押え板を前記分割型ステータコアの両端面にそれぞれ配置する一方、前記分割型ステータコア及び前記円環状押え板にボルトを軸方向に貫通して締結する分割型ステータコアの固定構造において、前記円環状押え板の外周面には、固定用凹部が形成される一方、前記固定用凹部に嵌合する径方向ピンが前記フレームを径方向に貫通して設けられることを特徴とする分割型ステータコアの固定構造。
【請求項2】
前記円環状押え板の一方は、前記フレームを軸方向に貫通するボルトに締結されることを特徴とする請求項記載の分割型ステータコアの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割型ステータコアの固定構造に関する。詳しくは、特性が高く、効率的に製造できる分割型ステータコアの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、分割型ステータコアを使用するタイプは、一般的に、図7及び図8に示すように、フレーム03と、フレーム03の内周面に円筒状に配置される複数個の分割型ステータコア01と、分割型ステータコア01に巻回されたコイル02と、フレーム03を半径方向に貫通して分割型ステータコア01に嵌合する回リ止メピン04とからなる固定子と、分割型ステータコア01に僅かな隙間を隔てて配置されるロータコア05と、ロータコア05の中心に固定されたシャフト06と、シャフト06をフレーム03に対して回転自在に支持するベアリング07とからなる回転子で構成される。
【0003】
それぞれの分割型ステータコア01は、図9に示すように、鉄板を多数枚積層して放射状に分割されたものであり、図7及び図8に示すように、フレーム03を軸方向に貫通するボルト08により一体的に固定されている。それぞれの分割型ステータコア01には、図9に示すようにボルト08が貫通するボルト穴01aが形成されている。
一般的な回転電機の構造については、特許文献1〜7に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136056
【特許文献2】特開2007−43845
【特許文献3】特開2004−328908
【特許文献4】特開昭61−4428
【特許文献5】特表2009−539338
【特許文献6】実開平05−15647
【特許文献7】実開昭59−9739
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した分割型ステータコアを含む回転電機には、次の問題点がある。
(1)各分割型ステータコア01は、ボルト08によりフレーム03にそれぞれ固定する構造としている。ここで隣接する分割型ステータコア01同士の間には必ず隙間を必要とする為、この隙間により分割型ステータコア01の位置が正確に定まらず、内径寸法に歪みが生じてモータの特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
(2)各分割型ステータコア01は、ボルト08によりフレーム03ヘ順番に固定する構造としている為、作業効率が悪い。
【0007】
(3)分割型ステータコア01の材質は一般的に鉄製であるが、フレーム03の材質がアルミニウム製の場合、線膨張係数が大きく異なる。この結果、モータ運転時における温度上昇により分割型ステータコア01とフレーム03との間に隙間が生じ、回リ止メピン04による固定部分に多大な応力が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る分割型ステータコアの固定構造は、放射状に分割された複数の分割型ステータコアをフレームの内周面に円筒状に配置する分割型ステータコアの固定構造において、前記分割型ステータコアには、前記分割型ステータコアの厚みより長い軸方向ピンが軸方向に差し込まれると共に前記軸方向ピンが前記分割型ステータコアの両端面から突出する突出部を収容するピン用穴を持つ円環状押え板を前記分割型ステータコアの両端面にそれぞれ配置する一方、前記分割型ステータコア及び前記円環状押え板にボルトを軸方向に貫通して締結する分割型ステータコアの固定構造において、前記円環状押え板の外周面には、固定用凹部が形成される一方、前記固定用凹部に嵌合する径方向ピンが前記フレームを径方向に貫通して設けられることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する本発明の請求項に係る分割型ステータコアの固定構造は、請求項において、前記円環状押え板の一方は、前記フレームを軸方向に貫通するボルトに締結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
複数の分割型ステータコアを2枚の円環状押え板の間に挟み、複数の軸方向ピンを分割型ステータコアのピン用穴、円環状押え板のピン用穴に差し込んで、複数の分割型ステータコアを精度良く均一に配置した状態で、複数の分割型ステータコアと円環状押え板とを複数のボルトにより締結することができる。
【0012】
また、径方向ピンをフレームの径方向外側から円環状押え板の固定用凹部に嵌合させることにより、分割型ステータコア1全体に発生した円周方向の捻じれを補正することができる。
【0013】
更に、フレームを軸方向に貫通するボルトを、円環状押え板に締結することにより、分割型ステータコア全体をフレーム内に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施例に係る分割型ステータコアの固定構造を適用した回転電機を一部破断して示す側面図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る分割型ステータコアの固定構造を適用した回転電機を一部破断して示す正面図である。
図3図3(a)は、円環状押え板と共に仮組固定された分割型ステータコア全体の正面図、図3(b)は、円環状押え板と共に仮組固定された分割型ステータコア全体の内の半分の側面図、図3(c)は、円環状押え板と共に仮組固定された各分割型ステータコアの側面図である。
図4図4(a)は、各分割型ステータコアの正面図、図4(b)は、各分割型ステータコアの側面図である。
図5図5(a)は、一方の円環状押え板の正面図、図5(b)は、一方の円環状押え板の側面図である。
図6図6(a)は、他方の円環状押え板の正面図、図6(b)は、他方の円環状押え板の側面図である。
図7】従来の回転電機を一部破断して示す側面図である。
図8】従来の回転電機を一部破断して示す正面図である。
図9図9(a)は、従来の各分割型ステータコアの正面図、図9(b)は、従来の各分割型ステータコアの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例に係る分割型ステータコアの固定構造を図1図6に示す。
図1及び図2に示すように、フレーム3と、フレーム3の内周面に円筒状に配置される複数個の分割型ステータコア1と、分割型ステータコア1に巻回されたコイル2とからなる固定子と、分割型ステータコア1に僅かな隙間を隔てて配置されるロータコア5と、ロータコア5の中心に固定されたシャフト6と、シャフト6をフレーム3に対して回転自在に支持するベアリング7とからなる回転子とから回転電機が構成される。
【0017】
それぞれの分割型ステータコア1は、図4に示すように、鉄板を多数枚積層して放射状に分割されたものであり、ボルト8(図3参照)が軸方向に貫通するボルト用穴1aが形成されると共にボルト用穴1aの左右両側には軸方向ピン9が軸方向に差し込まれるピン用穴1bがそれぞれ形成されている。
ピン用穴1bに差し込まれる複数の軸方向ピン9は、図4に示すように、分割型ステータコア1の厚みより長く、分割型ステータコア1の両端面から先端がそれぞれ突出部9a及び突出部9bとして突出する。
【0018】
分割型ステータコア1の両端面には、円環状押え板10,11がそれぞれ配置され、分割型ステータコア1及び円環状押え板10,11にボルト8、軸方向ピン9が軸方向に貫通して差し込まれている。
即ち、円環状押え板10は、図5に示すように、分割型ステータコア1のボルト用穴1aに対応して、ボルト8(図3参照)が軸方向に貫通するボルト用穴10aが複数個設けられると共に、分割型ステータコア1のピン用穴1bに対応して、軸方向ピン9の先端である突出部9aを収容するピン用穴10bが複数個設けられている。ピン用穴10bは突出部9aに対する正確な位置決めを行うものである。
【0019】
つまり、円環状押え板10には、ボルト用穴10a及びその左右両側のピン用穴10bが、分割型ステータコア1の数だけ多数配置されている。
また、フレーム3を径方向ピン12(図1参照)が径方向外側から貫通しており、この径方向ピン12を収容する固定用凹部10cが円環状押え板10の外周面に形成されている。
【0020】
この径方向ピン12は、固定用凹部10cの周方向位置を固定するのみであり、径方向ピン12と固定用凹部10cとの軸方向の摺動は許容される。
一方、円環状押え板11は、図6に示すように、分割型ステータコア1のボルト用穴1aに対応して、ボルト8(図3参照)の先端が締結されるボルトねじ用穴11aが複数個設けられると共に、分割型ステータコア1のピン用穴1bに対応して、軸方向ピン9の先端である突出部9bを収容するピン用穴11bが複数個設けられている。ピン用穴11bは突出部9bに対する正確な位置決めを行うものである。
【0021】
つまり、円環状押え板11には、ボルト用ねじ穴11a及びその左右両側のピン用穴11bが、分割型ステータコア1の数だけ多数配置されている。
また、フレーム3を径方向ピン13(図1参照)が径方向外側から貫通しており、この径方向ピン13を収容する固定用凹部11cが円環状押え板11の外周面に形成されている。
【0022】
この径方向ピン13は、固定用凹部11cの周方向位置を固定するのみであり、径方向ピン13と固定用凹部11cとの軸方向の摺動は許容される。
更に、フレーム3をボルト14が4箇所で軸方向に貫通しており、このボルト14の先端が締結されるボルト用ねじ穴11dが円環状押え板11に約90°間隔に4箇所設けられている。
【0023】
従って、図3に示すように、複数の分割型ステータコア1を2枚の円環状押え板10,11の間に挟み、複数の軸方向ピン9を分割型ステータコア1のピン用穴1b、円環状押え板10,11のピン用穴10b,11bに差し込んで、複数の分割型ステータコア1を精度良く均一に配置した状態で、複数のボルト8を円環状押え板10側から円環状押え板10のボルト用穴10a、ボルト用穴1aを貫通させて、その先端を円環状押え板11のねじ用穴11aに全数順番に締結することにより、複数の分割型ステータコア1を仮組固定する。
【0024】
また、円環状押え板10,11と共に仮組固定された複数の分割型ステータコア1全体をフレーム3内に収納し、フレーム3の径方向外側から貫通する径方向ピン12,13を円環状押え板10,11の固定用凹部10c,11cに嵌合させることにより、仮組固定時に分割型ステータコア1全体に発生した円周方向の捻じれを補正する。
更に、フレーム3を軸方向に貫通する4本のボルト14の先端を、円環状押え板11に形成されていたボルト用ねじ穴11dに全数締結することにより、分割型ステータコア1全体をフレーム3内に固定する。
【0025】
以上、具体的に説明したように、本実施例の分割型ステータコアの固定構造は、以下の効果を奏する。
(1)各分割型ステータコアは、複数の分割型ステータコア1を2枚の円環状押え板10,11の間に挟み、複数の軸方向ピン9を分割型ステータコア1のピン用穴1b、円環状押え板10,11のピン用穴10b,11bに差し込んで、複数の分割型ステータコア1を精度良く均一に配置した状態とすることができる為、内径寸法に歪みが生じずモータの特性に悪影響を及ぼさない。
【0026】
(2)円環状押え板10,11と共に複数の分割型ステータコア1全体を仮組固定した状態でフレーム3内に収納する為、各分割型ステータコアをボルトによりフレームヘ順番に固定する従来技術に比較して、作業効率が良い。
【0027】
(3)フレーム3の径方向外側から貫通する径方向ピン12,13を円環状押え板10,11の固定用凹部10c,11cに嵌合させることにより、仮組固定時に分割型ステータコア1全体に発生した円周方向の捻じれを補正することができる。
【0028】
(4)分割型ステータコア1とフレーム3の線膨張係数が大きく異なる場合でも、径方向ピン12,13と円環状押え板10,11の固定用凹部10c,11cとの軸方向の摺動が可能なため、径方向ピン12,13による固定部分は応力が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、特性が高く、効率的に製造できる製造できる分割型ステータコアの固定構造として広く産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0030】
1 分割型ステータコア
1a ボルト用穴
1b ピン用穴
2 コイル
3 フレーム
5 ロータコア
6 シャフト
7 ベアリング
8,14 ボルト
9 軸方向ピン
9a,9b 突出部
10,11 円環状押え板
10a ボルト用穴
10b,11b ピン用穴
10c,11c 固定用凹部
11a,11d ボルト用ねじ穴
12,13 径方向ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9