【実施例】
【0030】
以下では,実施例を踏まえ,本発明のインビボ評価法およびインビトロ評価法をさらに詳細に説明するが,当然のことながら,本発明の内容は下記に限定されるものではない。
【0031】
<<実施例1>>
1.被験者の同意の元,各被験者の手術検体を採取し,20%ホルマリン液で固定した。固定した手術検体をスライドガラスに均一に展開し,光学顕微鏡又はSHG顕微鏡にて観察を行った。
2.合わせて,手術前の被験者について,眼底カメラを用い眼底像およびOCT像の観察を行った。
【0032】
<結果>
1.
図1から
図3に結果を示す。各図はそれぞれ上段が眼底カメラによるOCT像又は観察像,下段左が光学顕微鏡による拡大観察像,下段右がSHG顕微鏡による観察像である。
図1は黄班円孔,
図2は黄斑前膜,
図3は増殖性硝子体網膜症の被験者である。
2.IV型コラーゲン増殖病態を主とする黄班円孔被験者の手術検体では,SHG光は全く検出されなかった(
図1)。一方,I型コラーゲン増殖病態を主とする黄斑前膜や増殖性硝子体網膜症の被験者の手術検体では,SHG光が検出された(
図2,3)。
3.これらの結果から,コラーゲンの型の違いにより,SHG光の検出が異なることが示された。
4.病態によりコラーゲンの型が異なることもあり,また,同じ病態であってもその進行度によりコラーゲンの成熟度が異なることが通常である。このことを踏まえると,病態や病態の進行度により,SHG顕微鏡観察結果に変化が見られることが強く示唆され,そのSHG観察結果を客観的に評価することにより,病態や病態の進行度の客観的評価が可能となりうることが強く示唆された。
【0033】
<<実施例2>>
<方法>
1.SHG顕微鏡にて,増殖性糖尿病網膜症被験者の眼の観察を行った。
2.増殖組織の無い部位のSHG輝度を測定し,そのうち最高輝度の部位を正常組織の閾値とした。
3.正常組織の閾値よりも高いSHG輝度を有する部位を増殖膜のある部位とした。この増殖膜のある部位の任意の部位(318.5×318.5μm
2)を3か所選択し,SHG輝度の測定を行った。
4.SHG輝度の面積当たりの平均値を算出した。
5.合わせて,眼底カメラにて,眼底像およびOCT像の観察・解析を行った。
【0034】
<結果>
1.結果を
図4から8に示す。各図において,上段が眼底カメラによる観察結果,下段がSHG顕微鏡による観察結果を示す。図上段のうち,左と右が眼底像,中央がOCT像を示す。
2.
図4から
図8の増殖性糖尿病網膜症被験者の眼底カメラによる観察において,いずれにおいてもコラーゲンの増殖が確認された。
(1) 比較的病気の進行が進んでいない被験者では,SHG光が広範に観察される一方,そのSHG強度はそれほど高くなかった(
図4,5)。
(2) また,
図6に見られるように,SHG光が観察される範囲は狭いものの,SHG強度が高い被験者も見られた。
(3) また,病気の進行が進んでいる被験者では,SHG光が広範に観察され,かつ,そのSHG強度も高かった(
図7,8)。
3.各被験者について,SHGが観察される面積およびその強度をまとめたものを
図9に示す。このようにSHG顕微鏡観察面積およびSHG強度を定量化することにより,増殖性糖尿病網膜症被験者を客観的に評価することが可能となる。また,この結果から,SHG顕微鏡観察面積およびSHG強度は比例するわけではないが,これらいずれもが高くなると,増殖性糖尿病網膜症被験者の病期の進行度,すなわち増殖膜の成熟度と相関する可能性が示唆された。
4.これらの結果は,増殖性糖尿病網膜症の病期の進行度の評価に,SHG観察が有用であることを示す結果である。
【0035】
<<実施例3>>
<実験方法>
1.コラーゲンゲルについて,まず,Cell Matrix I-A(700μL)と5倍濃縮DMEM(200μL),buffer(0.05N NaOH/260 mM NaHCO
3 / 20mM HEPES 100μL)を混和した。この混和溶液200μLを,3.5mmガラスシャーレに加えて,30分間37℃インキュベーションすることによりゲル化し,コラーゲンゲルを作製した。
2.作製したコラーゲンゲルに,ヒト網膜色素上皮細胞(hRPE)を,播種密度4.0×104 cells/mLで2cc播種した。播種後すぐに培養液にTGFβ(3ng/mL)を添加した。培養液交換は2日ごとに行い,液量は1.8mLとした。
3.位相差顕微鏡とSHG顕微鏡を用いて,24時間,4日,8日目に1dishにつき3視野測定し,平均をSHG発現面積率・平均輝度として評価を行った。
4.走査電子顕微鏡(SEM)を用いて,培養していないゲル及び8日間細胞培養後のゲル表面を,トリプシン処理後に観察を行った。
【0036】
<結果>
1.結果を
図10から
図14に示す。
2.コラーゲンゲル3次元培養系では,培養4日目よりSHG発現面積及び平均輝度の上昇を認め,8日目には両指標ともに統計学的に有意な差を認めた(
図10)。
3.同条件ゲルのSEM顕微鏡解析では,細胞培養後のゲルでコラーゲン線維が密に存在することが明らかとなった(
図11)。
4.SEM顕微鏡解析を用いたコラーゲン線維束径の比較では,培養後の方が培養前のコラーゲン線維よりも,統計学的に有意に太いコラーゲン線維束を認めた(
図12)。
5.TGFβ刺激hRPE細胞培養下では,培養4日目からSHG発現面積及び平均輝度の統計学的に有意な上昇を認め,その効果は8日目まで継続した(
図13,下段)。
6.同条件ゲルのSEM顕微鏡解析では,TGFβ刺激hRPE細胞のゲルでコラーゲン線維が密に存在していた(
図13,上段)。
7.SHG顕微鏡を用いたコラーゲン3次元培養系は,コラーゲンの線維化及び抑制効果を,固定など修飾を行わずにリアルタイムで観察できることが示された。よって,コラーゲン線維リモデリングの新しいインビトロ評価法として有用である。