【実施例1】
【0018】
図1(a)から
図2(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図1(a)を参照し、基板10上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い窒化物半導体層20を形成する。基板10は、例えば(0001)主面を有するSiC基板であり、窒化物半導体層11の積層方向は例えば[0001]方向である。窒化物半導体層20として、核形成層12、電子走行層14、電子供給層16、およびキャップ層18を基板10側から順に形成する。核形成層12は、例えば厚さが300nmの窒化アルミニウム(AlN)層である。電子走行層14は、例えば厚さが1000nmのノンドープ窒化ガリウム(GaN)層である。電子供給層16は、例えば厚さ20nmのn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層である。キャップ層18は、厚さ5nmのn型窒化ガリウム層である。
【0019】
図1(b)を参照し、窒化物半導体層20上に、下層50aおよび上層50bを有するフォトレジスト50を塗布する。露光現像することにより、フォトレジスト50に開口を形成する。蒸着法を用い、窒化物半導体層20上に窒化物半導体層20側からTi(チタン)膜およびAl(アルミニウム)膜を有するソース電極22およびドレイン電極24を形成する。Ti膜の膜厚は例えば30nm、Al膜の膜厚は例えば300nmである。Ti膜はTa膜でもよい。フォトレジスト50上には金属24aが形成される。その後、フォトレジスト50を除去することにより金属24aを除去する。これにより、窒化物半導体層20上にソース電極22およびドレイン電極24が形成される。例えば550℃において熱処理することにより、ソース電極22およびドレイン電極24と窒化物半導体層20とを合金化する。
【0020】
図1(c)を参照し、窒化物半導体層20上にプラズマCVD法を用い窒化シリコン膜26を形成する。
窒化シリコン膜26の成膜条件例を以下に示す。
成膜装置:平行平板型プラズマCVD装置
基板温度:250℃
成膜ガス:SiH
4、NH
3、N
2、He
ガス流量:SiH
4:4sccm、NH
3:2sccm、N
2:200sccm、He:800sccm
圧力 :1.0Torr
パワー :75Watts
膜厚 :20nm
上記条件により、窒化シリコン膜26の屈折率は、約2.35となる。
【0021】
図1(d)を参照し、窒化シリコン膜26を熱処理する。熱処理温度は、例えば400℃であり、熱処理時間は例えば5分である。
【0022】
図2(a)を参照し、窒化シリコン膜26の表面をプラズマに曝す。
プラズマ処理の処理条件の例を以下に示す。(プラズマ処理は、窒化シリコン膜26を成膜した装置から取り出し下記CCP法で実施される)
処理装置:平行平板電極構造(CCP法:Capacitively Coupled Plasma)
温度 :室温
ガス :O
2またはN
2
ガス流量:100sccm
圧力 :0.5Torr
パワー :100Watts
時間 :3分
【0023】
また、別の処理条件の例を以下に示す。
処理装置:誘導結合型構造(ICP法:Inductively Coupled Plasma)
温度 :室温
ガス :O
2またはN
2
ガス流量:100sccm
圧力 :5Pa
ICPパワー:700Watts
バイアスパワー:30Watts
時間 :3分
【0024】
図2(b)を参照し、窒化物半導体層20上に、下層52aおよび上層52bを有するフォトレジスト52を塗布する。露光現像することにより、フォトレジスト52に開口を形成する。フォトレジスト52をマスクに窒化シリコン膜26に開口を形成する。蒸着法を用い、窒化物半導体層20上に窒化物半導体層20側からNi(ニッケル)膜およびAu(金)膜を有するゲート電極28を形成する。Ni膜の膜厚は例えば50nm、Au膜の膜厚は例えば400nmである。フォトレジスト52上には金属28aが形成される。その後、フォトレジスト52を除去することにより金属28aを除去する。これにより、窒化物半導体層20上にゲート電極28が形成される。
【0025】
図2(c)を参照し、ゲート電極28を覆うように、窒化シリコン膜26上に絶縁膜30を例えばCVD法を用い形成する。絶縁膜30は、例えば膜厚が500nm、屈折率が2.2より小さく化学量論的な組成に近い窒化シリコン膜である。
【0026】
図2(d)を参照し、絶縁膜30に開口を形成する。絶縁膜30の開口を介しソース電極22およびドレイン電極24にそれぞれ接続するソース配線32およびドレイン配線34を形成する。ソース配線32およびドレイン配線34は、例えばAu膜であり、めっき法を用い形成する。
【0027】
図2(a)のプラズマ処理としてCCP装置およびO
2ガスを用いたサンプル(実施例1)と、熱処理およびプラズマ処理を行わないサンプル(比較例1)を作製した。その他の条件は
図1(a)から
図2(d)において例示した条件を用いた。
【0028】
図3(a)および
図3(b)は、それぞれ比較例1および実施例1におけるドレイン電流−電圧特性を示す図である。
図3(a)および
図3(b)を参照し、ドレイン電流−電圧特性はカーブトレーサを用い測定した。ドレイン電圧を0Vから最大電圧まで掃引した。破線はドレイン電圧の最大電圧を15Vとしゲート電圧を2Vとしたときのドレイン電流であり、実線はドレイン電圧の最大電圧を50Vとしゲート電圧を−2Vから+2Vまで1Vステップで掃引したときのドレイン電流である。
【0029】
図3(a)に示すように、比較例1においては、破線に比べ実線はドレイン電圧が低い範囲78でドレイン電流が低くなる。一方、
図3(b)に示すように、実施例1においてはドレイン電流がほとんど変化しない。このように、実施例1では比較例1よりドレイン電流コラプスがより抑制される。
【0030】
図4(a)および
図4(b)は、連続通電時の利得変動および飽和電力変動を示す図である。用いたサンプルのゲート幅は、2.25mmである。通電条件は、チャネル温度が250℃、ドレイン電圧が50V、ドレイン電流が100mAである。測定は、通電を中断し高周波信号として周波数が10GHzにおける利得と飽和電力を測定した。ドットは、測定値を示し、直線はドットを結ぶ線を示している。時間が1時間のドットは通電前の測定値を示し、その他のドットは通電後の測定値を示す。縦軸は通電前の測定値との変化量を示している。範囲76は規格範囲を示している。
【0031】
図4(a)に示すように、利得は、実施例1と比較例1とで大きく異ならない。一方、
図4(b)に示すように、比較例1においては、飽和電力が通電時間とともに小さくなる。これは、連続通電によりドレイン電流が減少していることに対応する。実施例1においては、飽和電力が通電時間に対しほとんど変化しない。
【0032】
以下に、実施例1により、ドレイン電流および/または飽和電力の変動が抑制できる理由を推測する。
図5(a)は、半導体装置の断面図、
図5(b)は、
図5(b)のA−Aのエネルギーバンド図である。
図5(a)を参照し、半導体装置の構造は
図2(d)と同じであり説明を省略する。
図5(a)のA−Aにおけるエネルギーバンド図を
図5(b)に示す。
図5(b)を参照し、伝導帯の底のエネルギーをEc、価電子帯の頂のエネルギーをEv、フェルミ準位エネルギーをEfとする。電子走行層14の電子供給層16との界面において、EcがEfより低くなることにより2次元電子ガス2DEGが形成される。
【0033】
図6(a)および
図6(b)は、
図5(a)のB−Bのエネルギーバンド図である。シリコンリッチ窒化シリコン膜26は化学量論的な組成の窒化シリコン膜(絶縁膜30)に比べバンドギャップが小さくなる。
【0034】
図6(a)は、比較例1に対応する。窒化物半導体層20表面には、酸化ガリウム等のV族酸化物からなる酸化層が存在する。この酸化層は不安定でありコラプス現象および/または寄生容量の変化の原因となる。シリコンリッチな窒化シリコン膜26内には活性なSi−H基が多く含まれる。Si−H基が熱処理により酸化層を吸着除去する。これにより、コラプス現象および/または寄生容量の変化を抑制できる。
【0035】
しかしながら、酸化シリコン膜26のシリコン組成比を大きくすると、
図4(a)および
図5(b)に示したように、連続通電時のドレイン電流の変動が生じる。発明者はこの原因を以下のように考えた。Si−H結合の一部のHが脱離し、Siが酸化層と結合したとしても窒化シリコン膜26中にはSi−H結合が多く存在している。製造工程の熱処理において、Si−H結合の水素が脱離するとSiの未結合軌道(ダングリングボンド)となる。Si未結合軌道の準位は深い準位となる。2DEGが高電界となると、矢印64のように2DEGから熱電子が窒化シリコン膜26および絶縁膜30内に注入される。窒化シリコン膜26内の電子60のうち一部はSi−Si結合に起因した準位をホッピング伝導して絶縁膜30内に移動(矢印66)し、トラップされる(矢印72)。または表面で反射される(矢印68)。窒化シリコン膜26内の電子60のうち一部はSi未結合軌道に起因する準位にトラップされる(矢印62)。Si未結合軌道に起因した準位のエネルギーはSi−Si結合よりさらに低い。このため、Si未結合軌道にトラップされた電子60は、窒化シリコン膜26内を伝導できない。これにより、破線74のように窒化シリコン膜26のエネルギーが高くなる。よって、2DEGのエネルギーが上昇し、2DEG濃度が減少し、ドレイン電流が変動する。
【0036】
そこで、発明者は、以下の方法を考えた。まず、シリコンリッチ窒化シリコン膜26内のSi−H結合のHを脱離させる。次に、Siの未結合軌道に結合させる元素を導入し、Siの未結合軌道にこの元素を結合させる。この元素としては、Siと結合させるため電子親和力が大きくギブスの自由エネルギーの低い化合形態をとる元素が好ましい。さらに、窒化シリコン膜26内を移動させるためイオン半径が比較的小さい元素が好ましい。よって、V族からVII族であり、かつ第2周期から第4周期の元素が好ましい。さらに、窒化シリコン膜26内で深い準位を形成しないため、Siと結合しバンドギャップが広くなる化学形態を示す元素が好ましい。これらを満足する元素として、O(酸素)、N(窒素)、F(弗素)、P(燐)、S(硫黄)およびSe(セレン)が挙げられる。このうち、プラズマ処理に適した元素はO、NまたはFである。
【0037】
このように、
図1(d)の熱処理において、Si−H結合のHを脱離させSi未結合軌道を生成する。
図2(a)のプラズマ処理において、Si未結合軌道に例えばOを結合させる。Si−O結合に起因した準位は浅くなるため、Si未結合軌道に起因した準位のように電子をトラップさせない。
【0038】
図6(b)は、実施例1に対応する。窒化シリコン膜26内にはSi未結合軌道に起因する準位が少ないため、窒化シリコン膜26内に注入された電子は絶縁膜30内に伝導する。これにより、窒化シリコン膜26のエネルギーの変化は小さくドレイン電流の変動が抑制される。
【0039】
窒化シリコン膜26内のSi未結合軌道がOと結合しているかを調べるため、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)測定を行った。サンプルは、以下の3つを準備した。なお、窒化シリコン膜26の成膜条件は
図1(c)、熱処理条件は
図1(d)、プラズマ条件は
図2(a)のICP法において例示した条件である。
サンプルA:GaN層上に窒化シリコン膜26を形成した直後のサンプル
サンプルB:サンプルAを熱処理せずにOを用いプラズマ処理したサンプル
サンプルC:サンプルAを熱処理した後Oを用いプラズマ処理したサンプル
【0040】
図7は、各サンプルのFTIRスペクトルを示す図である。
図7を参照し、横軸は波数、縦軸は強度である。Si−N信号は、Si−N結合の伸縮振動の信号であり約840cm
−1である。Si−O信号は、Si−O結合の伸縮振動の信号であり約1050cm
−1である。Si−H信号は、Si−H結合の伸縮振動の信号であり約2150cm
−1である。N−H信号は、N−H結合の伸縮振動の信号であり約3300cm
−1である。
【0041】
Si−N信号はサンプルAからCに従い小さくなる。Si−O信号はサンプルAからCに従い大きくなる。Si−H信号はサンプルAに比べサンプルBおよびCが小さい。N−H信号はサンプルによる差がほとんどない。これより、プラズマ処理によりSi−H結合が減少しSi−O結合が増加している。Si−N結合の一部もSi−O結合となる。熱処理によりSi−O結合がさらに多くなる。
【0042】
窒化シリコン膜26内の深さ方向のO濃度についてSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)法を用い測定した。
図8(a)および
図8(b)は、それぞれサンプルAおよびCの深さに対する濃度またはイオン強度を示す図である。深さは窒化シリコン膜26の表面からの深さに対応する。測定した元素はH、O、SiおよびGaである。HおよびOは濃度で示し、SiおよびGaは2次イオン強度で示す。縦の点線が窒化シリコン膜26とGaN層との界面に対応する。
【0043】
図8(a)および
図8(b)を参照し、サンプルAおよびCにおいて、窒化シリコン膜26のGaN層との界面(深さ15nmから20nmあたり)においてO濃度が高くなっている。これは、GaN層の表面に形成された酸化ガリウム層の酸素をシリコンリッチ酸化シリコン膜26内の過剰のSi−H基によりゲッタリングしたことを示している。深さ15nmより浅い領域においてはSi−HのHが脱離したSi未結合軌道が残存していると考えられる。
【0044】
図8(b)のように、サンプルCにおいては、深さ0nmから10nmの領域において、O濃度が
図8(a)のサンプルAより高くなっている。これは、Si未結合軌道がOと共有結合したためと考えられる。
【0045】
以上のように、Oプラズマ処理により、窒化シリコン膜26内のSi未結合軌道がSi−O共有結合対に置換されたことが確認された。
【0046】
実施例1によれば、
図1(c)のように窒化物半導体層20上に屈折率が2.2以上の窒化シリコン膜26を形成する。
図2(a)のように窒化シリコン膜26表面にOを含むプラズマに曝す。これにより、
図5(b)のように、ドレイン電流の変動を抑制できる。
【0047】
窒化シリコン膜26は、シリコンリッチ膜とするため、屈折率が2.3以上が好ましく、2.35以上がより好ましい。また、アモルファス状とならない程度以下であることが好ましく、例えば2.85以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。窒化シリコン膜26の組成比Si/N(原子比)は0.75より大きいことによりシリコンリッチ膜となる。Si/Nは、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。Si/Nは1.2以下が好ましい。
【0048】
プラズマ処理工程は、窒化シリコン膜26表面にO、N、およびFの少なくとも一つを含むプラズマに曝せばよい。プラズマ処理に用いる処理装置はCCP装置、ICP装置以外にも例えばECR(Electron Cyclotron Resonance)装置でもよい。プラズマ処理条件は、O、NまたはFが窒化物半導体層20には到達せず、窒化シリコン膜26のSi−H結合が残存する領域に導入できるように、適宜設定することができる。
【0049】
図1(d)のように、窒化シリコン膜26を形成する工程後かつプラズマ処理工程前に、窒化シリコン膜26を窒化シリコン膜26を形成する温度より50℃以上高い温度で熱処理する。これにより、Si−HのHを脱離させることができる。なお、
図7のように、熱処理を行わなくてもSi−H結合をSi−O結合に置換することは可能である。
【0050】
窒化シリコン膜26を成膜後、TDS(Thermal Desorption Spectrometry)法を用い熱処理とH脱離の関係を調べた。
図9は、窒化シリコン膜の温度に対する水素イオン強度を示す図である。
図9を参照し、窒化シリコン膜26の成膜温度は300℃である。熱処理温度が高くなるとHの脱離が多くなる。約700℃においてH脱離は飽和する。Hの脱離は成膜温度+50℃から始まる。よって、Hを脱離させるため、
図1(d)の熱処理温度は窒化シリコン膜26を形成する温度より50℃以上であることが好ましい。さらに、熱処理温度は、成膜温度より100℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。H脱離が飽和するため、熱処理温度は、成膜温度より400℃以下が好ましい。
【0051】
次に、実施例1の変形例について説明する。
図10(a)から
図12(b)は、実施例1の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図10(a)を参照し、
図1(a)と同様に基板10上に窒化物半導体層20を形成する。
図10(b)を参照し、窒化物半導体層20上に屈折率が2.2以上の窒化シリコン膜26を形成する。窒化シリコン膜26の形成方法は
図1(c)と同じである。
図10(c)を参照し、窒化シリコン膜26を熱処理する。熱処理条件等は
図1(d)と同じである。
図10(d)を参照し、窒化シリコン膜26表面をO、N、およびFの少なくとも一つを含むプラズマに曝す。プラズマ処理条件等は
図2(a)と同じである。
【0052】
図11(a)を参照し、
図1(b)と同様に、フォトレジスト50を形成する。窒化シリコン膜26に開口を形成し、開口内にソース電極22およびドレイン電極24を形成する。ソース電極22およびドレイン電極24の形成条件等は
図1(b)と同じである。
図11(b)を参照し、ソース電極22、ドレイン電極24および窒化シリコン膜26上に絶縁膜36を形成する。絶縁膜36は、例えば膜厚が50nm、屈折率が2.2より小さく化学量論的な組成に近い窒化シリコン膜である。
図11(c)を参照し、
図2(b)と同様にゲート電極28を形成する。
【0053】
図12(a)を参照し、
図2(c)と同様に絶縁膜30を形成する。
図12(b)を参照し、
図2(d)と同様にソース配線32およびドレイン配線34を形成する。
【0054】
実施例1のように、ソース電極22およびドレイン電極24を形成する工程を、プラズマ処理工程の前に実施してもよい。実施例1の変形例のように、ソース電極22およびドレイン電極24を形成する工程を、プラズマ処理工程の後に実施してもよい。
【実施例3】
【0058】
実施例3は、窒化シリコン膜に元素を拡散により導入する例である。
図14(a)から
図14(c)は、実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図14(a)を参照し、
図1(a)から
図1(c)の工程を行なう。窒化シリコン膜26を熱処理する。熱処理条件は
図1(d)と同じである。
図14(b)を参照し、窒化シリコン膜26上にSe膜38を形成する。Se膜38は、例えば膜厚が3nmであり、スパッタ法を用い形成する。
図14(c)を参照し、熱処理することにより、Se膜38のSeを窒化シリコン膜26内に熱拡散させる。熱処理温度は例えば400℃である。
【0059】
実施例3によれば、プラズマ処理の変わりに拡散処理することにより、窒化シリコン膜26内にSeを導入できる。これにより、実施例1と同様にドレイン電流の変動を抑制できる。拡散条件は、Seが窒化物半導体層20には到達せず、窒化シリコン膜26のSi−H結合が残存する領域に導入できるように、適宜設定することができる。
【0060】
ソース電極22およびドレイン電極24を形成する工程を、拡散処理工程の前に実施してもよい。実施例1の変形例のように、ソース電極22およびドレイン電極24を形成する工程を、拡散処理工程の後に実施してもよい。
図1(d)の熱処理は行わなくてもよい。
【0061】
実施例1から3のように、窒化シリコン膜26にO、N、F,P、SおよびSeの少なくとも一つからなる元素を導入する工。また、これらの元素が導入された窒化シリコン膜26は、半導体装置を製造した後においても窒化物半導体20上に残存する。すなわち、これらの元素が導入された窒化シリコン膜26は除去されない。これにより、ドレイン電流の変動を抑制できる。
【0062】
これらの元素の導入は、実施例1のように導入する元素を含むプラズマに曝すことにより行なってもよい。また、実施例2のように、導入する元素をイオン注入することにより行なってもよい。さらに、導入する元素を熱拡散することにより行なってもよい。
【0063】
Si−HのHを脱離させるため、元素を導入する前に、窒化シリコン膜26が設けられた窒化物半導体層20に熱処理を実施することが好ましい。熱処理温度は、窒化シリコン膜26の成長温度よりも50℃以上高いことが好ましい。
【0064】
実施例1の変形例のように、元素を導入する工程の前または後に窒化物半導体層20にオーミック接触する電極を形成することができる。
【0065】
窒化シリコン膜26は、電界効果トランジスタのゲート電極28とドレイン電極24の間の領域に設けられている。これにより、ドレイン電流の変動を抑制できる。
【0066】
さらに、
図2(c)のように、窒化シリコン膜26上に、2.2より小さい屈折率を有する窒化シリコンからなる保護膜(絶縁膜30)を形成することができる。
【0067】
ドレイン電流の変動を抑制するため、窒化シリコン膜26は、窒化物半導体層の表面に接して形成されていることが好ましい。
【0068】
また、元素は、窒化シリコン膜26の全面に導入することが好ましい。
【0069】
実施例1から実施例3において、窒化物半導体層11は、例えばGaN、InN、AlN、AlGaN、InGaN、AlInNおよびAlInGaNの少なくとも一つの層を含めばよい。
【0070】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。