特許第6106912号(P6106912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6106912
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】保険比較システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/08 20120101AFI20170327BHJP
【FI】
   G06Q40/08
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-240575(P2016-240575)
(22)【出願日】2016年12月12日
【審査請求日】2016年12月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515114418
【氏名又は名称】長嶺 恒雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 恒雄
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5863137(JP,B1)
【文献】 特開平11−175610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
死亡時に受け取るべき保険金以外で手元にある財産を認識する手元財産額認識部と、
保険解約時に入るべき受取金を算出する受取金算出部と、
前記保険金を算出する保険金算出部と、
相続発生時の遺産総額を算出する遺産総額算出部と、
相続人全員の課税対象総額を算出する課税対象総額算出部と、
前記相続人個々の課税対象額を算出する課税対象額算出部と、
前記相続人全員の相続税総額を算出する相続税総額算出部と、
前記相続人全員の納税総額を算出する納税総額算出部と、
異なる保険を基に算出した前記納税総額の差額を算出する納税総額差額算出部と、
前記相続人全員の納税後総財産を算出する納税後総財産算出部と、
異なる保険を基に算出した前記納税後総財産の差額を算出する納税後総財産差額算出部と、
前記納税総額の差額と前記納税後総財産の差額の和を算出する総計差額算出部とを備えたことを特徴とする保険比較システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者の側から保険を比較できる保険比較システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生命保険の法人契約として、定期保険と終身保険が知られているが、保険会社の販売攻勢により、圧倒的多数の法人契約で定期保険が用いられていて、その割合は90%を超えていると思われる。定期保険も終身保険も、保険会社が作成する保険設計書に契約後における経過年数に応じた払込保険料や解約時払戻金等の情報が記載されている。
【0003】
法人契約に活用する定期保険について、以下の問題点を指摘することができる。
(1)払込保険料の損金算入による法人税軽減の効果
「保険設計書」において、払込保険料の一定割合について、損金算入が可能であるために、その分の課税評価額を引き下げることができて、結果的に「法人税を軽減することができる」と説明しているが、企業にとって、損金算入が可能であるためには利益を得ていることが前提であるが、そのことが十分に説明されていないために、企業の経営実態に照らして「保険設計書」に記載されたとおりに「法人税の軽減効果」が得られているかどうか検証してみる必要がある。その理由は企業の経営状態が「赤字」のときや、利益よりも払い込んだ保険料のほうが多い場合は損金算入ができないために企業側が、法人税の軽減効果が、どの程度得られているか検証する必要があるためである。
【0004】
(2)実質保険料負担に対する解約金割合の確認
前記で検証した法人税の軽減効果をもとに、実際に払い込んだ保険料から法人税軽減額を差し引くことで実質保険料が算出できるために、実質保険料に対する解約金割合を算出することができる。
【0005】
(3)保険期間における死亡率の確認
保険に加入する際に保険期間を通じた「死亡率」を理解することは、加入者にとって必要不可欠であるが、実際の死亡率を理解している加入者は皆無の状態である。参考までに5年ごとに実施される国勢調査に基づいた「完全生命表」による「30歳〜60歳」までの死亡率は7.5%程度である。したがって、30歳で加入した人が100,000人の場合、30歳〜60歳までに7,500人が死亡して、残りの92,500人が60歳に達した時点で生存していることになる。その場合、60歳の時点で生存している加入者92,500人が払い込んだ保険料は、すべて「掛け捨てた」ことになって、失われるのが定期保険の特性である。
【0006】
定期保険の特性が、以上のようなものであることから、その点を理解して適正に活用されるならば問題ないが、極端に保障重視に偏った活用(過大な保険金加入)をした場合は、それに伴う保険料コストを負担することになるために、その点を理解する必要がある。
定期保険はメリットとデメリットの両方を併せもっている。定期保険の最大のメリットは、保険料が「掛け捨て」であるために同じ保険金額で比較したときに払込保険料が安いことである。とはいうものの極端に高額な保険に加入した場合は、それに伴う保険料コストが増大することになる。また、法人企業が契約者となって、定期保険に加入した場合、赤字経営に陥ったり、当初予定した利益が得られない場合は保険料を損金算入することができないために、法人税を軽減する効果を得ることができない。
【0007】
法人契約として、定期保険を活用することが問題なのは、将来、企業役員が勇退する際の退職金原資として、定期保険の解約金を当てることを保険会社が推奨していることである。そのことは、企業役員が定年退職した後(それ以降において、死亡リスクが高まることが明らかな時期=加齢に伴い「死亡率」が高まるために「保険を頼りにするべき時期」)に掛け替えのない保険を失うことに対する「問題意識」が欠如していることである。
これが加入者にとって「最大のデメリット」であるにもかかわらず、保険会社は、そのことに全く触れないために、加入者は、そのことに気付くことができずにいるのである。
そのことは、保険会社にとっては「好都合」であるが、加入者にとっては、この上なく「不都合」なことであり、不幸なことと言わざるを得ない。
【0008】
また、加入者が、定期保険と終身保険の特性の違いを正しく理解していないことは問題である。それは個人契約も同じであるが、法人契約のほうが個人契約よりも顕著である。
日本が金融破綻する以前は、終身保険の保険金が1000万円以上のものを保険業界では「お宝保険」と称して、その価値を共有して認めていた。
その理由は、終身保険は定期保険のような掛け捨てとは違って貯蓄性の高い保険だからである。しかしながら、保険会社が財政破綻したことで「お宝保険」の多くが失われてしまったのである。過去に存在した「お宝保険」は、保険会社が財政の立て直しを図るために実施した転換契約の犠牲になって切り崩されてしまい、その後、保険会社が新たに「お宝保険」を勧めることが殆んど無くなったのである。
【0009】
保険会社が法人企業に対して熱心に勧める定期保険は、保険会社だけは当初予定したとおりに利益を得ることができるのに対して、加入者である法人企業は、赤字経営に陥った場合は、保険料を損金計上することができないために法人税の軽減効果は得られないために、その点について、加入者である法人企業の側から改めて検証してみる必要がある。
【0010】
出願人は過去に相続税を絡めた保険の決定について特許権を取得している(特許文献1)が、さらに異なる保険種類の特性比較について、利便性を高めることに尽力している。また、保険契約ごとにその手続きに関する情報を把握するためのシステムとしては特許文献2に記載がある。しかしながら、特許文献2は相続税納付後の財産まで考慮して保険内容を把握することについては記載も示唆もない。後述するように、本発明の要件である相続税総額算出部の算出結果を用いて納税総額算出部にて納税額を算出し、納税後総財産算出部を用いて結果として当該保険を選択したときの納税後の総財産がいくらであるかを比較するという思想について、特許文献2やこれと周知技術との組み合わせからは容易に想到できるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5863137号公報
【特許文献2】特開2008−146338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の従来技術を考慮したものであり、保険の特性を表して容易に二以上の保険を比較することができ、適切な保険選択の一助とすることができる保険比較システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明では、死亡時に受け取るべき保険金以外で手元にある財産を認識する手元財産額認識部と、保険解約時に入るべき受取金を算出する受取金算出部と、保険金を算出する保険金算出部と、相続発生時の遺産総額を算出する遺産総額算出部と、相続人全員の課税対象総額を算出する課税対象総額算出部と、前記相続人の個々の課税対象額を算出する課税対象額算出部と、前記相続人の全員の相続税総額を算出する相続税総額算出部と、前記相続人全員の納税総額を算出する納税総額算出部と、異なる保険を基に算出した前記納税総額の差額を算出する納税総額差額算出部と、前記相続人全員の納税後総財産を算出する納税後総財産算出部と、異なる保険を基に算出した前記納税後総財産の差額を算出する納税後総財産差額算出部と、前記納税総額の差額と前記納税後総財産の差額の和を算出する総計差額算出部とを備えたことを特徴とする保険比較システムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保険の特性を表して容易に二以上の保険を比較することができ、適切な保険選択の一助となる資料を提供することができる。すなわち、相続税納付後の相続人全員の総財産を基準にして異なる保険を比較することができるようになる。これにより、相続人の納税後の総財産額を確認して保険を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る保険比較システムの概略図である。
図2】定期保険の試算表の例である。
図3】終身保険の試算表の例である。
図4】比較表の例である。
図5】入力画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、加入者の立場で適切な保険加入を検証するために以下について、はっきりさせておく必要があることが出発点となった。まずは、企業にとってメリットの検証手順である。法人契約をした後、数年が経過している場合、過去を通算した「損金計上額×実効税率」の平均を算出して、それを基に将来の法人税の節税見込額を計算する方法と、それとは別に企業の過去の実績を基に新たに(任意で)現在以降の法人税の節税見込額を算出する方法の二通りが考えられる(どちらか一方を選択する)。
【0017】
そして、「契約後〜解約予定日まで」と「現在以降〜解約予定日まで」の2パターンについて「節税効果」を予測する。「現在以降〜解約予定日まで」の節税効果が特に重要である。この作業により、実際に払い込む保険料から税効果を差し引いて「実質保険料」を求めることができる。それを基に実質保険料に対する「解約金割合」を算出する。そして、実質保険料と解約金の差額(正味保険料コスト)を算出する。定期保険では、いつ起こるか予測できない相続対策のためには「不適合である」ことを理解する必要がある。
【0018】
以上の流れを実現するため、本発明に係る保険比較システム1は以下のような構成となっている。まず、手元財産額認識部2を備えている。ここでは、保険料以外で手元にある財産が認識される。この額は加入者の申告等により入力される。入力された値はシステム1内の記憶部(不図示)に記憶される。手元財産としては、例えば加入者が所有する土地や建物、現金、有価証券等がある。そして、受取金算出部3を備えている。ここでは、保険解約時に入るべき受取金が算出される。定期保険であればこの受取金が解約金となる。終身保険であれば、この受取金は将来の相続発生時を視野に入れて保険金受け取りに関する非課税分(500万円×相続人の数)を温存して、その分を差し引いた分の保険金(3900万円=5400万円−1500万円)を減額することで支払われる解約金相当額3181万円={約4405万円×(5400万円−1500万円)÷5400万円}をもって受取金(退職金)とする。
【0019】
そして、保険金算出部4を備えている。ここでは、死亡時に受け取るべき保険金が算出される。この保険金は前述した終身保険等の死亡時の保険金が該当する。システム1はこの値を後述する試算表から取り出し、記憶する。終身保険について、ここまで考慮して提案することで正確なデータを提供できることに寄与する。ここまでで入力あるいは算出された額の和(手元財産額認識部2と受取金算出部3と保険金算出部4とで算出された額の和)は、加入者が死亡して相続が発生したときの遺産総額となる。遺産総額は遺産総額算出部5にて算出される。
【0020】
保険比較システム1は、さらに課税対象総額算出部6を備えている。ここでは、相続人全員分の課税対象総額が算出される。具体的には、遺産総額算出部5にて算出された遺産総額から、保険料算出部4にて算出された保険料と基礎控除として予め設定された値を差し引いた額を算出する。そして、課税対象額算出部7を備えている。ここでは、相続人の個々の課税対象額が算出される。具体的には、相続人のそれぞれに対して上記課税対象総額における各相続人に対して予め設定された割合を考慮して算出される。各相続人のそれぞれの割合は予めシステム1内に記憶されている。
【0021】
そして、相続税総額算出部8を備えている。ここでは、相続人の全員分の相続税総額が算出される。具体的には相続人それぞれに対しての相続税を個々に算出し、これらの和が算出される。相続税の個々の算出は、課税対象額算出部7で算出された各相続人の課税対象額から各相続人の相続税が算出されることで行われる。これらの和が相続税総額となる。
【0022】
保険比較システム1は、さらに納税総額算出部9を備えている。ここでは、相続人の全員分の納税総額が算出、すなわち実際に納付されるべき納税額が算出される。上記相続税総額算出部8で算出された相続税の総額に対し、各相続人がこの値から実際に納税すべき額が算出される。具体的には各相続人に対して割り当てられた割合を相続税総額に乗ずることで行われる。この割合はシステム1内に予め設定されている。
【0023】
そして、納税総財産算出部10を備えている。ここでは、相続人の全員分の納税後の総財産が算出される。納税総額算出部9、及び納税総額算出部10にて算出された額は、それぞれ異なる保険ごとに算出される。この保険は、加入者が加入を検討している保険についてそれぞれ算出される。本発明では、この保険については二以上であることが必須である。
【0024】
そして、保険比較システム1はこれらの異なる保険を基に算出した納税総額の差額を算出する納税総額差額算出部11と、納税後総財産の差額を算出する納税後総財産差額算出部12を備えている。
【0025】
これらで算出された、それぞれの差額(納税総額の差額と納税後総財産の差額)は、その和が総計差額算出部13にて算出される。この総計差額を参照することで、加入を検討している人は、いずれの保険に加入すべきか決定できるようになる。すなわち、保険の特性を表して容易に二以上の保険を比較することができ、適切な保険選択の一助となる資料を提供することができる。したがって、相続税の納付後における相続人全員の総財産を基準にして異なる保険を比較することができるようになる。これにより、相続人の納税後における総財産額を基準にして保険を選択できる。上記で得られた、それぞれのデータや数値は、適宜システム1内の表示部14を介して画面上に出力される。このように、将来受け取る額として見込まれる解約金について、相続税まで考慮してシステム内に組み込んだ算出部を用いて、より有利な保険を提示することは、本発明の最大のメリットである。
【0026】
以下、本発明に係る保険比較システム1を用いて実際に保険を比較する際の流れを説明する。例えば加入や切り替えを検討している対象が、定期保険と終身保険だったとする。加入検討者の相続人は3人であると仮定する。
【0027】
定期保険については以下の条件のものを対象とした。
「保険加入年齢50歳」長期定期保険:98歳満了(1/2損金計上 1/2資産計上)
月払保険料 243,900円(65歳で解約予定)
65歳までの保険料合計 43,902,000円 (1)
65歳時の解約金 35,829,000円(解約金割合81.6%)(2)
65歳までの損金算入額の合計 21,951,000円(243,900円×1/2×12カ月×15年)
65歳までの法人税額軽減予想 7,098,945円(243,900円×1/2×32.34%×180か月)(3)
65歳までの実質保険料(予測) 36,803,055円{((1)−(3))}
実質保険料(予測)に対する解約金割合 35,829,000円/36,803,055円=97%
「50歳〜65歳」の保険料予測(掛け捨て分)974,055円(1ヶ月あたり5,400円)
【0028】
上記の数値は、図2に示すような保険会社から提供される資産表に表示される。なお、付言すると上記の計算は保険会社が提案したとおりに「15年間にわたって毎年利益が出続けた場合」であるために企業にとって、この通りになることが保証されたものではない。
【0029】
保険比較システム1は、試算表やその他の入力値から以下を導き出す。まずは加入検討者や保険会社員からの入力により手元財産額認識部2は加入者の65歳時の財産を「65歳時財産(課税価格):1億円(保険契約を除いた分)」と認識する。そして保険料算出部4は「定期保険:65歳時解約金 3,583万円」のデータを試算表から取り出す。なお、定期保険であるため保険料から減額する受取金(退職金)という概念がないため、受取金算出部3は作動しない。これらの結果から、遺産総額算出部5は加入者の遺産が「遺産額合計:1億3,583万円」であると算出する。
【0030】
ここで一旦、システム1内の演算部15は、一次相続予想を行う。相続人3人(配偶者と子ども2人)であり、相続財産が1億3,583万円(課税価格に変化がない前提であり、退職金の納税額は考慮せず)であるため、以下を導く。配偶者や子供の割合は予めシステム1内に設定されている。
配偶者の相続分 :1億3,583万円×1/2=6,791万円
子ども1の相続分 :1億3,583万円×1/4=3,396万円
子ども2の相続分 :1億3,583万円×1/4=3,396万円
【0031】
次に、課税対象総額算出部6は、課税対象総額が8,783万円であると算出する。これは、遺産総額である1億3,583万円から基礎控除の4,800万円(基礎控除)を差し引いて行われる。次に、課税対象額算出部7は、相続人ごとに課税対象額を算出する。具体的には、課税対象総額からそれぞれの負担割合をもとにして算出する。
相続人の課税対象額
配偶者 :8,783万円×1/2=4,391万円
子ども1 :8,783万円×1/4=2,196万円
子ども2 :8,783万円×1/4=2,196万円
【0032】
次に、相続税総額算出部8が、まず相続人個々の相続税を算出し、これの和である相続税総額を算出する。
配偶者 :4,391万円×20%−200万円=678万円
子ども1 :2,196万円×15%− 50万円=279万円
子ども2 :2,196万円×15%− 50万円=279万円
相続税総額:678万円+279万円+279万円=1,236万円
【0033】
次に、納税総額算出部9がまず相続人個々の納税額を算出し、これの和である納税総額を算出する。
配偶者 :1,236万円×1/2=618万円(納税額0円:税額軽減により納税免除)
子ども1 :1,236万円×1/4=309万円
子ども2 :1,236万円×1/4=309万円
相続人の納税額合計: 618万円(309万円×2)
【0034】
次に、納税後総財産算出部10がまず相続人個々の納税後の財産を算出し、これの和である納税後の総財産を算出する。納税後の財産は相続分から納税額を差し引いた額である。
配偶者 :6,791万円(6,791万円−0)
子ども1 :3,087万円(3,396万円−309万円)
子ども2 :3,087万円(3,396万円−309万円)
相続人の納税後の財産額合計: 1億2,965万円=6,791万円+3,087万円+3,087万円
【0035】
つまり、システム1は、相続人の納税後の総財産は1億2965万円であると算出する。
【0036】
終身保険については、以下の条件のものを対象とした。
「保険加入年齢50歳」低解約終身保険:65歳払済(全額資産計上)
月払保険料 242,784円(65歳で解約せず)
65歳までの保険料合計 43,701,120円 (1)
65歳時の解約金 30,553,740円(解約金割合69.9%)(2)
66歳時の解約金 44,049,420円(解約金割合100.7%)(3)
65歳までの損金算入額 0円 (4)
65歳までの資産計上額 43,701,120円 (5)
65歳までの法人税額軽減予想 0円 (6)
65歳までの実質保険料 43,701,120円{((1)−(6))}
実質保険料(予測)に対する解約金割合 44,049,420円/43,701,120円=100.7%
「50歳〜65歳」の保険料(掛け捨て分)△348,300円(1ヶ月あたり△1,935円)
【0037】
上記の数値は、図3のような保険会社から提供される試算表に表示される。
【0038】
保険比較システム1は、試算表やその他の入力値から以下を導き出す。まずは加入検討者や保険会社員からの入力により手元財産額認識部2は加入者の65歳時の財産を「65歳時財産(課税価格):1億円(保険契約を除いた分)」と認識する。そして加入者の希望により「66歳時に終身5,400万円のうち、1,500万円を温存して残りの3,900万円分を減額して退職金に当てる)という要望を受け付けると、受取金算出部3は退職金として割り当てられるべき受取金を算出する。ここでは、減額により支払われる解約金が受取金となる(3,180万円=44,049,420円(66歳時の解約時払戻金)×(5,400万円−1,500円万)÷5,400万円)。そして、保険料算出部4は66歳時解約金としての保険料を1,500万円(温存分)として算出する(5,400万円−3,900万円)。これらの結果から、遺産総額算出部5は加入者の遺産が「遺産額合計:1億4,680万円」であると算出する。
【0039】
ここで一旦、システム1内の演算部15は、一次相続予想を行う。相続人3人(配偶者と子ども2人)であり、相続財産が1億3,180万円(課税価格に変化がない前提であり、退職金の納税額は考慮せず)であるため、以下を導く。
配偶者の相続分 :1億3,180万円×1/2+保険金1,500万円=8,090万円
子ども1の相続分 :1億3,180万円×1/4=3,295万円(保険金受取は配偶者のみ)
子ども2の相続分 :1億3,180万円×1/4=3,295万円(保険金受取は配偶者のみ)
【0040】
次に、課税対象総額算出部6は、課税対象総額が8,380万円であると算出する。これは、遺産総額である1億4,680万円から温存する1,500万円(非課税保険金)、基礎控除の4,800万円(基礎控除)を差し引いたものである。次に、課税対象額算出部7は、相続人ごとに課税対象額を算出する。具体的には、課税対象総額からそれぞれの負担割合をもとにして算出する。
配偶者 :8,380万円×1/2=4,190万円(納税額0円:税額軽減により納税免除)
子ども1 :8,380万円×1/4=2,095万円
子ども2 :8,380万円×1/4=2,095万円
【0041】
次に、相続税総額算出部8が、まず相続人個々の相続税を算出し、これの和である相続税総額を算出する。相続税は、各相続人の課税対象額に対して各相続人に予め設定された税率を乗じ、ここから各相続人に予め設定された控除額を差し引くことで算出される。これらの税率及び控除額は予めシステム1内に設定されている。
配偶者 :4,190万円×20%−200万円=638万円
子ども1 :2,095万円×15%− 50万円=264万円
子ども2 :2,095万円×15%− 50万円=264万円
相続税総額:638万円+264万円+264万円=1,166万円
【0042】
次に、納税総額算出部9がまず相続人個々の納税額を算出し、これの和である納税総額を算出する。
配偶者 :1,166万円×1/2=582万円(納税額0円:税額軽減により納税免除)
子ども1 :1,166万円×1/4=292万円
子ども2 :1,166万円×1/4=292万円
相続人の納税額合計584万円(292万円×2)
【0043】
次に、納税後総財産算出部10がまず相続人個々の納税後の財産を算出し、これの和である納税後の総財産を算出する。納税後の財産は相続分から納税額を差し引いた額である。
配偶者 :8,090万円(8,090万円−0)
子ども1 :3,003万円(3,295万円−292万円)
子ども1 :3,003万円(3,295万円−292万円)
相続人の納税後の財産額合計:1億4,096万円=8,090万円+3,003万円+3,003万円)
【0044】
つまり、システム1は、相続人の納税後の総財産は1億4096万円であると算出する。
【0045】
二以上の保険について、以上まで算出されると、まずは納税総額差額算出部11が互いの納税総額の差額を算出する。さらに、納税後総財産差額算出部12が互いの納税後の総財産額の差額を算出する。
「定期保険」と「終身保険」の相続税の差額:34万円=618万円−584万円
相続人の納税後の財産の差額:1,131万円=1億4,096万円−1億2,965万円
【0046】
これにより、総計差額算出部は、上記の結果の和が互いの保険に加入した際の総計差額(相続対策まで視野に入れた場合の「定期保険」と「終身保険」の合計差)を算出すると右記のとおりである。 11,650,000円=1,131万円+34万円
【0047】
そしてこの結果は、保険比較システム1が作成する比較表(図4参照)に表示される。比較表への出力は、保険比較システム1内の表示部14にて行われる。この表内の数値は、図2図3のような試算表、あるいは保険比較システム1内で算出された結果を基に表示される。これを参照することでどの保険が自分にとって有利であるかを認識できる。比較表には、例えば死亡時の保険料や、払込期間合計での総払込額、解約金や、総払込額に対する解約金の割合、払い済み時点の掛け捨て分等、適宜参考にしやすいデータが表示される。ただし、最も重要なのは両保険の総計差額(相続税納税後の相続人全員の総財産額の差)である。これが表示されることで容易に保険の選択を行うことができることになる。
【0048】
図5に示すように、インターネットのホームページ上に入力画面16を用意すれば利用者にとっても便利である。この入力画面16はシステム1に組み込まれていて、表示部14により表示される。なおこの画面には、例えば保険証券を預かった保険会社や保険コンサルタントが入力してもよい。画面16には、手元財産入力部17が表示されている。ここに入力された値は、手元財産認識部2によって記憶される。画面16には、生年月日入力部18、現在の満年齢入力部19、契約時の年齢入力部20が配されている。契約時の年齢入力部20には、現在加入している保険がある場合のみ入力される。
【0049】
画面16には、払込期間入力部21が配されている。ここには、何歳まで払ったかを予め利用者等が決定して入力する。このために、期間を直接入力してもよいし、何歳までという年齢を入力させて生年月日入力部18の値を基に期間を割り出してもよい。この値は保険金算出部4に記憶され、保険金算出部4は試算表から該当期間での保険金を取り出す。
【0050】
画面16には、保険金入力部22が配されている。この値は、受取金算出部3に記憶され、この値から上述した受取金が算出される。画面16には、その他種々の情報を入力させてもよい。例えば、解約時までの実質保険料を表示するために月額保険料入力部23を配してもよい。年払いや半年払いのときは月額平均で入力させてもよいし、自動的に平均値を算出させてもよい。このほか、解約払戻金を年ごとに入力するボックスを設けてもよいし、加入者の性別を入力するボックスを設けてもよい。
【0051】
なお、本発明はどのような保険の比較にも適用可能であるが、特に定期保険よりも終身保険のほうが、メリットが大きいことを加入検討者に理解して欲しいときに特に好適に利用できる。理由は「定期保険」と「終身保険」の特性比較表(試算表)で、定期保険は65歳で「解約」して退職金に当てるのみで、それ以外の選択肢がないのに対して、終身保険は66歳で全部解約することも可能だが、全部解約するのではなく保険金を案分する形で一定割合を「減額」することで支払われる解約金を「退職金」として受け取って、残りの保険金を将来の相続対策のために温存することが可能である。そうすることで、終身保険を次のように有効活用することができる。
【0052】
65歳で勤務先を勇退する際に退職金の代わりに(または一部として)法人契約の終身保険の契約者を「法人」から「個人」へ名義変更して現物支給を受ける。その際の評価額は「解約金相当額」である。65歳で保険契約の現物給付を受けた役員は、その1年後の66歳時に解約金が大幅(13,495,000円)に増加するために66歳以降に、将来の「相続対策」を視野に入れて終身保険1500万円(法定相続人3人×500万円)を残した状態にして残余の3,900万を減額することで終身保険の解約金3,180万円を受け取ることができる。それを「退職金」とすることで「退職所得控除」の適用を受けることができる。
【0053】
一方、企業側のメリットは、役員が「50歳〜65歳まで」払い込んだ保険料の全額(43,701,120円)を資産計上したことにより、役員が65歳で退職する時点の解約金は低解約金30,553,740円であるために、その年において13,147,380円(43,701,120円−30,553,740円)の差損が生じることになり、それを損金として計上することにより4,251,860円(実効税率32.34%として)法人税を軽減することができる。そのために、企業側は役員が退職する年度に合わせて損金計上する分を吸収できる程度の利益が出るように計画することが望ましい。
この時点で「定期保険」は解約されているために用を為さないが、終身保険であれば、その後、さらに「相続発生時」に効果を発揮することになる。
【0054】
前記の計算結果からも明らかなように、日本の保険会社が不当に高い収益を得るために「定期保険に偏った販売」をしたために、加入者は、終身保険の特性を理解するための適正な説明を受けることができなかったことで、これほど大きな保険利益を失っている疑いがある。
【0055】
発明者の思いをさらに詳述する。日本の保険会社が、このような状態を続けることができたのは、きわめて特異なことで世界にも例がない。日本の保険市場においてのみ、そのようなことが可能であったのは、国内の生保市場が歴史的に長く閉鎖されていたことで「加入者の利益に配慮した適正な競争が行なわれなかった」ことが原因であると考えられる。長くこのような保護政策が執られたことで、保険会社は保険知識のない加入者から僅かなクレームさえ、殆んど受けずに済んで、不当に高い収益を得ることに専念できたのである。
そのようなことは、日本以外の生保市場には有り得ないことであり「誰のための保険加入なのか」という「根本的問題」が指摘されるべきある。
今後のTPP条約の成り行き如何で、さらに多くの外資系保険会社の国内生保市場への参入が予想される中で、詳述したように、日本の生保市場が旧態依然であり続ける限り、加入者の利益が保護される見込みがないことは明らかである。
それは、外形は「加入者のための保険」を装って、その内実は「加入者が利益にあずかることが、きわめて難しい保険が営営と販売されてきた」ことであると理解するべきである。
そもそも、保険が必要であることの意義は「ひとりの人間が、この世に誕生して、その人が、この世を去るまでの間“終身にわたって”保障されるべきもの」である。そのことが正しく理解されて実現されたならば、おのずと「相続対策」にも生命保険(終身保険)が寄与することになるのである。
保険会社は、そうした真に加入者の利益に繋がる提案ができてこそ、存在する意義があるが、実態は、それとは大きく乖離した現状である。
そのような問題が指摘される中で、個人と法人とを問わず、一般の人々が、保険に加入する際に保険会社の営業担当者に勧められて加入するのではなく、加入者が、自らの自由な意思による価値判断で「財産価値の高い保険」を選択するために客観的事実に基づいた情報提供を受けることが不可欠であるにも関わらず、そのようなものが現在に至るまで提供されて来なかったのは事実である。
今回の発明は、その点に関して、法人契約に止まらず、個人契約についても、根本的な問題の解決策を示すものであるから、加入者の利益に資するものであり、社会へもたらす影響と効果は計り知れないと考える。
【符号の説明】
【0056】
1:保険比較システム、2:手元財産額認識部、3:受取金算出部、4:保険料算出部、5:遺産総額算出部、6:課税対象総額算出部、7:課税対象額算出部、8:相続税総額算出部、9:納税総額算出部、10:納税後総財産算出部、11:納税総額差額算出部、12:納税後総財産差額算出部、13:総計差額算出部、14:表示部、15:演算部、16:入力画面、17:手元財産入力部、18:生年月日入力部、19:満年齢入力部、20:契約時の年齢入力部、21:払込期間入力部、22:保険金入力部、23:月額保険料入力部
【要約】
【課題】保険の特性を表して容易に二以上の保険を比較することができ、適切な保険選択の一助とすることができる保険比較システムを提供する。
【解決手段】保険比較システム1は、手元財産額認識部2と、受取金算出部3と、保険料算出部4と、遺産総額算出部5と、課税対象総額算出部6と、課税対象額算出部7と、相続税総額算出部8と、相続人の全員の納税総額を算出する納税総額算出部と、異なる保険を基に算出した納税総額の差額を算出する納税総額差額算出部と、相続人の全員の納税後総財産を算出する納税後総財産算出部と、異なる保険を基に算出した納税後総財産の差額を算出する納税後総財産差額算出部と、納税総額の差額と納税後総財産の差額の和を算出する総計差額算出部とを備えている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5