(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係る微細ノズルの製造方法を図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る微細ノズルの製造方法を
図1の(a),(b),
図2の(c)、(d)を参照して説明する。
【0017】
まず、
図1の(a)に示すように矩形板状の非弾性体1表面に同形状の弾性体2を設置する。弾性体2上に被処理物である樹脂体3を配置する。このような積層体を加熱体、例えばホットプレート4上に設置する。また、上下動が可能な微細針5を樹脂体3の上方に配置させる。
【0018】
非弾性体1は、任意の材料から形成され、例えばシリコン、金属、セラミック、樹脂から形成できる。非弾性体1の表面は、平坦性が高いものが好ましい。非弾性体1は、ホットプレート4からの熱を非弾性体2を通して樹脂体に伝達し、その樹脂体3を加熱する場合、非弾性体1の材料は熱伝導性が高い、例えば金属から形成することが好ましい。
【0019】
弾性体2は、ゴム硬度が50以下である。ここで、弾性体のゴム硬度はJIS K6253(2006)の国際ゴム硬さで定義される。弾性体2のゴム硬度が50を超えると、後述する微細針の穿刺時に微細針が弾性体2に十分な深さで差し込まれず、所期形状を持つ微細ノズルを製造することが困難になる。より好ましい弾性体2のゴム硬度は、10〜50である。このようなゴム硬度を有する弾性体2は、例えば天然ゴム、アクリルゴム、二トリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレン等から形成することができる。なお、弾性体2は樹脂体3の軟化温度よりも高い耐熱温度を有することが好ましい。弾性体2の耐熱温度が樹脂体3の軟化温度以下であると、微細ノズルを製造することが困難になる。
【0020】
弾性体2は、後述する微細針の穿刺時における穿刺深さより厚い、例えば1〜10mmにすることが好ましい。
【0021】
樹脂体3は、フィルム、シート、板を挙げることができる。樹脂体3は、溶融状態または溶媒で溶解して粘度が高い状態で弾性体2上に配置してもよい。
【0022】
樹脂体3は、任意の樹脂から形成できる。樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリブチレンサンクシネート、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンサクシネート、トリメチレンカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、セルロース、キトサン、でんぷんから選択することができる。また、樹脂は、複数種の樹脂の混合物であっても、ポリ乳酸グリコール酸共重合体のよう共重合体であってもよい。特に、樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。微細ノズルの用途によっては、樹脂は生体適合性材料であってもよい。
【0023】
微細針5は、先端が微細な錘形状に加工された針形状の金属またはセラミックから形成できる。微細針5は、穿刺時に折れることのない高強度の材料、例えば超硬合金であることが望ましい。超硬合金は、例えばタングステン、タンタルまたチタンなどの炭化物粉末を鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄属金属と焼結したもの、合金相に硬い炭化物を分散させたもの等を挙げることができる。
【0024】
微細針5は、先端の径が1〜1000μmであることが好ましい。先端の径を1μm未満にすると、微細針および製造する微細ノズルの強度が低下するおそれがある。他方、先端の径が1000μmを超えると、微細ノズルを製造することが困難となる。
【0025】
微細針5の先端角度は、5°〜90°であることが好ましい。先端角度を5°未満にすると、微細針および製造する微細ノズルの強度が低下するおそれがある。他方、先端角度が90°を超えると、微細ノズルを製造することが困難となる。より好ましい微細針5の先端角度は、5°〜20°である。
【0026】
次いで、
図1の(b)に示すようにホットプレート4を加熱して弾性体2上に配置した樹脂体3をその樹脂の軟化温度以上に加熱し、軟化ないし溶融する。ホットプレート4による加熱を継続(続行)しながら、上方の微細針5を軟化ないし溶融した樹脂体3に向けて穿刺する。このとき、微細針5は軟化ないし溶融した樹脂体3を貫通して弾性体2に差込まれ、穿刺穴6が開口される。つづいて、微細針5を穿刺したまま、ホットプレート4による加熱を所望時間継続する。その後、ホットプレート4による加熱を停止し、微細針5を穿刺したまま、例えば空冷または水冷により冷却して樹脂を固化する。
【0027】
第1実施形態に係る微細ノズルの製造において、微細針5による穿刺時に樹脂体3を軟化温度以上に加熱すること、および樹脂体3および弾性体2に穿刺したまま加熱を継続することは重要な要素である。すなわち、これらの工程において軟化ないし溶融した樹脂体3から十分な量の樹脂が弾性体2の穿刺穴6と微細針5の間に導入されて、その後の冷却により樹脂体3と一体化して突出した微細ノズル7が形成される。また、微細針5先端の角度を鋭角にして前述した
図1の(b)に示す工程で微細針5先端を穿刺穴6の底部に位置させ、弾性体2の穿刺穴6と微細針5の間に溶融した樹脂を導入する際、微細針先端に溶融した樹脂が廻り込まないようにすることにより微細ノズルに貫通孔を形成する。その後、
図2の(c)に示すように固化した微細ノズル7を有する樹脂体3を微細針5と一緒に弾性体2から剥離し、微細針5を樹脂体3から抜き取る。これにより樹脂体3から突出し、貫通孔8を有する微細ノズル7が得られる(
図2の(d)図示)。
【0028】
穿刺時の微細針5から弾性体2への荷重は、0.01〜1kgfにすることが好ましい。
【0029】
微細針5先端部の弾性体2への差込み深さ(穿刺深さ)は0.5mm〜5mmにすることが好ましい。穿刺深さが前記範囲を外れると、微細ノズルを製造することが困難になる。
【0030】
微細針5の穿刺に要する時間は、1秒以内にすることが好ましい。
【0031】
穿刺したままの加熱継続は、加熱温度、樹脂の種類にもよるが、5秒〜3分間行うことが好ましい。
【0032】
なお、微細ノズルの製造後において微細ノズルと反対側の樹脂体3表面を平坦化するために、微細針の穿刺前に軟化ないし溶融した樹脂体表面にプレスを施してもよい。
【0033】
樹脂が光硬化性樹脂の場合には、光照射により樹脂を硬化してもよい。樹脂が水、アルコールなどの溶剤中に溶解させた場合には、加熱や真空引きで溶媒を揮発させて固化してもよい。
【0034】
前述した剥離工程では樹脂体を微細針と一緒に弾性体から剥離したが、例えば
図3に示すように弾性体2に微細ノズル7を形成した樹脂体3から微細針5を先に抜き取り、その後、樹脂体3を弾性体2から剥離してもよい。このような方法によれば、
図3に示す微細針を抜き取った微細ノズル7を有する樹脂体3を弾性体2と一緒に保管および輸送を行い、使用直前に樹脂体3を弾性体2から剥離することによって、外圧等により損傷し易い微細ノズル7を弾性体2で保護することができる。
【0035】
さらに、微細ノズルは例えば先端部の厚さが50μmの未貫通孔とすることもできる。この未貫通孔を、使用直前に微細ノズルの先端部を切断することにより貫通孔にしてもよい。
【0036】
以上説明した第1実施形態によれば、微細針5を樹脂体3を貫通して弾性体2に穿刺すること、穿刺時に樹脂体3を軟化温度以上に加熱すること、微細針5を樹脂体3および弾性体2に穿刺したまま加熱を継続すること、さらに微細針5を穿刺したまま軟化ないし溶融した樹脂体3を冷却することによって、従来のようにノズルの外側形状を凹凸反転させた微細な凹部を含む金型を用いる場合に比べて、加工が非常に容易で、かつ樹脂のはみ出しによるバリの発生が大幅に抑制でき、樹脂で作られた使い捨て可能で、樹脂体から突出された貫通孔8を有する微細ノズル7を簡便かつ安価に製造できる。
【0037】
なお、第1実施形態において、微細針5を樹脂体3を貫通して弾性体2に穿刺した後に、微細針5を樹脂体3および弾性体に穿刺したまま加熱を継続する工程は、任意工程とすることができる。ただし、用いる樹脂体の樹脂によっては、微細針5を樹脂体3および弾性体に穿刺したまま加熱を継続する工程を設けないと、安定的に貫通孔を有する微細ノズルを形成できない場合がある。樹脂材料の種類を問わずに微細ノズルを安定的に形成する観点から、微細針5を樹脂体3を貫通して弾性体2に穿刺した後に、微細針5を樹脂体3および弾性体に穿刺したまま加熱を継続する工程を設けることが好ましい。
【0038】
次に、第1実施形態に係る微細ノズルの別の方法を
図4を参照して説明する。
【0039】
まず、
図4の(a)に示すように、矩形板状の非弾性体1表面に同形状の弾性体2を設置する。弾性体2上に被処理物である樹脂体3を配置する。このような積層体を加熱体、例えばホットプレート4上に設置する。また、上下動が可能な微細針5を樹脂体3の上方に配置させる。このとき、微細針5は樹脂体3側(穿刺側)に平坦面を備える固定治具11に一体的に固定される。
【0040】
次いで、
図4の(b)に示すようにホットプレート4を加熱して弾性体2上に配置した樹脂体3をその樹脂の軟化温度以上に加熱し、軟化ないし溶融する。ホットプレート4による加熱を継続(続行)しながら、上方の微細針5を軟化ないし溶融した樹脂体3に向けて穿刺する。このとき、微細針5は軟化ないし溶融した樹脂体3を貫通して弾性体2に差込まれ、穿刺穴6が開口される。また、樹脂体3の表面は固定治具11の底面に接触させる。つづいて、微細針5を穿刺したまま、ホットプレート4による加熱を所望時間継続する。その後、ホットプレート4による加熱を停止し、微細針5を穿刺したまま、例えば空冷または水冷により冷却して樹脂を固化する。
【0041】
図4の(a),(b)に示した実施形態では、微細針5は樹脂体3側(穿刺側)に平坦面を備える固定治具11に固定される。固定治具11に固定した微細針5を用いることにより、穿刺後に樹脂体3と固定治具11の平坦面を接触させることにより、微細ノズル形成側と反対側の樹脂体3表面を平坦化することができるという効果を奏する。また、固定治具11は微細針5の穿刺時に穿刺深さを規制する役目をなすため、穿刺針の深さを容易に制御することができる。なお、固定治具11は金属材料、セラミック材料を用いることができ、微細針の径に対応した貫通穴を備える板を使用することができる。
【0042】
次に、第1実施形態に係る微細ノズルのさらに別の方法を
図5を参照して説明する。
【0043】
まず、
図5の(a)に示すように微細針5が穿刺される弾性体2の箇所に貫通する空隙13を開口し、さらにこの空隙13に対応する非弾性体1の箇所に浅い溝14を穿設する。つづいて、矩形板状の非弾性体1表面(溝14の形成面)に非弾性体1より小さい矩形板状の弾性体2をその空隙13が非弾性体1の溝14に合致するように設置する。弾性体2上に被処理物である樹脂体3を配置する。このような積層体を加熱体、例えばホットプレート4上に設置する。また、上下動が可能な微細針5を樹脂体3の上方に配置させる。
【0044】
空隙13および溝14は、機械加工、エッチング、レーザー加工など任意の加工法によってそれぞれ弾性体2および非弾性体1に形成することが可能である。空隙13の径は、10μm以上1mm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下、にすることが好ましい。溝14は、円錐もしくは多角錘の形状を有する。非弾性体1の溝14内面は製造後の微細ノズルの離型性を向上するために、離型処理を施してもよい。
【0045】
次いで、
図5の(b)に示すようにホットプレート4を加熱して弾性体2上に配置した樹脂体3をその樹脂の軟化温度以上に加熱し、軟化ないし溶融する。ホットプレート4による加熱を継続(続行)しながら、上方の微細針5を所望の荷重で軟化ないし溶融した樹脂体3に向けて穿刺する。このとき、微細針5は軟化ないし溶融した樹脂体3を貫通し、さらに弾性体2の空隙13を通して非弾性体1に予め穿設された溝14に差込まれ、溝14を含む穿刺穴12が開口される。微細針5を穿刺したまま、ホットプレート4による加熱を所望時間継続する。ひきつづき、ホットプレート4による加熱を停止し、微細針5を穿刺したまま、例えば空冷または水冷により冷却して軟化ないし溶融した樹脂を固化し、樹脂体3と一体化して突出した微細ノズルが形成される。その後、図示しないが、固化した微細ノズルを有する樹脂体を微細針と一緒に非弾性体および弾性体から剥離した後、微細針を樹脂体から抜き取るか、または微細針を樹脂体から抜き取った後、固化した微細ノズルを有する樹脂体を非弾性体および弾性体から剥離する。これにより樹脂体から突出し、貫通孔を有する微細ノズルが得られる。
【0046】
このように弾性体2に空隙13を設けることによって、微細針5による穿刺動作を空隙13で円滑化できるため、より好適な微細ノズルの製造が可能になる。
【0047】
次に、第1実施形態に係る微細ノズルのさらに別の方法を
図6を参照して説明する。
【0048】
図6は、樹脂体から突出した複数の微細ノズルからなる微細ノズルアレイを示す。このようなアレイにおいて、1)複数の微細ノズルがそれぞれ樹脂体表面に対して垂直に配列される形態、2)複数の微細ノズルのうち、幾つかの微細ノズルが樹脂体表面に対して垂直に配列され、残りの微細ノズルが樹脂体表面に対して傾斜して配列される形態、3)複数の微細ノズルがそれぞれ樹脂体表面に対して傾斜して配列される形態、が挙げられる。
図6は、前記2)の形態の微細ノズルアレイの製造方法を示す。
【0049】
まず、
図6の(a)に示すように矩形板状の非弾性体1表面に同形状の弾性体2を設置する。弾性体2上に被処理物である樹脂体3を配置する。このような積層体を加熱体、例えばホットプレート4上に設置する。つづいて、ホットプレート4を加熱して弾性体2上に配置した樹脂体3をその樹脂の軟化温度以上に加熱し、軟化ないし溶融する。ホットプレート4による加熱を継続(続行)しながら、上方から複数(例えば3つ)の微細針5a,5b,5cを所望の荷重で軟化ないし溶融した樹脂体3に向けて穿刺する。すなわち、微細針5aを樹脂体3表面に対して左方向に傾斜して穿刺し、微細針5bを樹脂体3表面に対して垂直方向に穿刺し、微細針5cを樹脂体3表面に対して右方向に傾斜して穿刺する。このとき、各微細針5a〜5cは軟化ないし溶融した樹脂体3を貫通して弾性体2に差込まれ、穿刺穴6a〜6cがそれぞれ開口される。さらに、微細針5a〜5cを穿刺したまま、ホットプレート4による加熱を所望時間継続する。ひきつづき、ホットプレート4による加熱を停止し、微細針5a〜5cを穿刺したまま、例えば空冷または水冷により冷却して軟化ないし溶融した樹脂を固化し、樹脂体3と一体化して突出した微細ノズル7a〜7cが形成される。
【0050】
次いで、
図6の(b)に示すように微細針5a〜5cが穿刺され、固化した微細ノズル7a〜7cを有する樹脂体3を弾性体2と一緒に非弾性体1から剥離する。その後、微細針5a〜5cを樹脂体3から抜き取り、樹脂体3を弾性体2から剥離する。これにより
図6の(c)に示すように樹脂体3から左方向に傾斜して突出した貫通孔8aを有する微細ノズル7a、樹脂体3から垂直方向に突出した貫通孔8bを有する微細ノズル7b、および樹脂体3から右方向に傾斜して突出した貫通孔8cを有する微細ノズル7c、が得られる。
【0051】
得られた微細ノズルアレイにおいて、方向が異なる各微細ノズル7a〜7cの先端部を切断して貫通孔8a〜8cを貫通孔にすることによって、各微細ノズル7a〜7cから液体を広い範囲で吐出することが可能になる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る微細ノズルの製造方法を
図7の(a),(b),
図8の(c)を参照して説明する。
【0053】
まず、
図7の(a)に示すように矩形板状の非弾性体21表面に同形状の弾性体22を設置する。弾性体22上に被処理物である樹脂製カップ23をその底部23aが弾性体22表面全体に接触するように配置する。このような積層体を加熱体、例えばホットプレート24上に設置する。また、上下動が可能な微細針25をカップ23の上方に配置させる。
【0054】
非弾性体21、弾性体22および微細針25の材質、微細針の形状は、前記第1実施形態で説明したのと同様である。
【0055】
樹脂製カップ23は、任意の樹脂成型方法によって製造することができる。樹脂製カップ23は、例えばブロー成型、中空成形、押出成型、射出成型、インジェクション成型、真空成型、圧空成型、プレス成型などの任意の製法によって製造することができる。これらの樹脂成型方法は連続してもよい。また、樹脂製カップ23を連続して製造するプロセスにおいて、その冷却工程の前に微細ノズルの製造プロセスを組込んでもよい。
【0056】
樹脂製カップ23は、任意の樹脂から形成できる。樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンサクシネート、トリメチレンカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、セルロース、キトサン、でんぷんから選択することができる。また、樹脂は、複数種の樹脂の混合物であっても、ポリ乳酸グリコール酸共重合体といった共重合体であってもよい。特に、樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。微細ノズルの用途によっては、樹脂は生体適合性材料であってもよい。
【0057】
樹脂製カップ23は、その底部23aの厚さを製造する微細ノズルの用途等によって設定することができる。通常、底部23aは0.3〜5mmの厚さを有することが好ましい。
【0058】
次いで、
図7の(b)に示すようにホットプレート24を加熱して弾性体22上に配置した樹脂製カップ23の底部23aをその樹脂の軟化温度以上に加熱し、軟化ないし溶融する。ホットプレート24による加熱を継続(続行)しながら、上方の微細針25を所望の荷重で軟化ないし溶融した底部23aに向けて穿刺する。このとき、微細針25は軟化ないし溶融した底部23aを貫通して弾性体12に差込まれ、穿刺穴26が開口される。つづいて、微細針25を穿刺したまま、ホットプレート24による加熱を所望時間継続する。その後、ホットプレート24による加熱を停止し、微細針25を穿刺したまま、例えば空冷または水冷により冷却して軟化ないし溶融した底部23aを固化する。
【0059】
第2実施形態に係る微細ノズルの製造において、微細針25による穿刺時に樹脂製カップ23の底部23aを軟化温度以上に加熱すること、樹脂製カップ23の底部23aおよび弾性体22に穿刺したまま加熱を継続することは重要な要素である。すなわち、これらの工程において樹脂製カップ23の軟化ないし溶融した底部23aから十分な量の樹脂が弾性体22の穿刺穴26と微細針25の間に導入されて、その後の冷却により樹脂製カップ23の底部23aと一体化して突出した微細ノズル27が形成される。また、微細針25先端の角度を鋭角にして前述した
図7の(b)に示す工程で微細針25先端を穿刺穴26の底部に位置させ、弾性体22の穿刺穴26と微細針25の間に溶融した樹脂を導入する際、微細針25先端に溶融した樹脂が廻り込まないようにすることにより微細ノズルに貫通孔を形成する。その後、固化した微細ノズル27を有する底部23aを微細針25と一緒に弾性体2から剥離し、微細針25を樹脂製カップ23の底部23aから抜き取る。これにより
図8の(c)に示すように樹脂製カップ23の底部23aから突出し、貫通孔28を有する微細ノズル27が得られる。
【0060】
穿刺時の微細針25から弾性体22への荷重は、0.01〜1kgfにすることが好ましい。
【0061】
微細針25先端部の弾性体2への差込み深さ(穿刺深さ)は0.5mm〜5mmにすることが好ましい。穿刺深さが前記範囲を外れると、微細ノズルを製造することが困難になる。
【0062】
微細針25の穿刺に要する時間は、1秒以内にすることが好ましい。
【0063】
穿刺したままの加熱継続は、加熱温度、樹脂の種類にもよるが、5秒〜3分間行うことが好ましい。
【0064】
なお、微細ノズルの製造後において微細ノズルと反対側の樹脂製カップ23の底部23a表面を平坦化するために、微細針の穿刺前に軟化ないし溶融した底部23a表面にプレスを施してもよい。
【0065】
樹脂が光硬化性樹脂の場合には、光照射により樹脂を固化してもよい。
【0066】
前述した剥離工程では、樹脂製カップ23の底部23aを微細針と一緒に弾性体から剥離したが、例えば弾性体に微細ノズルを形成した樹脂製カップの底部から微細針を先に抜き取り、その後、樹脂製カップの底部を弾性体から剥離してもよい。このような方法によれば、微細針を抜き取った微細ノズルが底部に形成された樹脂製カップを弾性体と一緒に保管および輸送を行い、使用直前に樹脂製カップの底部を弾性体から剥離することによって、衝撃等により損傷し易い微細ノズルを弾性体で保護することができる。
【0067】
微細ノズルは、例えば先端部の厚さが50μmの未貫通孔を有してもよい。この未貫通孔は、使用直前に微細ノズルの先端部を切断することにより貫通孔にしてもよい。
【0068】
以上説明した第2実施形態によれば、微細針25を樹脂製カップ23の底部23aを貫通して弾性体22に穿刺すること、穿刺時に樹脂製カップ23の底部23aを軟化温度以上に加熱すること、微細針25を樹脂製カップ23の底部23aおよび弾性体22に穿刺したまま加熱を継続すること、さらに微細針5を穿刺したまま樹脂製カップ23の軟化ないし溶融した底部23aを冷却することによって、従来のようにノズルの外側形状を凹凸反転させた微細な凹部を含む金型を用いる場合に比べて、加工が非常に容易で、かつ樹脂はみ出しによるバリの発生が大幅に抑制でき、樹脂から作られる使い捨て可能で、樹脂製カップ23の底部23aから突出された貫通孔28を有する微細ノズル27を簡便かつ安価に製造できる。
【0069】
得られた
図8の(c)に示す微細ノズル付カップは、カップ23の中空部と微細ノズル27の貫通孔28が連通した構造を有することによって、カップ23の中空部内に液体を保持し、微細ノズル27から液体を流出したり、または微細ノズル27から液体を吸入してカップ23の中空部内に液体を保持したり、することができる。
【0070】
また、
図9に示すようにカップ23の中空部内にピストン29を配置し、ピストン29を進入、後退することにより、カップ23の中空部内の液体30を例えば液滴31として流出したり、吸引したりすることが可能になる。このような液体の流出・吸引機構は、ピストン29の他にポンプを用いることができる。
【0071】
なお、第2実施形態において、前記第1実施形態で説明した
図4のように固定治具に取付けられた微細針を用いたり、
図5に示すように空隙を開口した弾性体を用いたり、または
図6に示すように複数の微細針を用いて樹脂製カップの底部に突出した微細ノズルを製造してもよい。
【0072】
また、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、微細針5を樹脂体3を貫通して弾性体2に穿刺した後に、微細針5を樹脂体3および弾性体に穿刺したまま加熱を継続する工程は、任意工程とすることができる。しかし、樹脂材料の種類を問わずに微細ノズルを安定的に形成する観点から、微細針5を樹脂体3を貫通して弾性体2に穿刺した後に、微細針5を樹脂体3および弾性体に穿刺したまま加熱を継続する工程を設けることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0074】
なお、本実施例において使用した樹脂体の軟化点は、あらかじめ熱機械分析装置(EXSTAR6000 TMA/SS6100 エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)を用いて測定している。このとき、測定資料としてはホットプレス法により作製した幅4mm、長さ25mm、厚み30〜50mmのフィルム状試料を用いた。プローブとしては引張りプローブを用い、引っ張り荷重は50mNとした。
【0075】
(実施例1)
旋盤加工によって超硬ピン(微細針)を用意した。超硬ピンは最太部の直径が1mm、先端の直径が20μm、先端の角度が10°である。
【0076】
まず、厚さ2mmで、JIS K6253(2006)規格の国際ゴム硬さであるゴム硬度が30のシリコーンゴムシート上に樹脂体として直径15mm、厚さ1mmのポリカーボネート製シートを配置した。シリコーンゴムシートをホットプレート上に載置し、260℃の温度で10分加熱し、ポリカーボネート製シート(軟化点170℃)を軟化ないし溶融した。このとき、ポリカーボネート製シートの表面の温度はおよそ250℃(軟化点以上)であった。
【0077】
次いで、ホットプレートによる10分間の加熱直後に前記超硬ピンを軟化ないし溶融したポリカーボネート製シートに垂直方向から荷重0.01kgfを加えて穿刺した。このとき、超硬ピンは軟化ないし溶融したポリカーボネート製シートを貫通し、シリコーンゴムシートに約1mmの深さで穿刺した。超硬ピンを穿刺したままホットプレートによる加熱を1分間継続した。その後、ホットプレートによる加熱を停止し、ポリカーボネート製シートを超硬ピンを穿刺したまま空冷した。冷却後、ポリカーボネート製シートをシリコーンゴムシートから剥離し、さらに超硬ピンを抜き取った。
【0078】
その結果、ポリカーボネート製シートから突出した微細ノズルを得た。この微細ノズルは、先端の角度80°、先端の直径30μm、開口部の直径25μm、高さ485μmであった。
【0079】
(比較例1)
シリコーンゴムシートとして、厚さ2mmで、JIS K6253(2006)規格の国際ゴム硬さであるゴム硬度が60のものを用いた以外、実施例1と同様な方法により微細ノズルの製造を試みた。
【0080】
しかしながら、シリコーンゴムシートはゴム硬度が60と硬いため、超硬ピンを軟化ないし溶融したポリカーボネート製シートを貫通し、シリコーンゴムシートに穿刺する際、超硬ピンのシリコーンゴムシート内への穿刺深度は5μmに留まった。その結果、シリコーンゴムシート内に軟化ないし溶融したポリカーボネートが流入せず、ポリカーボネート製シートから突出した微細ノズルを作製することができなかった。
【0081】
(比較例2)
シリコーンゴムシート上に配置された直径15mm、厚さ1mmのポリカーボネート製シート(軟化点170℃)をホットプレートにより170℃の温度で10分加熱し、ポリカーボネート製シート表面の温度を160℃(軟化点以下)とした以外、実施例1と同様な方法により微細ノズルの製造を試みた。
【0082】
しかしながら、ポリカーボネート製シートが十分に軟化していないため、超硬ピンをポリカーボネート製シートに垂直方向から荷重0.01kgfを加えて穿刺する際、超硬ピンをポリカーボネート製シートを貫通してシリコーンゴムシートに穿刺することができなかった。
【0083】
(実施例2)
軟化ないし溶融したポリカーボネート製シート(軟化点170℃)に超硬ピンを貫通し、シリコーンゴムシートに穿刺した後、超硬ピンを穿刺したまま加熱を継続することなく、超硬ピンの穿刺直後に空冷にて冷却した以外、実施例1と同様な方法により微細ノズルの製造を試みた。
【0084】
しかしながら、ポリカーボネート製シートをシリコーンゴムシートから剥離し、さらに超硬ピンを抜き取ったところ、超硬ピンを穿刺したまま加熱を継続する処理を施さないために、ポリカーボネート製シートから突出した所期形状の微細ノズルを安定的に作製することができなかった。具体的には、作製した10個の微細ノズルのうち、6個は所期形状の微細ノズルとすることができた。ただし、残りの4個はノズルの高さが不十分であり、所期形状の微細ノズルとすることができなかった。
【0085】
(実施例3)
まず、厚さ2mmで、JIS K6253(2006)規格のゴム硬度が30のシリコーンゴムシート上に直径15mm、厚さ1mmのポリカーボネート製シート(軟化点170℃)を配置した。シリコーンゴムシートをホットプレート上に載置し、280℃の温度で10分加熱し、ポリカーボネート製シートを軟化ないし溶融した。このとき、ポリカーボネート製シートの表面の温度は270℃(軟化点以上)であった。
【0086】
次いで、ホットプレートによる10分間の加熱直後に実施例1と同様な超硬ピンを軟化ないし溶融したポリカーボネート製シートに垂直方向から荷重0.01kgfを加えて穿刺した。このとき、超硬ピンは軟化ないし溶融したポリカーボネート製シートを貫通し、シリコーンゴムシートに穿刺した。超硬ピンを穿刺したままホットプレートによる加熱を1分間継続した。その後、ホットプレートによる加熱を停止し、ポリカーボネート製シートを超硬ピンを穿刺したまま空冷した。冷却後、ポリカーボネート製シートをシリコーンゴムシートから剥離し、さらに超硬ピンを抜き取った。
【0087】
その結果、ポリカーボネート製シートから突出した微細ノズルを得た。この微細ノズルは、先端の角度80°、先端の直径768μm、開口部の直径750μm、高さ50μmであった。
【0088】
(実施例4)
まず、厚さ2mmで、JIS K6253(2006)規格のゴム硬度が30のシリコーンゴムシート上に直径15mm、厚さ1mmのポリカーボネート製シート(軟化点170℃)を配置した。シリコーンゴムシートをホットプレート上に載置し、260℃の温度で10分加熱し、ポリカーボネート製シートを軟化ないし溶融した。
【0089】
ホットプレートによる加熱を継続しながら、軟化ないし溶融したポリカーボネート製シート上に直径40mm、長さ50mmのSUS製円柱にて押圧してポリカーボネート製シート表面を平坦化した。ひきつづき、ホットプレートで260℃、3分加熱した後、実施例1と同様な超硬ピンを溶融したポリカーボネート製シートに垂直方向から荷重0.01kgfを加えて穿刺した。このとき、超硬ピンは溶融したポリカーボネート製シートを貫通し、シリコーンゴムシートに約1mmの深さで穿刺した。超硬ピンを穿刺したままホットプレートによる加熱を1分間継続した。その後、ホットプレートによる加熱を停止し、ポリカーボネート製シートに超硬ピンを穿刺したまま空冷した。冷却後、ポリカーボネート製シートをシリコーンゴムシートから剥離し、さらに超硬ピンを抜き取った。
【0090】
その結果、ポリカーボネート製シートから突出した微細ノズルを得た。この微細ノズルは、先端の角度80°、先端の直径30μm、開口部の直径20μm、高さ480μmであった。また、微細ノズル形成面と反対側のポリカーボネート製シート表面は平坦性が保たれた。
【0091】
(実施例5)
まず、厚さ2mmで、JIS K6253(2006)規格のゴム硬度が30のシリコーンゴムシート上に直径15mm、厚さ1mmのポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シート(軟化点50℃)を配置した。シリコーンゴムシートをホットプレート上に載置し、240℃の温度で10分加熱し、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シートを軟化ないし溶融した。このとき、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シートの表面の温度は230℃(軟化点以上)であった。
【0092】
次いで、ホットプレートによる10分間の加熱直後に実施例1と同様な超硬ピンを軟化ないし溶融したポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シートに垂直方向から荷重0.01kgfを加えて穿刺した。このとき、超硬ピンは軟化ないし溶融したポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シートを貫通し、約1mmの深さでシリコーンゴムシートに穿刺した。超硬ピンを軟化ないし溶融した製シートを貫通し、シリコーンゴムシートに穿刺した後、超硬ピンを穿刺したまま加熱を継続することなく、超硬ピンの穿刺直後に空冷にて冷却した。
【0093】
冷却後、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シートをシリコーンゴムシートから剥離し、さらに超硬ピンを抜き取った。
【0094】
その結果、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体製シートから突出した微細ノズルを得た。この微細ノズルは、先端の角度80°、先端の直径768μm、開口部の直径750μm、高さ50μmであった。
【0095】
(実施例6)
まず、厚さ2mmで、JIS K6253(2006)規格の国際ゴム硬さであるゴム硬度が30のシリコーンゴムシート上に、直径20mm、高さ50mm、厚さ1mmのポリプロピレン製カップ(軟化点120℃)をその底部がシリコーンゴムシートに接触するように配置した。シリコーンゴムシートをホットプレート上に載置し、230℃の温度で2分加熱した。カップの底部が軟化した状態で、ホットプレートによる加熱を継続しながら、カップの軟化ないし溶融した底部に直径40mm、長さ50mmのSUS製円柱にて押圧してカップの底部表面を平坦化した。
【0096】
次いで、ホットプレートで230℃、1分加熱した後、実施例1と同様な超硬ピンをポリプロピレン製カップの溶融した底部に垂直方向から荷重0.01kgfを加えて穿刺した。このとき、超硬ピンは溶融したカップの底部を貫通し、約1mmの深さでシリコーンゴムシートに穿刺した。超硬ピンを穿刺したままホットプレートによる加熱を1分間継続した。その後、ホットプレートによる加熱を停止し、カップの底部に超硬ピンを穿刺したまま空冷した。冷却後、カップの底部をシリコーンゴムシートから剥離し、さらに超硬ピンを抜き取った。
【0097】
その結果、ポリプロピレン製カップの底部から外側に突出した微細ノズルを得た。この微細ノズルは、先端の角度20°、先端の直径35μm、開口部の直径20μm、高さ1200μmであった。
【0098】
得られた微細ノズル付カップに水を充填した。先端に直径20mm長さ10mmのゴム製押出部を固定した棒を用意し、この棒の押出部をカップの開口から挿入した。その結果、微細ノズルの先端から水を吐出できた。
【0099】
以上説明した本発明によれば、医療器具、食品、化粧品、印刷、検査、分析などの有用な微細ノズルの製造方法を提供できる。特に、得られた微細ノズルは経皮薬剤透過のために、皮膚へ穿刺する用途として好適に用いることができる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
内部に微細な孔を有する突起部を備えた微細ノズルの製造方法であって、
(a) ゴム硬度が50以下の弾性体上に樹脂体を配置する工程と、
(b) 前記弾性体の裏面側から前記樹脂体の軟化温度より高い温度で加熱しながら、微細針を前記樹脂体を貫通して前記弾性体に穿刺する工程と、
(c) 冷却して樹脂体を固化する工程と、
(d) 固化した樹脂体を前記微細針および前記弾性体から取り出す工程とを含む微細ノズルの製造方法。
[2]
前記工程(b)と前記工程(c)の間に、前記微細針を穿刺した状態で加熱を継続する工程を含むことを特徴とする[1]記載の微細ノズルの製造方法。
[3]
前記軟化した樹脂体の表面を平坦化する工程をさらに含むことを特徴とする[1]または[2]記載の微細ノズルの製造方法。
[4]
内部に微細孔を有する突起部を備えた微細ノズルの製造方法であって、
(a) ゴム硬度が50以下の弾性体上に樹脂製のカップを配置する工程と、
(b) 前記弾性体の裏面側から前記樹脂の軟化温度より高い温度で前記カップ底部を加熱しながら、微細針を前記カップの底部を貫通して前記弾性体に穿刺する工程と、
(c) 冷却して前記カップ底部を固化する工程と、
(d) 底部が固化した前記カップを前記微細針および前記弾性体から取り出す工程とを含む微細ノズルの製造方法。
[5]
前記工程(b)と前記工程(c)の間に、前記微細針を穿刺した状態で加熱を継続する工程を含むことを特徴とする[4]記載の微細ノズルの製造方法。
[6]
前記軟化した樹脂体の表面を平坦化する工程をさらに含むことを特徴とする[4]または[5]記載の微細ノズルの製造方法。
[7]
前記微細針は、先端角度が3°以上90°以下であることを特徴とする[1]〜[6]いずれかに記載の微細ノズルの製造方法。