(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の形成手段は、前記各境界隔壁とそれに隣接する境界隔壁との間にまたがって、その長さ方向端部の少なくとも一方側に、前記液状の透明樹脂材料を撥液する撥液部を形成する手段であることを特徴とする、請求項1記載の画像記録媒体の製造装置。
前記流動阻止部は、前記半円筒形状の凸部長手方向端部の少なくとも一方側の面に設けられた、前記液状の材料を撥液する撥液部である請求項4記載の画像記録媒体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る画像記録媒体1は、
図1に例示するように、互いに積層して配された第1媒体11と第2媒体12とを含んで構成される。ここで第1媒体11の面のうち、少なくとも第2媒体12が配される側の面には、レンチキュラ画像を含んだ画像が形成されている。
【0019】
ここでレンチキュラ画像は、広く知られているものであるので簡便に説明をすると、予め複数n種類の画像V1,V2,…Vnをそれぞれ予め定めたラインずつ、短冊状の画像部分(各画像Viについて、Vi,1,Vi,1,…)に切断し、V1からVnの画像から切出した短冊状の画像部分を一組として、この組を繰返して、短冊の長手方向に対する方向(長手方向に直交する方向)に配列したものである。つまり順次、V1,1,V2,1,…Vn,1,V1,2,V2,2…,Vn-mというように配列したものである。
【0020】
また第2媒体12は、基板層20上に、三次元領域21が形成されたものである。ここで基板層20は非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)等、光透過性を有する樹脂、その他の透明な材料を平板状に成形したものである。この基板層20の表面は実質的に平滑面となっている。またこの基板層20は、第1媒体11上の対応する部分(直下の部分)の画像をそのまま透過させる。
【0021】
三次元領域21は、基板層20と同じ材料を用いて、第1媒体11上の対応する部分の画像を屈折させて透過させるレンズを形成した領域であり、本実施の一例では基板層20と一体化している。具体的にこのレンズは、レンチキュラレンズを配列したものであり、
図1に示すように、半円筒形状の(シリンドリカル)凸部であるレンチキュラレンズ25が複数、互いに平行に並べて配されたものである。
【0022】
本実施の形態では、基板層20の、この三次元領域21に含まれるレンチキュラレンズ25の長手方向端部の少なくとも一方側に、製造時における液状の材料の流動を阻止する第2隔壁26が形成されている。この第2隔壁26は、レンチキュラレンズ25の長手方向に直交する方向に延びる、基板層20の凸部として形成すればよい。
図2は、本実施の形態の一例に係る画像記録媒体1を、レンチキュラレンズ25の長手方向に沿って破断した断面図である。この
図2に例示するように、本実施の形態のある例ではレンチキュラレンズ25の長手方向両端に、断面がM字状をなす第2隔壁26がそれぞれ形成されている。
【0023】
具体的にこの画像記録媒体1は、
図3に例示する媒体形成装置30を用いて次のように形成すればよい。この媒体形成装置30は、
図3に例示するように、ステージ31と、切削加工部32と、樹脂吐出部33と、光照射部34と、制御部35とを含んで構成される。
【0024】
ここでステージ31は、加工の対象となるワークWを支持する平面を備える。切削加工部32は、制御部35から入力される指示に従って、ステージ31上に置かれた第2媒体12の表面に溝を形成する。この切削加工部32の動作については後に述べる。
【0025】
樹脂吐出部33は、制御部35から入力される指示に従い、液状の光硬化性の樹脂(透明樹脂材料)を、ステージ31に置かれた媒体表面の指示された位置に吐出する。このような樹脂吐出部33は広く知られているものを採用できるので、その詳しい説明を省略する。光照射部34は、樹脂吐出部33が吐出した樹脂を硬化させる波長の光(例えば紫外光)を放射する。
【0026】
制御部35は、マイクロコンピュータを備えてなり、その記憶部に格納されたプログラムに従って動作する。このプログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ可読な記録媒体に格納されて提供され、このマイクロコンピュータ内の記憶部に格納されたものであってもよい。本実施の形態では制御部35は、切削加工部32と、樹脂吐出部33とを制御する。この制御部35による具体的な制御の内容を、
図4を参照しながら次に説明する。
【0027】
本実施の形態では、予めレンチキュラ画像が形成されたシート状の第1媒体11上に第2媒体12を形成するものとする。すなわち、まず第1媒体11をステージ31上に案内して配する。制御部35は樹脂吐出部33を制御して、この第1媒体11上に、実質的に均一に樹脂を吐出させる。また制御部35は、光照射部34を制御して、塗布した樹脂に光を照射させて、吐出した樹脂を固化させる。
【0028】
これにより、第1媒体11上に、実質的に均一な厚さの樹脂層である基板層20が形成される(S1)。なお、本実施の形態では、この基板層20に対して、広く知られた表面加工処理を施し、その表面に、N点平均高さRzが、1μm≦Rzであるような凹凸を形成してもよい。
【0029】
制御部35は、次に、切削加工部32を制御して、第1媒体11のレンチキュラ画像に対応する基板層20の表面(直下にレンチキュラ画像がある部分)に、このレンチキュラ画像に含まれる短冊状の画像部分の長手方向(Y軸方向とする)に伸びる溝を形成する。本実施の形態のある例では、切削加工部32は、Y軸方向に刃がつけられ、X軸方向(基板層20の表面内でY軸に直交する方向)に対称な切削ヘッド32a(第1の形成手段に相当する)と、X軸方向に刃がつけられ、Y軸方向(基板層20の表面内でX軸に直交する方向)に対称な切削ヘッド32b(第2の形成手段に相当する)とを含む。また本実施の形態の別の例では、この切削加工部32は、一方の軸方向に刃がつけられ、この軸に直交する方向に対称な切削ヘッドと、この切削ヘッドの刃をX軸またはY軸方向に向けるように切削ヘッドを回動させる手段とを備えるものであってもよい(この場合は、この切削ヘッドとその回動機構とが第1、第2の形成手段を兼ねる)。
【0030】
制御部35は第1媒体11に形成されたレンチキュラ画像のX軸方向の一端側の位置に切削加工部32の切削ヘッド32a(切削ヘッドを回動させる手段を備えるものの場合、Y軸方向に刃を向ける)を移動し、この切削加工部32をY軸方向に移動しながら切削させ、レンチキュラ画像のY軸方向の長さにわたって、基板層20の表面に溝を形成する。
【0031】
つぎに制御部35は、このレンチキュラ画像に含まれるn個の短冊状の画像部分の幅だけ(予め定めたレンズピッチの幅だけ)、X軸方向に切削ヘッド32aを移動させ、再び当該切削ヘッド32aをY軸方向に移動しながら切削させて、レンチキュラ画像のY軸方向の長さにわたって、基板層20の表面に溝を形成する。このレンズピッチは、例えば250μm程度などとして予め定めておく。以下、制御部35は、切削加工部32を制御して、レンズピッチの幅ずつX軸方向に移動してY軸方向に切削することを、レンチキュラ画像の他端側に溝を形成するまで繰り返す。この溝の両側には切削によって削り出された部分が盛り上がって凸(隔壁)となる。従って基板層20の表面には、
図5に示すように、X軸方向で破断したときの断面がM字状をなし、Y軸に沿って伸びる凹凸(以下、境界隔壁と呼ぶ)が形成される(
図4のS2)。
【0032】
制御部35は、基板層20上に形成された境界隔壁のY軸方向の一端側近傍(一端側から他端側へ向って予め定めた範囲内)に切削加工部32の切削ヘッド32b(切削ヘッドを回動させる手段を備えるものの場合、X軸方向に刃を向ける)を移動する。そして制御部35は、この切削ヘッド32bをX軸方向に移動しながら切削させ、レンチキュラ画像のX軸方向の長さにわたって、基板層20の表面に溝を形成する。
【0033】
また制御部35は、基板層20上に形成された境界隔壁のY軸方向の他端側近傍(他端側から一端側へ向って予め定めた範囲内)に切削加工部32の切削ヘッド32b(切削ヘッドを回動させる手段を備えるものの場合、X軸方向に刃を向ける)を移動し、そしてこの切削ヘッド32bをX軸方向に移動しながら切削させ、レンチキュラ画像のX軸方向の長さにわたって、基板層20の表面に溝を形成してもよい。
【0034】
これにより、レンチキュラレンズ25が形成されるべき部分の、長手方向端部の少なくとも一方側に、液状のレンチキュラレンズ25の材料の流動を阻止する第2隔壁26が形成される(
図4のS3)。
【0035】
制御部35は、さらに樹脂吐出部33を制御して、形成した境界隔壁と第2隔壁26とで囲まれた領域にその吐出口を位置させ、溝の長手方向にわたってY軸方向へ移動させながら、境界隔壁と第2隔壁26とで囲まれた領域内に樹脂を吐出させる(
図4のS4)。ここで吐出された樹脂の境界隔壁の端部における接触角が、面に平行な角と切削により形成された溝とのなす角の分だけ大きくなることにより、その断面が半円状に盛り上り、Y軸方向に長手方向を有する半円筒形状をなす。
【0036】
このとき基板層20の表面に凹凸を形成してあれば、凹凸がない場合よりも表面における濡れ性が向上するので、そのY軸方向への流動がさらに抑制される。またこのときには、基板層20表面の当該凹部にも基板層20と同じ材質の樹脂が浸入することになる。
【0037】
制御部35は、溝の長さ方向に所望の長さだけの半円筒形状の樹脂が吐出されると、樹脂吐出部33に樹脂の吐出を停止させる。このとき樹脂の吐出量が予定していた量よりも多い場合でも、第2隔壁26の作用により、レンチキュラレンズ25が形成されるべき部分の、長手方向の端部を越えて樹脂が浸出し、ステップS2にて切削して得た境界隔壁内の溝に入り込むことがない。
【0038】
以下、制御部35は、X軸方向に境界隔壁間の幅だけ樹脂吐出部33を移動させ、移動後の位置で再び、境界隔壁と第2隔壁26とによって囲まれる領域内で、境界隔壁の長手方向にY軸方向に樹脂吐出部33を移動させつつ樹脂を吐出させる処理を繰り返して、基板層20上のレンチキュラ画像に対応する位置に、三次元領域(レンチキュラレンズ)21を形成する(
図4のS5)。
【0039】
制御部35は、また光照射部34を点灯して、樹脂吐出部33により吐出された樹脂に対して、この光照射部34が放射する光を当てる。これにより樹脂の硬化が促進されて、レンチキュラレンズ25の形成が完了する。
【0040】
なお、基板層20の表面に凹凸を形成する場合、その方法は、例えば、境界隔壁の長手方向であるY軸方向に交差する方向に、後に形成する境界隔壁の溝の深さよりも浅い深さの溝を、境界隔壁の形成前に、切削加工により形成してもよい。
【0041】
また本実施の形態の別の例では、液状のレンチキュラレンズ25の材料の流動を阻止する手段として、この材料を撥液する撥液部27を形成する。ここで撥液部27は、例えば撥液性を有するフッ素ポリマー等を基板層20の対応する部分に塗布することで形成する。
【0042】
この例による本実施の形態の画像記録媒体1は、
図6に例示する媒体形成装置30′を用いて次のように形成すればよい。この媒体形成装置30′は、
図3に例示した媒体形成装置30と同様の構成を備えるものであるが、撥液剤塗布部36をさらに含むことが相違する。またこの例では切削ヘッド32bは不要である。以下の説明では、
図3の媒体形成装置30と同じ構成となるものについては同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0043】
撥液剤塗布部36は、制御部35から入力される指示に従い、基板層20上の制御部35の制御によって決められる位置に撥液剤を塗布する。制御部35による具体的な制御の内容を、
図7を参照しながら次に説明する。
【0044】
ここでも、予めレンチキュラ画像が形成されたシート状の第1媒体11上に第2媒体12を形成するものとする。すなわち、まず第1媒体11をステージ31上に案内して配する。制御部35は樹脂吐出部33を制御して、この第1媒体11上に、実質的に均一に樹脂を吐出させる。また制御部35は、光照射部34を制御して、塗布した樹脂に光を照射させて、吐出した樹脂を固化させる。
【0045】
これにより、第1媒体11上に、実質的に均一な厚さの樹脂層である基板層20が形成される(S1)。なおここでもこの基板層20に対して、広く知られた表面加工処理を施し、その表面に、N点平均高さRzが、1μm≦Rzであるような凹凸を形成してもよい。
【0046】
制御部35は、次に、切削加工部32を制御して、第1媒体11のレンチキュラ画像に対応する基板層20の表面(直下にレンチキュラ画像がある部分)に、このレンチキュラ画像に含まれる短冊状の画像部分の長手方向(Y軸方向とする)に伸びる溝を形成する。
【0047】
制御部35は第1媒体11に形成されたレンチキュラ画像のX軸方向の一端側の位置に切削加工部32の切削ヘッド32aを移動し、この切削加工部32をY軸方向に移動しながら切削させ、レンチキュラ画像のY軸方向の長さにわたって、基板層20の表面に溝を形成する。
【0048】
つぎに制御部35は、このレンチキュラ画像に含まれるn個の短冊状の画像部分の幅だけ(レンズピッチの幅だけ)、X軸方向に切削ヘッド32aを移動させ、再び当該切削ヘッド32aをY軸方向に移動しながら切削させて、レンチキュラ画像のY軸方向の長さにわたって、基板層20の表面に溝を形成する。このレンズピッチは、例えば250μm程度などとして予め定めておく。以下、制御部35は、切削加工部32を制御して、レンズピッチの幅ずつX軸方向に移動してY軸方向に切削することを、レンチキュラ画像の他端側に溝を形成するまで繰り返す。ここで形成される溝により、基板層20の表面には、
図5に示すように、X軸方向で破断したときの断面がM字状をなし、Y軸に沿って伸びる凹凸(境界隔壁と呼ぶ)が形成される(
図7のS2)。
【0049】
制御部35は、次に基板層20上に形成された境界隔壁のY軸方向の一端側近傍(一端側から他端側へ向って予め定めた範囲内)に撥液部27を形成する。具体的に制御部35は、この一端側近傍に撥液剤塗布部36を移動させる。そして制御部35は、この撥液剤塗布部36をX軸方向に移動しながら、基板層20の表面のレンチキュラ画像のX軸方向の長さにわたって、撥液剤を塗布させる。
【0050】
また制御部35は、基板層20上に形成された境界隔壁のY軸方向の他端側近傍(他端側から一端側へ向って予め定めた範囲内)にも撥液部27を形成してもよい。具体的に制御部35は、この他端側近傍に撥液剤塗布部36を移動させる。そして制御部35は、この撥液剤塗布部36をX軸方向に移動しながら、基板層20の表面のレンチキュラ画像のX軸方向の長さにわたって、撥液剤を塗布させる。
【0051】
これにより、レンチキュラレンズ25が形成されるべき部分の、長手方向端部の少なくとも一方側に、液状のレンチキュラレンズ25の材料の流動を阻止する撥液部27が形成される(
図7のS13)。
【0052】
制御部35は、さらに樹脂吐出部33を制御して、ステップS2で形成した境界隔壁と、撥液部27とで囲まれた領域にその吐出口を位置させ、溝の長手方向にわたってY軸方向へ移動させながら、境界隔壁と撥液部27とで囲まれた領域内に樹脂を吐出させる(
図7のS14)。ここで吐出された樹脂の境界隔壁の端部における接触角が、面に平行な角と切削により形成された溝とのなす角の分だけ大きくなることにより、その断面が半円状に盛り上り、Y軸方向に長手方向を有する半円筒形状をなす。
【0053】
またこのとき基板層20の表面に凹凸を形成してあれば、凹凸がない場合よりも表面における濡れ性が向上するので、そのY軸方向への流動がさらに抑制される。またこのときには、基板層20表面の当該凹部にも基板層20と同じ材質の樹脂が浸入することになる。
【0054】
制御部35は、溝の長さ方向に所望の長さだけの半円筒形状の樹脂が吐出されると、樹脂吐出部33に樹脂の吐出を停止させる。このとき樹脂の吐出量が予定していた量よりも多い場合でも、撥液部27の作用により樹脂が撥液されるため、レンチキュラレンズ25が形成されるべき部分の、長手方向の端部を越えて樹脂が浸出し、ステップS2にて切削して得た境界隔壁内の溝に入り込むことがない。
【0055】
以下、制御部35は、X軸方向に境界隔壁間の幅だけ樹脂吐出部33を移動させ、移動後の位置で再び、境界隔壁と撥液部27とによって囲まれる領域内で、境界隔壁の長手方向にY軸方向に樹脂吐出部33を移動させつつ樹脂を吐出させる処理を繰り返して、基板層20上のレンチキュラ画像に対応する位置に、三次元領域(レンチキュラレンズ)21を形成する(
図7のS15)。
【0056】
制御部35は、また光照射部34を点灯して、樹脂吐出部33により吐出された樹脂に対して、この光照射部34が放射する光を当てる。これにより樹脂の硬化が促進されて、レンチキュラレンズ25の形成が完了する。
【0057】
なお、基板層20の表面に凹凸を形成する場合、その方法は、例えば、境界隔壁の長手方向であるY軸方向に交差する方向に、後に形成する境界隔壁の溝の深さよりも浅い深さの溝を、境界隔壁の形成前に、切削加工により形成してもよい。
【0058】
本実施の形態によれば、形成した境界隔壁の端部まで材料の液が流れることがなく材料液が浸透した部分で光学特性が変化してしまうことがない。
【0059】
なお、ここまでの説明では、隔壁を作成する手段として、刃を基板層20に対して相対的に移動させる例を示したが、その他に、レーザ光の照射により基板を溶融させて隔壁を形成してもよい。あるいは、隔壁長さの平刃を基板層20の表面に接触させて加圧し、これにより基板層20を切削して隔壁を形成してもよい。
【0060】
さらに、作成するべきパターンが予め決まっている場合には、当該パターンを形成可能な複数の刃を含んだ切削器を用い、これを基板層20の表面に押し付けて圧力をかけ、所望のパターン通りの隔壁を得てもよい。