特許第6106973号(P6106973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106973
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0484 20130101AFI20170327BHJP
   G06F 3/0488 20130101ALI20170327BHJP
【FI】
   G06F3/0484 150
   G06F3/0488
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-155388(P2012-155388)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-16927(P2014-16927A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 雅紀
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−198517(JP,A)
【文献】 特開平09−152933(JP,A)
【文献】 特開平06−290018(JP,A)
【文献】 特開平09−282094(JP,A)
【文献】 特開2006−011914(JP,A)
【文献】 特表2000−515285(JP,A)
【文献】 特開2012−150558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01−3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示領域を有し、該表示領域において操作子によって指し示される位置に応じた情報を出力する操作表示部の該表示領域に、1又は複数のオブジェクトを表示させるオブジェクト表示部と、
前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記操作子によって指し示されるオブジェクトを特定するオブジェクト特定部と、
前記オブジェクト特定部によって前記オブジェクトが特定された状態において前記操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と、当該オブジェクトに対応づいた1又は複数の方向について予め定められた係数であって、前記オブジェクトを複数の領域に分割した場合の該領域毎に設定された係数のうち、前記操作子が存在する領域に対応する係数とに応じた距離だけ移動させるオブジェクト移動部と
を具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記操作表示部は、前記表示領域に接触する操作子によって指し示される位置に応じた情報を出力し、
前記オブジェクト移動部は、前記操作子が前記表示領域に接触したまま該表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と当該オブジェクトに対応づいた1又は複数の方向について予め定められた係数とに応じた距離だけ移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
予め定められた1又は複数の方向について、前記オブジェクトの移動距離に関する係数を前記オブジェクトの種別毎に記憶する係数記憶部
を具備し、
前記オブジェクト特定部は、前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記操作子によって指し示されるオブジェクトと該オブジェクトの種別とを特定し、
前記オブジェクト移動部は、前記オブジェクト特定部によって前記オブジェクトが特定された状態において前記操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と該特定されたオブジェクトの種別に対応する係数とに応じた距離だけ移動させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
利用者による操作内容に応じて前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記係数の値を設定する係数設定部
を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記オブジェクト特定部は、前記操作表示部及び利用者によって操作される第2の操作子から出力される情報に応じて、前記操作子及び前記第2の操作子によって指し示されるオブジェクトを特定し、
前記オブジェクト移動部は、利用者によって操作される第2の操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、該位置の移動距離に応じた距離だけ移動させる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピューターを、
画像を表示する表示領域を有し、該表示領域において操作子によって指し示される位置に応じた情報を出力する操作表示部の該表示領域に、1又は複数のオブジェクトを表示させるオブジェクト表示部と、
前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記操作子によって指し示されるオブジェクトを特定するオブジェクト特定部と、
前記オブジェクト特定部によって前記オブジェクトが特定された状態において前記操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と、当該オブジェクトに対応づいた1又は複数の方向について予め定められた係数であって、前記オブジェクトを複数の領域に分割した場合の該領域毎に設定された係数のうち、前記操作子が存在する領域に対応する係数とに応じた距離だけ移動させるオブジェクト移動部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スレート型情報端末では、タッチパネル付きディスプレイに対する指操作に最適化されたOS(オペレーティングシステム)が多く採用されている。それらのOSでは、「ピンチアウト/ピンチイン」という操作が「(画像等の)拡大/縮小」として認識され、利用者にとって直感的な操作性を提供している。対して、タッチパネル上で、キーボードやマウスによる操作を前提としたOSを利用する場合がある。このようなOSは、従来のソフトウェア資産の活用と、機動性やメカ部品省略による高耐久性とを両立したい、といったニーズを満たす際に利用される。OSによっては旧来のソフトウェア資産活用を妨げないよう、マウス独自の操作(例えば、右クリックによるメニュー表示、ホイールによるスクロール、等)を特定の指操作(シーケンス)に対応付けている。
【0003】
特許文献1には、UI(ユーザーインターフェース)オブジェクトをドラッグ操作する際に、ドラッグ先がビューポート外に位置する場合、ビューポート周辺にマウスカーソルを移動させるとスクロールさせる技術が提案されている。特許文献1に記載の技術では、周辺からのマウスカーソルの距離を変えることで異なるスクロールスピードを選択するようになっている。また、特許文献2には、メニューを開く操作が行われた際に、メニュー項目を過去の使用頻度に応じて、使用頻度が高い項目ほどポインタ位置の近くに配置する仕組みが提案されている。また、特許文献3には、操作オブジェクト上にカーソルが存在するように、カーソルの制御を行う仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181248号公報
【特許文献2】特開2010−049453号公報
【特許文献3】特開2010−282244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像が表示される表示領域において操作子によって指し示される位置を利用者が移動させる場合に、その移動距離を短くすることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る情報処理装置は、画像を表示する表示領域を有し、該表示領域において操作子によって指し示される位置に応じた情報を出力する操作表示部の該表示領域に、1又は複数のオブジェクトを表示させるオブジェクト表示部と、前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記操作子によって指し示されるオブジェクトを特定するオブジェクト特定部と、前記オブジェクト特定部によって前記オブジェクトが特定された状態において前記操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と、当該オブジェクトに対応づいた1又は複数の方向について予め定められた係数であって、前記オブジェクトを複数の領域に分割した場合の該領域毎に設定された係数のうち、前記操作子が存在する領域に対応する係数とに応じた距離だけ移動させるオブジェクト移動部とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る情報処理装置は、請求項1に記載の構成において、前記操作表示部は、前記表示領域に接触する操作子によって指し示される位置に応じた情報を出力し、前記オブジェクト移動部は、前記操作子が前記表示領域に接触したまま該表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と当該オブジェクトに対応づいた1又は複数の方向について予め定められた係数とに応じた距離だけ移動させることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る情報処理装置は、請求項1又は2に記載の構成において、予め定められた1又は複数の方向について、前記オブジェクトの移動距離に関する係数を前記オブジェクトの種別毎に記憶する係数記憶部を具備し、前記オブジェクト特定部は、前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記操作子によって指し示されるオブジェクトと該オブジェクトの種別とを特定し、前記オブジェクト移動部は、前記オブジェクト特定部によって前記オブジェクトが特定された状態において前記操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と該特定されたオブジェクトの種別に対応する係数とに応じた距離だけ移動させることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項に係る情報処理装置は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の構成において、利用者による操作内容に応じて前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記係数の値を設定する係数設定部を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項に係る情報処理装置は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の構成において、前記オブジェクト特定部は、前記操作表示部及び利用者によって操作される第2の操作子から出力される情報に応じて、前記操作子及び前記第2の操作子によって指し示されるオブジェクトを特定し、前記オブジェクト移動部は、利用者によって操作される第2の操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、該位置の移動距離に応じた距離だけ移動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係るプログラムは、コンピューターを、画像を表示する表示領域を有し、該表示領域において操作子によって指し示される位置に応じた情報を出力する操作表示部の該表示領域に、1又は複数のオブジェクトを表示させるオブジェクト表示部と、前記操作表示部から出力される情報に応じて、前記操作子によって指し示されるオブジェクトを特定するオブジェクト特定部と、前記オブジェクト特定部によって前記オブジェクトが特定された状態において前記操作子により指し示される位置が前記表示領域において移動した場合に、前記オブジェクト特定部により特定されたオブジェクトを、前記操作子の移動距離と、当該オブジェクトに対応づいた1又は複数の方向について予め定められた係数であって、前記オブジェクトを複数の領域に分割した場合の該領域毎に設定された係数のうち、前記操作子が存在する領域に対応する係数とに応じた距離だけ移動させるオブジェクト移動部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び7に係る発明によれば、操作子の移動距離に基づき操作子が特定するオブジェクトを移動させる場合に、特定するオブジェクトに対応づく係数に基づいて移動させることが可能となる。
請求項2に係る発明によれば、操作子(利用者の指を含む)をタッチパネル(表示領域)上で滑らせる操作を行う場合に、操作子が表示領域に接触したまま移動した場合の移動距離に基づき操作子が特定するオブジェクトを移動させる場合に、特定するオブジェクトに基づく係数に基づいて移動させることが可能となる。
請求項3に係る発明によれば、オブジェクトの種類に適した移動速度でオブジェクトを移動させることができる。
請求項4に係る発明によれば、オブジェクトに対する操作子の相対的な位置関係に適した移動速度でオブジェクトを移動させることができる。
請求項5に係る発明によれば、オブジェクトの移動速度を利用者が設定することができる。
請求項6に係る発明によれば、タッチパネル(表示領域)に対する操作とそれ以外の操作子を用いた操作とのそれぞれの操作性を、操作子の種類毎に移動量を異ならせない場合と比べて両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】移動距離係数記憶領域に記憶された移動距離係数の内容の一例を示す図である。
図3】情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】情報処理装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図5】オブジェクト移動処理の内容の一例を説明するための図である。
図6】オブジェクト移動処理の内容の一例を説明するための図である。
図7】オブジェクト移動処理の内容の一例を説明するための図である。
図8】オブジェクト移動処理の内容の一例を説明するための図である。
図9】オブジェクト移動処理の内容の一例を説明するための図である。
図10】オブジェクト移動処理の内容の一例を説明するための図である。
図11】従来の装置における利用者の操作内容の一例を説明するための図である。
図12】従来の装置における利用者の操作内容の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<構成>
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理装置100の構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、タッチパネルを備える装置であり、例えばスマートフォンやタブレット型コンピューターである。図示のように、情報処理装置100の各部はバス11に接続され、バス11を介して各部間でデータのやり取りを行う。図において、制御部12は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサー121や、ROM(Read Only Memory)122、RAM(Random Access Memory)123を備え、ROM122又は記憶部13に格納されたコンピュータープログラムにしたがって情報処理装置100の制御を行う。記憶部13は、ハードディスク等の記憶部であり、情報処理装置100の制御に関するプログラム等の各種のプログラムが格納されている。操作表示部14は、タッチパネルとして機能する液晶ディスプレイ等の表示領域141を備えている。この表示領域141には文字を表す画像や、メニューリストを表す画像等の各種の画像が表示され、情報処理装置100の利用者はこの表示領域141に操作子(ペンや利用者の指を含む)で触れることにより各種の操作を行う。操作表示部14は、表示領域141に接触する操作子の位置に応じた情報を出力する。通信部15は無線又は有線により他の装置と通信を行うためのインターフェースである。
【0016】
記憶部13は、移動距離係数記憶領域131を有している。移動距離係数記憶領域131には、後述するオブジェクト移動処理において用いられる係数(以下「移動距離係数」という)が記憶されている。
【0017】
図2は、移動距離係数記憶領域131の記憶内容の一例を示す図である。図2に例示するテーブルでは、「操作オブジェクト種別」と「水平方向係数」と「垂直方向係数」との各項目が互いに関連付けて記憶されている。これらの項目のうち、「操作オブジェクト種別」の項目には、操作表示部14の表示領域141に表示されるメニューやアイコン、ウィンドウ等の画像(以下「オブジェクト」という)の種別を示す情報が格納される。「水平方向係数」の項目には、画面の向きを基準として水平方向(以下「x軸方向」という)についての移動距離係数が格納される。「垂直方向係数」の項目には、画面の向きを基準として画面の上下方向(以下「y軸方向」という)における移動距離係数が格納される。
【0018】
図3は、情報処理装置100の機能的構成の一例を示すブロック図である。図において、表示制御部1、操作特定部2及びオブジェクト特定部3は、制御部12がROM122又は記憶部13に記憶されたコンピュータープログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、図中の矢印はデータの流れを示すものである。表示制御部1は、操作表示部14の表示領域141に各種の画像を表示する。表示制御部1はオブジェクト表示部4を含む。オブジェクト表示部4は、操作表示部14の表示領域141に1又は複数の画像(オブジェクト)を表示する。
【0019】
操作特定部2は、操作表示部14から出力される情報に応じて、利用者の操作を特定する。オブジェクト特定部3は、操作表示部14から出力される情報と表示領域141の表示内容とに応じて、操作子によって指し示されるオブジェクトとそのオブジェクトの種別とを特定する。オブジェクトの特定処理は、例えば以下のようにして行われる。オブジェクト特定部3は、Linux(登録商標)等のOSが備えるウィンドウ管理機能(例えば、X WindowSystem)から表示されているウィンドウの一覧を取得し、タッチパネルデバイスから取得したタッチ位置情報でウィンドウの一覧を走査することでタッチされたウィンドウを特定する。オブジェクト特定部3は、ウィンドウのウィンドウ名やウィンドウタイプ属性等から走査したオブジェクトの情報を得る。
【0020】
オブジェクト移動部5は、操作子が表示領域141に接触したまま表示領域141上を移動した場合に、オブジェクト特定部3により特定されたオブジェクトを、表示領域141上で、操作子の移動距離とこのオブジェクトに対応づいた移動距離係数とに応じた距離だけ移動させる。この実施形態では、オブジェクト移動部5は、特定されたオブジェクトを、操作子の移動距離と移動距離係数とを乗算した距離だけ移動させる。なお、本実施形態において「オブジェクトを移動する」とは、ウィンドウ等のオブジェクトをスクロールバーによりスクロールする動作も含むものとする。
【0021】
<動作>
図4は、情報処理装置100が行う処理の流れを示すフローチャートである。図4に示す処理は、操作子が操作表示部14の表示領域141に触れることを契機として実行される。制御部12は、まず、上述した操作特定部2及びオブジェクト特定部3の処理を行う。すなわち、制御部12は、操作表示部14から出力される情報に応じて、操作子によって指し示される表示領域141上の位置を特定し、操作子によって指し示されるオブジェクトを特定する(ステップS1)。制御部12は、操作子によって指し示されている(操作子が押下している)位置にオブジェクトがあるか否かを判定し(ステップS2)、オブジェクトがないと判定された場合には(ステップS2;NO)、そのまま処理を終了する。一方、オブジェクトがあると判定された場合には、制御部12はステップS3以降の処理に進む。
【0022】
ステップS3において、制御部12は、操作子によって指し示されているオブジェクトに対応する移動距離係数を、移動距離係数記憶領域131に記憶されたテーブルを参照して特定する。この実施形態では、制御部12は、操作子によって指し示されているオブジェクトの種別を特定し、特定した種別に対応する「水平方向係数」と「垂直方向係数」とを特定する。具体的には、例えば、オブジェクトの種別が「プルダウンメニューウィンドウ」である場合には、「水平方向係数」が「−2」であり、「垂直方向係数」が「0」であると特定する。
【0023】
制御部12は、操作子(指)が表示領域141から離れたかを判定する(ステップS4)。操作子が表示領域141から離れたと判定された場合は(ステップS4;YES)、制御部12は、そのまま処理を終了する。一方、操作子が表示領域141から離れていない場合は(ステップS4;NO)、制御部12は、まず、操作子(指)の現在位置を保存する(ステップS5)。次いで、制御部12は、操作子が表示領域141から離れる(ステップS4;NO)まで、ステップS5乃至ステップS10の処理を繰り返し実行することにより、表示領域141の表示を更新する。具体的には、まず、制御部12は、操作子の表示領域141上の位置を取得し(ステップS6)、ステップS5で特定した位置と現在の位置との差分、すなわち操作子の移動距離を算出する(ステップS7)。この実施形態では、制御部12は、操作子の移動距離を、画面の向きを基準として画面の水平方向と垂直方向のそれぞれの移動距離を算出する。
【0024】
次いで、制御部12は、ステップS7の算出結果に従って操作子が移動したか否かを判定する(ステップS8)。この実施形態では、ステップS7の算出結果がゼロである場合には操作子は移動していないと判定される一方、算出結果がゼロでない場合には操作子が移動したと判定される。操作子が移動していないと判定された場合には(ステップS8;NO)、制御部12はステップS4の処理に戻る。一方、操作子が移動したと判定された場合は(ステップS8;YES)、制御部12は、画面の垂直方向及び水平方向のそれぞれについて、ステップS7で算出した操作子の移動距離とステップS3で特定した移動距離係数とを乗算し、オブジェクトの水平方向の移動距離と垂直方向の移動距離とを特定する(ステップS9)。制御部12は、ステップS9で算出した移動距離だけオブジェクトを移動させる(ステップS10)。具体的には、この実施形態では、オブジェクトの移動前の位置がXnow,Ynow、操作子(指)の移動距離がΔx,Δy、移動距離係数がh、vである場合は、制御部12は、移動後のオブジェクトの位置Xnew,Ynewを以下の式により求める。
new=Xnow+h×Δx
new=Ynow+v×Δy
【0025】
ここで、具体的なオブジェクトの移動内容について図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、制御部12が行うオブジェクトの移動処理の内容を説明するための図である。図5に示す例では、プルダウンメニューウィンドウが利用者の指(操作子)200によって指し示され、利用者の指が表示領域141に接触したまま矢印A1方向に移動する場合について示している。図5に示す例では、制御部12は、指200の移動距離を算出し、算出した移動距離に対して、プルダウンメニューウィンドウの種別に対応する移動距離係数を乗算してオブジェクトの移動量を算出する。具体的には、例えば、移動距離係数が図2に例示した内容(すなわちx軸方向の移動距離係数が「−2」、y軸方向の移動距離係数が「0」)である場合には、制御部12は、オブジェクト301を、指200のx軸方向の移動方向と逆方向(図5の矢印A3の方向)に、指200の移動量の2倍の量だけ移動させる。
【0026】
図6は、制御部12が行うオブジェクトの移動内容の他の例を示す図である。図6に示す例では、文書データやフォルダ等のオブジェクトを表す画像(以下「アイコン」という)302が利用者の指(操作子)200によって指し示され、利用者の指200が表示領域141に接触したままx軸方向と水平な方向(矢印A11の方向)に移動する場合を示している。制御部12は、例えば、アイコン302の種別に対応するx軸方向の移動距離係数が「5」である場合には、x軸方向について操作子が移動した方向(図6の矢印A12の方向)に、指200の5倍の移動量だけアイコン302を移動させる。
【0027】
また、図6に示す画面において、制御部12(オブジェクト移動部5)は、オブジェクトの移動内容を示す図形(図6の矢印A12)を表示する。なお、オブジェクトの移動内容を表す画像は、矢印を表す画像に限らず、他の画像であってもよい。要は、オブジェクトの移動軌跡等の移動内容が利用者に視覚的に把握されるものであればよい。また、制御部12は、操作子(指)の位置とオブジェクトの表示位置との距離が予め定められた閾値を超えた場合に、移動内容を表す画像を表示するようにしてもよい。
【0028】
図7は、制御部12が行うオブジェクトの移動内容の他の例を示す図である。図7に示す例では、文書データやフォルダ等のオブジェクトを表すアイコン303が利用者の指(操作子)200によって指し示され、利用者の指が表示領域141に接触したまま矢印A21方向に移動する場合を示している。制御部12は、例えばアイコン303の種別に対応するx軸方向の移動距離係数が「6」、y軸方向の移動距離係数が「1」である場合には、操作子の移動距離に対してx軸方向に6倍、y軸方向に1倍の移動量だけアイコン303を移動させる。また、図7に示す画面において、制御部12は、オブジェクトの移動内容を表す図形(図7の矢印A22)を表示する。なお、オブジェクトの移動内容を表す図形は矢印を表す画像に限らず、他の画像であってもよい。
【0029】
制御部12は、操作子(指)が液晶パネルから離れる(ステップS4;YES)まで、ステップS5乃至ステップS10の処理を繰り返し行い、液晶パネルの表示を更新する。
【0030】
ところで、マウス操作を前提としメニューを多用した旧来のソフトウェアをタッチ操作するには、指をマウスよりも長い距離を移動させる必要がある。具体的には、例えば、図11に示すように、メニューM1を選択して更にその中のサブメニューM2、サブメニューM3を選択する場合は、矢印A41、矢印A42、矢印A43と指を表示領域141に接触させたまま移動させる必要がある。この場合、矢印A42に示されるように指をx軸方向にまっすぐに移動させることが難しい場合があり、例えば矢印A45に示されるように指の移動方向がずれてしまう場合がある。更に、メニューの選択枝を選択し直す際には、図12に示すように、矢印A44に示すように指を長い距離だけ移動させる必要がある。このように、表示領域141に指を接触させたまま長い距離を移動させる場合には、操作が難しい場合がある。具体的には、例えば、右手人差し指で左方向や上方向になぞる操作は一般的に引っ掛かる(摩擦が大きい)ため、操作が難しい(図12参照)。それに対し本実施形態では、表示領域141上に触れた指をディスプレイ上で長い距離を特定の方向にまっすぐに移動させなければならないUIにおいて、移動距離係数に適切な値を設定することで移動距離が短くなり、操作が容易になる。
【0031】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、オブジェクトの種別毎にそれぞれ移動距離係数を記憶部13の移動距離係数記憶領域131に記憶しておく構成とし、制御部12が、操作子によって指し示されたオブジェクトの種別を特定し、特定した種別に対応する移動距離係数を用いてオブジェクトの移動距離を特定した。これに限らず、オブジェクトの種別毎に移動距離係数を記憶しない構成であってもよい。すなわち、制御部12がオブジェクトの種類に因らず、予め定められた係数に従ってオブジェクトの移動距離を算出する構成であってもよい。
【0032】
(2)上述の実施形態では、x軸方向とy軸方向との2つの方向についてそれぞれ、移動距離係数を予め設定しておく構成としたが、移動距離係数の設定の態様はこれに限らない。例えば、x軸、y軸、z軸の3つの方向についての移動距離係数を設定する構成であってもよい。また、複数の方向に限らず、ひとつの方向についての移動距離係数を設定する構成であってもよい。
【0033】
また、上述の実施形態では、x軸と、x軸に垂直なy軸方向との2つの方向についてそれぞれ、移動距離係数を予め設定しておく構成としたが、2つの方向が垂直な関係である必要はなく、他の関係の複数の方向についてそれぞれ移動距離係数を設定する構成であってもよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、図2に示したように、「プルダウンメニューウィンドウ」や「右クリックメニュー」の種別についての「垂直方向係数」の値がゼロである場合について説明したが、移動距離係数の値はこれに限らず、種々の値が設定され得る。
【0035】
(3)上述の実施形態において、移動距離係数が、情報処理装置100上で動作するアプリケーション毎に設定される構成であってもよい。また、この場合において、移動距離係数が設定されていないアプリケーションにおいては、制御部12は、利用者が表示操作部14を用いて指定した移動距離係数を用いるようにしてもよい。
【0036】
(4)上述の実施形態において、オブジェクト内の操作子の位置に応じて移動距離係数を異ならせるようにしてもよい。すなわち、オブジェクトを複数の領域に分割した場合のその領域毎に係数が設定される構成であってもよい。この場合の具体例について図8乃至図10を参照しつつ説明する。この変形例では、種別が「プルダウンメニューウィンドウ」のオブジェクトについて、x軸方向についてのオブジェクトの両端それぞれ1/4の領域(以下「両端領域」という)と、それ以外の中央の領域(以下「中央領域」という)とで、それぞれ異なる移動距離係数が設定されている。具体的には、例えば、中央領域については「水平方向係数」として「2」、「垂直方向係数」として「0」が設定される一方、両端領域については、「水平方向係数」として「0」、「垂直方向係数」として「0」が設定されてもよい。この場合は、両端領域においては水平方向係数と垂直方向係数とが共にゼロであるから、すなわち、操作子が両端領域にある場合には、オブジェクトは移動しない。制御部12は、操作子によってオブジェクトが指し示された(タッチされた)場合に、操作子がオブジェクトの両端領域に位置するか、中央領域に位置するかを判定し、各領域に対応する移動距離係数を用いてオブジェクトの移動距離を算出する。
【0037】
図8乃至図10に示す例では、利用者が指200をx軸方向に水平な方向(矢印A51の方向)に移動させる場合において、指200がラインL1を超えるまではオブジェクト304は移動しない。一方、指200がラインL1を超えると、オブジェクト304が指の移動方向と逆方向(図9の矢印A52方向)に移動し始める。その後、指200が矢印A51の方向に移動し、ラインL2に到達すると、オブジェクト304はスライド(移動)を停止する。この例では、サブメニュー項目を選択する直前(指がラインL2に到達したとき)にオブジェクトの移動が停止し、選択が行い易い。
【0038】
(5)上述の実施形態において、移動距離係数の値を利用者が設定するようにしてもよい。この場合は、利用者が操作表示部14を操作すると、操作表示部14は操作された内容に応じた情報を出力し、制御部12は、操作表示部14から出力される情報に応じて、移動距離係数の値を設定する。
【0039】
(6)上述の実施形態において、制御部12が、移動距離係数の値を動的に変更するようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部12が、オブジェクトの移動量が予め定められた閾値以上となった場合に移動距離係数の絶対値を小さくする、といったように、オブジェクトの移動量に応じて移動距離係数の値を変更するようにしてもよい。オブジェクトの移動量が大きいほど移動距離係数の絶対値を小さくする(すなわち移動速度を遅くする)ことにより、例えば、オブジェクトをおおまかな位置に移動させた後における細かい移動作業を利用者が行い易い。移動距離係数の変更の態様としては、例えば、オブジェクトの移動量と移動距離係数の値とを対応付けたテーブルを予め記憶部13に記憶しておき、制御部12がこのテーブルを参照して移動距離係数の値を特定してもよく、また、例えば、予め定められた関数を用いてオブジェクトの移動量から移動距離係数の値を算出するようにしてもよい。
【0040】
また、他の例として、制御部12が、例えばアイコンが大きい場合には移動距離係数の絶対値を大きくする、といったように、オブジェクトの表示サイズに応じて移動距離係数を変更する構成であってもよい。オブジェクトの表示サイズが大きいほど移動距係数の絶対値を大きくする一方、オブジェクトの表示サイズが小さいほど移動距離係数の絶対値を小さくすることで、小さいオブジェクトに対する細かい移動作業を利用者が行い易い。
【0041】
また、他の例として、制御部12が、操作表示部14の表示領域141のサイズや、オブジェクトが表示されている画面のサイズに応じて移動距離係数の値を変更してもよい。具体的には、例えば、表示領域141の物理的なサイズが大きいほど移動距離係数の絶対値を大きくする一方、表示領域141のサイズが小さいほど移動距離係数の絶対値を小さくしてもよい。また、他の例として、制御部12が、移動させるオブジェクトと表示領域141に表示されている他のオブジェクトとの位置関係に応じて移動距離係数の値を変更してもよい。具体的には、例えば、制御部12が、移動させているオブジェクトと表示領域141に表示されている他のオブジェクトとの距離が予め定められた閾値以下となった場合に、移動距離係数の絶対値を小さくしてもよい。
【0042】
(7)上述の実施形態において、マウスやタッチパッド(第2の操作子)を用いて操作を行う場合は、移動距離係数を用いたオブジェクトの移動を行わない(すなわち従来通りカーソルの移動分だけオブジェクトを移動させる)ように制御してもよい。すなわち、制御部12は、利用者によって操作されるマウスやタッチパッド(第2の操作子)から出力される情報に応じて、第2の操作子によって指し示されるオブジェクトを特定し、第2の操作子により指し示される位置が表示領域141上を移動した場合に、特定されたオブジェクトを、その位置の移動距離だけ移動させる。すなわち、第2の操作子により指し示される位置が表示領域141上を移動した場合は、制御部12は、そのオブジェクトの移動距離係数を用いることなく、第2の操作子により指し示される位置の移動距離に応じた距離だけ移動させる。一方、操作子が操作表示部14に接触したまま移動した場合は、上述の実施形態と同様に、制御部12は、操作子により指し示される位置の移動距離と移動距離係数とに応じた距離だけオブジェクトを移動させる。このように操作子の種別により移動距離係数を用いるか否かを切り替えることにより、それぞれの操作子の操作性が両立される。
【0043】
また、制御部12が操作子の種別により移動距離係数を用いるか否かを切り替えるに限らず、例えば、制御部12が、操作子の種別に応じて用いる移動距離係数を切り替えるようにしてもよい。この場合、移動距離係数をオブジェクトの種別毎に記憶する構成としたが、更に操作子の種別毎に移動距離係数を設ける構成とし、制御部12が、オブジェクト毎の移動距離係数と操作子毎の移動距離係数とを乗算した値を用いてオブジェクトの移動距離を算出するようにしてもよい。
【0044】
(8)上述の実施形態では、制御部12は、操作子の移動距離と移動距離係数とを乗算することによってオブジェクトの移動距離を算出したが、オブジェクトの移動処理の算出態様はこれに限らない。例えば、制御部12が、操作子の移動距離の二乗値と移動距離係数との乗算結果をオブジェクトの移動量としてもよい。また、他の例として、例えば、オブジェクトの移動処理の最大値を予め設定しておき、操作子の移動異距離と移動距離係数との乗算結果が予め定められた閾値を越える場合には、この閾値をオブジェクトの移動距離とするようにしてもよい。要は、制御部12は、オブジェクトを、操作子の移動距離とそのオブジェクトの移動距離係数とに応じた距離だけ移動させるものであればよい。
【0045】
(9)上述の実施形態では、操作表示部14の表示領域141上で操作子(指等)を接触させることによって表示領域141上において指し示される位置を特定したが、利用者によって表示領域141上で指し示される位置を特定する態様はこれに限らず、何らかのセンサにより表示領域141上で指し示される位置を特定するものであればよい。すなわち、利用者によってオブジェクトが指し示されている状態(オブジェクト特定部3によってオブジェクトが特定された状態)において操作子によって指し示される位置が表示領域141上を移動した場合に、特定されたオブジェクトを表示領域141上で移動距離係数に応じた距離だけ移動させてもよい。具体的には、例えば、眼球(操作子)の動きを検出するセンサを情報処理装置100に設ける構成とし、制御部12が、このセンサからの検出結果に従って利用者の視線の方向を特定することによって指し示される位置を特定してもよい。この態様においても、利用者によって指し示されるオブジェクトを移動距離係数に応じて移動させることにより、利用者が表示領域141上において指し示す位置を移動させるための作業が軽減される。
【0046】
(10)上述の実施形態では単体の情報処理装置100を用いたが、これに限らず、通信手段で接続された2以上の装置が、上述した実施形態に係る情報処理装置100の機能を分担し、それら複数の装置を備えるシステムが同実施形態の情報処理装置100を実現してもよい。例えば、タッチパネルを備える第1のコンピューター装置と、上述のオブジェクト移動処理を行ってオブジェクトの移動先を特定し、タッチパネルの表示内容を更新するためのデータを第1のコンピューター装置に出力する第2のコンピューター装置とが通信手段で接続されたシステムとして構成されていてもよい。
【0047】
(11)上述したROM122又は記憶部13に記憶されているプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))など)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピューターが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネット等の通信回線を介して情報処理装置100にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…表示制御部、2…操作特定部、3…オブジェクト特定部、4…オブジェクト表示部、5…オブジェクト移動部、11…バス、12…制御部、13…記憶部、14…操作表示部、15…通信部、100…情報処理装置、121…プロセッサー、122…ROM、131…移動距離係数記憶領域、200…指。
図1
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図12