(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されているが、特にポリプロピレンは、衛生的特性ばかりか耐湿性や耐薬品性にも優れているため、各種食品類、飲料類、医薬品類などが収容される包装容器としての用途に特に有用である。即ち、容器の内容物と接触する内面や、人体や有雰囲気に接触する外面がポリプロピレンにより形成した場合には、このようなポリプロピレンの特性を最大限に活かすことができる。
例えば、ポリプロピレンの単層構造の容器では、容器の内面や外面は必然的にポリプロピレンにより形成されることとなるが、ガスバリア性の中間層などを備えた多層構造の容器では、最内面層や最外面層がポリプロピレンにより形成されることとなる。
【0003】
このようなポリプロピレンについては、各種特性を改善するために、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、エチレン含有量が2乃至8重量%、MFR(メルトフローレイト)が2.5g/10min以上、分子量分布(Mw/Mn)が3乃至5のエチレン−プロピレン・ランダム共重合体、或いは水素添加石油樹脂を含有するエチレン−プロピレン・ランダム共重合体を用いて最外表面層を形成することにより、表面光沢性を改善することが提案されている。
また、特許文献2には、融点が120〜145℃、MFRが0.5〜10g/10minの結晶性プロピレン共重合体の使用が耐熱性や透明性、成形性の点で望ましいことが開示されている。
特許文献3には、ポリプロピレンに直鎖状超低密度ポリエチレンが配合された樹脂組成物により最外層を形成することにより、耐寒強度が改善されることが開示されている。
特許文献4には、ポリプロピレンに水素添加ポリマー(例えばスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物)を配合した樹脂組成物を用いて容器を構成する層を形成することが衝撃強度の向上に有効であることが開示されている。
【0005】
ところで、プラスチック成形品においては、表面を改質するために、その成形に用いる樹脂若しくは樹脂組成物に、滑剤に代表されるブリード性添加剤を配合される場合が多い。
例えば、特許文献5には、ポリオレフィン及び滑剤を含有する樹脂組成物により成形され、滑り性が向上した成形体(例えばキャップの内面に設けられるライナー)が開示されている。
また、特許文献6には、容器内面のポリオレフィン層に不飽和脂肪族アミドと飽和脂肪族アミドとを配合することにより、容器内容物が容器内面に付着せず、速やかに排出させることが開示されている。
さらに、特許文献7には、容器外面のポリオレフィン層に滑剤を配合することにより、容器搬送時における容器同士のくっつきや容器と搬送ベルトとの接合などが防止され、容器の搬送性が向上することが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<ポリプロピレン(A)>
本発明の樹脂組成物において、ポリプロピレン(A)は、最も多量に使用されているものであり、この樹脂組成物の基本性能を発現させるものである。このようなポリプロピレン(A)は、一般に、55重量%以上、特に58乃至95重量%の量で、この樹脂組成物に含まれる。
【0020】
本発明において、ポリプロピレン(A)としては、その用途に応じて、プロピレンホモポリマーのみならず、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン或いは環状オレフィンと、プロピレンとのランダムもしくはブロック共重合体を使用することができるが、特に成形性の観点から、MFR(230℃)が0.1g/10min以上で5.0g/10min未満の範囲、より好ましくは0.3〜5.0g/10minの範囲にあるものが好ましい。
即ち、MFRが上記範囲外であるものは、後述する低結晶性重合体(B)とブレンドしたときの成形性が大きく損なわれたり、或いはドローダウンを生じ易くなるなどの傾向がある。
【0021】
また、上記のポリプロピレンは、特に透明性や表面光沢などに加えて、耐熱性、剛性等の観点から、高結晶質のものが好ましい。このような高結晶質のポリプロピレンは、一般に高密度であり、例えば0.89g/cm
3以上の密度を有している。特にDSC(示差熱量分析)測定による結晶融解熱量が60J/g以上のものがより好適である。
本発明において、ポリプロピレン(A)として最も好適に使用されるものは、上述した各種物性を有するプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
【0022】
<低結晶性重合体(B)>
本発明において、ポリプロピレン(A)にブレンドされる低結晶性重合体(B)は、用いるポリプロピレン(A)に比して低結晶性のものであり、具体的には、先にも述べたように、重合体中の主成分のガラス転移点が0℃以下であり、使用される温度域でゴム状態にあり、かつ、DSCにより測定される結晶融解熱量がポリプロピレン(A)よりも小さいか或いはX線学的に非晶質(結晶格子に由来するX線回折ピークを示さない)ものである。このような低結晶性重合体(B)は、一般的にポリプロピレン(A)よりも低密度であるが、特に、超低密度ポリエチレン(B1)、水添スチレンブタジエンゴム(B2)及びプロピレン系重合体(B3)から選択されたものである。即ち、低結晶性だけでいえば、他の重合体にも該当するものはあるが、上記の重合体(B1〜B3)は、ポリプロピレン(A)との相溶性が高く、しかも、ポリプロピレンの特性を損なわないからである。
【0023】
本発明においては、このような低結晶性重合体(B)が、樹脂組成物中に3乃至40重量%、好ましくは5乃至40重量%の量で配合される。即ち、このような量で低結晶性重合体(B)を配合することにより、ポリプロピレン(A)の性能を損なわず、さらには成形不良などを生じることなく、ブレード性添加剤のブリーディング速度を高め、例えば分子量が400以上である大きな化合物であっても、著しく短時間で表面にブリーディングせしめ、その性能を発揮させることが可能となるわけである。
【0024】
また、本発明においては、低結晶性重合体(B)は、ポリプロピレン(A)に比して軟質であるという性質を有している。従って、かかる低結晶性重合体(B)の使用により、耐衝撃強度を向上させるという利点もある。
【0025】
(B1)超低密度ポリエチレン;
低結晶性重合体(B)として使用される超低密度ポリエチレン(B1)は、メタロセン系触媒を用いてエチレンと少量の他のα−オレフィンとを共重合することにより得られたものである。例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキサン、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンを多くとも数%程度の量でエチレンと共重合して短鎖の枝を長鎖に導入して低密度としたものであり、短鎖の枝が少なく、分子の線形性が高い(即ち、直鎖状である)という性質を有しているが、少量のα−オレフィンが共重合されているため、例えばポリプロピレンに比して結晶性は低く、その密度は、一般に、0.880乃至0.910g/cm
3の範囲にある。特に、このDSC測定による結晶融解熱量は50J/g以下とかなり小さい。
【0026】
このような超低密度ポリエチレン(B1)は、成形性やポリプロピレン(A)との相溶性の観点から融点が50〜65℃のものでなければならず、特にMFR(190℃)が1.0乃至40g/10minの範囲にあるものが好適に使用される。
【0027】
上記の超低密度ポリエチレン(B1)は、エチレンがリッチなエチレン−α・オレフィン共重合体であり、長鎖分岐がほとんど無く線形性が高いため、ポリマー鎖の絡み合いをほどきやすいと考えられ、特にブリード性添加剤が移動するための微小な空間を形成しやすく、ブリーディング速度の向上の点で最も好適である。
【0028】
(B2)水添スチレンブタジエンゴム;
水添スチレンブタジエンゴム(B2)は、X線学的に非晶質であり、且つポリプロピレン(A)との相溶性が高く、ポリプロピレンの優れた特性を損なわないため、低結晶性重合体(B)として使用することができる。
【0029】
このような水添スチレンブタジエンゴムとしては、例えば、スチレン含量が5〜40重量%程度であるものが成形性の点で好ましく、特にMFR(230℃)が、用いるポリプロピレン(A)と同程度であるもの、例えば、1.0乃至20g/10minの範囲にあるものが最も好適に使用される。
【0030】
(B3)プロピレン系重合体;
プロピレン系重合体(B3)は、用いるポリプロピレン(A)に比して低結晶性のものであり、例えば、ポリプロピレン(A)と比較するとコモノマー量が多いプロピレン−α・オレフィン共重合体、或いはコモノマーが長鎖であるプロピレン−α・オレフィン共重合体が、低結晶性重合体(B)として使用される。
【0031】
このようなプロピレン系重合体(B3)は、ポリプロピレン(A)に比して低結晶性である限り特に制限されないが、基本的には、密度や結晶融解熱量が大きく異なるものが好適に使用される。例えば、密度が0.900g/cm
3以下、特に0.86乃至0.88g/cm
3とかなり低密度であり、或いはDSC測定による結晶融解熱量が50J/g以下の範囲にあるものが、分子量の大きなブリーディング性添加剤のブリーディング速度を顕著に速めるという点で最適である。
【0032】
また、上記のプロピレン系重合体(B3)も、用いるポリプロピレン(A)と同程度のMFRを有していることが成形性の点で望ましく、例えば、1.0乃至20g/10minの範囲のMFR(230℃)を有していることが好ましい。
【0033】
尚、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、ポリプロピレン(A)と低結晶性重合体(B)の存在は、例えば結晶融解熱量や溶媒に対する溶解性の差を利用し、DSC測定による融解曲線やクロマトグラフにより確認することができ、特に分子量分布と結晶化度や組成分析とを同時に測定できるクロス分別クロマトグラフとDSC測定とによりポリプロピレン(A)と低結晶性重合体(B)のと定量も可能である。
【0034】
<ブリード性添加剤>
本発明において、ブリード性添加剤は、
樹脂に相溶せず、樹脂表面にブリードするものであり、係るブリード性添加剤として滑り性を向上させる滑剤が使用される。
このような滑剤の具体例としては、これに限定されるものではないが、以下のものを例示することができる。
【0035】
(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの。
(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの。
(ハ)ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等の脂肪族アミド系のもの。
(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル系のもの。
(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの。
(ヘ)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン。
(ト)ポリオルガノシロキサン。
(チ)中鎖脂肪酸トリグリセライド、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリントリオレート、デカグリセリンオレート等のグリセリン脂肪酸エステル系のもの。
【0036】
本発明において、上記の
滑剤の中でも分子量が400以上のものが使用される。即ち、分子量が大きい化合物は、基本的にブリーディング速度が遅いのであるが、本発明では、このような分子量が大きいブリード性添加剤であっても、そのブリーディング速度を大きく向上させることが可能となるからである。
【0037】
また、上記のブリード性添加剤の中でも脂肪族アミド等の両親媒性化合物が好適である。即ち、このような両親媒性化合物は、樹脂表面にブリーディングしたとき、多層構造を形成し、その性能を十分に発揮することができるからである。
従って、本発明において、最も好ましいものは、分子量が400以上の脂肪酸アミド、例えばエチレンビスオレイン酸アミドが最適である。
【0038】
また、ブリード性添加剤の配合量は、その種類や要求特性によっても異なるが、少なくとも、このポリプロピレン系樹脂組成物中に0.6重量%以上、より好ましくは1重量%以上の量で配合されているのがよい。
即ち、この樹脂組成物中のブリード性添加剤の濃度が低すぎると、後述の実施例からも分かるように、その表面への移動速度も大きく低下してしまい、ブリーディング速度の向上には不利となってしまうからである。
【0039】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前述したポリプロピレン(A)及び低結晶性重合体(B)及びブリード性添加剤を溶融混練等により添加混合して形成されるが、その用途に応じて、紫外線吸収剤、顔料、染料、各種の充填材等を適宜の量で配合されていてよい。
【0040】
<用途>
上述した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ブリード性添加剤による特性が成形後迅速に発揮されるという利点に加え、透明性、成形加工性、耐湿性、耐薬品性、衛生性、さらには耐熱性などに優れて
いるため、ボトルやカップ形状の容器の内面層として使用される。かかる容器は、ブリーディング性添加剤として使用される滑剤の特性が迅速に発揮されるため、例えばケチャップ、ソース、糊、マヨネーズなど、粘稠なペースト状の内容物が充填されている場合にも、容器からの内容物の取り出しを容易に行うことができる。
【0041】
上記の容器は、一般に多層構造とするのがよく、このポリプロピレン系樹脂組成物を用い、少なくとも内外層の何れか一方を形成することにより、内外層にブリード性添加剤の性能を発揮させることができる。
さらに、内外層の間の中間層には、ガスバリア性樹脂層を、接着剤層を介して設けることがよく、これにより、容器の酸素遮断性を向上させ、内容物の酸化劣化を長期間にわたって防止することができる。
【0042】
1.内外層;
このポリプロピレン系樹脂組成物を用いて容器の内層を形成したときには、ブリード性添加剤により容器内容物に対する滑り性が向上するため、容器内容物の排出性(絞り出し性)を高めることができる。例えば、容器を倒立状態に保持すると、容器内容物は、速やかに口部側に落下し、口部から速やかに排出される。
また、外層にこのポリプロピレン系樹脂組成物を適用した場合には、容器の搬送工程における容器同士のくっつきや容器と搬送ベルトとの粘着などを防止し、容器の搬送性を高めることができる。
即ち、内外層の何れに本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を適用した場合にも、容器の成形後、直ちにブリード性添加剤による上記の特性が発揮されることとなる。
【0043】
尚、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いた内外層の厚みは、用途に応じた容器の基本特性が維持され、容器の全体厚みが不必要に厚くならない程度に設定されればよい。
【0044】
2.ガスバリア性樹脂層;
また、上記の容器においては、内外層の間の中間層として、ガスバリア性樹脂層(以下、単に「ガスバリア層」と呼ぶことがある)を設けることにより、酸素透過による内容物の酸化劣化を有効に抑制することができる。
【0045】
かかる層の形成に使用されるガスバリア性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドが代表的であり、特に高い酸素遮断性を有しているという観点から、エチレンビニルアルコール共重合体が好適に使用される。
【0046】
エチレンビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、適度な成形性(MFR)を有するもの、例えば内外層のポリプロピレン系樹脂組成物と同程度のMFRを有するエチレンビニルアルコール共重合体が、ガスバリア性樹脂として最も好適に使用される。
【0047】
上述したガスバリア層の厚みは、優れた酸素遮断性を発揮する程度に設定され、例えば、5乃至50μm程度の範囲の厚みに設定されることが一般的である。
【0048】
尚、上記のガスバリア性樹脂層に酸素吸収性を付与し、そのガスバリア性(酸素遮断性)を高めることもできる。
酸素吸収性を付与するためには、上記のガスバリア性樹脂層に酸化性重合体を配合しておけばよく、さらに、必要により遷移金属触媒(酸化触媒)を加えることにより、酸素吸収性をより向上させることができる。即ち、酸化性重合体を酸化させることにより、酸素を吸収捕捉し、ガスバリア性樹脂のガスバリア機能を高めるものであり、遷移金属触媒は、酸化性重合体の酸化を促進させるために適宜配合されるものである。
【0049】
上記のような酸素吸収性のガスバリア性樹脂層は、それ自体公知であり、特開2003−266619号等には、酸化性重合体や遷移触媒等について開示されている。
例えば、酸化性重合体としては、エチレン系不飽和基含有重合体が使用される。即ち、この重合体は、炭素−炭素二重結合を有しており、この二重結合部分が酸素により容易に酸化され、これにより酸素の吸収捕捉が行なわれる。このようなエチレン系不飽和基含有重合体は、例えば、ブタジエン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン等の環状非共役ジエンに由来する酸化性構成単位を有する単独重合体、或いは共重合体を例示することができる。これらの重合体には、分散性を高めるために、カルボン酸基、カルボン酸無水物基等の官能基が導入されていてもよい。このような酸化性重合体は、上記のガスバリア性樹脂100重量部当り1乃至15重量部程度の量で配合することができる。
また、適宜使用される遷移金属触媒において、遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属、銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族金属、クロム等の第VI族金属、マンガン等の第VII族金属等があり、これらの中でも特にコバルトは、酸素吸収性(酸化性重合体の酸化)を著しく促進させる上で好適である。このような遷移金属の触媒は、一般に、無機塩(例えばハライド)、有機塩(例えばカルボン酸塩)或いは錯塩(例えばβ−ジケトンやβ−ケト酸エステルとの錯体)が挙げられる。このような遷移金属触媒は、例えば前述したガスバリア性樹脂100重量部当たり当り金属量換算で10乃至1000ppm程度の量で配合することができる。
【0050】
3.接着剤層;
接着剤層は、酸変性ポリオレフィンから形成されるものであり、各種の低密度ポリエチレンの内外層とガスバリア性樹脂のガスバリア層とを強固に接着させるための接着剤として機能するものである。
一般に、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどを用いてポリエチレン等のポリオレフィンをグラフト変性したものであり、好適には、マレイン酸もしくは無水マレイン酸でグラフト変性されたポリエチレンが使用される。
【0051】
また、成形加工性の観点から、酸変性ポリエチレンのMFR(190℃)は0.2乃至30g/10min程度のものが好適である。
【0052】
本発明において、上述した接着剤層は、良好な密着性と共に、容器の厚みが必要以上に厚くならない程度の厚みで使用されるべきであり、通常、1乃至50μm、特に2乃至20μm程度の厚みを有していればよい。
【0053】
4.その他の層;
また、少なくとも内外層の何れかに本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を適用した多層構造容器は、かかる容器の特性が損なわれない範囲で、例えばこの容器成形時に発生するリグラインド(スクラップ樹脂)をバージンのポリプロピレン(A)と混合して用いることもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、リグラインドの量は、バージンのポリプロピレン(A)100重量部当り10乃至60重量部程度の量とするのがよい。
【0054】
また、このようなリグラインド層の位置は、容器特性に悪影響を与えないように、内層或いは外層に隣接する位置とすればよく、その厚みは、容器の厚みが不必要に厚くならない程度であればよい。
【0055】
上記のような層構造を有する多層構造容器は、代表的には、各層を形成するための樹脂組成物を用いての共押出により、前述したチューブ状のパリソンを溶融押出し、例えば2分割金型を用いてのダイレクトブロー成形を行ってボトル形状に成形することにより製造される。勿論、所定の層構造を有する平板形状のプリフォームを押出成形、射出成形等により成形し、これをプラグアシスト成形し、カップ形状の容器とすることも可能である。
【0056】
上述した多層構造容器は、特に粘稠なペースト状の内容物、例えば、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、シャンプーなどを収容する容器として好適であり、特に内容物を絞りだすスクイズボトルとして特に好適である。
【実施例】
【0057】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、実施例で行った各種の評価或いは測定、及び用いた樹脂、ブリード性添加剤成分は以下の通りである。
【0058】
1.内容物滑落性試験
約500gの内容物(トマトケチャップ)が充填されている試料ボトルから、シール箔を剥がし、室温下にて400gの内容物を取り出した後、キャップを装着して該ボトルを正立させて室温下で10分間放置した。
次いで、このボトルを25℃にて倒立させ、内容物がボトルの底部側からキャップ側に移動する挙動を観察した。倒立開始から5分後のボトルにおいて、内容物がキャップ側に移動し終わったものを滑落性良好、移動し終わらなかったものを滑落性不良として、内容物の滑落性の評価を行った。
【0059】
2.滑落性能発現期間の評価
後述の方法にて成形したボトルを22℃60%RHの環境下にて保管した。所定の期間保管したボトルに対し、温度85℃のトマトケチャップを充填した後、口部をシールし水槽にて冷却した後、22℃60%RHの環境下で1週間保管した。保管後、上述の内容物滑落性試験を行った。成形日からの保管期間を変数とし、滑落性良好となるまでの期間を評価した。
【0060】
3.示差走査熱量測定
使用するポリプロピレン(A)、および該ポリプロピレン(A)に比して相対的に低結晶性の重合体(B)(各々約7mg)について、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製Diamond DSC)を用いて測定を行った。
試料を、25℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査し、200℃にて3分間保持し、200℃から−50℃まで降温速度10℃/minで走査し、−50℃にて3分間保持した。その後、−50℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、各ポリマーの融点(融解ピーク温度)、ならびに結晶の融解熱(ΔH)を求めた。各ポリマーの測定で得られた結晶の融解熱(ΔH)を用い、ポリプロピレンに対してはポリプロピレンの完全結晶の融解熱(ΔH)=207J/gで除し、超低密度ポリエチレンに対してはポリエチレンの完全結晶の融解熱(ΔH)=293J/gで除し、各ポリマーの結晶化度を算出した。また、低結晶性重合体においては、重合体のメインのガラス転移点を、−50℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから求めた。ガラス転移点がこの範囲に観測できなかったものについては、−50℃以下と判断した。
【0061】
4.ボトル内層比測定
後述の方法で成形した多層ボトルの底から50mmの位置での胴部水平断面における層構成を偏光顕微鏡にて観察し、ボトルの胴部層構成を求めた。断面に対し、0°、90°、180°、270°の位置での層構成を観察し、4方向での平均値をボトルの層構成とした。
【0062】
<ポリプロピレン(A)>
ポリプロピレンとして、ランダムポリプロピレン(密度=0.90g/cm
3、230℃でのMFR=1.2)を用いた。用いたポリプロピレンの密度、MFR、融点、結晶の融解熱、結晶化度を表1に示す。
【0063】
<低結晶性重合体(B)>
超低密度ポリエチレン(B1);
超低密度ポリエチレンとして、メタロセン系低密度ポリエチレン(密度=0.88g/cm
3、190℃でのMFR=2.2)を用いた。用いた超低密度ポリエチレンの密度、MFR、融点、結晶の融解熱、結晶化度、ならびにガラス転移点を表1に示す。
水添スチレン−ブタジエンゴム(B2);
水添スチレン−ブタジエンゴムとして、スチレン含有量が10%の水添スチレンブタジエンゴム(密度=0.89g/cm
3、230℃でのMFR=3.5)を用いた。用いた水添ブタジエンゴムの密度、MFR、融点、結晶の融解熱、結晶化度、ならびにガラス転移点を表1に示す。
低結晶性プロピレン系重合体(B3);
低結晶性プロピレン系重合体として、アタクチックポリプロピレンとアイソタクチックポリプロピレンの混合物(密度=0.87g/cm
3、230℃でのMFR=3.0)を用いた。用いた低結晶性プロピレン系重合体の密度、MFR、融点、結晶の融解熱、結晶化度、ならびにガラス転移点を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
<ブリード性添加剤>
ブリード性添加剤として、エチレンビスオレイン酸アミド(分子量=589)を用いた。
【0066】
(実施例1)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=88/10/2(重量%)の割合となるよう配合した樹脂ペレットを供給し、50mm押出機に第2内層形成用樹脂として、ランダムポリプロピレン(MFR=1.2)の樹脂ペレットを供給し、30mm押出機Aに接着剤層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリプロピレン、30mm押出機Bにガスバリア層形成用樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂ペレットをそれぞれ供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、公知のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量18gの4種6層の多層ボトルを作製した。作製したボトルを用いて滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0067】
このボトルの胴部層構成は以下の通りである。
最外層:20μm
接着材層:10μm
ガスバリア層:25μm
接着材層:10μm
第2内層:265μm
最内層:70μm (最内層比18%)
【0068】
(実施例2)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=78/20/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は18%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0069】
(実施例3)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=68/30/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は18%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0070】
(実施例4)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=58/40/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は18%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0071】
(実施例5)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)(MFR=3.5)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=93/5/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は17%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0072】
(実施例6)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)(MFR=3.5)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=88/10/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は18%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0073】
(実施例7)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)(MFR=3.5)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=78/20/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は18%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0074】
(実施例8)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)(MFR=3.5)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=68/30/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は20%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0075】
(実施例9)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)(MFR=3.5)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=58/40/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は21%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0076】
(実施例10)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として低結晶性プロピレン系重合体(B3)(MFR=3.0)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B3)/ブリード性添加剤=88/10/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は20%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後14日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0077】
(実施例11)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として低結晶性プロピレン系重合体(B3)(MFR=3.0)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B3)/ブリード性添加剤=78/20/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は19%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後14日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0078】
(実施例12)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)(MFR=3.5)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=89/10/1(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は18%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0079】
(実施例13)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=69/30/1(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は17%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後4日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0080】
(実施例14)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B2)/ブリード性添加剤=59/40/1(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は20%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後1日から滑落性良好となった。結果をまとめて表2に示す。
【0081】
(比較例1)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/ブリード性添加剤=98/2(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は17%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後57日においても滑落性が不良となった。結果をまとめて表2に示す。
【0082】
(比較例2)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=89.5/10/0.5(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は17%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後65日後でも滑落性が不良となった。結果をまとめて表2に示す。
【0083】
(比較例3)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=79.5/20/0.5(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は16%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後65日後でも滑落性が不良となった。結果をまとめて表2に示す。
【0084】
(比較例4)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=69.5/30/0.5(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は16%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後65日後でも滑落性が不良となった。結果をまとめて表2に示す。
【0085】
(比較例5)
40mm押出機に、最外層および最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン(MFR=1.2)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)(MFR=2.2)、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/(B1)/ブリード性添加剤=59.5/40/0.5(重量%)の割合とした以外は、実施例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの胴部の最内層比は17%であった。作製したボトルを用いて、滑落性能発現期間の評価を行った。本構成のボトルでは成形後65日後でも滑落性が不良となった。結果をまとめて表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
比較例1では、最内層形成用樹脂として、ポリプロピレン(A)としてランダムポリプロピレン、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを(A)/ブリード性添加剤=98/2(重量%)の割合でボトルを成形した。この場合、成形後57日においても滑落性が不良となり、滑落性を良好とさせるまでにはさらなる期間が必要であることが分かる。これは、ブリード性添加剤のブリード速度が非常に遅いことが原因と考えられる。
【0088】
実施例1から4では、最内層形成樹脂として、ポリプロピレン(A)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)を用い、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを2重量%の割合に固定し、ボトルを成形した。この場合では、成形後1日で滑落性が良好となり、産業上、非常に適用しやすいボトルが得られていることが分かった。これは、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)を併用することにより、ブリード速度が劇的に向上したためと考えられる。
【0089】
実施例5から9では、最内層形成樹脂として、ポリプロピレン(A)、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)を用い、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを2重量%の割合に固定し、ボトルを成形した。この場合も、成形後1日で滑落性が良好となり、産業上、非常に適用しやすいボトルが得られていることが分かった。これは、低結晶性重合体(B)として水添スチレンブタジエンゴム(B2)を併用することにより、ブリード速度が劇的に向上したためと考えられる。
【0090】
実施例10、11では、最内層形成樹脂として、ポリプロピレン(A)、低結晶性重合体(B)として低結晶性プロピレン系重合体(B3)を用い、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを2重量%の割合に固定し、ボトルを成形した。この場合では、成形後14日で滑落性が良好となり、産業上、適用しうるボトルが得られていることが分かった。これは、低結晶性重合体(B)として低結晶性プロピレン系重合体(B3)を併用することにより、ブリード速度が向上したためと考えられる。
【0091】
実施例12から14では、最内層形成樹脂として、ポリプロピレン(A)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)あるいは水添スチレンブタジエンゴム(B2)を用い、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを1重量%の割合に変更し、ボトルを成形した。この場合も、成形後1日から4日で滑落性が良好となり、産業上、非常に適用しやすいボトルが得られていることが分かった。このことから、低結晶性重合体(B)の効果によって、ブリード性添加剤の添加量を下げても滑落性が良好となることが分かった。
【0092】
比較例2から5では、最内層形成樹脂として、ポリプロピレン(A)、低結晶性重合体(B)として超低密度ポリエチレン(B1)を用い、ブリード性添加剤としてエチレンビスオレイン酸アミドを0.5重量%の割合に変更し、ボトルを成形した。この場合では、成形後65日においても滑落性が不良となり、滑落性を良好とさせるまでにはさらなる期間が必要であることが分かる。このことから、低結晶性重合体(B)を用いても、ブリード性添加剤の添加量が0.5wt%の場合では、短期間で滑落性を良好にすることができないことが分かり、ブリード性添加剤の添加下限値が明らかになった。