特許第6107132号(P6107132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107132
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
   H02M3/28 C
   H02M3/28 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-286940(P2012-286940)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-131380(P2014-131380A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 宏志
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−118754(JP,A)
【文献】 特開2002−300777(JP,A)
【文献】 特開2009−303281(JP,A)
【文献】 特開平08−065879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を介して入力電圧を所定の周波数でスイッチングしてトランスの一次巻線に印加し、該トランスの二次巻線に生起される交番電圧を整流・平滑して所定の出力電圧を得るスイッチング電源装置本体と、
このスイッチング電源装置本体の出力電圧に応じて前記スイッチング素子をスイッチングする駆動信号のパルス幅をフィードバック制御して前記出力電圧を所定の電圧レベルに一定化する制御回路と、
この制御回路に設けられ、前記スイッチング電源装置本体の過負荷検出時に前記スイッチング素子をスイッチングする前記駆動信号の周波数を低減して前記スイッチング電源装置本体の出力電流を制限する周波数低減回路と、
前記制御回路の起動時に、所定期間に亘って該制御回路を過負荷検出状態に設定する初期状態設定回路と
を具備したことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記スイッチング素子をスイッチングする前記駆動信号に伴って変化するVF信号の電圧に応じて発振周波数が可変される発振器の出力信号と、前記スイッチング電源装置本体の直流出力電圧を検出して生成されるフィードバック電圧および該制御回路の起動時に生成されるソフトスタート用制御電圧とをそれぞれ比較して前記スイッチング素子をスイッチングする駆動信号を生成するものであって、
前記初期状態設定回路は、前記制御回路の起動時に、所定期間に亘って前記ソフトスタート用制御電圧を接地電位にプルダウンして前記駆動信号の生成を禁止すると共に、前記フィードバック電圧を過負荷状態を示す電圧にプルアップするスイッチ回路からなる請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記スイッチング素子をスイッチングする前記駆動信号に伴って変化するVF信号の電圧に応じて発振周波数が可変される発振器の出力信号が最低電圧となるタイミングから、前記発振器の出力信号が前記フィードバック電圧および前記ソフトスタート用制御電圧のうちの低い方の電圧を超えるタイミングに亘って前記スイッチング素子をオンにする駆動信号を生成するものである請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記初期状態設定回路は、前記制御回路に印加される電源電圧を受けて該制御回路を駆動する内部電源が生成されたときに発せられるリセット信号を受けて起動され、前記フィードバック電圧が過負荷状態を示す電圧に達したときに動作解除されるものである請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記発振器は、発振周波数の下限値を可聴周波数域よりも高い周波数に規定する最低発振周波数制限機能を備えたものである請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記発振器は、所定の電流でコンデンサを充放電して予め設定した上限電圧および下限電圧にて規定される電圧幅の三角波信号を生成するものであって、
前記最低発振周波数制限機能は、前記コンデンサの充電時に前記三角波信号の電圧が所定時間内に前記上限電圧に達しないとき、前記コンデンサを強制的に前記下限電圧以下まで放電させるタイマ回路からなる請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動時における出力電圧の立上り特性を改善したスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来一般的なフォワード型のスイッチング電源装置の概略構成を示している。このスイッチング電源装置には、ダイオード・ブリッジ回路DS1を介して交流電圧Vacを全波整流し、入力コンデンサCinにて平滑化した入力電圧Vinが入力される。前記スイッチング電源装置の主体部をなすスイッチング電源装置本体1は前記入力電圧Vinを、トランスTの一次巻線Taを介してスイッチングするスイッチング素子Qを備える。そして前記スイッチング電源装置本体1は、前記トランスTの二次巻線Tbに生起される交番電圧をダイオードDS2,DS3を介して整流し、リアクトルLと出力コンデンサCoutとからなる平滑回路を介して平滑して所定の出力電圧Voutを得るように構成される。
【0003】
電源IC2は前記スイッチング素子Qをオン・オフ駆動する制御回路をなす。この電源IC2は、基本的には前記出力電圧Voutを検出する出力電圧検出回路3から与えられるFB信号に応じて前記スイッチング素子Qの駆動を制御する。具体的には前記電源IC(制御回路)2は、前記FB信号に応じて前記スイッチング素子Qをスイッチング(オン・オフ)する駆動信号のパルス幅(オン幅)をフィードバック制御する。尚、前記出力電圧検出回路3は、直列接続された抵抗Ra,Rbにて前記出力電圧Voutを分圧して検出する。そして前記出力電圧検出回路3は、シャントレギュレータSRに設定された電圧と前記抵抗Ra,Rbを介して検出された電圧との誤差電圧を前記FB信号として、フォトカプラPCを介して前記電源IC2に出力する。
【0004】
ここで前記電源IC2の電源入力端子VCCには、前記ダイオード・ブリッジ回路DS1から抵抗Rを介して起動電流が供給される。この起動電流によって前記電源入力端子VCCに接続されたコンデンサCが充電される。そして前記電源IC2は、前記コンデンサCの充電電圧が該電源IC2の低電圧誤動作防止回路(UVLO:Under Voltage Lock Out)の解除電圧を超えたときに前記スイッチング素子Qの駆動を開始する。前記スイッチング素子Qの駆動開始により前記スイッチング電源装置本体1が動作すると、前記電源入力端子VCCには、前記トランスTの補助巻線Tcに生起された電圧がダイオードDを介して印加される。以降、前記電源IC2は、前記補助巻線Tcから前記ダイオードDを介して供給される電圧を受けて動作する。
【0005】
さて前記電源IC2は、概略的には図6に示すように構成される。この電源IC2は、端子RTに外付けされた抵抗に応じて基本発振周波数が規定される電圧制御型の発振器21を備える。この発振器21は、例えば該発振器21に内蔵したコンデンサ(図示せず)の充放電を利用して三角波信号を生成すると共に、この三角波信号に同期した方形波信号を生成する。PWM制御用の比較器22は、前記発振器21が出力する三角波信号の電圧と、前記FB信号および前記電源IC2の起動時に生成されて0Vから漸増するソフトスタート用のCS信号の各電圧とをそれぞれ比較して、前記スイッチング素子Qのオン幅を規定するパルス幅の制御信号を生成する。
【0006】
具体的には前記比較器22は、例えば図7に示すように前記三角波信号が最低電圧(ボトム)となるタイミングから、該三角波信号の電圧が前記FB信号および前記CS信号の一方を上回るタイミングに至るパルス幅の前記制御信号を生成する。そしてこの制御信号が、前記スイッチング電源装置本体1に対する動作条件の下で出力ドライバ回路23に入力され、該出力ドライバ回路23から前記スイッチング素子Qをオン・オフ駆動する駆動信号OUTが出力される。
【0007】
尚、前記発振器21には、前記スイッチング素子Qをスイッチングする駆動信号OUTに応じて変化するVF電圧が、周波数低減回路24を介して入力される。前記VF電圧は、フォワード型スイッチング電源の場合、前記駆動信号OUTを平滑したオンデューティに比例した電圧である。また前記周波数低減回路24は、過負荷検出回路25によって前記スイッチング電源装置本体1の過負荷(OLP:OverLoad Protection)が検出されたとき、前記VF電圧に応じて前記発振器21の動作を制御する。具体的には前記周波数低減回路24は、過負荷が検出され、且つ前記VF電圧が所定の電圧閾値に満たない低電圧であるとき、前記VF電圧に応じて前記発振器21の発振周波数を、ひいては前記スイッチング素子Qのスイッチング周波数を低減する。
【0008】
このようなスイッチング周波数の低減制御により、過負荷時における前記スイッチング電源装置本体1の出力電流が制限される。この出力電流の制限により、前記スイッチング電源装置の出力電圧・電流特性は、例えば図8に示すような電流垂下特性となる。ちなみに過負荷時にスイッチング周波数を低減して出力電流を垂下し、これによって二次側負荷への過電流供給を保護する技術については、例えば特許文献1に紹介されるように、この種のスイッチング電源装置において幅広く用いられている。
【0009】
尚、図6において26は、IS端子に入力される信号から前記スイッチング素子Qの過電流を検出する過電流検出用の比較器であり、27は前記FB信号から過負荷を検出する過負荷検出用の比較器である。また28は前記電源入力端子VCCの電圧を判定する低電圧誤動作防止(UVLO)用の比較器である。更に41は内部電源(5V)であり、42はイニシャルリセット信号を生成する初期化回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−300777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
さて前述した如く構成されたスイッチング電源装置は、電源の投入によって前記電源IC2の前記電源入力端子VCCに加わる電圧が上昇し、該電圧が前記電源IC2の低電圧誤動作防止電圧を超えたときに該低電圧誤動作防止機能(UVLO)が解除される。この低電圧誤動作防止機能の解除により、コンデンサがそれぞれ接続された前記電源IC2のFB端子およびCS端子への電流供給が開始される。そしてこれらの端子電圧(FB信号,CS信号)が所定値を超えたときに前記発振器21の発振動作が開始する。
【0012】
前記スイッチング電源装置の起動直後、前記電源IC2は通常モードで前記スイッチング素子Qの駆動を開始し、これに伴って前記FB信号の電圧が図9に示すように高くなる。そして前記FB信号の電圧が、予め設定した過負荷閾値VthOLPを超えたとき、前記電源IC2は前記通常モードから過負荷モードに移行する。またこの起動時には、前記スイッチング素子Qの駆動に伴って前記VF電圧は緩やかに上昇するので、前記過負荷モードへの移行と同時に前述した出力電流の垂下制御が働く。この結果、前記過負荷モードへの移行に伴って前記スイッチング素子Qのスイッチング周波数が低下する。
【0013】
しかし起動時における前記直流出力電圧Voutの立ち上がりが早い場合や、該直流出力電圧Voutの立ち上がりの途中で過負荷モードに切り替わると、図9に示すように前記駆動信号OUTの周波数(スイッチング素子Qのスイッチング周波数)が急激に低下する。すると過負荷モードへの移行に伴って前記直流出力電圧Voutの上昇が一時的に止まり、該直流出力電圧Voutの上昇特性が、図9において破線で囲むように、いわゆる段付きになることが否めない。このように前記直流出力電圧Voutが単調増加しない場合には、例えば二次側出力に接続される後段のICのパワーオン・リセットや低電圧誤動作防止機能の誤動作を招来する虞が生じる。
【0014】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、起動時における出力電圧の立上り特性を改善し、二次側出力に接続される後段のICのパワーオン・リセットや低電圧誤動作防止機能等の誤動作を招くことなく安定に起動することのできるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するべく本発明に係るスイッチング電源装置は、
スイッチング素子を介して入力電圧を所定の周波数でスイッチングしてトランスの一次巻線に印加し、該トランスの二次巻線に生起される交番電圧を整流・平滑して所定の出力電圧を得るスイッチング電源装置本体と、
このスイッチング電源装置本体の出力電圧に応じて前記スイッチング素子をスイッチングする駆動信号のパルス幅をフィードバック制御して前記出力電圧を所定の電圧レベルに一定化する制御回路と、
この制御回路に設けられ、前記スイッチング電源装置本体の過負荷検出時に前記スイッチング素子をスイッチングする前記駆動信号の周波数を低減して前記スイッチング電源装置本体の出力電流を制限する周波数低減回路と、
前記制御回路の起動時に、所定期間に亘って該制御回路を過負荷検出状態に設定する初期状態設定回路と
を具備したことを特徴としている。

【0016】
具体的には前記制御回路は、前記スイッチング素子をスイッチングする前記駆動信号に伴って変化するVF信号の電圧に応じて発振周波数が可変される発振器の出力信号と、前記スイッチング電源装置本体の直流出力電圧を検出して生成されるフィードバック電圧(FB信号)および該制御回路の起動時に生成されるソフトスタート用制御電圧(CS信号)とをそれぞれ比較して前記スイッチング素子をスイッチングする駆動信号を生成するように構成される。そして前記初期状態設定回路は、例えば前記制御回路の起動時に、所定期間に亘って前記CS信号を接地電位にプルダウンして前記駆動信号の生成を禁止すると共に、前記FB信号を過負荷状態を示す電圧にプルアップするスイッチ回路として構成される。
【0017】
好ましくは前記制御回路は、前記スイッチング素子をスイッチングする前記駆動信号に伴って変化するVF信号の電圧に応じて発振周波数が可変される発振器の出力信号が最低電圧となるタイミングから、前記発振器の出力信号が前記FB信号および前記CS信号のうちの低い方の電圧を超えるタイミングに亘って前記スイッチング素子をオンにする駆動信号を生成するように構成される。また前記初期状態設定回路は、例えば前記制御回路に印加される電源電圧を受けて該制御回路を駆動する内部電源が生成されたときに発せられるリセット信号を受けて起動され、前記FB信号が過負荷状態を示す電圧に達したときに動作解除される。
【0018】
尚、前記発振器については、発振周波数の下限値を可聴周波数域よりも高い周波数に規定する最低発振周波数制限機能を備えることが望ましい。具体的には前記発振器は、所定の電流でコンデンサを充放電して予め設定した上限電圧および下限電圧にて規定される電圧幅の三角波信号を生成するように構成される。そして前記最低発振周波数制限機能は、前記コンデンサの充電時に前記三角波信号の電圧が所定時間内に前記上限電圧に達しないとき、前記コンデンサを強制的に前記下限電圧以下まで放電させるタイマ回路として実現することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上述した如く構成されたスイッチング電源装置によれば、その起動時に前記スイッチング素子を駆動する前記制御回路に対して強制的に過負荷モードが設定されるので、該制御回路は発振周波数を低下させた状態で動作を開始することになる。従って前記スイッチング電源装置本体の出力電圧は、前記CS信号に基づくソフトスタート動作によって緩やかに上昇し、これに伴って前記VF信号も緩やかに上昇する。そして前記出力電圧が所定の電圧レベルに達したとき、FB端子電圧が過負荷電圧VthOLPより低下し、前記制御回路は過負荷モードから通常モードに移行する。
【0020】
故に本発明に係るスイッチング電源装置によれば、起動時における出力電圧が単調増加して立ち上がるので、二次側出力に接続される後段のICのパワーオン・リセットや低電圧誤動作防止機能の誤動作等の不具合を招くことなく安定に起動する。しかも本発明によれば、起動時に前記CS信号を接地電位にプルダウンすると共に、前記FB信号を過負荷状態を示す電圧にプルアップするだけなので、簡易にして効果的にスイッチング電源装置の安定した起動を実現することができる。
【0021】
またこの際、前述したように前記発振器の発振周波数を可聴周波数域よりも高い周波数に制限しているので、前記発振周波数(スイッチング周波数)を低減して出力電流を制限する際、いわゆる音鳴りが生じる等の不具合を招くこともない。従って本発明による作用効果は、その実用的利点が多大である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置における制御回路(電源IC)の概略構成を示す図。
図2】本発明に係るスイッチング電源装置における起動時の動作を示す各部の信号の変化を示す図。
図3図1に示す制御回路における発振器の概略構成を示す図。
図4図3に示す発振器における乗算器に対する電流生成回路の構成例を示す図。
図5】従来一般的なフォワード型のスイッチング電源装置の概略構成図。
図6】従来の制御回路の概略構成を示す図。
図7】PWM制御用の比較器の作用を示す信号波形図。
図8】出力電圧・電流の垂下特性を示す図。
図9】従来のスイッチング電源装置における起動時の各部の信号の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置について説明する。
【0024】
この実施形態に係るスイッチング電源装置は、例えば図5に示すようなフォワード型のスイッチング電源装置として実現される。即ち、スイッチング電源装置の主体部をなすスイッチング電源装置本体1は入力電圧Vinを、トランスTの一次巻線Taを介してスイッチングするスイッチング素子(例えばMOS-FET)Qを備える。そして前記スイッチング電源装置本体1は、前記トランスTの二次巻線Tbに生起される交番電圧をダイオードDS2,DS3を介して整流し、リアクトルLと出力コンデンサCoutとからなる平滑回路を介して平滑して所定の出力電圧Voutを得るように構成される。
【0025】
ここでこの実施形態に係るスイッチング電源装置が特徴とするところは、前記スイッチング素子Qの駆動を制御する制御回路(電源IC)2が、その起動時に強制的に過負荷モードを設定する機能を備える点にある。図1は本発明の特徴的な、起動時に過負荷モードを設定する機能を備えた前記制御回路(電源IC)2の概略構成を示している。尚、図1において、前述した図6に示す従来の電源IC2と同じ構成の部分については同一符号を付して示してある。
【0026】
図1に示す本発明に係る電源IC2は、図6に示す従来の電源IC2の構成に加えて、起動時に所定期間に亘って該電源IC(制御回路)2を過負荷検出状態(過負荷モード)に設定する初期状態設定回路30を備えることを特徴としている。この初期状態設定回路30は、イニシャルリセット信号を受けてリセットされるRS型のフリップフロップ31を備える。このフリップフロップ31は、後述するように過負荷検出信号OLPによってセットされる。
【0027】
前記イニシャルリセット信号は、初期化回路42から一定時間に亘って発せられる。この初期化回路42は、前記低電圧誤動作防止(UVLO)用の比較器28の出力を受けて内部電源回路41が作動し、該内部電源回路41が内部電源電圧(5V)の出力を開始したときに起動される。即ち、前記イニシャルリセット信号は、電源の投入によって前記電源入力端子VCCに加わる電圧が上昇して最低動作保証電圧に達した後、前記初期化回路42から出力される。
【0028】
一方、前記電源IC2の前記CS信号が入力される端子CSには、該端子CSを接地電位(GND)に短絡する第1のスイッチ32が接続されている。この第1のスイッチ32は、例えばnチャネル型のMOS-FETからなり、インバータ回路33を介して反転された前記フリップフロップ31の出力をゲートに受けてオン・オフ制御される。従って前記第1のスイッチ32は、前記フリップフロップ31がリセットされたとき、前記端子CSを接地電位にプルダウンして前記CS信号を強制的に0Vに設定する。
【0029】
また前記電源IC2の前記FB信号が加えられる端子FBには、該端子FBを前記内部電源電圧(5V)にプルアップして前記FB信号を入力する抵抗34が接続されている。この抵抗34に加えて前記端子FBには、更に抵抗35を介して前記端子FBを前記電源入力端子VCCの端子電圧にプルアップするトランジスタ36が接続されている。このトランジスタ36は、トランジスタ37を負荷とする定電流源38から供給されるバイアス電流を受けてオンとなる。尚、前記トランジスタ36は、前記フリップフロップ31の出力により制御される第2のスイッチ(MOS-FET)39によりオン・オフ制御される。従って前記トランジスタ36は、前記フリップフロップ31がリセットされたときにオンとなり、該フリップフロップ31がセットされたときにオフとなる。
【0030】
そして前記トランジスタ36がオンしたとき、前記抵抗35を介して前記端子FBに外付けされたコンデンサ(図5を参照)が急速に充電される。この結果、前記端子FBに印加される前記FB信号の大きさに拘わることなく、前記端子FBが内部電源電圧(5V)に強制的にプルアップされる。尚、前記抵抗35としては、例えば前記抵抗34が10kΩの場合、1kΩ程度のものが用いられる。
【0031】
このように構成された初期状態設定回路30を備えた前記電源IC2によれば、電源が投入されて該電源IC2が起動したとき、前記フリップフロップ31のリセットに伴って前記端子CSが強制的に接地電位(GND)にプルダウンされると共に、前記端子FBが強制的に内部電源電圧(5V)にプルアップされる。この状態は、前記端子FBの電圧を判定する前記過負荷検出用の比較器27により過負荷状態であると判定され、前記過負荷検出回路25において過負荷モードが設定される。
【0032】
すると前記過負荷検出回路25が出力する過負荷検出信号OLPによって前記フリップフロップ31がセットされ、これによって前記端子CSのプルダウンおよび前記端子FBのプルアップがそれぞれ解除される。従って前記電源IC2は、その起動時に動作する前記初期状態設定回路30の制御を受けて、所定期間に亘って強制的に過負荷モードに設定された状態で起動することになる。
【0033】
そして前述した如く過負荷モードが設定され、これに伴って前記フリップフロップ31がセットされると、前記端子CSに外付けされたコンデンサ(図5を参照)の充電が開始され、該端子CSの電圧(CS信号)が次第に上昇する。また同時に前記端子FBに外付けされた前記コンデンサ(図5を参照)の充電が停止する。しかしこのとき、前記出力電圧Voutは十分に立ち上るまでに至らないので、前記出力電圧Voutを受けて動作する前記出力電圧検出回路3も動作しない。従って前記フォトカプラPCを介して前記FB信号が前記電源IC2にフィードバックされることもない。これ故、前記電源IC2は、前述した如く設定された過負荷モードを維持する。
【0034】
しかる後、前記コンデンサの充電によって前記端子CSの電圧(CS信号)が次第に高くなり、前記発振器21における後述する下限電圧閾値Vlowを超えると、該発振器21は過負荷モードでの発振周波数が低減制御された状態で発振を開始する。この結果、前記スイッチング素子Qのスイッチングが開始され、該スイッチング素子Qは、そのスイッチング周波数が低減制御された状態でオン・オフ駆動される。
【0035】
そして前記端子CSの電圧(CS信号)の高まりに伴って、図7を参照して説明したように前記スイッチング素子Qを駆動する駆動信号OUTのオン幅が広がると、これによって前記出力電圧Voutが次第に上昇する。そしてこの出力電圧Voutの上に伴って前記VF信号の電圧が高くなるので、前記発振器21の発振周波数が徐々に高くなり、前述した周波数低減制御が解除されて通常モードに移行する。この結果、図2に起動時における各部の信号の変化を示すように、前記発振器21は、その発振周波数が低減制御された低い周波数から発振動作を開始することになる。

【0036】
この結果、前記スイッチング素子Qは低いスイッチング周波数でスイッチング動作を開始した後、次第にそのスイッチング周波数を高くし、通常モードに移行して所定の周波数でスイッチング駆動されることになる。そして通常モードに移行した後には、前記スイッチング素子Qは前記出力電圧Voutに基づく前記駆動信号OUTのパルス幅制御(PWM制御)の下でそのオン幅が制御され、前記出力電圧Voutを一定化することになる。
【0037】
従って上記実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、従来装置のようにその起動時における出力電圧Voutの立ち上がりが段付きとなることがなく、図2に示すように単調増加する。よって従来装置において懸念された、例えばパワーオン・リセットや、低電圧誤動作防止機能の誤動作等の不具合を招来することがない。故に本発明によれば簡易にして効果的にスイッチング電源装置の安定した起動を確立することができ、その実用的利点が多大である。
【0038】
ここで前記発振器21について説明する。前述した如く起動時に過負荷モードを設定し、前記発振器21をその発振周波数を低減制御した状態から発振させると、これに伴って前記スイッチング素子Qもまた、そのスイッチング周波数が低減制御された状態でスイッチングを開始する。この際、起動時における前記発振器21の発振周波数が20kHz以下の可聴周波数帯域であると、前記スイッチング素子Qのスイッチングに伴って、いわゆる音鳴りが発生する。従って前記発振器21の最低発振周波数を前記可聴周波数帯域よりも高い周波数、例えば25kHzに設定することが望ましい。
【0039】
図3は、最低発振周波数を25kHzに設定した電圧制御型の前記発振器21の概略的な構成例を示している。この発振器21は、充放電制御されてその充電電圧を三角波状に変化させるコンデンサ21aを備える。このコンデンサ21aは、直列に接続されて相補的にオン・オフ制御されるトランジスタ(MOS-FET)MP3,MN3により充放電が制御される。前記コンデンサ21aは、前記トランジスタMP3がオンしたとき、トランジスタMP2を介して充電電流Ionにより充電される。またコンデンサ21aは、前記トランジスタMN3がオンしたとき、トランジスタMN2を介して放電電流Ioff1により放電される。
【0040】
尚、前記トランジスタMP2を介する充電電流Ionは、該トランジスタMP2と対をなしてカレントミラー回路を構築するトランジスタMP0により規定される。また前記トランジスタMN2を介する放電電流Ioff1は、該トランジスタMN2と対をなしてカレントミラー回路を構築するトランジスタMN1により規定される。特に前記トランジスタMN1に流れる電流は、該トランジスタMN1に直列に接続されて前記トランジスタMP0との間でカレントミラー回路を構築したトランジスタMP1により規定される。
【0041】
ここで前記トランジスタMP0は、前記端子RTに外付けされた抵抗(図5を参照)に応じて設定される非反転増幅器21bの出力電流に比例する電流を前記トランジスタMP1,MP2にそれぞれ流す役割を担う。従って前記端子RTに外付けされた抵抗は、前記コンデンサ21aの充放電時定数を決定する。また前記トランジスタMP0には、前記トランジスタMP1,MP2と並列に該トランジスタMP0との間でカレントミラー回路を構成するトランジスタMP5が接続されている。
【0042】
このトランジスタMP5を介して得られる電流は、乗算器21cに供給されて前述した過負荷モード時における前記コンデンサ21aの放電電流Ioff2の生成に用いられる。ここで前記乗算器21cは、前記トランジスタMP5から供給される電流Iin、予め設定された電流IA、および前記VF信号の電圧レベルに応じて定まる電流IBを入力し、
Iin×IB/IA=Iout
なる演算を実行して、前記放電電流Ioff2を規定する電流Ioutを生成する。
【0043】
ちなみに前記電流IA,IBは、例えば図4に示す如く構成された電流生成回路により生成される。具体的には前記電流IAは、周波数低減動作を開始する制御電圧(例えば2.5V)に応じた電流を生成するバッファアンプ51の出力電流をカレントミラー回路52を介して取り出すことにより生成される。また前記電流IBは、前記VF信号をレベル調整した信号VF2に応じた電流を生成するバッファアンプ53の出力電流をカレントミラー回路54を介して取り出すことにより生成される。
【0044】
尚、前記信号VF2は、前記VF信号を抵抗分圧し、増幅器を介してレベル調整して周波数低減制御を開始する電圧を2.5Vに設定するVFレベル変換回路55により生成される。また前記VF信号は、前述したように前記駆動信号OUTを平滑したオンデューティに比例した電圧である。従って過負荷状態で前記VF信号が2.5Vに満たない場合、前記乗算器21cの出力電流Ioutは、前記電流Iinよりも前記電流比(IB/IA)の分だけ小さくなる。
【0045】
前述した発振器21の説明に戻ると、前記乗算器21cから出力される電流Ioutは、トランジスタMN5,MN6からなるカレントミラー回路を介して取り出される。一方、前記トランジスタMN6と前記トランジスタMN3との間、および前記トランジスタMP1と前記トランジスタMN1との間には、前記過負荷検出信号OLPによって相補的にオン・オフ動作するスイッチとしてのトランジスタMP4,MN4がそれぞれ介装されている。
【0046】
前記トランジスタMP4は、前記過負荷検出信号OLPがLレベルときにオンして前記トランジスタMP1から出力される電流を前記トランジスタMN1に供給し、前記トランジスタMN2を介する前記コンデンサ21aの放電電流Ioff1を設定する。このとき前記トランジスタMN4はオフし、前記トランジスタMN6は前記トランジスタMN2から切り離される。従って前記コンデンサ21aは、前記トランジスタMN2に流れる電流により放電される。
【0047】
これに対して前記トランジスタMN4は、前記過負荷検出信号OLPがHレベルのときにオンし、前記トランジスタMN4を前記トランジスタMN3に直列接続する。このとき前記トランジスタMP4はオフし、前記トランジスタMN6から出力される電流の前記トランジスタMN1への供給を停止するので前記トランジスタMN2はオフとなる。従って前記コンデンサ21aは、前記トランジスタMN6に流れる電流により放電される。この結果、前記コンデンサ21aは、過負荷モードが設定されたとき、前記VF信号に基づいて設定された放電電流Ioff2(<Ioff1)により放電される。
【0048】
ここで前述した各カレントミラー回路を介してそれぞれ出力される電流が、その入力側の電流に等しいとすると、過負荷モード時における前記コンデンサ21aの放電電流Ioff2は、通常モード時における前記コンデンサ21aの放電電流Ioff1よりも小さくなる(Ioff2<Ioff1)。この結果、コンデンサ21aの放電時間が遅くなり、後述するように前記発振器21の発振周波数が低下する。
【0049】
さて上述した如く充放電される前記コンデンサ21aの端子電圧CTは、並列に設けられた2つの比較器21d,21eにそれぞれ入力される。前記比較器21dは、前記端子電圧CTが所定の上限電圧閾値Vhighに上昇したとき、その出力をHレベルに反転させてRS型のフリップフロップ21fをセットする。また前記比較器21eは、前記端子電圧CTが所定の下限電圧閾値Vlowまで低下したとき、その出力をHレベルに反転させて前記フリップフロップ21fをリセットする。
【0050】
このようにしてセット・リセットされる前記フリップフロップ21fの出力により、前記一対のトランジスタMP3,MN3が相補的にオン・オフされる。この結果、前記コンデンサ21aは、その端子電圧CTが前記上限電圧閾値Vhighに達するまで充電された後、該端子電圧CTが前記下限電圧閾値Vlowに低下するまで放電される。そしてこのコンデンサ21aの充放電が繰り返し実行され、該コンデンサ21aの端子電圧CTが所定周波数の前記三角波信号として出力される。また前述した如くセット・リセットされる前記フリップフロップ21fの出力は、前記方形波信号として出力される。
【0051】
ところで前記フリップフロップ21fをリセットする前記比較器21eの出力は、タイマ回路21gのリセット信号(初期化信号)としても与えられている。このタイマ回路21gは、当該発振器21の最低発振周波数を規定する役割を担うもので、例えば前記最低発振周波数が25kHzの場合、40μsを計時するものからなる。このタイマ回路21gは、その出力によって前記コンデンサ21aに並列接続されたスイッチ(MOS-FET)21hをオンし、該コンデンサ21aの充電電荷を放電する。この放電により前記コンデンサ21aの端子電圧CTは、前述した下限電圧閾値Vlowを下回る接地電位(OV)まで低下する。
【0052】
ちなみに前記コンデンサ21aの充放電周期が40μsよりも短く、前記発振器21が25kHz以上の周波数で発振動作しているとき、前記タイマ回路21gは、前記40μsの計時を完了しない。即ち、前記タイマ回路21gは前記リセット信号を受けて初期化され、40μsの計時を開始する。しかし前記コンデンサ21aの充放電周期が40μsよりも短い場合、前記40μsの計時が完了する前に前記比較器21eの出力によりリセットされ、再度初期化されて前記40μsの計時を開始する。従って前記発振器21の発振周波数が25kHz以上である限り、前記タイマ回路21gの出力によって前記コンデンサ21aが強制的に放電されることがない。
【0053】
しかし前述した過負荷モードによって前記コンデンサ21aの放電電流Ioff(=Ioff2)が少なくなり、その放電時間が長くなって該コンデンサ21aの充放電周期が40μsよりも長くなると、前記タイマ回路21gは前記比較器21eによりリセットされる前に前記40μsの計時を完了する。すると前記タイマ回路21gによって前記スイッチ21hがオンとなり、前記コンデンサ21aが強制的に放電され、該コンデンサ21aの充放電周期が40μsに制限される。換言すれば前記発振器21の最低発振周波数が25kHzに制限される。
【0054】
このように構成された発振器21を備えて構築される前記制御回路2によれば、前述したようにその起動時に過負荷モードを設定し、起動時における前記スイッチング素子Qのスイッチング周波数を低減する場合であっても、音鳴りの問題を招来することがない。即ち、起動時に過負荷モードを設定し、前記VF信号の電圧に応じて発振周波数を低減した前記駆動信号OUTにより前記スイッチング素子Qのスイッチングを開始する場合であっても、起動時におけるスイッチング周波数を25kHz以上に設定することができる。従って音鳴りの問題を招来することなしに本スイッチング電源装置を起動することが可能となる。
【0055】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。ここではフォワード型のスイッチング電源装置を例に説明したが、フライバック型のスイッチング電源装置を構築する場合にも同様に適用することができる。この場合、前記VF端子には、前記VCC端子電圧を分圧して求められる該VCC端子電圧に比例する電圧を入力すれば良い。また過負荷を検出してスイッチング周波数を低減する手法については、例えば特許文献1に開示される手法等を適宜採用可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
Q スイッチング素子
T トランス
1 スイッチング電源装置本体
2 電源IC(制御回路)
3 出力電圧検出回路
21 発振器
21a コンデンサ
21d,21e 比較器
21f フリップフロップ
21g タイマ回路
21h スイッチ(MOS-FET)
22 PWM制御用の比較器
23 出力ドライバ回路
24 周波数低減回路
25 過負荷検出回路
26 過電流検出用の比較器
27 過負荷検出用の比較器
28 低電圧誤動作防止(UVLO)用の比較器
30 初期状態設定回路
31 フリップフロップ
32 第1のスイッチ(MOS-FET)
33 インバータ回路
34,35 抵抗
36,37 トランジスタ
38 定電流源
39 第2のスイッチ(MOS-FET)
41 内部電源(5V)
42 初期化回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9