(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の樹脂組成物は、酸価が3.0mgKOH/g以上であるシリコーン微粒子、および透明樹脂を含む。酸価が3.0mgKOH/g以上のシリコーン微粒子が透明樹脂に含まれることで、別途添加される蛍光体の自然沈降を抑制し、該透明樹脂の硬化前においても蛍光体の均一な分散状態を維持することができる。
【0018】
そのメカニズムの詳細は解明中であるが、以下のように推察される。まず、前記シリコーン微粒子を含まず蛍光体を含む樹脂組成物の場合、蛍光体は良分散であるが該樹脂組成物はニュートニアン流動を示すため、蛍光体はその自重により経時で沈降する。このようなものは、降伏値を持たない。一方、蛍光体を含まず前記シリコーン微粒子を含む樹脂組成物の場合、チキソトロピー性を発現し、降伏値をもつ。これに対し、シリコーン微粒子と蛍光体を共に含む樹脂組成物の場合、絶対粘度は高くなるものの、降伏値は蛍光体を含まない場合と同様の値であることから、前記シリコーン微粒子と蛍光体は独立した単分散状態または同種粒子の凝集体状態で存在しているのではなく、異種粒子が互いに強い相互作用で会合した構造体を形成していると推察される。つまり、シリコーン微粒子表面に存在する酸性官能基が、蛍光体表面の官能基(環状エーテル基、ヒドロキシ基、金属カルボニル基など)と静電的相互作用により強く会合し、前記シリコーン微粒子が蛍光体を取り囲む形で構造体を形成することによって、前記シリコーン微粒子が立体障害となり蛍光体同士の凝集・沈殿を抑制し、蛍光体の分散安定化および沈降抑制が発現しているものと推察される。
【0019】
本発明により得られる蛍光体沈降抑制効果は、用いられるシリコーン微粒子表面の酸性官能基の量によって、適宜調整することができる。すなわち、シリコーン微粒子の酸価が3.0mgKOH/g以上であることが必須であり、7.0mgKOH/g以上であることが好ましく、8.0mgKOH/g以上であることがより好ましい。シリコーン微粒子の酸価が前記下限値以上であることで、蛍光体の分散状態を安定して維持することができる。一方、シリコーン微粒子の酸価が3.0mgKOH/g未満である場合は、蛍光体との相互作用が弱くなるため、蛍光体の分散状態を維持することができない。また、上限は特に制限はないが、20.0mgKOH/g以下であることが好ましく、15.0mgKOH/g以下であることがより好ましく、10.0mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0020】
(酸性官能基はシラノール基)
シリコーン微粒子の酸価は、粒子表面に存在する酸性官能基に由来する。前記酸性官能基は、シリコーン微粒子合成時にできるシラノール基であることが好ましい。前記シラノール基であれば、重合反応条件を適宜操作することにより微粒子表面のシラノール基の量を容易に調節することができる。また、前記シラノール基は、該微粒子の表面を一部または全てを覆った状態で存在するため、該微粒子の表面は負に帯電しやすい。一方、蛍光体は構造にもよるがその表面は正に帯電しやすい性質をもつ。このため、シリコーン微粒子の表面に前記シラノール基が存在し負に帯電することで、蛍光体と静電的相互作用により強く会合し、良好な沈降抑制効果を得ることができる。
【0021】
本発明に用いられるシリコーン微粒子の酸価は、以下の方法で測定することができる。まず、測定するシリコーン微粒子を0.10g秤量し、適当な容器へ入れる。次に、メチルレッド(和光純薬工業(株)製、特級)をメタノール(和光純薬工業(株)製、特級)を用いて5.0×10
−4mol/Lに調製した後、該メタノール溶液を3mL計りとり、前記容器へ添加する。次に、メタノール(和光純薬工業(株)製、特級)5mLを、前記容器へ添加する。そして、攪拌子を前記容器へ入れ、マグネチックスターラーで100rpm30分間攪拌する。次に、n−ブチルアミン(和光純薬工業(株)製、特級)をメタノール(和光純薬工業(株)製、特級)を用いて5.0×10
−3mol/Lに調製した後、これをビュレットに充填し、滴定を行う。シリコーン微粒子含有メチルレッドメタノール溶液の色が、赤色から黄色へ変色したところで測定を終了し、滴下量を記録する。以上の操作を5回繰り返す。次に、式(1)を用いて滴下量から酸価を計算し、5回の平均値を該シリコーン微粒子の酸価とする。
【0022】
式(1) 5.0×10
−4×(滴下量(g))×56.11。
【0023】
一方、樹脂組成物に含まれるシリコーン微粒子についても以下の方法で、酸価を求めることができる。まず、樹脂組成物30gを該樹脂組成物が溶解する有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)100mLに溶解させる。その後、該溶液を250mL遠心瓶((株)ナルゲン製)に移し、遠心分離機((株)久保田製作所製、テーブルトップ遠心機4000)にセットし、3000rpmで10分間遠心分離を行う。その後、遠心瓶の上澄み液を除去した後、前記有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)を新たに添加し、スパチュラで攪拌した後、上記の条件で遠心分離操作を行う。以上の洗浄操作を5回繰り返した後、沈殿物をシャーレに入れ、熱風オーブンで80℃6時間乾燥させて得られた白色粉末を、上記滴定操作で、樹脂組成物に含まれるシリコーン微粒子の酸価を算出することができる。
【0024】
本発明のシリコーン微粒子表面のシラノール基は、種々の形態で存在しており、それぞれ赤外線吸収スペクトル測定によって帰属することができる。例えば、吸着水が水素結合したシラノール基由来のOH結合(赤外吸収スペクトル:3500〜3200cm
−1付近または3620〜3560cm
−1付近)、吸着水は水素結合していないシラノール基同士で水素結合したOH結合(赤外吸収スペクトル:3680cm
−1または3640cm
−1付近)、孤立シラノール基由来のOH結合(赤外吸収スペクトル:3775cm
−1付近)などである。これらシラノール基に水素結合した吸着水は、150℃以上の高温処理をしなければ脱水・乾燥させることができないが、吸着水が微粒子表面に存在していても可逆的な平衡状態であるため、該シラノール基は蛍光体表面と相互作用して、本発明の効果を発現することができる。また、上記赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法、流動パラフィン法(ヌジョール法)や拡散反射法などの既知の微粒子測定法を用いることができる。このうち拡散反射法は、微粒子を直接測定することができため、微粒子表面の組成をより選択的に測定できる方法として好ましい。
【0025】
本発明に用いられるシリコーン微粒子は、酸価が3.0mgKOH/g以上であればいずれの組成においても用いることができる。具体的には、シリコーン樹脂および/またはシリコーンゴムからなる微粒子が好ましい。特に、オルガノトリアルコキシシランやオルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、オルガノジアセトキシシラン、オルガノトリオキシムシラン、オルガノジオキシムシランなどのオルガノシランを加水分解し、次いで縮合させる方法により得られるシリコーン微粒子であることが好ましい。
【0026】
オルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロキシシラン、メチルトリ−i−プロキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−i−ブトキシシラン、メチルトリ−s−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリブトキシシラン、i−ブチルトリブトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリブトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが例示される。
【0027】
オルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどが例示される。
【0028】
オルガノトリアセトキシシランとしては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどが例示される。
【0029】
オルガノジアセトキシシランとしては、ジメチルジアセトキシシラン、メチルエチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシランなどが例示される。
【0030】
オルガノトリオキシムシランとしては、メチルトリスメチルエチルケトオキシムシラン、ビニルトリスメチルエチルケトオキシムシラン、オルガノジオキシムシランとしては、メチルエチルビスメチルエチルケトオキシムシランなどが例示される。本発明に用いられるシリコーン微粒子の組成が前記範囲内であれば、原料を安価に入手することができるため好ましい。また、前記範囲内のシラン化合物であれば、該シラン化合物の重合反応は容易に制御することができるため、特に好ましく用いられる。
【0031】
このようなシリコーン微粒子は、具体的には、特開昭63−77940号公報で報告されている方法、特開平6−248081号公報で報告されている方法、特開2003−342370号公報で報告されている方法、特開平4−88022号公報で報告されている方法、などを参考に、重合溶媒、重合温度、重合時間、モノマー濃度、モノマー滴下速度などの反応条件を調整することで得ることができる。また、オルガノトリアルコキシシランやオルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、オルガノジアセトキシシラン、オルガノトリオキシムシラン、オルガノジオキシムシランなどのオルガノシランおよび/またはその部分加水分解物をアルカリ水溶液に添加し、加水分解・縮合させ粒子を得る方法や、水あるいは酸性溶液にオルガノシランおよび/またはその部分加水分解物を添加し、該オルガノシランおよび/またはその部分加水分解物の加水分解部分縮合物を得た後、アルカリを添加し縮合反応を進行させ粒子を得る方法、オルガノシランおよび/またはその加水分解物を上層にし、アルカリまたはアルカリと有機溶媒の混合液を下層にして、これらの界面で該オルガノシランおよび/またはその加水分解物を加水分解・重縮合させて粒子を得る方法なども知られており、これらいずれの方法においても、本発明で用いられるシリコーン微粒子を得ることができる。
【0032】
これらの中で、オルガノシランおよび/またはその部分加水分解物を加水分解・縮合させ、球状オルガノポリシルセスキオキサン微粒子を製造するにあたり、特開2003−342370号公報で報告されているような反応溶液内に高分子分散剤を添加する方法により得られたシリコーン微粒子を用いることが好ましい。
【0033】
また、前記シリコーン微粒子を製造するに当たり、オルガノシランおよび/またはその部分加水分解物を加水分解・縮合させ、酸性水溶液に溶媒中で保護コロイドとして作用する高分子分散剤及び塩を存在させた状態で、オルガノシランおよび/またはその加水分解物を添加し加水分解物を得た後、アルカリを添加し縮合反応を進行させることにより製造したシリコーン微粒子を用いることもできる。
【0034】
高分子分散剤は、水溶性高分子であり、溶媒中で保護コロイドとして作用するものであれば合成高分子、天然高分子のいずれでも使用できるが、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを例示することができる。高分子分散剤の添加方法としては、反応初液に予め添加する方法、オルガノトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解物と同時に添加する方法、オルガノトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解物を加水分解部分縮合させた後に添加する方法が例示でき、これらの何れの方法を選ぶこともできる。ここで、高分子分散剤の添加量は、反応液容量1重量部に対して5×10
−7〜10
−2重量部の範囲が好ましく、この範囲であると粒子同士の凝集が起きにくい。
【0035】
また、反応溶液に界面活性剤を添加する方法も好ましく用いられる。前記シリコーン微粒子を製造するに当たり、好ましい界面活性剤としては、分子中に親水性部位と疎水性部位を有することにより保護コロイドとして作用するものであればよい。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドなどの陽イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ソルビタンモノアルキレートなどのエーテル系またはエステル系の非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリアルキルシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤、およびパーフルオロアルキル基含有オリゴマーなどのフッ素系界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の添加方法としては、反応溶液に予め添加しておく方法、オルガノトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解物と同時に添加する方法などが例示でき、これらの何れの方法を選ぶこともできる。前記界面活性剤の添加量は、反応液量1重量部に対して5×10
−7〜0.1重量部の範囲が好ましい。下限を超えると粒子どうしが凝集して塊状物になりやすい。また上限を超えると微粒子中の分散剤残留物が多くなり、着色の原因となる。
【0036】
シリコーン微粒子の酸価は、上記方法などを参考に重合溶媒、重合温度、重合時間、加水分解・重合触媒などの反応条件を変えることにより制御することができる。例えば、重合溶媒は、微粒子表面の酸性官能基と良好な相溶性をもつ溶媒を用いると微粒子表面に酸性官能基が配されやすいため、所望の酸価をもつシリコーン微粒子を得るためには主に極性溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、2−メトキシエタノールなどの脂肪族アルコール類、フェノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、p−クレゾールなどの芳香族アルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの脂肪族エーテル類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6などの環状エーテル類、フルフラールなどのアルデヒド類、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトンなどのケトン類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾにトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシドなどの硫黄化合物、水などが挙げられる。これらを、2種以上含有してもよい。合成した微粒子への吸着および残留量を最小限にするため低沸点であることが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノール、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが特に好ましい。
【0037】
また、重合温度や重合時間については、シリコーン微粒子の原料であるモノマー成分の加水分解反応および/または重縮合反応の反応速度、触媒の種類、触媒の量などを勘案し適宜調整することが好ましい。具体的には、重合温度はモノマー成分の加水分解反応および重縮合反応が起こる範囲であればよく、0〜120℃であることが好ましく、さらに10〜60℃であることがより好ましい。また、重合時間は、1〜24時間であることが好ましく、さらに3〜6時間であることがより好ましい。重合温度と重合時間が前記範囲内であれば、重縮合反応を容易に制御することができ、微粒子の形状を維持しながら所望の酸価をもつシリコーン微粒子を得ることができる。また、前記シリコーン微粒子は、付加反応を用いてもよい。付加反応を用いる場合も、付加反応の反応速度、ヒドロシリル化反応触媒の種類および/または量などを勘案し重合温度や重合時間を、上記範囲にて適宜調整することが好ましい。
【0038】
本発明に用いられるシリコーン微粒子を、加水分解・重縮合反応によって得る場合には、酸触媒および/または塩基触媒を用いることができる。酸触媒としては、無機酸、有機酸いずれも用いることができ、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸化合物、酢酸、シアノ酢酸、クエン酸、ギ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、イソフタル酸、コハク酸、グリコール酸、安息香酸などのカルボン酸化合物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混ぜて用いてもよい。これらのうち、重合反応後に触媒を除去する観点から揮発性の酸が好ましく、特に塩酸、硝酸、酢酸が好ましい。
【0039】
また、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどのアミン化合物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混ぜて用いてもよい。これらのうち、重合反応後に触媒を除去する観点から揮発性の塩基が好ましく、特にアンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどが好ましい。前記重縮合反応の触媒活性は、塩基触媒に対して酸触媒は低いため、高温長時間の重合条件が必要になる傾向がある。このため、塩基触媒を用いることが好ましい。
【0040】
また、付加反応を用いる場合は、ヒドロシリル化反応触媒を加えることが好ましく、具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体等の白金系触媒、式:[Rh(O
2CCH
3)
2]
2、Rh(O
2CCH
3)
3、Rh
2(C
8H
15O
2)
4、Rh(C
5H
7O
2)
3、Rh(C
5H
7O
2)(CO)
2、Rh(CO)[Ph
3P](C
5H
7O
2)、RhY
3[(R
18)
2S]
3、(R
193P)
2Rh(CO)Y、(R
193P)
2Rh(CO)H、Rh
2Y
2Z
4、Rh[O(CO)R
18]
3−n(OH)
n、またはH
mRh
p(En)
qCl
rで表されるロジウム系触媒(式中、Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、Zはメチル基、エチル基等のアルキル基、CO、C
8H
14、または0.5C
8H
12であり、R
18はアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、R
19はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、またはアリールオキシ基であり、Enはオレフィンであり、nは0または1であり、mは0または1であり、pは1または2であり、qは1〜4の整数であり、rは2、3、または4である。)、式:Ir(OOCCH
3)
3、Ir(C
5H
7O
2)
3、[Ir(D)(En)
2]
2、または[Ir(D)(Dien)]
2で表されるイリジウム系触媒(式中、Dは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはアルコキシ基であり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。)、ビス(イミノ)ピリジン鉄二窒素錯体等の鉄系触媒(非特許文献:サイエンス(Science)、2012年、第335巻、567−570頁)などを挙げることができる。中でも、触媒活性の高さから白金系触媒が好ましい。
【0041】
(コアシェル構造の例)
また、本発明に用いられるシリコーン微粒子の酸価は、微粒子表面に存在する酸性官能基の量に由来するため、微粒子表面にシリコーン樹脂および/またはシリコーンゴム層が配されていれば、微粒子コア部分の成分は特に限定されない。具体的には、平均粒子径が0.01μm〜100μmの微粒子(コア粒子)に、シリコーン樹脂および/またはシリコーンゴムが少なくとも一部を被覆してなるコアシェル構造のシリコーン微粒子を用いてもよい。前記コア粒子に用いられるものとしては、例えば、オルガノトリアルコキシシラン、オルガノジアルコキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、オルガノジアセトキシシラン、オルガノトリオキシムシラン、オルガノジオキシムシランなどのオルガノシランを加水分解し、次いで縮合させる方法により得られるシリコーン縮合粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物粒子、SiCl
4ガスを高温で反応させ酸化・加水分解させて得られるフュームドシリカなどを用いることができる。前記コア粒子には、機械的強度、屈折率、耐熱性、耐光性などの観点からシリコーン縮合粒子を用いることが好ましい。また、コアシェル構造微粒子のシェルは、コア粒子を完全に被覆することが好ましいが、微粒子の酸価が3.0mgKOH/g以上であれば蛍光体の沈降抑制効果は十分に得られるので、必ずしもコア粒子を完全に被覆していなくてもよい。前記シェルの平均厚さは1nm〜500nmであることが好ましい。前記シェルの平均厚さが500nm以下であれば、コア粒子の特性(屈折率、耐熱性、耐光性)とシェルの特性(蛍光体沈降抑制効果)を両立させることができる。シェルの平均厚さが1nm未満であれば、シェルの特性は軽微なものとなり蛍光体沈降抑制効果は不十分になる。前記シェルの平均厚さが500nmよりも大きくなると、コアシェル構造粒子の屈折率、耐熱性、耐光性はシェル構造に強く依存しコア粒子の特性を得られ難くなるため好ましくない。
【0042】
(屈折率整合)
本発明に用いられるシリコーン微粒子のシロキサン構造には、主鎖を構成するSi原子に有機置換基を含むことができる。具体的には、メチル基および/またはフェニル基が好ましい。これら置換基の含有量によりシリコーン微粒子の屈折率を調整することができる。LED発光装置の輝度を低下させないために封止樹脂であるシリコーン樹脂を通る光を散乱させずに使用したい場合には、シリコーン微粒子の屈折率d1と、当該シリコーン微粒子および蛍光体以外の成分による屈折率d2の屈折率差が小さい方が好ましい。シリコーン微粒子の屈折率d1と、シリコーン微粒子および蛍光体以外の成分による屈折率d2の屈折率の差は、0.10未満であることが好ましく、0.03以下であることがさらに好ましいこのような範囲に屈折率を制御することにより、シリコーン微粒子とシリコーン組成物の界面での反射・散乱が低減され、高い透明性、光透過率が得られ、LED発光装置の輝度を低下させることがない。
【0043】
屈折率の測定は、全反射法としては、Abbe屈折計、Pulfrich屈折計、液浸型屈折計、液浸法、最小偏角法などが用いられるが、シリコーン組成物の屈折率測定には、Abbe屈折計、シリコーン微粒子の屈折率測定には、液浸法が有用である。
【0044】
また、上記屈折率差を制御するための手段としては、シリコーン微粒子を構成する原料の量比を変えることにより調整可能である。すわなち、例えば、原料であるメチルトリアルコキシシランとフェニルトリアルコキシシランの混合比を調整し、メチル基の構成比を多くすることで、1.4に近い低屈折率化することが可能であり、逆に、フェニル基の構成比を多くすることで、比較的高屈折率化することが可能である。
【0045】
(平均粒子径)
本発明において、シリコーン微粒子の平均粒子径は、メジアン径(D50)で表し、この平均粒子径は下限としては0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。また、上限としては2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が前記範囲であることで、硬化物中の内部応力が緩和され、加熱による割れ(クラック)、歪み、パッケージからの剥離などが抑制される。また、本発明の樹脂組成物は、真球状の粒子を用いることが好ましい。
【0046】
本発明において、樹脂組成物に含まれるシリコーン微粒子の平均粒子径すなわちメジアン径(D50)および粒度分布は、樹脂組成物の硬化物断面のSEM観察によって測定することができる。SEMによる測定画像を画像処理して粒径分布を求め、そこから得られる粒度分布において、小粒径側からの通過分積算50%の粒子径をメジアン径D50として求める。断面SEM画像から求めたシリコーン微粒子の平均粒子径は真の平均粒子径に比較して理論上は78.5%、実際にはおおよそ70%〜85%の値となるが、本発明におけるシリコーン微粒子の平均粒子径は上記の測定方法で求められる値と定義される。
【0047】
なお、上記のD50の値がシリコーン微粒子を直接観察した場合よりも小さい値となる理由は、シリコーン微粒子を直接観察した場合には正しく直径が測定されるが、断面を測定した場合にはシリコーン微粒子が必ず赤道面で切断されているとは限らないからである。シリコーン微粒子が球状であり、その任意の場所で切断されると仮定すると、その見かけの直径は、理論上は真の直径の78.5%となる(直径1の円の面積と一辺1の正方形の面積の比に相当)。実際にはシリコーン微粒子は真球ではないので、経験的にはおおよそ70%〜85%となる。
【0048】
(微粒子含有量)
本発明の樹脂組成物に含まれるシリコーン微粒子の含有量は、透明樹脂100重量部に対して、下限としては1重量部以上であることが好ましく、2重量部以上であることがさらに好ましい。また、上限としては20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。シリコーン微粒子の含有量が上記範囲であることで、特に良好な蛍光体分散安定化効果が得られ、かつ輝度を高く保つことができる。
【0049】
(透明樹脂)
本発明の樹脂組成物は、透明樹脂を含む。本発明において透明とは、JIS−K7361−1(1997)に準拠して測定される固体における全光線透過率が50%以上であることをいう。無機系材料および/または有機系材料であることが好ましい。無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー、金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重縮合して得られる溶液などを挙げることができる。具体例として、−(TiO)n−、−(ZrO)n−、−(AlO)n−などのメタロキサン化合物などが挙げられる。有機系材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられる。具体的には、ポリメタクリル酸メチルなどのメタアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。
【0050】
このうち、LED発光装置に用いた場合の耐久性や信頼性から、機械的な強度、透明性、耐熱性、耐光性に優れたシリコーン樹脂が好ましい。さらに本発明に用いられるシリコーン樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂が好ましく、一液型、二液型(三液型)のいずれの液構成であっても使用してよい。硬化型シリコーン樹脂には、空気中の水分あるいは触媒によって縮合反応を起こすタイプとして脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型、脱ヒドロキシルアミン型などがある。また、触媒によってヒドロシリル化反応を起こすタイプとして付加反応型がある。これらのいずれのタイプの硬化型シリコーン樹脂を使用してもよい。特に、付加反応型のシリコーン樹脂は硬化反応に伴う副成物がなく、水分による効果の影響を受けにくく、硬化収縮が小さい点、加熱により硬化を早めることが容易な点で、シート化するためにはより好ましい。
【0051】
付加反応型のシリコーン樹脂は、一例として、ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有する化合物のヒドロシリル化反応により形成される。このような材料としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する化合物と、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン-CO-メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン-CO-メチルフェニルポリシロキサン等のケイ素原子に結合した水素原子を有する化合物のヒドロシリル化反応により形成されるものが挙げられる。また、他にも、例えば特開2010−159411号公報に記載されているような公知のものを利用することができる。
【0052】
また、市販されているものとしては、一般的なLED用途のシリコーン封止材を使用することもできる。具体的には、OE−6630A/B、OE−6336A/B、OE−6351A/B、OE−6250A/B、EG−6301A/B、JCR−6140A/B、JCR−6125A/B、JCR−6101UP、OE−6450A/B、OE−6520−A/B、OE−6550A/B、OE−6631A/B、OE−6636A/B、OE−6635A/B、OE−6665N、SR−7010A/B、OE−8001(以上、東レ・ダウコーニング社製)、ASP−1111A/B、ASP−1120A/B、ASP−1031A/B、SCR−1012A/B、SCR−1016A/B、KER−6110A/B、KER−2500A/B、KER−2500N−A/B、KER−2600A/B、KER−2700A/B、KER−3000−M2、KER−3100−U2、KER−3200−T1、KER−6000A/B、KER−6020F、KER−6075F、KER−6150A/B、KER−6200A/B、KER−4000−UV(以上、信越化学(株)製)、IVS−4312A/B、IVS−4542A/B、IVS−4546A/B、IVS−4622A/B、IVS−4632A/B、IVS−4742A/B、IVS−4752A/B、XE14−C2042A/B、XE14−C2860A/B、XE14−C3450A/B、IVS−5854A/B、IVS−G3445A/B、IVS−G5778A/B、IVS−G0810、IVS−M4500A/B、XE14−C2508A/B、XE13−C2476(以上、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製)、A1070A/B、A2020A/B、A2030A/B(以上、(株)ダイセル製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら透明樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0053】
(蛍光体)
本発明の樹脂組成物には、蛍光体を含むことができる。前記蛍光体は、LEDチップから放出される光を吸収して波長を変換し、LEDチップの光と異なる波長の光を放出するものである。これにより、LEDチップから放出される光の一部と、蛍光体から放出される光の一部とが混合して、白色を含む多色系のLEDが得られる。具体的には、青色系LEDにLEDからの光によって黄色系の発光色を発光する蛍光体を光学的に組み合わせることによって、単一のLEDチップを用いて白色系を発光させることができる。
【0054】
上述のような蛍光体には、緑色に発光する蛍光体、青色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体、赤色に発光する蛍光体等の種々の蛍光体がある。本発明に用いられる具体的な蛍光体としては、無機蛍光体、有機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料等公知の蛍光体が挙げられる。有機蛍光体としては、アリルスルホアミド・メラミンホルムアルデヒド共縮合染色物やペリレン系蛍光体等を挙げることができ、長期間使用可能な点からペリレン系蛍光体が好ましく用いられる。本発明に特に好ましく用いられる蛍光物質としては、無機蛍光体が挙げられる。以下に本発明に用いられる無機蛍光体について記載する。
【0055】
緑色に発光する蛍光体として、例えば、SrAl
2O
4:Eu、Y
2SiO
5:Ce,Tb、MgAl
11O
19:Ce,Tb、Sr
7Al
12O
25:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Ga
2S
4:Euなどがある。
【0056】
青色に発光する蛍光体として、例えば、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu、(SrCaBa)
5(PO
4)
3Cl:Eu、(BaCa)
5(PO
4)
3Cl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)
2B
5O
9Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)(PO
4)
6Cl
2:Eu,Mnなどがある。
【0057】
緑色から黄色に発光する蛍光体として、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦括されたイットリウム・ガドリニウム・アルミニウム酸化物蛍光体、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット酸化物蛍光体、及び、少なくともセリウムで賦活されたイットリウム・ガリウム・アルミニウム酸化物蛍光体などがある(いわゆるYAG系蛍光体)。具体的には、Ln
3M
5O
12:R(Lnは、Y、Gd、Laから選ばれる少なくとも1以上である。Mは、Al、Caの少なくともいずれか一方を含む。Rは、ランタノイド系である。)、(Y
1−xGa
x)
3(Al
1−yGa
y)
5O
12:R(Rは、Ce、Tb、Pr、Sm、Eu、Dy、Hoから選ばれる少なくとも1以上である。0<Rx<0.5、0<y<0.5である。)を使用することができる。
【0058】
赤色に発光する蛍光体として、例えば、Y
2O
2S:Eu、La
2O
2S:Eu、Y
2O
3:Eu、Gd
2O
2S:Euなどがある。
【0059】
また、現在主流の青色LEDに対応し発光する蛍光体としては、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce,(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce,Lu
3Al
5O
12:Ce,Y
3Al
5O
12:CeなどのYAG系蛍光体、Tb
3Al
5O
12:CeなどのTAG系蛍光体、(Ba,Sr)
2SiO
4:Eu系蛍光体やCa
3Sc
2Si
3O
12:Ce系蛍光体、(Sr,Ba,Mg)
2SiO
4:Euなどのシリケート系蛍光体、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu、CaSiAlN
3:Eu等のナイトライド系蛍光体、Cax(Si,Al)
12(O,N)
16:Euなどのオキシナイトライド系蛍光体、さらには(Ba,Sr,Ca)Si
2O
2N
2:Eu系蛍光体、Ca
8MgSi
4O
16Cl
2:Eu系蛍光体、SrAl
2O
4:Eu,Sr
4Al
14O
25:Eu等の蛍光体が挙げられる。
【0060】
これらの中では、YAG系蛍光体、TAG系蛍光体、シリケート系蛍光体が、発光効率や輝度などの点で好ましく用いられる。
【0061】
上記以外にも、用途や目的とする発光色に応じて公知の蛍光体を用いることができる。
【0062】
蛍光体の平均粒子径は、特に制限はないが、D50が1μm以上のものが好ましい。また、D50が20μm以下のものが好ましい。ここでD50はシリコーン微粒子におけるものと同義であり、同様の測定方法で求められる。D50が前記範囲であると、LEDパッケージ中の蛍光体の分散性が良好で、安定な発光が得られる。
【0063】
なお、上記のD50の値が蛍光体粉末を直接観察した場合よりも小さい値となる理由は、粉末を直接観察した場合には正しく直径が測定されるが、LEDパッケージの断面を測定した場合には蛍光体粒子が必ず赤道面で切断されているとは限らないからである。蛍光体粒子が球状であり、その任意の場所で切断されると仮定すると、その見かけの直径は、理論上は真の直径の78.5%となる(直径1の円の面積と一辺1の正方形の面積の比に相当)。実際には蛍光体粒子は真球ではないので、経験的にはおおよそ70%〜85%となる。
【0064】
(ヒドロシリル化触媒)
本発明の樹脂組成物には、ヒドロシリル化反応触媒を含むことができる。本発明の樹脂組成物に、付加硬化型シリコーン樹脂を用いた場合、該樹脂の熱硬化反応速度をヒドロシリル化反応触媒によって適宜制御することができる。具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体等の白金系触媒、式:[Rh(O
2CCH
3)
2]
2、Rh(O
2CCH
3)
3、Rh
2(C
8H
15O
2)
4、Rh(C
5H
7O
2)
3、Rh(C
5H
7O
2)(CO)
2、Rh(CO)[Ph
3P](C
5H
7O
2)、RhY
3[(R
18)
2S]
3、(R
193P)
2Rh(CO)Y、(R
193P)
2Rh(CO)H、Rh
2Y
2Z
4、Rh[O(CO)R
18]
3−n(OH)
n、またはH
mRh
p(En)
qCl
rで表されるロジウム系触媒(式中、Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、Zはメチル基、エチル基等のアルキル基、CO、C
8H
14、または0.5C
8H
12であり、R
18はアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、R
19はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、またはアリールオキシ基であり、Enはオレフィンであり、nは0または1であり、mは0または1であり、pは1または2であり、qは1〜4の整数であり、rは2、3、または4である。)、式:Ir(OOCCH
3)
3、Ir(C
5H
7O
2)
3、[Ir(D)(En)
2]
2、または[Ir(D)(Dien)]
2で表されるイリジウム系触媒(式中、Dは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはアルコキシ基であり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。)、ビス(イミノ)ピリジン鉄二窒素錯体等の鉄系触媒(非特許文献:サイエンス(Science)、2012年、第335巻、567−570頁)が例示される。中でも、反応性の高さから白金系触媒が好ましい。
【0065】
特に、塩素分濃度が低い白金−アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等の基で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等の基で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−トテラメチルジシロキサンであることが好ましい。また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0066】
このような反応触媒の具体例としては、米国Gelest社製の“SIP6829.0”(白金カルボニルビニルメチル錯体。3〜3.5%白金濃度のビニルメチル環状シロキサン溶液)、“SIP6830.0”(白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体。3〜3.5%白金濃度のビニル末端ポリジメチルシロキサン溶液)、“SIP6831.0”(白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液。2.1〜2.4%白金濃度)、“SIP6831.1”(白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体キシレン溶液。2.1〜2.4%白金濃度)、“SIP6832.0”(白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体。3〜3.5%白金濃度の環状メチルビニルシロキサン溶液)、“SIP6833.0”(白金・オクチルアルデヒド/オクタノール錯体。2.0〜2.5%白金濃度のオクタノール溶液)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
ヒドロシリル化反応触媒はいわゆる触媒量で用いられる。特に硬化性が十分で、かつ硬化後に着色がなく透明性が高いことから、本発明のポリオルガノシロキサン組成物の合計重量に対し金属原子の重量単位で0.01〜500ppmであることが好ましく、0.1〜100ppmであることがより好ましい。また、前記触媒は1種類で用いてもよいし、複数種の混合物で用いてもよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、酸価が3.0mgKOH/g以上のシリコーン微粒子、および透明樹脂を含有するものであれば、特に限定されることなく様々なものを使用することが可能である。必要に応じその他の成分を含んでいてもよい。
【0069】
(反応遅延剤)
例えば、常温での硬化を抑制してポットライフを長くするため、アセチレンアルコールなどのヒドロシリル化反応遅延剤を含むことができる。具体的には、アセチレンアルコール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、環状ビニルシロキサン誘導体、エチレンジアミン誘導体などを挙げることができる。そのなかで、ポットライフ延長性と加熱硬化性の観点から、アセチレンアルコール誘導体がより好ましく用いられる。前記アセチレンアルコール誘導体としては、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の樹脂組成物に含むことができるヒドロシリル化反応遅延剤の添加量は、樹脂組成物の重量に対して1〜50,000ppmであることが好ましく、10〜10,000ppmであることがより好ましい。1ppm未満であるとポットライフ延長性は軽微なものとなり、50,000ppmより多いと硬化物が着色してしまうため好ましくない。また、本発明の樹脂組成物に含むことができるヒドロシリル化反応遅延剤は、単一種で用いてもよいし、複数種の混合物でもよい。
【0070】
(界面活性剤)
本発明の樹脂組成物には、シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤を含むことができる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリアルキルシロキサンなどが挙げられる。具体的には、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−370、BYK375(以上 ビックケミー・ジャパン(株)製)、FZ−2110、FZ−2166、FZ−2154、FZ−2120、L−720、L−7002、SH8700、L−7001、FZ−2123、SH8400、FZ−77、FZ−2164、FZ−2203、FZ−2208(以上 東レ・ダウコーニング(株)製)、KF−353、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、KF−6011、KF−6015、X−22−2516、KF−410、X−22−821、KF−412、KF−413、KF−4701(以上 信越化学(株)製)が挙げられる。
【0071】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーなどが挙げられる。具体的にはメガファックF−444、同F−472、同F−477、同F−552、同F−553、同F−554、同F−443、同F−470、同F−470、同F−475、同F−482、同F−483、同F−489、同R−30(以上 DIC(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(以上 新秋田化成(株)製)、NBX−15、FTX−218(以上 (株)ネオス製)が挙げられる。前記界面活性剤の含有量は、ベナールセルを抑制し十分な表面平滑性が得られるという観点から、(D)成分のアセチレン基含有アルコール系反応遅延剤100重量部に対し、不揮発性成分の重量が5重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましい。また同時に着色がなく透明性に優れるという観点から組成物全体の重量に対し、10,000ppm以下であることが好ましく、3,000ppm以下であることがより好ましい。
【0072】
界面活性剤の添加方法は、その他の成分と一括で混合、添加してもよいし、その他の成分と別々に添加してもよい。また界面活性剤単独で直接添加してもよいし、界面活性剤を溶剤で希釈したものを添加したのち溶媒を除去してもよい。
【0073】
また、本発明の効果が損なわれない範囲で必要に応じてフュームドシリカ、ガラス粉末、石英粉末等の微粒子、酸化チタン、酸化ジルコニア、チタン酸バリウム、酸化亜鉛等の無機充填剤や顔料、難燃剤、耐熱剤、酸化防止剤、分散剤、溶剤なども含むことができる。
【0074】
(混合分散)
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、酸価が3.0mgKOH/g以上であるシリコーン微粒子と透明樹脂を均一に混合攪拌することができればよく、例えば、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、三本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミルなどを用いることができるが、この限りではない。前記シリコーン微粒子を混合分散後、もしくは混合分散の工程で、真空もしくは減圧条件化で脱泡処理することも好ましく行われる。次に、得られた樹脂組成物に、蛍光体およびヒドロシリル化反応触媒を添加し、前記方法などを用いて、混合分散を行うことが好ましい。本発明のシリコーン微粒子含有樹脂組成物の粘度は、構成成分の割合、溶剤の添加などによって適宜調整されるが、B型回転粘度計(DV−II+Pro、ブルックフィールド社製、チャンバー:SC4−6R、スピンドル:SC4−14K)を用いて測定し、25℃のときの粘度が100〜10,000,000mPa・S、特に300〜500,000mPa・Sであることが好ましい。上記範囲内であれば、LEDパッケージに対して良好な充填性を得ることができる。
【0075】
(分散安定性評価)
本発明の蛍光体含有樹脂組成物の蛍光体の分散安定性については、蛍光体の沈降の様子を目視観察、上記蛍光体含有樹脂組成物の経時粘度変化、分析装置など用いて評価することができる。具体的には、上記蛍光体含有樹脂組成物を遠心分離器((株)久保田製作所製、テーブルトップ遠心機4000)にセットし所定の回転数と時間で強制加速試験を行い蛍光体の沈降具合を目視観察する方法、上記蛍光体含有樹脂組成物の粘度をB型回転粘度計(DV−II+Pro、ブルックフィールド社製、チャンバー:SC4−6R、スピンドル:SC4−14K)を用いて1時間ごとに6時間後まで測定しその粘度変化で評価する方法、分散安定性分析装置“LUMiSizer”(ドイツL.U.M社製)を用いて分離現象を光学的に直接測定する方法などが挙げられる。
【0076】
(LEDパッケージ作製方法)
前記方法により得られた蛍光体含有樹脂組成物は、LEDチップ上に射出成形、圧縮成型、注型成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、コーティング、ディスペンス、印刷、転写した後、硬化させることにより、所望の形状の蛍光体分散体をLEDチップ上に設置することができる。加熱硬化させる場合の硬化条件は、通常、40〜250℃で1分〜5時間、好ましくは100℃〜200℃で5分〜2時間である。こうして、シリコーン樹脂組成物の硬化物を備えた発光ダイオード(LED)得られる。この硬化物はLEDチップ上にだけ設置しても良いが、側面にも設置しても良い。LEDチップの光取り出し部に設けられることが好ましい。この後、蛍光体を含まない透明シリコーン樹脂で封止してもよいし、LEDチップ上だけでなく周辺部等もシリコーン樹脂組成物の硬化物で覆う等の方法により、本発明のシリコーン樹脂組成物自体を封止剤として利用しても良い。
【0077】
蛍光体分散シリコーン樹脂組成物を調製してから硬化させるまでには、上記の各種加工プロセスにおける滞留時間や、加熱時間などを考慮する必要があり、数10分〜数日程度、一般的には数時間から10数時間の分散安定化、蛍光体の沈降抑制が必要である。
【0078】
上記のようにして得られるシリコーン硬化物は、LEDチップの封止など光学用途で用いられるため、透過率が高い方が好ましい。蛍光体を含まないシリコーン組成物の透過率を比較することにより、好ましい組成物を選ぶことができる。具体的には、本発明の蛍光体を含まず、シリコーン微粒子を含むリコーン樹脂組成物から硬化物(150μm厚)を得たときに、その硬化物の400nmにおける透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0079】
図1に、本発明による発光ダイオードを備えた半導体発光装置の実施形態の一例を示す。LEDチップ1が、パッケージ4の凹部にダイボンディング材2により固定されており、導電性ワイヤー3によってパッケージ上の電極(図示せず)に接合されている。パッケージ4の凹部には本発明によるシリコーン樹脂5とシリコーン微粒子7を含むシリコーン樹脂組成物に蛍光体粒子6を混合したものの硬化物で充填されている。LEDチップ1から放出される光は、蛍光体粒子6によって波長変換されることで、所望の波長を放出する発光装置が得られる。本発明のシリコーン樹脂組成物によるとこのシリコーン樹脂組成物中の分散が向上し、各発光装置に対して均一な蛍光体含有量のシリコーン樹脂組成物を供給することができるので、各発光装置間の色のばらつきを低減することができる。
【0080】
図2に、本発明による発光ダイオードを備えた半導体発光装置の実施形態の別の一例を示す。LEDチップ1がパッケージ4の凹部にダイボンディング材2により固定されており、導電性ワイヤー3によってパッケージ上の電極(図示せず)に接合されている。LEDチップ1の上面(光取り出し面)には、本発明によるシリコーン樹脂5とシリコーン微粒子7を含むシリコーン樹脂組成物に蛍光体粒子6を混合したものの硬化物が積層されており、パッケージ4の凹部は透明シリコーン封止樹脂8で充填されている。このシリコーン封止樹脂8は、本発明のシリコーン硬化物を構成するシリコーン樹脂5と同一でも、異なっていても良い。LEDチップ1から放出される光は、
図1の例と同じく蛍光体粒子6によって波長変換されることで、所望の波長を放出する発光装置が得られる。本発明のシリコーン樹脂組成物によるとこのLEDチップ上面に積層されるシリコーン樹脂組成物中の蛍光体分散均一性が向上し、各発光装置においてLEDチップ上に積層される蛍光体量を一定にすることができるので各発光装置間の色のばらつきを低減することができる。
【0081】
(シート状成形物)
本発明により得られる蛍光体含有樹脂組成物は、蛍光体の分散安定性が優れているため該樹脂をシート状に成形した場合においても蛍光体を均一な濃度で所望の厚みに成形することができる。一定の膜厚で蛍光体含有層を形成したシート状樹脂組成物を、LEDチップ直上に直接設置しても、色度バラツキが低減された前記LEDパッケージと同等の発光性を得ることができる。具体的には、剥離性を有するフレキシブルなベース基板上に塗布、乾燥、硬化もしくは半硬化させた後、LEDチップ上に剥離転写させ、さらに必要に応じて加熱硬化して、所望の形状の蛍光体含有層をLEDチップ直上に設置する。その後、蛍光体を含まない透明シリコーン樹脂で封止してもよいし、シート状成型物で覆う範囲をLEDチップ上だけでなく周辺部にも広げる等の方法によりシート状成型物自体を封止剤として利用しても良い。ベース基板としては、PETフィルム、PPフィルム、PPSフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルムなどを用いることができる。
【0082】
ここで言う膜厚とは、JIS K7130(1999)プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて測定される膜厚(平均膜厚)のことを言い、前記シート状成形物の膜厚は、剥離性の観点から200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。また、その下限は10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。前記シート状成形物の膜厚の上限と下限は、適宜組み合わせることができる。一方、膜厚にバラツキがあると、LEDチップ上の蛍光体量に違いが生じ、LED発光の色度や輝度にバラツキが生じる。したがって、シート状成形物の膜厚バラツキは、好ましくは±5%以内、さらに好ましくは±3%以内である。具体的な算出方法としては、例えば、JIS K7130(1999)プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて、市販の接触式厚み計で測定した膜厚の最大値あるいは最小値と平均膜厚との差を計算し、この値を平均膜厚で除して100分率であらわした値が膜厚バラツキ(%)となる。
【0083】
膜厚バラツキ(%)=(最大膜厚ズレ値
*−平均膜厚)/平均膜厚×100
*最大膜厚ズレ値は、膜厚の最大値または最小値のうち平均膜厚との差が大きい方を選択する。
【0084】
ベース基板上への蛍光体含有樹脂組成物の塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、キスコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、スクリーン印刷などを用いて行うことができる。このうち、膜厚均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。
【0085】
本発明の樹脂組成物を用いて得られるLEDチップが適用できる発光装置は、特に制限はなく、テレビ、パソコン、携帯電話、ゲーム機などに用いられるディスプレイのバックライトや、車のヘッドライト等の車載分野、建物の一般照明等に幅広く適用できる。
【実施例】
【0086】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例および比較例における樹脂組成物で用いた原料、各実施例および比較例における評価方法は、以下の通りである。
【0087】
<樹脂組成物に用いた原料>
(シリコーン微粒子の原料)
モノマー1:フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、特級)とメチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、特級)を、モル比1:1で混合・攪拌した混合物
モノマー2:フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、特級)とメチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、特級)を、モル比1:9で混合・攪拌した混合物
モノマー3:フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、特級)とメチルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、特級)を、モル比1:6で混合・攪拌した混合物
塩基1:アンモニア水(和光純薬工業(株)製、25%水溶液)
塩基2:ジメチルアミン水溶液(和光純薬工業(株)製、50%水溶液)
塩基3:ピリジン水溶液(和光純薬工業(株)製、特級、2.5%水溶液)
酸1:塩酸水溶液(和光純薬工業(株)製、特級、2.5%水溶液)
添加剤1:シリコーン系界面活性剤“BYK−333”(東レ・ダウコーニング(株)製)。
【0088】
(透明樹脂)
樹脂1:シリコーン樹脂OE−6630A/B(東レ・ダウコーニング(株)製、屈折率1.53)
樹脂2:シリコーン樹脂OE−6336A/B(東レ・ダウコーニング(株)製、屈折率1.41)
樹脂3:シリコーン樹脂KER−6075F(信越化学工業(株)製、屈折率1.44)。
【0089】
(蛍光体)
蛍光体1:CeドープのYAG系蛍光体“NYAG−02”(Intematix(株)製、比重4.8g/cm
3、D50:約7μm)
蛍光体2:Euドープのシリケート系蛍光体“EY4254”(Intematix(株)製、比重4.7g/cm
3、D50:約15μm)
蛍光体3:ナイトライド系蛍光体“R6634”(Intematix(株)製、比重3.0g/cm
3、D50:約15μm)。
【0090】
(微粒子)
粒子19:親水性シリカ粒子“アエロジル300”(日本アエロジル(株)製、一次粒子径7nm)
粒子20:疎水性シリカ粒子“アエロジルR812”(日本アエロジル(株)製、一次粒子径7nm)。
【0091】
<平均粒子径測定>
各樹脂組成物に添加した微粒子の平均粒子径測定は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製、高分解能電界放出型走査電子顕微鏡S−4800)を用いて観察し、得られた画像を解析ソフト(Image version6.2)を用いて解析し、粒子直径分布を求めた。粒子直径分布において小粒子径側からの通過分積算50%の粒子径を、メジアン径(D50)として求めた。
【0092】
<酸価の測定>
各微粒子の酸価は、以下の方法で測定した。まず、測定する微粒子を0.10g秤量し、100mL三角フラスコへ入れる。次に、メチルレッド(和光純薬工業(株)製、特級)をメタノール(和光純薬工業(株)製、特級)を用いて5.0×10
−4mol/Lに調製した後、該メタノール溶液を3mL計りとり、該三角フラスコへ添加する。次に、メタノール(和光純薬工業(株)製、特級)5mLを、該三角フラスコへ添加する。そして、攪拌子を該三角フラスコへ入れ、マグネチックスターラーで100rpm30分間攪拌する。攪拌終了後、攪拌子を取り出す。次に、n−ブチルアミン(和光純薬工業(株)製、特級)をメタノール(和光純薬工業(株)製、特級)を用いて5.0×10
−3mol/Lに調製した後、これをビュレットに充填し、滴定評価を始める。ビュレットを操作し充填されたn−ブチルアミンメタノール溶液を前記三角フラスコへ滴下する。シリコーン微粒子含有メチルレッドメタノール溶液の色が、赤色から黄色へ変色したところで測定を終了し、滴下量を記録する。以上の操作を5回繰り返す。次に、式(1)を用いて滴下量から酸価を計算し、5回の平均値を該シリコーン微粒子の酸価とする。
【0093】
式(1) 5.0×10
−4×(滴下量(g))×56.11。
【0094】
<樹脂組成物の調製>
参考例1〜12および比較例1〜4における樹脂組成物は、以下の要領で作製した。容量300mlのポリエチレン容器に表3〜4に示す各成分を秤量して添加した。スパチュラでよく混ぜ合わせたのち、櫛歯型ホモジナイザー(T25デジタルウルトラタックスシャフトジェネレータ:S25N−25G、IKAジャパン(株)製)を用いて、15000rpmで30分間分散した。分散終了後、目開き100μmのステンレス製フィルターをセットしたタンク付ステンレスホルダー(KST4−47、アドバンテック東洋(株)製)を用いて加圧濾過を行うことで樹脂組成物を得た。
【0095】
<蛍光体含有樹脂組成物の調製>
参考例13〜14、25〜26、実施例15〜24および比較例5〜8における蛍光体含有樹脂組成物は、以下の要領で作製した。容量300mlのポリエチレン容器に前記の要領で作製した樹脂組成物と蛍光体を表5〜6に示す組成に従って秤量して添加した。スパチュラでよく混ぜ合わせたのち、自転公転式攪拌機(ARV−310、(株)シンキー製)を用いて、1000rpmで10分間攪拌し、蛍光体含有樹脂組成物を得た。
【0096】
<粘度の測定とチキソトロピー性の算出>
参考例1〜12および比較例1〜4における樹脂組成物、
参考例13〜14、25〜26、実施例15〜24および比較例5〜8における蛍光体含有樹脂組成物の粘度測定とチキソトロピー性評価を、以下の要領で行った。まず、前記樹脂組成物または蛍光体含有樹脂組成物を調製後、所定の時間(直後、24時間後または1週間後)静置した後、B型回転粘度計(DV−II+Pro、ブルックフィールド社製、チャンバー:SC4−6R、スピンドル:SC4−14K)を用いて、20℃における回転数5rpmと50rpm(ずり速度:2s
−1、20s
−1)の粘度を測定した。チキソトロピー性は、前記粘度測定で得られた数値を、式(2)に代入し、チキソ比(T.I値)を算出した。
【0097】
式(2) T.I値=5rpm時の粘度(cp)/50rpm時の粘度(cp)。
【0098】
<経時安定性の評価>
樹脂組成物の経時安定性は、分散直後と室温静置1週間後の粘度変化率(式3)を算出し、以下のように評価した。粘度変化が小さいほど、分散安定性に優れていることを示し、評価がB以上であれば実用上優れている。
【0099】
式(3) 粘度変化率={1−(分散直後の5rpm時の粘度(cp)/室温静置1週間後の5rpm時の粘度(cp))}×100
S:粘度変化率 0% 分散安定性が非常に良好
A:粘度変化率 ±5%未満 分散安定性が良好
B:粘度変化率±10%未満 分散安定性が実用上問題ない
C:粘度変化率±10%以上20%未満 分散安定性が悪い
D:粘度変化率±20%以上 分散安定性が著しく悪い。
【0100】
また、蛍光体含有樹脂組成物においても経時安定性を粘度変化率から評価した。該樹脂組成物の分散直後と室温静置24時間後の粘度変化率(式4)を算出し、上記同様に評価した、粘度変化が小さいほど、分散安定性に優れていることを示し、評価がB以上であれば実用上優れている。
【0101】
式(4) 粘度変化率={1−(蛍光体添加直後の5rpm時の粘度(cp)/室温静置24時間後の5rpm時の粘度(cp))}×100。
【0102】
<LEDパッケージおよびLED発光装置の作製方法>
参考例13〜14、25〜26、実施例15〜24および比較例5〜8における蛍光体含有樹脂組成物を用いたLEDパッケージおよびLED発光装置は、以下の要領で作製した。InGaN系LEDチップ(昭和電工(株)製)を、フレーム((株)エノモト製、TOP LED BASE)に、銀ペーストを用いて実装した。次に、直径25μmの金ワイヤーを用いて、LEDチップと電極を接続した。このLEDチップを実装したLEDパッケージに上記方法で調製した蛍光体含有樹脂組成物を、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株)製、MPP−1)を用いて充填した。次に、該パッケージをステンレス製バットに水平に置いた後、通気孔付き蓋を被せ、熱風オーブンにいれ、80℃1時間加熱処理し、さらに150℃2時間加熱処理して該樹脂組成物を硬化させた。次に、該パッケージを室温にて放冷後、外枠から外して個片化した。得られた個片を半田付けを用いて電極と金属線を接続し、金属線を電源に接続した。該電源を通じて、所定の電流を流すことにより、光を発生するLED発光装置を得た。
【0103】
<輝度および相関色温度測定と評価>
各蛍光体含有樹脂組成物を用いて封止処理したLEDパッケージを、発光装置に搭載し、400mAの電流を流してLED発光装置を点灯させ、瞬間マルチ測光システム(MCPD−3000、大塚電子(株)製)を用いて、通電開始直後の輝度と相関色温度を測定した。輝度の評価は以下のようにした。まず、各蛍光体含有樹脂組成物の1種類につき、それぞれ別個に100個のLED発光装置を作製し、該100個の平均輝度を算出した。次に、微粒子を添加しない以外は前記同様にして、各蛍光体含有樹脂組成物に対応する組成の微粒子非含有樹脂組成物を作製し(これを「対応の微粒子非含有樹脂組成物」と呼ぶ)、これを用いて各蛍光体含有樹脂組成物の場合と同様に100個のLED発光装置を作製し、該100個の平均輝度を算出した。そして、式(5)を用いて以下のように評価した。
【0104】
式(5) 輝度変化率={1−(各蛍光体含有樹脂組成物を使用したLED発光装置100個の平均輝度/対応の微粒子非含有樹脂組成物を用いて作製したLED発光装置100個の平均輝度)}×100
S:輝度変化率 0% 発光性が非常に良好
A:輝度変化率 ±10%未満 発光性が良好
B:輝度変化率±10%以上20%未満 実用上問題ない
C:輝度変化率±20%以上50%未満 発光不良。
また、相関色温度ばらつきの評価は、該100個中の平均値、最大値、最小値を求め、式(6)よりばらつきを評価した。
【0105】
式(6) 相関色温度ばらつき(K)=相関色温度最大ずれ値*−平均相関色温度
*相関色温度最大ずれ値は、相関色温度の最大値または最小値のうち平均との差が大きい方を選択する。
【0106】
また、前記方法で測定されたLED発光装置100個の相関色温度をXY色度図にプロットし、X座標の平均値とY座標の平均値、ならびにそれぞれの標準偏差を算出した。
【0107】
<ヒートサイクル耐久性評価>
各蛍光体含有樹脂組成物を用いて封止処理したLEDパッケージ100個を、260℃のはんだ浴((株)石崎電気製、SOLDERING BATH HP−410)に10秒間漬けた後、20℃の冷却水に10秒間漬けた。この操作を合計5回行った後、該パッケージを観察し、全てのパッケージで封止部分に変化が無ければ○、封止部分にクラックが入ったり、パッケージとの間に剥離が生じたりした物が、1〜20個であれば△、21〜100個であれば×と評価した。
【0108】
<シリコーン微粒子の製造>
(製造例1)
2L四つ口丸底フラスコに攪拌機、温度計、環流管、滴下ロートを取り付け、該フラスコに、2.5%のアンモニア水(塩基1)2Lを入れ、300rpmで攪拌しつつ、オイルバスにて昇温した。内温20℃に到達したところで滴下ロートからモノマー1 200g(前記アンモニア水100重量部に対して10重量部)を30分かけ滴下した。その後、内温80℃まで昇温し、さらに5時間続けた後、該フラスコをオイルバスから外し、室温まで冷却した。その後、酢酸(和光純薬工業(株)製、特級)約5g添加し、撹拌混合した後、反応液を250mL遠沈管に移し変え、遠心分離器にセットし、3000rpm30分間遠心分離を行った。その後、遠沈管内の上澄み液を除去したあと、この容器に純水150mL入れ、スパチュラを用いて攪拌した後、遠心分離器にセットし、3000rpm30分間遠心分離を行った。その後、遠沈管内のケーキ状沈殿物をステンレスバットに移し、熱風式オーブンで100℃6時間乾燥させ、白色粉末90gを得た。得られた粒子をSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この微粒子を液浸法により屈折率測定した結果、1.53であった。この粒子をSEM観察した結果、平均粒子径(D50)は、1.7μmであった。また、この粒子の酸価を測定した結果、3.1mgKOH/gであった。
【0109】
(製造例2)
重合温度を20℃とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末を80g得た。得られた粒子をSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この微粒子を液浸法により屈折率測定した結果、1.53であった。得られた粒子をSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この粉末SEM観察した結果、平均粒子径(D50)は、1.7μmであった。また、この粒子の酸価を測定した結果、6.5mgKOH/gであった。
【0110】
(製造例3)
重合温度を5℃とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末を70g得た。得られたSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.54であった。この粒子をSEM観察した結果、平均粒子径(D50)は、1.0μmであった。また、この粒子の酸価を測定した結果、4.5mgKOH/gであった。得られたSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。この粒子をSEM観察した結果、平均粒子径(D50)は、1.0μmであった。また、この粒子の酸価を測定した結果、4.5mgKOH/gであった。
【0111】
(製造例4)
重合温度を20℃、重合時間を1時間とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末80g得た。得られたSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。この粒子をSEM観察した結果、平均粒子径(D50)は、1.7μmであった。また、この粒子の酸価を測定した結果、4.5mgKOH/gであった。
【0112】
(製造例5)
重合時間を12時間とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末80gを得た。得られたSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であった。この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。この粒子をSEM観察した結果、平均粒子径(D50)は、3.0μmであった。また、この粒子の酸価を測定した結果、3.5mgKOH/gであった。
【0113】
(製造例6)
昇温前の2L四つ口丸底フラスコに、添加剤としてポリエーテル変性ジメチルシロキサン“BYK−333”(添加剤1)を1ppm含む2.5%のアンモニア水2Lを入れるとした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末75g得た。この粉末をSEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。また、液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。さらに、この粒子の酸価を測定した結果、7.2mgKOH/gであった。
【0114】
(製造例7)
重合温度を20℃とした以外は製造例6と同様の方法で合成し、白色粉末90gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。さらに、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、8.3mgKOH/gであった。
【0115】
(製造例8)
重合温度を5℃とした以外は製造例6と同様の方法で合成し、白色粉末90gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.8μmであった。さらに、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、7.5mgKOH/gであった。
【0116】
(製造例9)
モノマーをモノマー2に、重合温度を20℃とした以外は製造例6と同様の方法で合成し、白色粉末90gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。さらに、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.41であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、8.3mgKOH/gであった。
【0117】
(製造例10)
モノマーをモノマー3に、重合温度を20℃とした以外は製造例6と同様の方法で合成し、白色粉末80gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.44であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、8.2mgKOH/gであった。
【0118】
(製造例11)
モノマー1の添加量を100gに、重合温度を5℃とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末40gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、3.1mgKOH/gであった。
【0119】
(製造例12)
モノマー1の添加量を400gに、重合温度を20℃に、さらに重合時間を10時間とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末170gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、3.0μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、3.1mgKOH/gであった。
【0120】
(製造例13)
重合触媒をジメチルアミン溶液(塩基2)に、重合温度を20℃に、さらに重合時間を1時間とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末80gを得た。なお、モノマー1の使用量は前記ジメチルアミン水溶液100重量部に対して10重量部とした。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、1.7μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、6.4mgKOH/gであった。
【0121】
(製造例14)
重合触媒をピリジン水溶液(塩基3)に、重合温度を5℃とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末80gを得た。なお、モノマー1の使用量は前記ピリジン水溶液100重量部に対して10重量部とした。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、1.7μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、6.5mgKOH/gであった。
【0122】
(製造例15)
重合触媒を塩酸(酸1)に、重合温度を20℃とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末80gを得た。なお、モノマー1の使用量は前記塩酸水溶液100重量部に対して10重量部とした。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、3.0μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、3.7mgKOH/gであった。
【0123】
(製造例16)
重合触媒を酸1に、重合温度を20℃とした以外は製造例6と同様の方法で合成し、白色粉末70gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、1.0μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、6.5mgKOH/gであった。
【0124】
(製造例17)
重合温度を120℃とした以外は製造例1と同様の方法で合成し、白色粉末50gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、1.7μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、2.9mgKOH/gであった。
【0125】
(製造例18)
重合触媒を塩基3に、重合温度を120℃とした以外は製造例6と同様の方法で合成し、白色粉末70gを得た。この白色粉末を、SEMで観察したところ、単分散球状微粒子であり、平均粒子径(D50)は、0.5μmであった。また、この微粒子を液浸法を用いて屈折率測定した結果、1.53であった。また、この粒子の酸価を測定した結果、1.5mgKOH/gであった。
【0126】
参考例1〜12および比較例1〜4
上記の通り樹脂組成物の調整と粘度の測定を行い、チキソトロピー性算出および経時安定性評価を行った。結果を表3〜4に示した。
【0127】
(シリコーン微粒子の分散安定性)
酸価が3.0mgKOH/g以上であるシリコーン微粒子が用いられた
参考例1〜12では、微粒子を分散した直後の粘度と分散後1週間が経過した樹脂組成物の粘度を測定し、粘度変化がないことから、微粒子の粒子径によらず樹脂中における分散安定性が高いことを示した。一方、酸価が3.0mgKOH/g未満であるシリコーン微粒子が用いられた比較例1〜4では、微粒子の再凝集がおこり、1週間経過後では粘度が大きく低下し、チキソトロピー性も低いものとなった。
【0128】
(透明樹脂の影響)
参考例1、6、7では、それぞれ異なる透明樹脂が用いられているが、微粒子の分散安定性は良好であった。
【0129】
(シリコーン微粒子の添加量)
参考例5、8〜10では、微粒子の添加量を変えて透明樹脂に分散した。その結果、添加量が多いほど樹脂の粘度は上昇するものの、良好な分散安定性を示した。
【0130】
(シリコーン微粒子の粒子径効果)
参考例1、11、12では、粒子径のことなる微粒子を分散した結果、粘度の相違は認められるものの良好な分散安定性を示した。
【0131】
参考例13〜14、25〜26、実施例15〜24および比較例5〜8
上記の通り蛍光体含有樹脂組成物の調整と粘度の測定を行い、チキソトロピー性算出、経時安定性評価を行った。また上記の通りLEDパッケージおよびLED発光装置を作製し、輝度および相関色温度の測定ならびに輝度変化率および相関色温度ばらつきの評価、およびヒートサイクル耐久性評価を行った。結果を表5〜6に示した。
【0132】
(蛍光体沈降抑制効果(分散安定性)と相関色温度ばらつき抑制効果)
酸価が3.0mgKOH/g以上であるシリコーン微粒子が用いられた
参考例13〜14、25〜26、実施例15〜24では、蛍光体含有樹脂組成物における蛍光体およびシリコーン微粒子の高い分散安定性が認められた。また、該樹脂組成物を用いて作製したLED発光装置では、相関色温度ばらつきの抑制効果が確認できることから、蛍光体の沈降抑制効果が確認された。一方、酸価が3.0mgKOH/g未満であるシリコーン微粒子が用いられた比較例5〜8では、蛍光体沈降による樹脂組成物の粘度低下が確認できる。また、相関色温度ばらつきも大きいことが確認された。
【0133】
(透明樹脂の影響)
実施例17〜19では、シリコーン微粒子のモノマー比率や透明樹脂の種類によらず、良好な蛍光体沈降抑制効果を確認した。
【0134】
(蛍光体種類の影響)
実施例17、20、21では、樹脂組成物に分散させる蛍光体の種類を変えても、良好な蛍光体沈降抑制効果を確認した。
【0135】
(シリコーン微粒子添加量の効果)
実施例17、22〜24では、粒子の添加量を変えても、良好な蛍光体沈降抑制効果を確認した。輝度変化率はいずれも実用上問題ない範囲であったが、透明樹脂100重量部に対して1重量部以上20重量部以下の範囲であることがより好ましかった。
【0136】
(シリコーン微粒子の粒子径の効果)
参考例13、25、26では、それぞれ粒子径の異なるシリコーン微粒子を分散した樹脂組成物を用いているが、良好な蛍光体沈降抑制効果を確認した。ヒートサイクル耐久性の観点では、平均粒子径が0.01μm以上2.0μm以下の範囲であることがより好ましかった。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
【表6】