【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例及び比較例で得られた防曇性物品(以下、「サンプル」と記載する場合がある)は、以下に示す方法により品質評価を行った。
【0073】
[防曇膜の膜厚]
触針式表面粗さ計(小坂研究所製、サーフコーダーET−4000A)を用いて、基材上に形成した防曇膜の膜厚を測定した。
【0074】
[耐摩耗性]
JIS R 3212に準じて、防曇膜面を上面として防曇性物品を回転台にのせ、摩耗輪に4.9Nの荷重をかけ、一定速度で100回転させる試験を行った後、試験を行った箇所のヘーズ値と試験を行う前の該箇所のヘーズ値との差を算出した。前記のヘーズ値の差が4.0以下であれば、防曇膜の実使用上の耐摩耗性の観点から良好であり、該ヘーズ値の差が小さいほど耐摩耗性がより優れているといえる。
【0075】
[35℃水蒸気防曇性]
35℃飽和水蒸気で満たされた槽の上部に、防曇膜面を前記槽に向けてサンプルを設置し、曇りが生じるまでの時間を測定した。該試験において、曇りが生じるまでの時間が30秒以上であれば、サンプルの防曇膜の防曇性は良好であり、該時間が長いほど防曇性がより優れているといえる。
【0076】
[耐熱性]
100℃で保持された恒温槽で1000時間サンプルを保持し、外観の不具合の有無を目視で確認し、不具合がなかったものを外観上合格とし(表中で○と表記)、不具合があったものを外観上不合格とした(表中で×と表記)。なお、外観上の不具合とは黄変や膜表面にブツブツなどの凹凸が発生することである。また、前記の防曇性低下率を算出した。該防曇性低下率が40%以下であれば、熱に対して防曇膜の品質を長期間維持しやすいため好ましく、該防曇性低下率が小さいほど耐熱性がより優れているといえる。
【0077】
[防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量]
温度80℃の乾燥炉で2時間保持した後の防曇性物品の質量(a)を測定し、防曇膜に35℃飽和水蒸気を60分間接触させ、蒸気が暴露する全面に曇りを生じさせ、防曇膜を吸水飽和させた。その後、防曇膜表面の水滴を払拭した後に防曇性物品の質量(b)を測定した。「(b−a)/蒸気暴露面積」の計算式で得られた値を防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量とした。尚、ここでの(a)値は、防曇膜が吸水していない状態のものに相当する。該単位面積の吸水量が0.2〜5mg/cm
2であれば、防曇性物品が十分な防曇性を発揮しやすく、防曇膜が良好な耐摩耗性を有しやすい。
【0078】
[耐酸性]
防曇膜面に3質量%H
2SO
4水溶液を23℃で24時間付着させ、膜の溶解や剥離がなかったものを表中で○と表記し、一部で剥離や外観不具合が生じたものを表中で△と表記し、全面に剥離や外観不具合や溶解が生じたものを表中で×と表記した。
【0079】
[耐アルカリ性]
防曇膜面に1質量%NaOH水溶液を23℃で24時間付着させ、膜の溶解や剥離がなかったものを表中で○と表記し、一部で剥離や外観不具合が生じたものを表中で△と表記し、全面に剥離や外観不具合や溶解が生じたものを表中で×と表記した。
【0080】
[密着性]
防曇性物品に対しクロスカット試験を行い、防曇膜に剥離が生じなかったものを表中で○と表記し、一部で剥離が生じたものを表中で△と表記し、全面で剥離が生じたものを表中で×と表記した。
【0081】
[耐汚染性(耐着色性)]
防曇膜面に市販のオレンジジュース(商品名:トロピカーナ100%ジュース、キリンビバレッジ(株)製)を80℃で24時間付着させた。付着前の物品と、付着後に表面を洗浄した後の物品との色差(ΔE)を測定した。色差の測定は、分光色差計(NF333、日本電色工業株式会社製)によって行った。なお、前記ΔEの値は小さいほど好ましい。
【0082】
[実施例1]
(基材の準備)
基材として、厚さ3mm、100mm四方のフロートガラスを使用した。該基材表面をセリア微粒子で研磨し、ブラッシング洗浄を行い乾燥した。
【0083】
(プライマー層の形成)
プライマー層を形成する化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以降、「GPTMS」と記載する場合がある)を0.1g、エタノール(以降、「EtOH」と記載することがある)を50g混合した液に0.5N硝酸を0.1g加えて、プライマー液を調製した。該液をスピンコーティングにより前記基材表面に塗布し、100℃で30分焼成することで基材上にプライマー層を形成した。
【0084】
(防曇膜形成材料作製工程)
まず、前記一般式[1]で表される化合物を合成した。N,N−ジエチルアクリルアミド(以降、「DEAA」と記載する場合がある)とアクリル酸(以降、「AA」と記載する場合がある)を原料として用い、モル比でDEAA/AA=1.3/1.0の割合で、65℃で3時間反応させ、重量平均分子量が60,000の共重合体(前記一般式[1]で表される化合物)を得た。本実施例の前記共重合体において、前記一般式[1]のXで表される基は−C(=O)N(C
2H
5)
2基に相当し、Yで表される基はカルボキシル基に相当する。前記一般式[1]中のaとbは、−C(=O)N(C
2H
5)
2基を有する繰り返し構造単位とカルボキシル基を有する繰り返し構造単位の存在比率であり、原料として用いた−C(=O)N(C
2H
5)
2基を有するDEAAとカルボキシル基を有するAAのモル比によって算出することができ、a:b=1.3:1.0である。次いで、前記の共重合体0.52gに対し、多官能エポキシ化合物としてポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコールEX−421」、25℃の水に対する溶解率は88質量%、平均官能基数は3.0)を0.41g加え、四級ホスホニウム塩としてトリフェニルブチルホスホニウムブロミド(以降、「TPBPB」と記載することがある)を0.0052g加え、溶媒としてメタノール(以降、「MeOH」と記載することがある)を2.07g加えて、80℃のオイルバス浴をさせた密閉容器内で5時間リフラックス攪拌し、重量平均分子量が300,000の防曇膜形成材料を含む溶液を作製した。なお、前記多官能エポキシ化合物は、前記共重合体のカルボキシル基1モル量に対し、該多官能エポキシ化合物のエポキシ基が1.4モル量となるように添加された。
【0085】
(調液工程)
上記で作製した防曇膜形成材料を含む溶液に、さらに溶媒としてメタノールを加えて希釈し、防曇膜形成用塗布液を調液した。得られた防曇膜形成用塗布液の25℃での粘度は、JIS Z 8803に準拠した測定方法において、100mPa・sであった。
【0086】
(防曇膜形成用塗布液塗布工程〜硬化工程)
前記防曇膜形成用塗布液を、前記基材のプライマー層上にスピンコーティング法により塗布した。前記塗布液が塗布された基材を80℃に保持された電気炉に16時間入れ、硬化させることにより防曇膜を形成させて防曇性物品を得た。
【0087】
防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表1に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表2に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
[実施例2〜27]
実施例1で、防曇膜形成材料の作製に用いた一般式[1]で表される化合物(該化合物のX基、Y基、a:b比、重量平均分子量)、多官能エポキシ化合物、四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩、カルボキシル基1モル量に対するエポキシ基のモル量、防曇膜形成材料の重量平均分子量、防曇膜形成用塗布液の溶媒、硬化剤、防曇膜の硬化工程の温度、及び、防曇性物品のプライマー層を形成する化合物を変更し、それ以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表1、3、5、7、9に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表2、4、6、8、10にそれぞれ示す。
【0091】
なお、表中で、X基が「−C(=O)N(CH
3)
2」で表される繰り返し構造は原料としてN,N−ジメチルアクリルアミドを用いて形成された構造であり、Y基が「−C(=O)OC
2H
4COOH」で表される繰り返し構造は原料としてβ−カルボキシエチルアクリレートを用いて形成された構造であり、Y基が「−C(=O)OC
2H
4O(C=O)C
2H
4COOH」で表される繰り返し構造は原料としてこはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)を用いて形成された構造であり、「TPEPB」はトリフェニルエチルホスホニウムブロミドを意味し、「APTES」は3−アミノプロピルトリエトキシシランを意味する。また、「T403」は三井化学ファイン株式会社製のポリオキシアルキレントリアミン(商品名「T403」)を意味し、実施例12では、防曇膜形成用塗布液中の固形分の総量に対してT403が1質量%となるように、防曇膜形成用塗布液にT403を添加した。
【0092】
なお、実施例20は、防曇膜形成材料の重量平均分子量が大きく、該防曇膜形成材料を溶媒に溶解させるのに長時間を要した。実施例22は、前記一般式[1]で表される化合物の重量平均分子量が大きく、防曇膜形成用塗布液の粘度が高くなり、該塗布液を基材に塗布した際に塗膜をレベリングするのに他の実施例に比べ長時間を要した。また、実施例25は、前記一般式[1]で表される化合物の重量平均分子量が実施例22の場合よりもさらに大きく、防曇膜形成用塗布液の粘度がより高くなり、該塗布液を基材に塗布した際に塗膜をレベリングするのに実施例22に比べさらに長時間を要した。
【0093】
[比較例1]
前記の「一般式[1]で表される化合物」を用いなかった以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、耐摩耗性が不十分であった。また、耐酸性が悪く、該試験中に防曇膜が溶解した。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表1に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0094】
[比較例2]
前記の「多官能エポキシ化合物」を用いなかった以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、耐摩耗性試験で剥離したため耐摩耗性が不十分であった。また、35℃水蒸気防曇性、耐酸性、耐アルカリ性試験中に防曇膜が溶解した。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表1に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0095】
[比較例3]
前記の「四級アンモニウム塩又は四級ホスホニウム塩」を用いなかった以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、耐酸性、耐アルカリ性が劣るものであった。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表1に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0096】
[比較例4]
防曇膜形成材料の作製に用いた一般式[1]で表される化合物として、該化合物のa:b比が3:1の化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性が劣るものであった。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表3に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0097】
[比較例5]
防曇膜形成材料の作製に用いた一般式[1]で表される化合物として、該化合物のa:b比が0.5:1の化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の防曇膜は、耐アルカリ性が劣るものであった。また、耐熱性試験における防曇性低下率が大きかった。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表3に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0098】
[比較例6]
多官能エポキシ化合物として、25℃の水に対する溶解率が40質量%未満で水に不溶なEX−622(ナガセケムテックス株式会社製ソルビトールポリグリシジルエーテル)を使用した以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製した。得られた防曇性物品の防曇膜は、白濁しており視認性のある防曇性物品を得ることができなかった。また、該白濁によりヘーズ値の変化や外観上の曇り具合を正確に評価できないため、該防曇膜の耐摩耗性、防曇性、耐熱性の評価ができなかった。また、耐酸性、耐アルカリ性が悪く、該試験中に防曇膜が溶解した。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表5に、得られ
た防曇性物品の品質評価結果を表6にそれぞれ示す。
【0099】
[比較例7]
重量平均分子量が85,000の防曇膜形成材料を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製した。得られた防曇性物品は、耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性が劣るものであった。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表7に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表8にそれぞれ示す。
【0100】
[比較例8]
重量平均分子量が7,000,000の防曇膜形成材料を用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品の作製を試みた。しかし、防曇膜形成材料の一部がメタノールに不溶であり、均一な防曇膜形成用塗布液を得ることができず、成膜することができなかった。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
【0107】
【表9】
【0108】
【表10】
【0109】
[実施例28〜54、比較例9〜16]
硬化工程後に防曇膜表面を水で流水式洗浄すること以外は、それぞれ、実施例1〜27、比較例1〜8と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。防曇膜形成用塗布液と防曇性物品の作製条件を表11、13、15、17、19に、得られた防曇性物品の品質評価結果を表12、14、16、18、20にそれぞれ示す。上記の洗浄により、該防曇膜の吸水飽和時の単位面積の吸水量、35℃水蒸気防曇性が向上することが確認された。
【0110】
なお、実施例20と同様に、実施例47は、防曇膜形成材料の重量平均分子量が大きく、該防曇膜形成材料を溶媒に溶解させるのに長時間を要した。実施例22と同様に、実施例49は、前記一般式[1]で表される化合物の重量平均分子量が大きく、防曇膜形成用塗布液の粘度が高くなり、該塗布液を基材に塗布した際に塗膜をレベリングするのに他の実施例に比べ長時間を要した。また、実施例25と同様に、実施例52は、前記一般式[1]で表される化合物の重量平均分子量が実施例49の場合よりもさらに大きく、防曇膜形成用塗布液の粘度がより高くなり、該塗布液を基材に塗布した際に塗膜をレベリングするのに実施例49に比べさらに長時間を要した。比較例14では、得られた防曇性物品の防曇膜は、白濁しており視認性のある防曇性物品を得ることができなかった。該白濁によりヘーズ値の変化や外観上の曇り具合を正確に評価できないため、該防曇膜の耐摩耗性、防曇性、耐熱性の評価ができなかった。また、比較例16では、防曇膜形成材料の一部がメタノールに不溶であり、均一な防曇膜形成用塗布液を得ることができず、成膜することができなかった。
【0111】
[実施例55]
実施例1の調液工程において、防曇膜形成材料を含む溶液に、溶媒としてメタノールを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製、品番:IPA−ST−L、平均粒径:40nm)を加えて、防曇膜形成用塗布液を調液した。このとき、IPA−ST−Lは防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で5質量部となるように添加した。上記以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の特性(防曇膜の膜厚、耐摩耗性、35℃水蒸気防曇性、耐熱性、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性)は表20に示すように実施例1と同等であり、該防曇性物品の防曇膜表面の一部に汚染物質としてJISL0848記載の人工汗液を接触させて吸収させた場合に、吸収させた部分と吸収させなかった部分とで外観上のひずみは、防曇膜に前記微粒子を含有させなかった場合(実施例1)に比べ、軽減されていることを確認した。
【0112】
[実施例56]
実施例28の調液工程において、防曇膜形成材料を含む溶液に、溶媒としてメタノールを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製、品番:IPA−ST−L、平均粒径:40nm)を加えて、防曇膜形成用塗布液を調液した。このとき、IPA−ST−Lは防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で5質量部となるように添加した。上記以外は実施例28と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の特性(防曇膜の膜厚、耐摩耗性、35℃水蒸気防曇性、耐熱性、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性)は表20に示すように実施例28と同等であり、該防曇性物品の防曇膜表面の一部に汚染物質としてJISL0848記載の人工汗液を接触させて吸収させた場合に、吸収させた部分と吸収させなかった部分とで外観上のひずみは、防曇膜に前記微粒子を含有させなかった場合(実施例28)に比べ、軽減されていることを確認した。
【0113】
[実施例57]
実施例1の調液工程において、防曇膜形成材料を含む溶液に、溶媒としてメタノールを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製、品番:IPA−ST−L、平均粒径:40nm)を加えて、防曇膜形成用塗布液を調液した。このとき、IPA−ST−Lは防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で10質量部となるように添加した。上記以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の特性(防曇膜の膜厚、耐摩耗性、35℃水蒸気防曇性、耐熱性、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性)は表20に示すように実施例1と同等であり、該防曇性物品の防曇膜表面の一部に汚染物質としてJISL0848記載の人工汗液を接触させて吸収させた場合に、吸収させた部分と吸収させなかった部分とで外観上のひずみは、防曇膜に前記微粒子を含有させなかった場合(実施例1)に比べ、軽減されていることを確認した。
【0114】
[実施例58]
実施例28の調液工程において、防曇膜形成材料を含む溶液に、溶媒としてメタノールを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製、品番:IPA−ST−L、平均粒径:40nm)を加えて、防曇膜形成用塗布液を調液した。このとき、IPA−ST−Lは防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で10質量部となるように添加した。上記以外は実施例28と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の特性(防曇膜の膜厚、耐摩耗性、35℃水蒸気防曇性、耐熱性、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性)は表20に示すように実施例28と同等であり、該防曇性物品の防曇膜表面の一部に汚染物質としてJISL0848記載の人工汗液を接触させて吸収させた場合に、吸収させた部分と吸収させなかった部分とで外観上のひずみは、防曇膜に前記微粒子を含有させなかった場合(実施例28)に比べ、軽減されていることを確認した。
【0115】
[実施例59]
実施例1の調液工程において、防曇膜形成材料を含む溶液に、溶媒としてメタノールを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製、品番:IPA−ST−L、平均粒径:40nm)を加えて、防曇膜形成用塗布液を調液した。このとき、IPA−ST−Lは防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で20質量部となるように添加した。上記以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の特性(防曇膜の膜厚、耐摩耗性、35℃水蒸気防曇性、耐熱性、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性)は表20に示すように実施例1と同等であり、該防曇性物品の防曇膜表面の一部に汚染物質としてJISL0848記載の人工汗液を接触させて吸収させた場合に、吸収させた部分と吸収させなかった部分とで外観上のひずみは、防曇膜に前記微粒子を含有させなかった場合(実施例1)に比べ、軽減されていることを確認した。
【0116】
[実施例60]
実施例28の調液工程において、防曇膜形成材料を含む溶液に、溶媒としてメタノールを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製、品番:IPA−ST−L、平均粒径:40nm)を加えて、防曇膜形成用塗布液を調液した。このとき、IPA−ST−Lは防曇膜の固形分100質量部に対して固形分で20質量部となるように添加した。上記以外は実施例28と同様の操作で防曇性物品を作製し評価を行った。得られた防曇性物品の特性(防曇膜の膜厚、耐摩耗性、35℃水蒸気防曇性、耐熱性、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性)は表20に示すように実施例28と同等であり、該防曇性物品の防曇膜表面の一部に汚染物質としてJISL0848記載の人工汗液を接触させて吸収させた場合に、吸収させた部分と吸収させなかった部分とで外観上のひずみは、防曇膜に前記微粒子を含有させなかった場合(実施例28)に比べ、軽減されていることを確認した。
【0117】
[実施例61]
オーバーコート層として、重量平均分子量が25,000であるポリアクリル酸(AC−10LP、東亞合成株式会社製の商品名「ジュリマー」)(以降、「PAA25000」と記載する場合がある)と多官能エポキシモノマーとしてポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコールEX−512」、25℃の水に対する溶解率は100質量%)を原料として用い、0.06gのPAA25000をメタノール19.8gに溶かし、さらにEX−512を0.14g加え、オーバーコート層形成用塗布液を作製した。前記オーバーコート層形成用塗布液を、実施例1で作製した防曇膜上にスピンコーティング法により塗布した。前記塗布液が塗布された基材を80℃に保持された電気炉に1時間入れ、硬化させた後、実施例28と同様に防曇膜表面を水で流水式洗浄することにより防曇膜上にオーバーコート層を形成させて防曇性物品を得た。オーバーコート層の密度は、X線反射率法で臨界角を測定し、これを解析することで求められる。X線反射率法による密度測定については、非特許文献1に詳細に記載されており、本実施例ではXRD測定装置(Rigaku社製RINT−UltimaIII)に付随した汎用の解析プログラムにより導出した。その結果、オーバーコート層の密度は0.62g/cm
3であった。得られた防曇性物品の品質評価結果を表21に示す。
【0118】
[実施例62]
オーバーコート層として、重量平均分子量が5,000であるポリアクリル酸(AC−10P)(以降、「PAA5000」と記載する場合がある)と多官能エポキシモノマーとしてグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421、25℃の水に対する溶解率は88質量%)を原料として用い、0.03gのPAA5000をメタノール19.9gに溶かし、さらに、EX−421を0.07g加え、オーバーコート層形成用塗布液を作製した。前記オーバーコート層形成用塗布液を、実施例1で作製した防曇膜上にスピンコーティング法により塗布した。前記塗布液が塗布された基材を80℃に保持された電気炉に1時間入れ、硬化させた後、実施例28と同様に防曇膜表面を水で流水式洗浄することにより防曇膜上にオーバーコート層を形成させて防曇性物品を得た。オーバーコート層の密度は0.59g/cm
3であった。得られた防曇性物品の品質評価結果を表21に示す。
【0119】
[参考例1]
オーバーコート層として、オルガノシリカゾル(日産化学工業社製、品番:IPA−ST、一次粒径10−15nm、)3.31g、ジメチルジメトキシシラン(東京化成工業社製)0.34gをイソプロパノール20.20gに入れ、25℃で10分間攪拌した。この溶液を攪拌しながら、10質量%硝酸水溶液0.15gに徐々に滴下し、25℃で5時間攪拌した後、レベリング剤(BYK307、ビックケミージャパン社製)を0.03g添加して、オーバーコート層形成用塗布液を作製した。前記オーバーコート層形成用塗布液を、実施例1で作製した防曇膜上にスピンコーティング法により塗布した。前記塗布液が塗布された基材を、110℃の電気炉で30分間保持し硬化させた後、実施例28と同様に防曇膜表面を水で流水式洗浄することにより防曇膜上にオーバーコート層を形成させて防曇性物品を得た。オーバーコート層の密度は1.12g/cm
3であった。得られた防曇性物品の品質評価結果を表21に示す。得られた防曇性物品の防曇膜は、白濁しており視認性のある防曇性物品を得ることができなかった。また、該白濁によりヘーズ値の変化や外観上の曇り具合を正確に評価できないため、該防曇膜の耐摩耗性、防曇性、耐熱性の評価ができなかった。また、防曇膜の吸水飽和時の単位面積吸水量、耐酸性、耐アルカリ性、密着性、耐汚染性(耐着色性)についても評価を省略した。
【0120】
【表11】
【0121】
【表12】
【0122】
【表13】
【0123】
【表14】
【0124】
【表15】
【0125】
【表16】
【0126】
【表17】
【0127】
【表18】
【0128】
【表19】
【0129】
【表20】
【0130】
【表21】