(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107204
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】電源用集積回路装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/12 20060101AFI20170327BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
H02M1/12
H02M3/00 B
H02M3/00 K
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-27841(P2013-27841)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-158359(P2014-158359A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】西島 健一
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/140840(WO,A1)
【文献】
特開2000−188828(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/033120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/12
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続される電源用集積回路装置であって、
内部電源電圧を受けて動作し、前記入力回路を介して与えられる入力電圧が設定電圧を下回るときにオン駆動されて前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する第1の放電回路と、
前記内部電源電圧を受けているときにはオフ駆動され、前記内部電源電圧の供給が停止したときには前記入力電圧を受けてオン駆動されて前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する第2の放電回路と
を具備した電源用集積回路装置であって、
前記第1の放電回路は、抵抗を介して入力電源ラインに接続された第1のスイッチ素子と、前記入力電源ラインに印加される入力電圧を分圧して出力する分圧回路と、前記内部電源電圧を受けて駆動されて前記分圧回路の分圧比を変更して該分圧回路の出力電圧を低く設定すると共に、前記内部電源電圧の供給が停止したときには前記分圧回路の出力電圧を高く設定する分圧制御回路と、前記内部電源電圧を受けて駆動されて前記分圧回路の出力電圧が予め設定した第1の閾値電圧を下回るときに前記第1のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ駆動回路とを備え、
前記第2の放電回路は、抵抗を介して入力電源ラインに接続された第2のスイッチ素子と、前記内部電源電圧を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧より高く設定された第2の閾値電圧を下回るときに前記第2のスイッチ素子をオフ動作させると共に、前記内部電源電圧の供給が停止したとき、前記分圧回路の出力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ制御回路とを備えたことを特徴とする電源用集積回路装置。
【請求項2】
前記分圧回路は、直列接続されて入力電源ラインと接地ラインとの間に介装された第1および第2の抵抗からなり、
前記分圧制御回路は、前記内部電源電圧を受けてオン駆動されて、前記分圧回路における接地ライン側の第2の抵抗に第3の抵抗を並列接続する第3のスイッチ素子からなる請求項1に記載の電源用集積回路装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御回路は、前記内部電源電圧を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧より高く設定された第2の閾値電圧を下回るときに前記第2のスイッチ素子をオフ動作させるスイッチ動作禁止回路と、前記内部電源電圧の消失に伴って前記スイッチ動作禁止回路が動作停止したとき、前記分圧回路の出力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するダイオードとからなる請求項1に記載の電源用集積回路装置。
【請求項4】
コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続される電源用集積回路装置であって、
内部電源電圧を受けて動作し、前記入力回路を介して与えられる入力電圧が設定電圧を下回るときにオン駆動されて前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する第1の放電回路と、
前記内部電源電圧を受けているときにはオフ駆動され、前記内部電源電圧の供給が停止したときには前記入力電圧を受けてオン駆動されて前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する第2の放電回路と
を具備した電源用集積回路装置であって、
前記第1の放電回路は、抵抗を介して入力電源ラインに接続された第1のスイッチ素子と、前記入力電源ラインに印加される入力電圧を分圧して出力する分圧回路と、前記内部電源電圧を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が予め設定した第1の閾値電圧を下回るときに前記第1のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ駆動回路とを備え、
前記第2の放電回路は、抵抗を介して入力電源ラインに接続された第2のスイッチ素子と、前記内部電源電圧を受けて駆動されて前記第2のスイッチ素子をオフ動作させると共に、前記内部電源電圧の供給が停止したときには前記入力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ制御回路とを備え、
前記スイッチ制御回路は、前記内部電源電圧を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧より高く設定された第2の閾値電圧を下回るときに前記第2のスイッチ素子をオフ動作させるスイッチ動作禁止回路と、前記内部電源電圧の消失に伴って前記スイッチ動作禁止回路が動作停止したとき、前記分圧回路の出力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するダイオードとからなることを特徴とする電源用集積回路装置。
【請求項5】
前記スイッチ駆動回路は、前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧を下回ったとき、一定時間に亘って前記第1のスイッチ素子をオン駆動する放電用タイマ回路を備える請求項1または4に記載の電源用集積回路装置。
【請求項6】
前記スイッチ動作禁止回路は、前記出力電圧が前記第2の閾値電圧に満たないときに前記第2のスイッチ素子の駆動電圧を零電圧に保って該第2のスイッチ素子をオフ動作させる弁別回路からなる請求項3または4に記載の電源用集積回路装置。
【請求項7】
前記弁別回路は、直列に接続された2段の論理反転回路からなる請求項6に記載の電源用集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続される電源用集積回路装置に係り、特に交流電源の供給停止時に前記コンデンサに蓄積された電荷を確実に放電させることのできる電源用集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源から所定の直流電圧を生成するスイッチング電源装置の制御部として、コンデンサを有する入力回路を介して前記交流電源に接続される電源用集積回路装置が用いられることが多い。
図4は従来一般的なスイッチング電源装置の概略構成図で、1はIGBTやMOS-FET等のスイッチング素子(図示せず)を主体として構成されるスイッチング電源装置本体、2は上記スイッチング電源装置本体1をPWM制御する電源用集積回路装置(電源用IC)である。
【0003】
尚、図中3は交流電源ACinに対する入力フィルタを構成する入力回路、4は入力回路3の出力を全波整流して前記スイッチング電源装置本体1に供給する整流回路である。そして前記電源用IC2は、電源投入初期時には整流ダイオードD1,D2を介して前記入力回路3の出力(交流電源ACin)を整流して端子VHに入力し、スタートアップ回路5を起動して動作する。そして前記スイッチング電源装置本体1の起動後には、前記電源用IC2は前記スイッチング電源装置本体1から得られる電力を端子VCCに入力して動作する。
【0004】
ちなみに前記電源用IC2は、前記端子VHに供給される電力を定電流化して前記スタートアップ回路5を起動するJ-FET(定電流ダイオード)6を備えると共に、前記端子VCCに加えられる電圧を定電圧化して入力するツェナーダイオード(定電圧ダイオード)7を備える。前記電源用IC2は、前記スタートアップ回路5の出力、または前記端子VCCに加えられる電圧から所定の内部電源電圧VDDを生成し、該内部電源電圧VDDを図示しないPWM制御回路等に供給することで動作する。
【0005】
そして前記PWM制御回路は、端子FB、端子CS、および端子LATにそれぞれ入力される情報に従って前記スイッチング電源装置本体1を、具体的には前記スイッチング素子をオン・オフ制御する。尚、前記スイッチング電源装置本体1および前記電源用IC2におけるPWM制御回路については従来より種々の方式が提唱されており、また本発明の主旨とは直接関係しないので、ここではその説明を省略する。
【0006】
ところでこの種のスイッチング電源装置には、前記交流電源ACinの供給停止時(電源オフ時)に前記入力回路3のコンデンサCxに蓄積されていた電荷を放電する為の放電回路が設けられる。具体的には
図4に示すように前記コンデンサCxと並列に放電抵抗Rxが接続される。しかしながら放電回路として前記入力回路3に放電抵抗Rxを設けた場合、該放電抵抗Rxによる電力損失が生じることが否めない。
【0007】
そこで前記放電抵抗Rxに代えて、例えば
図5に示すように前記電源用IC2に電子的な放電回路8を組み込み、前記放電抵抗Rxによる電力損失を回避することが提唱されている(例えば特許文献1,2を参照)。この電子的な放電回路8のような、いわゆるIC放電によれば、
図6に示すように前記コンデンサCxの容量に拘わることなく、その損失を略零(0)にしてスイッチング電源装置の効率を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国公開特許US2010/0309694号明細書
【特許文献2】国際公開第WO2012/033120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら
図5に示す放電回路8は、前記電源用IC2の内部電源電圧VDDを受けて動作するので、仮に前記内部電源電圧VDDが消失するとその機能を失う。すると前記交流電源ACinの供給が停止しても前記コンデンサCxに蓄積された電荷を放電することができなくなると言う問題を含んでいる。ちなみに内部電源電圧VDDの消失の要因は、例えば
図7に示すように端子VCCの故障に起因することが最も多い。
【0010】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、内部電源電圧が消失した場合であっても、交流電源ACinの供給停止に入力回路が有するコンデンサに蓄積された電荷を確実に放電することのできる電源用集積回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するべく本発明に係る電源用集積回路装置は、コンデンサを有する入力回路を介して交流電源に接続されるものであって、
内部電源電圧を受けて動作し、前記入力回路を介して与えられる入力電圧が設定電圧を下回るときにオン駆動されて前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する第1の放電回路と、前記内部電源電圧を受けているときにはオフ駆動され、前記内部電源の供給が停止したときには前記入力電圧を受けてオン駆動されて前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する第2の放電回路とを具備したことを特徴としている。
【0012】
ちなみに前記第1の放電回路は、例えば放電抵抗を介して入力電源ラインに接続された第1のスイッチ素子と、前記入力電源ラインに印加される入力電圧を分圧して出力する分圧回路と、前記内部電源電圧を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が予め設定した第1の閾値電圧を下回るときに前記第1のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ駆動回路とを備えて構成される。
【0013】
また前記第2の放電回路は、例えば放電抵抗を介して入力電源ラインに接続された第2のスイッチ素子と、前記内部電源電圧を受けて駆動されて前記第2のスイッチ素子をオフ動作させると共に、前記内部電源電圧が消失したときには前記入力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ制御回路とを備えて構成される。
【0014】
好ましくは前記第1の放電回路は、放電抵抗を介して入力電源ラインに接続された第1のスイッチ素子と、前記入力電源ラインに印加される入力電圧を分圧して出力する分圧回路と、前記内部電源電圧を受けて駆動されて前記分圧回路の分圧比を変更して該分圧回路の出力電圧を低く設定すると共に、前記内部電源電圧が消失したときには前記分圧回路の出力電圧を高く設定する分圧制御回路と、前記内部電源電圧を受けて駆動されて前記分圧回路の出力電圧が予め設定した第1の閾値電圧を下回るときに前記第1のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ駆動回路とを備えて構成され、
一方、前記第2の放電回路は、放電抵抗を介して入力電源ラインに接続された第2のスイッチ素子と、前記内部電源電圧を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧より高く設定された第2の閾値電圧を下回るときに前記第2のスイッチ素子をオフ動作させると共に、前記内部電源電圧が消失したとき、前記分圧回路の出力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するスイッチ制御回路とを備えて構成される。
【0015】
好ましくは前記分圧回路は、直列接続されて入力電源ラインと接地ラインとの間に介装された第1および第2の抵抗からなり、また前記分圧制御回路は、前記内部電源を受けてオン駆動されて、前記分圧回路における接地ライン側の第2の抵抗に第3の抵抗を並列接続する第3のスイッチ素子からなる。
【0016】
また前記スイッチ制御回路は、例えば前記内部電源を受けて動作して前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧より高く設定された第2の閾値電圧を下回るときに前記第2のスイッチ素子をオフ動作させるスイッチ動作禁止回路と、前記内部電源電圧の消失に伴って前記スイッチ動作禁止回路が動作停止したとき、前記分圧回路の出力電圧を前記第2のスイッチ素子に加えて該第2のスイッチ素子をオン駆動するダイオードとを備えて構成される。
【0017】
一方、前記スイッチ駆動回路は、例えば前記分圧回路の出力電圧が前記第1の閾値電圧を下回ったとき、一定時間に亘って前記第1のスイッチ素子をオン駆動する放電用タイマ回路を備えて構成される。また前記スイッチ動作禁止回路は、前記出力電圧が前記第2の閾値電圧に満たないときに前記第2のスイッチ素子の駆動電圧を零電圧に保って該第2のスイッチ素子をオフ動作させる、例えば直列に接続された2段の論理反転回路からなる弁別回路として実現される。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の電源用集積回路装置によれば、例えば端子の故障に起因してその内部電源電圧が消失し、これに伴っていわゆるIC放電機能の第1の放電回路が機能しなくなった場合であっても、入力電圧を受けて駆動される第2の放電回路が機能するので、前記第1の放電回路に代わって入力回路のコンデンサに蓄積された電荷を確実に放電させることができる。
【0019】
特に前記第2の放電回路は、内部電源電圧が供給されているときには前記コンデンサに対する放電路を遮断して前記第1の放電回路に前記コンデンサの放電制御を委ね、前記内部電源電圧が消失したときにだけ前記コンデンサの放電を制御する。従って交流電源の供給停止時に前記コンデンサに残留している電荷を確実に放電させることが可能となり、電源用集積回路装置に要求される安全規格を満足することができる。しかもその構成が簡単なので、実用的利点が多大である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る電源用集積回路装置を備えて構成されるスイッチング電源装置の要部概略構成図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電源用集積回路装置の概略構成図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る電源用集積回路装置の概略構成図。
【
図4】入力回路に放電抵抗を設けたスイッチング電源装置の要部概略構成図。
【
図5】電源用集積回路装置に電子的な放電回路を設けたスイッチング電源装置の要部概略構成図。
【
図6】コンデンサの容量に依存する抵抗放電による損失とIC放電による損失とを対比して示す図。
【
図7】内部電源電圧の消失の要因となる端子故障の発生率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る電源用集積回路装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る電源用集積回路装置を備えて構成されるスイッチング電源装置の要部概略構成を示す図である。このスイッチング電源装置は、
図4および
図5にそれぞれ示したスイッチング電源装置と同様に、入力回路3および整流回路4を介して交流電源ACinに接続されたスイッチング電源装置本体1と、前記入力回路3を介して前記交流電源ACinに接続されて前記スイッチング電源装置本体1をPWM制御する電源用集積回路装置(電源用IC)2とを備えて構成される。
【0023】
特にこの実施形態に係る前記電源用IC2が特徴とするところは、前述した
図5に示す放電回路8に相当する第1の放電回路11に加えて、前記端子VHに加えられる入力電圧を受けて動作して前記入力回路3に設けられたコンデンサCxに蓄積された電荷を放電する第2の放電回路12を備える点にある。前記第1の放電回路11は、該電源用IC2の内部電源電圧VDDを受けて動作し、前記交流電源ACinの供給停止時に前記入力回路3のコンデンサCxに蓄積された電荷を放電する役割を担う。また前記第2の放電回路12は、前記内部電源電圧VDDが消失したとき、前記端子VHに加えられる入力電圧Vinを受けて動作することで、前記第1の放電回路11に代わって前記コンデンサCxに蓄積された電荷を放電する役割を担う。
【0024】
具体的には
図2に本発明の第1の実施形態に係る電源用IC2の要部概略構成を示すように、前記第1の放電回路11は放電抵抗Rd1を介して前記端子VHに連なる入力電源ラインに接続された、例えばMOS-FETからなる第1のスイッチ素子Sd1を備える。また前記第1の放電回路11は、直列に接続された抵抗Ra1,Rb1からなり、前記入力電源ラインに印加される入力電圧Vinを分圧して出力する第1の分圧回路13を備える。更に前記第1の放電回路11は、前記内部電源電圧VDDを受けて動作して前記分圧回路13の出力電圧が予め設定した第1の閾値電圧Vthを下回るときに前記第1のスイッチ素子Sd1をオン駆動し、前記コンデンサCxの放電路を形成するスイッチ駆動回路SDを備えて構成される。
【0025】
ちなみに上記スイッチ駆動回路SDは、前記分圧回路13の出力電圧と予め設定された閾値電圧Vthとを比較する比較器CMPと、前記出力電圧が前記第1の閾値電圧Vthを下回ったとき、前記比較器CMPの出力を受けて起動されて一定時間に亘って前記第1のスイッチ素子Sd1をオン駆動するタイマ回路Tとからなる。これらの比較器CMPおよびタイマ回路Tは、前記内部電源電圧VDDを受けて動作する電子回路からなる。従って前記比較器CMPおよびタイマ回路Tを備えて構成される前記スイッチ駆動回路SDは、端子故障等に起因して前記内部電源電圧VDDが消失したときには、その機能を失うと言う性質を有する。
【0026】
尚、前記第1の分圧回路13を構成する前記抵抗Ra1,Rb1は、前記入力電圧Vinを分圧して検出する役割を担うだけなので、数10MΩオーダーの高抵抗のものが用いられる。また前記抵抗Ra1,Rb1の抵抗値比は、前記端子VHに印加される入力電圧Vinが予め規定された正常電圧範囲にあるとき、その出力電圧が前記比較器CMPに設定される閾値電圧Vthよりも若干高い電圧となるように設定される。
【0027】
これに対して前記第2の放電回路12は、放電抵抗Rd2を介して前記入力電源ラインに接続された接続された、例えばMOS-FETからなる第2のスイッチ素子Sd2を備える。また前記第2の放電回路12は、直列に接続された抵抗Ra2,Rb2からなり、前記入力電源ラインに印加される入力電圧Vinを分圧して出力する第2の分圧回路14を備える。更に前記第2の放電回路12は、前記内部電源電圧VDDを受けて駆動されて前記第2のスイッチ素子Sd2をオフ動作させるスイッチ動作禁止回路を備える。
【0028】
ちなみに上記スイッチ動作禁止回路は、例えば直列に接続され、前記内部電源電圧VDDを受けて動作する2段の論理反転回路(ノット回路)N1,N2からなる。そして前記スイッチ動作禁止回路は、前記第2の分圧回路14の出力電圧が1段目の前記論理反転回路(ノット回路)N1の論理反転閾値を下回るとき、2段目の論理反転回路(ノット回路)N2の論理出力をローレベル(L)とすることで前記第2のスイッチ素子Sd2のゲート電圧を零(0V)にし、これによって該第2のスイッチ素子Sd2を強制的にオフ動作させる役割を担う。
【0029】
更に前記第2の放電回路12は、前記スイッチ動作禁止回路と並列にダイオードDを備える。このダイオードDは、前記内部電源電圧VDDの消失に伴って前記スイッチ動作禁止回路の機能が停止したとき、前記入力電圧Vinを前記第2のスイッチ素子Sd2のゲートに加えることで該第2のスイッチ素子Sd2をオン駆動する役割を担う。具体的には前記ダイオードDは、前記第2の分圧回路14の出力電圧が前記第2のスイッチ素子Sd2の動作閾値よりも高いとき、前記第2の分圧回路14の出力電圧を前記第2のスイッチ素子Sd2のゲートに加えることで該第2のスイッチ素子Sd2をオン駆動する。この第2のスイッチ素子Sd2のオン駆動により、前記放電抵抗Rd2を介する前記コンデンサCxの放電路が形成される。
【0030】
ちなみに前記第2の分圧回路14を構成する抵抗Ra2,Rb2は、前記入力電圧Vinを分圧して検出すると共に、前記第2のスイッチ素子Sd2をオン駆動する役割を担うだけなので、数10MΩオーダーの高抵抗のものが用いられる。また前記抵抗Ra2,Rb2の抵抗値比は、前記端子VHに印加される入力電圧Vinが予め規定された正常電圧範囲にあるとき、その出力電圧が前記論理反転回路(ノット回路)N1の論理反転閾値よりも低く、且つ前記第2のスイッチ素子Sd2の動作閾値よりも十分高い電圧となるように設定される。
【0031】
尚、前述した各放電抵抗Rd1,Rd2は、電源スイッチのオフ等による前記交流電源ACinの供給停止時に前記コンデンサCxに蓄積された電荷を所定時間内に速やかに放電させる役割を担うので、一般的には数100kΩ程度のものが用いられる。ここで
図2に示す符号9は内部電源電圧VDDを生成して前述したPWM制御回路(図示せず)、前記第1の放電回路11および第2の放電回路12に供給する内部電源回路である。また
図2では
図1に示したJ-FET(定電流ダイオード)6およびツェナーダイオード(定電圧ダイオード)7を省略している。
【0032】
このように構成された電源用IC2によれば、該電源用IC2が正常に機能して前記内部電源電圧VDDが生成されている場合には、前記入力電圧Vinを分圧する前記第1の分圧回路13の出力電圧は、前記閾値電圧Vthよりも高く保たれる。従って前記第1の放電回路11における第1のスイッチ素子Sd1は、オフ状態に保たれる。また同時に前記入力電圧Vinを分圧する前記第2の分圧回路14の出力電圧は、前記論理反転回路(ノット回路)N1の論理反転閾値よりも低く保たれる。従って前記第2の放電回路12における第2のスイッチ素子Sd1もまたオフ状態に保たれる。
【0033】
そして、例えば電源スイッチのオフによって交流電源ACinの供給が途絶えると、これに伴って前記入力電圧Vinが、ひいては前記第1の分圧回路13の出力電圧が低下する。この際、前記電源用IC2は、前記入力電圧Vinが低電圧誤動作防止回路(UVLO)の動作電圧まで低下する間、その動作を継続して一定期間に亘って前記内部電源電圧VDDを生成する。従って前記交流電源ACinの供給が途絶えても、一定時間に亘って前記第1の放電回路11はその動作を継続する。
【0034】
この結果、前記入力電圧Vinの低下に伴って前記第1の分圧回路13の出力電圧が前記閾値電圧Vthを下回ると、前記比較器CMPの出力が反転する。すると前記比較器CMPの反転出力を受けてタイマ回路Tが起動されて前記第1のスイッチ素子Sd1が一定時間に亘ってオン駆動される。この第1のスイッチ素子Sd1のオン駆動により前記放電抵抗Rd1を介する前記コンデンサCxの放電路が形成され、該コンデンサCxに蓄積されている残留電荷が速やかに放電される。
【0035】
これに対して前記端子VCCの故障等に起因して前記内部電源電圧VDDの生成が停止すると、これによって前記第1の放電回路11の機能のみならず、前述したPWM制御回路の機能も失われる。また同時に前記内部電源電圧VDDの消失に伴って前記第2の放電回路12における前記スイッチ動作禁止回路(論理反転回路N1,N2)の機能が停止する。そしてスイッチング電源装置のエラー処理によって前記交流電源ACinの遮断処理が実行される。
【0036】
すると前記第2の分圧回路14を介して前記入力電圧Vinを分圧した前記第2の分圧回路14の出力電圧が前記第2のスイッチ素子Sd2に印加される。前記交流電源ACinの供給停止(遮断)時には前記第2の分圧回路14の出力電圧は、前記第2のスイッチ素子Sd2の動作閾値電圧よりも十分に高いので、上記出力電圧によって前記第2のスイッチ素子Sd2がオン駆動される。そしてこの第2のスイッチ素子Sd2のオン動作により、前記放電抵抗Rd2を介する前記コンデンサCxの放電路が形成され、該コンデンサCxに蓄積されている残留電荷が放電される。即ち、前記内部電源電圧VDDが消失した場合には、前記第2の放電回路12を介して前記コンデンサCxに蓄積されている電荷が速やかに放電される。
【0037】
従って上述した如く構成された第1の放電回路11および第2の放電回路12を備えた電源用IC2によれば、前記交流電源ACinの供給が停止したとき、内部電源電圧VDDに依存することなく前記コンデンサCxの電荷が確実に放電することが可能となる。従って電源用IC2の放電機能の信頼性を高めて、前記コンデンサCxの放電に関する安全規格を十分に対応することが可能となる。しかも簡易にして効果的に前記コンデンサCxの残留電荷を放電することができるので、実用上多大なる効果が奏せられる。
【0038】
図3は本発明の第2の実施形態に係る電源用IC2の要部概略構成を示している。この第2の実施形態に係る電源用IC2は、前述した第1および第2の分圧回路13,14を、内部電源電圧VDDの有無に応じて分圧比を変更可能な1つの分圧回路15としてまとめたものである。また同時に前記第2の放電回路12の放電抵抗Rd2を、前記第1の放電回路11の放電抵抗Rd1に直列に接続して構成される。換言すれば前記第2のスイッチ素子Sd2を介する前記コンデンサCxの放電路を、前記放電抵抗Rd1,Rd2を直列に介して形成するように構成される。そしてこの分圧回路15の出力電圧を、前記第1および第2の放電回路11,12に共通に与えるように構成される。
【0039】
ここで前記分圧回路15は、直列に接続されて前記入力電圧ラインと接地ラインとの間に介装された抵抗Ra3,Rb3と、第3のスイッチ素子Sp3を介して前記抵抗Rb3に並列接続される抵抗Rc3とにより構成される。前記第3のスイッチ素子Sp3は、前記内部電源電圧VDDを受けてオン駆動されて前記抵抗Rc3を前記抵抗Rb3に並列接続し、また前記内部電源電圧VDDが消失したときには前記抵抗Rc3を前記抵抗Rb3から切り離すことで、その分圧比を変更する役割を担う。
【0040】
ちなみに前記抵抗Ra3,Rb3は、例えば前述した第2の分圧回路14の抵抗比と同じに設定される。また前記抵抗Rc3は、前記抵抗Rb3に並列したときの抵抗値[(Rb3・Rc3)/(Rb3+Rc3)]と前記抵抗Ra3との抵抗比が、前述した第1の分圧回路13の抵抗比と同じになるように設定される。これらの抵抗Ra3,Rb3,Rc3もまた、前述した抵抗Ra1,Rb1,Ra2,Rb2と同様に前記入力電圧Vinを分圧して検出し、また前記第2のスイッチ素子Sd2をオン駆動する役割を担うだけなので、数10MΩオーダーの高抵抗のものが用いられる。
【0041】
かくして上述した如く構成された電源用IC2によれば、前記内部電源電圧VDDの有無に応じて前記分圧回路15の分圧比が変更されるので、前記内部電源電圧VDDが供給されている正常時には前記第1の放電回路11による前記コンデンサCxの放電が行われる。そして前記内部電源電圧VDDが消失したときには、前記第2の放電回路12による前記コンデンサCxの放電が行われる。従って前述した第1の実施形態の場合と同様に、前記内部電源電圧VDDに依存することなく、交流電源ACinの供給停止時に前記コンデンサCxに残存する電荷を確実に放電することができる。
【0042】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば第1の放電回路11の構成については従来より提唱されている種々の回路方式を適宜採用可能である。また第2の放電回路12についても、例えば前記内部電源電圧VDDを受けて出力を零(0V)にする論理反転回路(比較器)を用いて前記第2のスイッチ素子Sd2を強制的にオフ動作させるようにすることも可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 スイッチング電源装置本体
2 電源用集積回路装置(電源用IC)
3 入力回路
4 整流回路
5 スタートアップ回路
6 J-FET(定電流ダイオード)
7 ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)
8 放電回路
9 内部電源回路
11 第1の放電回路
12 第2の放電回路
13 第1の分圧回路
14 第2の分圧回路
15 分圧回路
Cx コンデンサ
Sd1 第1のスイッチ素子(MOS-FET)
Sd2 第2のスイッチ素子(MOS-FET)
Sp3 第3のスイッチ素子(MOS-FET)
Rd1,Rd2 放電抵抗
Ra1,Rb1,Ra2,Rb2,Ra3,Ra3,Rc3 分圧抵抗
SD スイッチ駆動回路
CMP 比較器
T タイマ回路
SC スイッチ制御回路
D ダイオード
N1,N2 論理反転回路(スイッチ動作禁止回路)