(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
フィルム基材としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、トリアセチルアセテートフイルム等が挙げられる。好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
【0014】
剥離層(A)としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム樹脂などが挙げられる。好ましくはアクリル樹脂単独あるいはアクリル樹脂と塩化ゴム樹脂の混合物である。
【0015】
印刷インキ層(B)は、意匠性、隠蔽性等を付与するため顔料や染料を含有する層である。具体的な方法は後述するが、成型物から成型基材を回収する際には、インキ層の顔料や染料を除去する必要である。印刷キンキ層(B)は、印刷インキを塗工、印刷することにより得られる。印刷インキのバインダー樹脂としてはポリウレタン樹脂や塩化ゴム樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは塩化ゴム樹脂単独あるいはポリウレタン樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂の混合物である。
【0016】
印刷インキに使用するポリウレタン樹脂は、高分子ジオール、ジイソシアネート、鎖延長剤と反応させて製造される。合成方法としては、高分子ジオールとジイソシアネートを必要に応じイソシアネート基に不活性な溶媒を用い、また、更に必要であればウレタン化触媒を用いて10℃から150℃の温度で反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、次いで、このプレポリマーに鎖延長剤、末端停止剤を反応させてポリウレタン樹脂を得るプレポリマー法、あるいは、高分子ジオールとジイソシアネートと鎖延長剤を一段で反応させてポリウレタン樹脂を得るワンショット法など公知の方法により製造する事ができる。
【0017】
ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が10000〜80000であることが好ましい。10000より小さいと、耐摩耗性の確保が難しく、80000より大きいと、インキの溶媒への溶解性が劣ることから印刷効果の確保が難しい。好ましくは30000〜70000である。
高分子ジオールとしては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等が挙げられる。ポリエステルジオールはグリコールと二塩基酸から公知の方法で得られる。グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,9−ノナンンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブチンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール等から選ばれる1種以上を用いることができる。これらの内、分岐モノマーはポリエステルにアルキル側鎖を持たせるため、その立体障害効果によりポリエステルの結晶性を下げる。そのため皮膜の柔軟性を向上させることができ、転写に伴う加工適性の向上を図ることができる。
【0018】
その他のジオールとしてダイマージオール、重合脂肪酸ポリエステルジオールが使用できる。ダイマージオールは、不飽和脂肪酸の二量化反応部物であるダイマー酸のカルボキシル基を還元して得られる。重合脂肪酸ポリエステルジオールは、ダイマージオールとジカルボン酸あるいはこれらの無水物との反応物、ダイマー酸とジオール化合物との反応により得られる。
【0019】
また、二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物が挙げられる。この中で、ノントルエン系溶剤への溶解性などからアジピン酸を用いることが好ましい。
【0020】
ポリエステルジオールの数平均分子量は、得られるポリウレタン樹脂の溶解性、乾燥性、耐ブロッキング性等を考慮して適宜決定され、通常は700〜10000、好ましくは1000〜6000の範囲内とするのがよい。数平均分子量が700未満であればハードセグメントの量が多くなることによる溶解性の低下に伴い印刷適性が劣る傾向があり、他方10000を越えるとハードセグメントの割合が少なくなり、乾燥性及び耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0021】
なお、上述した重量平均分子量は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPC System−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0022】
また、数平均分子量については、水酸基価から算出を行った。
【0023】
水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰の無水酸でエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JISK0070に従って行った値である。
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数である。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルジオール類が挙げられる。
【0025】
高分子ジオール以外としては、トリエチレングリコール、ヒドロキシル基を2個以上有するグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの3価以上の低分子ポリオールをウレタンモノマーとして使用、さらに各種ポリマーポリオールの原料に使用することも可能である。
【0026】
ポリウレタン樹脂に使用されるジイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる
【0027】
、
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’ −ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
本発明において印刷インキ層(B)に用いるポリウレタン樹脂は、ポリエステルジオール、ジイソシアネート、アミン系鎖延長剤で合成された樹脂であることが転写時のフイルム追随性、転写材の層間の密着性、再利用時の剥離等のバランスの点で特に好ましい。
【0029】
また、反応停止を目的とした末端停止剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としては例えば、1級、2級のアミノ基を有する化合物、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類や水酸基を有するアミノアルコール類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。この中で、1級、2級のアミノ基を有するアミノアルコール類は、末端停止剤として用いる場合、高温での反応を避けて、アミノ基のみ反応するよう制御する必要がある。これらの末端停止剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。ここで、鎖延長剤にアミノ基を用いる場合、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成するため、得られる樹脂はポリウレタン/ウレア樹脂になるが、本発明においては、これらの樹脂もポリウレタン樹脂とする。
【0030】
末端停止剤を用いるときには、末端停止剤と鎖延長剤とを一緒に使用して鎖延長反応を行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に末端停止剤を単独に添加して末端停止反応を行ってもよい。一方、末端停止剤を用いなくても分子量のコントロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方法が反応制御という点で好ましい。
【0031】
本発明に用いるポリウレタン樹脂のアミン価は、0.5〜20mgKOH/gであることが好ましい。アミン価が0.5mgKOH/gより低いと、接着性の確保が難しく、20mgKOH/gより大きいと、イソシアネート系硬化剤を添加した際のインキ安定性の確保が難しい場合がある。
【0032】
ウレタン化反応においては、触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛などの金属系の触媒などが挙げられる。これらの触媒は通常ポリオールに対して0.001〜1モル%の範囲で使用される。
【0033】
ポリウレタン樹脂の合成に使用する溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類やジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、クロルベンゼン、パークレンなどのハロゲン系炭化水素などが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上混合し混合溶媒としても用いる事ができる。
【0034】
本発明の構成をなす印刷インキ層(B)には、ポリウレタン樹脂の他、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、特に水酸基を有するものが好ましい。水酸基を有する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーの共重合体を部分ケン化したり、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーと共重合可能でヒドロキシル基を有するモノマー、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を共重合することで得られる。また、該共重合体はアクリルアミド、アクリルニトリル、グリシジルメタアクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを含んでも良い。
【0035】
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂の水酸基価は、70〜180mgKOH/gであることが好ましい。70mgKOH/gより小さいと顔料の発色性が劣り、180mgKOH/gより多いと塗膜の耐水性が劣る。また、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂の使用量は、ポリウレタン樹脂/塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体=50:50〜90:10(固形分比)の範囲で使用することが好ましい。ポリウレタン樹脂の使用量が50より少ないと成型時の耐熱圧性が不良となり、90より多いと有機顔料の発色性が劣る。
【0036】
印刷インキ層には、塩化ゴム樹脂を単独で用いてもよい。塩化ゴム樹脂は公知のものを使用できる。その他の樹脂としては、用途や成型基材に応じて、塩素化ポリプロピレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロ セルロース、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変形樹脂などが挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
印刷インキ層(B)に使用する印刷インキは、前記の樹脂の他、顔料、シリカ、溶剤等からなる。
顔料としては一般的に用いられているものを利用でき、なかでも耐光性、耐候性の高いものが望ましい。耐光性、耐候性の高い顔料としては、例えばキナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料や、ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母等の無機顔料が挙げられる。
染料としては、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
【0038】
シリカは、天然に採取されるものや合成シリカ等がある。合成シリカでは、製造方法から、湿式法シリカ(沈降法、ゲル法)、乾式法シリカ(燃焼法、アーク法)があり、更にその粒子表面をシランカップリング剤やマイクロクリスタリン、アルミナ等の有機物、無機物で表面処理したもの等がある。シリカは、表面処理を施していないもの、表面処理を施したもの、特に製造方法の違いに制限はされない。
更に、シリカの粒径は1〜20μmが好ましく、更に好ましくは1〜10μmである。また、形状は球状、不定形何れも使用可能であるが、球状がより好ましい。
【0039】
シリカは、印刷インキ中に0.1〜5重量%使用すると重ね刷り性が良好となる。
シリカ以外のフィラーとして、アルミナ、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム等の無機フィラー類を併用することができる。上記フィラーは1種又は2種以上を混合して使用しても構わない。
【0040】
印刷インキは、更に必要に応じて、消泡剤,レベリング剤等の添加剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、防菌防かび剤、顔料もしくは染料等を硬化皮膜の最終物性に影響しない範囲で使用できる。
【0041】
印刷インキに使用される溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n―ブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤など公知の溶剤を使用できる。
【0042】
印刷インキ層(B)は印刷インキの、塗工、印刷によって形成される。
塗工方式としては、グラビアコート方式、グラビアオフセット方式、リバースコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式等が挙げられる。この場合、数回に分けて塗布しても良いし、1回で塗布しても良く、また異なる方式を複数組み合わせても良い。
【0043】
尚、本願発明における印刷インキ層(B)は、印刷インキの単層でも、或いは印刷インキ層を重ねたものでもよく、例えば白インキの単層、色インキの単層、或いは色インキ層/白インキ層を重ねたものを使用できる。
【0044】
溶解層(C)は、成型基材の回収時において水溶液に溶解することが必要である。溶解層(C)が、水溶液に溶解することにより、インキ層を成型基材から分離させ、成型基材の回収、再利用を実現することが可能となる。
溶解層(C)において使用されるポリビニルアルコール樹脂組成物から形成されるポリビニルアルコール樹脂層(c1)は、ポリビニルアルコール樹脂を含有し、該樹脂はビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。
ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0045】
ビニルエステルへは、他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。ケン化度が低すぎると造膜性が低下するためバリア性能が低下する。インキ層の離脱性の観点から、ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は80%以上、重合度は300以上、2500以下であることが好ましい。更に好ましくは、ケン化度は80%以上、90%以下、重合度が1000以上、2000以下である。
【0046】
溶解層(C)を構成するポリウレタン樹脂層(c2)に使用されるポリウレタン樹脂は、前述の印刷インキ層(B)で記載したポリウレタン樹脂を使用できる。この場合、ポリウレタン樹脂層(c2)のポリウレタン樹脂は、印刷インキ層(B)に用いたポリウレタン樹脂と同じであっても、異なっていてもよい。
また、ポリウレタン樹脂層(c2)に使用されるポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂の他、前述した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含有していることが好ましい。塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含有することにより耐熱性が向上し優れた転写性能が得られる。
【0047】
接着層(D)としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、キシレン樹脂、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。好ましくはアクリル樹脂単独あるいはアクリル樹脂とキシレン樹脂の混合物である。
【0048】
キシレン樹脂を添加する事により成型物への接着性が更に向上する。キシレン樹脂はキシレンがメチレン基やエーテル結合で架橋した基本構造の多量体組成物で、末端の一部がOH基となっているため多くの合成樹脂との相溶性に優れており、成型基材との接着性の向上など転写性能の改善が可能となる。キシレン樹脂は粘度100〜1000(mPa・S)、水酸基価は10〜30(mgKOH/g)が使用できる。好ましくは粘度200〜400(mPa・S)、水酸基価は15〜25(mgKOH/g)である。
【0049】
本願発明のリサイクル用転写材が適用できる成型基材として、公知の成型基材であるPS(ポリスチレン)、ABS(アクリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカーボネート)、PVC(塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエステル)等を使用できる。用途としては、例えば玩具、食品容器、化粧品容器、文房具、弱電製品、雑貨物、ダッシュボード、塩ビブローボトル、塩ビカード、洗面器、家庭用品、遊戯具、ボトル等に使用できる。
【0050】
リサイクル用転写材の成型基材への転写は公知の方法により行われる。例えば転写材をキャビテイ内に配置し、射出成型と同時に図柄を成型品に転写する成型同時転写法などがある。
【0051】
本発明における転写材の具体的な構成は
構成1:フィルム基材/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリビニルアルコール樹脂 層(c1)/接着層(D)。
構成2:フィルム基材/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリビニルアルコール樹脂 層(c1)/ポリウレタン樹脂層(c2)/接着層(D)。
構成3:フィルム基材/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2 )/ポリビニルアルコール樹脂層(c1)/接着層(D)。
構成4:フィルム基材/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2 )/ポリビニルアルコール樹脂層(c1)/ポリウレタン樹脂層(c2)/接着層 (D)。
等が上げられる。何れの構成においても、転写材を転写した最終成型物のリサイクル性に優れるが、特に溶解層(C)をポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1)/ポリウレタン樹脂層(c2)とすることで、更に転写材と成型物間の密着性、リサイクル性に優れた転写材が得られる。
【0052】
剥離層(A)と印刷インキ層(B)の間にはハードコート層(E)を設けてもよい。ハードコート層(E)は、活性エネルギー線硬化性組成物を活性エネルギー線で硬化させることにより得られる。当該組成物は、活性エネルギー線硬化性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、樹脂、光重合開始剤等からなる。
活性エネルギー線硬化性モノマーは表面保護層の物性の向上、活性エネルギー線硬化型組成物の粘度調整の目的で添加されるものであり、(メタ)アクリレート基を有する単官能,多官能モノマー等が挙げられる。
【0053】
単官能モノマーとしては、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、インデシルアクリレート、イソクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、エトキシ化ノニフェノールアクリレート、プロポキシ化ノニルフェノールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレンアクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エチレンオキサイド2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0054】
多官能モノマーとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタアクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
【0055】
活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、表面保護層に耐性、柔軟性を付与するものであり、分子量が1000以上のものが好適に用いられる。 例えば、(メタ)アクリレート基を有するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。これらのうち、表面硬度と成型性の両立の点で、好ましくは、ウレタンアクリレートである。
【0056】
ハードコート層(E)には、表面の粘着性を抑え、柔軟性を付与するために、熱可塑性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体等の樹脂が使用される。好ましくは、アクリル樹脂である。
【0057】
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化方法は、電子線硬化、紫外線硬化等が挙げられる。いずれの方法を用いても良いが、紫外線硬化を行う場合には、硬化に光開始剤が必要である。一般に使用される光開始剤としてジアセトキシアセトフェノンや2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系、イソブチルベンゾインエーテルやイソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンジルジメチルケタールやヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール系、ベンゾフェノンや2−クロロチオキサントン等のケトン系等が挙げられる。電子線硬化型の場合、必ずしも光開始剤は必要ない。
【0058】
電子線により硬化する場合には、従来既知の硬化装置を使用することができ、照射線量は10kGy〜200kGyが好ましく、さらに30kGy〜100kGyがより好ましい。10kGy未満だと完全硬化ができず、200kGyを越えると電子線照射管の寿命は著しく短くなり、経済的に好ましくない。
【0059】
剥離層(A)と印刷インキ層(B)の間にハードコート層(E)を設ける場合は、活性エネルギー線硬化性組成物のほかアクリルポリオールとイソシネートを反応させて得られる公知の2液硬化型樹脂も使用できる。
【0060】
本発明の転写材でハードコート層(E)を含む態様には、例えば以下のものが挙げられる。
構成5:フィルム基材/剥離層(A)/ハードコート層(E)/印刷インキ層(B)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1)/接着層(D)。
構成6:フィルム基材/剥離層(A)/ハードコート層(E)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1)/接着層(D)。
構成7:フィルム基材/剥離層(A)/ハードコート層(E)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1)/ポリウレタン樹脂層(c2)/接着層(D)。
【0061】
本発明で用いるインキ離脱用の溶液は、水を含む溶液であることが必要である。水を含むと、溶解層のポリビニルアルコール樹脂層が溶解し、有色顔料を含むインキ層を好適に離脱させることが可能となる。インキ層が離脱することにより、成型基材を好適に再利用することができる。
なお、有機溶剤は成型基材を侵しやすいため、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、Nプロピルアルコール以外の有機溶剤併用しないほうが好ましい。
さらに、ポリビニルアルコール樹脂の溶解性の観点から、水溶液は弱酸性〜アルカリ性(pHは5以上)が好ましく、中性〜アルカリ性(pH7以上)であることがより好ましい。
【実施例】
【0062】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の「部」は重量部を表す。
実施例1〜実施例9、比較例1,2における転写材の構成をなすフィルム基材、剥離層(A)、印刷インキ層(B)、溶解層(C)、接着層(D)およびハードコート層(E)を下記に示す。なお溶解層(C)のポリビニルアルコール樹脂層(c1)以外は、各実施例において同じである。
【0063】
(1)フィルム基材:ポリエチレンテレフタレート(東洋紡ポリエステルフィルムルミラー厚み25μm)(以下,PETフィルム)
(2)剥離層(A):アクリル樹脂(ダイヤナールBR101、三菱レイヨン社製)20部、塩化ゴム(ペルグートS−20、バイエル社製)5部、溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=5/2)75部を混合してなる剥離ワニスを、グラビアコート法により塗工することにより形成した。
【0064】
(3)印刷インキ層(B):藍顔料20部、ポリウレタン樹脂溶液15部、酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶液(重量比75/25)10部を攪拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液45部、酢酸n-プロピル/イソプロピルアルコール混合溶液(重量比75/25)10部を攪拌混合し藍インキを得た。さらに、藍インキ100部を、上記混合溶液50部で希釈し、グラビア方式で印刷することにより、印刷インキ層を形成した。
なお、ポリウレタン樹脂溶液は下記のように調整した。
【0065】
<ポリウレタン樹脂溶液の調整>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、PMPA(ポリ3−メチル−1、5−ペンタンアジペート、数平均分子量2000)18.6部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000)3.2部、イソホロンジイソシアネート2.4部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸n−プロピル10部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液34.1部を得た。次いでイソホロンジアミン0.91部、ジn−ブチルアミン0.014部、酢酸n−プロピル46.3部およびイソプロピルアルコール18.8部を混合した溶液へ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液34.1部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分25%、重量平均分子量76000、アミン価1.5mgKOH/樹脂1gのポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0066】
(4)ポリビニルアルコール樹脂層(c1):ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解させ、固形分10%のポリビニルアルコール樹脂溶液を得た。この溶液をグラビア方式で印刷することにより、ポリビニルアルコール樹脂層(c1)を形成した。なおポリビニルアルコール樹脂層(c1)は、ポリビニルアルコールの種類によりポリビニルアルコール樹脂層(c1−1)〜(c1−6)、計6種を作成した。
【0067】
なお、各種のケン化度及び重合度を持つポリビニルアルコールは株式会社クラレより入手した。
(c1−1)〜(c1−6)に使用したポリビニルアルコールの内訳は以下の通りである。
(c1−1):PVA−105(ケン化度98%、重合度500 、クラレ社製)
(c1−2):PVA−117(ケン化度98%、重合度1700、クラレ社製)
(c1−3):PVA−124(ケン化度98%、重合度2400、クラレ社製)
(c1−4):PVA−205(ケン化度89%、重合度500 、クラレ社製)
(c1−5):PVA−217(ケン化度89%、重合度1700、クラレ社製)
(c1−6):PVA−224(ケン化度89%、重合度2400、クラレ社製)
【0068】
(5)ポリウレタン樹脂層(c2):前記ポリウレタン樹脂溶液および混合溶剤(酢酸エチル/イソプロピルアルコール=75/25)を混合してなるグラビアコート用樹脂コート剤(固形分20%)を塗工することで形成した。
【0069】
(6)接着層(D):アクリル樹脂(ダイヤナールBR101、三菱レーヨン社製)40部、キシレン樹脂(ニカノールY−50、三菱瓦斯化学社製)10部、混合溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)50部を混合してなる接着剤を塗工することで形成した。
【0070】
(7)ハードコート層(E):活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(ハリマ化成株式会社硬化性樹脂HFC−MR02/H−240F)を塗工し、硬化させることで形成した。
【0071】
[実施例1]
以下の(1)〜(5)の積層手順で転写物1を得た。
(1)PETフィルム基材に、剥離剤(A)をグラビアコート法により塗工し、膜厚1μmの剥離層を形成した。
(2)印刷インキ(B)を、グラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で該剥離層上に印刷した。
(3)ポリウレタン樹脂層(c2)を、グラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で印刷インキ上に印刷した。
(4)ポリビニルアルコール樹脂層(c1ー1)を、グラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリウレタン樹脂層(c2)上に印刷した。
(5)接着層(D)を、グラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリビニルアルコール樹脂層(c1−1)上に印刷し、下記に示すリサイクル用転写材1を得た。
転写材1:PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−1)/接着層(D)
【0072】
[実施例2〜7]
実施例2〜7においても実施例1と同様な方法、条件で転写材2〜7を得た。さらに、それぞれの転写材を成型基材(ポリカーボネート)に転写し、転写物2〜7を得た。具体的な転写材の構成を下記に記す。
【0073】
実施例2(転写材2):PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−2)/接着層(D)
実施例3(転写材3):PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−3)/接着層(D)
実施例4(転写材4):PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−4)/接着層(D)
実施例5(転写材5):PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−5)/接着層(D)
実施例6(転写材6):PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−6)/接着層(D)
実施例7(転写材7):PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−5)/ポリウレタン樹脂層(c2)/接着層(D)
【0074】
[実施例8]
PETフィルム基材に剥離剤をグラビアコート法により塗工し、膜厚1μmの剥離層を得た、次に活性エネルギー線硬化性樹脂を、グラビア印刷方式(版深35μmの網グラビア版で印刷速度60(m/min))で該剥離層上に印刷し、剥離層を含む上記印刷物を90℃の熱風で乾燥させることで、未硬化のハードコート層を形成した。その後、出力80(W/CM)のメタルハライドパンプ2本下で硬化させることでハードコート層を得た。
次に印刷インキをグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で該ハードコート層上に印刷した。
次にポリウレタン樹脂層(c2)をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で印刷インキ上に印刷した。
さらにポリビニルアルコール樹脂層(c1−1)をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリウレタン樹脂層(c2)上に印刷した。
次に接着層をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリビニルアルコール樹脂層(c1−1)上に形成し、下記に示すリサイクル用転写材8を得た。
実施例8(転写材8):PETフィルム/剥離層(A)/ハードコート層(E)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−1)/接着層(D)。
上記の方法で得た転写材8を230℃の条件下で成型基材(ポリカーボネート)に転写し、成型物を得た。室温に冷却後に転写物よりPETフィルムを手で剥離させる事で転写物8を得た。
【0075】
[実施例9]
PETフィルム基材に剥離剤をグラビアコート法により塗工し、膜厚1μmの剥離層を得た、次に活性エネルギー線硬化性樹脂をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で印刷速度60(m/min)で該剥離層上に印刷し、剥離層を含む上記印刷物を90℃の熱風で乾燥し、未硬化のハードコート層を形成した。その後、出力80(W/CM)のメタルハライドパンプ2本下で硬化させることでハードコート層を得た。
次に印刷インキをグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でハードコート層上に印刷した。
次にポリウレタン樹脂層(c2)をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で印刷インキ層上に印刷した。
次にポリビニルアルコール樹脂層(c1−5)をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリウレタン樹脂層(c2)上に形成した。
次にポリウレタン樹脂層(c2)をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリビニルアルコール樹脂層(c1−5)上に印刷した。
さらに接着層をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)でポリウレタン樹脂層(c2)に印刷し、下記に示すリサイクル用転写材9を得た。
転写材9:PETフィルム/剥離層(A)/ハードコート層(E)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/ポリビニルアルコール樹脂層(c1−5)/ポ リウレタン樹脂層(c2)/接着層(D)。
上記の方法で得た転写材9を、230℃の条件下で成型基材(ポリカーボネート)に転写し、成型物を得た。室温に冷却後に転写物よりPETフィルムを手で剥離させる事で転写物9を得た。
【0076】
尚、実施例1〜6の溶解層(C)に用いたポリビニルアルコール樹脂は、樹脂5%と水95%で溶解した水溶液として使用した。ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度98%、分子量500を超えると水に対する溶解性が劣りケン化度が98%、分子量500を超える製品は試験から除外した。
【0077】
〔比較例1〕
PETフィルム基材に剥離剤をグラビアコート法により塗工し、膜厚1μmの剥離層を得た、次に印刷インキをグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で該剥離層上に印刷した。次に接着層をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で印刷インキ上に印刷し、下記に示すリサイクル用転写材10を得た。
転写材10:PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/接着層(D)。
上記の方法で得た転写材10を230℃の条件下で成型基材(ポリカーボネート)に転写し、成型物を得た。室温に冷却後に転写物よりPETフィルムを手で剥離させる事で転写物10を得た。
【0078】
〔比較例2〕
PETフィルム基材に剥離剤をグラビアコート法により塗工し、膜厚1μmの剥離層を得た、次に印刷インキをグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で該剥離層上に印刷した。次にポリウレタン樹脂層(c2)をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で印刷インキ 上に印刷した。次に接着層をグラビア印刷方式にて、版深35μmの網グラビア版で、印刷速度60(m/min)で印刷インキ上に印刷し、下記に示すリサイクル用転写材11を得た。
転写材11:PETフィルム/剥離層(A)/印刷インキ層(B)/ポリウレタン樹脂層(c2)/接着層(D)。
上記の方法で得た転写材11を230℃の条件下で成型基材(ポリカーボネート)に転写し、成型物を得た。室温に冷却後に転写物よりPETフィルムを手で剥離させる事で転写物11を得た。
【0079】
実施例1〜9、比較例1,2で得られたリサイクル用転写材、転写物について成型時追随性およびインキの離脱性(蒸留水、苛性ソーダ水溶液、塩酸)について評価を行った。評価方法と評価基準を以下に示す。
【0080】
1.成型時追随性
作成した転写材を用いて、成型同時転写法にて成型基材(ポリカーボネート)成型品の表面及び側面を同時に転写し、側面(R加工部)の亀裂の発生を評価した。
判定基準:○ 側面(R加工部)に亀裂が発生しない。
△ 側面(R加工部)の一部に、小さな亀裂が発生する。
× 側面(R加工部)の全面に、亀裂が発生する。
実用レベルは△以上である。
【0081】
2.インキ層の離脱性(蒸留水)
作成した転写材を用いて、成型同時転写法にて成型基材(ポリカーボネート)成型品を水(蒸留水)に24時間、浸漬後、水を攪拌し成型基材(ポリカーボネート)から印刷インキ層(B)の離脱性について評価を行った。なお蒸留水のpHは7であった。
判定基準:◎ 剥離面積が99%以上
○ 剥離面積が97%以上99%未満
○△ 剥離面積が93%以上97%未満
△ 剥離面積が90%以上93%未満
× 剥離面積が90%未満
実用レベルは△以上である。
【0082】
3.インキ層の離脱性(苛性ソーダ水溶液)
作成した転写材を用いて、成型同時転写法にて成型基材(ポリカーボネート)成型品を苛性ソーダ水溶液に24時間、浸漬後、苛性ソーダ水溶液を攪拌し成型基材(ポリカーボネート)から印刷インキ層(B)の離脱性について評価を行った。判断基準は蒸留水を用いた離脱性の評価と同様である。なお苛性ソーダ水溶液のpHは12.5であった。
【0083】
4.インキ層の離脱性(塩酸溶液)
作成した転写材を用いて、成型同時転写法にて成型基材(ポリカーボネート)成型品を塩酸溶液に24時間、浸漬後、塩酸溶液を攪拌し成型基材(ポリカーボネート)から印刷インキ層(B)の離脱性について評価を行った。判断基準は蒸留水を用いた離脱性の評価と同様である。なお塩酸溶液のpHは2.5であった。
【0084】
評価結果を表1に示す。
実施例1〜9の結果より、本発明のリサイクル用転写材は、成型時追随性に優れ、さらに印刷インキ層(B)の成型基材からの離脱性(蒸留水、苛性ソーダ水溶液、塩酸)に優れることが分かった。
また、比較例1,2の結果より、溶解層(C)が存在しない場合、また溶解層(C)がポリビニルアルコール樹脂層(c1)を有しない場合は、インキの離脱性が劣ることが示された。
なお、離脱性は、中性〜アルカリ性水溶液を用いたほうが良好であった。
【0085】
【表1】