【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、本発明のポリアミド黒原着糸の物性の測定方法は以下の通りである。
【0047】
A.カーボンブラックの平均粒径(μm)
光学顕微鏡を用いて、ナイロン6の場合は245℃、ナイロン66の場合は275℃に加熱したプレパラートに、ポリアミド黒原着糸の試料0.1gを載せ、スライドガラスで挟みフィルム状に広げ倍率500倍で撮影し、1試料から無作為に抽出した20個のカーボンブラックのストラクチャーの最も長い長径を測定し、20個の平均値を算出した。
【0048】
B.カーボンブラックの含有量(質量%)
TG−DTA(ナノテクノロジー社製 熱重量測定装置SII TG/DTA 6200)、ポリアミド黒原着糸の試料1.4mgを用いて、温度範囲:室温〜900℃、昇温速度:100℃/min、大気流量 20ml/分の条件でポリアミド黒原着糸の重量変化を計測し、650〜900℃の領域で減量した比率から算出した値である。測定は4回行い、平均値をカーボンブラックの含有量とした。
【0049】
C.硫酸相対粘度(ηr)
ポリアミドチップ(試料)0.25gを、濃度98質量%の硫酸100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98質量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
【0050】
D.製糸性
ポリアミド黒原着糸を製糸するときの1t当たりの糸切れについて、次の基準をもって示した。
a:糸切れ2回未満。
b:糸切れ2以上4回未満。
c:糸切れ4以上6回未満。
d:糸切れ6以上8回未満。
e:糸切れ8回以上。
【0051】
E.総繊度
ポリアミド黒原着糸は0.001cN/dtex、ポリアミド黒原着糸を仮撚加工してなる仮撚糸は0.098cN/dtexの張力を与えながら枠周1.125mの検尺機にて200回巻カセを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃×60分)、天秤にてカセ重量を量り公定水分率を乗じた値から繊度を算出した。測定は4回行い、平均値を総繊度とした。
【0052】
F.強力、伸度、強度
ポリアミド黒原着糸、ポリアミド黒原着糸を仮撚加工してなる仮撚糸試料を、オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。強力は、引張強さ−伸び曲線における最大強力を示した点、伸度は最大強力の伸びから求めた。また、強度は、最大強力を総繊度で割り返した値を強度とした。測定は10回行い、平均値を強力および伸度とした。なお、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minである。
【0053】
G.捲縮特性
ポリアミド黒原着糸を仮撚加工してなる仮撚糸に0.098cN/dtexの張力を与えながら周長1.125m、10回巻きのかせを5本とる。20℃、60%RHの環境下で24時間放置する。1.76×10
−3cN/dtexの処理荷重(水中での荷重)を掛けた状態で98℃±1℃の熱水中で20分処理する。熱処理したかせは、20℃、60%RHの環境下で24時間放置して乾燥させる。予め、シリンダー中に水をいれ、20℃、60%RHの環境下で24時間放置させておく。かせサンプルに1.76×10
−3cN/dtexの初荷重(水中での荷重)を掛けた状態でかせをすべて水中に入れる。その後、0.088cN/dtexの荷重(水中での荷重)をさらに掛けて0.08976cN/dtexの定荷重(水中での荷重)とし、2分後のかせの長さa(mm)を測定する。速やかに定荷重を取り除き、初荷重のみの2分後のかせの長さb(mm)を測定する。捲縮特性は以下の式で算出し、5本の平均値をもって評価する。
捲縮特性(%)=(a−b)/a×100
H.L値
実施例または比較例で得られたレッグニットを、ガーター部下部10cm部について、フリーの筒状の状態(2枚重ね)で、測色計(スガ試験機株式会社性のSM−3型)により、測定径30mmφの条件で5回測定し、その平均値で評価した。
【0054】
I.色目
実施例または比較例で得られたレッグニットを、ガーター部下部10cm部について、検査者(30人)の視覚によって、深い黒発色性について、5段階判定した。
a:比較例7より深い黒色で、色目が非常に良い。
b:比較例7より黒色で、色目が良い。
c:比較例7と同等の色目。
d:比較例7よりやや白っぽく、色目があまり良くない。
e:比較例7より白っぽく、色目が悪い。
【0055】
J.着用時の履きムラ
実施例または比較例で得られたレッグニットを日本人平均体型の女性5名に履かせ、10回屈伸運動後、膝、足首部分のムラを検査者(5人)の視覚によって、履きムラについて、3段階判定した。
a:履きムラが無い。
b:履きムラがほとんど無い。
c:履きムラが有る。
【0056】
K . 透明度
実施例または比較例でレッグニットを足形に表を外側にして履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部つま先側境界線を合わせた上で、その部分の着用状態を固定するために刺繍枠(内枠外径が15cm、枠の厚み1cm)で固定した。すなわち、着用状態を固定するために刺繍枠の上下位置が踵からの位置として60および45cm となるように刺繍枠の内枠を入れ、外枠を被せることで固定した。これを刺繍枠に固定した状態で足形からはずし、製品の表を測定装置側にして刺繍枠の中心を測定位置に合わせ、上から(製品の裏側から)カラースタンダード白板(L値88.29)を置いた時の編地のL値(Lw)、およびカラースタンダード黒板(L値7.74)を置いたときの編地のL値(Lb)を、色差計SM−T(スガ試験機(株)製)により測定する。そして、それらL値から、次の算式により、透明度を求める。この値が高い程、透明性は優れている。透明度=(Lw−Lb)/(W−B)(ここで、W はカラースタンダード白板のL値、Bはカラースタンダード黒板のL値である。)
L.破裂強さ(N)
実施例または比較例で得られたレッグニットを足形に履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部を合わせた上で、踵から大腿部方向に52.5cmの位置を中心として、足形の大腿部裏側に測定枠の大きさに合わせて円形の印を付けておく。足形から外して測定枠に製品を固定する際には先につけた円形の印に合わせて固定することで、着用状態と同じ状態で破裂強さを測定するものである。破裂強さは、JIS L1018−1999 8.17.2 B法(定速伸長形法)に従い測定した。着用中の破れに対して、実用上問題ないレベルとして30N以上を合格とした。
【0057】
なお、透明度、破裂強さの測定で使用する足形は人間の足に似せて作成しており、つま先から踵までの長さが23.5cm、つま先から足の裏方向に13.5cm離れた土踏まず部分の周長が22.5cm、踵から大腿部方向に8cmの足首部の周長が22cm、踵から大腿部方向に25cmのふくらはぎ部の周長が34.5cm、踵から大腿部方向に43cmの膝裏部の周長が37cm、踵から大腿部方向に50cmの大腿部の周長が39.5cm、踵から大腿部方向に60cmの大腿部の周長が48cmとなっている。
【0058】
(ポリアミド黒原着糸の製造)
〔実施例1〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が2.6、酸化チタン含有量0.02質量%のナイロン6チップを水分率0.03質量%以下となるよう常法にて乾燥した。
【0059】
得られたナイロン6チップにファーネス法カーボンブラック含有量が15質量%となるように2軸混練機で混練し、30μmカットのフィルターを通過後、吐出を行うようにして、マスターチップを製造し、水分率300ppm以下となるよう常法にて乾燥した。得られたカーボンブラック含有のナイロン6マスターチップとカーボンブラックを含有しないナイロン6チップを、1:4の割合でブレンド(黒原着糸内のカーボンブラック含有量が3質量%)し、265℃の溶融温度で溶融し、10μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施し、紡糸温度260℃にて紡糸口金より吐出させた。紡糸口金は、ホール数が7、丸形、1糸条/口金のものを使用した。紡糸口金より吐出後、18℃の冷風で冷却、給油した後に、交絡を施した後、第1ゴデッドロール、155℃に加熱した第2ゴデッドロールを介して2.2倍に延伸して巻取速度4000m/分で巻き取りを行い、13dtex、7フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例2〕
カーボンブラック含有のナイロン6マスターチップとナイロン6チップを、1:14の割合でブレンド(黒原着糸内のカーボンブラック含有量が1質量%)した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
〔実施例3〕
カーボンブラック含有のナイロン6マスターチップとナイロン6チップを、33:67の割合でブレンド(黒原着糸内のカーボンブラック含有量が5質量%)した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
〔実施例4〕
15μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例5〕
20μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例6〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が2.8、酸化チタン含有量0.02質量%のナイロン66チップを水分率0.11質量%中心となるよう常法にて乾燥した。
【0065】
得られたナイロン66チップにファーネス法カーボンブラック含有量が15質量%となるように混練し、30μmカットのフィルターを設置しマスターチップを製造し、水分率0.11質量%中心となるよう常法にて乾燥した。得られたカーボンブラック含有のナイロン66マスターチップとナイロン66チップを、1:4の割合でブレンド(黒原着糸内のカーボンブラック含有量が3質量%)し、290℃の溶融温度で溶融し、10μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施し、紡糸温度290℃にて紡糸口金より吐出させた以外は実施例1と同様の方法でナイロン66黒原着糸を製造し、13dtex、7フィラメントのナイロン66黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
〔実施例7〕
紡糸口金のホール数が10、丸形、1糸条/口金のものを使用した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造し、33dtex、10フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
(カバリング弾性糸の製造)
実施例1〜7で得られた黒原着糸を巻糸とし、芯糸として"ライクラ"22dtex、黒原着タイプ(オペロンテックス社製)を用いてカバリング数2000T/m、ドラフト3.0倍にてS撚、Z撚のシングルカバリング弾性糸を用意した。
【0068】
(ゾッキパンティーストッキングの製造)
永田精機(株)製MODEL KT−S4(針数400本)に上記シングルカバリング弾性糸を仕掛けてゾッキパンティーストッキング(サイズM〜L)を編成した。編成したゾッキパンティーストッキングを真空80℃で10分間プリセットを施し、98℃で30分間精練し、柔軟処理後にアルミ板の足形で110℃×30秒熱セットを施しゾッキパンティーストッキングを得た。
【0069】
得られたゾッキパンティーストッキングのL値、色目、着用時の履きムラ、透明度、破裂強さについてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
〔比較例1〕
カーボンブラック含有のナイロン6マスターチップとナイロン6チップを、2.7:93.3の割合でブレンド(黒原着糸内のカーボンブラック含有量が0.4質量%)となる以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0072】
〔比較例2〕
カーボンブラック含有のナイロン6マスターチップとナイロン6チップを、47:53の割合でブレンド(黒原着糸内のカーボンブラック含有量が7質量%)した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0073】
〔比較例3〕
紡糸口金のホール数が3、丸形のものを使用した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造し、6dtex、3フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0074】
〔比較例4〕
紡糸口金のホール数が34、丸形のものを使用した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造し、44dtex、34フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0075】
〔比較例5〕
1μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0076】
〔比較例6〕
40μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施した以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0077】
〔比較例7〕
紡糸口金のホール数が10、丸形のものを使用し、延伸倍率3.2倍にしたた以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造し、25dtex、10フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0078】
比較例1〜7で得られた黒原着糸を用いて、カバリング数2800T/m(比較例3)、1000T/m(比較例4)、1300T/m(比較例7)とした以外は、カバリング弾性糸、パンティーストッキングを実施例1と同様の方法で製造した。得られたゾッキパンティーストッキングのL値、色目、着用時の履きムラ、透明度、破裂強さについてそれぞれ評価した。その結果を表2に示す。
【0079】
〔比較例8〕
ポリアミドとして、硫酸相対粘度(ηr)が2.6、酸化チタン含有量0.02質量%のナイロン6チップのみを用いた(カーボンブラック含有量が0質量%)以外は、実施例1と同様の方法でナイロン6糸を製造した。得られたナイロン6糸の、製糸性、繊度、強力、伸度について評価した。その結果を表2に示す。
【0080】
得られたナイロン6糸を用いて、カバリング弾性糸を実施例1と同様の方法で製造した。また、実施例1と同様にゾッキパンティーストッキングを編成した。編成したゾッキパンティーストッキングを真空80℃で10分間プリセットを施し、98℃で30分間精練し、Mitsui Nylon Black GL(三井東圧化学社製)4質量%、98℃で60分間の条件で染色し、固着、柔軟処理後にアルミ板の足形で110℃×30秒熱セットを施しゾッキパンティーストッキングを得た。得られたゾッキパンティーストッキングのL値、色目、着用時の履きムラ、透明度、破裂強さについて評価した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
〔実施例8〕
紡糸口金は、ホール数が10、丸形、1糸条/口金のものを使用し、加熱しない第2ゴデッドロールを介して1.3倍に延伸して巻取速度4000m/分で巻き取りを行い、28dtex、10フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た以外は実施例1と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造した。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径について評価した。その結果を表3に示す。
【0083】
〔実施例9〕
紡糸口金は、ホール数が26、丸形、1糸条/口金のものを使用し、15μmカットの金属フィルターを設置した紡糸パックで濾過を施した以外は実施例8と同様の方法でナイロン6黒原着糸を製造し、42dtex、26フィラメントのナイロン6黒原着糸を得た。得られた黒原着糸の、製糸性、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径について評価した。その結果を表3に示す。
【0084】
(仮撚糸の製造)
上記ナイロン6黒原着糸を、石川製作所社製仮撚機IVF805を用いて、加工速度500m/min 、延伸倍率1.27倍、ヒーター温度180℃ 、D/Y比1.7(解撚張力/加撚張力=1.04)に設定して仮撚加工を行い、それぞれ、22dtex10フィラメント(実施例8)、33dtex26フィラメント(実施例9)の仮撚糸を得た。得られた仮撚糸の繊度、強力、伸度、捲縮特性について評価した。その結果を表1に示す。
【0085】
(カバリング弾性糸の製造)
実施例8、9で得られたナイロン6黒原着糸を巻糸とし、芯糸として"ライクラ"22dtex、黒原着タイプ(オペロンテックス社製)を用いてカバリング数1500T/M(実施例7)、1200T/M(実施例8)T/m、ドラフト3.0倍にてS撚、Z撚のシングルカバリング糸を用意した。
【0086】
(ゾッキタイツの製造)
永田精機(株)製MODEL KT−S4(針数360本)に上記シングルカバリング糸を仕掛けてゾッキタイツを編成した(サイズM〜L)。編成したゾッキタイツを真空80℃で10分間プリセットを施し、98℃で30分間精練し、柔軟処理後にアルミ板の足形で110℃×30秒熱セットを施しゾッキタイツを得た。
得られたゾッキタイツのL値、色目、着用時の履きムラ、透明度、破裂強さについてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
表1(実施例1〜7)、表3(実施例8、9)の結果から、本発明のポリアミド黒原着糸および仮撚糸は、カーボンブラック含有量、カーボンブラック平均粒径、繊度、強力を最適化することにより、着用時の履きムラが無く、深い黒発色(L値、色目)、透明性の良好なレッグニット製品が得られることがわかる。また、着用中の耐久性も保持している。
【0089】
比較例1は、カーボンブラック含有量が少ないことにより、光が透過しやすく白っぽくなり、着用時の履きムラ、深い黒発色(L値、色目)に劣るものであった。
【0090】
比較例2は、カーボンブラック含有量が多いことにより、紡糸パック内の濾過圧の上昇が大きく、パックライフが短くなるばかりでなく、糸切れも頻発し製糸性に劣る結果であった。また、得られたナイロン黒原着糸の強力が、30cNと低い値となり、破裂強さが26Nと低い値となり、着用中の耐久性に劣るものであった。
【0091】
比較例3は、繊度が細く、強力が、27cNと低い値となり、破裂強さが20Nと低い値となり、着用中の耐久性に劣るものであった。
【0092】
比較例4は、繊度が太く、透明性に劣るものであった。
【0093】
比較例5は、平均粒径の小さいカーボンブラックのため、かかとでの擦過により伝線が発生した。
【0094】
比較例6は、平均粒径の大きいカーボンブラックが存在することにより、紡糸パック内の濾過圧の上昇が大きく、パックライフが短くなるばかりでなく、糸切れも頻発し製糸性に劣る結果であった。また、得られたナイロン黒原着糸の強力が、26cNと低い値となり、破裂強さが28Nと少し低い値となり、着用中の耐久性に劣るものであった。
【0095】
比較例7は、強力が155cNと高く、伸度が10%と低いため、糸切れが頻発し製糸性に劣る結果であった。
【0096】
比較例8は、従来のゾッキパンティーストッキングであり、黒染色を施している。透明性、色目、着用時の履きムラに劣るものであった。また、実施例1〜7、比較例1〜7と比較して全体的にやや白っぽく、深い黒色が得られておらず、色目に劣るものであった。染料にて黒く染めたゾッキパンティーストッキングは、染料の細かい顔料が微分散されているため、光が吸収され、透明性が悪化し、さらには、染色は、赤、青、黄の3染料を混合して黒に染めているため、見た目が赤掛かった黒となり、白っぽくなったと深色性に優れた黒色が得られない。
【0097】
本発明のポリアミド黒原着糸および仮撚糸を用いたレッグニット製品は、黒染色を施していないため、染色工程の加工賃を省くことができコストダウンを可能とするだけでなく、環境負荷の少ないものとなった。