(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、蓄電装置を具体化した第1の実施形態を
図1〜
図3にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース11に電極組立体12が収容されている。また、ケース11には、電極組立体12とともに電解液も収容されている。ケース11は、有底筒状のケース本体13と、当該ケース本体13に電極組立体12を挿入する開口部を閉塞する平板状の蓋体14とからなる。ケース本体13と蓋体14は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)である。また、この実施形態の二次電池10は、ケース本体13が有底四角筒状であり、蓋体14が矩形平板状であることから、その外観が角型をなす角型電池である。また、この実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池である。
【0017】
電極組立体12は、正極電極、負極電極、及び正極電極と負極電極を絶縁するセパレータを有する。正極電極は、正極金属箔(アルミニウム箔)の両面に正極活物質を塗布して構成される。負極電極は、負極金属箔(銅箔)の両面に負極活物質を塗布して構成される。そして、電極組立体12は、複数の正極電極と複数の負極電極を交互に積層するとともに、両電極の間にセパレータを介在した積層構造とされている。また、電極組立体12には、正極端子15と負極端子16が電気的に接続されている。これらの正極端子15と負極端子16の各一部分は、蓋体14からケース11外に露出している。また、正極端子15及び負極端子16には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁リング17aがそれぞれ取り付けられている。
【0018】
また、ケース11の蓋体14には、ケース11(ケース本体13)内に電解液を注入するための注液孔18が穿設されており、その注液孔18は封止部材19によって閉塞されている。封止部材19は、蓋体14の表面14a(ケース外側の面)に固定されており、ケース11外に露出している。また、ケース11には、ケース11内の圧力が上昇し過ぎないように、ケース11内の圧力が所定の圧力である開放圧に達した場合に開裂し、ケース内外を連通させる圧力開放弁20が設けられている。この実施形態において圧力開放弁20は、ケース11の蓋体14に位置している。また、蓋体14において封止部材19(注液孔18)と圧力開放弁20は、並んで位置している。圧力開放弁20の開放圧は、ケース11自体やケース本体13と蓋体14の接合部に亀裂や破断などが生じ得る前に開裂し得る圧力に設定されている。そして、圧力開放弁20は、蓋体14の板厚よりも薄い薄板状の弁体21を有する。弁体21は、蓋体14の上面に凹設された凹部22の底に位置しており、蓋体14と一体的に成形されている。
【0019】
図2に示すように、圧力開放弁20は、円形状の周縁を有する。なお、弁体21は、圧力開放弁20の周縁に繋がっており、圧力開放弁20と同様に円形状である。
弁体21の表面21aは、交差溝23を有する。交差溝23は、弁体21の周縁間を直線状に延びる2本の直線溝24,25と、からなる。そして、交差溝23は、2本の直線溝24,25が交差する位置に交差部Pを有する。この実施形態において交差溝23の交差部Pは、弁体21の中央に位置している。また、2本の直線溝24,25は、交差部Pで交差し、弁体21の周縁の近傍位置に各直線溝24,25の両側の端部24a,25aが位置している。2本の直線溝24,25は、各端部24a,25aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなっており、交差部Pにおいて開口幅26が最も狭い。ここで、「開口幅」とは弁体21の表面21aにおいて、直線溝24,25が延びる方向に直交する位置に配置される、直線溝24,25と弁体21の表面21aとの両側の境界間の幅である。
【0020】
図3(a),(b)に示すように、直線溝24(図中の「D1」と「D2」)は、溝深さ27が同一深さとなっており、直線溝24の両側の開口端28と直線溝24の最深部29との角度30が、直線溝24の端部24aから交差部Pまでの範囲で減少している。角度30の減少により、直線溝24は、
図1に示すように、端部24aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。溝深さ27は、溝の最深部29と弁体の面とを弁体の厚み方向に沿う直線で結んだときの長さとしている。また、溝における両側の開口端28は、溝の最深部29から弁体の面に延びる溝面と弁体の面とが交差する位置にある端としている。
【0021】
直線溝24は、端部24aから交差部Pまでの角度30を一定に変化させている。一定に変化させるとは、角度が連続的に、かつ変化量が一定に変化することだけではなく、角度が段階的に変化し、かつ段階毎の変化量が一定であることも意味する。そして、この実施形態において直線溝24の角度30は、連続的に変化し、その変化量も一定である。このように角度30を減少させることにより、弁体21の溝は角度変化部を有する。
【0022】
なお、直線溝25は、直線溝24と同一形状であり、直線溝24と同様に角度変化部を有する。つまり、
図3(a),(b)に示すように、直線溝25(図中の「D1」,「D2」)は、直線溝25の両側の開口端28と直線溝25の最深部29との角度30が、直線溝25の端部25aから交差部Pまでの範囲で減少している。また、圧力開放弁20の弁体21は、直線溝24,25の底と弁体21の裏面21bとの間に、薄膜部31を有する。薄膜部31は、弁体21の厚みよりも薄い。
【0023】
以下、この実施形態の作用を説明する。
ケース11内の圧力は、弁体21の裏面21bが受圧面となることによって弁体21を外方に膨張させるように加わる。また、弁体21の交差溝23には、ケース11の内側から加わる圧力によって応力が発生している。
【0024】
この実施形態では、交差部Pにおける直線溝24,25の角度30を最も小さくしている。これにより、交差部Pにおける直線溝24,25の角度30は、交差部P以外の他の溝部位の角度よりも鋭い角度となる。このため、ケース11の内側から加わる圧力は交差部Pに集中し易く、交差部Pを起点として弁体21の開裂が始まり易い。つまり、交差部Pは、弁体21が開裂を始める時の起点である開裂起点として想定される。
【0025】
そして、ケース11内の圧力が開放圧に達すると、交差部Pを起点として交差溝23が開裂する。このように弁体21の表面21aに有する交差溝23が開裂すると、弁体21は、複数の領域に分断されつつ、外側にめくれ上がる。これにより、圧力開放弁20には、大きな開口が生じる。そして、ケース11内の圧力は、圧力開放弁20に生じた開口を通じてケース11外に開放される。
【0026】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)交差溝23の交差部Pを開裂が始まる位置として定めることができ、交差部Pを起点として開裂が始まり易い。その結果、圧力開放弁20の開口形状や開口面積のばらつきを低減させることができる。したがって、ケース11内の圧力を十分に開放できる。
【0027】
(2)交差溝23の交差部Pを開裂が始まる位置として定めることで、圧力開放弁20をバランス良く開裂させることができる。したがって、圧力開放弁20の開口形状や開口面積のばらつきを低減させることができる。
【0028】
(3)また、交差溝23を有することで、開裂の初期には、交差溝23によって開裂を放射状に広げることができる。したがって、ケース11内の圧力を開放する場合の迅速性を向上させることができる。
【0029】
(4)角度30を一定に変化させることで、交差溝23は、規則的な溝となる。このため、開裂の負荷を安定させることができ、開裂を迅速に行わせることができる。
(5)交差部Pを弁体21の中央に位置させているので、弁体21をバランス良く、開裂させることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、蓄電装置を具体化した第2の実施形態を
図4にしたがって説明する。
なお、以下に説明する実施形態において既に説明した実施形態と同一構成については、同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0031】
図4に示すように、この実施形態の圧力開放弁32は、平行な2つの直線部33,34を弧部35,36で繋いだトラック形状の周縁を有する。なお、圧力開放弁32の弁体37は、圧力開放弁32の周縁に繋がっており、圧力開放弁32と同様にトラック形状である。
【0032】
弧部35は、一方の端部が直線部33の一方の端部に繋がっているとともに、他方の端部が直線部34の一方の端部に繋がっている。弧部36は、一方の端部が直線部33の他方の端部に繋がっているとともに、他方の端部が直線部34の他方の端部に繋がっている。つまり、この実施形態において直線部33,34の一方の端部は、その全体を弧状とした弧部35で繋がっているとともに、直線部33,34の他方の端部は、その全体を弧状とした弧部36で繋がっている。圧力開放弁32において、直線部33,34の端部と弧部35,36の端部とが繋がる部位が、直線部33,34と弧部35,36の境界P1,P2,P3,P4となる。
【0033】
弁体37の表面37aは、溝を有する。溝は、交差溝38と、弧部35,36に沿う複数の弧状溝39,40と、からなる。この実施形態において、交差溝38と、弧状溝39,40とは、何れもV字形溝である。
【0034】
交差溝38は、2本の直線溝41,42と、からなる。直線溝41,42は、圧力開放弁32の周縁である弧部35,36に交差する仮想直線Y1,Y2上にそれぞれ位置する。また、仮想直線Y1,Y2は、境界P1,P3を結ぶ図中に二点鎖線で示す仮想線に交差するとともに、境界P2,P4を結ぶ図中に二点鎖線で示す仮想線に交差する。そして、交差溝38は、2本の直線溝41,42が交差する位置に交差部Pを有する。交差部Pは、仮想直線Y1,Y2の交差点を含む。この実施形態において交差溝38の交差部Pは、弁体37の中央に位置している。
【0035】
また、弁体37の表面37aは、弧部35に沿う2本の弧状溝39を有するとともに、弧部36に沿う2本の弧状溝40を有する。2本の弧状溝39のうち、一方の弧状溝39は、直線溝41において境界P1側に位置する一方の端部に繋がっており、弧部35に沿って弧状に延在している。また、2本の弧状溝40のうち、一方の弧状溝40は、直線溝42において境界P2側に位置する一方の端部に繋がっており、弧部36に沿って弧状に延在している。なお、2本の弧状溝39のうち、他方の弧状溝39は、直線溝42において境界P3側に位置する他方の端部に繋がっており、弧部35に沿って弧状に延在している。また、2本の弧状溝40のうち、他方の弧状溝40は、直線溝41において境界P4側に位置する他方の端部に繋がっており、弧部36に沿って弧状に延在している。各弧状溝39,40は、直線溝41,42に繋がる端部とは反対側の端部の位置が、直線部33,34の延びる方向に直交する方向で弁体37を二等分する図中に一点鎖線で示す二等分線L1から所定の距離を隔てた位置となる長さになっている。つまり、各弧状溝39,40は、弧部35,36の一部に沿って設けられている。
【0036】
この実施形態において、
図3(b)に示す直線溝41(図中の「D2」)と、直線溝41に繋がる
図3(a)に示す弧状溝39,40(図中の「D1」)は、溝深さ27が同一深さである。一方で、
図3(b)に示す直線溝41の両側の開口端28と直線溝41の最深部29との角度30は、
図3(a)に示す弧状溝39,40の両側の開口端28と弧状溝39,40の最深部29との角度30に比較して小さい。これにより、直線溝41と弧状溝39,40を含む開裂溝43では、直線溝41と繋がる弧状溝39,40の端部とは反対側の端部39a,40aから交差部Pまでの範囲で角度30が減少している。角度30の減少により、開裂溝43は、
図4に示すように、端部39aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなるとともに、端部40aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。この実施形態において角度30は、直線溝41の角度30と弧状溝39,40の角度30を異ならせることにより、段階的に変化している。また、直線溝41の角度30と弧状溝39,40の角度30は、変化量が一定である。このように角度30を減少させることにより、弁体37の溝は角度変化部を有する。
【0037】
なお、直線溝42は直線溝41と同一形状であり、直線溝42に繋がる弧状溝39,40は直線溝41に繋がる弧状溝39,40と同一形状である。このため、直線溝42と弧状溝39,40を含む開裂溝44は、開裂溝43と同一形状である。そして、開裂溝44は、開裂溝43と同様に角度変化部を有する。つまり、開裂溝44は、直線溝42と繋がる弧状溝39,40の端部とは反対側の端部39a,40aから交差部Pまでの範囲で角度30が減少している。これにより、開裂溝44は、
図4に示すように、端部39aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなるとともに、端部40aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。また、圧力開放弁32の弁体37は、直線溝41,42の底と弁体37の裏面37bとの間に薄膜部31を有するとともに、弧状溝39,40の底と弁体37の裏面37bとの間に薄膜部31を有する。
【0038】
また、弁体37の表面37aには、交差溝38に沿う仮想直線Y1,Y2を想定したとき、仮想直線Y1,Y2と圧力開放弁32の周縁によって囲まれる複数の領域S1,S2,S3,S4が想定される。領域S1は、交差溝38の交差部Pと仮想直線Y1が弧部35に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y1の部分と、交差部Pと仮想直線Y2が弧部36に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y2の部分と、直線部33と、によって区画される領域である。また、領域S2は、交差部Pと仮想直線Y2が弧部35に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y2の部分と、交差部Pと仮想直線Y1が弧部36に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y1の部分と、直線部34と、によって区画される領域である。領域S1と領域S2は、仮想直線Y1と仮想直線Y2の交差点を対称の中心として点対称である。
【0039】
領域S3は、交差部Pと仮想直線Y1が弧部35に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y1の部分と、交差部Pと仮想直線Y2が弧部35に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y2の部分と、弧部35と、によって区画される領域である。また、領域S4は、交差部Pと仮想直線Y2が弧部36に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y2の部分と、交差部Pと仮想直線Y1が弧部36に交差する交差部との間に位置する仮想直線Y1の部分と、弧部36と、によって区画される領域である。領域S3と領域S4は、仮想直線Y1と仮想直線Y2の交差点を対称の中心として点対称である。
【0040】
この実施形態において領域S1,S2は、直線部33,34を含む領域であり、直線部33,34の全体に接する一方で、弧部35,36に僅かに接する領域となる。一方、この実施形態において、領域S3,S4は、弧部35,36を含む領域であり、弧部35,36のほぼ全体に接する領域となる。この実施形態において領域S1,S2は弧部35,36に接する部分が少ない第2の領域となり、領域S3,S4は弧部35,36に接する部分が多い第1の領域となる。そして、弁体37の表面37aに有する4つの領域S1〜S4の面積は、弧部35,36に接する部分が多い領域S3,S4の方が、弧部35,36に接する部分が少ない領域S1,S2に比較して大きい。
【0041】
以下、この実施形態の作用を説明する。
この実施形態では、交差溝23を構成する直線溝41,42の角度30を、弧状溝39,40の角度30よりも小さくしている。これにより、直線溝41,42の角度30は、弧状溝39,40の角度30よりも鋭い角度となる。そして、直線溝41,42は、交差部Pを含む。このため、ケース11の内側から加わる圧力は交差部Pに集中し易く、交差部Pを起点として弁体21の開裂が始まり易い。つまり、交差部Pは、弁体37が開裂を始める時の起点である開裂起点として想定される。そして、ケース11内の圧力が開放圧に達すると、交差部Pを起点として弁体37が開裂する。
【0042】
また、この実施形態では、交差部Pを起点として開裂が始まるとともに直線溝41,42の開裂が弧状溝39,40に繋がる端部に達すると、弧状溝39,40の開裂も始まる。この開裂により、弁体37は、領域S1〜S4を区画する各溝に沿って4つの領域S1〜S4に分断される。
【0043】
このとき、この実施形態では、弧部35,36に接する部分が多い領域S3,S4の面積を、直線部33,34に接する部分が多い領域S1,S2の面積に比較して大きくしている。つまり、領域S3,S4の方が、領域S1,S2に比較して受圧面積が大きい。このため、弁体37の裏面37bに対してケース11の内側から加わる圧力の受圧量は、領域S3,S4の方が領域S1,S2に比較して大きくなる。
【0044】
したがって、この実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(5)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。なお、各効果(1)〜(5)は、「圧力開放弁20」を「圧力開放弁32」、「弁体21」を「弁体37」、「交差溝23」を「交差溝38」、とそれぞれ読み替えるものとする。
【0045】
(6)弧状溝39,40は、直線溝41,42に比較して開裂し難い。このため、弧部35,36に接する部分が多い領域S3,S4の面積を、弧部35,36に接する部分が少ない領域S1,S2の面積に比較して大きくすることで、領域S3,S4の受圧量が大きくなる。したがって、圧力開放弁32の開口を大きくするために弧部35,36に沿う弧状溝39,40を有する圧力開放弁32であっても、弧状溝39,40の開裂が促進されることで領域S3,S4が外側に開き易くなる。その結果、圧力開放弁32の開きのバランスが良くなり、圧力開放弁32の開口を大きくすることができる。つまり、ケース11内の圧力を迅速に開放させることができる。
【0046】
因みに、弧部35,36に接する領域S3,S4の受圧量が小さい場合には、弧状溝39,40の開裂が不十分になる虞がある。つまり、圧力開放弁32の開きのバランスが悪いと、弧状溝39,40が十分に開裂せず、その結果、圧力開放弁32の開口も小さくなる。したがって、ケース11内の圧力を開放する場合の迅速性が損なわれる。
【0047】
(7)交差溝38を2本の直線溝41,42としている。このため、弁体37の開裂の初期において直線溝41,42によって開裂が促進される。したがって、ケース11内の圧力を開放させる場合の迅速性を向上させることができる。
【0048】
(8)圧力開放弁32をトラック形状にすることで、圧力開放弁32を四角形状にする場合に比較して圧力開放弁32の開口を大きく設定することができる。したがって、ケース11内の圧力を開放させる場合の迅速性を向上させることができる。
【0049】
(9)直線溝41,42を境界P1〜P4の付近まで延在させているので、弧状溝39,40を弧部35,36に沿わせて配置することができる。したがって、弁体37の各溝が開裂した場合には、圧力開放弁32の開口を大きくすることができる。
【0050】
(10)弧状溝39,40は弧部35,36の一部に沿うように設けている。このため、弁体37は、各溝が開裂し、外側にめくれ上がっても、溝が設けていない箇所で繋がっている。したがって、弁体37の破片が飛散することを防止できる。
【0051】
(11)直線溝41,42と弧状溝39,40を繋げているので、直線溝41,42の開裂後、速やかに弧状溝39,40の開裂に移行させることができる。圧力開放弁32は、直線溝41,42の開裂によって領域S1〜S4に分断されつつ、開裂の進行に合わせて弁体37が外側にめくれ上がることで開口が生じ、その開口から圧力がケース11外に開放される。このため、直線溝41,42から弧状溝39,40への開裂を速やかに移行させることで、圧力開放弁32の開口量を十分に確保することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、蓄電装置を具体化した第3の実施形態を
図5にしたがって説明する。
図5に示すように、この実施形態の圧力開放弁32の弁体37の表面37aは、第2の実施形態と同様に、直線溝41,42からなる交差溝38と、弧部35,36に沿う弧状溝39,40と、を有する。そして、この実施形態において、直線溝41,42と弧状溝39,40とは繋がっていない。
【0053】
また、
図3(a),(b)に示すように直線溝41,42(図中の「D2」)の角度30は、弧状溝39,40(図中の「D1」)の角度30に比して小さい。そして、
図5に示すように、直線溝41,42の開口幅26は、弧状溝39,40の開口幅26に比較して狭い。これにより、交差溝38の交差部Pは、第2の実施形態と同様に、弁体37が開裂を始める時の起点である開裂起点として想定される。したがって、この実施形態において、交差溝38(直線溝41,42)は、開裂起点を含む第1の溝となり、弧状溝39,40は、開裂起点を含まない第2の溝となる。
【0054】
また、弁体37の表面37aには、交差溝38と弧状溝39,40により、仮想直線Y1,Y2と圧力開放弁32の周縁によって囲まれる複数の領域S1,S2,S3,S4が想定される。そして、弁体37の表面37aに有する4つの領域S1〜S4の面積は、弧部35,36に接する部分が多い領域S3,S4の方が、弧部35,36に接する部分が少ない領域S1,S2に比較して大きい。
【0055】
以下、この実施形態の作用を説明する。
この実施形態では、第2の実施形態と同様に、直線溝41,42の角度30を、弧状溝39,40の角度30よりも小さくしている。このため、ケース11の内側から加わる圧力は交差部Pに集中し易く、交差部Pを起点として弁体21の開裂が始まり易い。
【0056】
そして、弁体37は、交差部Pを起点として開裂が始まるとともに直線溝41,42の開裂が弧状溝39,40に近い端部に達すると、弧状溝39,40の開裂も始まる。この開裂により、弁体37は、領域S1〜S4を区画する各溝に沿って4つの領域S1〜S4に分断される。また、弁体37の裏面37bに対してケース11の内側から加わる圧力の受圧量は、領域S3,S4の方が領域S1,S2に比較して大きくなる。
【0057】
したがって、この実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(5)、及び第2の実施形態の効果(6)〜(10)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(12)交差溝38と弧状溝39,40と、を繋げていないので、交差部Pを有する交差溝38から確実に開裂させることができる。
【0058】
(第4の実施形態)
次に、蓄電装置を具体化した第4の実施形態を
図6及び
図7にしたがって説明する。
図6に示すように、この実施形態の圧力開放弁32の弁体37の表面37aは、第2の実施形態と同様に、直線溝41,42からなる交差溝38と、弧部35,36に沿う弧状溝39,40と、を有する。そして、この実施形態において、直線溝41,42と弧状溝39,40とは繋がっている。
【0059】
図7(a),(b)に示すように、直線溝41は、溝深さ27が同一深さとなっており、直線溝41の両側の開口端28と直線溝41の最深部29との角度30が、直線溝41における弧状溝39,40に繋がる端部から交差部Pまでの範囲で減少している。角度30の減少により、直線溝41は、
図6に示すように、弧状溝39,40に繋がる端部から交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。
【0060】
図7(c)に示すように、直線溝41に繋がる弧状溝39,40は、溝深さ27が直線溝41と同一深さとなっている。そして、弧状溝39,40は、弧状溝39,40の両側の開口端28と弧状溝39,40の最深部29との角度30が、直線溝41における弧状溝39,40に繋がる端部の角度30に比較して大きい。このため、弧状溝39,40は、
図6に示すように、直線溝41の開口幅26よりも広い。
【0061】
これにより、直線溝41と弧状溝39,40を含む開裂溝43では、直線溝41と繋がる弧状溝39,40の端部とは反対側の端部39a,40aから交差部Pまでの範囲で角度30が減少している。角度30の減少により、開裂溝43は、
図6に示すように、端部39aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなるとともに、端部40aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。この実施形態において角度30は、直線溝41と弧状溝39,40との間で段階的に変化し、直線溝41において連続的に変化する。このように角度30を減少させることにより、弁体37の溝は角度変化部を有する。
【0062】
なお、直線溝42は直線溝41と同一形状であり、直線溝42に繋がる弧状溝39,40は直線溝41に繋がる弧状溝39,40と同一形状である。このため、直線溝42と弧状溝39,40を含む開裂溝44は、開裂溝43と同一形状である。そして、開裂溝44は、開裂溝43と同様に角度変化部を有する。つまり、開裂溝44は、直線溝42と繋がる弧状溝39,40の端部とは反対側の端部39a,40aから交差部Pまでの範囲で角度30が減少している。これにより、開裂溝44は、
図6に示すように、端部39aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなるとともに、端部40aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。また、圧力開放弁32の弁体37は、直線溝41,42の底と弁体37の裏面37bとの間に薄膜部31を有するとともに、弧状溝39,40の底と弁体37の裏面37bとの間に薄膜部31を有する。
【0063】
また、弁体37の表面37aには、交差溝38と弧状溝39,40により、仮想直線Y1,Y2と圧力開放弁32の周縁によって囲まれる複数の領域S1,S2,S3,S4が想定される。そして、弁体37の表面37aに有する4つの領域S1〜S4の面積は、弧部35,36に接する部分が多い領域S3,S4の方が、弧部35,36に接する部分が少ない領域S1,S2に比較して大きい。
【0064】
以下、この実施形態の作用を説明する。
この実施形態では、交差部Pにおける直線溝41,42の角度30を最も小さくしている。これにより、交差部Pにおける直線溝41,42の角度30は、交差部P以外の他の溝部位の角度よりも鋭い角度となる。このため、ケース11の内側から加わる圧力は交差部Pに集中し易く、交差部Pを起点として弁体37の開裂が始まり易い。つまり、交差部Pは、弁体37が開裂を始める時の起点である開裂起点として想定される。
【0065】
そして、弁体37は、交差部Pを起点として開裂が始まるとともに直線溝41,42の開裂が弧状溝39,40に近い端部に達すると、弧状溝39,40の開裂も始まる。この開裂により、弁体37は、領域S1〜S4を区画する各溝に沿って4つの領域S1〜S4に分断される。また、弁体37の裏面37bに対してケース11の内側から加わる圧力の受圧量は、領域S3,S4の方が領域S1,S2に比較して大きくなる。
【0066】
したがって、この実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(5)、及び第2の実施形態の効果(6)〜(11)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(13)交差溝23の交差部Pを開裂が始まる位置として定めることができ、交差部Pを起点として開裂が始まり易い。その結果、圧力開放弁32の開口形状や開口面積のばらつきを確実に低減させることができる。
【0067】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図8は、
図5に示す第3の実施形態の弁体37における直線溝41,42に、
図6に示す第4の実施形態の弁体37における直線溝41,42と同様の構成を採用した場合の圧力開放弁32の弁体37を示す。この別例において、直線溝41,42の角度30は、
図7(a),(b)に示すように、直線溝41,42における交差部Pとは反対側の端部41a,42aから交差部Pまでの範囲で減少している。角度30の減少により、直線溝41,42は、
図8に示すように、直線溝41,42の端部41a,42aから交差部Pに向かって開口幅26が狭くなる。この構成によれば、第3の実施形態、及び第4の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0068】
○ 交差溝23,38は、X字状に代えて、Y字状に変更しても良い。
○ 各溝の断面形状を変更しても良い。
○ ケース11の形状を変更しても良い。例えば、ケース11は円筒型でも良い。
【0069】
○ 圧力開放弁20,32をケース11とは別体部品とし、その圧力開放弁20,32をケース11に接合しても良い。接合は、例えば溶接(例えばレーザ溶接)などで行う。
○ 電極組立体12は、積層型に限らず、帯状の正極電極と帯状の負極電極を捲回して層状に積層した捲回型でも良い。
【0070】
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池であったが、これに限らず、他の二次電池であっても良い。要は、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであれば良い。また、蓄電装置としてキャパシタでも良い。
【0071】
○ 二次電池10は、車両電源装置として自動車に搭載しても良いし、産業用車両に搭載しても良い。また、定置用の蓄電装置に適用しても良い。
○ 弁体21,37において溝は、裏面21b,37bに設けても良い。
【0072】
○ 弁体21,37に設ける溝の形状を変更しても良い。例えば、1本の直線状の溝や例えば「C」字状の溝など、交差部を有さない溝でも良い。そして、これらの溝には、各実施形態と同様に、溝の両側の開口端と溝の最深部との角度が、溝の端部から開裂起点までの間で減少する角度変化部を設ける。
【0073】
○ 第1の実施形態において、交差溝23の溝深さ27を変化させても良い。この場合の溝深さ27は、開裂起点となる交差部Pに向かって深くなるように変化させる。また、第2〜第4の実施形態及び
図8の別例において、交差溝38や弧状溝39,40の溝深さ27を変化させても良い。この場合、交差溝38の溝深さ27は、開裂起点となる交差部Pに向かって深くなるように変化させる。また、弧状溝39,40の溝深さ27は、弧状溝39,40における直線溝41,42に遠い端部から近い端部に向かって深くする。この場合でも、実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、交差部Pを開裂が始まる位置として確実に定めることができる。
【0074】
○ 第2〜第4の実施形態及び
図8の別例において、仮想直線Y1,Y2は、溝の開口幅の中央を通る線として規定しても良いし、溝の開口端を通る線として規定しても良い。何れの場合でも、仮想直線Y1,Y2は、溝に沿って延長される線となる。
【0075】
○ 第2〜第4の実施形態及び
図8の別例において、仮想直線Y1,Y2が弧部35,36に交差する位置を、各境界P1〜P4から弧部35,36側にさらに離れる位置とし、これらの仮想直線Y1,Y2に沿って直線溝41,42を設けても良い。この場合、仮想直線Y1,Y2は、弧部35,36の周縁に交差する。なお、この場合には、弧部35,36に接する部分が多い領域の面積が、弧部35,36に接する部分が少ない領域の面積よりも大きくなるように領域S1〜S4を設ける。この場合でも、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
○ 第2〜第4の実施形態及び
図8の別例において、直線溝41,42は、弧部35,36に交差する仮想直線Y1,Y2線上に位置する場合に限らず、同一直線部33,34に位置する境界側の端部同士が近付く領域に位置していても良い。この場合の仮想直線Y1,Y2は、直線溝41,42に沿って延長され、直線部33,34と交差する。この場合でも、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
○ 第2〜第4の実施形態及び
図8の別例において、圧力開放弁32の形状は弧部を有する形状であれば、他の形状に変更しても良い。例えば、楕円形状でも良いし、円形状でも良い。また、直線部33,34の一方の端部を弧部で繋ぎ、他方の端部を直線部で繋いだ形状でも良い。また、直線部33,34の一方の端部に繋ぐ弧部と、直線部33,34の他方の端部に繋ぐ弧部の形状を異ならせても良い。この場合でも、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
○ 第3の実施形態及び
図8の別例において、交差溝38の角度30が小さいとは、交差溝38における全体の角度30が弧状溝39,40の角度30に対して小さい場合でも良いし、角度30の平均が小さい場合でも良い。この場合でも、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
○ 第4の実施形態及び
図8の別例において、さらに弧状溝39,40が角度変化部を有していても良い。つまり、弧状溝39,40の角度30を連続的、又は段階的に変化させても良い。この場合、弧状溝39,40における直線溝41,42に近い端部から遠い端部に向かって角度を大きくする。この場合でも、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)圧力開放弁の周縁の一部は弧部を有し、圧力開放弁は開裂起点を含む溝を有し、溝は、交差溝と、交差溝の端部に繋がるとともに弧部に沿う複数の弧状溝と、を含み、交差溝に沿って延長し、かつ圧力開放弁の周縁と交差する仮想直線を想定したとき、仮想直線と圧力開放弁の周縁によって囲まれ、かつ弧部に接する部分が多い第1の領域と、仮想直線と圧力開放弁の周縁によって囲まれ、かつ弧部に接する部分が少ない第2の領域とが想定され、第1の領域の面積が、第2の領域の面積よりも大きい。
【0081】
(ロ)圧力開放弁の周縁は、平行な直線部を弧部で繋いだトラック形状である。