(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも前記第1シフト位置、前記第2シフト位置および前記第3シフト位置のそれぞれに対応する複数の回動角度位置で前記位置決め部材を保持する保持部材をさらに備え、
前記位置決め部材は、少なくとも前記第1シフト位置、前記第2シフト位置および前記第3シフト位置のそれぞれに対応する第1嵌合部、第2嵌合部および第3嵌合部を有し、
前記保持部材は、前記第1嵌合部、前記第2嵌合部または前記第3嵌合部のいずれかに選択的に嵌合することにより、それぞれ、前記第1シフト位置、前記第2シフト位置または前記第3シフト位置に対応する回動角度位置で前記位置決め部材を保持するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシフト装置。
前記回動伝達機構は、前記第1シフト位置、前記第2シフト位置および前記第3シフト位置のいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置に前記位置決め部材が位置する場合に、前記駆動側回動部の所定の回動角度範囲において、前記駆動側カム部が前記従動側カム部に係合しないように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシフト装置。
前記カムレバー部は、対応する前記カムポール部を挟み込む二股形状に形成されており、二股形状の互いに対向する部分の間隔が、二股形状の先端部において先端に向かって大きくなるように構成されている、請求項3または6に記載のシフト装置。
前記第1シフト位置、前記第2シフト位置、前記第3シフト位置および前記第4シフト位置は、それぞれ、パーキングポジション、バックポジション、ニュートラルポジションおよびドライブポジションに対応している、請求項9に記載のシフト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のパーキングロック装置(シフト装置)では、位置決め板(位置決め部材)をロック位置および非ロック位置のそれぞれに対応する2つの回動角度位置にしか回動させることができないので、パーキング状態(パーキングポジション)および非パーキング状態(非パーキングポジション)の2つのシフト位置にしか対応することができない。
【0006】
一方、一般的なオートマティックトランスミッション(AT)システムにおいては、パーキングポジション、バックポジション、ニュートラルポジションおよびドライブポジションなど、3つ以上のシフト位置が設定されており、2つのシフト位置にしか対応することができない上記特許文献1のパーキングロック装置(シフト装置)の構成では、3つ以上のシフト位置が設定された上記一般的なATシステムに対応することができない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、駆動源を用いて位置決め部材を回動させることにより、3つ以上のシフト位置に対応可能なシフト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるシフト装置は、少なくとも第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置のそれぞれに対応する複数の回動角度位置に回動可能な位置決め部材と、駆動源側に設けられた駆動側回動部と、位置決め部材側に設けられ、駆動側回動部の回動に伴って回動される従動側回動部とを含み、駆動源側から回動力を伝達して位置決め部材を回動させる回動伝達機構とを備え、駆動側回動部は、駆動側回動部が回動するのに伴って移動する複数の駆動側カム部を有し、従動側回動部は、複数の駆動側カム部にそれぞれ係合可能な複数の従動側カム部を有し、回動伝達機構は、複数の駆動側カム部のうちの一の駆動側カム部が複数の従動側カム部のうちの一の従動側カム部に係合した状態で移動することにより、従動側回動部を回動させて位置決め部材を第1シフト位置から第2シフト位置に対応する回動角度位置に回動させるとともに、複数の駆動側カム部のうちの他の駆動側カム部が複数の従動側カム部のうちの他の従動側カム部に係合した状態で移動することにより、従動側回動部を回動させて位置決め部材を第2シフト位置から第3シフト位置に対応する回動角度位置に回動させるように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面によるシフト装置では、上記のように、駆動源側から回動力を伝達して位置決め部材を回動させる回動伝達機構を、複数の駆動側カム部のうちの一の駆動側カム部が複数の従動側カム部のうちの一の従動側カム部に係合した状態で移動することにより、従動側回動部を回動させて位置決め部材を第1シフト位置から第2シフト位置に対応する回動角度位置に回動させるとともに、複数の駆動側カム部のうちの他の駆動側カム部が複数の従動側カム部のうちの他の従動側カム部に係合した状態で移動することにより、従動側回動部を回動させて位置決め部材を第2シフト位置から第3シフト位置に対応する回動角度位置に回動させるように構成することによって、回動伝達機構により、駆動源側から回動力を伝達して少なくとも第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置に対応する少なくとも3つの異なる回動角度位置に位置決め部材を回動させることができるので、駆動源を用いて位置決め部材を回動させることにより、少なくとも3つのシフト位置に対応することができる。したがって、駆動側カム部および従動側カム部をそれぞれ2つ以上設ければ、3つ以上のシフト位置に対応する3つ以上の異なる回動角度位置に位置決め部材を回動させることができるので、駆動源を用いて位置決め部材を回動させることにより、3つ以上のシフト位置に対応することができる。
【0010】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、駆動側回動部の複数の駆動側カム部は、駆動側回動部の回動軸が延びる方向において、互いに異なる段位置に配置されており、従動側回動部の複数の従動側カム部は、従動側回動部の回動軸が延びる方向において、互いに異なる段位置に配置されている。このように構成すれば、互いに異なる段位置において、複数の駆動側カム部をそれぞれ対応する従動側カム部に係合させることができるので、互いに対応関係にない駆動側カム部および従動側カム部が干渉(接触)してしまうのを容易に防止することができる。
【0011】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、複数の駆動側カム部は、複数の柱状のカムポール部であり、複数の従動側カム部は、対応するカムポール部に係合する複数のカムレバー部である。このように構成すれば、簡易な構成のカムポール部およびカムレバー部により、容易に、互いに対応するカムポール部およびカムレバー部を係合させて位置決め部材を所定の回動角度位置に回動させることができる。
【0012】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、少なくとも第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置のそれぞれに対応する複数の回動角度位置で位置決め部材を保持する保持部材をさらに備え、位置決め部材は、少なくとも第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置のそれぞれに対応する第1嵌合部、第2嵌合部および第3嵌合部を有し、保持部材は、第1嵌合部、第2嵌合部または第3嵌合部のいずれかに選択的に嵌合することにより、それぞれ、第1シフト位置、第2シフト位置または第3シフト位置に対応する回動角度位置で位置決め部材を保持するように構成されている。このように構成すれば、保持部材により、第1シフト位置、第2シフト位置または第3シフト位置に対応する回動角度位置で位置決め部材を安定して保持することができるので、安定した状態で少なくとも3つのシフト位置に切り替えることができる。
【0013】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、回動伝達機構は、第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置のいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置に位置決め部材が位置する場合に、駆動側回動部の所定の回動角度範囲において、駆動側カム部が従動側カム部に係合しないように構成されている。このように構成すれば、第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置のいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置に位置決め部材が位置する場合に、所定の回動角度分、駆動側回動部に遊びができるので、駆動側カム部および従動側カム部の製造誤差や組み立て誤差、外力による振動等に対して柔軟に対応することができる。また、第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置のいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置に位置決め部材が位置する場合に、駆動側カム部および従動側カム部が互いに係合状態を維持している場合と異なり、外力による振動等に起因して駆動側カム部が回動方向に振動する場合でも、従動側カム部が過敏に回動してしまうのを抑制することができるので、位置決め部材を所望の回動角度位置に安定して位置させておくことができる。
【0014】
上記駆動側カム部がカムポール部を含む構成において、好ましくは、第1シフト位置は、パーキングポジションに対応し、第2シフト位置および第3シフト位置は、非パーキングポジションに対応しており、複数の柱状のカムポール部のうち、位置決め部材を第1シフト位置から第2シフト位置に対応する回動角度位置に回動させる一のカムポール部は、他のカムポール部よりも外径が大きくなるように形成され、複数のカムレバー部のうち、一のカムポール部に係合可能な一のカムレバー部は、他のカムレバー部よりも厚みが大きくなるように形成されている。このように構成すれば、パーキングポジションから非パーキングポジションに移行させる際に位置決め部材を回動させるのに必要な回動力(トルク)が、他のシフト位置での回動力(トルク)に比べて大きい場合でも、複数のカムポール部のうちの外径が大きい一のカムポール部と、複数のカムレバー部のうちの厚みが大きい一のカムレバー部とにより、駆動側回動部から従動側回動部に確実に回動力(トルク)を伝達することができる。
【0015】
上記駆動側カム部がカムポール部を含む構成において、好ましくは、カムレバー部は、対応するカムポール部を挟み込む二股形状に形成されており、二股形状の互いに対向する部分の間隔が、二股形状の先端部において先端に向かって大きくなるように構成されている。このように構成すれば、カムポール部が対応するカムレバー部の二股形状の間の部分に入り込み易くなるので、カムポール部を対応するカムレバー部に円滑に係合させることができる。その結果、位置決め部材を所望の回動角度位置に円滑に回動させることができる。
【0016】
上記カムレバー部が二股形状に形成された構成において、好ましくは、カムレバー部は、二股形状の互いに対向する部分の先端部が丸みを帯びた形状を有している。このように構成すれば、カムポール部をより円滑に対応するカムレバー部に係合させることができるので、位置決め部材を所望の回動角度位置により円滑に回動させることができる。
【0017】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、位置決め部材は、第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置に加えて、第4シフト位置に対応する回動角度位置にも回動可能に構成され、複数の駆動側カム部は、一の駆動側カム部としての第1駆動側カム部、他の駆動側カム部としての第2駆動側カム部、および、第3駆動側カム部を含み、複数の従動側カム部は、第1駆動側カム部、第2駆動側カム部および第3駆動側カム部にそれぞれ係合可能な、一の従動側カム部としての第1従動側カム部、他の従動側カム部としての第2従動側カム部、および、第3従動側カム部を含み、回動伝達機構は、第3駆動側カム部が第3従動側カム部に係合した状態で移動することにより、従動側回動部を回動させて位置決め部材を第3シフト位置から第4シフト位置に対応する回動角度位置に回動させるように構成されている。このように構成すれば、回動伝達機構により、第1シフト位置、第2シフト位置および第3シフト位置に加えて、第4シフト位置を含む4つのシフト位置に対応する4つの異なる回動角度位置に位置決め部材を回動させることができるので、駆動源を用いて位置決め部材を回動させることにより、4つのシフト位置に対応することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、第1シフト位置、第2シフト位置、第3シフト位置および第4シフト位置は、それぞれ、パーキングポジション、バックポジション、ニュートラルポジションおよびドライブポジションに対応している。このように構成すれば、少なくともパーキングポジション、バックポジション、ニュートラルポジションおよびドライブポジションを含む4つ以上のシフト位置に対応することができる。
【0019】
なお、本出願では、上記一の局面によるシフト装置とは別に、以下のような他の構成も考えられる。
【0020】
(付記項1)
すなわち、本出願の他の構成によるシフト装置は、回動可能に支持された位置決め部材と、駆動源側に設けられた駆動側回動部と、位置決め部材側に設けられ、駆動側回動部の回動に伴って回動される従動側回動部とを含み、駆動源側から回動力を伝達して位置決め部材を回動させる回動伝達機構とを備え、駆動側回動部は、駆動側回動部が回動するのに伴って互いに異なる位相で移動する複数の駆動側カム部を有し、従動側回動部は、複数の駆動側カム部にそれぞれ係合可能な複数の従動側カム部を有し、回動伝達機構は、複数の駆動側カム部のうちの一の駆動側カム部が複数の従動側カム部のうちの一の従動側カム部に係合し、かつ、複数の駆動側カム部のうちの他の駆動側カム部が複数の従動側カム部のうちの他の従動側カム部に係合していない状態で駆動側回動部を回動させることにより、位置決め部材を第1回動位置から第2回動位置に回動させるとともに、上記他の駆動側カム部が上記他の従動側カム部に係合し、かつ、上記一の駆動側カム部が上記一の従動側カム部に係合していない状態で駆動側回動部を回動させることにより、位置決め部材を第2回動位置から第3回動位置に回動させるように構成されている。このように構成すれば、回動伝達機構により、駆動源側から回動力を伝達して少なくとも第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置の少なくとも3つの異なる回動角度位置に位置決め部材を回動させることができるので、駆動源を用いて位置決め部材を回動させることにより、少なくとも第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置のそれぞれに対応する少なくとも3つのシフト位置に対応することができる。したがって、駆動側カム部および従動側カム部をそれぞれ2つ以上設ければ、3つ以上の異なる回動角度位置に位置決め部材を回動させることができるので、3つ以上のシフト位置に対応することができる。
【0021】
(付記項2)
上記他の構成によるシフト装置において、好ましくは、駆動側回動部の駆動側カム部は、駆動側回動部の回動軸が延びる方向において、互いに異なる段位置に配置されており、従動側回動部の従動側カム部は、従動側回動部の回動軸が延びる方向において、互いに異なる段位置に配置されている。このように構成すれば、互いに異なる段位置において、複数の駆動側カム部をそれぞれ対応する従動側カム部に係合させることができるので、互いに対応関係にない駆動側カム部および従動側カム部が干渉(接触)してしまうのを容易に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記一の局面による発明によれば、上記のように、駆動源を用いて位置決め部材を回動させることにより、3つ以上のシフト位置に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1〜
図7を参照して、本発明の一実施形態によるシフト装置100の構成について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態によるシフト装置100は、
図1に示すように、自動車において、シフトスイッチなどの操作部110を介してユーザがシフト操作を行った場合に、トランスミッションECU120を介して電気的にシフトチェンジ制御を行うシフト・バイ・ワイヤー(SBW)に対応したシフト装置である。シフト装置100は、トランスミッションECU120から送信される制御信号に基づいて、ユーザの操作に対応するパーキングポジション(以下、Pポジションという)、バックポジション(以下、Rポジションという)、ニュートラルポジション(以下、Nポジションという)およびドライブポジション(以下、Dポジションという)のいずれかのシフト位置に切り替えるように構成されている。
【0027】
シフト装置100は、
図1に示すように、アクチュエータユニット1と、シフト切替機構2とを備えている。アクチュエータユニット1は、モータ10と、モータ10側から回動力を伝達して後述するディテントプレート60を回動させる回動伝達機構20とを備えている。回動伝達機構20は、モータ10側に設けられ、モータ10により第1軸C1を回動中心として回動される駆動側回動部30と、後述のディテントプレート60側に設けられ、駆動側回動部30の回動に伴って第1軸C1と平行な第2軸C2を回動中心として回動される従動側回動部40とを含んでいる。従動側回動部40は、鉛直方向(Z方向)に延びる出力軸50の上端部に固定的に連結されている。なお、モータ10は、本発明の「駆動源」の一例である。
【0028】
シフト切替機構2は、
図2に示すように、ディテントプレート60と、ディテントプレート60に固定的に連結されたL字状に延びるパーキングロッド70およびマニュアルバルブロッド80と、パーキング装置90とを含んでいる。ディテントプレート60は、出力軸50の下端部(Z2方向側の端部)に固定的に連結されている。すなわち、ディテントプレート60は、回動伝達機構20の従動側回動部40と一体的に第2軸C2周りに回動するように構成されている。具体的には、ディテントプレート60は、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのそれぞれに対応する回動角度位置に回動可能に構成されている。ディテントプレート60に固定的に連結されたパーキングロッド70およびマニュアルバルブロッド80は、ディテントプレート60の回動に伴って所定の位置に移動されるように構成されている。なお、ディテントプレート60は、本発明の「位置決め部材」の一例である。
【0029】
パーキング装置90は、図示しないクランク軸に連結されたパーキングギア91と、パーキングギア91に係合可能なロックポール92とを含んでいる。ロックポール92は、パーキングロッド70の移動に伴ってロック位置および非ロック位置に移動されるように構成されている。具体的には、ロックポール92は、ディテントプレート60がPポジションに対応する回動角度位置に回動された場合に、第3軸C3を回動中心として回動されることによりロック位置に移動されて突起部921がパーキングギア91の歯部911に係合(噛合)するように構成されている。これにより、パーキングギア91の回動が規制されてクランク軸(図示せず)の回動が規制される。一方、ロックポール92は、ディテントプレート60がPポジション以外のシフトポジション(Rポジション、NポジションおよびDポジション)に対応する回動角度位置に回動された場合には、非ロック位置に移動されてパーキングギア91との係合が解除される。
【0030】
マニュアルバルブロッド80は、ユーザのシフト操作に対応して図示しないトランスミッションの油圧制御回路の切り替えを行うために設けられている。たとえば、ディテントプレート60がRポジションに対応する回動角度位置に回動された場合に、マニュアルバルブロッド80がRポジションに対応する所定の位置に移動されることにより、Rポジションに対応する油圧制御回路が形成される。他のシフトポジションについても、Rポジションと同様に、ディテントプレート60の回動に伴ってマニュアルバルブロッド80が所定のシフトポジションに対応する位置に移動されることによって、所定のシフトポジションに対応する油圧制御回路が形成される。
【0031】
以下、本発明の一実施形態によるシフト装置100のより詳細な構成について説明する。
図1に示すように、アクチュエータユニット1のモータ10は、トランスミッションECU120から送信される制御信号に基づいて、一対の平歯車からなるギア11aおよび11bを介してウォームギア12を所定の回動角度で回動させるように構成されている。
【0032】
駆動側回動部30は、
図3に示すように、駆動側回動部30が第1軸C1周りに回動するのに伴って移動する第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33を有している。第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33は、それぞれ、第1軸C1から半径方向にずれた位置に配置されている。第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33は、駆動側回動部30の回動軸(第1軸C1)が延びる方向(Z方向)において、互いに異なる段位置に配置されている。詳細には、第1カムポール部31は、ウォームギア12に噛合するヘリカルギアからなる第1台座部311の上面上に上方(Z1方向)に突出するように設けられている。第2カムポール部32は、第1カムポール部31に下方(Z2方向)から支持された第2台座部321の上面上に上方(Z1方向)に突出するように設けられている。第3カムポール部33は、第2カムポール部32に下方(Z2方向)から支持された第3台座部331の上面上に上方(Z1方向)に突出するように設けられている。
【0033】
すなわち、第1台座部311、第2台座部321および第3台座部331は、第1軸C1が延びる方向(Z方向)に3段構造で配置されており、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33は、それぞれ、第1台座部311、第2台座部321および第3台座部331の上方に突出するように設けられている。第1台座部311、第2台座部321および第3台座部331は、平面視で、第1軸C1が延びる方向(Z方向)に互いに重なるように配置されている。なお、第1カムポール部31は、本発明の「第1駆動側カム部」および「一のカムポール部」の一例であり、第2カムポール部32は、本発明の「第2駆動側カム部」および「他のカムポール部」の一例である。また、第3カムポール部33は、本発明の「第3駆動側カム部」の一例である。
【0034】
第1カムポール部31は、下端部が第1台座部311に固定的に取り付けられるとともに、上端部が第2台座部321に固定的に取り付けられている。第2カムポール部32は、下端部が第2台座部321に固定的に取り付けられるとともに、上端部が第3台座部331に固定的に取り付けられている。また、第3カムポール部33は、下端部が第3台座部331に固定的に取り付けられるとともに、上端部が駆動側回動部30の円柱形状を有する上側回動軸部30aに固定的に取り付けられている。第1台座部311の下面には、駆動側回動部30の円柱形状を有する下側回動軸部30bが固定的に取り付けられている。円柱形状の上側回動軸部30aおよび下側回動軸部30bは、第1軸C1上に配置されている。上側回動軸部30aは、図示しない上側ケースの軸受部により回動可能に支持されるとともに、下側回動軸部30bは、下側ケース1a(
図1参照)の図示しない軸受部により回動可能に支持されている。駆動側回動部30は、ウォームギア12がモータ10により回動されることによって、ウォームギア12に噛合するヘリカルギアからなる第1台座部311が回動されて、第1〜第3台座部31a〜33aおよび第1〜第3カムポール部31〜33が一体的に第1軸C1周りに回動するように構成されている。
【0035】
第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33は、円柱状に形成されている。また、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33は、
図4〜
図6に示すように、駆動側回動部30が回動する際に、互いに異なる位相で駆動側回動部30の回動軸(第1軸C1)周りに公転移動するように構成されている。また、第1カムポール部31は、
図4に示すように、中心O1が駆動側回動部30の回動軸(第1軸C1)から半径方向に距離D1離間した位置に配置されている。また、第2カムポール部32は、
図5に示すように、中心O2が駆動側回動部30の第1軸C1から半径方向に距離D1よりも小さい距離D2離間した位置に配置されている。第3カムポール部33は、
図6に示すように、中心O3が駆動側回動部30の第1軸C1から半径方向に第2カムポール部32の距離D2と同じ大きさの距離D3離間した位置に配置されている。第1カムポール部31は、外径D4を有し、第2カムポール部32は、第1カムポール部31の外径D4よりも小さい外径D5を有している。第3カムポール部33は、第2カムポール部32の外径D5と同じ大きさの外径D6を有している。
【0036】
従動側回動部40は、
図3に示すように、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33にそれぞれ係合可能な第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43を有している。第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43は、従動側回動部40の回動軸(第2軸C2)が延びる方向(Z方向)において、互いに異なる段位置に配置されている。詳細には、第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43は、第2軸C2が延びる方向(Z方向)に3段構造で配置されているとともに、それぞれ、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33に対応する高さ位置(段位置)に設けられている。なお、第1カムレバー部41は、本発明の「第1従動側カム部」および「一のカムレバー部」の一例であり、第2カムレバー部42は、本発明の「第2従動側カム部」および「他のカムレバー部」の一例である。また、第3カムレバー部43は、本発明の「第3従動側カム部」の一例である。
【0037】
第3カムレバー部43の下面には、従動側本体部44が固定的に取り付けられている。従動側回動部40は、駆動側回動部30が第1軸C1周りに回動される際に、第1カムレバー部41、第2カムレバー部42または第3カムレバー部43のいずれかが対応するカムポール部に係合することによって、第1〜第3カムレバー部41〜43および従動側本体部44が一体的に第2軸C2周りに回動するように構成されている。また、従動側本体部44の下部には、従動側回動部40と同軸(第2軸C2)で回動する円柱状の出力軸50が固定的に取り付けられている。出力軸50は、下側ケース1a(
図1参照)を貫通してアクチュエータユニット1から下方(Z2方向)に突出するように設けられている。
【0038】
第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43は、板状に形成されている。第2カムレバー部42および第3カムレバー部43は、互いに同形状に形成されている。第1カムレバー部41は、
図3に示すように、第2カムレバー部42の板厚t2よりも大きい板厚t1を有している。第3カムレバー部43は、第2カムレバー部42の板厚t2と同じ大きさの板厚t3を有している。すなわち、PポジションからRポジションへのシフトチェンジに対応する第1カムレバー部41の板厚t1は、第2カムレバー部42の板厚t2および第3カムレバー部43の板厚t3よりも大きくなるように形成されている。
【0039】
第1カムレバー部41は、
図4に示すように、切欠状に形成された凹状のカム溝411を有し、第1カムポール部31がカム溝411に挿入されることにより第1カムポール部31に係合するように構成されている。すなわち、第1カムレバー部41は、二股形状に形成されており、第1カムポール部31を挟み込むことにより第1カムポール部31に係合するように構成されている。第1カムポール部31および第1カムレバー部41は、1段目に配置された第1カム機構を構成している。
【0040】
第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)は、
図5(
図6)に示すように、第1カムレバー部41と同様に、切欠状に形成された凹状のカム溝421(431)を有し、第2カムポール部32(第3カムポール部33)がカム溝421(431)に挿入されることにより第2カムポール部32(第3カムポール部33)に係合するように構成されている。すなわち、第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)は、二股形状に形成されており、第2カムポール部32(第3カムポール部33)を挟み込むことにより第2カムポール部32(第3カムポール部33)に係合するように構成されている。第2カムポール部32(第3カムポール部33)および第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)は、2段目(3段目)に配置された第2カム機構(第3カム機構)を構成している。
【0041】
第1カムレバー部41は、
図4〜
図6に示すように、二股形状の部分の幅W1が、第2カムレバー部42の二股形状の部分の幅W2および第3カムレバー部43の二股形状の部分の幅W3よりも大きくなるように形成されている。第2カムレバー部42の二股形状の部分の幅W2と、第3カムレバー部43の二股形状の部分の幅W3とは同じ大きさである。
【0042】
第1カムレバー部41(第2カムレバー部42および第3カムレバー部43)は、互いに対向する部分の間隔I1(I2およびI3)が対応するカムポール部の外径D4(D5およびD6)よりも僅かに大きくなるように構成されている。これにより、第1〜第3カムレバー部41〜43と、対応する第1〜第3カムポール部31〜33とを円滑に係合させることが可能である。第1カムレバー部41は、
図4に示すように、二股形状の互いに対向する部分の間隔が二股形状の先端部412において先端に向かって大きくなるように構成されている。すなわち、二股形状の互いに対向する部分の先端部412の間隔が、先端に向かって間隔I1から徐々に大きくなっている。詳細には、第1カムレバー部41は、二股形状の互いに対向する部分の先端部412がR面取りにより丸みを帯びた形状を有している。
【0043】
第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)は、
図5(
図6)に示すように、第1カムレバー部41と同様に、二股形状の互いに対向する部分の間隔が二股形状の先端部422(432)において先端に向かって大きくなるように構成されている。すなわち、二股形状の互いに対向する部分の先端部422(432)の間隔が、先端に向かって間隔I2(I3)から徐々に大きくなっている。詳細には、第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)は、二股形状の互いに対向する部分の先端部422(432)がR面取りにより丸みを帯びた形状を有している。第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)は、二股形状の互いに対向する側とは反対側の外側の先端部423(433)が、二股形状の対向する側の先端部422(432)と同様にR面取りにより丸みを帯びた形状を有している。これにより、第2カムポール部32(第3カムポール部33)が、第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)の二股形状の外側の先端部423(433)に接触(干渉)するのを抑制することが可能である。
【0044】
上記のような構成により、回動伝達機構20は、第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合した状態で一方方向(他方方向)に移動することにより、従動側回動部40を回動させてディテントプレート60をPポジション(Rポジション)からRポジション(Pポジション)に対応する回動角度位置に回動させることが可能である。すなわち、回動伝達機構20は、第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合した状態において、ディテントプレート60をPポジションに対応する回動角度位置とRポジションに対応する回動角度位置との間で回動させることが可能である。この際、第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合する一方、第2カムポール部32(第3カムポール部33)は、第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)に係合しない。
【0045】
また、回動伝達機構20は、第2カムポール部32(第3カムポール部33)が第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)に係合した状態で一方方向に移動することにより、従動側回動部40を回動させてディテントプレート60をRポジション(Nポジション)からNポジション(Dポジション)に対応する回動角度位置に回動させるように構成されている。回動伝達機構20は、第2カムポール部32(第3カムポール部33)が第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)に係合している際には、他のカムポール部およびカムレバー部は係合しないように構成されている。すなわち、回動伝達機構20は、第1〜第3カムポール部31〜33のいずれか1つが、対応する第1〜第3カムレバー部41〜43に係合している場合には、他の2組のカムポール部およびカムレバー部は係合しないように構成されている。
【0046】
また、回動伝達機構20は、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのいずれかのシフトポジションに対応する回動角度位置にディテントプレート60が位置する場合に、駆動側回動部30の所定の回動角度範囲(本実施形態では、20度の範囲)において、第1〜第3カムポール部31〜33がそれぞれ第1〜第3カムレバー部41〜43に係合しないように構成されている。換言すれば、ディテントプレート60がPポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのいずれかのシフトポジションに対応する回動角度位置に位置する場合には、駆動側回動部30の所定の回動角度範囲において、カムポール部とカムレバー部とが当接されず、従動側回動部40が回動されない。すなわち、ディテントプレート60がPポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのいずれかに対応する回動角度位置に位置する場合において、駆動側回動部30に遊び範囲(空転する範囲)が設定されている。
【0047】
シフト切替機構2のディテントプレート60は、所定の回動角度位置で板バネからなるディテントスプリング61に保持されるように構成されている。具体的には、ディテントスプリング61は、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのそれぞれに対応する回動角度位置でディテントプレート60を保持するように構成されている。なお、ディテントスプリング61は、本発明の「保持部材」の一例である。
【0048】
ディテントプレート60は、
図1、
図2および
図7に示すように、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのそれぞれに対応するP嵌合部62a、R嵌合部62b、N嵌合部62cおよびD嵌合部62dを有している。P嵌合部62a、R嵌合部62b、N嵌合部62cおよびD嵌合部62dは、凹状の切欠状に形成されている。P嵌合部62aは、
図7に示すように、他の嵌合部(R嵌合部62b、N嵌合部62cおよびD嵌合部62d)よりも切欠深さが大きくなるように形成されている。また、P嵌合部62aおよびR嵌合部62bの角度間隔(位相差)α1(本実施形態では、20度)は、R嵌合部62bおよびN嵌合部62cの角度間隔(位相差)α2(本実施形態では、10度)よりも大きい。すなわち、ディテントプレート60が第2軸C2周りに回動する際のP嵌合部62aおよびR嵌合部62bの位相差α1は、R嵌合部62bおよびN嵌合部62cの位相差α2よりも大きく設定されている。また、N嵌合部62cおよびD嵌合部62dの角度間隔(位相差)α3(本実施形態では、10度)は、R嵌合部62bおよびN嵌合部62cの角度間隔(位相差)α2(本実施形態では、10度)と同じ大きさに設定されている。なお、P嵌合部62a、R嵌合部62bおよびN嵌合部62cは、それぞれ、本発明の「第1嵌合部」、「第2嵌合部」および「第3嵌合部」の一例である。
【0049】
ディテントスプリング61は、ディテントプレート60のP嵌合部62a、R嵌合部62b、N嵌合部62cおよびD嵌合部62dのいずれかに選択的に嵌合することにより、それぞれ、Pポジション、Rポジション、NポジションまたはDポジションに対応する回動角度位置でディテントプレート60を保持するように構成されている。具体的には、ディテントスプリング61は、ディテントプレート60の複数の嵌合部が設けられた外周面60a(
図7参照)に沿って摺動可能なローラ部611を有している。また、ディテントスプリング61は、図示しない支持部により片持ち状態で支持されており、自由端側でディテントプレート60の外周面60aを付勢するように構成されている。すなわち、ディテントスプリング61は、ディテントプレート60の回動に伴ってローラ部611がディテントプレート60の外周面60aに沿って摺動することにより、ローラ部611が対応する嵌合部に係合(嵌合)するように構成されている。これにより、ディテントプレート60は、ディテントスプリング61により所定の回動角度位置で保持される。
【0050】
本実施形態では、上記のとおり、P嵌合部62aの切欠深さが他の嵌合部よりも大きく形成されているため、ディテントスプリング61をP嵌合部62aから隣接するR嵌合部62bに移動させる際には、ディテントプレート60を回動させる回動力(トルク)が他の嵌合部間を移動させる場合よりも大きくなる。すなわち、PポジションからRポジションにシフトチェンジする際には、他のシフトポジション間でシフトチェンジする場合に比べて、ディテントプレート60を回動させるのにより大きい回動力(トルク)が必要である。このため、上記のように、PポジションからRポジションへのシフトチェンジに対応する第1カムポール部31は、外径D4が第2カムポール部32の外径D5および第3カムポール部33の外径D6よりも大きくなるように形成されている。また、PポジションからRポジションへのシフトチェンジに対応する第1カムレバー部41は、板厚t1および二股形状の部分の幅W1が、それぞれ、第2カムレバー部42(第3カムレバー部43)の板厚t2(t3)および二股形状の部分の幅W2(W3)よりも大きくなるように形成されている。
【0051】
パーキングロッド70およびマニュアルバルブロッド80は、
図1、
図2および
図7に示すように、ディテントプレート60の第2軸C2から離間した位置に固定的に連結されている。具体的には、パーキングロッド70は、P嵌合部62aおよびR嵌合部62bの間の領域で、かつ、P嵌合部62aおよびR嵌合部62bよりも第2軸C2の近くの位置でディテントプレート60に連結されている。
図2に示すように、パーキングロッド70のディテントプレート60に連結された一方端部とは反対側の他方端部近傍には、カム部71が設けられている。カム部71は、コイルスプリング72によりパーキングロッド70の他方端部側に付勢された状態でロックポール92に当接している。パーキングロッド70の移動に伴ってカム部71のロックポール92に対する当接位置が変化することによって、ロックポール92が第3軸C3を回動中心としてロック位置および非ロック位置に回動される。これにより、パーキングギア91とロックポール92との係合状態(ロック状態、非ロック状態)が切り替えられる。マニュアルバルブロッド80は、第2軸C2周りに回動するディテントプレート60の半径方向に延びる腕部63の先端部63aに連結されている。
【0052】
次に、
図4〜
図8を参照して、ユーザによりシフト操作(シフトチェンジ)が行われた際のシフト装置100の動作について説明する。ここでは、ユーザが、Pポジションから、Rポジション、NポジションおよびDポジションの順番(以下、順方向という)でシフトチェンジを行った場合について説明する。Dポジションから、Nポジション、RポジションおよびPポジションの順番(以下、逆方向という)でシフトチェンジが行われた場合には、以下に示す順方向の場合と反対向きの動作を行う。また、
図8に示す例では、順方向のシフトチェンジが行われた場合(駆動側回動部30を反時計回り(実線矢印で示す方向)に回動させる場合)に、第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合し始めた状態を駆動側回動部30の基準位置(駆動側回動部30の回動角度が0度の位置)に設定している。また、ディテントプレート60がPポジションに対応する回動角度位置に位置する状態をディテントプレート60の基準位置(ディテントプレート60の回動角度が0度の位置)に設定している。また、本実施形態では、
図8の太枠で囲った状態において、第1〜第3カムポール部31〜33のいずれかが、対応する第1〜第3カムレバー部41〜43に係合している。すなわち、
図8の太枠で囲った状態において、駆動側回動部30から従動側回動部40に対して動力伝達が行われる。
【0053】
まず、ディテントプレート60がPポジションに対応する回動角度位置(0度の位置)に位置する場合には、駆動側回動部30が−20度(基準位置から時計回りに20度)以上0度未満の範囲内において、第1〜第3カムポール部31〜33と、第1〜第3カムレバー部41〜43とは当接(係合)されない。すなわち、駆動側回動部30が−20度以上0度未満の範囲内で回動しても、ディテントプレート60は回動されない(Pポジションに対応する回動角度位置を維持する)。
【0054】
ユーザがPポジションからDポジションに向かって順方向にシフトチェンジすると、トランスミッションECU120からの制御信号に基づいて、モータ10が所定方向に駆動する。これに伴って駆動側回動部30が第1軸C1(
図4参照)を中心に反時計回り(実線矢印で示す方向)に回動されて、第1カム機構の第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合する。そして、第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合した状態で駆動側回動部30が回動されることによって、第1カムレバー部41は第1カムポール部31により第2軸C2(
図4参照)を中心に時計回り(実線矢印で示す方向)に押し回される。これにより、ディテントプレート60がPポジションからRポジションに対応する回動角度位置に向かって第2軸C2周りに回動される。この際、パーキングロッド70が移動されるのに伴ってロックポール92がロック位置から非ロック位置に移動されることによって、パーキングギア91とロックポール92との係合状態がロック状態から非ロック状態に切り替わる。
【0055】
その後、駆動側回動部30が80度まで回動されることによって、ディテントプレート60はPポジションおよびRポジションの中間位置に対応する回動角度位置(10度の位置)まで回動される。そして、駆動側回動部30が160度まで回動されると、ディテントプレート60がRポジションに対応する回動角度位置(20度の位置)まで回動される。この際、第1カムポール部31が第1カムレバー部41から離間して第1カムポール部31および第1カムレバー部41の係合状態が解除される。駆動側回動部30が160度から180度まで回動される際には、第1〜第3カムポール部31〜33のいずれもが第1〜第3カムレバー部41〜43に係合しない。すなわち、駆動側回動部30が160度から180度に回動される際には、ディテントプレート60は回動されずにRポジションに対応する回動角度位置(20度の位置)に保持される。なお、Pポジションに対応するディテントプレート60の回動角度位置(0度の位置)と、Rポジションに対応するディテントプレート60の回動角度位置(20度の位置)との角度差(位相差)は、
図7に示すP嵌合部62aおよびR嵌合部62bの角度間隔(位相差)α1に対応している。
【0056】
駆動側回動部30が180度まで回動されると、第2カム機構の第2カムポール部32が第2カムレバー部42に係合する。そして、第2カムポール部32が第2カムレバー部42に係合した状態で、駆動側回動部30がさらに反時計回りに回動されることによって、第2カムレバー部42は第2カムポール部32により第2軸C2(
図5参照)を中心に時計回り(実線矢印で示す方向)に押し回される。これにより、ディテントプレート60がRポジションからNポジションに対応する回動角度位置に向かって第2軸C2周りに回動される。
【0057】
そして、駆動側回動部30が350度まで回動されると、ディテントプレート60がNポジションに対応する回動角度位置(30度の位置)まで回動されるとともに、第2カムポール部32が第2カムレバー部42から離間される。上記第1カム機構では、駆動側回動部30が時計回りに160度(0度から160度まで)回動するのに伴ってディテントプレート60が時計回りに20度(0度から20度まで)回動されるのに対して、第2カム機構では、駆動側回動部30が時計回りに170度(180度から350度まで)回動するのに伴ってディテントプレート60が時計回りに10度(20度から30度まで)回動される。
【0058】
駆動側回動部30が350度から370度まで回動される際には、ディテントプレート60は回動されずにNポジションに対応する回動角度位置(30度の位置)に保持される。なお、Rポジションに対応するディテントプレート60の回動角度位置(20度の位置)と、Nポジションに対応するディテントプレート60の回動角度位置(30度の位置)との角度差(位相差)は、
図7に示すR嵌合部62bおよびN嵌合部62cの角度間隔(位相差)α2に対応している。
【0059】
駆動側回動部30が370度まで回動されると、第3カム機構の第3カムポール部33が第3カムレバー部43に係合する。そして、第3カムポール部33が第3カムレバー部43に係合した状態で、駆動側回動部30がさらに反時計回りに回動されることによって、第3カムレバー部43は第3カムポール部33により第2軸C2(
図6参照)を中心に時計回り(実線矢印で示す方向)に押し回される。これにより、ディテントプレート60がNポジションからDポジションに対応する回動角度位置に向かって第2軸C2周りに回動される。
【0060】
そして、駆動側回動部30が540度まで回動されると、ディテントプレート60がDポジションに対応する回動角度位置(40度の位置)まで回動されるとともに、第3カムポール部33が第3カムレバー部43から離間される。第3カム機構では、上記第2カム機構と同様に、駆動側回動部30が時計回りに170度(370度から540度まで)回動するのに伴ってディテントプレート60が時計回りに10度(30度から40度まで)回動される。
【0061】
駆動側回動部30の540度から560度までの範囲においては、ディテントプレート60は回動されずにDポジションに対応する回動角度位置(40度の位置)に保持される。なお、Nポジションに対応するディテントプレート60の回動角度位置(30度の位置)と、Dポジションに対応するディテントプレート60の回動角度位置(40度の位置)との角度差(位相差)は、
図7に示すN嵌合部62cおよびD嵌合部62dの角度間隔(位相差)α3に対応している。
【0062】
本実施形態では、上記のように、モータ10側から回動力を伝達してディテントプレート60を回動させる回動伝達機構20を、第1カムポール部31が第1カムレバー部41に係合した状態で移動することにより、従動側回動部40を回動させてディテントプレート60をPポジションからRポジションに対応する回動角度位置に回動させるように構成する。また、第2カムポール部32が第2カムレバー部42に係合した状態で移動することにより、従動側回動部40を回動させてディテントプレート60をRポジションからNポジションに対応する回動角度位置に回動させるように回動伝達機構20を構成する。さらに、第3カムポール部33が第3カムレバー部43に係合した状態で移動することにより、従動側回動部40を回動させてディテントプレート60をNポジションからDポジションに対応する回動角度位置に回動させるように回動伝達機構20を構成する。これにより、回動伝達機構20により、モータ10側から回動力を伝達してPポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションの4つのシフト位置に対応する4つの異なる回動角度位置にディテントプレート60を回動させることができるので、モータ10を用いてディテントプレート60を回動させることにより、4つ(3つ以上)のシフト位置に対応することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、駆動側回動部30の第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33を、駆動側回動部30の回動軸(第1軸C1)が延びる方向(Z方向)において、互いに異なる段位置に配置するとともに、従動側回動部40の第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43を、従動側回動部40の回動軸(第2軸C2)が延びる方向(Z方向)において、互いに異なる段位置に配置する。これにより、互いに異なる段位置において、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33をそれぞれ第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43に係合させることができるので、互いに対応関係にないカムポール部およびカムレバー部が干渉(接触)してしまうのを容易に防止することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33を円柱状に形成し、第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43を、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33のそれぞれに係合可能な二股形状に形成する。これにより、簡易な構成のカムポール部およびカムレバー部により、容易に、互いに対応するカムポール部およびカムレバー部を係合させてディテントプレート60を所定の回動角度位置に回動させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、ディテントスプリング61を、P嵌合部62a、R嵌合部62b、N嵌合部62cまたはD嵌合部62dのいずれかに選択的に嵌合させることにより、それぞれ、Pポジション、Rポジション、NポジションまたはDポジションに対応する回動角度位置でディテントプレート60を保持するように構成する。これにより、ディテントスプリング61により、Pポジション、Rポジション、NポジションまたはDポジションに対応する回動角度位置でディテントプレート60を安定して保持することができるので、安定した状態で上記4つのシフト位置に切り替えることができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置にディテントプレート60が位置する場合に、駆動側回動部30の所定の回動角度範囲(20度の範囲)において、第1カムポール部31、第2カムポール部32および第3カムポール部33がぞれぞれ第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43に係合しないように回動伝達機構20を構成する。これにより、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置にディテントプレート60が位置する場合に、所定の回動角度分、駆動側回動部30に遊びができるので、カムポール部およびカムレバー部の製造誤差や組み立て誤差、外力による振動等に対して柔軟に対応することができる。また、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションのいずれかのシフト位置に対応する回動角度位置にディテントプレート60が位置する場合に、カムポール部およびカムレバー部が互いに係合状態を維持している場合と異なり、外力による振動等に起因してカムポール部が回動方向に振動する場合でも、カムレバー部が過敏に回動してしまうのを抑制することができるので、ディテントプレート60を所望の回動角度位置に安定して位置させておくことができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、第1カムポール部31を、第2カムポール部32および第3カムポール部33よりも外径が大きくなるように形成するとともに、第1カムレバー部41を、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43よりも厚みが大きくなるように形成する。これにより、Pポジションから非Pポジション(Rポジション、NポジションおよびDポジション)に移行させる際にディテントプレート60を回動させるのに必要な回動力(トルク)が、他のシフト位置での回動力(トルク)に比べて大きい本実施形態のような構成においても、外径が大きい第1カムポール部31と厚みが大きい第1カムレバー部41とにより、駆動側回動部30から従動側回動部40に確実に回動力(トルク)を伝達することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、二股形状の互いに対向する部分の間隔(I1、I2およびI3)が二股形状の先端部(412、422および432)において先端に向かって大きくなるように、第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43を構成する。これにより、カムレバー部の二股形状の間の部分に、対応するカムポール部が入り込み易くなるので、カムポール部をカムレバー部に円滑に係合させることができる。その結果、ディテントプレート60を所望の回動角度位置に円滑に回動させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、第1カムレバー部41、第2カムレバー部42および第3カムレバー部43の二股形状の互いに対向する部分の先端部(412、422および432)を、丸みを帯びた形状に形成する。これにより、カムポール部をより円滑にカムレバー部に係合させることができるので、ディテントプレート60を所望の回動角度位置により円滑に回動させることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記実施形態では、本発明のシフト装置を、自動車用のシフト装置に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明のシフト装置を、たとえば、航空機や船舶など、自動車用以外のシフト装置に適用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第1〜第3カムポール部を互いに異なる段位置に配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1〜第3カムポール部の全てまたは一部を同じ段位置に配置してもよい。たとえば、
図9に示す変形例のように、第2カム機構の第2カムポール部32aと、第3カム機構の第3カムポール部33aとを同じ段位置に配置してもよい。具体的には、第2台座部321の上面上に第2カムポール部32aおよび第3カムポール部33aを設ける。また、第2カムポール部32aおよび第3カムポール部33aに対応する段位置に第2カムレバー部42aを設ける。第2カムレバー部42aには、第2カムポール部32aに係合可能な凹状のカム溝421a(第2カム機構)と、第3カムポール部33aに係合可能な凹状のカム溝421b(第3カム機構)とを形成する。また、第2カムポール部32a(第3カムポール部33a)がカム溝421a(421b)に係合している場合には、第3カムポール部33a(第2カムポール部32a)がカム溝421b(421a)に係合しないように構成する。
【0073】
これにより、第2カムポール部32aがカム溝421aに係合した状態で移動することによって、第2カムレバー部42aを回動させてディテントプレート60をRポジションからNポジションに対応する回動角度位置に回動させることが可能である。また、第3カムポール部33aがカム溝421bに係合した状態で移動することによって、第2カムレバー部42aを回動させてディテントプレート60をNポジションからDポジションに対応する回動角度位置に回動させることが可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、第1〜第3カムポール部と第1〜第3カムレバー部とを設けて、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションの4つのシフト位置に対応可能な構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、2つのカムポール部と2つのカムレバー部とを設けることにより、3つのシフト位置にのみ対応可能な構成であってもよいし、4組以上のカムポール部およびカムレバー部(カム機構)を設けることにより、5つ以上のシフト位置に対応可能な構成であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、本発明の第1〜第3駆動側カム部の一例として、それぞれ、円柱状の第1〜第3カムポール部を示すとともに、本発明の第1〜第3従動側カム部の一例として、それぞれ、第1〜第3カムポール部に係合可能な二股形状の第1〜第3カムレバー部を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、円柱状の第1〜第3カムポール部以外の第1〜第3駆動側カム部であってもよいし、二股形状の第1〜第3カムレバー部以外の第1〜第3従動側カム部であってもよい。たとえば、駆動側カム部を、回動中心から外周までの距離が一定でない板カムにより構成し、従動側カム部を、板カムの外周面に係合(摺動)することによって所定の回動角度位置に回動されるカムレバーにより構成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、ヘリカルギアからなる第1台座部から上方に向かって順番に、第2台座部および第3台座部を配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2台座部および第3台座部を、ヘリカルギアからなる第1台座部の下方に向かって順番に配置してもよいし、第2台座部および第3台座部を、それぞれ、ヘリカルギアからなる第1台座部の上下に配置してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第1〜第3カムレバー部の二股形状の互いに対向する部分の先端部を、R面取りにより丸みを帯びた形状に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1〜第3カムレバー部の二股形状の互いに対向する部分の先端部を、C面取りにより先端に向かって先細るテーパ形状を有するように形成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、本発明の保持部材の一例として、板バネからなるディテントスプリングを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の回動角度位置で位置決め部材を保持可能であれば、たとえば、コイルバネの付勢力を用いて位置決め部材を保持する保持部材や、付勢力を用いることなく位置決め部材を保持する保持部材など、板バネからなるディテントスプリング以外の保持部材であってもよい。