(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数段の圧縮機と、夫々の圧縮機により圧縮したガスを冷却して凝縮したドレンを取り出すアフタークーラとを有する複数段の不純物分離機を備えて酸素燃焼装置からのガスの不純物を除去するよう構成された不純物除去機構の下流側に、
冷却空間を有する冷却器本体と、前記冷却空間の内部下側に連通するガス入口と、前記冷却空間の内部上側に連通するガス出口と、前記冷却空間の内部における前記ガス入口とガス出口の間に配置され、冷却流体入口からの冷却流体を前記冷却空間の内部に巡らせて冷却流体出口から導出するようにした冷却管と、前記冷却空間の内部における前記ガス入口とガス出口の間を上下に区画するように配置した充填材とを有する充填材内蔵冷却器を備え、
前記冷却空間の内部上側に備えたノズルと、前記冷却空間の内底部のドレン溜めに備えたドレン出口からのドレンをポンプにより前記ノズルに供給して噴射するドレン循環装置と、前記冷却流体入口と冷却流体出口との間の循環路に配置した冷凍機と、前記冷却器本体のドレン溜めのドレンを、少なくとも最前段の前記不純物分離機のアフタークーラの上流側にアルカリ調整剤として供給するアルカリ調整剤供給流路とを備えた
ことを特徴とする水分含有ガスの不純物除去システム。
【背景技術】
【0002】
燃焼装置や反応装置等から排出されるガスには、除去しなければならない不純物が含まれている。例えば、地球温暖化の原因の一つと言われている二酸化炭素(CO
2)の排出量を低減する技術の一つとして、酸素燃焼装置が検討されており、微粉炭を酸素燃焼する石炭焚ボイラが注目されている。この石炭焚ボイラは、酸化剤として空気の代わりに酸素を使用することで、二酸化炭素(CO
2)を主体とする排ガスが生成され、この高二酸化炭素濃度の排ガスを圧縮・冷却することにより液化二酸化炭素とし、この液化二酸化炭素を船、車両等の搬送手段により目的地まで搬送して地中に貯蔵すること、或いは、液化二酸化炭素の圧力を上げてパイプラインにより目的地まで搬送して地中に貯蔵することが検討されている。
【0003】
このような酸素燃焼を行う石炭焚ボイラからの排ガス中には、二酸化炭素(CO
2)以外に、石炭原料由来の窒素酸化物(NO
x)、硫黄酸化物(SO
x)、水銀(Hg)、塩化水素(HCl)、煤塵等の不純物が含まれる。このような不純物は、環境汚染の問題或いは腐食を発生させる等の問題から除去する必要があり、又、不純物の混入は、取り出される二酸化炭素(CO
2)の純度を低下させることからも除去する必要がある。
【0004】
上記不純物のうち、硫黄酸化物(SO
x)は水と接触することにより水に溶解して硫酸(H
2SO
4)となり、塩化水素(HCl)は水に溶解して塩酸となるものであり、このような水溶性を示す硫黄酸化物及び塩化水素、及び煤塵は水スプレー等により水と接触させることで分離できる。
【0005】
一方、前記不純物である窒素酸化物(NO
x)のうち、二酸化窒素(NO
2)は水と接触することにより水に溶解して硝酸(HNO
3)となることにより分離できる。しかし、石炭焚ボイラからの排ガス中には酸素(O
2)が少ないために、窒素(N
2)は殆どが一酸化窒素(NO)として存在しており、この一酸化窒素(NO)は水に不溶であるために水スプレー等を行っても除去することができない。
【0006】
前記の硫酸、塩酸及び硝酸のうち、特に硫酸は排ガス処理装置の機器を腐食させることが知られており、又、前記微量金属である水銀は熱交換器の低温のアルミニウム部材を損傷させることが分かっている。従って、これらの不純物は早い段階において除去することが好ましい。又、前記不純物が排ガスに混入すると二酸化炭素の純度が低下するために、圧縮・冷却して液化することが大変になり液化のための装置機器が大型化するという問題がある。従って、酸素燃焼を行う石炭焚ボイラ等のように、二酸化炭素主体の排ガスを生じさせてその二酸化炭素を処分するシステムにおいては、排ガス中の不純物を除去することが非常に重要となる。
【0007】
このため、酸素燃焼を行う石炭焚ボイラ等においては、特に腐食が問題となる硫黄酸化物について、従来の空気焚ボイラ等で用いられているスプレー塔方式或いは充填塔方式等からなる湿式と言われる脱硫装置を備えることで除去することが行われている。又、酸素燃焼を行う石炭焚ボイラ等からの排ガス中には石炭原料由来の窒素及び窒素酸化物が発生するため、前記脱硫装置の上流に、触媒方式等による脱硝装置を備えて窒素及び窒素酸化物を除去することが行われている。
【0008】
上記湿式の脱硫装置を設置すると、硫黄酸化物及び塩化水素が除去されると共に、煤塵が除去され、更に、窒素酸化物も一部が除去されると共に、元々含有量が少ない水銀も僅かに除去されることが知られている。又、上記排ガス処理を行っても排ガス中の水銀の濃度が高い場合には、水銀除去塔を設置して水銀を吸着剤等により除去することが考えられている。
【0009】
排ガスの処理システムの一例としては、富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラからの排ガスを導くダクトに集塵器と湿式の脱硫装置を有し、集塵機の下流側の排ガスの一部をボイラに導く排ガス再循環ダクトと、脱硫装置の下流側の排ガスを圧縮して二酸化炭素を分離するCO
2分離手段とを備え、CO
2分離手段の排ガスを圧縮する過程で分離された水分を、脱硫装置内で循環して使用される吸収液に供給するようにした排ガス処理システムがある(特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の水分含有ガスの不純物除去装置の
参考例を示す概略構成図であり、
図1中、50は充填材内蔵冷却器である。充填材内蔵冷却器50は、冷却空間51を有する冷却器本体52と、前記冷却空間51の内部下側に連通して水分含有ガス53を導入するガス入口54と、前記冷却空間51の内部上側に連通するガス出口55とを有する。又、前記冷却空間51の内部における前記ガス入口54とガス出口55との間に配置され、冷却流体入口56から導入される海水或いは他の冷却水等の冷却流体57を前記冷却空間51の内部に巡らせて冷却流体出口58から導出するようにした冷却管59を有する。60は冷却流体入口56と冷却流体出口58とを仕切る仕切り板である。更に、前記冷却空間51の内部における前記ガス入口54とガス出口55の間には冷却空間51を上下に区画するように配置した充填材61を有する。充填材61は、例えば上下の孔開き板61a,61aの相互間に粒状物61b(ラッシヒリング)を充填した構成を有する。
【0024】
前記冷却空間51の内底部にはドレン溜め62が形成してあり、又、前記冷却空間51の内部上側にはノズル63が設けてあり、前記ドレン溜め62のドレン出口64に接続した取出管65から取り出されるドレンDをポンプ66と循環流路67を介して前記ノズル63に供給することにより該ノズル63から噴射するようにしたドレン循環装置68を設けている。
【0025】
図1の
参考例では、冷却管59の上部に充填材61が配置され、該充填材61の上部にノズル63が配置された場合を示している。前記循環流路67には、該循環流路67内を流動するドレンDにアルカリ剤69を添加するアルカリ剤添加装置70を備えている。アルカリ剤69には、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア(−NH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、或いは大量の水(H
2O)(一般の水は弱アルカリである)等を用いることができる。
【0026】
前記冷却器本体52には、前記ドレン溜め62のドレンDのレベルを検出するレベル計71と、該レベル計71により検出したレベル検出値が設定値に保持されるように取出管65に備えた調節弁72を調節するレベル制御器73を備えている。
【0027】
更に、前記冷却器本体52には、前記ドレン溜め62のドレンDのpHを検出するpH検出器74と、該pH検出器74が検出したpH
検出値が設定値に保持されるように前記アルカリ剤添加装置70における供給弁75を制御してアルカリ剤69の供給量を調節するアルカリ剤制御器76を備えている。
【0028】
図2は、
図1の
参考例の変形例を示したもので、
図2(a)は充填材61の上部に冷却管59が配置され、該冷却管59の上部にノズル63が配置された場合を示し、
図2(b)は充填材61の内部に冷却管59が配置された場合を示している。
【0029】
図1、
図2に示す
参考例の作動を以下に説明する。
【0030】
前記水分含有ガスの不純物除去装置を構成する充填材内蔵冷却器50の冷却管59には海水或いは冷却水等の冷却流体57が供給されて冷却空間51を冷却しており、又、冷却空間51の内底部のドレン溜め62のドレンDはドレン循環装置68により冷却空間51の上部に設けたノズル63から噴射されている。
【0031】
このとき、レベル制御器73はレベル計71で検出する前記ドレン溜め62のドレンDのレベルが一定に保持されるように制御しているので、前記ドレン溜め62のドレンDをドレン循環装置68により確実に循環させて噴射することができる。
【0032】
そして、種々の燃焼装置或いは反応装置等から取り出されて不純物を含有し且つ水分を含有する水分含有ガス53は、水分含有ガスの不純物除去装置を構成する充填材内蔵冷却器50の冷却器本体52のガス入口54から冷却空間51の内部に導入される。冷却空間51の内部に導入された水分含有ガス53は、冷却管59との熱交換により冷却されることにより含有する水分が凝縮しドレンとなってドレン溜め62に落下する。水分が除去されたガスは、充填材61を通る際にガス中の不純物が除去される。このとき、充填材61にはドレン循環装置68のノズル63によりドレンDが噴射されており、更に、ドレンDにはアルカリ剤添加装置70からのアルカリ剤69が添加されているため、充填材61を通るガスはドレンDと接触することによって不純物が効果的に除去される。
【0033】
又、前記ドレン溜め62のドレンDのpHを検出するpH検出器74と、該pH検出器74が検出したpH
検出値が設定値に保持されるように前記アルカリ剤添加装置70における供給弁75を制御してアルカリ剤69の供給量を調節するアルカリ剤制御器76を備えているので、ノズル63から噴射されるドレンDのpHが高く維持されるように調節することで、ドレンDに対する不純物の溶け込みを高めて、不純物の除去効果を更に高めることができる。上記したように不純物が除去された清浄なガスは、ガス出口55から取りだされる。
【0034】
図3は本発明の水分含有ガスの不純物除去装置の他の
参考例を示すもので、この
参考例では、前記ガス入口54に、水分含有ガス53を圧縮する圧縮機77を備えた場合を示している。又、前記冷却流体入口56と冷却流体出口58との間に冷凍機78を備えた場合を示している。
【0035】
図3に示すように、水分含有ガス53を圧縮機77によって圧縮した後に冷却器本体52の冷却空間51に導入すると、圧縮された水分含有ガス53からは前記
参考例に比して多くのドレンDが分離されると共に、ガス中に含まれる不純物が低温のドレンDとの接触により効果的に除去されるようになる。このとき、加圧されたガス中の不純物は酸化が促進されるため、ドレンDに対する不純物の溶け込みがより高まるため効果的な除去が行われるようになる。
【0036】
又、前記冷凍機78を備えると、冷凍機78による低温の冷却流体57(冷却媒体)が冷却管59に供給されて水分含有ガス53が更に冷却されるので、前記水分含有ガス53から更に多くのドレンDが分離されるようになり、又、ガス中の不純物は温度が低いことによってドレンDに対する溶け込みが更に高まることにより効果的に除去される。
【0037】
図4は酸素燃焼装置からのガスの不純物を除去する不純物除去機構100の下流側に本発明に係る充填材内蔵冷却器を適用した水分含有ガスの不純物除去システムの実施例を示す概略構成図である。
【0038】
図4中1は、微粉炭を酸素燃焼する石炭焚ボイラ1a等からなる酸素燃焼装置であり、該酸素燃焼装置1からは二酸化炭素(CO
2)を主体とする排ガス2(水分含有ガス53)が排出される。このような酸素燃焼装置1からの排ガス2を二酸化炭素液化装置3に供給して液化するために、二酸化炭素液化装置3の前段に、二酸化炭素液化装置3での液化に必要な圧力、或いはその圧力に近い所定の圧力である目的圧力まで排ガス2を圧縮して排ガス2中の不純物を除去する不純物除去機構100を設けている。
【0039】
不純物除去機構100は、前記酸素燃焼装置1からの排ガス2を段階的に目的圧力まで圧縮する複数段の圧縮機4a,4b,4cと、各圧縮機4a,4b,4cで圧縮した排ガス2を夫々の後段で冷却し、冷却によって凝縮した水分をドレンとして取り出すようにしたアフタークーラ5a,5b,5c(冷却器)とを有する複数段(図示例では3段)の不純物分離機6a,6b,6cを有している。一般に、多段の圧縮機間に備えられるクーラはインタークーラと称されるが、本発明では説明を簡略化するため全てのクーラをアフタークーラ5a,5b,5cとして説明する。
【0040】
二酸化炭素を液化するために前記不純物分離機6a,6b,6cを色々な温度・圧力条件で運転した場合について検討した結果、
図4の実施例では二酸化炭素液化装置3に供給する前に、排ガス2を2.5MPaまで昇圧することが好ましいことが得られたため、2.5MPaを目的圧力とした。尚、目的圧力は任意に設定することができる。
【0041】
1台の圧縮機4では排ガス2を目的圧力である2.5MPaまで一気に昇圧することは効率的でないため、本実施例では、3台の圧縮機4a,4b,4cを設置して0.75MPa、1.5MPa、2.5MPaのように三段階に圧縮する不純物分離機6a,6b,6cを構成している。尚、前記圧縮機4a,4b,4cの設置台数(不純物分離機6a,6b,6cの設置数)は4台以上でもよく任意の台数を設置することができる。
【0042】
前記不純物除去機構100によれば、排ガス2中の不純物を効果的に除去することができるが、不純物除去機構100を経た二酸化炭素中における水銀(Hg)の濃度が、設定した目標値よりも高い場合には、不純物除去機構100の下流に水銀除去塔7を設置して吸着剤等により水銀を除去することができる。
【0043】
又、前記二酸化炭素液化装置3の上流側(水銀除去塔7の下流側)には、二酸化炭素液化装置3に供給する二酸化炭素に含まれる水分を除去するための乾燥機8を設けている。
【0044】
前記不純物除去機構100の最前段の不純物分離機6aにおいては、排ガス2中の殆どの水分がドレンD1として取り出されるようになり、中段の不純物分離機6bにおいてはドレンD1に比較して少量のドレンD2が取り出され、最後段の不純物分離機6cではドレンD2に比較して更に少量のドレンD3が取り出される。尚、前記各アフタークーラ5a,5b,5cで分離される不純物を含むドレンD1,D2,D3は通常、排水処理装置に供給されて処理される。
【0045】
前記アフタークーラ5a,5b,5cは、一般に海水を用いて排ガス2の冷却を行っており、これにより、
図4の実施例における最後段のアフタークーラ5cから取り出される排ガス2の温度は、通常35℃前後となっている。
【0046】
一方、本発明者は、前記不純物除去機構100の下流に設けられる乾燥機8による排ガスの乾燥を効率的に行うためには、乾燥機8に導く排ガスの温度を7℃前後まで冷却することが好ましいという知見を得た。乾燥機8に導く排ガスの温度を低下すると、乾燥機8での水の飽和温度が下がることにより乾燥機8による除湿効果が高まり、よって、乾燥機8を小型化できる。
【0047】
このため、
図4の実施例では、前記不純物除去機構100の下流側に、
図1に示す構成を備えた充填材内蔵冷却器50を設置すると共に、前記冷却流体入口56と冷却流体出口58との間に冷凍機78を配置して、冷却空間51を7℃前後に冷却するようにした。
【0048】
この充填材内蔵冷却器50では、前記不純物除去機構100からの温度35℃の排ガスを7℃まで冷却するため、充填材内蔵冷却器50においてもドレンDが取り出される。
【0049】
ここで、本発明者は、前記充填材内蔵冷却器50から取り出されるドレンDのpHを測定する試験を実施した。その結果、ドレンDのpHは継続して11以上を保持しておりpHが11から下がることはなく、常に高いpHを示すことが判明した。これは、前記不純物除去機構100での2.5MPaという高圧によって、水中のナトリウム、カルシウムが排ガス中の二酸化炭素(CO
2)に溶け込むことより重炭酸ナトリウム(CHNaO
3)及び重炭酸カルシウム(Ca(HCO
3)
2)等の生成が促進し、且つ、高圧の作用によってpH11以上が保持されたものと考えられる。
【0050】
従って、
図4の実施例では、充填材内蔵冷却器50から取り出されるpH11以上のドレンDは、アルカリ調整剤10として、前記不純物除去機構100におけるアフタークーラ5aの上流側に供給することで、前記不純物除去機構100による不純物除去性能を大幅に高められるという知見を得て、次のように構成した。尚、充填材内蔵冷却器50から取り出されるドレンDはpH11以上を有しているので、
図4におけるアルカリ剤添加装置70を省略することもできる。
【0051】
前記充填材内蔵冷却器50で発生したドレンDを受けるドレン受11を設け、該ドレン受11のドレンD(アルカリ調整剤10)を、ポンプ12を介し最前段の不純物分離機6aにおけるアフタークーラ5aの上流側に供給するようにしたアルカリ調整剤供給流路13を設ける。アルカリ調整剤供給流路13によって供給されるアルカリ調整剤10は、最前段の不純物分離機6aにおけるアフタークーラ5aの上流側に設けたノズル10'に供給され、該ノズル10'により排ガス2に混合される。ノズル10'の設置位置は、圧縮機4aとアフタークーラ5aの間の任意の位置とすることができる。
【0052】
更に、前記充填材内蔵冷却器50の上流側には前記排ガス2を冷却する補助冷却器9を設けている。前記補助冷却器9では排ガス2を冷却することによりpH11以上のドレンD4が発生するので、このドレンD4はドレン受14で受け、ポンプ15により前記補助冷却器9の下流側で前記アルカリ調整剤10に合流させる。前記充填材内蔵冷却器50からのドレンDは7℃前後の低い温度を有しているため、ドレンDは冷媒として前記アルカリ調整剤供給流路13により前記補助冷却器9に導いて排ガス2を冷却する。前記補助冷却器9ではドレンDの冷熱によって、35℃前後の排ガス2が例えば12℃前後に効果的に冷却されるようになる。従って、前記補助冷却器9を設置することにより、充填材内蔵冷却器50の負荷を低減する或いは充填材内蔵冷却器50を小型化することができる。
【0053】
又、最前段の不純物分離機6aにおけるアフタークーラ5aには、該アフタークーラ5aから取り出されるドレンD1を一定量貯留するようにしたドレンタンク16を設けている。前記ドレンタンク16にはレベル調節計17が設けてあり、該レベル調節計17は、検出レベルが常に一定値を保持するようにドレンタンク16のドレン出口(下流側)に設けた取出弁18の開度を調節する。前記ドレンタンク16には、該ドレンタンク16のドレンD1の一部をポンプ19により取り出して前記アルカリ調整剤供給流路13に供給するようにしたドレン供給流路20を設けている。
【0054】
前記アルカリ調整剤供給流路13には供給弁21が設けてあり、又、前記ドレン供給流路20には混合弁22が設けてあり、更に、前記ドレンタンク16にはドレンD1のpHを計測するpH検出器23が設けてある。そして、前記pH検出器23により検出したpH検出値24が制御器25に入力されており、制御器25は、前記pH検出値24が予め設定された設定値、例えばpH5に保持されるように、前記供給弁21及び混合弁22を調節してノズル10'に供給するアルカリ調整剤10のpH濃度を制御するようにしている。
【0055】
又、前記充填材内蔵冷却器50のガス出口55には、排ガス2中の不純物(例えば、硫黄酸化物、窒素酸化物)を検出する不純物検出器26が設置してあり、該不純物検出器26による不純物検出値27が前記制御器25に入力されている。そして、制御器25は、前記不純物検出器26による窒素酸化物の不純物検出値27が予め設定した設定値を超えたときは緊急時として、アルカリ調整剤10の供給量を増加するように前記供給弁21及び混合弁22を調節する制御を行うようになっている。又、前記水銀除去塔7にはバイパスダクト43が設けてあり、更に、前記水銀除去塔7に排ガス2を通す流れと通さない流れとに切り替える切替弁44,45が設けてあり、不純物検出値27による水銀の検出値が所定値より大きくなった場合には、前記制御器25からの指令により、切替弁44,45を切り替えて前記水銀除去塔7に排ガス2を通すようになっている。尚、
図4の不純物除去機構100によって十分な不純物除去効果が達成できる場合には、排ガス2を前記充填材内蔵冷却器50に通すことなく、バイパスライン79を介して充填材内蔵冷却器50の下流側へバイパスさせることができる。80、81、82は排ガス2を充填材内蔵冷却器50に通す場合と通さない場合とに切り替える切替弁である。
【0057】
図4に示す水分含有ガスの不純物除去システムでは、酸素燃焼装置1で酸素燃焼した二酸化炭素主体の排ガス2(水分含有ガス53)は、例えば0.1MPa(1気圧)の圧力で不純物除去機構100における最前段の不純物分離機6aの圧縮機4aに導かれ、該圧縮機4aによって0.7MPaに加圧される。圧縮機4aで0.7MPaに加圧された排ガス2は、隣接するアフタークーラ5aに供給されて冷却され、この冷却により、アフタークーラ5aからは多量のドレンD1が取り出される。このとき、最前段のアフタークーラ5aからは、排ガス2中の水溶性の不純物である硫黄酸化物、塩化水素及び煤塵の殆どが効果的に除去される。即ち、水溶性の不純物である硫黄酸化物及び塩化水素は、最前段のアフタークーラ5aから大量に取り出されるドレンD1と共に高い除去率で除去される。
【0058】
前記アフタークーラ5aで冷却された排ガス2は、後段(次段)の不純物分離機6bにおける圧縮機4bに導かれて1.5MPaに加圧され、1.5MPaに加圧された排ガス2は隣接するアフタークーラ5bにより冷却され、アフタークーラ5bからは前記アフタークーラ5aに比して少ない量のドレンD2が取り出される。そして、圧縮機4bで圧力が高められたことにより、次段のアフタークーラ5bからも少量のドレンD2と共に硫黄酸化物及び塩化水素の一部が除去される。
【0059】
前記アフタークーラ5bで冷却された排ガス2は、最後段の不純物分離機6cにおける圧縮機4cに導かれて2.5MPaに加圧され、圧縮機4cで2.5MPaに加圧された排ガス2は隣接するアフタークーラ5cにより冷却され、アフタークーラ5cからは前記アフタークーラ5bと比較して更に少ない量のドレンD3が取り出される。
【0060】
一方、最後段の不純物分離機6cの圧縮機4cでは排ガス2が2.5MPaに加圧されるため、排ガス2中に存在する一酸化窒素(NO)は加圧による酸化が促進されて水溶性の二酸化窒素(NO
2)に変わる。従って、前記アフタークーラ5cから取り出されるドレンD3と共に二酸化窒素(NO
2)の一部が除去される。
【0061】
更に、排ガス2は、前記不純物除去機構100の下流側に備えた充填材内蔵冷却器50に導入されて7℃前後に冷却されることによりドレンDが生成し、且つ、このドレンDはドレン循環装置68によりノズル63から噴射されるので、排ガス2が充填材61を流動する間に、排ガス2中の二酸化窒素(NO
2)はドレンDとの接触により効果的に除去される。従って、排ガス中の窒素酸化物は、充填材内蔵冷却器50によって高い除去率で除去されるようになる。
【0062】
上記において、前記充填材内蔵冷却器50で発生してドレン受11に貯留されたドレンDは、アルカリ調整剤10としてポンプ12によりアルカリ調整剤供給流路13を介し前記補助冷却器9に供給されて排ガス2の冷却を行った後、最前段の不純物分離機6aにおけるアフタークーラ5aの上流側のノズル10'から排ガス2に供給される。このように排ガス2のアフタークーラ5aの上流側にアルカリ調整剤10が供給されることにより、前記不純物除去機構100による特に排ガス2中の硫黄酸化物、塩化水素等の除去が効果的に行われるようになる。
【0063】
又、最前段のアフタークーラ5aから取り出されるドレンD1を貯留するドレンタンク16のドレンD1は、ドレン供給流路20により前記アルカリ調整剤供給流路13に供給してアルカリ調整剤10に混合される。前記アルカリ調整剤10に、前記ドレンD1が供給されることで、所定のpHに希釈されたアルカリ調整剤10がノズル10'に供給される。
【0064】
前記排ガス中の大量の硫黄酸化物がドレンD1に溶け込むと、ドレンD1のpHは著しく低下することになり(例えばpHが1となる)、ドレンD1が飽和状態となることによりドレンD1に対する硫黄酸化物の溶け込みが著しく低下することになって硫黄酸化物の除去効果が低下する。しかし、制御器25は、最前段のアフタークーラ5aから取り出されるドレンD1のpH検出値24が、設定値である例えばpH5に保持されるように、前記アルカリ調整剤供給流路13に設けた供給弁21及び前記ドレン供給流路20に設けた混合弁22を調節するので、アフタークーラ5aの雰囲気が高いpHに維持され、よって、ドレンD1により高い除去率で不純物が除去される。
【0065】
前記充填材内蔵冷却器50と補助冷却器9から取り出されてアルカリ調整剤10としてアフタークーラ5aの上流側に供給するpH11以上のドレンD4,Dは、ドレンD1のpHを設定値であるpH5に保持するのに十分な量を確保することができ、余剰のドレンD4,Dは、前記ドレン受11,14から排出され排水処理装置に供給されて処理される。
【0066】
又、最後段の不純物分離機6cにおけるアフタークーラ5cの下流側に備えた不純物検出器26からの硫黄酸化物の不純物検出値27が制御器25に入力されており、該制御器25は、硫黄酸化物の不純物検出値27が予め設定した設定値を超えたときにアルカリ調整剤供給流路13によるアルカリ調整剤10の供給を増加するように制御するので、前記充填材内蔵冷却器50出口の不純物が増加する問題を防止することができる。
【0067】
又、レベル制御器73はレベル計71で検出する前記ドレン溜め62のドレンDのレベルが一定に保持されるように制御しているので、前記ドレン溜め62のドレンDをドレン循環装置68により確実に循環させて噴射することができる。
【0068】
又、前記ドレン溜め62のドレンDのpHを設定値に保持するようにしたアルカリ剤制御器76を有するので、ドレンDのpHを一定に保持して、充填材内蔵冷却器50による不純物除去効果を一定に保持することができる。
【0069】
上記したように、不純物除去機構100の下流側に充填材内蔵冷却器50を備えた本発明の水分含有ガスの不純物除去システムによれば、不純物除去機構100による不純物の除去効果に加えて、充填材内蔵冷却器50による不純物の除去効果が発揮されるので、確実な不純物除去を達成することができる。更に、充填材内蔵冷却器50によって生じたドレンDをアルカリ調整剤10として不純物除去機構100に導くことにより、新たなアルカリ材を供給することなしに、不純物除去機構100による不純物の除去効果を高めることができる。
【0070】
尚、本発明の水分含有ガス
の不純物除去システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。