特許第6107466号(P6107466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6107466トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法
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  • 特許6107466-トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107466
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/389 20060101AFI20170327BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   C07C17/389
   C07C21/18
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-133058(P2013-133058)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-28801(P2014-28801A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-145381(P2012-145381)
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152593
【弁理士】
【氏名又は名称】楊井 清志
(72)【発明者】
【氏名】井村 英明
(72)【発明者】
【氏名】高田 直門
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正宗
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−083818(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/045559(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0266750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00−21/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
23ClF2、CF3CH2CHClF、CF3CH2CHF2、CHF2CH=CF2、CF3CH=CHCl、CF3CH=CH2、CF3C≡CHおよびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物を含む組成物と、
X型ゼオライトを接触させその不純物含有量を低減させる工程を含み、
前記X型ゼオライトが、塩素イオンを含まないイオン交換水もしくは純水にゼオライトを浸漬し接触洗浄後に乾燥したX型ゼオライト、またはKF、NaFおよびCsFからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリ金属フルオライドの濃度0.1質量%以上、5質量%以下の水溶液に浸漬し乾燥させたX型ゼオライトである、
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【請求項2】
不純物の1種が、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたはCF3CH2CHF2である、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
23ClF2、CF3CH2CHClF、CF3CH2CHF2、CHF2CH=CF2、CF3CH=CHCl、CF3CH=CH2、CF3C≡CHおよびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる群より選ばれる少なくとも一種の不純物を含む組成物と、
X型ゼオライトを接触させその不純物含有量を低減させる
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製工程を含み、
前記X型ゼオライトが、塩素イオンを含まないイオン交換水もしくは純水にゼオライトを浸漬し接触洗浄後に乾燥したX型ゼオライト、またはKF、NaFおよびCsFからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリ金属フルオライドの濃度0.1質量%以上、5質量%以下の水溶液に浸漬し乾燥させたX型ゼオライトである、
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒、作動流体、発泡剤、医農薬中間体、電子材料および含フッ素樹脂原料等に有用であるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法およびそれを用いたトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは分子内に二重結合を含むので、大気中で速やかに分解し、オゾン層破壊および地球温暖化等への影響の懸念のない環境適応型フロンである。また、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは含フッ素オレフィンであり、シストランス異性体が存在する。以下、識別番号および付加記号を用いてトランス体を1234zeE、シス体を1234zeZ、トランス体とシス体を区別しない場合または混合物は1234zeと呼ぶことがある。
【0003】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)の製造方法として、特許文献1〜特許文献3に記載の方法が挙げられる。
【0004】
特許文献1にはクラウンエーテル存在下、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(以下、245faと呼ぶことがある)と水酸化カリウム水溶液を反応させる1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、気相中、触媒存在下、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を脱フッ化水素反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)を製造する方法において、ジルコニウム化合物を金属酸化物または活性炭に担持したジルコニウム化合物担持触媒を用いる、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(以下、240と呼ぶことがある)に、フッ化水素を反応させることにより、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、1233zdと呼ぶことがある)を得る工程と、得られた1233zdに、気相中、フッ素化触媒存在下、フッ化水素を反応させることにより、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)を得る工程を含む、1234zeの製造方法が開示されている。前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)にはシストランス異性体が存在する。以下、トランス体を1233zdE、シス体を1233zdZ、トランス体シス体を区別しない場合または混合物は1233zdと呼ぶことがある。
【0007】
また、冷媒、作動流体、発泡剤、医農薬中間体または電子材料分野において、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を使用する場合、1234zeEは、不純物を含まず高純度であることが好ましい。冷媒、作動流体、発泡剤用途において、特にカーエアコンの冷媒として用いる場合、高純度の1234zeEが好まれる。
【0008】
特に、1234zeEに、不純物として、飽和化合物であるCFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ヒドロクロロフルオロカーボン)またはHFC(ヒドロフルオロカーボン)が混入することは好ましくない。これらの化合物の中には、大気中で安定であり、オゾン層破壊または地球温暖化の原因となるもの、また毒性を示すものがある。よって、1234zeEが、これらの化合物を不純物として含む場合、除去する必要があるという問題があった。
【0009】
1234zeEに混入する不純物として、例えば、飽和化合物である142(CClF(推定構造CFHCHCl))、244fa(CFCHCHClF)、および245fa(CFCHCHF)を例示することができ、不飽和化合物である1234zc(CHFCH=CF)、1243zf(CFCH=CH)、CFC≡CH、1233zd(CFCH=CHCl)またはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeZ、シスCFCH=CHF)を例示することができる。以下、これらの化合物を識別番号で呼ぶことがある。
【0010】
ゼオライトまたはアルミナ等の固体吸着剤は、フッ素化飽和炭化水素またはフッ素化不飽和炭化水素に含まれる、フッ化水素およびアルコール等を吸着低減し、フッ素化炭化水素またはフッ素化不飽和炭化水素の純度を上げることができる。このような固体吸着剤に、フッ素化炭化水素およびフッ素化不飽和炭化水素に含まれるフッ化水素を吸着し低減する方法が特許文献4に、アルコールを吸着し低減する方法が特許文献5に開示されている。特許文献6には、フルオロプロペンを含んでなる流体を乾燥させる方法であって、前記流体を、開口部の最大寸法を横切るサイズが3オングストローム〜5オングストロームである開口部を有する分子篩を含んでなる乾燥剤と接触させる方法が開示されている。
【0011】
特許文献4〜6に記載の方法の様に、ゼオライトの細孔に、フッ化水素またはアルコール等の小さい分子だけを選択的に吸着させることは公知である。しかしながら、目的物と分子の構造および大きさが類似の不純物を、ゼオライトを用い選択的に吸着除去する方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−504097号公報
【特許文献2】特開2008−19243号公報
【特許文献3】特開2010−100613号公報
【特許文献4】特開2002−047218号公報
【特許文献5】特開2000−229894号公報
【特許文献6】特表2009−514902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、高純度のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を得る精製方法を提供する。
【0014】
すなわち、1234zeE中の不純物としての前記142(CClF)、244fa(CFCHCHClF)、245fa(CFCHCHF)、1234zc(CHFCH=CF)、1243zf(CFCH=CH)、CFC≡CH、1233zd(CFCH=CHCl)またはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeZ、シスCFCH=CH)を含む純度の低いトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)から、これら不純物を効率的に除くことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題に鑑み、本発明者らが鋭意検討したところ前記不純物を含むトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)と、固体吸着剤を接触させると、これらの不純物は構造や大きさが1234zeEに似ているにも関わらず、意外にもこれら不純物を効率的に低減できることを見出した。特に固体吸着剤の中でも、極性の高いシリカアルミナ系化合物が効果的に吸着し、ゼオライトがより効果的に吸着し、中でもA型ゼオライトとX型ゼオライトが特異的に吸着することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明は、発明1〜5を含む。
【0017】
[発明1]
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
ClF、CFCHCHClF、CFCHCHF、CHFCH=CF、CFCH=CHCl、CFCH=CH、CFC≡CHおよびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種の不純物を含む組成物と、
固体吸着剤を接触させその不純物含有量を低減させる工程を含む
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製方法。
【0018】
[発明2]
不純物の一種が、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたはCFCHCHFである、請求項1に記載の精製方法。
【0019】
[発明3]
固体吸着剤がA型ゼオライトまたはX型ゼオライトである、請求項1または請求項2に記載の精製方法。
【0020】
[発明4]
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
ClF、CFCHCHClF、CFCHCHF、CHFCH=CF、CFCH=CHCl、CFCH=CH、CFC≡CHおよびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる群より選ばれる少なくとも一種の不純物を含む組成物と、
固体吸着剤を接触させその不純物含有量を低減させる
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの精製工程を含む、
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0021】
[発明5]
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
ClF、CFCHCHClF、CFCHCHF、CHFCH=CF、CFCH=CHCl、CFCH=CH、CFC≡CHおよびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物を含む組成物と
固体吸着剤を含む、固液不均一混合物。
【発明の効果】
【0022】
本発明の精製方法および製造方法によると、簡便な操作でトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)中の不純物を低減でき、高純度化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】循環方式の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の精製方法において、「トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)中の不純物含有量を低減する」とは、142(CClF)、244fa(CFCHCHClF)、245fa(CFCHCHF)、1234zc(CHFCH=CF)、1233zd(CFCH=CHCl)、1243zf(CFCH=CH)、CFC≡CHまたはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeZ、シスCFCH=CHF)からなる群より選ばれる少なくとも一種の不純物の含有量を固体吸着剤との接触によって、50%以下に低減することをいい、好ましくは10%以下に低減することである
[トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の精製方法]
本発明の精製方法において、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)に、不純物である142、244fa、245fa、1243zf、1234zc、1233zdおよび1234zeZからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む組成物を「粗1234zeE」と呼ぶことがある。粗1234zeEは、どの様な経緯で得られた組成物であってもよい。また、組成比は特に限定されないが、1234zeEが主成分、即ち、50質量%以上であることが望ましい。
【0025】
粗1234zeEは、例えば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)とフッ化水素を反応させる工程で得られる反応生成物、またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の異性化反応によって得られる反応生成物であってもよく、または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を脱フッ化水素することで得られる反応生成物であってもよい。
【0026】
粗1234zeEは、前記反応混合物を公知の精製方法で精製したものであってもよい。精製方法としては、水または液体による洗浄、乾燥、通常の蒸留または抽出蒸留等を例示することができる。
【0027】
また、本発明の精製方法では、溶媒、洗浄剤、溶剤、冷媒、熱媒、作動流体または発泡剤等の用途にトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を用いた後に回収された、前記いずれかの不純物を含む使用済みのトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(粗1234zeE)も精製可能である。
【0028】
通常、これら粗1234zeEにおいて、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の組成は80質量%以上、99.9999質量%以下、当該不純物およびその他の不純物のトータルが0.0001質量%以上、20質量%以下である。当該不純物の総量は少なければ少ないほど好ましいが、通常0.0001質量%以上、10質量%以下が好ましい。
【0029】
さらに、当業者の所望により当該不純物やその他の成分を添加した粗1234zeEにも、本発明の精製方法は適応可能である。この場合、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の濃度が90質量%以上、当該不純物の総量が、10質量%以下が望ましい。
【0030】
粗1234zeEに含まれるそれぞれの有機物の含有量には特に限定はなく、例えば、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)が20質量%程度で、前記不純物の総量が0.1質量%程度であっても、残りの79.9質量%が蒸留で分離できる溶媒または高沸成分であれば、本発明の精製方法に適用できる。不純物を固体吸着剤で低減した後に蒸留操作を行うことで高純度のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を得ることができる。本発明の精製方法を行う前に、組成物に含まれる水は乾燥剤を用い除去することが好ましい。乾燥剤としては、3Aゼオライトまたは4Aゼオライトを挙げることができる。
【0031】
また、汎用関数B3LYP//6−31G*を用いた計算化学的手法で、1234zeEおよび前記不純物の、分子サイズの指標である分子量、スペースフィリングモデルにおける分子表面積または分子体積を計算したところ、これらの計算値と実際の吸着特性の間に相関は認められなかった。
【0032】
しかしながら、前記計算化学的手法を用いて、1234zeEおよび前記不純物のダイポールモーメントを求めたところ、1234zeEのダイポールモーメントは特異的に小さい(1.29debye)ことがわかった。このことより、特許文献4〜6に記載のように、吸着剤が径が小さい分子を選択的に吸着しているのではなく、固体吸着剤はダイポールモーメントが大きい不純物を選択的に吸着しているものと思われる。このような固体吸着剤の特性によって、特異的に小さいダイポールモーメントを有する1234zeEの精製が可能と成ったと思われる。
【表1】
【0033】
尚、ダイポールモーメントは計算化学的手法により、分子内の電子分布を計算することによって求められる。シュレジンジャーの波動方程式を解くと電子分布が求められるが、現在の技術水準では仮定なしで、波動方程式を解くことができない。よって、仮定によって、計算結果が異なるので、ダイポールモーメントを比較するときは、同じ手法で計算した値で比較すべきである。計算化学の手法は色々あるが、CPUコスト(計算の速さ)と結果の信頼性のバランスが取れた特に密度汎関数法(DFT法)で求められたダイポールモーメントを用いることが好ましい。特に、B3LYP//6−31G*か、それ以上の精度の計算で求められたダイポールモーメントを参照することが好ましい。
【0034】
[固体吸着剤]
本発明の精製方法において使用される固体吸着剤としては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、粘土、活性炭またはこれらの複合剤や混合物が好ましい。また、当業者の所望によりこれらを組み合わせて使用することができる。
【0035】
アルミナについては、無定形アルミナ、結晶性アルミナ、アルミナ水和物等を使用することができる。これらのうち、結晶性の低いアルミナが好ましく、例えば、触媒用に市販される日揮科学株式会社製、商品名N612Nを例示することができる。
【0036】
シリカについては、無定形シリカ、結晶性シリカまたはシリカ水和物等を用いることができる。具体的には、シリカゲルが例示される。市販品としては、例えば、富士デビソン株式会社製、商品名、CARiACT、Q−15を挙げることができる。
【0037】
シリカ−アルミナ系の固体吸着剤としては、ゼオライトや粘土(例アロフェン)が例示される。
【0038】
ゼオライトは、国際ゼオライト学会で定義されたゼオライトでも、国際鉱物学連合で定義されたゼオライトでも使用可能である。国際ゼオライト学会では、ゼオライトは「開かれた3次元ネットワークを形成する組成ABn(n≒2)の化合物で、Aが4本、Bが2本の結合をもち、骨格密度が20.5以下の物質」と定義されている。
【0039】
国際鉱物学連合では、ゼオライトは「カチオンに4つの酸素が配位する四面体が連結した骨格構造で特徴づけられる結晶物質である。その構造は、孔路や空孔から構成される外に開かれた、すなわちゲスト分子を通すことができる大きさの細孔を有する。孔路や空孔は、通常分子や交換性カチオンによって占められている。四面体の頂点酸素の1つをOH基、F基で占有することにより、骨格の連続が不連続になることもある。」の条件を満たすものであると定義されている。
【0040】
本発明に適した固体吸着剤は国際ゼオライト学会がゼオライトとしてデータベースに収録されたものを用いることが好ましい。具体的には、フォージャサイト型、シャバサイト型またはモルデナイト型等の構造のものを使用することができる。フォージャサイト型ゼオライトとしては、フォージャサイト等の天然ゼオライト、3A、4A、5A等のA型ゼオライト、10X、13X等のX型ゼオライト、Y型等の合成ゼオライトを例示することができ、これらのゼオライトを組み合わせて使用することもできる。シャバサイト型ゼオライトとしては、シャバサイト、グメリナイト、エリオナイト、レビナイトなどの天然ゼオライト、R型、S型、またはT型の合成ゼオライトを例示することができる。モルデナイト型ゼオライトとしては、天然産または合成品のモルデナイト、クリノプチロライト等を例示することができる。
ゼオライトの場合、天然品でも人工合成品でも使用可能であるが、品質が安定している人工合成品が好ましい。
【0041】
活性炭については、植物質系、石灰質系、石油系の活性炭を使用することができる。特に、木材、木炭、椰子殻炭を原料とする植物質系、瀝青炭、亜炭などを原料とする石灰質活性炭が好適に使用される。活性炭の場合、単独では極性が低いので、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナと併用したり、これらをドープして複合素材として用いることが好ましい。
【0042】
これらの固体吸着剤の内、品質の安定した人工合成品が工業的に入手できる人工合成ゼオライトが特に好ましい。モレキュラーシーブス(TM、以下同じ)と呼ばれているA型またはX型ゼオライトは入手性に優れている。K(カリウム)置換されたA型ゼオライト(MS−3A、KA、モレキュラーシーブス3Aと呼ばれている)、Na(ナトリウム)置換されたA型ゼオライト(MS−4A、NaA、モレキュラーシーブス4Aと呼ばれている)、Ca(カルシウム)置換されたA型ゼオライト(MS−5A、CaA、モレキュラーシーブス5Aと呼ばれている)、Ca置換されたX型ゼオライト(MS−10X、CaX、モレキュラーシーブス10Xと呼ばれている)、Na置換されたX型ゼオライト(MS−13X、NaX、モレキュラーシーブス13Xと呼ばれている)がよく、特に、カリウムイオンやナトリウムイオンに置換されたX型ゼオライトである10Xと13Xは好ましい固体吸着剤である。
【0043】
また、本発明の精製方法において、天然ゼオライト、合成ゼオライトにかかわらず、焼成、酸接触、塩基接触、またはイオン交換等によって変性されたゼオライトも使用可能である。イオン交換に適したイオンは、アルカリ金属のイオンまたはアルカリ土類金属のイオンである。アルカリ金属のイオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオンまたはセシウムイオンを例示することができる。アルカリ土類金属のイオンとしては、例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオンまたはバリウムイオンを例示することができる。
【0044】
合成ゼオライトにおいては、当業者の所望により、処方を変えることによって、細孔分布やSi/Al比やその他の金属の含有量を変化させることも可能である。
【0045】
[吸着]
固体吸着剤の種類によっては、塩素原子を含有または吸着しているものがある。これに,1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)を接触させその不純物含有量を低減させると1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)が発生することがある。固体吸着剤と接触する際、粗1234zeEは気体であっても液体であってもよいが、気体の場合は顕著に1233zdが発生することがある。
【0046】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)の発生を抑制する手段は、予めゼオライトを洗浄し塩素原子を除去することである。
【0047】
洗浄方法は、塩素イオンを含まないイオン交換水または純水にゼオライトを浸漬する、接触洗浄後に乾燥する等の処理が有効である。特に、KF、NaFおよびCsF等のアルカリ金属フルオライドの濃度0.1質量%以上、5質量%以下の水溶液を用いることがより効果的である。特に、より高純度のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を得たい場合に有効である。しかしながら、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)も二重結合を含み、実質的に地球温暖化やオゾン層破壊の原因となる懸念がない物質なので、1233zdが含まれてよければ、前記ゼオライトの洗浄を省略することができる。
【0048】
本発明の精製方法に用いる、不純物の固体吸着剤としてのゼオライトは、粉末、顆粒または造粒品等、何れの形状のものを用いてもよいが、充填塔に用いる場合、球状または棒状のものが取り扱いやすく好ましい。粗1234zeEと固体吸着剤の接触方式は特に限定されないが、容器中の粗1234zeEに固体吸着剤を投入し、所定時間接触させその不純物含有量を低減させるバッチ方式、固体吸着剤を充填した設備(以下、「吸着塔」ということもある)に粗1234zeEを通過させる流通方式等を例示することができる。流通方式における接触においては、粗1234zeEを循環させることも可能である。カラムに吸着剤をつめて粗1234zeEを流通させる場合、圧力損失が少ないビーズまたはペレット状に成形された固体吸着剤を用いることが好ましい。粗1234zeEを循環させる方法としては、例えば、図1に示すように、粗1234zeEを充填したタンク1内の粗1234zeEをライン2により、固体吸着剤を充填した吸着塔3に通液し、送液ポンプ4で循環させる方法等を用いることができる。
【0049】
尚、本発明の精製方法において、粗1234zeEを固体吸着剤と接触させ、その不純物含有量を低減させる際、粗1234zeEは気体であっても液体であってもよいが、液体状態で接触させその不純物含有量を低減させる方が不純物を吸着する処理量が多く生産性がよいので好ましい。
【0050】
バッチ方式での不純物の吸着操作に要する時間は、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)と固体吸着剤の存在比、吸着する際の温度、不純物の初期濃度、目標とする吸着後の濃度、吸着剤の種類および形状等に依存するが、通常5分以上、48時間以下であり、30分以上、6時間以下が好ましく、60分以上、3時間以下がより好ましい。操作時間が短い場合、不純物の濃度が十分に低下しないことがある。一般に不純物の濃度は、吸着操作の初期に急激に低下して、その後は、徐々に低下する傾向がある。よって、過度に長い時間をかける必要性はない。この際、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)と固体吸着剤との存在比は、吸着する際の温度、不純物の初期濃度、目標とする吸着後の濃度、吸着剤の種類および形状等に依存するが、1234zeE/固体吸着剤が質量比で1以上、30以下であることが好ましい。
【0051】
吸着操作の際の温度は、特に限定されないが、−50℃以上、30℃以下が好ましく、特に−30℃以上、10℃以下が好ましい。30℃より高い場合、1234zeEの沸点が−19℃であるので、圧力が高くなることがある。また、−50℃より低い温度に冷却するには、特殊な冷凍装置が必要となり設備費、運転費が高くなるので、経済的に好ましく、−50℃より低い温度に冷却する必要性はない。
【0052】
吸着時の圧力は、バッチ式においても流通式においても、特に限定されない。常圧近傍での操作が簡便であるが、必要に応じてポンプを用い圧縮する、窒素を加え加圧することもできる。特に吸着塔内に粗1234zeEを流通させるために、ポンプを用いて、粗1234zeEを液状で圧送することは、工業的に常套手段であり、本発明の精製方法において用いるのに好ましい。圧送する場合、任意の圧力で加圧することができる。過剰に高圧に加圧すると、高価な耐圧装置が必要となるので、圧力は−0.05MPa以上、+1.0MPa以下であることが好ましい。
【0053】
流通方式の場合、吸着条件は、流通回数、固体吸着剤の種類および状態、固体吸着剤の充填量、吸着塔のディメンジョン(内径、長さ)、吸着温度、流通速度に依存する。吸着塔は、長さ/内径比が3以上、200以下、好ましくは4以上、50以下が好ましい。長さ/内径比が小さい場合は、固体触媒に吸着される不純物の除去が十分でないことがある。また、長さ/内径比が極端に大きい場合は、圧力損失が大きくなる。例えば、流通回数が1回の場合、吸着塔内の粗1234zeEの滞留時間は1分以上、120分以下であることが好ましい。また、液状の粗1234zeEの線速(空塔線速)は1cm/hr以上、10m/hr以下、好ましくは2cm/hr以上、5m/hr以下である。線速が1cm/hrより遅いと不純物の吸着処理時間が長くなることにより、効率が低下するので好ましくなく、10m/hrを越えると十分に不純物が除去されないことがある。
【0054】
固体吸着剤は使用前のフレッシュな状態では、吸着できる量および吸着速度ともに大きいが、多くの不純物を吸着した後の状態では低下する。この場合は、脱着操作と呼ばれる手法で固体吸着剤を再生することができる。具体的には、吸着塔内の液体を除去した後、減圧することによって、固体吸着剤を再生することができる。この際、吸着塔内を減圧後に加熱してもよい。減圧後、加熱することは任意であるが、加熱する場合の温度は、30℃以上、300℃以下が好ましい。また、脱着処理時に生成したガス分を冷却捕集することによって、固体吸着剤が吸着していた不純物の濃縮物を得ることができる。
【0055】
[固液不均組成物]
当業者の所望により、粗1234zeEの保管・輸送用の容器に、固体吸着剤を導入し、粗1234zeEと固体吸着剤との固液不均一混合物として保管、輸送することもできる。
【0056】
尚、本発明における固液不均一混合物とは、CClF(142)、CFCHCHClF(244fa)、CFCHCHF(245fa)、CHFCH=CF(1234zc)、CFCH=CHCl(1233zd)、CFCH=CH(1243zf)、CFC≡CHおよびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeZ)からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機物とトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を含む組成物と固体吸着剤を含む、固液不均一混合物である。
【0057】
例えば、本発明において、ステンレス鋼製の容器を用いて、粗1234zeEを保管、輸送または販売する場合、容器内に固体吸着剤を添加することで、CClF(142)、CFCHCHClF(244fa)、CFCHCHF(245fa)、CHFCH=CF(1234zc)、CFCH=CHCl(1233zd)、CFCH=CH(1243zf)、CFC≡CHまたはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeZ)等の不純物が低減された、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)を提供することが可能となる。
【0058】
この際の粗1234zeEと固体吸着剤の質量比は、実施の様態、固体吸着剤の嵩比重に依存するため適宜検討すればよいが、粗1234zeE/固体吸着剤の質量比が0.1以上、200以下であることが好ましく、さらに好ましくは1以上、100以下である。粗1234zeE/固体吸着剤の質量比は5以上、50以下が好ましく、8以上、40以下がさらに好ましい。質量比が0.1よりも小さいと、過剰の固体吸着剤が必要となるだけでなく、容器に充填できるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の量が少なくなるので好ましくない。質量比が200よりも大きいと十分な吸着効果が得られないことがある。
【0059】
容器内に前記固液不均一混合物を保管・輸送を行う場合は、低温且つ低湿度の環境が望ましい。具体的には−50℃以上、25℃以下であり、好ましくは−20℃以上、5℃以下である。25℃よりも高い場合は、保存期間によって、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)が変性することがある。−50℃よりも低い温度を維持することは経済的ではない。また、高湿度の場合、金属容器が湿気によって腐食する、容器の開閉時に水分が容器内に入ることが懸念されるので、好ましくない。
【0060】
また、前記流通方式においても、流通を止めて、吸着塔内に粗1234zeEを留めることで、前記固液不均一混合物として保管し、固体吸着剤に不純物を吸着させて、粗1234zeEを高純度化することも可能である。この場合の粗1234zeEと固体吸着剤の存在比は、特に限定されるものではないが、質量比で表わして、粗1234zeE/固体吸着剤が0.1以上、3以下であると好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、具体的に実施例を示してより詳細に、本発明のトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の精製方法を説明するが、本発明の精製方法の実施態様はこれに限定されるものではない。トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)および前記不純物の組成比は、別途注釈のない限り、FID検出器によるガスクロマトグラフィにより測定し、記録された「面積%」を「%」と表示した。
【0062】
固体触媒として用いたゼオライト1〜7を以下に列記する。ゼオライト1〜5は市販品を、ゼオライト6、7はゼオライト2を活性化処理したものを用いた。尚、モレキュラーシーブス、ゼオラムは商標である。
【0063】
〔ゼオライト1〕
A型ゼオライトCa型(以下、CaAと呼ぶことがある。)
和光純薬株式会社製 商品名、モレキュラーシーブス 5A ペレット(1/16)
〔ゼオライト2〕
X型ゼオライト、Na型(以下、NaXと呼ぶことがある。)
和光純薬株式会社製 モレキュラーシーブス 13X ペレット(1/16)
〔ゼオライト3〕
X型ゼオライト、Li型、ローシリカ−ハイアルミナ(以下、LiXと呼ぶことがある。)
東ソー株式会社製 ゼオラム NSA700 ペレット (1.5mmφ)
〔ゼオライト4〕
X型ゼオライト、Ca型(以下、CaXと呼ぶことがある。)
東ソー株式会社製 ゼオラム SA600A ペレット (1.5mmφ)
〔ゼオライト5〕
X型ゼオライト、Na型(以下、NaXと呼ぶことがある。)
東ソー株式が社製 ゼオラムF9ペレット (14〜34メッシュ (約1mm))
〔ゼオライト6〕
NaX−NaF水溶液処理
フッ化ナトリウム15.2gを、イオン交換水3784.8gに溶かしてフッ化ナトリウム水溶液を調製した。フッ化ナトリウム水溶液にゼオライト2を20g添加した後、室温(約20℃)下で1時間静置した。水溶液よりゼオライトを濾別して、イオン交換水4000gを循環させつつゼオライトに掛け続け、4時間洗浄した。洗浄後のゼオライトは、オーブンで200℃に保持し、24時間かけて乾燥させた。冷却後、電子レンジを用い出力600Wで3分間加熱した後、シリカゲルとともに、デシケーターで保存した。
【0064】
〔ゼオライト7〕
NaX−イオン交換水処理
イオン交換水4000gにゼオライト2を20g加えた後、室温下で1日間静置した。ゼオライトを濾別した後、イオン交換水(4000g)を循環させつつゼオライトに掛け続け、4時間洗浄した。洗浄後のゼオライトは、オーブンで200℃に保持し、24時間かけて乾燥させた。冷却後、電子レンジを用い出力600Wで3分間加熱した後、シリカゲルとともにデシケーターで保存した。
【0065】
実施例1
(固体吸着剤にゼオライト1 CaAを使用した例)
ストップバルブを備えた内容量50ccのステンレス鋼製の容器A(吸着実験容器)および容器B(粗1234zeE仕込み用容器)を用意した。容器Aにゼオライト1を6g仕込み、真空ポンプで減圧しバルブを閉じて、ドライアイスアセトン浴に浸漬し冷却した。
【0066】
次いで、30gの粗1234zeEが充填された容器Bを液体窒素で冷却して、粗1234zeEを凍結した後、真空ポンプを用いて減圧後バルブを閉じた。
【0067】
20℃に制御された恒温槽に容器Bを浸漬し静置した。1時間後、気相部をガスクロマトグラフィで分析して、ゼオライト1による吸着処理前の粗1234zeEの組成を求めた。
【0068】
その後、容器Bを恒温槽から取り出し、前述の容器Aを下側に、容器Bを上側に接続し、容器Aおよび連結部の空気を、真空ポンプを用い除去した後、連結部のボールバルブを開けて容器Bの粗1234zeEの全量を容器Aに移し、粗1234zeEとゼオライト1を接触させた。ボールバルブを閉じた後、ステンレス容器Aをドライアイスアセトン浴から取出し、20℃の恒温槽内に静置した。3時間後、容器Aの気相部をガスクロマトグラフィで分析して、ゼオライト1による不純物の吸着効果を確認した。結果を表2に示す。
【0069】
ゼオライト1との接触により、CFC≡CHが8ppmから4ppmに、1243zfが11ppmから4ppmにまで低減できることを確認した。(表1において、「0.0000」は「検出されず」を表す)。
【0070】
実施例2
(固体吸着剤にゼオライト2 NaXを使用した例)
ゼオライト1(CaA)の替わりにゼオライト2(NaX)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で、粗1234zeEの不純物の吸着除去を行った。結果を表2に示す。粗1234zeEにゼオライト2(NaX)を接触させた結果、1243zf、245fa、および1234zeZの著しい低減効果が認められた。また、その他不純物も検出下限まで低減されただけでなく、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)が、99.8674%から99.9924%まで高純度化された。
【0071】
実施例3
(固体吸着剤にゼオライト3 LiXを使用した例)
固体吸着剤にゼオライト3(LiX)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で、粗1234zeE中の不純物の吸着除去を行った。結果を表2に示す。同様に不純物が除去され、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の純度が上がっていた。
【0072】
実施例4
(固体吸着剤にゼオライト4 CaXを使用した例)
固体吸着剤にゼオライト4(CaX)を用いた以外、実施例1と同様の手順で、粗1234zeE中の不純物の吸着除去を行った。結果を表2に示す。同様に不純物が除去され、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の純度が上がっていた。
【表2】
【0073】
実施例5
ゼオライト2(NaX)5gと、表2に示す組成の粗1234zeEを用いた以外、実施例1と同様の手順で、粗1234zeE中の不純物の吸着除去を行った。結果を表23に示す。同様に不純物が除去され、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の純度が上がっていた。
【表3】
【0074】
実施例6
ゼオライト2(NaX)5gと、表3に示す組成の粗1234zeEを用いた以外、実施例1と同様の手順で、粗1234zeE中の不純物の吸着除去を行った。結果を表3に示す。トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)の純度が上がっていた。
【表4】
【0075】
実施例7
内径10mmφ、長さ400mmのステンレス鋼製チュープに、ゼオライト6を15g充填し、両端に米国スウェージロック(Swagelok)社製の孔径230μmのフィルターを設置して縦置きした。充填したゼオライト6の管内の充填高さは325mmである。表4に示すように、粗1234zezを気体状で5cc/分の速度で、管の下部から供給し流通させた。42時間後に、上部の出口から排出されるガスをガスクロマトグラフィで分析した結果を表4に示す。1233zdの発生がなく、99.99%以上の高純度トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)が得られた。
【0076】
実施例8
前記、ゼオライト7を用いる以外、実施例7と同じ実験を行った。42時間後に同様に分析した結果を表4に示す。1233zdの発生がなく、99.99%以上の高純度トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234zeE)が得られた。
【表5】
【符号の説明】
【0077】
1 粗1234zeEを充填したタンク
2 ライン
3 固体吸着剤を充填した吸着塔
4 送液ポンプ
図1