特許第6107487号(P6107487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6107487N2O分解触媒及びそれを用いたN2O含有ガスの分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107487
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】N2O分解触媒及びそれを用いたN2O含有ガスの分解方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/66 20060101AFI20170327BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20170327BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   B01J23/66 AZAB
   B01J23/63 A
   B01D53/94 222
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-143312(P2013-143312)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-16394(P2015-16394A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿幸
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−509984(JP,A)
【文献】 特表2001−524030(JP,A)
【文献】 米国特許第05612009(US,A)
【文献】 特表2006−527065(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/110622(WO,A1)
【文献】 特開昭56−011067(JP,A)
【文献】 特開2009−022929(JP,A)
【文献】 特開2006−272240(JP,A)
【文献】 特開2010−214326(JP,A)
【文献】 特開平09−150036(JP,A)
【文献】 特開平06−246135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体とを含んでいるNO分解触媒にO含有ガスを200℃以下の温度で接触させるとともに、前記NO含有ガスを前記NO分解触媒に接触させる前又は/及び前記NO含有ガスを前記NO分解触媒に接触させるときに水素含有ガスを前記NO含有ガスに間欠的に供給してNOを分解せしめることを特徴とするNO含有ガスの分解方法。
【請求項2】
前記水素含有ガスを、Hの総容量がNOの総容量の2倍以上であり且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすように供給することを特徴とする請求項に記載のNO含有ガスの分解方法。
【請求項3】
前記活性金属の酸化物分解温度が、不活性雰囲気中で500℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のNO含有ガスの分解方法。
【請求項4】
前記担体が、Zr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のNO含有ガスの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガス中に含まれる亜酸化窒素(NO)は、成層圏で分解して一酸化窒素を生成し、また高い温室効果を示すことから、その効率的な分解除去方法の開発が望まれ、各種のNO分解触媒や分解装置及び分解方法が研究されている。
【0003】
例えば、特開2009−22929号公報(特許文献1)には、水素の酸化触媒成分と亜酸化窒素の還元触媒成分とが、両触媒成分間を電子が移動し得るように接合され、且つ前記接合とは別個に両触媒成分間をプロトンが移動し得るプロトン導電性固体電解質で接合されてなることを特徴とする水素の存在下で亜酸化窒素を分解する亜酸化窒素の分解触媒、それを備える亜酸化窒素の分解装置及びそれを用いる亜酸化窒素の分解方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている亜酸化窒素の分解触媒、それを備える亜酸化窒素の分解装置及びそれを用いる亜酸化窒素の分解方法は、NOx浄化性能が十分ではなく、亜酸化窒素分解性能の発現も低酸素濃度下に限られるなど必ずしも十分ではなかった。
【0004】
また、特開2011−519号公報(特許文献2)には、Al、Zr及びCeからなる群から選択される少なくとも1種の元素(A)と、Ag、Mn、Co、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも1種の元素(B)と、Tiとを含有する担体、及び、該担体に担持されたAg、Mn、Co、Cu及びFeからなる群から選択される少なくとも1種の元素(C)のメタル又は酸化物からなる粒子を備え、且つ、前記担体が、前記担体の表面上の直径2nmの任意の複数の測定点をTEM−EDX分析した際に、全測定点の70%以上において、前記元素(B)の含有率が0.5〜10mol%であり且つ前記Tiの含有率が0.3mol%以上であるという条件を満たす前記Tiと前記元素(B)との複合部が確認されるものであることを特徴とする排ガス浄化用触媒が開示されている。同公報の記載によれば、低温条件下において十分に高度なNOx吸着性能を有し、しかも硫黄被毒後の触媒から硫黄成分を比較的低温で脱離させることが可能な排ガス浄化用触媒を提供することが可能となっている。しかしながら、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、低温条件下において十分に高度なNOx吸着性能を有するとともに、十分に高度な水準で低いNO副生率とすることが可能な排ガス浄化用触媒が求められるようになってきた。
【0005】
また、S.Parres−Esclapez et al.,J.Catalysis 276(2010)p.390〜401(非特許文献1)においては、Rh/CeO及びRh/AlからなるNO分解触媒が開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載のNO分解触媒は、NO分解性能が未だ十分ではなく、特に、200℃以下という低温度域においてはNO分解に対する活性は必ずしも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−22929号公報
【特許文献2】特開2011−519号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S.Parres−Esclapez et al.,J.Catalysis 276(2010)p.390〜401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、200℃以下という低温度域において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能なNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、Pt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体と、を含んでいるNO分解触媒とすることにより、200℃以下という低温度域において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明のNO含有ガスの分解方法は、Pt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体とを含んでいるNO分解触媒にO含有ガスを200℃以下の温度で接触させるとともに、前記NO含有ガスを前記NO分解触媒に接触させる前又は/及び前記NO含有ガスを前記NO分解触媒に接触させるときに水素含有ガスを前記NO含有ガスに間欠的に供給してNOを分解せしめることを特徴とするものである。
【0014】
上記本発明のNO含有ガスの分解方法においては、前記水素含有ガスを、Hの総容量がNOの総容量の2倍以上であり且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすように供給することが好ましい。
【0015】
なお、本発明のNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、NO分解触媒のNOの解離サイトであるPt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属とその近傍の担体のCe上の高速酸素吸脱着サイトの働きにより、NOの解離により生じた酸素種を担体のCe上に効率よく吸着し、Hによる再生機能により脱着させることができるものと本発明者らは推察する。さらに、上記活性金属とその近傍の高速酸素吸脱着サイトの働きによる酸素種の吸着及びHによる再生の働きは200℃以下という低温度域において奏することができるため、そのような低温度域においても十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能となるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、200℃以下という低温度域において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能なNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1〜2及び比較例1で得られた過渡NO分解活性度測定試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明のNO分解触媒について説明する。すなわち、本発明のNO分解触媒は、Pt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の活性金属は、Pt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種であることが必要である。活性金属としてPt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種を用いることにより、該活性金属と該活性金属近傍の担体のCe上の高速酸素吸脱着サイトとの働きにより、NOの解離により生じた酸素種をCe上に効率よく吸着することが可能となる。
【0021】
本発明のNO分解触媒の活性金属は、その酸化物分解温度が、不活性雰囲気中で500℃以下であることをあることが好ましい。酸化物分解温度を500℃以下とすることにより、200℃以下という低温度域におけるNO分解性能がより向上する傾向にある。ここで、「酸化物分解温度」とは、熱力学的に計算される材料が酸化物から金属に熱分解される温度である。また、「不活性雰囲気中」とは、不活性なガスで置換した雰囲気下でという意味で、不活性なガスとしては窒素やヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。
【0022】
本発明においては、前記活性金属の担持量としては特に制限されないが、担体100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜15質量部がより好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。活性金属の担持量が下限未満になると、十分な触媒活性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属の凝集が起こり触媒活性が低下する傾向にある。
【0023】
また、本発明にかかる担体は、Ceを含有することが必要である。Ceを含有する担体としては、セリウムの酸化物、水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩等を少なくとも含む担体が挙げられるが、比較的高比表面積を有するという観点からセリウムの酸化物であることが好ましい。この場合、Ce酸化物(酸化セリウム)を単独で用いてもよく、また酸化セリウムをその他の1種以上の金属酸化物と固溶させて得られる複合酸化物、又は、それらの混合物を用いることができる。
【0024】
本発明においては、Ceを含有する担体は、担体中のセリウムの含有量としては特に制限されないが、酸化物換算で10〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましく、30〜100質量%が特に好ましい。セリウムの含有量が下限未満になると、十分な触媒活性が得られない傾向にある。
【0025】
このようなCeを含有する担体に含有させることが可能なセリウム以外の成分としては、触媒の担体に利用することが可能な公知の他の成分を適宜利用することができる。このようなCeを含有する担体に含有するセリウム以外の他の成分としては、担体の熱安定性や触媒活性の観点から、例えば、チタニウム(Ti)、ケイ素(Si)、リン(P)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の元素の酸化物を好適に用いることができる。
【0026】
なお、本発明のNO分解触媒の担体は、Ceを含有する担体中にZr(ジルコニウム)、La(ランタン)及びPr(プラセオジム)からなる群から選択される少なくとも1種を含有しているものであることが好ましい。担体として、Zr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種を含有した担体とすることにより、CeOの還元を起こり易くするとともにOSC(酸素貯蔵能)を低温から発現させる効果ががより向上する傾向にある。また、前記Ceを含有する担体中に含有するZr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、金属元素換算で、5〜70モル%がより好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。Zr、La及びPrからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が下限未満になると、担体として耐熱性が低下し、十分な酸素吸脱着能と活性金属粒子の高分散化が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分な酸素吸脱着能が得られない傾向にある。さらに、上記Zr(ジルコニウム)、La(ランタン)及びPr(プラセオジム)からなる群から選択される少なくとも1種は、Ce酸化物中に含有しているものであることが好ましい。
【0027】
また、本発明のNO分解触媒においては、NO分解触媒の150℃における活性酸素吸放出速度が、5μmol/g/sec以上であることが好ましい。NO分解触媒の150℃における活性酸素吸放出速度を、5μmol/g/sec以上とすることにより、NOより解離して担体に吸着した酸素を効率的に除去する効果が十分得られるようになる傾向にある。
【0028】
また、前記Ceを含有する担体にPt、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属を担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、Ptを含む化合物(例えば、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等の白金の塩や、白金の錯体など)を水やアルコール等の溶媒に溶解した溶液を準備して、これらの溶液を前記Ceを含有する担体に接触させ(例えば前記Ceを含有する担体を水やアルコール等の溶媒に分散させた分散液中に上記溶液を添加することにより、上記溶液を前記Ceを含有する担体に接触させ)、乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。なお、このような乾燥や焼成の際の条件は特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件としては80〜140℃で1〜24時間程度加熱する条件を、焼成条件としては200〜500℃で0.5〜5時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0029】
また、本発明のNO分解触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる基材も特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等を好適に採用されすることができる。また、ここで用いられる基材の材質も特に制限されないが、コージェライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用することができる。
【0030】
また、このような基材に前記NO分解触媒を担持する方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、モノリス状基材に担体を担持せしめて担体の粉末からなるコート層を形成した後、前記コート層に前記金属粒子を担持せしめ、その後、前記コート層に前記第三の金属を担持せしめる方法や、あらかじめ前記金属粒子を担持せしめた担体を用い、これをモノリス状基材に担持せしめてコート層を形成した後、前記コート層に前記第三の金属を担持せしめる方法等を採用することができる。
【0031】
なお、このようなNO分解触媒においては、本発明の効果を損なわない範囲で用いることが可能な他の成分を適宜担持してもよい。
【0032】
また、本発明のNO分解触媒は、他の触媒と組み合わせて利用してもよい。このような他の触媒としては、特に制限されず、公知の触媒(例えば、自動車の排ガス浄化用触媒の場合は、NOx還元触媒、NOx吸蔵還元型(NSR触媒)、NOx選択還元触媒(SCR触媒)等)を適宜用いてもよい。
【0033】
次に、上記本発明のNO分解触媒を用いてNO含有ガスを分解する本発明の方法について説明する。
【0034】
本発明のNO含有ガスの分解方法は、NO含有ガスを、200℃以下の温度で上記NO分解触媒に接触させる前又は/及び前記NO含有ガスをNO分解触媒に接触させるときに水素含有ガスを間欠的に供給してNOを分解せしめることを特徴とする方法である。
【0035】
本発明にかかるNO含有ガスとしては、NO(亜酸化窒素)を含有するガスであれば特に限定されず、例えば、燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガスなどが挙げられる。
【0036】
次に、本発明のNO含有ガスの分解方法においては、上記NO含有ガスを200℃以下の温度で上記本発明のNO分解触媒に接触させるとともに、前記NO含有ガスを前記NO分解触媒に接触させる前又は/及び前記NO含有ガスを前記NO分解触媒に接触させるときに水素含有ガスを前記NO含有ガスに間欠的に供給してNOを分解せしめることが必要である。これにより、200℃以下という低温度域において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することができる。
【0037】
本発明で用いる水素含有ガスとしては、水素(H)を含有するガスであれば特に限定されず、例えば、水素ガスや、水素ガスに窒素ガス、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン)などのガスを混入した水素混合ガスなどが挙げられる。
【0038】
次に、本発明のNO含有ガスの分解方法においては、前記水素含有ガスを、Hの総容量がNOの総容量の2倍以上であり且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件を満たすように供給することが好ましい。水素の供給量が前記条件を満たすように水素含有ガスを供給することにより、NOより解離して担体に吸着した酸素を除去する効果が十分得られる。
【0039】
なお、本発明においては、NO分解触媒による分解処理前のNO含有ガスに、水素含有ガスを間欠的に供給することが好ましい。このように分解処理前のNO含有ガスに水素含有ガスを間欠的に供給することにより、NOの解離を促進するとともに、Ce上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【0040】
また、水素含有ガスを接触させる条件及び方法としては、特に制限されないが、接触条件としては、上述のHの総量及び濃度がNO分解触媒の上流にて実現できる条件であることが好ましい。この条件とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。接触方法としては、NO分解触媒の上流側に添加或いはエンジン制御により発生させる方法であることが好ましい。このような方法とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【0041】
また、水素含有ガスの供給において、間欠的な供給とは、一定の時間をおいて水素含有ガスを繰り返し供給することを意味する。なお、間欠的供給の条件、間欠供給の具体的方法、供給手段としては、特に制限されないが、間欠的供給の条件は、非供給時に生成するNOに対して、十分な量を短時間で供給することが好ましい。具体的には、H添加間隔でのHの総量がNO総量の2倍以上であり、且つH濃度がNO濃度の3倍以上となる条件であることが好ましい。この条件とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。間欠的供給の具体的な方法としては、3sec以上継続してHが供給されることが好ましい。この方法とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。間欠的供給の供給手段としては、NO分解触媒の上流側に添加或いはエンジン制御により発生させる方法であることが好ましい。この方法とすることにより、NOの解離及びCe上に吸着した酸素種の脱着がより促進される傾向にある。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
先ず、ジニトロジアミン白金(Pt(NO(NH)0.0823gを溶解した水溶液に酸化セリウム(CeO、阿南化成社製)を5g加え、水溶液中で1時間撹拌した後、110℃で24時間大気中にて乾燥を行った。次に、得られた乾燥物を、300℃で3時間大気中にて熱処理を行い、NO分解触媒(A)を得た。なお、得られた触媒試料(A)のPt担持量は、1.0質量%であった。
【0044】
<性能評価試験1:過渡NO分解活性度測定試験>
過渡NO分解活性度は、過渡NO性能として、次のように定義し、測定した。
[過渡NO性能(過渡NO分解活性度)]=[過渡NO分解活性試験におけるNO分解率]−[定常NO分解活性試験におけるNO分解率]
先ず、得られた触媒試料1.0gを秤量し、以下の方法に従って定常NO分解率を測定した。すなわち、先ず、得られた触媒試料を固定床流通式反応装置を用い、内径15mm反応管に触媒を充填し、400℃の温度条件下において、触媒1.0gに対して5L/分の流量で、O(10容量%)及びN(90容量%)からなるガスを10分間流して前処理を行った。次に、前処理後の試料に対して、150℃の温度条件下において、5L/分の流量で表1に示すリッチガス1を10分間流してNOの分解率を調べた。なお、NO分解率は、試料を充填していないときのNO濃度と試料が充填されたときの出ガスのNO濃度の差分から求めた。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、得られた触媒試料1.0gを秤量し、以下の方法に従って過渡NO分解率を測定した。すなわち、先ず、得られた触媒試料を固定床流通式反応装置を用い、内径15mm反応管に触媒を充填し、400℃の温度条件下において、触媒1.0gに対して5L/分の流量で、O(10容量%)及びN(90容量%)からなるガスを10分間流して前処理を行った。次に、上記前処理後の試料に対して、150℃の温度条件下において、5L/分の流量で、表1に示すリッチガス2とNOガスを、それぞれ5秒/40秒毎に交互に10分間流し、過渡時のNOの分解率を調べた。次いで、得られた定常NO分解率と過渡NO分解率とから、過渡NO分解活性度を算出した。得られた結果を、図1に示す。
【0047】
(実施例2)
テトラクロロ金(III)酸(HAuCl)0.0578gを溶解した水溶液に酸化セリウム(CeO)を10g加えた以外は、実施例1と同様にしてNO分解触媒(B)を得た。なお、得られた触媒試料(B)のAu担持量は、1.0質量%であった。得られた触媒試料(B)に対して、実施例1と同様にして過渡NO分解活性度を測定した。得られた結果を、図1に示す。
【0048】
(比較例1)
硝酸ロジウム(Rh(NO)0.0354gを溶解した水溶液に酸化セリウム(CeO)を10g加えた以外は、実施例1と同様にしてNO分解触媒(C)を得た。なお、得られた触媒試料(C)のRh担持量は、1.0質量%であった。得られた触媒試料(C)に対して、実施例1と同様にして過渡NO分解活性度を測定した。得られた結果を、図1に示す。
【0049】
図1に示した実施例1及び2の結果と比較例1の結果との比較から明らかなように、実施例1及び2の触媒は、比較例1の触媒に比較して、低温での過渡NO分解活性が高いことが確認され、十分に優れた活性を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、200℃以下という低温度域において、十分に高度な水準でNO分解性能を発現することが可能なNO分解触媒及びそれを用いたNO含有ガスの分解方法を提供することが可能となる。
【0051】
このように本発明のNO分解触媒は、NO分解性能をより低温から発現することが可能であるため、200℃以下という比較的低温の条件から用いるNOの分解触媒として好適に利用することが可能である。特に、燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガス中に含まれるNOの分解触媒として有用なものである。
図1