(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記壁部の前記絶縁側面は、前記導電部材の前記導電側面と対向する部分を有するとともに、前記導電部材を囲うように配置され、前記正極配線および前記負極配線は、前記壁部の前記絶縁側面に配置され、前記導電部材と対向するとともに、前記導電部材を囲うように配置される、請求項4に記載の電動圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に従う電動圧縮機の全体構成を示す概略図である。
図1を参照して、電動圧縮機110は、有底筒状をなすアルミニウム製(金属材料製)の吸入ハウジング112に蓋状のアルミニウム製(金属材料製)の吐出ハウジング111を接合して形成されたハウジングと、吸入ハウジング112に収容された圧縮部115および電動モータ116と、吸入ハウジング112に一体化されるように取り付けられたインバータユニット140とを含む。
【0017】
吸入ハウジング112の周壁底部側には図示しない吸入ポートが形成される。吸入ポートに図示しない外部冷媒回路が接続される。吐出ハウジング111の蓋側には吐出ポート114が形成される。吐出ポート114は外部冷媒回路に接続される。吸入ハウジング112内には、冷媒を圧縮するための圧縮部115と、圧縮部115を駆動するための電動モータ116とが収容される。図示しないが、たとえば圧縮部115は、吸入ハウジング112内に固定された固定スクロールと、固定スクロールに対向配置された可動スクロールとを含んで構成される。
【0018】
吸入ハウジング112の内周面にはステータ(固定子)117が固定される。ステータ117は、吸入ハウジング112の内周面に固定されたステータコア117aと、ステータコア117aのティース(図示せず)に巻回されたコイル117bとを含んで構成される。
【0019】
また、吸入ハウジング112内には、回転軸119がステータ117内に挿通された状態で回転可能に支持されるとともに、この回転軸119には、ロータ(回転子)118が固定されている。
【0020】
インバータユニット140は、吸入ハウジング112に対して、吐出ハウジング111とは反対側の外面に取り付けられる。インバータユニット140は、アルミベース142と、回路基板146と、インバータカバー144とを含む。
【0021】
インバータカバー144は、回路基板146を覆って汚れや湿気等から保護している。インバータカバー144は、回路基板146を、インバータカバー144の内面側で覆うように形成される。インバータカバー144は、好ましくは軽量化のために樹脂で形成されており、さらに好ましくは回路基板146から発生する電磁ノイズが外部に放射されるのを抑制するために、樹脂内部に金属製のプレートが形成される。なお、インバータカバー144は、樹脂で形成されるとしたが、これに限られない。例えば、インバータカバー144は、アルミニウム合金によって形成されることとしてもよい。
【0022】
インバータカバー144は、アルミベース142の底盤161に形成された脚部156,158を挟んでねじ152,154によって共締めで吸入ハウジング112に固定される。インバータカバー144には、外部から直流電源電圧が供給される筒状の電源入力ポート143が形成されている。また、インバータカバー144の内部には、インバータカバー144の外周形状に沿って形成された導電性部材189が取り付けられている。導電性部材189は、インバータカバー144の内面に設けられ、回路基板146に向かって突設される。なお、導電性部材189は、
図1では図示しない絶縁部材を介してインバータカバー144の内面に設けられる。
【0023】
回路基板146は、回転軸119の軸方向に回路基板146の実装面が直交するようにインバータカバー144とアルミベース142との間の収容空間に収容されている。本実施の形態では、回転軸119の軸方向に沿って、圧縮部115、電動モータ116およびインバータユニット140がこの順序で並設されている。
【0024】
アルミベース142は、吸入ハウジング112に対してねじ152,154を用いて螺着される。アルミベース142と吸入ハウジング112は、ともに熱伝導性のよい金属製であり、密着されている。したがって、アルミベース142はインバータユニット140の内部の熱を吸入ハウジング112に伝導し、インバータユニット140を放熱させる役割を果たしている。
【0025】
回路基板146は、アルミベース142の底盤161に形成された脚部160,162にねじ148,150によって底盤161から離間した状態で固定される。この離間した空間には、回路基板146に実装された、電動モータ116の駆動制御回路(インバータ回路)と、後に
図2に示すフィルタ回路を形成する電磁コイルL1およびコンデンサ回路4とが収容されている。
【0026】
インバータユニット140によって制御された電力が電動モータ116に供給されることにより、制御された回転速度でロータ118および回転軸119が回転し、この回転によって圧縮部115が駆動される。圧縮部115が駆動されることにより、外部冷媒回路から吸入ポートを介した吸入ハウジング112内への冷媒の吸入、吸入ハウジング112内に吸入された冷媒の圧縮部115による圧縮、および圧縮された冷媒の吐出ポート114を介した外部冷媒回路への吐出が行なわれる。
【0027】
図2は、電動圧縮機モータを駆動する駆動回路の回路図である。
図2を参照して、駆動回路100は、電磁コイルL1およびコンデンサ回路4と、インバータ回路14と、ブリーダ抵抗回路6と、内部電源電圧発生部8と、抵抗回路10と、制御回路30とを含む。
【0028】
インバータ回路14は、各々が正極母線PLと負極母線SLとの間に接続される、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。
【0029】
U相アーム15は、正極母線PLと負極母線SLとの間に直列接続されるトランジスタQ3,Q4と、トランジスタQ3,Q4とそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD3,D4とを含む。トランジスタQ3,Q4の接続ノードは、電動モータ116のステータのU相コイルの一端に接続される。
【0030】
V相アーム16は、正極母線PLと負極母線SLとの間に直列接続されるトランジスタQ5,Q6と、トランジスタQ5,Q6とそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD5,D6とを含む。トランジスタQ5,Q6の接続ノードは、電動モータ116のステータのV相コイルの一端に接続される。
【0031】
W相アーム17は、正極母線PLと負極母線SLとの間に直列接続されるトランジスタQ7,Q8と、トランジスタQ7,Q8とそれぞれ逆並列に接続されたダイオードD7,D8とを含む。トランジスタQ7,Q8の接続ノードは、電動モータ116のステータのW相コイルの一端に接続される。
【0032】
電動モータ116のステータのU相コイル,V相コイル,W相コイルの各他端は、中性点に接続される。
【0033】
なお、トランジスタQ3〜Q8としては、たとえば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタや電界効果型トランジスタ等の半導体トランジスタが用いられる。
【0034】
トランジスタQ3〜Q8がスイッチング制御されることにより、インバータ回路14から三相交流電流が電動モータ116のステータコイルに出力される。
【0035】
インバータ回路14には、直流電源Bからの直流電圧がリレーRY1,RY2およびローパスフィルタ回路2を介して供給される。
【0036】
電磁コイルL1およびコンデンサ回路4は、ローパスフィルタ回路2を構成している。ローパスフィルタ回路2は、直流電源Bからインバータ回路14に電圧の高周波成分が通過することを抑制し、かつインバータ回路14から直流電源B側に電圧の高周波成分が通過することを抑制する。電圧の高周波成分とは、所定値以上の周波数を有する電圧成分である。所定値は、電磁コイルL1およびコンデンサ回路4から決まる遮断周波数である。
【0037】
電磁コイルL1は、直流電源Bのプラス電極と正極母線PLとの間に接続されている。コンデンサ回路4は、正極母線PLと負極母線SLとの間に接続されている。
【0038】
コンデンサ回路4は、正極母線PLと負極母線SLとの間に直列接続されたコンデンサC1,C2を含む。
【0039】
ブリーダ抵抗回路6は、コンデンサC1,C2の電圧分担のバラツキを抑えるために設けられる。ブリーダ抵抗回路6は、正極母線PLと負極母線SLとの間に直列接続された抵抗R2,R3およびツェナーダイオードD1とを含む。抵抗R2,R3の接続ノードは、コンデンサC1,C2の接続ノードと接続される。
【0040】
内部電源電圧発生部8は、制御回路30において用いられる内部電源電圧を発生する。抵抗回路10は、正極母線PLと負極母線SLとの間に直列接続された抵抗素子によって電圧を分圧して制御回路30がモニタ可能な電圧に低下させ、制御回路30に分圧電圧を出力する。
【0041】
電流センサ24は、負極母線SLに流れる電流を検出する。負極母線SLに流れる電流は、W相電流、V相電流、およびU相電流が重畳されたものである。W相電流はW相コイルに流れる電流である。V相電流はV相コイルに流れる電流である。U相電流はU相コイルに流れる電流である。
【0042】
制御回路30は、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成され、電動モータ116の駆動を制御するコンピュータプログラムを実行する。
【0043】
なお、本実施形態の直流電源Bは、電動モータ116以外に走行用三相電動機に電力を供給するものであってもよい。走行用三相電動機は、ハイブリット自動車や電気自動車の駆動輪を駆動する力行運転と、駆動輪の回転力により発電する回生運転とを行う。
【0044】
図3は、インバータユニットの外観を示す斜視図である。
図3を参照して、インバータカバー144は、アルミベース142上に固定された回路基板146を保護するためにこれを覆っている。回路基板146には、電源入力ポート143を介して外部から直流電源電圧の供給を受けるためのコネクタ部が配置されている。
【0045】
図4は、インバータユニットと回路基板146との積層構造を示す図である。
図5は、インバータカバー144および回路基板146の概略断面図である。
図6は、回路基板146を示す図である。インバータカバー144には、導電性の部材が設けられている。車両の衝突時に、インバータカバー144の変形等、外力がインバータカバー144へ作用し、この外力の作用によって、この導電性の部材と、回路基板146に配置される正極配線および負極配線とが接触することでショートする。実施の形態1では、インバータカバー144の外周の形状に沿って、回路基板146に正極配線および負極配線を設け、インバータカバー144の内面部に、インバータカバー144の外周形状に沿って導電性の部材を形成する例について説明する。
【0046】
図4に示すように、回路基板146はインバータカバー144の外周の形状に沿って形成されている。
図4では図示していないが、インバータカバー144の内面部には、インバータカバー144の外周形状に沿って導電性部材189が形成されている。また、回路基板146上に、壁部が形成される。この壁部は、回路基板146からインバータカバー144に向かって突出するよう設けられている。また、壁部は、導電性部材189と対向する面を有する。
図4と
図6に示すように、回路基板146には、その外周形状に沿って配線191と、配線192と、内周壁部193とが形成されている。インバータカバー144を回路基板146にかぶせた状態で、インバータカバー144の内面部の導電性部材189と、回路基板146の配線191、配線192および内周壁部193とは接触しないよう形成される。
【0047】
電源入力ポート143から回路基板146のコネクタ部183とコネクタ部203とへ高電圧が入力される。例えば、コネクタ部183は(+)の高電圧に対応し、コネクタ部203は(−)の高電圧に対応する。また、コネクタ部183から、回路基板146の外周形状に沿って配線192が形成され、コネクタ部203から、回路基板146の外周形状に沿って配線191が形成される。
図4では図示していないが、内周壁部193には、それぞれ(+)と(−)に対応した配線が形成されている。
【0048】
図4と
図5とに示すように、電源入力ポート143からコネクタ部183および配線192へと高電圧が入力される。また、電源入力ポート143からコネクタ部203および配線191へと高電圧が入力される。また、内周壁部193の配線194と配線195とは、コネクタ部183に入力される高電圧が配線194に入力され、コネクタ部203に入力される高電圧が配線195に入力される。このように、(+)の電圧に対応する配線と、(−)の電圧に対応する配線とは、同一平面状に配置されている。
図5の例では、配線191および配線192は、同一平面状に配置される。配線194および配線195は、同一平面状に配置される。
【0049】
導電性部材189は、図示しない絶縁部材を介してインバータカバー144の内面に設けられる。
図5に示すように、導電性部材189は、回路基板146と対向する導電対向面を有する。導電性部材189は、この導電対向面から絶縁部材に延びる導電側面を有し、この絶縁部材を介してインバータカバー144に設けられる。(+)の電圧に対応する配線および(−)の電圧に対応する配線と、導電性部材189とは対向して配置されている。
図5に示すように、配線191および配線192と、導電性部材189の導電対向面とが対向するように配置される。
【0050】
内周壁部193は、回路基板146上に形成され、インバータカバー144に向かって突出するよう設けられる。内周壁部193は、インバータカバー144と対向する絶縁対向面と、この絶縁対向面から回路基板146へ延びる絶縁側面とを有する。内周壁部193の絶縁側面と、導電性部材189の導電側面とは、対向する部分を有する。配線194および配線195は、この内周壁部193の絶縁側面上に配置される。導電性部材189の導電側面と、内周壁部193の絶縁側面上に配置される配線194および配線195とは、対向するように配置される。
【0051】
ここで、本実施の形態1に従う電動圧縮機110を搭載した車両が障害物等に衝突した場合には、インバータユニット140に対して、例えば
図5に示す矢印の方向に衝突荷重が発生する。例えば、インバータカバー144の外部の面に対して衝突荷重が加わった場合、導電性部材189が、配線191および配線192と接触する。配線192と配線191とは、それぞれ(+)と(−)の高電圧が入力されるため、配線191および配線192が導電性部材189と接触することでショートする。これにより、コンデンサ回路4に蓄積された電荷が放電される。また、インバータカバー144の外周の側面から衝突荷重が加わった場合、導電性部材189が、内周壁部193の配線194および配線195と接触する。配線194と配線195とは、それぞれ(+)と(−)の高電圧が入力されるため、配線194と配線195とが導電性部材189と接触することでショートする。これにより、コンデンサ回路4に蓄積された電荷が放電される。この実施の形態で説明したように、(+)の電圧に対応する配線と、(−)の電圧に対応する配線とは、同一平面状に配置されている。そのため、車両の衝突時に、(+)の電圧に対応する配線および(−)の電圧に対応する配線と、導電性部材189とが接触しやすくなる。
【0052】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2の電動圧縮機について説明する。
【0053】
図7は、実施の形態2の回路基板146の概略の構成を示す図である。
図8は、実施の形態2のインバータカバー144および回路基板146の概略断面図である。
【0054】
図7と
図8に示すように、実施の形態2の電動圧縮機は、インバータカバー144に設けられた導電性部材189を、回路基板146に設けられた内周壁部196が囲うように、導電性部材189と内周壁部196とが配置される。
図7の例では、内周壁部196は円柱形状としているが、これに限らず、他の形状(例えば、直方体形状)としてもよい。また、導電性部材189の導電側面の一部を囲うように内周壁部196を配置してもよい。
【0055】
図8に示すように、内周壁部196の絶縁側面は、導電性部材189の導電側面と対向する部分を含む。また、内周壁部196は、導電性部材189の周りを囲うように配置される。配線194および配線195は、この内周壁部196の絶縁側面上に配置される。導電性部材189の導電側面と、内周壁部196の絶縁側面上に配置される配線194および配線195とは、対向するように配置される。配線194および配線195は、導電性部材189の周りを囲うように配置される。
【0056】
実施の形態2の電動圧縮機を搭載した車両が障害物等に衝突した場合に、インバータカバー144の外部の面に対して衝突荷重が加わり、これによって導電性部材189が配線191および配線192と接触することでショートする。また、インバータカバー144の外部の面に対して衝突荷重が加わり、これによって導電性部材189が配線194および配線195と接触することでショートする。これにより、コンデンサ回路4に蓄積された電荷が放電される。
【0057】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3の電動圧縮機について説明する。
【0058】
図9は、実施の形態3の回路基板146の概略の構成を示す図である。
図10は、実施の形態3の回路基板146の概略断面図である。
【0059】
図9と
図10に示すように、実施の形態3の電動圧縮機は、回路基板146上の配線191と配線192とのそれぞれに、バスバのはんだ付け等を行い、このバスバを、導電性部材189の周囲に配置している。
図9に示すように、配線191に、バスバ198のはんだ付け等が行われている。また、配線192に、バスバ197のはんだ付け等が行われている。このバスバ197およびバスバ198は、例えば、かぎ型の形状など、導電性部材189を囲う形状のものとすることができる。なお、
図9では、インバータカバー144に設けられる導電性部材189を点線で示している。例えば、配線192に(+)の高電圧が入力され、配線191に(−)の高電圧が入力される場合、配線192にはんだ付けされているバスバ197に(+)の高電圧が入力され、配線191にはんだ付けされているバスバ198に(−)の高電圧が入力される。
【0060】
実施の形態3の電動圧縮機によると、実施の形態1および実施の形態2で説明したような壁部(内周壁部193、内周壁部196)を設ける必要がない。
【0061】
また、実施の形態3の電動圧縮機を搭載した車両が障害物等に衝突した場合に、インバータカバー144の外部の面に対して衝突荷重が加わり、これによって導電性部材189がバスバ197およびバスバ198と接触することでショートする。これにより、コンデンサ回路4に蓄積された電荷が放電される。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。