特許第6107588号(P6107588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6107588-ゴルフクラブシャフトの取付構造 図000002
  • 特許6107588-ゴルフクラブシャフトの取付構造 図000003
  • 特許6107588-ゴルフクラブシャフトの取付構造 図000004
  • 特許6107588-ゴルフクラブシャフトの取付構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107588
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブシャフトの取付構造
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/02 20150101AFI20170327BHJP
【FI】
   A63B53/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-213367(P2013-213367)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-73806(P2015-73806A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】森 輝充
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼田 幸介
(72)【発明者】
【氏名】米山 太基
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−268597(JP,A)
【文献】 特開2008−284336(JP,A)
【文献】 特開2000−157650(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0035700(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0233728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドと、当該ヘッドのホーゼル内にねじ係合するとともに、当該ホーゼルの上端に対して出没する方向に移動可能に設けられたスリーブと、このスリーブに受容されて固定されるシャフトと、前記ホーゼルの上部側で前記スリーブの外周にねじ係合するナットとを備え、
前記ホーゼルは、その上部側外周面の中心が前記スリーブの中心に対して偏心した位置に設けられ、
前記ナットは、前記ホーゼルの上部側を受容する形状を備え、当該ナットを回転させてホーゼル側に移動させたときに、前記上部側部分がスリーブを強圧若しくは押圧することを特徴とするゴルフクラブシャフトの取付構造。
【請求項2】
前記ホーゼル内周面に雌ねじが形成されている一方、当該雌ねじにねじ係合する雄ねじが前記スリーブの外周面に形成され、当該スリーブとホーゼルとの相対回転によって、当該ホーゼルの上端からのスリーブ突出量が調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブシャフトの取付構造。
【請求項3】
前記ホーゼルの上部側は、その外周が先細となるテーパ面とされ、前記ナットは、前記テーパ面に対応する内面形状を有するスカート部を設けて凹部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載ゴルフクラブシャフトの取付構造。
【請求項4】
前記ホーゼルとスリーブとの間に、当該スリーブの抜け止め手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のゴルフクラブシャフトの取付構造。
【請求項5】
前記抜け止め手段は、前記ホーゼルの雌ねじ内径よりも内径を大きくする段部と、前記スリーブ側に設けられて前記段部に係合する被係合部とにより構成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のゴルフクラブシャフトの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブシャフトの取付構造に係り、更に詳しくは、所定の範囲内でゴルフクラブの長さを無段階で調整することのできるゴルフクラブシャフトの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、ヘッド及びシャフトを含み、シャフトの先端をヘッドのヒール側上部に位置するシャフト取付部若しくはホーゼルに取り付けることによって構成されている。
市販されているゴルフクラブは、ヘッドにシャフトが固定されて一定の長さとなっており、ゴルフクラブの長さの長短は、購入時におけるシャフト長に依存しているのが通常である。
【0003】
ところで、ゴルフクラブのユーザーとなるゴルファーは、身長差が千差万別であるにもかかわらず、ゴルフクラブの長さのバリエーションは少ないため、身長差に応じた長さの選択肢は極めて狭い。
そこで、例えば、ゴルフクラブを長くする場合には、長いシャフトに交換(リシャフト)したり、シャフトエンド又は先端部に延長部材若しくはスペーサを介在させたりすることで対応しているのが実情である。
【0004】
しかしながら、このような手法による長さの変更は、一定の単位ごとの変更となり、無段階(微細)な変更には対応できていない。しかも、延長部材を接着してしまうと、その取り外しが困難になる他、重量が増大してクラブバランスを変化させてしまうという不都合がある。また、延長部材の装着に際してグリップの脱着が不可避となり、作業が極めて面倒となる。加えて、従来のシャフトの長さ変更は、ユーザーにおいて容易且つ迅速に行うことのできる簡便性はない。
このような不都合は、ヘッドに対するシャフトの取付構造において、着脱の簡便性や自由度がないことに起因しているものと考えられる。
【0005】
なお、特許文献1には、ヘッドに対してシャフトを着脱自在に設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−532678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、ヘッドに設けられた係合部材と、シャフトに設けられた係合部材とを相互に係合させる取付構造を開示するだけで、ゴルフクラブの長さを変更する構成は採用されていない。
【0008】
本発明の目的は、ヘッドに対するシャフトの着脱を可能にするとともに、ユーザーにおいて、長さ変更を容易に行うことのできるゴルフクラブシャフトの取付構造を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シャフトの取付位置を強固に維持することができる信頼性の高いゴルフクラブシャフトの取付構造を提供することにある。
更に、本発明の目的は、長さ変更に際して、部品の追加を必要とすることがなく、ヘッドにおける重心等のバランスが大きく変化するようなことがないゴルフクラブシャフトの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものであり、具体的には、ヘッドと、当該ヘッドのホーゼル内にねじ係合するとともに、当該ホーゼルの上端に対して出没する方向に移動可能に設けられたスリーブと、このスリーブに受容されて固定されるシャフトと、前記ホーゼルの上部側で前記スリーブの外周にねじ係合するナットとを備え、
前記ホーゼルは、その上部側外周面の中心が前記スリーブの中心に対して偏心した位置に設けられ、
前記ナットは、前記ホーゼルの上部側を受容する形状を備え、当該ナット回転させてホーゼル側に移動させたときに、前記上部側部分がスリーブを強圧若しくは押圧する、という構成採っている。
【0010】
本発明において、前記ホーゼル内周面に雌ねじが形成されている一方、当該雌ねじにねじ係合する雄ねじが前記スリーブの外周面に形成され、当該スリーブとホーゼルとの相対回転によって、当該ホーゼルの上端からのスリーブ突出量が調整可能に設けられる、という構成を取ることが好ましい。
【0011】
また、前記ホーゼルの上部側は、その外周が先細となるテーパ面とされ、前記ナットは、前記テーパ面に対応する内面形状を有するスカート部を設けて凹部を備えた構成とされている。
【0012】
また、前記ホーゼルとスリーブとの間に、当該スリーブの抜け止め手段が設けられていることが好ましく、当該抜け止め手段は、前記ホーゼルの雌ねじ内径よりも内径を大きくする段部と、前記スリーブ側に設けられて前記段部に係合する被係合部とにより構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スリーブの外周にねじ係合するナットがホーゼルの上部側を受容した状態で締め付けられたときに、ホーゼルの上部側部分をスリーブ側に強圧するようになり、ナットの弛みを防止してシャフトの固定状態を強固に保つことが可能となる。この際、ホーゼル内におけるスリーブの位置に応じてゴルフクラブの長さを設定することになるので、ホーゼル内でスリーブを上方若しくは下方に移動させるだけで長さを変更することが可能となる。
また、ホーゼルの上部側をテーパ面とし、ホーゼル上部側を受容するナットがテーパ面に対応するスカート部を備えた構成とすれば、ナットを締め付けるに従ってホーゼル上部側を内側に向かって次第に強い押圧力を確実に付与することができる他、既存のネック部材と同様の外観を表出して違和感を与えることもない。
更に、スリーブの抜け止め手段を設けた構成によれば、ユーザーにおいて長さ調整を行う簡便性を付与しても、スリーブがホーゼルから不用意に抜け出てしまうようなリスクを回避することも期待できる。
また、長さ調整に際して、従来のスペーサ等に匹敵する部品を必要としないため、重心等のバランスが大きく変化するといった不都合も回避可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るゴルフクラブシャフトの取付構造がウッドタイプのゴルフクラブヘッドに適用された状態を示す要部概略断面図。
図2図1に示されるゴルフクラブの長さを延長する方向に変更した状態を示す要部概略断面図。
図3図1の分解断面図。
図4】ナットの変形例と専用の工具を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1及び図2において、ゴルフクラブ10は、ヘッド11と、その上面となるクラウン面12のヒール側に位置してシャフト取付部として作用するホーゼル13と、当該ホーゼル13にスリーブ15を介して取り付けられたシャフト16と、図示しないグリップと、ホーゼル13よりも上部でスリーブ15の外周にねじ係合するナット17とを備えて構成されている。ヘッド11は金属を成形素材とした中空形状をなし、ホーゼル13の下部はソール面18に開放するように区画された通路Sとされて当該通路Sが長さ調整用の空間として機能するようになっている。なお、シャフト16は、その先端部が適宜な接着剤を用いてスリーブ15に固定されている。
【0017】
前記ホーゼル13は、図3にも示されるように、通路Sに連なる内周面を備え、当該内周面に雌ねじ20が形成されている。通路Sは雌ねじ20が形成された内周面の内径より大径に設けられ、これにより、雌ねじ20と通路Sとの間に段部21が形成されている。ここで、ホーゼル13は、その上部側13Aの外周が上端に向かって先細となるテーパ面とされ、凸型のナットとして機能するようになっている。また、上端外周の中心C2は、ホーゼル13内に位置するスリーブ15若しくは雌ねじ20の中心C1に対して偏心した位置となるように設けられている。因みに、ホーゼル13は、その中央縦断面において、図中左側が右側に対して次第に肉厚となっている。なお、本実施形態では、図中左側を最大肉厚部とするように設けられているが、当該最大肉厚部の位置は、図示例の位置に限定されるものではない。
【0018】
前記スリーブ15は、外周に雄ねじ23を有して上端を開放する有底状をなし、その底部中央の外面側にねじ孔24が設けられている。このねじ孔24には、被係合部を構成する円板部材25のねじ軸25Aがねじ込まれるようになっており、当該円板部材25が通路Sの上端となる段部21に係合することでスリーブ15延いてはシャフト16の抜け止めが図られる。ここにおいて、段部21及び円板部材25とによりスリーブ15の抜け止め手段が構成されている。
【0019】
前記ナット17は、ホーゼル13の上部側13Aの外面すなわちテーパ面に対応する内面形状を有するスカート部31を設けて内側を凹部30とする凹型ナットとして構成されている。このナット17はホーゼル13よりも上方でスリーブ15の雄ねじ23にねじ係合し当該スリーブ15に沿って移動可能に設けられている。
【0020】
以上の構成において、本実施形態に係るゴルフクラブ10は、シャフト16の外周側にナット17を配置させた状態で、シャフト16の先端部をスリーブ15内に受容させて相互に接着固定する。次いで、スリーブ15をホーゼル13の上端側から雌ねじ20にねじ込んでスリーブ15をホーゼル13内に位置させ、円板部材25のねじ軸25Aをスリーブ15の底部ねじ孔24に締め付けて円板部材25をスリーブ15に一体化させる。
【0021】
この後、ナット17をスリーブ15の雄ねじ23にねじ係合させつつホーゼル13側に移動を進め、ナット17の凹部30内にホーゼル13の上部側13Aを受容させる。そして、その回転が許容される限界までナット17を締め付ける。これにより、前述した中心C1に対する中心C2の位置ずれにより、スカート部31で上部側部分13Aをスリーブ15側に強圧し、その反力がスカート部31延いてはナット17に付与され、これにより当該ナット17の弛み防止が図られる。このように、本実施形態における取付構造は、特別な部品を必要とすることなく、上部側13Aの一部をクサビと同様に作用せしめてナット17の弛みが防止されることとなる。
【0022】
ここで、図1に示される状態を、シャフト16の初期取付位置としてゴルフクラブの長さを最大位置まで長くする場合、先ず、ナット17を緩めてスカート部31による上部側13Aの強圧を解除する。その後、スリーブ15を回転させてホーゼル13の上端より上方にスリーブ15を突出させる。この回転操作は、円板部材25が段部21に突き当たる位置まで行われる。
【0023】
このようにして段部21及び円板部材25による抜け止め手段が作用する状態で、ナット17をホーゼル13側に回転移動させ、スカート部31によって上部側13A部分を強圧するように前述と同様の締め付けを行えばよい。これにより、シャフト16の先端(下端)は、図1に示される位置に対して上昇位置に移動する結果、その移動量に応じた長さがゴルフクラブに付与されることとなる。
なお、この移動量は、ホーゼル13におけるスリーブ15の位置を何れに設定するかによって無段階に調整することができる。
【0024】
従って、このような実施形態によれば、ヘッド11に対するシャフト16の取付位置を一定の範囲で変更してゴルフクラブの長さを無段階に変更することができる、という効果を得る。
しかも、シャフト16の取付状態は、ナット17の締め付けによってホーゼル13の上部側部分をスリーブ15側に強く押圧することで強固に保たれ、ナット17の弛み防止を通じてシャフト位置を一定に保つことが可能となる。
【0025】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0026】
例えば、前記実施形態におけるナット17は、図4(A)〜(C)に示されるナット17A〜17Cの他、図示省略した六角等の多角形ナットに代替することができる。
図4(A)のナット17Aは円錐形であり、その軸方向一端側の外周部分に凹状の切欠部32が1つ形成されたものである。図4(B)のナット17Bは円筒形であり、ナット17Aと同様の切欠部32が1つ形成されたものである。また、図4(C)のナット17Cは、ナット17A、17Bと同様の切欠部32を周方向に沿って複数配置することによって形成されたものである。これらのナット17A〜17Cは、図4(D)に示されるように、切欠部32に係合可能な爪33を有する専用のレンチ35を用いてスパナレンチと同様の要領で締付力を付与することができる。なお、多角形のナットを用いた場合は、スパナレンチで締付力を付与すればよい。
従って、このようなナット17A〜17Cを用いた場合には、ホーゼル13の上部側外周に対して強い締付力を作用させることができ、弛み防止効果を向上させることができる。
【0027】
また、前記実施形態では、ヘッド11がいわゆるウッドタイプであるとしたが、本発明は、ユーティリティと称されるゴルフクラブの他、アイアンゴルフクラブにも適用することができる。
また、ホーゼル13と通路Sとの間の段部21は、図示の位置よりもさらに下方に設けても良い。この場合、ホーゼル13の雌ねじ20の長さを軸方向下方に延長すればよい。
更に、抜け止め手段は、図示構成例に限定されるものではなく、円板部材25は、スリーブ15に一体化したものとしてもよい。但し、この場合、スリーブ15の挿抜がソール面17側からに制約されるので、実施形態の構成のほうが有利といえる。
【符号の説明】
【0028】
10…ゴルフクラブ、12…ヘッド、13…ホーゼル、15…スリーブ、16…シャフト、17…ナット、21…段部(抜け止め手段)、23…雌ねじ、25…円板部材(抜け止め手段)、30…凹部、31…スカート部
図1
図2
図3
図4