特許第6107599号(P6107599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107599
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20170327BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20170327BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/10 M
   H01M2/10 S
   H01M2/34 B
   H01M2/20 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-223195(P2013-223195)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-88229(P2015-88229A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 知之
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】春日井 正邦
(72)【発明者】
【氏名】筒木 正人
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 義博
(72)【発明者】
【氏名】柴田 英昭
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210710(JP,A)
【文献】 特開2013−069491(JP,A)
【文献】 特開2014−175291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10−34
H01G 11/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極の電極端子を有する蓄電素子を複数並べてなる蓄電素子群の前記電極端子間を電気的に接続する複数の接続部材と、
絶縁材料からなり前記接続部材を挟んで保持するシート状の保持部材と、
絶縁材料からなり、隣り合う前記接続部材の間に配されて、前記接続部材同士の接触を防止する絶縁壁部と、を備え
前記蓄電素子の状態を検知する検知端子を備え、
前記絶縁壁部が前記検知端子に取り付けられており、
前記検知端子は、前記接続部材に対して前記蓄電素子側とは反対側に配されている配線部材。
【請求項2】
前記接続部材または前記検知端子に接続され、前記蓄電素子の状態を検知する検知電線と、
前記検知電線を収容する電線収容部材と、を備える請求項1に記載の配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等の車両用の蓄電モジュールは、正極及び負極の電極端子を有する蓄電素子が複数個並んで配列されており、隣り合う蓄電素子の電極端子間が接続部材で接続されることにより、複数の蓄電素子が直列や並列に接続されるようになっている。
【0003】
蓄電モジュールにおいて、隣り合う電極端子間を接続する接続部材に導電性部材が接触すると、蓄電素子の短絡が懸念されるため、一般的な蓄電モジュールにおいては、各接続部材が、絶縁材料からなる樹脂プロテクタにより保持されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−109927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の樹脂プロテクタには、複数の接続部材を載置する底壁と接続部材の周縁を取り囲む包囲壁とを有する保持部が、接続部材の数に合わせて設けられている。しかしながら、特許文献1に記載されているような樹脂プロテクタを製造する際には、複雑な形状の成形型が必要なのでコスト高であるという問題があった。また、上記樹脂プロテクタのような樹脂成形品においては、大型化の問題もあった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡易な構造の配線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものとして本発明は、正極および負極の電極端子を有する蓄電素子を複数並べてなる蓄電素子群の前記電極端子間を電気的に接続する複数の接続部材と、絶縁材料からなり前記接続部材を挟んで保持するシート状の保持部材と、絶縁材料からなり、隣り合う前記接続部材の間に配されて、前記接続部材同士の接触を防止する絶縁壁部と、を備える配線部材である。
【0008】
本発明において、配線部材は隣り合う接続部材の間に配されて接続部材同士の接触を防止する絶縁壁部を備えるので、接続部材の接触に起因する短絡を防止できる。そして、本発明によれば、複数の蓄電素子を接続する配線部材は、絶縁材料からなるシート状の保持部材に接続部材を挟んで保持させ、接続部材の間に絶縁壁部を配するだけで、配線部材が得られるので、配線部材を簡易な構造とすることができる。
【0009】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記蓄電素子の状態を検知する検知端子を備え、前記絶縁壁部が前記検知端子に取り付けられていてもよい。
このような構成とすると絶縁壁部を取り付けた検知端子を、シート状の保持部材に挟んで保持させた接続部材に取り付けるだけで配線部材が得られるので、組み付け作業を簡易なものとすることができる。
【0010】
前記接続部材または前記検知端子に接続され、前記蓄電素子の状態を検知する検知電線と、前記検知電線を収容する電線収容部材と、を備えていてもよい。
このような構成とすると検知電線が配線部材から飛び出すのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構造の配線部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施形態1の配線部材を備える蓄電モジュールの平面図である。
図2図2は蓄電モジュールの斜視図である。
図3図3は配線部材を蓄電素子群に取り付ける様子を示す斜視図である。
図4図4は検知端子に接続壁部を取り付ける様子を示す斜視図である。
図5図5図4の部分拡大斜視図である。
図6図6は接続壁部が取り付けられた検知端子の斜視図である。
図7図7は検知端子を接続部材に取り付ける様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。
図1に示す蓄電モジュールM1は、実施形態1の配線部材20と、複数の蓄電素子11を並べてなる蓄電素子群10と、を備える。
【0014】
蓄電モジュールM1は、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車等の車両の駆動源として使用される。以下では、上下方向については、図3を基準とする。
【0015】
(蓄電素子群10)
本実施形態の配線部材20が取り付けられる蓄電素子群10は、図3に示すように、複数個(本実施形態では12個)の蓄電素子11を並べて構成される。
【0016】
蓄電素子11は、内部に図示しない蓄電要素が収容された扁平な直方体状の本体部12の上面から垂直に突出する正極および負極の電極端子13を有する。
【0017】
各電極端子13は円筒状のボルトであって、ナット14に螺合されるねじ山(図示せず)が形成されている。各電極端子13には接続部材21の端子挿通孔22が挿通されるようになっている。また一部の電極端子13には検知端子25の端子貫通孔26Aも挿通されるようになっている。
【0018】
複数の蓄電素子11は、図1における左右方向について隣り合う電極端子13の極性が反対になるように配置されている。
【0019】
(配線部材20)
配線部材20は、複数の蓄電素子11を一体的に接続するものであり、図1に示すように、蓄電素子群10の上に、2列に並んで取り付けられている。配線部材20は、隣り合う電極端子13間を接続する複数の接続部材21、及び接続部材21を挟んで保持するシート状の保持部材24と、隣り合う接続部材21,21の間に配されて、接続部材21,21同士の接触を防止する絶縁壁部35と、を備える。
【0020】
また、配線部材20は、蓄電素子11の状態を検知する検知端子25(本実施形態では電圧検知端子)と検知端子25に接続される検知電線30と、検知電線30を収容する電線収容部材31と、を備える。
【0021】
(接続部材21)
接続部材21は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属からなる。接続部材21は、図1の上側に配されている配線部材20の端部に配されている端部接続部材21Aと、端部接続部材21A以外の接続部材21Bからなり、本明細書中において両者を区別するときは端部接続部材21A、接続部材21Bとし、両者を総括して説明するときは接続部材21とする。端部接続部材21Aには、蓄電モジュールM1と外部機器(図示せず)とを接続するための部材(図示せず)が接続可能とされる。
【0022】
接続部材21Bは、隣り合う電極端子13,13間の寸法に応じた長さの板状をなしており、端部接続部材21Aは接続部材21Bの約半分の大きさである。
【0023】
接続部材21Bには、電極端子13が挿通される一対の(2つの)端子挿通孔22が、貫通形成されており、端部接続部際21Aには電極端子13が挿通される端子挿通孔22が1つ貫通形成されている(図2を参照)。また、接続部材21には、検知端子25を取り付ける端子取付孔23が設けられている。
【0024】
(検知端子25および検知電線30)
検知端子25は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属からなる。検知端子25の接続部材21と接触するように配される接続部26の中央には、図5に示すように、接続部材21の端子挿通孔22に重ねて配される端子貫通孔26Aが貫通して形成されている。検知端子25の接続部26の3つの側縁には、接続部材21に取り付けられる取付部27が下側方向に突出形成されている。
【0025】
検知端子25の1つの側縁(取付部27が形成されていない側縁)には検知電線30が圧着されるバレル片28が2組設けられている。
【0026】
さて、本実施形態の検知端子25には図5および図6に示すように、絶縁壁部35を取り付け可能な壁部取付部29が設けられている。壁部取付部29は、接続部26から上方に起立し絶縁壁部35を案内する案内部29Aと、絶縁壁部35に係止される係止片29Bと、絶縁壁部35を抜け止めする抜け止め突部29Cとからなる。
【0027】
本実施形態において、検知電線30は、各蓄電素子11の電圧を検知するものであり、図示しない電池ECUに接続される。電池ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、蓄電素子11の電圧・電流・温度等の検知、各蓄電素子11の充放電コントロール等を行うための機能を備えた周知の構成のものである。
【0028】
(絶縁壁部35)
検知端子25に取り付けられる絶縁壁部35には、図5に示すように略長方形状をなし、検知端子25の壁部取付部29に取り付けられる端子取付部36が設けられている。端子取付部36は、検知端子25の壁部取付部29を受け入れ可能な溝状の形状をなしており、係止片29Bが係合する位置に係止孔36Aが形成されている。
【0029】
(電線収容部材31)
本実施形態において電線収容部材31としては絶縁材料からなるコルゲートチューブが用いられている。電線収容部材31には検知電線30を取り付け可能なスリット32が形成されている。
【0030】
(保持部材24)
保持部材24は、接続部材21を挟む2枚のシートからなる。保持部材24においては、接続部材21の一側縁が、上下に重なり合うように配される2枚のシートの一側縁に接着されることにより挟持されている。
【0031】
保持部材24を構成するシートFの材料としては、例えばポリ塩化ビニル、不織布、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の絶縁材料があげられる。保持部材24の接続部材21が接着されている側縁以外の側縁は、両面テープ、超音波溶着または熱溶着等の方法により接合されている。
【0032】
(配線部材20の作製方法)
検知電線30に検知端子25を接続しておく。検知端子25を電線収容部材31の所定箇所に取り付けて検知電線30を電線収容部材31内に配する(図4を参照)。次に図4に示すように、検知端子25に絶縁壁部35を取り付ける。検知端子25に絶縁壁部35を取り付ける作業は以下のようにして行う。
【0033】
絶縁壁部35の端子取付部36を、図5に示すように、検知端子25の案内部29Aに対応するように配して、絶縁壁部35を図4および図5に示す矢線Xの指す方向に移動させる。すると検知端子25の案内部29Aが絶縁壁部35の溝状の端子取付部36に嵌りこんで絶縁壁部35を矢線Xの指す方向に案内する。検知端子25の係止片29Bが端子取付部36の内壁面と当接すると係止片29Bが図5における右方向に弾性変形する。検知端子25の係止片29Bが絶縁壁部35の係止孔36Aに至ると、係止片29Bが弾性復帰するとともに絶縁壁部35が抜け止め突部29Cにより抜け止めされ、図6に示す絶縁壁部35を備えた検知端子25が得られる。
【0034】
上記作業と同時又は前後して図7に示す保持部材24を作製する。保持部材24は、絶縁材料からなるシートに所定数の接続部材21を挟んで接着することにより得られる。
【0035】
次に図7に示すように、絶縁壁部35を備える検知端子25が取り付けられた電線収容部材31を保持部材24の上方に配して、検知端子25の取付部27を接続部材21の端子取付孔23に差し込んで検知端子25を接続部材21に取り付けると図3に示すような配線部材20が得られる。
【0036】
(配線部材20の組み付け方法)
次に配線部材20の組み付け方法について説明する。
上述した方法により、2列の配線部材20をそれぞれ作製しておく。隣り合う電極端子13が逆極性となるように並べてなる蓄電素子群10の上面に各配線部材20を取り付ける。蓄電素子群10の電極端子13を、接続部材21の端子挿通孔22に挿通させたのち、各電極端子13にナット14を締め付けると図1に示すような蓄電モジュールM1が得られる。
【0037】
(作用および効果)
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
本実施形態において、配線部材20は隣り合う接続部材21,21の間に配されて接続部材21,21同士の接触を防止する絶縁壁部35を備えるので、接続部材21同士の接触に起因する短絡を防止できる。そして、本実施形態によれば、複数の蓄電素子11を接続する配線部材20は、絶縁材料からなるシート状の保持部材24に接続部材21を挟んで保持させ、接続部材21,21の間に絶縁壁部35を配するだけで、配線部材20が得られるので、配線部材20を簡易な構造とすることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、配線部材20は蓄電素子11の状態を検知する検知端子25を備え、絶縁壁部35が検知端子25に取り付けられているから、絶縁壁部35を取り付けた検知端子25を、シート状の保持部材24に挟んで保持させた接続部材21に取り付けるだけで配線部材20が得られる。その結果、本実施形態によれば、組み付け作業を簡易なものとすることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、配線部材20は、検知端子25に接続され蓄電素子11の状態を検知する検知電線30と、検知電線30を収容する電線収容部材31と、を備えているから、検知電線30が配線部材20から飛び出すのを防止することができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、検知端子25に絶縁壁部35が取り付けられている例を示したが、接続部材に絶縁壁部が取り付けられていてもよいし、蓄電素子側に絶縁壁部が取り付けられていてもよい。
(2)上記実施形態では検知電線30は検知端子25に接続されている構成を示したが、接続部材に検知電線が接続されていてもよい。
(3)上記実施形態では検知端子25として電圧検知端子を示したが、蓄電素子の温度を検知する温度検知端子であってもよい。
(4)上記実施形態ではコルゲートチューブを電線収容部材31として用いた例を示したが、電線収容部材を備えないものやコルゲートチューブ以外の押し出し成形品を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…蓄電素子群
11…蓄電素子
13…電極端子
20…配線部材
21…接続部材
21A…端部接続部材
21B…(端部接続部材以外の)接続部材
22…端子挿通孔
23…端子取付孔
24…保持部材
25…検知端子
26A…端子貫通孔
29…壁部取付部
29A…案内部
29B…係止片
29C…抜け止め突部
30…検知電線
31…電線収容部材
32…スリット
35…絶縁壁部
36…端子取付部
36A…係止孔
M1…蓄電モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7