(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取付具が、前記取付部と前記取付座とに貫通する取付孔に挿入させ、前記取付部を前記取付座に仮止め可能とし、かつ、前記ボディ側の取付孔に挿入させて、前記取付座と前記取付部とを前記ボディ側に取付可能な取付脚部を備えた取付クリップから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1に示すように、膨張完了時に、車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2を覆い可能に、エアバッグ22を、窓W1,W2の上縁側の周縁、すなわち、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲に、折り畳んで収納させている。なお、実施形態の場合、車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿って配置される1つの中間ピラー部CPを配設させ、膨張完了時のエアバッグ22は、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPに配置される中間ピラーガーニッシュ7や、リヤピラー部RPに配置されるリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も、覆うように構成されている。
【0014】
なお、実施形態では、特に断らない限り、上下,前後の方向を、車両搭載時における車両Vの上下,前後の方向と一致させて、説明する。
【0015】
頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1〜3に示すように、エアバッグ22、エアバッグ22に膨張用ガスを供給するインフレーター12、取付ブラケット13、取付クリップ17、折り畳まれたエアバッグ22(折り完了体43)を収納するケース46、及び、締結バンド57を、備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ22(折り完了体43)、インフレーター12、及び、ケース46は、締結バンド57を含めて、車両Vへの搭載時に、車内側Iをエアバッグカバー10に覆われて収納されている(
図1〜3参照)。エアバッグカバー10は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aと、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aと、から構成されている。
【0016】
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側Iに取り付けられている。そして、これらの下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー10は、展開膨張時のエアバッグ22を突出可能に、エアバッグ22に押されて、下縁5a,6aを車内側Iに開くように、構成されている(
図2,3の二点鎖線参照)。
【0017】
インフレーター12は、エアバッグ22に膨張用ガスを供給するもので、
図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター12は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ22の後述する接続口部25に挿入させ、接続口部25の後端側の外周側に配置されるクランプ15を利用して、エアバッグ22に対して連結されている。また、インフレーター12は、インフレーター12を保持する取付ブラケット13と、取付ブラケット13をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト14と、を利用して、インナパネル2に取り付けられている。
【0018】
エアバッグ22は、
図1の二点鎖線に示すように、インフレーター12からの膨張用ガスを内部に流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2や、中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPの中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。エアバッグ22は、
図2,3の二点鎖線や
図10のAに示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部23aと車外側壁部23bとを離すように膨張するガス流入部23と、車内側壁部23a,車外側壁部23b相互を結合させるように形成されて膨張用ガスを流入させない非流入部27と、を備えている。ガス流入部23は、実施形態の場合、保護膨張部24と接続口部25とを備え、非流入部27は、周縁部28、取付部31、板状部32,33、及び、閉じ部34を備える構成とされている。
【0019】
ガス流入部23の保護膨張部24は、
図10のAに示すように、エアバッグ22の膨張完了時に、前席の側方の窓W1を覆う前保護部24aと、後席の側方の窓W2を覆う後保護部24bと、を備えている。接続口部25は、エアバッグ22の上縁22a側の前後方向の中央付近に配置されるもので、実施形態の場合、後上がりに傾斜しつつエアバッグ22の上縁22a側から上方に突出するように形成されて、インフレーター12を接続可能に、後端側を開口させて構成されている。前保護部24aと後保護部24bとは、エアバッグ22の膨張完了時に、平らに展開した状態からの前後方向側の幅寸法を狭められ、また、厚さを規制されて前後方向に延びる板形状を維持できるように、内部領域に、閉じ部34を配置させている。
【0020】
非流入部27における周縁部28は、ガス流入部23の外周縁を、接続口部25の後端側を除いて全域にわたって囲むように形成されている。実施形態では、周縁部28の上縁28a側の領域には、各締結バンド57に形成される後述する係止爪部77を挿入させるための貫通孔29が、形成されている。実施形態の場合、貫通孔29は、略円形に開口して形成されている。板状部32は、前保護部24aと後保護部24bとの間に配置されるもので、略長方形板状とされている。板状部33は、エアバッグ22の前端側に配置されるもので、略長方形板状とされるとともに、下端側に、略帯状として前方に延びるベルト部33aを、配置させている。
【0021】
取付部31は、板状部33におけるベルト部33aの前端側を含めて、エアバッグ22の膨張完了時の上縁22a側に配置されるもので、エアバッグ22の上縁22a側を、車両Vのボディ1側であるインナパネル2に取り付けるための部位である。取付部31は、前後方向に沿って複数個(実施形態の場合、5個)配置されるもので、それぞれ、ベルト部33aの前端側を含めたエアバッグ22の上縁22aから上方に突出して、形成されている。各取付部31には、取付クリップ17を利用してエアバッグ22をインナパネル2に固定させるための取付孔31aが、略長方形状に開口して形成されている。なお、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ベルト部33aの前端側に配置される取付部31Aとインフレーターの前側に近接して配置される取付部31Bの部位には、ケース46が配置されておらず(
図1,14参照)、これらの取付部31A,31Bは、図示しないが、ケースの取付座を介さず、直接、インナパネル2に取り付けられている。
【0022】
実施形態の場合、エアバッグ22は、
図10のAに示すように、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって形成される本体部37と、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から形成されて本体部37に縫着される別体布38,39,40,41と、から構成されている。別体布38は、板状部32の部位を構成し、別体布39は、板状部33の部位を構成している。また、別体布40は、取付部31の部位を構成し、別体布41は、接続口部25の部位を構成している。本体部37は、略長方形状に形成されて、前保護部24a、後保護部24b、周縁部28、及び、板状部32の部位を構成している。なお、実施形態のエアバッグ22では、袋織りによって製造された本体部37において、板状部32の部位を切除し、この切除した部位が、接続口部25を構成する別体布41とされている。そして、本体部37において切除された領域には、別体布38が、この領域を塞ぐように配置されて、板状部32を形成している。
【0023】
実施形態では、エアバッグ22は、上縁22a側の領域を蛇腹折りされ、下部側の領域を下縁22b側から車外側Oに向かって巻くようなロール折りにより、折り畳まれている。エアバッグ22を折り畳んで形成される折り完了体43は、
図11に示すように、ロール折り部位43bの上側に、蛇腹折り部位43aを載せるように形成されるもので、蛇腹折り部位43aの上面側には、周縁部28の上縁28a側の領域が露出され、締結バンド57の係止爪部77を係止させるための貫通孔29も、露出されている。
【0024】
ケース46は、
図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ22(折り完了体43)を収納可能な断面略逆U字形状として、前後方向に延びた長尺状に形成されている。実施形態の場合、
図1,14に示すように、折り完了体43において、前保護部24aの部位を収納するケース46Fと、後保護部24bの部位を収納するケース46Rと、の二つが使用されている。なお、前側に配置されるケース46Fは、窓W1の上縁側に対応して、前端側を下方に向けるように屈曲して形成され、後側に配置されるケース46Rは、窓W2の上縁側に対応して、前後方向に沿って略直線状に延びるように、形成されている(
図1,14参照)。
【0025】
各ケース46(46F,46R)は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成されるもので、
図2,4に示すように、折り完了体43を収納させる本体部47と、本体部47から上方に突出するように形成される取付座54と、を備えている。
【0026】
本体部47は、
図2に示すように、折り完了体43の車外側から上面側にかけてを覆うように構成されるもので、半割円筒状の天井壁部48と、天井壁部48の車外側Oの縁から下方に延びる縦壁部49と、を備える断面略逆U字形状とされている。本体部47において、締結バンド57を挿入させる部位には、締結バンド57の後述する係止部71を係止させるための被係止部としての係止座部50が、形成されている。係止座部50は、実施形態の場合、
図14に示すように、ケース46Fに、前後方向に沿って3個形成されて、ケース46Rに、前後方向に沿って2個、形成されている。
【0027】
係止座部50は、折り完了体43との間に、締結バンド57の後述する箱状部67を配置させるために、天井壁部48より一段上方に突出して形成されるとともに、取付座54に対して略直交するように配置される平板状として、構成されている(
図18参照)。係止座部50には、
図5に示すように、締結バンド57の係止部71を係止させるための係止凹部51が、車内側端面50a側から切り欠くようにして、形成されている。係止凹部51は、車内側Iを開口させて構成されて、締結バンド57の係止部71を、取付クリップ17を取付座54に仮止めする方向に沿うように、車外側Oに向かって移動させることにより、係止可能に構成されている。
【0028】
係止凹部51は、
図5に示すように、車外側Oに位置する略円形に開口した先端側部位51aと、車内側Iに位置するとともに車内側Iにかけて拡開される略台形状に開口した元部側部位51bと、を連結させたような略鍵穴状とされている。すなわち、係止凹部51の周縁において、先端側部位51aと元部側部位51bとの境界部位には、それぞれ、前後方向の中央側に突出する略三角形突起状の突状片52,52が、配置されている。係止凹部51において、元部側部位51bの車内側Iの開口51cの開口幅寸法D1(
図5参照)は、締結バンド57の係止首部72を挿通可能に、係止首部72の前後方向側の幅寸法L1(
図9参照)よりも大きく設定されている。また、係止凹部51において、先端側部位51aと元部側部位51bとの境界部位の開口幅寸法(突状片52,52間の離隔距離)D2(
図5参照)は、係止首部72の前後方向側の幅寸法L1より小さく、かつ、係止首部72に形成される係止凹溝73,73間の部位の幅寸法L2(
図9参照)より大きく設定されている。そして、実施形態では、係止凹部51の周縁に形成される突状片52,52が、係止首部72を係止凹部51内に挿入させた際に、係止首部72の係止凹溝73,73周縁に係止されて、係止部71を係止座部50に係止させ、係止部71の車内外方向側への移動を規制することとなる(
図17参照)。具体的には、係止首部72を開口51cから挿入させて、車外側Oに向かって移動させる際に、係止凹部51の周縁に形成される突状片52,52が、係止首部72の車外側端部に押されて、係止凹部51の周縁部位が、拡開されるように一旦撓み、係止凹溝73,73を突状片52,52の部位に位置させるように、係止首部72を押し込めば、係止凹部51の周縁部位が復元されて、突状片52,52が、係止凹溝73,73内に進入することとなり、係止凹溝73,73周縁に係止されることとなる。
【0029】
取付座54は、折り完了体43から突出するように配置される取付部31に対応した位置に配置されるもので、実施形態では、ケース46Fに1個形成され、ケース46Rに2個形成されている。各取付座54は、
図2に示すように、本体部47における縦壁部49から連なって延びるように、形成されている。実施形態のケース46では、天井壁部48は、本体部47において取付座54の配置される部位を切り欠かれるようにして、構成されている(
図2,18参照)。各取付座54には、取付部31の取付孔31aに対応して、取付クリップ17の取付脚部20を貫通させる略四角形状に開口した取付孔54aが、車内外方向に貫通して形成されている。
【0030】
各取付部31を取付座54とともにインナパネル2に取り付ける取付具としての取付クリップ17は、
図2に示すように、インナパネル2に形成される取付孔3に係止されるもので、合成樹脂製の拡張リベットタイプとして、取付ベース18と、取付ベース18内に配置される押しピン21と、を備える構成とされている(
図2,15参照)。取付ベース18は、車内側に配置される基部19と、基部19からインナパネル2の取付孔3側(車外側O)に延びて取付孔3の周縁に取り付けられる取付脚部20と、を備えている。
【0031】
基部19は、取付孔3周縁への取付前の状態で押しピン21を内部に収納させる押しピン収納部19aと、基部19の車外側端部において前後上下に幅広とした略長方形板状とされる押え板部19dと、を備えている。押え板部19dは、
図15に示すように、取付クリップ17を、取付部31を介して、ケース46の後述する取付座54に仮止めした際に、取付部31を取付座54側に押えるための部位である。押しピン収納部19aは、押しピン21を車外側Oに向かって押圧可能に車内側Iを開口させて構成されるもので、押しピン21の上側を覆う部位と下側を覆う部位と、に、押しピン21に形成される係合突起部21aの突起本体21cを係合可能な係合穴部19b,19cを、備えている。これらの係合穴部19b,19cは、車内外方向(押しピン21の押し込み方向)に沿うようにして、2箇所に形成されるもので、車内側Iに配置される係合穴部19bは、
図15に示すように、押し込み前の状態の押しピン21の突起本体21cを係合させるもので、車外側Oに配置される係合穴部19cは、
図2に示すように、押し込み後の押しピン21の突起本体21cを係合させるためのものである。
【0032】
取付脚部20は、エアバッグ22の取付部31と、ケース46の取付座54と、に貫通される取付孔31a,54aに挿入されて、取付部31を取付座54の正面側(車内側I)から、取付座54に仮止め可能とされるもので、車両Vのボディ1側の取付孔3に挿入させて、取付座54と取付部31とをボディ1側に取付可能に、構成されている。取付脚部20内には、押しピン収納部19aと連通されるようにして、挿入凹部20aが、形成されている。この挿入凹部20aは、
図2に示すように、押し込み時の押しピン21の拡張用軸部21dを挿入させるための部位である。また、取付脚部20には、一対の張出し鉤部20bが、形成されている。
【0033】
押しピン21は、
図2,15に示すように、元部側(車内側I)に、押しピン収納部19aに形成される係合穴部19b,19cに係合可能な係合突起部21aを配置させ、先端側(車外側)に、押し込み時に張出し鉤部20b間に配置される拡張用軸部21dを、配置させて構成されている。元部側に形成される係合突起部21aは上下で対向する2箇所に形成されるもので、車内外方向に沿って配置されるとともに上下方向の内側に撓み可能とされる撓み片21bと、撓み片21bの先端側(車内側端側)において上下の外方に向かって突出するように形成される突起本体21cと、を有し、突起本体21cは、押し込み前の状態では、押しピン収納部19aに形成される係合穴部19bに挿入されて、係合穴部19b周縁に係合される構成である。この係合突起部21aは、撓み片21bを上下方向の内側に撓ませれば、突起本体21cを係合穴部19bから取り外し可能に構成されるもので、撓み片21bを上下方向の内側に撓ませるようにして、突起本体21cを係合穴部19bから取り外しつつ、押しピン21を、拡張用軸部21dを挿入凹部20a内に挿入させるように押し込み、突起本体21cが車外側Oの係合穴部19cに到達したならば、撓み片21bが復元されて、突起本体21cが車外側Oの係合穴部19cに挿入されて、係合穴部19c周縁に係合されることとなる。そして、このとき、先端側に配置される拡張用軸部21dが張出し鉤部20bの間に挿入されることとなる(
図2参照)。
【0034】
そして、実施形態では、この取付クリップ17では、エアバッグ22を折り畳んで形成される折り完了体43をケース46(46F,46R)内に収納させてエアバッグ組付体AM1を形成する際には、押しピン21を挿入凹部20a内に押し込んでいない状態(突起本体21cが係合穴部19b周縁に係合された状態)で、張出し鉤部20bが、取付座54の取付孔54aの周縁部位54bに係止されることとなり、取付クリップ17が、取付部31を介して取付座54に仮止めされることとなる(
図15参照)。そして、取付部31をインナパネル2に取り付ける際には、エアバッグ組付体AM1において、ケース46(46F,46R)の取付座54から車外側Oに突出している取付クリップ17の取付脚部20を、インナパネル2の取付孔3に挿入させた状態で、押しピン21を、撓み片21bを上下方向の中央側に撓ませつつ、拡張用軸部21dを挿入凹部20a内に押し込めば、突起本体21cが、車外側Oの係合穴部19cに挿入されて(
図2参照)、係合穴部19c周縁に係合されることとなり、拡張用軸部21dが、張出し鉤部20bの間に挿入されることとなって、この張出し鉤部20bが、取付孔3の車外側Oの周縁を係止して、取付部31を、ケース46(46F,46R)の取付座54とともに、車両Vのボディ1側のインナパネル2に対して取り付けることとなる。
【0035】
締結バンド57は、ポリアミド樹脂やポリプロピレン等の合成樹脂から形成されるもので、実施形態の場合、
図1,10のC,14に示すように、折り完了体43に対して、前後方向に沿った複数箇所(実施形態の場合、5箇所)に、巻き付けられている。締結バンド57は、
図6〜8に示すように、帯状の本体部58と、本体部58の両端に配置される係合部59,66と、を、備えている。本体部58は、折り完了体43に巻き付け可能な帯状とされている。係合部59,66は、締結バンド57の本体部58を折り完了体43に巻き付けた際に相互に接近する本体部58の両端側に、形成されるもので、一対として、一端側に係合突起60を配置させ、他端側に係合凹部68を配置させる構成とされている。
【0036】
一端側の係合部59は、係合突起60と、締結バンド57の巻き付け作業時に把持するための把持片部64と、を備えている。
【0037】
係合突起60は、本体部58の端縁58a側から、本体部58の長手方向に沿って突出するように形成されるもので、幅寸法も、本体部58の幅寸法と略同一として構成されている。係合突起60は、係合凹部68に挿入される挿入片部61と、挿入片部61の先端61a側において外周側(車両への搭載時における上側)に向かって突出するように形成される突起部本体62と、を、備えている。突起部本体62は、元部側を挿入片部61から突出させるように厚くして、先端側にかけて薄くするように、外周面側を傾斜させた断面略矢印状として構成されるもので、この外周側の傾斜面を、係合凹部68に挿入される際のガイド面62aとし、元部側端面を、係合凹部68に形成される被係合突起69の被係合面部69bに係止される係合面部62bとしている(
図13のA参照)。
【0038】
把持片部64は、本体部58の端縁58a近傍における外周面から外方に向かって突出するように形成されている。実施形態の場合、把持片部64は、本体部58に対して略直交するように、本体部58から突出して形成されている。
【0039】
他端側の係合部66は、係合突起60を挿入させて係合可能な係合凹部68を備える箱状部67と、ケース46の係止座部50に係止される係止部71と、エアバッグ22の貫通孔29周縁に係止される係止爪部77と、を備えている。
【0040】
箱状部67は、略直方体状として構成されて、下端側における車外側の面に、本体部58を連結させて構成されるもので、締結バンド57の折り完了体43への巻き付け作業時に把持する部位でもある。係合凹部68は、箱状部67を、車内側面67aの一部を開口させつつ、係合突起60を挿入可能に、車外側Oに向かって凹ませるようにして、形成されている。実施形態の場合、係合凹部68は、車内外方向に沿って箱状部67を貫通して、形成されている。また、詳細には、係合凹部68は、上面68aに、係合突起60における挿入片部61の先端61a側に形成される突起部本体62に対応して、突起部本体62を係合可能な被係合突起69を、備えている。被係合突起69は、係合凹部68の上面68aにおける車内側端側から下方に突出するように形成されるもので、車内側Iから車外側Oにかけて突出量を大きくするように、傾斜して形成され、この下面側の傾斜面を、係合突起60の突起部本体62を案内するガイド面69aとしている。そして、被係合突起69は、車外側の面を、係合突起60の突起部本体62における係合面部62bを係合させる被係合面部69bとしており、被係合面部69bは、係合面部62bに対応して、上下方向に略沿って、形成されている(
図13のA参照)。なお、係合凹部68と係合突起60との係合力は、エアバッグ22の展開膨張時に、係合を解除可能(締結状態を解除可能)で、かつ、折り完了体43の周囲に巻き付けた後に、把持片部64を手で引っ張っても、係合を解除不能なように、設定されている。
【0041】
係止部71は、箱状部67の上面67b側から上方に突出するように形成されるもので、箱状部67の上面67bから上方に突出するように形成される係止首部72と、係止首部72の上端側において膨出して形成される係止頭部75と、を備えている。この係止部71は、ケース46に形成される被係止部としての係止座部50に係止されるもので、取付クリップ17を取付座54に仮止めする方向に沿うように、車外側Oに向かって移動されるようにして、係止座部50に形成される係止凹部51に挿入されて、係止座部50に係止される構成とされている(
図17参照)。
【0042】
係止首部72は、
図9に示すように、断面形状を、長軸を車内外方向に略沿わせた略楕円形状とされるもので、係止座部50の係止凹部51に挿入させる際の挿入方向と略直交する方向側の面である前面72a側と後面72b側とに、係止座部50の係止凹部51周縁に形成される突状片52,52を係止可能な係止凹溝73,73を、配置させている。係止凹溝73,73は、係止首部72の前面72aと後面72bとにおいて、それぞれ、車内外方向の中央となる部位を断面略四角形状に凹ませて構成されるもので、係止首部72の上下の全域にわたって、形成されている。係止首部72は、箱状部67の上面67b側において、前後の略中央であって、若干車外側となる位置に、形成されている。また、係止首部72は、長さ寸法(箱状部67の上面67bからの突出高さ)を、
図16に示すように、箱状部67と係止頭部75との間に、ケース46に形成される係止座部50を挿通可能な寸法に、設定されている。
【0043】
係止頭部75は、箱状部67の上面67bに略沿うようにして、係止首部72の上端から膨出して形成されるもので、車内外方向側を幅広とした略長方形板状とされている。この係止頭部75は、下面75a側を、箱状部67の上面67bに略沿わせるような平面状として構成されるもので、係止座部50に係止された際に、係止座部50に対する上下動を、係止頭部75と箱状部67とによって、規制される構成である。実施形態の場合、係止頭部75は、係止首部72からの前後方向側への突出量と、車内外方向側への突出量と、を、同一として、前後方向側の幅寸法を、箱状部67の前後方向側の幅寸法より小さく設定され、車内外方向側の幅寸法を、箱状部67の車内外方向側側の幅寸法より大きく設定されて、車外側への突出量を若干大きくされている。
【0044】
係止爪部77は、箱状部67の下面側から下方(内方)に向かって突出するように形成されるもので、エアバッグ22の貫通孔29に挿通可能な係止首部77aと、係止首部77aの先端側において膨出して形成されて貫通孔29周縁に係止可能な係止頭部77bと、を有して、外形形状を、略矢印板形状とされている(
図6及び
図12参照)。この係止爪部77は、締結バンド57の折り完了体43周囲への巻き付け時に、折り完了体43の上方から、貫通孔29に差し込むようにして配置させた際に、貫通孔29周縁に係止される先端側の係止頭部77bを車内側Iに向けるように、係止首部77aの部位で屈曲されて配置されるもので(
図11のB参照)、締結バンド57の折り完了体43の周囲への巻き付け作業時(係合突起60の係合凹部68への係合時)に、折り完了体43が締結バンド57に対して回転するのを防止することもできる。具体的には、折り完了体43が締結バンド57に対して車内側Iに回転しようとする場合には、貫通孔29に貫通されている係止首部77aによって、さらなる回転移動を防止でき、折り完了体43が締結バンド57に対して車外側Oに回転しようとする場合には、貫通孔29周縁に係止されている係止頭部77bによって、さらなる回転移動を防止できる。そのため、係止爪部77を貫通孔29周縁に係止させておけば、箱状部67を強く把持しなくとも、係合突起60を係合凹部68に容易に係合させることができ、締結バンド57の折り完了体43の周囲への巻き付け作業が容易である。
【0045】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ22を、
図10のB及び
図11に示すように、折り畳む。実施形態の場合、エアバッグ22を、平らに展開した状態から、上縁22a側の領域を、上縁22aと略平行な折目を付けて蛇腹折りして、蛇腹折り部位43aを形成し、下方の領域を、下縁22bを車外側壁部23b側で巻くロール折りにより折り畳んで、ロール折り部位43bを形成して、折り完了体43を形成する。実施形態の折り完了体43では、蛇腹折り部位43aにおいて、上縁22a側に近く、かつ、貫通孔29より下方となる位置に、車内側Iに位置させて折った折目VFが設けられ、貫通孔29は、折り完了体43の上面側に、露出している。
【0046】
次に、
図10のC及び
図11に示すように、折り完了体43の周囲に、締結バンド57を巻き付けて、折り完了体43を包む。
【0047】
このとき、まず、
図11のA,B及び
図12に示すように、締結バンド57の係止爪部77を、貫通孔29に挿入させ、係止爪部77の係止頭部77bを貫通孔29周縁に係止させる。次いで、把持片部64を把持して、
図11のCに示すように、本体部58を折り完了体43の周囲に巻き付けるようにして、係合部59を係合部66に接近させ、係合部59の係合突起60を、係合部66の係合凹部68に挿入させて、
図11のD及び
図13のBに示すように、突起部本体62,被係合突起69相互を係合させれば、
図10のCに示すように、折り完了体43の周囲を、締結バンド57によって、折り崩れを防止してくるむことができる。
【0048】
次いで、折り完了体43を、ケース46(46F,46R)内に収納させ、取付部31を取付座54の車内側面54cに重ねた状態で、取付クリップ17の取付脚部20を、取付部31及び取付座54の取付孔31a,54aに、取付座54の車内側面54c側(車内側I)から挿入させ、取付脚部20を、取付座54における取付孔54aの周縁部位54bに係止させて、取付クリップ17を取付座54に仮止めする(
図15参照)。また、
図16に示すように、締結バンド57に形成される係止部71の係止首部72を、係止座部50の係止凹部51に、車内側Iから挿入させて、係止凹部51の周縁に形成される突状片52を、係止首部72に形成される係止凹溝73の周縁に係止させて、締結バンド57をケース46に連結させる(
図16参照)。さらに、折り完了体43から突出しているエアバッグ22の接続口部25に、取付ブラケット13を取付済みのインフレーター12を挿入して、クランプ15により、接続口部25とインフレーター12とを連結すれば、エアバッグ組付体AM1を形成することができる(
図14参照)。
【0049】
そして、エアバッグ組付体AM1から突出している取付クリップ17の取付脚部20を、インナパネル2に形成される取付孔3に挿入させ、取付クリップ17の拡張用軸部21dを張出し鉤部20b間に配置させるように押しピン21を押し込めば、
図2に示すように、張出し鉤部20bを取付孔3の周縁に係止させることができて、取付部31を、ケース46の取付座54とともに、ボディ1側のインナパネル2に取り付けることができる。同時に、インフレーター12の取付ブラケット13を、ボルト14を使用して、インナパネル2の所定位置に固定させれば、エアバッグ組付体AM1を車両Vに組み付けることができる。その後、インフレーター12に、インフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線するとともに、フロントピラーガーニッシュ5,ルーフヘッドライニング6,中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8を、ボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを、車両Vに搭載することができる。
【0050】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター12が作動されれば、インフレーター12から吐出される膨張用ガスがエアバッグ22内に流入して、膨張するエアバッグ22が、締結バンド57における係合突起60と係合凹部68との係合状態(締結バンド57の締結状態)を解除しつつ、エアバッグカバー10を押し開いて、下方へ突出しつつ展開し、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPの車内側を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0051】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、合成樹脂製の締結バンド57を、折り畳まれたエアバッグ22の折り完了体43の周囲に巻き付けることにより、エアバッグ22の折り崩れを防止しており、この締結バンド57を、折り完了体43のケース46への組み付けにも、使用していることから、エアバッグ22の折り畳み形状の維持と、折り完了体43のケース46への組み付けとを、1つの締結バンド57で行なうことができて、部品点数の増大を抑制でき、また、従来のごとく、エアバッグの折り畳み時と、折り完了体のケースへの収納時と、に必要とされていたテープ巻き付け作業が不要となり、作業工数を低減させることができる。また、ケース46には、取付具としての取付クリップ17を用いてエアバッグ22の取付部31とともに車両Vのボディ1側に取り付けられる取付座54と、締結バンド57に形成される係止部71を係止可能な被係止部としての係止座部50と、が、形成されており、締結バンド57の係止部71は、エアバッグ組付体AM1の形成時に、取付クリップ17を用いて取付部31を取付座54に仮止めする方向側となる車内側Iから車外側Oに向かうような移動によって、係止座部50に係止させる構成とされている。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、
図18に示すように、エアバッグ組付体AM1の形成時に、取付クリップ17によって取付部31を取付座54に仮止めする方向と、係止部71を係止座部50に係止させる方向と、が同じであることから、折り完了体43のケースへ36の組付時に、折り完了体43をケース46に収納させるようにして、作業台に一旦セットすれば、ケース46の向きを変えることなく、取付クリップ17による取付部31の取付座54への仮止めと、係止部71の係止座部50への係止とを、行なうことができる。そのため、取付部31の取付座54への仮止めと、係止部71の係止座部50への係止とを、簡易に行なうことができて、作業工数の増大を、抑制できる。
【0052】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、ケース46に収納させた状態で車両Vに搭載させる構成であっても、折り畳まれたエアバッグ22のケース46への組み付け作業が容易で、作業工数の増大を抑制できる。
【0053】
実施形態では、取付具として、取付座54に形成される取付孔54aに挿入可能な取付脚部20を備えた取付クリップ17を使用しており、エアバッグ組付体AM1の車両Vへの組み付けが容易であるが、このような点を考慮しなければ、取付具として、
図19に示すエアバッグ組付体AM2のように、取付部31を挟むようにして取付部31に取り付けられる板金製のプレート80,80を備える構成のものを使用してもよい。
図19に示すエアバッグ組付体AM2では、取付具を構成するプレート80,80は、取付部31を挟むように2枚配置されるもので、
図20に示すように、取付部31及びケース46Aの取付座83とともにボルト81を貫通させて、このボルト81を、インナパネル2Aに形成される取付孔3Aに固着されるナット3aに締結させることにより、取付座83とともに、取付部31を、車両のボディ1A側に取り付ける構成とされている。プレート80,80は、ボルト81を貫通させるための貫通孔80aを有し、貫通孔80aの前後両側となる二箇所でかしめられて、取付部31を挟持させている。ケース46Aの取付座83は、平板状として構成され、ボルト81を貫通させるための貫通孔83aを、有している。取付座83の前後方向の縁部側には、
図21に示すように、エアバッグ組付体AM2の形成時に、取付部31を挟持させた状態のプレート80,80を、取付座83の正面側(車内側I)から仮止め可能な係止突起(係止部)84,84が、車内側Iに突出するように形成されている。この係止突起84は、
図19に示すように、上下方向に沿って配置されるもので、車内側Iに突出するように形成されるとともに、薄肉状として、前後方向側の断面形状を、先端を前後方向の内方に向けつつ車外側Oに向けるように、屈曲させて構成されている。この係止突起84,84は、車内側端縁84a,84a間の離隔距離を、プレート80の前後の幅寸法より大きく設定されていることから、この係止突起84は、エアバッグ組付体AM2の形成時に、折り完了体43において、取付部31を挟持させた状態のプレート80,80を、車内側Iから取付座83側(車外側O)に向かって移動させれば、プレート80に押圧されて前後方向の外側に向かって一旦撓み(
図21のAの二点鎖線参照)、その後復元されて、プレート80の前後両縁側における車外側の面に係止されることとなる。そして、係止突起84は、取付部31を挟持させたプレート80,80を、取付座83に仮止めさせることができる。
【0054】
また、
図19に示すエアバッグ組付体AM2では、締結バンド57Aに形成される係止部88、及び、係止部88を係止させるケース46Aの被係止部としての係止座部86も、上述のエアバッグ組付体AM1と形状を異ならせて構成されている。ケース46Aに形成される被係止部としての係止座部86は、
図19に示すように、取付座83に略沿うような平板状として構成され、車内外方向に貫通して形成されて、係止部88を構成する突出片部89の先端側部位89aを周縁で係止可能な略長方形状に開口した係止孔86aを、有している(
図21参照)。係止部88は、締結バンド57Aにおける箱状体69Aの車外側の面から車外側Oに向かって突出するとともに前後方向側で配置される一対の突出片部89から構成されている。突出片部89は、
図22に示すように、先端側を前後方向の外方に向けて突出させるように構成されるもので、この先端側部位89aは、前後方向の外方側の縁部を、傾斜させるようにして、先細り状とされている。また、先端側部位89a,89aは、車外側端末89b,89b間の離隔距離を、係止孔86aの前後の開口幅寸法より小さく設定されていることから、エアバッグ組付体AM2の形成時に、この係止部88(突出片部89)を、係止座部86側(車外側O)に向かって移動させれば、突出片部89が、係止孔86aに挿通される際に、先端側部位89aの前後方向の外方側の縁部をガイドとして、先端側部位89aを前後の中央側に向けるように撓み、その後、復元されて、先端側部位89aを係止孔86a周縁に係止されることとなる。
【0055】
この
図19に示す構成のエアバッグ組付体AM2においても、エアバッグ組付体AM2の形成時に、取付具を構成しているプレート80,80によって取付部31を取付座54に仮止めする方向と、係止部71を係止座部50に係止させる方向と、が同じであることから、折り完了体43のケースへ36の組付時に、折り完了体43をケース46に収納させるようにして、作業台に一旦セットすれば、ケース46の向きを変えることなく、取付クリップ17による取付部31の取付座54への仮止めと、係止部71の係止座部50への係止とを、行なうことができる。そのため、取付部31の取付座54への仮止めと、係止部71の係止座部50への係止とを、簡易に行なうことができて、作業工数の増大を、抑制できる。
【0056】
なお、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mに使用される締結バンド57は、エアバッグ22の展開膨張時に、係合突起60と係合凹部68との係合状態を解除することにより、締結状態を解除される構成であるが、締結バンドの締結状態の解除は、これに限られるものではない。例えば、締結バンドの本体部に、破断の起点となる薄肉部や切欠部を形成し、エアバッグの展開膨張時に本体部自体を破断させることにより、締結状態を解除させるように構成してもよい。