(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備えると共に、タイヤ周方向に延在する少なくとも3本の周方向主溝と、これらの周方向主溝に区画されて成る複数の陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記ベルト層が、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有すると共に相互に異符号のベルト角度を有する一対の交差ベルトと、タイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内にあるベルト角度を有する周方向補強層とを積層して成り、
タイヤ子午線方向の断面視にて、前記周方向主溝の溝底を接続したトレッドプロファイルに平行な曲線として定義される末端摩耗面WEを引くときに、タイヤ赤道面上における前記周方向補強層から末端摩耗面WEまでの距離Dccと、前記周方向補強層の端部から末端摩耗面WEまでの距離Deとが、1.06≦De/Dccの関係を有し、且つ、
タイヤ実接地幅Wgと、前記カーカス層のカーカス断面幅Wcaとが、0.64≦Wg/Wca≦0.84の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
カーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備えると共に、タイヤ周方向に延在する少なくとも3本の周方向主溝と、これらの周方向主溝に区画されて成る複数の陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記ベルト層が、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有すると共に相互に異符号のベルト角度を有する一対の交差ベルトと、タイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内にあるベルト角度を有する周方向補強層とを積層して成り、
タイヤ子午線方向の断面視にて、前記周方向主溝の溝底を接続したトレッドプロファイルに平行な曲線として定義される末端摩耗面WEを引くときに、タイヤ赤道面上における前記周方向補強層から末端摩耗面WEまでの距離Dccと、前記周方向補強層の端部から末端摩耗面WEまでの距離Deとが、1.06≦De/Dccの関係を有し、且つ、
タイヤ実接地幅Wgと、タイヤ総幅SWとが、0.60≦Wg/SW≦0.80の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
タイヤ赤道面におけるトレッドプロファイルからタイヤ内周面までの距離Gccと、トレッド端からタイヤ内周面までの距離Gshとが、1.10≦Gsh/Gccの関係を有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
幅広な前記交差ベルトの幅Wb2と、前記カーカス層の断面幅Wcaとが、0.74≦Wb2/Wca≦0.89の関係を有する請求項1〜7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
前記カーカス層の最大高さ位置の径Yaと、前記周方向補強層の端部位置における前記カーカス層の径Ydとが、0.95≦Yd/Ya≦1.02の関係を有する請求項1〜8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
タイヤ赤道面上における前記周方向補強層からトレッドプロファイルまでの距離Hccと、前記周方向補強層の端部からトレッドプロファイルまでの距離Heとが、0.95≦He/Hcc≦1.20の関係を有する請求項1〜9のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
前記周方向補強層のベルトコードが、スチールワイヤであり、17[本/50mm]以上30[本/50mm]以下のエンド数を有する請求項1〜12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
前記周方向補強層を構成するベルトコードの部材時における引張り荷重100[N]から300[N]時の伸びが1.0[%]以上2.5[%]以下である請求項1〜13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
前記周方向補強層を構成するベルトコードのタイヤ時における引張り荷重500[N]から1000[N]時の伸びが0.5[%]以上2.0[%]以下である請求項1〜14のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
前記応力緩和ゴムの100%伸張時モジュラスEinと、前記一対の交差ベルトのコートゴムの100%伸張時モジュラスEcoとが、Ein<Ecoの関係を有する請求項16に記載の空気入りタイヤ。
前記応力緩和ゴムの100%伸張時モジュラスEinと、前記一対の交差ベルトのコートゴムの100%伸張時モジュラスEcoとが、0.6≦Ein/Eco≦0.9の関係を有する請求項16または17に記載の空気入りタイヤ。
前記応力緩和ゴムの100%伸張時モジュラスEinが、4.0[MPa]≦Ein≦5.5[MPa]の範囲内にある請求項16〜18のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0012】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤ1の一例として、長距離輸送用のトラック、バスなどに装着される重荷重用ラジアルタイヤを示している。なお、符号CLは、タイヤ赤道面である。また、同図では、トレッド端Pとタイヤ接地端Tとが、一致している。また、同図では、周方向補強層145にハッチングを付してある。
【0013】
この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16とを備える(
図1参照)。
【0014】
一対のビードコア11、11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、ローアーフィラー121およびアッパーフィラー122から成り、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0015】
カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で85[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0016】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141〜145を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルト層14の具体的な構成については、後述する。
【0017】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。
【0018】
なお、
図1の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ周方向に延在する7本の周方向主溝2と、これらの周方向主溝2に区画されて成る8つの陸部3とを備えている。また、各陸部3が、タイヤ周方向に連続するリブ、あるいは、ラグ溝(図示省略)によりタイヤ周方向に分断されたブロックとなっている。
【0019】
ここで、周方向主溝とは、5.0[mm]以上の溝幅を有する周方向溝をいう。周方向主溝の溝幅は、溝開口部に形成された切欠部や面取部を除外して測定される。
【0020】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の周方向主溝2、2を最外周方向主溝と呼ぶ。また、左右の最外周方向主溝2、2に区画されたタイヤ幅方向外側にある左右の陸部3、3をショルダー陸部と呼ぶ。
【0021】
[ベルト層]
図2および
図3は、
図1に記載した空気入りタイヤのベルト層を示す説明図である。これらの図において、
図2は、タイヤ赤道面CLを境界としたトレッド部の片側領域を示し、
図3は、ベルト層14の積層構造を示している。なお、
図3では、各ベルトプライ141〜145中の細線が各ベルトプライ141〜145のベルトコードを模式的に示している。
【0022】
ベルト層14は、高角度ベルト141と、一対の交差ベルト142、143と、ベルトカバー144と、周方向補強層145とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される(
図2参照)。
【0023】
高角度ベルト141は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で45[deg]以上70[deg]以下のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有する。また、高角度ベルト141は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0024】
一対の交差ベルト142、143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト142、143は、相互に異符号のベルト角度を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ここでは、タイヤ径方向内側に位置する交差ベルト142を内径側交差ベルトと呼び、タイヤ径方向外側に位置する交差ベルト143を外径側交差ベルトと呼ぶ。なお、3枚以上の交差ベルトが積層されて配置されても良い(図示省略)。また、一対の交差ベルト142、143は、この実施の形態では、高角度ベルト141のタイヤ径方向外側に積層されて配置されている。
【0025】
また、ベルトカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー144は、一対の交差ベルト142、143のタイヤ径方向外側に積層されて配置されている。なお、この実施の形態では、ベルトカバー144が、外径側交差ベルト143と同一のベルト角度を有し、また、ベルト層14の最外層に配置されている。
【0026】
周方向補強層145は、コートゴムで被覆されたスチール製のベルトコードをタイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内で傾斜させつつ螺旋状に巻き廻わして構成される。また、周方向補強層145は、この実施の形態では、一対の交差ベルト142、143の間に挟み込まれて配置されている。また、周方向補強層145は、一対の交差ベルト142、143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置される。具体的には、1本あるいは複数本のワイヤが内径側交差ベルト142の外周に螺旋状に巻き廻されて、周方向補強層145が形成される。この周方向補強層145がタイヤ周方向の剛性を補強することにより、タイヤの耐久性能が向上する。
【0027】
なお、この空気入りタイヤ1では、ベルト層14が、エッジカバーを有しても良い(図示省略)。一般に、エッジカバーは、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で0[deg]以上5[deg]以下のベルト角度を有する。また、エッジカバーは、外径側交差ベルト143(あるいは内径側交差ベルト142)の左右のエッジ部のタイヤ径方向外側にそれぞれ配置される。これらのエッジカバーがタガ効果を発揮することにより、トレッド部センター領域とショルダー領域との径成長差が緩和されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0028】
また、
図2の構成では、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143の間に挟み込まれて配置されている(
図2参照)。しかし、これに限らず、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143のタイヤ径方向外側に配置されても良い(図示省略)。また、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143の内側に配置されても良い。例えば、周方向補強層145が、(1)高角度ベルト141と内径側交差ベルト142との間に配置されても良いし、(2)カーカス層13と高角度ベルト141との間に配置されても良い(図示省略)。
【0029】
[ウェット性能の向上]
トラック・バスなどに装着される近年の重荷重用タイヤは、低い偏平率を有する一方で、ベルト層に周方向補強層を配置することにより、トレッド部の形状を保持している。具体的には、周方向補強層が、トレッド部センター領域に配置されてタガ効果を発揮することにより、トレッド部の径成長を抑制してトレッド部の形状を保持している。
【0030】
かかる構成では、トレッド部センター領域では、接地面のフラットな形状が周方向補強層により保持されるが、トレッド部ショルダー領域では、周方向補強層の端部からタイヤ幅方向外側の領域にてトレッド部が肩落ち形状となり易い。このため、ショルダー陸部の接地面圧が低下して、タイヤのウェット性能が低下するという課題がある。
【0031】
そこで、この空気入りタイヤ1は、ウェット性能を向上させるために、以下の構成を採用している(
図1〜
図3参照)。
【0032】
まず、
図2に示すように、タイヤ子午線方向の断面視にて、周方向主溝2の末端摩耗面WEを引く。末端摩耗面WEとは、タイヤに存在する摩耗指標から推定される表面をいう。また、末端摩耗面WEは、タイヤを非インフレート状態としたタイヤ単体の状態で測定される。一般的な空気入りタイヤでは、末端摩耗面WEが、トレッドプロファイルに略平行な曲線上にある。
【0033】
このとき、タイヤ赤道面CL上における周方向補強層145から末端摩耗面WEまでの距離Dccと、周方向補強層145の端部から末端摩耗面WEまでの距離Deとが、1.06≦De/Dccの関係を有することが好ましく、1.08≦De/Dccの関係を有することがより好ましい。比De/Dccの上限は、特に限定がないが、比De/Dccが過大となると、タイヤ転動時におけるトレッドゴムの発熱が大きくなりタイヤの耐久性能が悪化するため、好ましくない。したがって、例えば、比De/Dccの上限が、De/Dcc≦1.26の範囲にあることが好ましい。
【0034】
距離Dccおよび距離Deは、タイヤを非インフレート状態としたタイヤ単体の状態で測定される。また、周方向補強層145側の測定点は、タイヤ子午線方向の断面視にて、周方向補強層145を構成するベルトコードの中心点を結ぶ曲線により規定される。また、周方向補強層145の端部は、周方向補強層145を構成するベルトコードのうちタイヤ幅方向の最も外側にあるベルトコードを基準として規定される。
【0035】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0036】
また、タイヤ赤道面CLにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内周面までの距離Gccと、トレッド端Pからタイヤ内周面までの距離Gshとが、1.10≦Gsh/Gccの関係を有することが好ましく、1.20≦Gsh/Gccの関係を有することがより好ましい。
【0037】
比Gsh/Gccの上限は、特に限定がない。ただし、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されて無負荷状態とされたときに、トレッドプロファイルのトレッド端Pにおけるラジアスがタイヤ赤道面CLにおけるラジアスに対して同等以下となるように、比Gsh/Gccの上限が規定されることが好ましい。すなわち、トレッドプロファイルがタイヤ径方向内側に中心を有する円弧形状ないしは直線形状を有し、逆R形状(タイヤ径方向外側に中心を有する円弧形状)とならないように、比Gsh/Gccの上限が規定されることが好ましい。例えば、
図2のようなスクエア形状のショルダー部を有する構成では、比Gsh/Gccの上限が1.4〜1.5程度となる。一方で、後述する
図5のようなラウンド形状のショルダー部を有する構成では、比Gsh/Gccの上限が1.3〜1.4程度となる。
【0038】
距離Gccは、タイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ赤道面CLとトレッドプロファイルとの交点からタイヤ赤道面CLとタイヤ内周面との交点までの距離として測定される。したがって、
図1および
図2の構成のように、タイヤ赤道面CLに周方向主溝2がある構成では、この周方向主溝2を除外して、距離Gccが測定される。距離Gshは、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド端Pからタイヤ内周面に下ろした垂線の長さとして測定される。
【0039】
なお、
図2の構成では、空気入りタイヤ1が、カーカス層13の内周面にインナーライナ18を備え、このインナーライナ18が、タイヤ内周面の全域に渡って配置されている。かかる構成では、距離Gccおよび距離Gshが、このインナーライナ18の表面を基準(タイヤ内周面)として測定される。
【0040】
トレッド端Pとは、(1)スクエア形状のショルダー部を有する構成では、そのエッジ部の点をいう。例えば、
図2の構成では、ショルダー部がスクエア形状を有することにより、トレッド端Pとタイヤ接地端Tとが一致している。一方、(2)後述する
図5の変形例に示すような、ラウンド形状のショルダー部を有する構成では、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド部のプロファイルとサイドウォール部のプロファイルとの交点P’をとり、この交点P’からショルダー部に引いた垂線の足をトレッド端Pとする。
【0041】
なお、タイヤ接地端Tとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置をいう。
【0042】
また、
図1において、タイヤ実接地幅Wg(図示省略)と、カーカス層13の断面幅Wcaとが、0.64≦Wg/Wca≦0.84の関係を有することが好ましい。これにより、タイヤ実接地幅Wgと、カーカス層13の断面幅Wcaとの比Wg/Wcaが適正化される。
【0043】
タイヤ実接地幅Wgは、タイヤ全体の接地幅と、すべての周方向主溝2の溝幅の総和との差として算出される。
【0044】
接地幅は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与した状態において、各陸部のトレッド表面に沿った距離の合計として測定される。
【0045】
カーカス層13の断面幅Wcaは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのカーカス層13の左右の最大幅位置の直線距離をいう。
【0046】
さらに、
図1において、タイヤ実接地幅Wgと、タイヤ総幅SWとが、0.60≦Wg/SW≦0.80の関係を有することが好ましい。これにより、タイヤ実接地幅Wgとタイヤ総幅SWとの比Wg/SWが適正化される。
【0047】
タイヤ総幅SWとは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのサイドウォール間の(タイヤ側面の模様、文字などのすべての部分を含む)直線距離をいう。
【0048】
また、
図1において、タイヤ実接地幅Wgと、周方向補強層145の幅Wsとが、1.00≦Wg/Ws≦1.25の関係を有することが好ましい。これにより、タイヤ実接地幅Wgと周方向補強層145の幅Wsとの比Wg/Wsが適正化される。
【0049】
周方向補強層145の幅Wsは、周方向補強層145の左右の端部のタイヤ回転軸方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。また、周方向補強層145がタイヤ幅方向に分割された構造を有する場合(図示省略)には、周方向補強層145の幅Wsが、各分割部の最外端部間の距離となる。
【0050】
図4は、
図1に記載した空気入りタイヤの作用を示す説明図である。同図は、相互に異なる比De/Dccおよび比Gsh/Gccを有するタイヤの接地状態をそれぞれ示している。
【0051】
図4(a)の比較例のタイヤでは、
図1〜
図3の構成において、比De/Dccが等しく設定され(De/Dcc=1.00)、且つ、比Gsh/Gccが小さく設定されている(Gsh/Gcc=1.06)。かかる構成では、タイヤ非接地状態にて、トレッドプロファイルが、タイヤ赤道面CLからトレッド端Pに向かって外径を縮小する肩落ち形状を有する(図示省略)。このため、タイヤ接地時には、
図4(a)に示すように、トレッド部ショルダー領域が路面側(タイヤ径方向外側)に大きく変形する。このとき、周方向補強層145から末端摩耗面WEまでの距離Dcc、Deが一様(De/Dcc=1.00)なので、周方向補強層145の端部が、トレッド部ショルダー領域の変形に追従して路面側(タイヤ径方向外側)に大きく撓む。このため、タイヤ接地時における周方向補強層145の歪みが大きい。
【0052】
これに対して、
図4(b)の実施例のタイヤでは、
図1〜
図3の構成において、比De/Dccが大きく設定され(De/Dcc=1.08)、且つ、比Gsh/Gccが大きく設定される(Gsh/Gcc=1.20)。かかる構成では、タイヤ非接地状態にて、トレッドプロファイルのタイヤ赤道面CLにおける外径とトレッド端Pにおける外径との径差が小さく、トレッドプロファイルが全体としてフラット(タイヤ回転軸に略平行)な形状を有する(
図1および
図2参照)。このため、
図4(b)に示すように、タイヤ接地時におけるトレッド部ショルダー領域の変形量が小さい。さらに、周方向補強層145から末端摩耗面WEまでの距離Dcc、Deが
Dcc<Deの関係を有するので、比De/Dccが略等しい構成と比較して、タイヤ接地時におけるショルダー陸部の接地面圧が上昇する。
【0053】
上記のように、
図4(b)の構成では、
図4(a)の構成と比較して、タイヤ接地時にて、トレッド部ショルダー領域の変形量が小さい。これにより、トレッド部ショルダー領域の剛性が確保され、また、接地面形状が適正に確保されて、タイヤのウェット性能が向上する。また、タイヤ接地時にて、ショルダー陸部の接地面圧が上昇するので、ウェット路走行時におけるタイヤの制動性能が向上する。
【0054】
[ラウンド形状のショルダー部]
図5は、
図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、ラウンド形状のショルダー部を有する構成を示している。
【0055】
図1の構成では、
図2に示すように、ショルダー部がスクエア形状を有し、タイヤ接地端Tとトレッド端Pとが一致している。
【0056】
しかし、これに限らず、
図5に示すように、ショルダー部がラウンド形状を有しても良い。かかる場合には、上記のように、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッド部のプロファイルとサイドウォール部のプロファイルとの交点P’をとり、この交点P’からショルダー部に引いた垂線の足をトレッド端Pとする。このため、通常は、タイヤ接地端Tとトレッド端Pとが相互に異なる位置にある。
【0057】
[付加的事項]
また、この空気入りタイヤ1では、
図1において、トレッド幅TWと、周方向補強層145の幅Wsとが、0.70≦Ws/TW≦0.90の関係を有することが好ましい。
【0058】
トレッド幅TWとは、左右のトレッド端P、Pのタイヤ回転軸方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
【0059】
なお、一般的な空気入りタイヤは、
図1に示すように、タイヤ赤道面CLを中心とする左右対称な構造を有する。このため、タイヤ赤道面CLからトレッド端Pまでの距離がTW/2であり、タイヤ赤道面CLから周方向補強層145までの距離がWs/2となる。
【0060】
これに対して、左右非対称な構造を有する空気入りタイヤ(図示省略)では、上記したトレッド幅TWと周方向補強層の幅Wsとの比Ws/TWの範囲が、タイヤ赤道面CLを基準とする半幅に換算されて規定される。具体的には、タイヤ赤道面CLからトレッド端Pまでの距離TW’(図示省略)と、タイヤ赤道面CLから周方向補強層145の端部までの距離Ws’(図示省略)とが、0.70≦Ws’/TW’≦0.90の関係に設定される。
【0061】
また、
図1に示すように、トレッド幅TWと、タイヤ総幅SWとが、0.79≦TW/SW≦0.89の関係を有することが好ましい。
【0062】
また、
図2に示すように、タイヤ赤道面CL上における周方向補強層145からトレッドプロファイルまでの距離Hccと、周方向補強層145の端部からトレッドプロファイルまでの距離Heとが、0.95≦He/Hcc≦1.20の関係を有することが好ましい。
【0063】
距離Hccおよび距離Heは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。また、周方向補強層145側の測定点は、タイヤ子午線方向の断面視にて、周方向補強層145を構成するベルトコードの中心点を結ぶ曲線により規定される。また、周方向補強層145の端部は、周方向補強層145を構成するベルトコードのうちタイヤ幅方向の最も外側にあるベルトコードを基準として規定される。
【0064】
また、
図1において、カーカス層13の最大高さ位置の径Yaと、カーカス層13の最大幅位置の径Ycと、周方向補強層145の端部位置におけるカーカス層13の径Ydとが、0.80≦Yc/Ya≦0.90および0.95≦Yd/Ya≦1.02の関係を有する。これにより、カーカス層13の形状が適正化される。
【0065】
カーカス層13の最大高さ位置の径Yaは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、タイヤ回転軸からタイヤ赤道面CLとカーカス層13との交点までの距離として測定される。
【0066】
カーカス層13の最大幅位置の径Ycは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、タイヤ回転軸からカーカス層13の最大幅位置までの距離として測定される。
【0067】
周方向補強層145の端部位置におけるカーカス層13の径Ydは、周方向補強層145の端部からタイヤ径方向に引いた直線とカーカス層13との交点を点Q3(図示省略)とし、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、タイヤ回転軸から点Q3までの距離として測定される。
【0068】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地面における溝面積比Aが、0.20≦AA≦0.30の範囲にあることが好ましい。これにより、溝面積比Aが適正化される。
【0069】
溝面積比とは、溝面積/(溝面積+接地面積)により定義される。溝面積とは、接地面における溝の開口面積をいう。また、溝とは、トレッド部の周方向溝およびラグ溝をいい、サイプ、カーフおよび切欠部などを含まない。また、接地面積とは、タイヤと路面との接触面積をいう。また、溝面積および接地面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。
【0070】
また、
図1において、幅広な交差ベルト142の幅Wb2とカーカス層13の断面幅Wcaとが、0.74≦Wb2/Wca≦0.89の関係を有することが好ましく、0.78≦Wb2/Wca≦0.83の範囲内にあることがより好ましい。
【0071】
周方向補強層145の幅Wsと、カーカス層13の断面幅Wcaとが、0.60≦Ws/Wca≦0.70の関係を有することが好ましい。
【0072】
また、トレッド幅TWと、カーカス層13の断面幅Wcaとが、0.82≦TW/Wca≦0.92の関係を有することが好ましい。
【0073】
カーカス層13の断面幅Wcaは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのカーカス層13の左右の最大幅位置の直線距離をいう。
【0074】
また、
図3において、幅狭な交差ベルト143の幅Wb3と周方向補強層145の幅Wsとが、0.75≦Ws/Wb3≦0.90の関係を有することが好ましい。これにより、周方向補強層145の幅Wsが適正に確保される。
【0075】
また、
図3に示すように、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143のうち幅狭な交差ベルト143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置されることが好ましい。また、幅狭な交差ベルト143の幅Wb3と、周方向補強層145のエッジ部から幅狭な交差ベルト143のエッジ部までの距離Sとが、0.03≦S/Wb3≦0.12の範囲にあることが好ましい。これにより、交差ベルト143の幅Wb3の端部と周方向補強層145の端部との距離が適正に確保される。なお、この点は、周方向補強層145が分割構造を有する構成(図示省略)においても、同様である。
【0076】
周方向補強層145の距離Sは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ幅方向の距離として測定される。
【0077】
なお、
図1の構成では、
図3に示すように、周方向補強層145が、1本のスチールワイヤを螺旋状に巻き廻して構成されている。しかし、これに限らず、周方向補強層145が、複数本のワイヤを相互に併走させつつ螺旋状に巻き廻わして構成されても良い(多重巻き構造)。このとき、ワイヤの本数が、5本以下であることが好ましい。また、5本のワイヤを多重巻きしたときの単位あたりの巻き付け幅が、12[mm]以下であることが好ましい。これにより、複数本(2本以上5本以下)のワイヤをタイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内で傾斜させつつ適正に巻き付け得る。
【0078】
また、この空気入りタイヤ1では、高角度ベルト141の幅Wb1と、一対の交差ベルト142、143のうち幅狭な交差ベルト143の幅Wb3とが、0.85≦Wb1/Wb3≦1.05の関係を有することが好ましい(
図3参照)。これにより、比Wb1/Wb3が適正化される。
【0079】
高角度ベルト141の幅Wb1および交差ベルト143の幅Wb3は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ幅方向の距離として測定される。
【0080】
なお、
図1の構成では、
図3に示すように、ベルト層14がタイヤ赤道面CLを中心とする左右対称な構造を有し、また、高角度ベルト141の幅Wb1と幅狭な交差ベルト143の幅Wb3とが、Wb1<Wb3の関係を有している。このため、タイヤ赤道面CLの片側領域にて、高角度ベルト141のエッジ部が幅狭な交差ベルト143のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置されている。しかし、これに限らず、高角度ベルト141の幅Wb1と幅狭な交差ベルト143の幅Wb3とが、Wb1≧Wb3の関係を有しても良い(図示省略)。
【0081】
また、高角度ベルト141のベルトコードがスチールワイヤであり、高角度ベルトが15[本/50mm]以上25[本/50mm]以下のエンド数を有することが好ましい。また、一対の交差ベルト142、143のベルトコードがスチールワイヤであり、一対の交差ベルト142、143が18[本/50mm]以上28[本/50mm]以下のエンド数を有することが好ましく、20[本/50mm]以上25[本/50mm]以下のエンド数を有することがより好ましい。また、周方向補強層145のベルトコードが、スチールワイヤであり、且つ、17[本/50mm]以上30[本/50mm]以下のエンド数を有することが好ましい。これにより、各ベルトプライ141、142、143、145の強度が適正に確保される。
【0082】
また、高角度ベルト141のコートゴムの100%伸張時モジュラスE1と、周方向補強層145のコートゴムの100%伸張時モジュラスEsとが、0.90≦Es/E1≦1.10の関係を有することが好ましい。また、一対の交差ベルト142、143のコートゴムの100%伸張時モジュラスE2、E3と、周方向補強層145のコートゴムの100%伸張時モジュラスEsとが、0.90≦Es/E2≦1.10かつ0.90≦Es/E3≦1.10の関係を有することが好ましい。また、周方向補強層145のコートゴムの100%伸張時モジュラスEsが、4.5[MPa]≦Es≦7.5[MPa]の範囲内にあることが好ましい。これにより、各ベルトプライ141、142、143、145のモジュラスが適正化される。
【0083】
100%伸張時モジュラスは、JIS−K6251(3号ダンベル使用)に従った室温での引張試験により測定される。
【0084】
また、高角度ベルト141のコートゴムの破断伸びλ1が、λ1≧200[%]の範囲にあることが好ましい。また、一対の交差ベルト142、143のコートゴムの破断伸びλ2、λ3が、λ2≧200[%]かつλ3≧200[%]の範囲にあることが好ましい。また、周方向補強層145のコートゴムの破断伸びλsが、λs≧200[%]の範囲にあることが好ましい。これにより、各ベルトプライ141、142、143、145の耐久性が適正に確保される。
【0085】
破断伸びは、JIS−K7162規定の1B形(厚さ3mmのダンベル形)の試験片について、JIS−K7161に準拠して引張試験機(INSTRON5585H、インストロン社製)を用いた引張速度2[mm/分]での引張試験により測定される。
【0086】
また、周方向補強層145を構成するベルトコードの部材時において引張り荷重100[N]から300[N]時の伸びが1.0[%]以上2.5[%]以下、タイヤ時(タイヤから取り出したもの)において引張り荷重500[N]から1000[N]時の伸びが0.5[%]以上2.0[%]以下であることが好ましい。かかるベルトコード(ハイエロンゲーションスチールワイヤ)は、通常のスチールワイヤよりも低荷重負荷時の伸び率がよく、製造時からタイヤ使用時にかけて周方向補強層145にかかる負荷に耐えることができるので、周方向補強層145の損傷を抑制できる点で好ましい。
【0087】
ベルトコードの伸びは、JIS−G3510に準拠して測定される。
【0088】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドゴム15の破断伸びが、350[%]以上の範囲にあることが好ましい。これにより、トレッドゴム15の強度が確保されて、最外周方向主溝2におけるティアの発生が抑制される。なお、トレッドゴム15の破断伸びの上限は、特に限定がないが、トレッドゴム15のゴムコンパウンドの種類により制約を受ける。
【0089】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドゴム15の硬度が、60以上の範囲にあることが好ましい。これにより、トレッドゴム15の強度が適正に確保される。なお、トレッドゴム15の硬度の上限は、特に限定がないが、トレッドゴム15のゴムコンパウンドの種類により制約を受ける。
【0090】
ゴム硬度とは、JIS−K6263に準拠したJIS−A硬度をいう。
【0091】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドゴム15の損失正接tanδが、0.10≦tanδの範囲にあることが好ましい。
【0092】
損失正接tanδは、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度20[℃]、剪断歪み10[%]、周波数20[Hz]の条件で測定される。
【0093】
[ベルトクッション]
図2に示すように、この空気入りタイヤ1は、ベルトクッション20を備える。このベルトクッション20は、一対の交差ベルト142、143のうちタイヤ径方向内側にある交差ベルト142の端部と、カーカス層13との間に挟み込まれて配置される。例えば、
図2の構成では、ベルトクッション20が、タイヤ径方向外側の端部を交差ベルト142の端部とカーカス層13との間に挿入して、高角度ベルト141のエッジ部に当接している。また、ベルトクッション20が、カーカス層13に沿ってタイヤ径方向内側に延在して、カーカス層13とサイドウォールゴム16との間に挟み込まれて配置されている。また、左右一対のベルトクッション20が、タイヤ左右のサイドウォール部にそれぞれ配置されている。
【0094】
また、ベルトクッション20の100%伸張時モジュラスEbcが、1.5[MPa]≦Ebc≦3.0[MPa]の範囲内にある。ベルトクッション20のモジュラスEbcがかかる範囲内にあることにより、ベルトクッション20が応力緩和作用を発揮して、交差ベルト142の端部における周辺ゴムのセパレーションが抑制される。
【0095】
また、ベルトクッション20の破断伸びλbcが、λbc≧400[%]の範囲にある。これにより、ベルトクッション20の耐久性が適正に確保される。
【0096】
[ベルトエッジクッションの二色構造]
図6は、
図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、ベルト層14のタイヤ幅方向外側の端部の拡大図を示している。また、同図では、周方向補強層145、ベルトエッジクッション19にハッチングを付してある。
【0097】
図1の構成では、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143のうち幅狭な交差ベルト143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置されている。また、一対の交差ベルト142、143の間であって一対の交差ベルト142、143のエッジ部に対応する位置に、ベルトエッジクッション19が挟み込まれて配置されている。具体的には、ベルトエッジクッション19が、周方向補強層145のタイヤ幅方向外側に配置されて周方向補強層145に隣接し、周方向補強層145のタイヤ幅方向外側の端部から一対の交差ベルト142、143のタイヤ幅方向外側の端部まで延在して配置されている。
【0098】
また、
図1の構成では、ベルトエッジクッション19が、タイヤ幅方向外側に向かうに連れて肉厚を増加させることにより、全体として、周方向補強層145よりも肉厚な構造を有している。また、ベルトエッジクッション19が、各交差ベルト142、143のコートゴムよりも低い100%伸張時モジュラスEを有している。具体的には、ベルトエッジクッション19の100%伸張時モジュラスEと、コートゴムのモジュラスEcoとが、0.60≦E/Eco≦0.95の関係を有している。これにより、一対の交差ベルト142、143間かつ周方向補強層145のタイヤ幅方向外側の領域におけるゴム材料のセパレーションの発生が抑制されている。
【0099】
これに対して、
図6の構成では、
図1の構成において、ベルトエッジクッション19が、応力緩和ゴム191と、端部緩和ゴム192とから成る二色構造を有する。応力緩和ゴム191は、一対の交差ベルト142、143の間であって周方向補強層145のタイヤ幅方向外側に配置されて周方向補強層145に隣接する。端部緩和ゴム192は、一対の交差ベルト142、143の間であって、応力緩和ゴム191のタイヤ幅方向外側かつ一対の交差ベルト142、143のエッジ部に対応する位置に配置されて応力緩和ゴム191に隣接する。したがって、ベルトエッジクッション19が、タイヤ子午線方向の断面視にて、応力緩和ゴム191と端部緩和ゴム192とをタイヤ幅方向に連設して成る構造を有し、周方向補強層145のタイヤ幅方向外側の端部から一対の交差ベルト142、143のエッジ部までの領域を埋めて配置される。
【0100】
また、
図6の構成では、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinと、周方向補強層145のコートゴムの100%伸張時モジュラスEsとが、Ein<Esの関係を有する。具体的には、応力緩和ゴム191のモジュラスEinと、周方向補強層145のモジュラスEsとが、0.6≦Ein/Es≦0.9の関係を有することが好ましい。
【0101】
また、
図6の構成では、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinと、各交差ベルト142、143のコートゴムの100%伸張時モジュラスEcoとが、Ein<Ecoの関係を有する。具体的には、応力緩和ゴム191のモジュラスEinと、コートゴムのモジュラスEcoとが、0.6≦Ein/Eco≦0.9の関係を有することが好ましい。
【0102】
また、
図6の構成では、端部緩和ゴム192の100%伸張時モジュラスEoutと、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinとが、Eout<Einの関係を有することが好ましい。また、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinが、4.0[MPa]≦Ein≦5.5[MPa]の範囲内にあることが好ましい。
【0103】
図6の構成では、周方向補強層145のタイヤ幅方向外側に応力緩和ゴム191が配置されるので、周方向補強層145のエッジ部かつ交差ベルト142、143間における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される。また、交差ベルト142、143のエッジ部に対応する位置に端部緩和ゴム192が配置されるので、交差ベルト142、143のエッジ部における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される。これらにより、周方向補強層145の周辺ゴムのセパレーションが抑制される。
【0104】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、カーカス層13と、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層14と、ベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴム15とを備える(
図1参照)。また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する少なくとも3本の周方向主溝2と、これらの周方向主溝2に区画されて成る複数の陸部3とを備える。また、ベルト層14が、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有すると共に相互に異符号のベルト角度を有する一対の交差ベルト142、143と、タイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内にあるベルト角度を有する周方向補強層145とを積層して成る(
図2参照)。また、タイヤ子午線方向の断面視にて、周方向主溝2の末端摩耗面WEを引くときに、タイヤ赤道面CL上における周方向補強層145から末端摩耗面WEまでの距離Dccと、周方向補強層145の端部から末端摩耗面WEまでの距離Deとが、1.06≦De/Dccの関係を有する。また、タイヤ実接地幅Wg(図示省略)と、カーカス層のカーカス断面幅Wcaとが、0.64≦Wg/Wca≦0.84の関係を有する(
図1参照)。
【0105】
かかる構成では、(1)末端摩耗面WEに対する周方向補強層145の距離Dcc、Deが適正化されるので、タイヤ接地時におけるショルダー陸部の接地面圧が上昇する。これにより、ウェット路走行時における制動性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。また、(2)タイヤ実接地幅Wgとカーカス層13の断面幅Wcaとの比Wg/Wcaが適正化されることにより、タイヤのウェット性能がさらに向上する利点がある。すなわち、0.64≦Wg/Wcaであることにより、タイヤの接地面積が適正に確保される。また、Wg/Wca≦0.84であることにより、トレッド幅TWが過大とならないように構成されて、ショルダー陸部3の接地面圧が適正に確保される。
【0106】
また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層13と、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層14と、ベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴム15とを備える(
図1参照)。また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する少なくとも3本の周方向主溝2と、これらの周方向主溝2に区画されて成る複数の陸部3とを備える。また、ベルト層14が、絶対値で10[deg]以上45[deg]以下のベルト角度を有すると共に相互に異符号のベルト角度を有する一対の交差ベルト142、143と、タイヤ周方向に対して±5[deg]の範囲内にあるベルト角度を有する周方向補強層145とを積層して成る(
図2参照)。また、タイヤ子午線方向の断面視にて、周方向主溝2の末端摩耗面WEを引くときに、タイヤ赤道面CL上における周方向補強層145から末端摩耗面WEまでの距離Dccと、周方向補強層145の端部から末端摩耗面WEまでの距離Deとが、1.06≦De/Dccの関係を有する。また、タイヤ実接地幅Wgと、タイヤ総幅SWとが、0.60≦Wg/SW≦0.80の関係を有する。
【0107】
かかる構成では、(1)末端摩耗面WEに対する周方向補強層145の距離Dcc、Deが適正化されるので、タイヤ接地時におけるショルダー陸部の接地面圧が上昇する。これにより、ウェット路走行時における制動性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。また、(2)タイヤ実接地幅Wgとタイヤ総幅SWとの比Wg/SWが適正化されることにより、タイヤのウェット性能がさらに向上する利点がある。すなわち、0.60≦Wg/SWであることにより、タイヤの接地面積が適正に確保される。また、Wg/SW≦0.80であることにより、トレッド幅TWが過大とならないように構成されて、ショルダー陸部3の接地面圧が適正に確保される。
【0108】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ赤道面CLにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内周面までの距離Gccと、トレッド端Pからタイヤ内周面までの距離Gshとが、1.10≦Gsh/Gccの関係を有する(
図2参照)。かかる構成では、タイヤ非接地状態におけるトレッドプロファイルが全体としてフラットな形状を有する(
図1および
図2参照)ので、タイヤ接地時におけるトレッド部ショルダー領域の変形量が低減される(
図4(a)、(b)を比較参照)。これにより、周方向補強層145の周辺ゴムのセパレーションがより効果的に抑制される利点がある。また、タイヤ転動時における周方向補強層145の端部の繰り返し歪みが低減されて、周方向補強層145のベルトコードの破断が抑制される利点がある。
【0109】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ実接地幅Wgと、周方向補強層145の幅Wsとが、1.00≦Wg/Ws≦1.25の関係を有する。これにより、タイヤ実接地幅Wgと周方向補強層145の幅Wsとの比Wg/Wsが適正化される利点がある。すなわち、1.00≦Wg/Wsであることにより、周方向補強層145の機能が適正に確保される。具体的には、周方向補強層145の幅Wsが確保されるので、周方向補強層145の端部付近(トレッド幅TWの1/4の領域)におけるトレッド部のせり上がりが抑制される。これにより、ショルダー陸部3の接地面圧が適正に確保されて、タイヤのウェット性能が向上する。また、Wg/Ws≦1.25であることにより、周方向補強層145のエッジ部におけるベルトコードの疲労破断が抑制される。具体的には、周方向補強層145の幅Wsの上限が規定されることにより、周方向補強層145の中央部と端部との径差が過大とならないように設定される。これにより、タイヤ転動時の繰り返し歪みに起因する周方向補強層145への張力が低減されて、周方向補強層145のベルトコードの破断が抑制される。
【0110】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド幅TWと、カーカス層13の断面幅Wcaとが、0.82≦TW/Wca≦0.92の関係を有する(
図1参照)。トレッド幅TWとカーカス層13の断面幅Wcaとの比TW/Wcaが適正化される利点がある。すなわち、0.82≦TW/Wcaであることにより、センター領域とショルダー領域との径成長差が緩和されて、タイヤ幅方向にかかる接地圧分布が均一化される。これにより、ベルト層14への負荷が分散されて、タイヤの耐久性が向上する。また、TW/Wca≦0.92であることにより、ショルダー部のせり上がりが抑制されて、接地時の撓みが抑制され、ベルト層14への負荷が効果的に分散される。
【0111】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド幅TWと、タイヤ総幅SWとが、0.79≦TW/SW≦0.89の関係を有する(
図1参照)。かかる構成では、ベルト層14が周方向補強層145を有することにより、センター領域の径成長が抑制される。さらに、比TW/SWが上記の範囲内にあることにより、センター領域とショルダー領域との径成長差が緩和される。これにより、タイヤの接地圧分布が均一化される利点がある。すなわち、0.79≦TW/SWであることにより、タイヤ内エアボリュームが確保され、撓みが抑制される。また、TW/SW≦0.89であることにより、ショルダー部のせり上がりが抑制されて、接地時の撓みが抑制される。
【0112】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向補強層145の幅Wsと、カーカス層13の幅Wcaとが、0.60≦Ws/Wca≦0.70の関係を有する(
図1参照)。これにより、周方向補強層145の幅Wsとカーカス層13の幅Wcaとの比Ws/Wcaが適正化される利点がある。すなわち、0.60≦Ws/Wcaであることにより、周方向補強層145の機能が適正に確保される。具体的には、周方向補強層145の幅Wsが確保されるので、周方向補強層145の端部付近(トレッド幅TWの1/4の領域)におけるトレッド部のせり上がりが抑制される。これにより、ショルダー陸部3の接地面圧が適正に確保されて、タイヤのウェット性能が向上する。また、Ws/Wca≦0.70であることにより、周方向補強層145のエッジ部におけるベルトコードの疲労破断が抑制される。具体的には、周方向補強層145の幅Wsの上限が規定されることにより、周方向補強層145の中央部と端部との径差が過大とならないように設定される。これにより、タイヤ転動時の繰り返し歪みに起因する周方向補強層145への張力が低減されて、周方向補強層145のベルトコードの破断が抑制される。
【0113】
また、この空気入りタイヤ1では、幅広な交差ベルト142の幅Wb2と、カーカス層13の断面幅Wcaとが、0.74≦Wb2/Wca≦0.89の関係を有する(
図1参照)。これにより、幅広な交差ベルト142の幅Wb2が適正化されて、トレッド部の剛性が確保される利点がある。
【0114】
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層13の最大高さ位置の径Yaと、周方向補強層145の端部位置におけるカーカス層13の径Ydとが、0.95≦Yd/Ya≦1.02の関係を有する(
図1参照)。これにより、カーカス層13の形状が適正化されて、タイヤ接地時における周方向補強層145の配置領域でのカーカス層13の変形量が低減される利点がある。すなわち、0.95≦Yd/Yaであることにより、タイヤ接地時における周方向補強層145の配置領域でのカーカス層13の変形量が低減される。また、Yd/Ya≦1.02であることにより、タイヤ形状が適正に確保される。
【0115】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ赤道面CL上における周方向補強層145からトレッドプロファイルまでの距離Hccと、周方向補強層145の端部からトレッドプロファイルまでの距離Heとが、0.95≦He/Hcc≦1.20の関係を有する(
図2参照)。かかる構成では、周方向補強層145とトレッドプロファイルとの位置関係(比He/Hcc)が適正化されるので、タイヤ接地時における周方向補強層145の歪みが低減される。これにより、タイヤ転動時の繰り返し歪みに起因する周方向補強層145への張力が低減されて、周方向補強層145のベルトコードの破断が抑制される。
【0116】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地面における溝面積比Aが、0.20≦A≦0.30の範囲にある。これにより、溝面積比Aが適正化される利点がある。すなわち、0.20≦Aであることにより、タイヤ接地面の溝面積が確保されて、タイヤのウェット性能が確保される。また、A≦0.30であることにより、接地面積が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性が確保される。
【0117】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドゴム15の損失正接tanδが、0.10≦tanδの範囲にある。これにより、トレッドゴム15の損失正接tanδが適正に確保されて、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
【0118】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向補強層145のベルトコードが、スチールワイヤであり、17[本/50mm]以上30[本/50mm]以下のエンド数を有する。これにより、周方向補強層145のベルトコードのエンド数が適正化される利点がある。すなわち、エンド数が17[本/50mm]以上であることにより、周方向補強層145の強度が適正に確保される。また、エンド数が30[本/50mm]以下であることにより、周方向補強層145のコートゴムのゴム量が適正に確保されて、隣接するベルトプライ間(
図3では、一対の交差ベルト142、143と周方向補強層145との間)におけるゴム材料のセパレーションが抑制される。
【0119】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向補強層145を構成するベルトコードの部材時における引張り荷重100[N]から300[N]時の伸びが1.0[%]以上2.5[%]以下である。これにより、周方向補強層145によるセンター領域の径成長の抑制作用が適正に確保される利点がある。
【0120】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向補強層145を構成するベルトコードのタイヤ時における引張り荷重500[N]から1000[N]時の伸びが0.5[%]以上2.0[%]以下である。これにより、周方向補強層145によるセンター領域の径成長の抑制作用が適正に確保される利点がある。
【0121】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143のうち幅狭な交差ベルト143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置される(
図3参照)。また、空気入りタイヤ1は、一対の交差ベルト142、143の間であって周方向補強層145のタイヤ幅方向外側に配置されて周方向補強層145に隣接する応力緩和ゴム191と、一対の交差ベルト142、143の間であって応力緩和ゴム191のタイヤ幅方向外側かつ一対の交差ベルト142、143のエッジ部に対応する位置に配置されて応力緩和ゴム191に隣接する端部緩和ゴム192とを備える(
図6参照)。かかる構成では、周方向補強層145が一対の交差ベルト142、143のうち幅狭な交差ベルト143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置されることにより、周方向補強層145のエッジ部における周辺ゴムの疲労破断が抑制される利点がある。また、周方向補強層145のタイヤ幅方向外側に応力緩和ゴム191が配置されるので、周方向補強層145のエッジ部かつ交差ベルト142、143間における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される。また、交差ベルト142、143のエッジ部に対応する位置に端部緩和ゴム192が配置されるので、交差ベルト142、143のエッジ部における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される。これらにより、周方向補強層145の周辺ゴムのセパレーションが抑制される利点がある。
【0122】
また、この空気入りタイヤ1では、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinと、一対の交差ベルト142、143のコートゴムの100%伸張時モジュラスEcoとが、Ein<Ecoの関係を有する。これにより、応力緩和ゴム191のモジュラスEinが適正化されて、周方向補強層145のエッジ部かつ交差ベルト142、143間における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される利点がある。
【0123】
また、この空気入りタイヤ1では、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinと、一対の交差ベルト142、143のコートゴムの100%伸張時モジュラスEcoとが、0.6≦Ein/Eco≦0.9の関係を有する。これにより、比Ein/Ecoが適正化されて、周方向補強層145のエッジ部かつ交差ベルト142、143間における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される利点がある。
【0124】
また、この空気入りタイヤ1では、応力緩和ゴム191の100%伸張時モジュラスEinが、4.0[MPa]≦Ein≦5.5[MPa]の範囲内にある(
図6参照)。これにより、応力緩和ゴム191のモジュラスEinが適正化されて、周方向補強層145のエッジ部かつ交差ベルト142、143間における周辺ゴムの剪断歪みが緩和される利点がある。
【0125】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向補強層145が、一対の交差ベルト142、143のうち幅狭な交差ベルト143の左右のエッジ部よりもタイヤ幅方向内側に配置される(
図3参照)。また、幅狭な交差ベルト143の幅Wb3と、周方向補強層145のエッジ部から幅狭な交差ベルト143のエッジ部までの距離Sとが、0.03≦S/Wb3≦0.12の範囲にある。これにより、交差ベルト142、143のエッジ部と周方向補強層145のエッジ部との位置関係S/Wb3が適正化される利点がある。すなわち、0.03≦S/Wb3であることにより、周方向補強層145の端部と交差ベルト143の端部との距離が適正に確保されて、これらのベルトプライ145、143の端部における周辺ゴムのセパレーションが抑制される。また、S/Wb3≦0.12であることにより、交差ベルト143の幅Wb3に対する周方向補強層145の幅Wsが確保されて、周方向補強層145によるタガ効果が適正に確保される。
【0126】
[適用対象]
また、この空気入りタイヤ1は、タイヤが正規リムにリム組みされると共にタイヤに正規内圧および正規荷重が付与された状態にて、偏平率が40[%]以上70[%]以下である重荷重用タイヤに適用されることが好ましい。重荷重用タイヤでは、乗用車用タイヤと比較して、タイヤ使用時の負荷が大きい。このため、トレッド面における周方向補強層145の配置領域と、周方向補強層145よりもタイヤ幅方向外側の領域との径差が大きくなり易い。また、上記のような低い偏平率を有するタイヤでは、接地形状が鼓形状となり易い。そこで、かかる重荷重用タイヤを適用対象とすることにより、上記したタイヤのウェット性能向上効果を顕著に得られる。
【実施例】
【0127】
図7〜
図10は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0128】
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、ウェット性能に関する評価が行われた(
図7〜
図10参照)。この評価では、タイヤサイズ315/60R22.5の空気入りタイヤがリムサイズ22.5×9.00のリムに組み付けられ、この空気入りタイヤに空気圧900[kPa]が付与される。また、空気入りタイヤが試験車両である2−D(前2輪−後駆動輪)車両に装着され、空気入りタイヤに荷重30.89[kN]が付与される。
【0129】
ウェット性能に関する評価では、空気入りタイヤを装着した試験車両がウェット路面を走行し、初速度60[km/h]からの制動距離が測定される。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。評価は、その数値が大きいほど好ましい。特に、評価が105以上(基準値100に対して+5ポイント以上)であれば、従来例に対して十分な優位性があり、評価が110以上であれば、従来例に対して飛躍的な優位性があるといえる。
【0130】
実施例1の空気入りタイヤ1は、
図1〜
図3に記載した構成を有する。また、交差ベルト142、143のベルト角度が±19[deg]であり、周方向補強層145のベルト角度が実質0[deg]である。また、主要寸法が、TW=275[mm]、Gcc=32.8[mm]、Dcc=11.2[mm]、Hcc=21.3[mm]、Wca=320[mm]に設定されている。実施例2〜58の空気入りタイヤ1は、実施例1の空気入りタイヤの変形例である。
【0131】
従来例の空気入りタイヤは、
図1〜
図3の構成において、周方向補強層145を備えていない。
【0132】
試験結果が示すように、実施例1〜58の空気入りタイヤ1では、タイヤの耐ベルトエッジセパレーション性能が向上することが分かる。また、特に、実施例1、2を比較すると、1.20≦Gsh/Gcc、1.08≦De/Dccかつ0.64≦Wg/Wca≦0.84とすることにより、ウェット性能について優位性ある効果(評価105以上)が得られることが分か
る。