特許第6107655号(P6107655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許6107655胆嚢癌の治療及び/又は予防用医薬組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107655
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】胆嚢癌の治療及び/又は予防用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170327BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170327BHJP
   C07K 16/32 20060101ALN20170327BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61K39/395 C
   A61P35/00
   !C07K16/32ZNA
   !C07K16/46
【請求項の数】8
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2013-522419(P2013-522419)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2013059569
(87)【国際公開番号】WO2013147176
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-80780(P2012-80780)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100180954
【弁理士】
【氏名又は名称】漆山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝則
(72)【発明者】
【氏名】岡野 文義
(72)【発明者】
【氏名】井戸 隆喜
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/016526(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/016525(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/016527(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/096535(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/018885(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/018886(WO,A1)
【文献】 KADDER T.,et al.,Two new miR-16 targets: caprin-1 and HMGA1, proteins implicated in cell proliferation,Biology of the Cell,2009年,Vol.101,p.511-524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
C07K 16/32
C07K 16/46
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるいずれかのアミノ酸配列有するCAPRIN−1タンパク質、又は該タンパク質のアミノ酸配列における連続する7個以上のアミノ酸残基を含むその断片、と免疫学的反応性を有し、かつ胆嚢癌細胞表面のCAPRIN−1タンパク質部分と特異的に結合する、抗体又はそのフラグメントを有効成分として含むことを特徴とする、胆嚢癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
【請求項2】
前記CAPRIN−1タンパク質の断片が、配列番号2〜30のうち配列番号6及び配列番号18を除く偶数の配列番号で表されるいずれかのアミノ酸配列中のアミノ酸残基番号233−343、アミノ酸残基番号512−C末端又はアミノ酸残基番号50−98の領域内の連続する7個以上のアミノ酸残基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記CAPRIN−1タンパク質の断片が、配列番号267、配列番号429、配列番号428、配列番号273、配列番号266、配列番号270、配列番号272又は配列番号269、配列番号430、配列番号431又は配列番号432で表されるアミノ酸配列おける連続する7個以上のアミノ酸残基を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は多重特異性抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体又はそのフラグメントが、以下の(a)〜(ao)のいずれかである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(a)配列番号37、38及び39で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号41、42及び43で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(b)配列番号47、48及び49で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号51、52及び53で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(c)配列番号57、58及び59で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号61、62及び63で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(d)配列番号67、68及び69で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号71、72及び73で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(e)配列番号77、78及び79で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号81、82及び83で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(f)配列番号87、88及び89で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号91、92及び93で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(g)配列番号97、98及び99で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号101、102及び103で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(h)配列番号107、108及び109で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号111、112及び113で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(i)配列番号117、118及び119で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号121、122及び123で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(j)配列番号127、128及び129で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号121、122及び123で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(k)配列番号132、133及び134で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号136、137及び138で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(l)配列番号142、143及び144で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号146、147及び148で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(m)配列番号142、143及び144で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDRを含む重鎖可変領域と配列番号152、153及び154で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(n)配列番号157、158及び159で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号161、162及び163で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(o)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号171、172及び173で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(p)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号177、178及び179で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(q)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号182、183及び184で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(r)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号187、188及び189で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(s)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号192、193及び194で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(t)配列番号197、198及び199で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号201、202及び203で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(u)配列番号207、208及び209で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号211、212及び213で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(v)配列番号217、218及び219で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号221、222及び223で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(w)配列番号227、228及び229で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号231、232及び233で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(x)配列番号237、238及び239で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号241、242及び243で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(y)配列番号247、248及び249で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号251、252及び253で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(z)配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号280、281及び282で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(aa)配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号286、287及び288で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ab)配列番号291、292及び293で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号295、296及び297で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ac)配列番号301、302及び303で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号305、306及び307で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ad)配列番号311、312及び313で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号315、316及び317で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ae)配列番号321、322及び323で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号325、326及び327で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(af)配列番号331、332及び333で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号335、336及び337で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ag)配列番号341、342及び343で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号345、346及び347で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ah)配列番号351、352及び353で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号354、355及び356で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ai)配列番号351、352及び357で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号354、355及び356で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(aj)配列番号373、374及び375で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号377、378及び379で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ak)配列番号383、384及び385で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号387、388及び389で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(al)配列番号393、394及び395で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号387、388及び389で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(am)配列番号398、399及び400で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号402、403及び404で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(an)配列番号408、409及び410の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号412、413及び414の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
(ao)配列番号418、419及び420の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号422、423及び424の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント
【請求項7】
前記抗体又はそのフラグメントが、抗腫瘍剤とコンジュゲートされている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物と、抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを組み合わせて含む、組み合わせ医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAPRIN−1タンパク質に対する抗体又はそのフラグメントの、胆嚢癌の治療及び/又は予防剤等としての医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、癌細胞上の抗原タンパク質を標的にした、癌を治療するための各種抗体医薬が世の中に台頭してきた。癌特異的治療薬として一定の薬効が得られ注目されているが、標的となる抗原タンパク質の大部分は正常細胞にも発現するものであり、抗体投与の結果、癌細胞だけでなく、抗原を発現する正常細胞も障害されてしまい、その結果生じる副作用が問題になっている。したがって、癌細胞表面に特異的に発現する癌抗原を同定し、それを標的とした抗体を医薬品として使用することができれば、より副作用の少ない抗体医薬による治療が可能になると期待される。
【0003】
ただ、癌の中でも胆嚢癌(胆のうがん)は自覚症状・初期症状に乏しく、早期発見が非常に困難な癌で、また、リンパ節転移や肝臓転移、肺転移、骨転移、腹膜播種など進行した胆嚢癌は非常に治療困難で、手術が不適応の胆嚢癌患者の5年生存率はほぼゼロ%であることや、治療が非常に困難であって、効果のある胆嚢癌の治療薬は開発されていないことが当業者の技術常識として知られている。
【0004】
Cytoplasmic− and proliferation−associateed protein 1(CAPRIN−1)は、休止期の正常細胞が活性化や細胞分裂を起こす際に発現し、また細胞内でRNAと細胞内ストレス顆粒を形成してmRNAの輸送、翻訳の制御に関与することなどが知られている細胞内タンパク質として知られていたが、乳癌細胞などの癌細胞の表面に特異的に発現することが見出されたため、癌治療のための抗体医薬のターゲットとして研究が進められている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1ではCAPRIN−1タンパク質が胆嚢癌細胞上に発現することは確認されておらず、CAPRIN−1タンパク質が胆嚢癌の抗原タンパク質となりうることについての記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2010/016526
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、胆嚢癌細胞の表面に発現する癌抗原タンパク質を同定し、それを標的とした抗体の、胆嚢癌の治療及び/又は予防剤としての用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、CAPRIN−1タンパク質の一部が胆嚢癌細胞の細胞表面に発現していることを見出し、さらにはCAPRIN−1タンパク質に対する抗体が、CAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞を障害することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
【0009】
本発明は、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、を有する、CAPRIN−1タンパク質、又は該タンパク質のアミノ酸配列における連続する7個以上のアミノ酸残基を含むその断片、と免疫学的反応性を有する抗体又はそのフラグメントを有効成分として含むことを特徴とする、胆嚢癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。
【0010】
別の実施形態において、上記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。
【0011】
別の実施形態において、上記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、又は多重特異抗体である。
【0012】
別の実施形態において、上記抗体は、配列番号271、配列番号273又は配列番号266又は配列番号270又は配列番号272又は配列番号269で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、を有するペプチド又その断片と免疫学的反応性を有する抗体である。
【0013】
別の実施形態において、上記抗体は、以下の(a)〜(ao)のいずれかの抗体であって、かつ、前記CAPRIN−1タンパク質等と免疫学的反応性を有する抗体、又は該抗体を有効成分として含むことを特徴とする、胆嚢癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物である。
【0014】
(a)配列番号37、38及び39で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号41、42及び43で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0015】
(b)配列番号47、48及び49で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号51、52及び53で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0016】
(c)配列番号57、58及び59で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号61、62及び63で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0017】
(d)配列番号67、68及び69で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号71、72及び73で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0018】
(e)配列番号77,78及び79で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号81,82及び83で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0019】
(f)配列番号87,88及び89で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号91,92及び93で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0020】
(g)配列番号97,98及び99で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号101,102及び103で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0021】
(h)配列番号107,108及び109で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号111,112及び113で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0022】
(i)配列番号117,118及び119で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号121,122及び123で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0023】
(j)配列番号127,128及び129で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号121,122及び123で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0024】
(k)配列番号132,133及び134で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号136,137及び138で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0025】
(l)配列番号142,143及び144で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号146,147及び148で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0026】
(m)配列番号142,143及び144で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号152,153及び154で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0027】
(n)配列番号157,158及び159で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号161,162及び163で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0028】
(o)配列番号167,168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号171,172及び173で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0029】
(p)配列番号167,168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号177,178及び179で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0030】
(q)配列番号167,168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号182,183及び184で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0031】
(r)配列番号167,168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号187,188及び189で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0032】
(s)配列番号167,168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号192,193及び194で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0033】
(t)配列番号197,198及び199で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号201,202及び203で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0034】
(u)配列番号207,208及び209で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号211,212及び213で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0035】
(v)配列番号217,218及び219で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号221,222及び223で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0036】
(w)配列番号227,228及び229で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号231,232及び233で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0037】
(x)配列番号237,238及び239で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号241,242及び243で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0038】
(y)配列番号247,248及び249で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号251,252及び253で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0039】
(z)配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号280、281及び282で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0040】
(aa)配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号286、287及び288で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0041】
(ab)配列番号291、292及び293で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号295、296及び297で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0042】
(ac)配列番号301、302及び303で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号305、306及び307で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0043】
(ad)配列番号311、312及び313で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号315、316及び317で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0044】
(ae)配列番号321、322及び323で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号325、326及び327で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0045】
(af)配列番号331、332及び333で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号335、336及び337で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0046】
(ag)配列番号341、342及び343で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号345、346及び347で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0047】
(ah)配列番号351、352及び353で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号354、355及び356で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0048】
(ai)配列番号351、352及び357で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号354、355及び356で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0049】
(aj)配列番号373、374及び375で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号377、378及び379で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0050】
(ak)配列番号383、384及び385で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号387、388及び389で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0051】
(al)配列番号393、394及び395で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号387、388及び389で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0052】
(am)配列番号398、399及び400で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号402、403及び404で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0053】
(an)配列番号408、409及び410の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号412、413及び414の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0054】
(ao)配列番号418、419及び420の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号422、423及び424の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0055】
本発明の別に実施形態において、本発明の抗体又はそのフラグメントが、抗腫瘍剤とコンジュゲートされている。
【0056】
本発明はさらに、本発明の上記医薬組成物と、抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを組み合わせて含む、組み合わせ医薬品を提供する。
【0057】
本発明はさらに、本発明の上記医薬組成物又は上記組み合わせ医薬品を被験者に投与することを含む、胆嚢癌の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0058】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2012-080780号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0059】
本発明で用いられるCAPRIN−1タンパク質に対する抗体(以下、しばしば「抗CAPRIN−1抗体」とする)は、胆嚢癌細胞を障害する。したがって、CAPRIN−1タンパク質に対する抗体は胆嚢癌の治療や予防に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明で用いられる配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体の抗腫瘍活性は、生体内で担癌動物に対する腫瘍増殖の抑制を調べることによって、あるいは、後述するように、生体外で該ポリペプチドを発現する腫瘍細胞に対して、免疫細胞又は補体を介した細胞障害活性を示すか否かを調べることによって評価することができる。
【0061】
なお、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号(すなわち、配列番号2,4,6・・28,30)のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列はそれぞれ、配列番号1〜29のうち奇数の配列番号(すなわち、配列番号1,3,5・・27,29)に示されている。
【0062】
配列表の配列番号6、8、10、12及び14で示されるアミノ酸配列は、イヌ精巣組織由来cDNAライブラリーと乳癌患犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドとして、また配列番号2及び4で示されるアミノ酸配列は、そのヒト相同因子(ホモログ又はオーソログ)として、配列番号16で示されるアミノ酸配列は、そのウシ相同因子として、配列番号18で示されるアミノ酸配列は、そのウマ相同因子として、配列番号20〜28で示されるアミノ酸配列は、そのマウス相同因子として、配列番号30で示されるアミノ酸配列は、そのニワトリ相同因子として単離された、CAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列である(後述の実施例1参照)。CAPRIN−1タンパク質は、休止期の正常細胞が活性化や細胞分裂を起こす際に発現することが知られている。
【0063】
本検討により、CAPRIN−1タンパク質が胆嚢癌細胞の細胞表面に発現することが明らかになった。本発明では、CAPRIN−1タンパク質のうち、胆嚢癌細胞の細胞表面に発現する部分に結合する抗体が好ましく用いられる。胆嚢癌細胞の細胞表面に発現するCAPRIN−1タンパク質中の部分ペプチド(断片)として、配列表の配列番号2〜30のうち配列番号6及び配列番号18を除く偶数番号で表されるアミノ酸配列中のアミノ酸残基番号(aa)233−343、アミノ酸残基番号(aa)512−C末端、アミノ酸残基番号(aa)50−98の領域内の連続する7個以上のアミノ酸残基を含むペプチドが挙げられ、具体的には例えば、配列番号429、配列番号428、配列番号273(配列番号273で表されるアミノ酸配列の中でも、配列番号274又は配列番号275で表されるアミノ酸配列の領域が好ましい。)、配列番号266(配列番号266で表されるアミノ酸配列の中でも、配列番号267又は配列番号268で表されるアミノ酸配列の領域が好ましい。)、配列番号270、配列番号272、配列番号269、配列番号430、配列番号431又は配列番号432で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、例えば96%以上、97%以上、98%以上、99%以上など、の配列同一性を有するアミノ酸配列における連続する7個以上のアミノ酸残基を含む部分ペプチドが挙げられ、本発明で用いられる抗体は、これらペプチドに結合する、かつ、抗腫瘍活性を示すすべての抗体が含まれる。
【0064】
本発明で用いられる上記抗CAPRIN−1抗体は、抗腫瘍活性を発揮しうる限りいかなる種類の抗体であってもよく、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、例えば合成抗体、多重特異性抗体(例えばダイアボディ、トリアボディ、等)、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体(scFv)など、ヒト抗体、それらの抗体フラグメント、例えばFab、F(ab’)、Fvなどを含む。これらの抗体及びそのフラグメントは、また当業者に公知の方法により調製することが可能である。本発明においては、CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合することが可能な抗体が望ましいし、モノクローナル抗体であることが好ましいが、均質な抗体を安定に生産できるかぎり、ポリクローナル抗体であっても良い。また、被験者がヒトである場合には、拒絶反応を回避もしくは抑制するためにヒト抗体又はヒト化抗体であることが望ましい。
【0065】
ここで、「CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合する」とは、CAPRIN−1タンパク質に特異的に結合し、それ以外のタンパク質と実質的に結合しないことを意味する。
【0066】
本発明で用いることができる抗体の抗腫瘍活性は、後述するように、生体内で担癌動物に対する腫瘍増殖の抑制を調べることによって、あるいは、生体外で該ポリペプチドを発現する腫瘍細胞に対して、免疫細胞又は補体を介した細胞障害活性を示すか否かを調べることによって評価することができる。
【0067】
さらにまた、本発明における胆嚢癌の治療及び/又は予防の対象である被験者は、ヒト、ペット動物、家畜類、競技用動物などの哺乳動物であり、好ましい被験者は、ヒトである。
【0068】
以下に、本発明に関する抗原の作製、抗体の作製、ならびに医薬組成物について説明する。
【0069】
<抗体作製用抗原の作製>
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体を取得するための感作抗原として使用されるタンパク質又はその断片は、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ニワトリなど、その由来となる動物種に制限されない。しかし細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択することが好ましく、一般的には、哺乳動物由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。例えば、CAPRIN−1タンパク質がヒトCAPRIN−1タンパク質の場合、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチド、ヒトCAPRIN−1タンパク質を発現する細胞などを用いることができる。
【0070】
ヒトCAPRIN−1タンパク質及びそのホモログの塩基配列及びアミノ酸配列は、例えばGenBank(米国NCBI)にアクセスし、BLAST、FASTAなどのアルゴリズム(Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873−5877,1993; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389−3402, 1997)を利用することによって入手することができる。
【0071】
本発明では、ヒトCAPRIN−1遺伝子の塩基配列(配列番号1もしくは3)又はアミノ酸配列(配列番号2もしくは4)を基準とした場合、これらのORF又は成熟部分の塩基配列又はアミノ酸配列と70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、さらに好ましくは95%〜100%、例えば97%〜100%、98%〜100%、99%〜100%又は99.5%〜100%の配列同一性を有する配列からなる核酸又はタンパク質がターゲットになる。ここで、「%配列同一性」は、2つの配列を、ギャップを導入してか又はギャップを導入しないで、最大の類似度又は一致度となるようにアラインメント(整列)したとき、アミノ酸(又は塩基)の総数に対する同一アミノ酸(又は塩基)のパーセンテージ(%)を意味する。
【0072】
CAPRIN−1タンパク質の断片は、抗体が認識する最小単位であるエピトープ(抗原決定基)のアミノ酸長から、該タンパク質の全長未満の長さを有する。エピトープは、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性を有するポリペプチド断片を指し、その最小単位は、約7〜12アミノ酸、例えば8〜11アミノ酸、からなる。具体例としては、配列番号273、配列番号266又は配列番号270又は配列番号272又は配列番号269で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
【0073】
上記した、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドを含むポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる(日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、化学修飾とペプチド合成、東京化学同人(日本)、1981年)。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法(Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sonsなど)を用いて、上記ポリペプチドをコードするDNAを調製し、該DNAを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でペプチドを生産させることにより、目的とするペプチドを得ることができる。
【0074】
上記ポリペプチドをコードするDNAは、公知の遺伝子工学的手法や市販の核酸合成機を用いた常法により、容易に調製することができる。例えば、配列番号1の塩基配列を含むDNAは、ヒト染色体又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼなど)及びMg2+含有PCRバッファーを用いて、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。PCRの手法、条件等については、例えばAusubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons(特に第15章)に記載されている。
【0075】
また、本明細書中の配列表の配列番号1〜30に示される塩基配列及びアミノ酸配列の情報に基づいて、適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてヒトなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のタンパク質を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。そのような細胞や組織の例は、精巣、白血病、乳癌、リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、大腸癌、胆嚢癌などの癌又は腫瘍に由来する細胞又は組織である。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、ならびに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989)、Ausbelら(上記)等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られたDNAから、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドをコードするDNAを得ることができる。
【0076】
上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物細胞、ヒト胎児腎臓細胞株HEK293、マウス胎仔皮膚細胞株NIH3T3、出芽酵母、分裂酵母等の酵母細胞、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、マルチクローニングサイト、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相補遺伝子、等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。
【0078】
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pYES2等が例示できる。上記と同様に、上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1等を用いた場合には、Hisタグ(例えば(His)〜(His)10)、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
【0079】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション、ウイルス感染、リポフェクション、細胞膜透過性ペプチドとの結合、等の周知の方法を用いることができる。
【0080】
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
<抗体の構造>
抗体は通常少なくとも2本の重鎖及び2本の軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質である。IgMは別として、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖で構成される約150kDaのヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的には、それぞれの軽鎖は1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結されているが、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は変動する。それぞれの重鎖及び軽鎖はまた鎖内ジスルフィド結合も有する。それぞれの重鎖は一方の端に可変ドメイン(VH領域)を有し、それにいくつかの定常領域が続く。それぞれ軽鎖は可変ドメイン(VL領域)を有し、その反対の端に1つの定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の最初の定常領域と整列しており、かつ軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。抗体の可変ドメインは特定の領域が相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特定の可変性を示して抗体に結合特異性を付与する。可変領域の相対的に保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれている。完全な重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ3つのCDRにより連結された4つのFRを含む。3つのCDRは重鎖ではそのN末から順にCDRH1,CDRH2,CDRH3、同様に軽鎖ではCDRL1,CDRL2,CDRL3と呼ばれている。抗体の抗原への結合特異性には、CDRH3が最も重要である。また、各鎖のCDRはFR領域によって近接した状態で一緒に保持され、他方の鎖からのCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常領域は抗体が抗原に結合することに直接寄与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)への関与、Fcγ受容体への結合を介した食作用、新生児Fc受容体(FcRn)を介した半減期/クリアランス速度、補体カスケードのC1q構成要素を介した補体依存性細胞障害(CDC)を示す。
【0082】
<抗体の作製>
本発明における抗CAPRIN−1抗体とは、CAPRIN−1タンパク質の全長又はその断片と免疫学的反応性を有する抗体を意味する。
【0083】
ここで、「免疫学的反応性」とは、生体内で抗体とCAPRIN−1抗原とが結合する特性を意味し、このような結合を介して腫瘍を障害(例えば、死滅、抑制又は退縮)する機能、が発揮される。すなわち、本発明で使用される抗体は、CAPRIN−1タンパク質と結合して胆嚢癌を障害することができるならば、その種類を問わない。
【0084】
抗体の例は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、抗体フラグメント(例えばFab、F(ab’)、Fv、等)などを含む。また、抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス、例えばIgG,IgE,IgM,IgA,IgD及びIgY、又は任意のサブクラス、例えばIgG,IgG,IgG,IgG,IgA,IgAなどである。
【0085】
抗体はさらに、グリコシル化の他に、アセチル化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、又はペグ(PEG)化などによって修飾されていてもよい。
【0086】
以下に、種々の抗体の作製例を示す。
【0087】
抗体が、モノクローナル抗体であるときには、例えば、CAPRIN−1タンパク質、CAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞又はその細胞株(例えばTGBC14TKB)などをマウスに投与して免疫し、同マウスより脾臓を抽出し、細胞を分離の上、該細胞とマウスミエローマ細胞とを融合させ、得られた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、癌細胞増殖抑制作用を持つ抗体を産生するクローンを選択する。癌細胞増殖抑制作用を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを単離し、当該ハイブリドーマを培養し、培養上清から一般的なアフィニティ精製法により抗体を精製することで、調製することが可能である。
【0088】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、例えば以下のようにしても作製することができる。まず、公知の方法に従って、感作抗原を動物に免疫する。一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
【0089】
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付すが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0090】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3U1(P3−X63Ag8U1)、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol. (1979)123, 1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology (1978)81, 1−7)、NS−1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol. (1976)6, 511−519)、MPC−11(Margulies. D.H. et al., Cell (1976)8, 405−415)、SP2/0(Shulman, M. et al., Nature (1978)276, 269−270)、FO(deSt. Groth, S.F. et al., J. Immunol. Methods (1980)35, 1−21)、S194(Trowbridge, I.S. J.Exp.Med. (1978)148, 313−323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979)277, 131−133)等が好適に使用される。
【0091】
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler, G. and Milstein, C. Methods Enzymol. (1981)73, 3−46)等に準じて行うことができる。
【0092】
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0093】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0094】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とするハイブリドーマを形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
【0095】
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
【0096】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウイルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでタンパク質、タンパク質発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266(登録番号TIB196)と融合させ、所望の活性(例えば、細胞増殖抑制活性)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる。
【0097】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0098】
すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。
【0099】
本発明で使用可能な抗体の別の例がポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、例えば、次のようにして得ることができる。
【0100】
天然のCAPRIN−1タンパク質、あるいはGSTなどとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させた組換えCAPRIN−1タンパク質、又はその部分ペプチドをマウス、ヒト抗体産生マウス、ウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、CAPRIN−1タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。後述の実施例では、CAPRIN−1タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体が作製され、抗腫瘍効果が確認されている。
【0101】
ここで、ヒト抗体産生マウスとしては、例えばKMマウス(キリンファーマ/Medarex)及びXenoマウス(Amgen)が知られている(例えば、国際公開第WO02/43478号、同第WO02/092812号など)。このようなマウスをCAPRIN−1タンパク質又はその断片で免疫するときには、完全ヒトポリクローナル抗体を血液から得ることができる。また、免疫後のマウスから脾臓細胞を取出し、ミエローマ細胞との融合法によりヒト型モノクローナル抗体を作製することができる。
【0102】
抗原の調製は、例えば、動物細胞を用いた方法(特表2007−530068)やバキュロウイルスを用いた方法(例えば、国際公開第WO98/46777号など)などに準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
【0103】
さらにまた、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A.K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0104】
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。しかし、ポリクローナル抗体、遺伝子改変抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体など)などであってもよい。
【0105】
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、非ヒト動物モノクローナル抗体(例えばマウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体など)などが含まれる。モノクローナル抗体は、CAPRIN−1タンパク質を免疫した非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ヒト抗体産生マウスなど)からの脾細胞とミエローマ細胞との融合によって得られたハイブリドーマを培養することによって作製されうる。後述の実施例では、モノクローナル抗体が作製され、抗腫瘍効果が確認された。これらのモノクローナル抗体は、配列番号40、配列番号50、配列番号60、配列番号70、配列番号80、配列番号90、配列番号100、配列番号110、配列番号120、配列番号130、配列番号135、配列番号145、配列番号160、配列番号170、配列番号200、配列番号210、配列番号220、配列番号230、配列番号240、配列番号250、配列番号279、配列番号294、配列番号304、配列番号314、配列番号324、配列番号334、配列番号344、配列番号359、配列番号363、配列番号368、配列番号372、配列番号376、配列番号386、配列番号396、配列番号401、配列番号411又は配列番号421のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域と、配列番号44、配列番号54、配列番号64、配列番号74、配列番号84、配列番号94、配列番号104、配列番号114、配列番号124,配列番号139、配列番号149、配列番号155、配列番号164、配列番号174、配列番号180、配列番号185、配列番号190、配列番号195、配列番号204、配列番号214、配列番号224、配列番号234、配列番号244、配列番号254、配列番号283、配列番号289、配列番号298、配列番号308、配列番号318、配列番号328、配列番号338、配列番号348、配列番号361、配列番号365、配列番号370、配列番号380、配列番号390、配列番号405、配列番号415又は配列番号425のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域を含み、ここで、該VH領域に配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、配列番号77、配列番号87、配列番号97、配列番号107、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号142、配列番号157、配列番号167、配列番号197、配列番号207、配列番号217、配列番号227、配列番号237、配列番号247、配列番号276、配列番号291、配列番号301、配列番号311、配列番号321、配列番号331、配列番号341、配列番号351、配列番号373、配列番号383、配列番号393、配列番号398、配列番号408又は配列番号418のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号38、配列番号48、配列番号58、配列番号68、配列番号78、配列番号88、配列番号98、配列番号108、配列番号118、配列番号128、配列番号133、配列番号143、配列番号158、配列番号168、配列番号198、配列番号208、配列番号218、配列番号228、配列番号238、配列番号248、配列番号277、配列番号292、配列番号302、配列番号312、配列番号322、配列番号332、配列番号342、配列番号352、配列番号374、配列番号384、配列番号394、配列番号399、配列番号409又は配列番号419のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号39、配列番号49、配列番号59、配列番号69、配列番号79、配列番号89、配列番号99、配列番号109、配列番号119、配列番号129、配列番号134、配列番号144、配列番号159、配列番号169、配列番号199、配列番号209、配列番号219、配列番号229、配列番号239、配列番号249、配列番号278、配列番号293、配列番号303、配列番号313、配列番号323、配列番号333、配列番号343、配列番号353、配列番号357、配列番号375、配列番号385、配列番号395、配列番号400、配列番号410、配列番号420のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれ、該VL領域に配列番号41、配列番号51、配列番号61、配列番号71、配列番号81、配列番号91、配列番号101、配列番号111、配列番号121,配列番号136、配列番号146、配列番号152、配列番号161、配列番号171、配列番号177、配列番号182、配列番号187、配列番号192、配列番号201、配列番号211、配列番号221、配列番号231、配列番号241、配列番号251、配列番号280、配列番号286、配列番号295、配列番号305、配列番号315、配列番号325、配列番号335、配列番号345、配列番号354、配列番号377、配列番号387、配列番号402、配列番号412又は配列番号422のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号42、配列番号52、配列番号62、配列番号72、配列番号82、配列番号92、配列番号102、配列番号112、配列番号122、配列番号137、配列番号147、配列番号153、配列番号162、配列番号172、配列番号178、配列番号183、配列番号188、配列番号193、配列番号202、配列番号212、配列番号222、配列番号232、配列番号242、配列番号252、配列番号281、配列番号287、配列番号296、配列番号306、配列番号316、配列番号326、配列番号336、配列番号346、配列番号355、配列番号378、配列番号388、配列番号403、配列番号413又は配列番号423のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号43、配列番号53、配列番号63、配列番号73、配列番号83、配列番号93、配列番号103、配列番号113、配列番号123、配列番号138、配列番号148、配列番号154、配列番号163、配列番号173、配列番号179、配列番号184、配列番号189、配列番号194、配列番号203、配列番号213、配列番号223、配列番号233、配列番号243、配列番号253、配列番号282、配列番号288、配列番号297、配列番号307、配列番号317、配列番号327、配列番号337、配列番号347、配列番号356、配列番号379、配列番号389、配列番号404、配列番号414又は配列番号424のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれる。
【0106】
キメラ抗体は、異なる動物由来の配列を組み合わせて作製される抗体であり、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体などである。キメラ抗体の作製は公知の方法を用いて行うことができ、例えば、抗体V領域をコードするDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとを連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。
【0107】
ポリクローナル抗体には、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にCAPRIN−1タンパク質を免疫して得られる抗体が含まれる。
【0108】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は、免疫動物由来の抗体のCDRを、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによって構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
【0109】
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region; FR;FR1〜FR4を含む)をN末端側からFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の順で連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開第EP239400号、国際公開第WO96/02576号参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K. et al., Cancer Research 1993, 53: 851−856)。また、様々なヒト抗体由来のフレームワーク領域に置換してもよい(国際公開第WO99/51743号参照)。
【0110】
キメラ抗体やヒト化抗体を作製した後に、可変領域(例えば、FR)や定常領域中のアミノ酸を他のアミノ酸で置換等してもよい。
【0111】
アミノ酸の置換は、例えば15未満、10未満、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下のアミノ酸、好ましくは1〜5アミノ酸、より好ましくは1又は2アミノ酸、の置換であり、置換抗体は、未置換抗体と機能的に同等であるべきである。置換は、保存的アミノ酸置換が望ましく、これは、電荷、側鎖、極性、芳香族性などの性質の類似するアミノ酸間の置換である。性質の類似したアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)などに分類しうる。
【0112】
抗体修飾物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を挙げることができる。本発明で用いられる抗体修飾物においては、結合される物質は限定されない。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0113】
ここで「機能的に同等」とは、対象となる抗体が本発明で用いられる抗体と同様の生物学的あるいは生化学的活性、具体的には腫瘍を障害する機能、を有すること、ヒトへの適用時に拒絶反応を本質的に起こさないことなどを指す。このような活性としては、例えば、細胞増殖抑制活性、あるいは結合活性を例示することができる。
【0114】
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, T. et al., (1995) Gene 152, 271−275、Zoller, MJ., and Smith, M. (1983) Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer, W. et al., (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer, W. and Fritz, HJ., (1987) Methods Enzymol. 154, 350−367、Kunkel, TA., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488−492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763−2766)などを用いて、本発明で用いられる抗体に適宜変異を導入することにより、該抗体と機能的に同等な抗体を調製することができる。
【0115】
上記抗CAPRIN−1抗体が認識するCAPRIN−1タンパク質のエピトープを認識する抗体は、当業者に公知の方法により得ることが可能である。例えば、抗CAPRIN−1抗体が認識するCAPRIN−1タンパク質のエピトープを通常の方法(例えば、エピトープマッピングなど)により決定し、該エピトープに含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを免疫原として抗体を作製する方法や、通常の方法で作製された抗体のエピトープを決定し、抗CAPRIN−1抗体とエピトープが同じ抗体を選択する方法などにより得ることができる。
【0116】
本発明で用いられる抗体の親和定数Ka(kon/koff)は、好ましくは、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5×1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5×1011−1、少なくとも1012−1、あるいは、少なくとも1013−1である。
【0117】
本発明で用いられる抗体は、抗腫瘍剤とコンジュゲートすることができる。抗体と抗腫瘍剤との結合は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基などと反応性の基(例えば、コハク酸イミジル基、ホルミル基、2−ピリジルジチオ基、マレイイミジル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基など)をもつスペーサーを介して行うことができる。
【0118】
抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤、すなわち、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、チオテパ、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン(chloRNAphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン(calicheamicin)、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(ADRIAMYCIN)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エポチロン(epothilone)、エトグルシド(etoglucid)、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)及びそれらの薬学的に許容可能な(公知の)塩又は(公知の)誘導体を包含する。
【0119】
抗体が、抗腫瘍剤とコンジュゲートした抗体である場合に、抗腫瘍活性を発揮するかどうかを評価する方法としては、例えば、マウス由来の抗CAPRIN−1抗体ならば、マウス抗体に結合する二次抗体に薬物が付いたものを同時に反応させて、ヒト癌細胞に対する抗腫瘍効果を生体外で評価することができる。例えば、Saporinが結合された抗ヒトIgG抗体 (Hum−ZAP(Advanced Targeting Systems))を用いて評価ができる。
【0120】
また、本発明で用いられる抗体と、抗腫瘍剤を併用投与することで、より高い治療効果を得ることができる。本手法は、CAPRIN−1タンパク質が発現している癌患者に対して、外科的手術前後どちらにおいても適応できる。特に手術後に、従来抗腫瘍剤単独で処置されていたCAPRIN−1タンパク質が発現している癌に対して、より高い癌再発防止や生存期間の延長が得られる。
【0121】
併用投与に用いられる抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の上記の抗腫瘍剤、及びそれらの薬学的に許容可能な(公知の)塩又は(公知の)誘導体を包含する。上記の内、特にシクロホスファミド、パクリタキセル、ドキセタキセル、ビノレルビンなどが好ましく用いられる。
【0122】
あるいは、本発明で用いられる抗体には、文献等で公知の、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153SM、212Bi、32P、175Lu、176Luなどの放射性同位体を結合することも可能である。放射性同位体は、腫瘍の治療や診断のために有効なものが望ましい。
【0123】
本発明で用いられる抗体は、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体、あるいは、CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合する抗体であって、胆嚢癌に対する細胞障害活性、又は腫瘍増殖抑制作用を示す抗体である。該抗体は、それを投与する対象動物において拒絶反応がほとんど又はまったく回避されるような構造をもつ抗体であるべきである。そのよう抗体としては、例えば対象動物がヒトである場合、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体(例えばヒト−マウスキメラ抗体)、単鎖抗体、多重特異性抗体(例えばダイアボディ、トリアボディ、等)などが挙げられる。これらの抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域がヒト抗体由来のものであるか、あるいは、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来の相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)とヒト抗体由来のフレームワーク領域からなるものであるか、あるいは、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来のものであり、かつ、重鎖及び軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のものである組換え型抗体である。好ましい抗体は、前2つの抗体である。
【0124】
これらの組換え型抗体は、次のようにして作製することができる。ハイブリドーマなどの抗体産生細胞から抗ヒトCAPRIN−1モノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体など)をコードするDNAをクローニングし、これを鋳型にして該抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAをRT−PCR法等により作製し、Kabat EU numbering system(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5thEd. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991))に基づいて軽鎖及び重鎖の各可変領域の配列又は各CDR1、CDR2、CDR3の配列を決定する。
【0125】
さらに、これらの各可変領域をコードするDNA又は各CDRをコードするDNAを、遺伝子組換え技術(Sambrookら,Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))又はDNA合成機を用いて作製する。ここで、上記ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にヒトCAPRIN−1タンパク質を免疫したのち、該免疫動物から切除した脾細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって作製することができる。これとは別に、必要に応じて、遺伝子組換え技術又はDNA合成機を用いてヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域及び定常領域をコードするDNAを作製する。
【0126】
ヒト化抗体の場合には、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNA中のCDRコーディング配列を、それらに対応する、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体のCDRコーディング配列と置換したDNAを作製し、それによって得られたDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、ヒト化抗体をコードするDNAを作製することができる。
【0127】
キメラ抗体の場合には、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、キメラ抗体をコードするDNAを作製することができる。
【0128】
単鎖抗体の場合には、この抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをリンカーを介して直線状に連結された抗体であり、重鎖可変領域をコードするDNA、リンカーをコードするDNA、及び軽鎖可変領域をコードするDNAを結合することによって単鎖抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、CDRのみヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体のCDRによって置換されたヒト抗体由来のものである。また、リンカーは、12〜19アミノ酸からなり、例えば15アミノ酸の(GS)3(G. −B. Kimら,Protein Engineering Design and Selection 2007, 20(9): 425−432)が挙げられる。
【0129】
二重特異性抗体(diabody)の場合には、この抗体は2つの異なるエピトープと特異的に結合可能な抗体であり、例えば重鎖可変領域AをコードするDNA、軽鎖可変領域BをコードするDNA、重鎖可変領域BをコードするDNA、及び軽鎖可変領域AをコードするDNAをこの順序で結合する(ただし、軽鎖可変領域BをコードするDNAと重鎖可変領域BをコードするDNAとは上記のようなリンカーをコードするDNAを介して結合される。)ことによって二重特異性抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、CDRのみヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体のCDRによって置換されたヒト抗体由来のものである。
【0130】
上記のようにして作製された組換えDNAを、1つ又は複数の適当なベクターに組み込み、これを宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入し、(共)発現させることによって組換え型抗体を作製することができる(P.J. Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P. Shepherd and C. Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS; J.W. Goding., Monoclonal Antibodies: principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。
【0131】
上記の方法によって作製される本発明の抗体は、例えば以下の(a)〜(ao)の抗体が挙げられる。
【0132】
(a)配列番号37、38及び39で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号41、42及び43で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096528に記載の抗体(例えば、配列番号40の重鎖可変領域及び配列番号44の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0133】
(b)配列番号47、48及び49で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号51、52及び53で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096519に記載の抗体(例えば、配列番号50の重鎖可変領域及び配列番号54の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0134】
(c)配列番号57、58及び59で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号61、62及び63で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096517に記載の抗体(例えば、配列番号60の重鎖可変領域及び配列番号64の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0135】
(d)配列番号67、68及び69で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号71、72及び73で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096528に記載の抗体(例えば、配列番号70の重鎖可変領域及び配列番号74の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0136】
(e)配列番号77、78及び79で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号81、82及び83で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096528に記載の抗体(例えば、配列番号80の重鎖可変領域及び配列番号84の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0137】
(f)配列番号87、88及び89で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号91、92及び93で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096528に記載の抗体(例えば、配列番号90の重鎖可変領域及び配列番号94の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0138】
(g)配列番号97、98及び99で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号101、102及び103で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096528に記載の抗体(例えば、配列番号100の重鎖可変領域及び配列番号104の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0139】
(h)配列番号107、108及び109で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号111、112及び113で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096528に記載の抗体(例えば、配列番号110の重鎖可変領域及び配列番号114の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0140】
(i)配列番号117、118及び119で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号121、122及び123で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096533に記載の抗体(例えば、配列番号120の重鎖可変領域及び配列番号124の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0141】
(j)配列番号127、128及び129で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号121、122及び123で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096533に記載の抗体(例えば、配列番号130の重鎖可変領域及び配列番号124の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0142】
(k)配列番号132、133及び134で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号136、137及び138で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096533に記載の抗体(例えば、配列番号135の重鎖可変領域及び配列番号139の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0143】
(l)配列番号142、143及び144で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号146、147及び148で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096534に記載の抗体(例えば、配列番号145の重鎖可変領域及び配列番号149の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0144】
(m)配列番号142、143及び144で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号152、153及び154で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096534に記載の抗体(例えば、配列番号145の重鎖可変領域及び配列番号155の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0145】
(n)配列番号157,158及び159のCDRを含む重鎖可変領域と配列番号161,162及び163のCDRを含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096534に記載の抗体(例えば、配列番号160の重鎖可変領域および配列番号164の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0146】
(o)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号171、172及び173で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2011/096534に記載の抗体(例えば、配列番号170の重鎖可変領域及び配列番号174の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0147】
(p)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号177、178及び179で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号170の重鎖可変領域及び配列番号180の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0148】
(q)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号182、183及び184で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号170の重鎖可変領域及び配列番号185の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0149】
(r)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号187、188及び189で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号170の重鎖可変領域及び配列番号190の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0150】
(s)配列番号167、168及び169で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号192、193及び194で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号170の重鎖可変領域及び配列番号195の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0151】
(t)配列番号197、198及び199で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号201、202及び203で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号200の重鎖可変領域及び配列番号204の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0152】
(u)配列番号207、208及び209で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号211、212及び213で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号210の重鎖可変領域及び配列番号214の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0153】
(v)配列番号217、218及び219で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号221、222及び223で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号220の重鎖可変領域及び配列番号224の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0154】
(w)配列番号227、228及び229で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号231、232及び233で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号230の重鎖可変領域及び配列番号234の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0155】
(x)配列番号237、238及び239で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号241、242及び243で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号240の重鎖可変領域及び配列番号244の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0156】
(y)配列番号247、248及び249で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号251、252及び253で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2010/016526に記載の抗体(例えば、配列番号250の重鎖可変領域及び配列番号254の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0157】
(z)配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号280、281及び282で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む、WO2013/018894に記載の抗体(例えば、配列番号279の重鎖可変領域及び配列番号283の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0158】
(aa)配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号286、287及び288で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む、WO2013/018894に記載の抗体(例えば、配列番号279の重鎖可変領域及び配列番号289の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0159】
(ab)配列番号291、292及び293で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号295、296及び297で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2013/018894に記載の抗体(例えば、配列番号294の重鎖可変領域及び配列番号298の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0160】
(ac)配列番号301、302及び303で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号305、306及び307で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2013/018892に記載の抗体(例えば、配列番号304の重鎖可変領域及び配列番号308の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0161】
(ad)配列番号311、312及び313で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号315、316及び317で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2013/018891に記載の抗体(例えば、配列番号314の重鎖可変領域及び配列番号318の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0162】
(ae)配列番号321、322及び323で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号325、326及び327で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2013/018889に記載の抗体(例えば、配列番号324の重鎖可変領域及び配列番号328の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0163】
(af)配列番号331、332及び333で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号335、336及び337で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む、WO2013/018883に記載の抗体(例えば、配列番号334の重鎖可変領域及び配列番号338の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0164】
(ag)配列番号341、342及び343で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号345、346及び347で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号344の重鎖可変領域及び配列番号348の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0165】
(ah)配列番号351、352及び353で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号354、355及び356で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号359の重鎖可変領域及び配列番号361の軽鎖可変領域で構成される抗体、配列番号368の重鎖可変領域及び配列番号370の軽鎖可変領域で構成される抗体、配列番号372の重鎖可変領域及び配列番号370の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0166】
(ai)配列番号351、352及び357で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号354、355及び356で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号363の重鎖可変領域及び配列番号365の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0167】
(aj)配列番号373、374及び375で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号377、378及び379で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号376の重鎖可変領域及び配列番号380の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0168】
(ak)配列番号383、384及び385で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号387、388及び389で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号386の重鎖可変領域及び配列番号390の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0169】
(al)配列番号393、394及び395で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号387、388及び389で表されるアミノ酸配列の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号396の重鎖可変領域及び配列番号390の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0170】
(am)配列番号398、399及び400で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号402、403及び404で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号401の重鎖可変領域及び配列番号405の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0171】
(an)配列番号408、409及び410の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号412、413及び414の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号411の重鎖可変領域及び配列番号415の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0172】
(ao)配列番号418、419及び420の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む重鎖可変領域と配列番号422、423及び424の相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む軽鎖可変領域とを含む軽鎖可変領域とを含む抗体又はそのフラグメント(例えば、配列番号421の重鎖可変領域及び配列番号425の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
【0173】
ここで、配列番号67、68及び69、配列番号77,78及び79、配列番号87,88及び89、配列番号97,98及び99、配列番号107,108及び109、配列番号117,118及び119、配列番号127,128及び129、配列番号132、133及び134、配列番号142、143及び144、配列番号157、158及び159、配列番号167、168及び169、配列番号167、168及び169、配列番号197、198及び199、配列番号207、208及び209、配列番号217、218及び219、配列番号227、228及び229、配列番号237、238及び239、配列番号247、248及び249、配列番号276、277及び278、291、292及び293、301、302及び303、311、312及び313、321、322及び323、331、332及び333、341、342及び343、373、374及び375、383、384及び385、393、394及び395、398、399及び400、408、409及び410、418、419及び420に示すアミノ酸配列はそれぞれ、マウス抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、また、配列番号71、72及び73、配列番号81,82及び83、配列番号91,92及び93、配列番号101,102及び103、配列番号111、112及び113、配列番号121,122及び123、配列番号136、137及び138、配列番号146,147及び148、配列番号152,153及び154、配列番号161,162及び163、配列番号171,172及び173、配列番号177、178及び179、配列番号182、183及び184、配列番号187、188及び189、配列番号192、193及び194、配列番号201、202及び203、配列番号211、212及び213、配列番号221、222及び223、配列番号231、232及び233、配列番号241、242及び243、配列番号251、252及び253、配列番号280、281及び282、配列番号286、287及び288、配列番号295、296及び297、配列番号305、306及び307、配列番号315、316及び317、配列番号325、326及び327、配列番号335、336及び337、配列番号345、346及び347、配列番号377、378及び379、配列番号387、388及び389、配列番号402、403及び404、配列番号412、413及び414配列番号422、423及び424に示すアミノ酸配列はそれぞれ、マウス抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3である。
【0174】
また、配列番号37、38及び39、配列番号47、48及び49、配列番号57、58及び59に示すアミノ酸配列は、ニワトリ抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、さらにまた、配列番号41、42及び43、配列番号51、52及び53、配列番号61、62及び63に示すアミノ酸配列はそれぞれ、ニワトリ抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3である。
【0175】
また、配列番号351、352及び353に示すアミノ酸配列は、ウサギ抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、さらにまた、配列番号354、355及び356に示すアミノ酸配列はそれぞれ、ウサギ抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3である。
【0176】
また、本発明で用いられるヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は多重特異性抗体は、例えば以下の抗体である(抗体(ah)で例示する)。
【0177】
(i)重鎖の可変領域が配列番号351、352及び353のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号354、355及び356のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む抗体。
【0178】
(ii)重鎖の可変領域が配列番号351、352及び353のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号354、355及び356のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0179】
(iii)重鎖の可変領域が配列番号368のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含む、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号370のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体。
【0180】
なお、ヒト抗体重鎖及び軽鎖の定常領域及び可変領域の配列は、例えばNCBI(米国:GenBank、UniGeneなど)から入手可能であり、例えばヒトIgG重鎖定常領域については登録番号J00228、ヒトIgG重鎖定常領域については登録番号J00230、ヒトIgG重鎖定常領域については登録番号X03604、ヒトIgG重鎖定常領域については登録番号K01316、ヒト軽鎖κ定常領域については登録番号V00557、X64135、X64133など、ヒト軽鎖λ定常領域については登録番号X64132、X64134などの配列を参照することができる。
【0181】
なお、前記抗体(ah)のヒト化抗体の具体例は、前記抗体(ai)、重鎖可変領域の配列番号368の重鎖可変領域及び配列番号370の軽鎖可変領域で構成される抗体、配列番号372の重鎖可変領域及び配列番号370の軽鎖可変領域で構成される抗体である。
【0182】
上記抗体は、好ましくは、細胞障害活性を有しており、これによって抗腫瘍効果を発揮することができる。
【0183】
また、上記抗体における重鎖及び軽鎖の可変領域やCDRの特定の配列は、単に例示を目的としたものであり、特定の配列に限定されないことは明らかである。ヒトCAPRIN−1タンパク質に対する別のヒト抗体又は非ヒト動物抗体(例えばマウス抗体)を産生しうるハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を回収し、ヒトCAPRIN−1タンパク質との免疫学的結合性及び細胞障害活性を指標として目的の抗体であるか否かを判定する。それによって目的のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを識別したのち、上記のとおり、該ハイブリドーマから目的の抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを作製し配列決定し、該DNAを別の抗体の作製のために利用する。
【0184】
さらに本発明で用いられる上記抗体は、CAPRIN−1タンパク質を特異的に認識するという特異性を有する限り、上記(i)から(iv)の各抗体の特にフレームワーク領域の配列及び/又は定常領域の配列において、1若しくは数個(好ましくは、1若しくは2個)のアミノ酸の置換、欠失又は付加があってもよい。ここで数個とは、2〜5個、好ましくは2個又は3個を意味する。
【0185】
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体によるCAPRIN−1タンパク質発現胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍効果は、以下の機序により起こると考えられる。
【0186】
CAPRIN−1タンパク質発現細胞のエフェクター細胞抗体依存的細胞障害性(ADCC)、及びCAPRIN−1タンパク質発現細胞の補体依存的細胞障害性(CDC)。
【0187】
したがって、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体の活性評価は、以下実施例に具体的に示されるように、生体外でCAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞に対して上記ADCC活性又はCDC活性を測定することで評価することができる。
【0188】
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体は、胆嚢癌細胞上のCAPRIN−1タンパク質と結合し、上記活性によって、抗腫瘍作用を示すことから、胆嚢癌の治療あるいは予防に有用であると考えられる。すなわち本発明は、抗CAPRIN−1抗体を有効成分とする、胆嚢癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。抗CAPRIN−1抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト化抗体にすることが好ましい。
【0189】
なお、抗CAPRIN−1抗体と胆嚢癌細胞表面上のCAPRIN−1タンパク質との結合親和性が高い程、抗CAPRIN−1抗体による、より強い抗腫瘍活性が得られる。したがって、CAPRIN−1タンパク質と高い結合親和性を有する抗CAPRIN−1抗体を獲得できれば、より強い抗腫瘍効果が期待でき、胆嚢癌の治療及び/又は予防を目的とした医薬組成物として適応することが可能になる。高い結合親和性として、前述したように、結合定数(親和定数)Ka(kon/koff)が、好ましくは、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5×1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5×1011−1、少なくとも1012−1、あるいは、少なくとも1013−1であることが望ましい。
【0190】
<抗原発現細胞への結合>
抗体がCAPRIN−1タンパク質に結合する能力は、実施例で述べられるようなたとえば ELISA、ウエスタンブロット法、免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析などを用いた結合アッセイを利用して特定することができる。
【0191】
<免疫組織化学染色>
CAPRIN−1タンパク質を認識する抗体は、当業者に周知の方法での免疫組織化学により、外科手術の間に患者から得た組織や、自然に又はトランスフェクション後にCAPRIN−1タンパク質を発現する細胞系を接種した異種移植組織を担持する動物から得た組織から、パラホルムアルデヒド又はアセトン固定した凍結切片又はパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋した組織切片を使用して、CAPRIN−1タンパク質との反応性に関して試験することができる。
【0192】
免疫組織化学染色のため、CAPRIN−1タンパク質に対して反応性のある抗体を、様々な方法で染色させることができる。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウス抗体やヤギ抗ウサギ抗体を反応させることにより、可視化することができる。
【0193】
<医薬組成物>
本発明の胆嚢癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物の標的は、CAPRIN−1遺伝子を発現する胆嚢癌(細胞)であれば特に限定されない。
【0194】
本明細書で使用される「腫瘍」及び「癌」という用語は、悪性新生物を意味し、互換的に使用される。
【0195】
本発明において対象となる胆嚢癌としては、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のアミノ酸配列、該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列における7個以上、好ましくは8個以上の連続するアミノ酸残基を含むその部分配列をコードする遺伝子を発現している胆嚢癌である。胆嚢癌には、胆嚢部位に生じるものや(原発)、転移した癌も含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
また、対象となる動物は、哺乳動物であり、例えば霊長類、ペット動物、家畜類、競技用動物などを含む哺乳動物であり、特にヒト、イヌ及びネコが好ましい。
【0197】
本発明で用いられる抗体を医薬組成物として用いる場合には、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0198】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0199】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−60と併用してもよい。
【0200】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0201】
投与は、経口又は非経口であり、好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身又は局部的に投与することができる。
【0202】
また、患者の年齢、体重、性別、症状などにより適宜投与方法を選択することができる。抗体又は抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重、年齢、性別、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0203】
本発明の医薬組成物を被験者に投与することによって胆嚢癌を治療及び/又は予防することができる。
【0204】
さらに、本発明の医薬組成物を、上記で例示したような抗腫瘍剤又は抗腫瘍剤を含む医薬組成物と組み合わせて、被験者に併用投与することを含む、胆嚢癌の治療及び/又は予防方法も本発明に包含される。本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤は、同時に、あるいは、別々に被験者に投与されうる。別々に投与する場合には、いずれの医薬組成物が先であっても又は後であってもよく、それらの投与間隔、投与量、投与経路及び投与回数は、専門医によって適宜選択されうる。同時に投与する別の医薬剤型には、例えば、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤を、薬理学上許容される担体(もしくは媒体)中で混合し製剤化して得られる医薬組成物も包含されるものとする。また、抗腫瘍剤を含有する上記医薬組成物及び剤型のいずれに対しても、本発明の抗体を含有する医薬組成物及び剤型についての処方、製剤化、投与経路、用量、癌などの説明を適用しうる。したがって、本発明は、本発明の医薬組成物と、上で例示したような抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含む、胆嚢癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品(「医薬キット」ともいう)も提供する。
【0205】
また、本発明は、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤とを、薬理学上許容される担体とともに含む、胆嚢癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物も提供する。
【0206】
或いは、抗腫瘍剤は、本発明の抗体又はそのフラグメントにコンジュゲートされてもよい。該コンジュゲートは、上記と同様に、薬理学上許容される担体(もしくは媒体)と混合し製剤化して医薬組成物とすることができる。
【実施例】
【0207】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例によって制限されないものとする。
【0208】
[実施例1] SEREX法による癌抗原タンパク質の同定
(1)cDNAライブラリーの作製
健常な犬の精巣組織から酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム法(Acid guanidium−Phenol−Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex−dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0209】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリーを合成した。cDNAファージライブラリーの作製にはcDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA GigapackIII Gold Clonig Kit (STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリーを作製した。作製したcDNAファージライブラリーのサイズは7.73×10pfu/mlであった。
【0210】
(2)血清によるcDNAライブラリーのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣cDNAファージライブラリーを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2210クローンとなるように宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthcare Bio−Scinece社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris−HCl, 150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0211】
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Expressファージを宿主大腸菌(XL1−Blure MRF’)に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS−カラム(GE Healthcare Bio−Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク質固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌及びファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0212】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS−T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG−h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO、50mM Tris−HCl、0.01%ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、5個の陽性クローンを単離した。
【0213】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した5個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液250μlさらにExAssist helper phage(STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心分離を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0214】
精製したプラスミドは、配列番号31に記載のT3プライマーと配列番号32に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号5,7,9,11,13に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列(配列番号6,8,10,12,14)を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた5個の遺伝子全てがCAPRIN−1タンパク質をコードする遺伝子であることが判明した。5個の遺伝子間の配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において塩基配列100%、アミノ酸配列99%であった。この遺伝子のヒト相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列98%であった。ヒト相同因子の塩基配列を配列番号1,3に、アミノ酸配列を配列番号2,4に示す。また、取得したイヌ遺伝子のウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列97%であった。ウシ相同因子の塩基配列を配列番号15に、アミノ酸配列を配列番号16に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列93〜97%であった。また、取得したイヌ遺伝子のウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列97%であった。ウマ相同因子の塩基配列を配列番号17に、アミノ酸配列を配列番号18に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列87〜89%、アミノ酸配列95〜97%であった。マウス相同因子の塩基配列を配列番号19,21,23,25,27に、アミノ酸配列を配列番号20,22,24,26,28に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列89〜91%、アミノ酸配列95〜96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列82%、アミノ酸配列87%であった。ニワトリ相同因子の塩基配列を配列番号29に、アミノ酸配列を配列番号30に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列81〜82%、アミノ酸配列86%であった。
【0215】
(4)ヒト胆嚢癌細胞でのCAPRIN−1遺伝子発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しヒトの胆嚢癌細胞株TGBC14TKB(独立行政法人理化学研究所より入手)における発現をRT−PCR法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50〜100mg及び各細胞株5〜10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号33及び34に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、94℃−30秒、60℃−30秒、72℃−30秒のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号1の塩基配列(ヒトCAPRIN−1遺伝子)中の698番〜1124番塩基の領域を増幅するものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号35及び36に記載)も同時に用いた。その結果、本細胞株TGBC14TKBで発現が確認された。
【0216】
[実施例2] 抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体の作製
WO2010/016526の実施例3に従って作製したヒトCAPRIN−1組換えタンパク質1mgを等容量の不完全フロイントアジュバント(IFA)溶液と混合し、これを2週間毎に4回、ウサギの皮下に投与を行った。その後血液を採取し、ポリクローナル抗体を含む抗血清を得た。さらにこの抗血清をプロテインG担体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて精製し、抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体を得た。また、抗原を投与していないウサギの血清を上記と同様にしてプロテインG担体を用いて精製したものをコントロール抗体とした。
【0217】
[実施例3] ヒト胆嚢癌でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
(1)ヒト胆嚢癌細胞上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
CAPRIN−1遺伝子の発現が確認されたヒト胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。上記で遺伝子発現が認められたTGBC14TKB10細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに実施例2で調製した抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体2μg(5μl)を添加し、さらに95μlの0.1%牛胎児血清を含むPBSで懸濁後、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、5μlのFITC標識ヤギ抗ラビットIgG抗体(サンタクルズ社製)及び95μlの0.1%牛胎児血清(FBS)を含むPBSで懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体の代わりに実施例2で調製したコントロール抗体を用いて行い、コントロールとした。その結果、抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を添加されたTGBC14TKBは、コントロールに比べて、いずれも蛍光強度が20%以上強かった。このことから、上記ヒト胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
【0218】
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗ヒトCAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
【0219】
(2)ヒト胆嚢癌組織におけるCAPRIN−1タンパク質の発現解析
パラフィン包埋されたヒト胆嚢癌組織アレイ(BIOMAX社製)の胆嚢癌組織26検体を用いて、免疫組織化学染色を行った。ヒト胆嚢癌組織アレイを60℃で3時間処理後、キシレンを満たした染色瓶に入れて5分ごとにキシレンを入れ替える操作を3回行った。次にキシレンの代わりにエタノール及びPBS−Tで同様の操作を行った。0.05%Tween20を含む10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)を満たした染色瓶にヒト胆嚢癌組織アレイを入れ、125℃で5分間処理後、室温で40分以上静置した。切片周囲の余分な水分をキムワイプでふき取り、DAKOPENで囲み、Peroxidase Block(DAKO社製)を適量滴下した。室温で5分間静置後、PBS−Tを満たした染色瓶に入れて5分ごとにPBS−Tを入れ替える操作を3回行った。ブロッキング液として、10%FBSを含むPBS−T溶液をのせ、モイストチャンバー内で室温で1時間静置した。実施例2で調製した抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体を5%FBSを含むPBS−T溶液で10μg/mlに調製した溶液をのせ、モイストチャンバー内で4℃で一晩静置し、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、Peroxidase Labelled Polymer Conjugated(DAKO社製)適量滴下し、モイストチャンバー内で室温で30分間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、DAB発色液(DAKO社製)をのせ、室温で10分程度静置した後、発色液を捨て、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、蒸留水でリンスし、70%、80%、90%、95%、100%の各エタノール溶液に順番に1分間ずつ入れた後、キシレン中で一晩静置した。スライドガラスを取り出し、Glycergel Mounting Medium(DAKO社製)で封入後、観察を行った。その結果、CAPRIN−1タンパク質は全胆嚢癌組織26検体の内、19検体(73%)で強い発現が認められた。
【0220】
[実施例4] 抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体の胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍効果(ADCC活性)
抗CAPRIN−1抗体が、CAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞を障害することができるかどうかを検討した。実施例2で得た抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を用いて評価を行った。CAPRIN−1タンパク質の発現が確認されているヒト胆嚢癌細胞TGBC14TKBを10個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり10個ずつ添加した。これに、上記抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を1μg添加し、さらにヒト末梢血から分離したリンパ球をそれぞれ2×10個ずつ添加して、37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム(Cr)51の量を測定し、抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体による胆嚢癌細胞に対するADCC活性を算出した。その結果、抗原が免疫されていないウサギの末梢血から調製したコントロール抗体を用いて同様の操作を行った場合、TGBC14TKBに対して5%未満であり、抗体を添加しなかった場合においても5%未満であったのに対して、抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を加えた場合には、14%以上のADCC活性が確認された。したがって、抗CAPRIN−1抗体を用いたADCC活性により、CAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞を障害することができることが明らかになった。なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体、リンパ球及びクロミウム51を取り込ませた10個の腫瘍細胞を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出した腫瘍細胞に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0221】
式:細胞障害活性(%)=抗CAPRIN−1抗体及びリンパ球を加えた際の腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0222】
[実施例5] 抗CAPRIN−1マウス及びニワトリモノクローナル抗体の作製
実施例2で作製したヒトCAPRIN−1組換えタンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎にさらに3回及び24回投与を行い免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15%FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%COの条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0223】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0224】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すマウスモノクローナル抗体を産生する150個のハイブリドーマ株を得た。
【0225】
次にそれらマウスモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1タンパク質が発現する癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するマウスモノクローナル抗体22個(マウスモノクローナル抗体#1〜#22)を選抜した。
【0226】
また、ニワトリモノクローナル抗体を作製するために、実施例2で調製した配列番号2に示される、抗原タンパク質(ヒトCAPRIN−1タンパク質)300μgを等量のフロイントの完全アジュバントと混合し、これをニワトリ1羽当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を7週齢のニワトリの腹腔内に投与後、4週間毎に7回投与を行い免疫を完了した。最後の免疫から4日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞と、鳥類細網内皮症ウイルスを用いてニワトリから形質転換法により樹立した、軽鎖が欠損しているニワトリミエローマ細胞とを5:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むIMDM培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて、5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた10%FBSを含むIMDM培地(HAT選択培地)300mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート30枚に播種した。7日間、37℃、5%COの条件で培養することで、脾臓細胞とニワトリミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0227】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ニワトリIgY抗体(SIGMA社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0228】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。ヒトCAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ニワトリIgY抗体(SIGMA社製))を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株を複数個得た。
【0229】
次にそれらモノクローナル抗体のうち、CAPRIN−1タンパク質が発現する癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、5×10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで30倍希釈したFITC標識ヤギ抗ニワトリIgG(H+L)抗体(SouthernBiotech社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、ハイブリドーマ培養用培地を用いて行い、コントロールのサンプルとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、CAPRIN−1タンパク質を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体3個(ニワトリモノクローナル抗体#1、#2、#3)を選抜した。
【0230】
[実施例6] 選抜した抗体の特徴付け
(1)抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の可変領域遺伝子のクローニング
実施例5で選抜した22個のマウスモノクローナル抗体ならびに3個のニワトリモノクローナル抗体をそれぞれ産生する各ハイブリドーマ株から、mRNAを抽出し、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマにはマウスFR1由来配列及びマウスFR4由来の配列に特異的なプライマーを使用し、ニワトリモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマにはニワトリFR1由来配列及びニワトリFR4由来の配列に特異的なプライマーを使用したRT−PCR法により、全ての抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の遺伝子を取得した。配列決定のために、それら遺伝子をpCR2.1ベクター(life technologies社製)にクローニングした。
【0231】
(1)−1 RT−PCR
10個のマウスモノクローナル抗体を産生する各ハイブリドーマ株から、mRNA micro purification kit(GEヘルスケア社製)を用いてmRNAを調製し、SuperScriptII 1st strand synthesis kit(life technologies社製)を用いて、得られたmRNAを逆転写してcDNAを合成した。これら操作は各キットの添付プロトコールに従って行った。得られたcDNAを用いて、PCR法により抗体遺伝子の増幅を行った。VH領域の遺伝子取得のために、マウス重鎖FR1配列に特異的なプライマー(配列番号257)及びマウス重鎖FR4配列に特異的なプライマー(配列番号258)を使用した。またVL領域の遺伝子取得のために、マウス軽鎖FR1配列に特異的なプライマー(配列番号259)及びマウス軽鎖FR4に特異的なプライマー(配列番号260)を使用した。これらプライマーはJones, S.T. and Bending, M.M. Bio/Technology 9, 88−89 (1991)を参考に設計した。PCRは、Ex−taq(タカラバイオ社製)を用いた。10×EX Taq Buffer 5μl、dNTP Mixture(2.5mM)4μl、プライマー(1.0μM)各2μl、Ex Taq(5U/μl)0.25μlにcDNAサンプルを加え、滅菌水により総量50μlとした。94℃で2分処理後、変性94℃1分、アニーリング58℃30秒、伸長反応72℃1分の組み合わせで30サイクルの条件で行った。
【0232】
また、10個のニワトリモノクローナル抗体を産生する各ハイブリドーマ株から、High Pure RNA Isolation Kit(Roche社製)を用いて全RNAを抽出した後、PrimeScriptII 1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara社製)を用いてcDNAを合成した。これら操作は各キットの添付プロトコールに従って行った。 合成したcDNAを鋳型としKOD−Plus−DNA Polymerase(TOYOBO社製)を用いて、常法に従い、PCR法にて、ニワトリ抗体重鎖遺伝子可変領域及びニワトリ抗体軽鎖遺伝子可変領域をそれぞれ増幅した。ニワトリ抗体のVH領域の遺伝子取得のために、ニワトリ重鎖FR1配列に特異的なプライマー及びニワトリ重鎖FR4配列に特異的なプライマーを使用した。またVL領域の遺伝子取得のために、ニワトリ軽鎖FR1配列に特異的なプライマー及びニワトリ軽鎖FR4に特異的なプライマーを使用した。
【0233】
(1)−2 クローニング
上記で得られた各PCR産物を用いてアガロースゲルにて電気泳動を行い、VH領域及びVL領域それぞれのDNAバンドを切り出した。DNA断片はQIAquick Gel purification kit(キアゲン社製)を用いてその添付プロトコールに従って行った。精製した各DNAはTAクローニングキット(life technologies社製)を用いてpCR2.1ベクターにクローニングした。連結したベクターをDH5aコンピテントセル(TOYOBO社製)に定法に従い形質転換を行った。各形質転換体それぞれ10クローンを培地(100μg/mlアンピシリン)で37℃一晩培養後、各プラスミドDNAをQiaspin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて精製した。
【0234】
(1)−3 配列決定
上記で得られた各プラスミド中のVH領域及びVL領域の遺伝子配列解析は、M13フォワードプライマー(配列番号261)及びM13リバースプライマー(配列番号262)を用いて、蛍光シーケンサー(ABI社製DNAシーケンサー3130XL)により、ABI社製のビッグダイターミネーターVer3.1サイクルシーケンシングキットを用いて、その添付プロトコールに従い行った。その結果、各々の遺伝子配列及びアミノ酸配列が決定された。
【0235】
すなわち、これらのモノクローナル抗体は、配列番号40(配列番号45)、配列番号50(配列番号55)、配列番号60(配列番号65)、配列番号70(配列番号75)、配列番号80(配列番号85)、配列番号90(配列番号95)、配列番号100(配列番号105)、配列番号110(配列番号115)、配列番号120(配列番号125)、配列番号130(配列番号131)、配列番号135(配列番号140)、配列番号145(配列番号150)、配列番号160(配列番号165)、配列番号170(配列番号175)、配列番号200(配列番号205)、配列番号210(配列番号215)、配列番号220(配列番号225)、配列番号230(配列番号235)、配列番号240(配列番号245)又は配列番号250(配列番号255)のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域(括弧内は遺伝子配列の配列番号)と、配列番号44(配列番号46)、配列番号54(配列番号56)、配列番号64(配列番号66)、配列番号74(配列番号76)、配列番号84(配列番号86)、配列番号94(配列番号96)、配列番号104(配列番号106)、配列番号114(配列番号116)、配列番号124(配列番号126)、配列番号139(配列番号141)、配列番号149(配列番号151)、配列番号155(配列番号156)、配列番号164(配列番号166)、配列番号174(配列番号176)、配列番号180(配列番号181)、配列番号185(配列番号186)、配列番号190(配列番号191)、配列番号195(配列番号196)、配列番号204(配列番号206)、配列番号214(配列番号216)、配列番号224(配列番号226)、配列番号234(配列番号236)、配列番号244(配列番号246)又は配列番号254(配列番号256)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域(括弧内は遺伝子配列の配列番号)を含み、ここで、該VH領域に配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、配列番号77、配列番号87、配列番号97、配列番号107、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号142、配列番号157、配列番号167、配列番号197、配列番号207、配列番号217、配列番号227、配列番号237又は配列番号247のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号38、配列番号48、配列番号58、配列番号68、配列番号78、配列番号88、配列番号98、配列番号108、配列番号118、配列番号128、配列番号133、配列番号143、配列番号158、配列番号168、配列番号198、配列番号208、配列番号218、配列番号228、配列番号238又は配列番号248のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号39、配列番号49、配列番号59、配列番号69、配列番号79、配列番号89、配列番号99、配列番号109、配列番号119、配列番号129、配列番号134、配列番号144、配列番号159、配列番号169、配列番号199、配列番号209、配列番号219、配列番号229、配列番号239又は配列番号249のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれ、該VL領域に配列番号41、配列番号51、配列番号61、配列番号71、配列番号81、配列番号91、配列番号101、配列番号111、配列番号121,配列番号136、配列番号146、配列番号152、配列番号161、配列番号171、配列番号177、配列番号182、配列番号187、配列番号192、配列番号201、配列番号211、配列番号221、配列番号231、配列番号241又は配列番号251のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号42、配列番号52、配列番号62、配列番号72、配列番号82、配列番号92、配列番号102、配列番号112、配列番号122,配列番号137、配列番号147、配列番号153、配列番号162、配列番号172、配列番号178、配列番号183、配列番号188、配列番号193、配列番号202、配列番号212、配列番号222、配列番号232、配列番号242又は配列番号252のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号43、配列番号53、配列番号63、配列番号73、配列番号83、配列番号93、配列番号103、配列番号113、配列番号123、配列番号138、配列番号148、配列番号154、配列番号163、配列番号173、配列番号179、配列番号184、配列番号189、配列番号194、配列番号203、配列番号213、配列番号223、配列番号233、配列番号243又は配列番号253のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれる。
【0236】
得られたモノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号40、配列番号50、配列番号60、配列番号70、配列番号80、配列番号90、配列番号100、配列番号110、配列番号120、配列番号130、配列番号135、配列番号145、配列番号160、配列番号170、配列番号200、配列番号210、配列番号220、配列番号230、配列番号240及び配列番号250に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号44、配列番号54、配列番号64、配列番号74、配列番号84、配列番号94、配列番号104、配列番号114、配列番号124,配列番号139、配列番号149、配列番号155、配列番号164、配列番号174、配列番号180、配列番号185、配列番号190、配列番号195、配列番号204、配列番号214、配列番号224、配列番号234、配列番号244及び配列番号254に示す。
【0237】
すなわちマウスモノクローナル抗体#1は配列番号70の重鎖可変領域と配列番号74の軽鎖可変領域から成り、#2は配列番号80の重鎖可変領域と配列番号84の軽鎖可変領域から成り、#3は配列番号90の重鎖可変領域と配列番号94の軽鎖可変領域から成り、#4は配列番号100の重鎖可変領域と配列番号104の軽鎖可変領域から成り、#5は配列番号110の重鎖可変領域と配列番号114の軽鎖可変領域から成り、#6は配列番号120の重鎖可変領域と配列番号124の軽鎖可変領域から成り、#7は配列番号130の重鎖可変領域と配列番号124の軽鎖可変領域から成り、#8は配列番号135の重鎖可変領域と配列番号139の軽鎖可変領域から成り、#9は配列番号145の重鎖可変領域と配列番号149の軽鎖可変領域から成り、#10は配列番号145の重鎖可変領域と配列番号155の軽鎖可変領域から成り、#11は配列番号160の重鎖可変領域と配列番号164の軽鎖可変領域から成り、#12は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号174の軽鎖可変領域から成り、#13は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号180の軽鎖可変領域から成り、#14は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号185の軽鎖可変領域から成り、#15は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号190の軽鎖可変領域から成り、#16は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号195の軽鎖可変領域から成り、#17は配列番号200の重鎖可変領域と配列番号204の軽鎖可変領域から成り、#18は配列番号210の重鎖可変領域と配列番号214の軽鎖可変領域から成り、#19は配列番号220の重鎖可変領域と配列番号224の軽鎖可変領域から成り、#20は配列番号230の重鎖可変領域と配列番号234の軽鎖可変領域から成り、#21は配列番号240の重鎖可変領域と配列番号244の軽鎖可変領域から成り、#22は配列番号250の重鎖可変領域と配列番号254の軽鎖可変領域から成る。
【0238】
得られたニワトリモノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号40、配列番号50、配列番号60に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号44、配列番号54、配列番号64に示す。
【0239】
すなわち、ニワトリモノクローナル抗体#1は配列番号40の重鎖可変領域と配列番号44の軽鎖可変領域から成り、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号37、配列番号38、配列番号39のアミノ酸配列から成り、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号41、配列番号42、配列番号43のアミノ酸配列から成り、ニワトリモノクローナル抗体#2は配列番号50の重鎖可変領域と配列番号54の軽鎖可変領域から成り、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号47、配列番号48、配列番号49のアミノ酸配列から成り、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号51、配列番号52、配列番号53のアミノ酸配列から成り、ニワトリモノクローナル抗体#3は配列番号60の重鎖可変領域と配列番号64の軽鎖可変領域から成り、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号57、配列番号58、配列番号59のアミノ酸配列から成り、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号61、配列番号62、配列番号63のアミノ酸配列から成る。
【0240】
(2)ヒト−ニワトリキメラ組換え抗体及びマウス−ニワトリキメラ抗体の作製
上記(1)で得られた、配列番号40で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、配列番号263を含むニワトリ抗体由来のリーダー配列と配列番号264を含むヒトIgGのH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、配列番号44で示されるにニワトリモノクローナル抗体#1の軽鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、配列番号263を含むニワトリ抗体由来のリーダー配列と配列番号265を含むヒトIgGのL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。
【0241】
次に、配列番号40で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターと、配列番号44で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の軽鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターをCHO−K1細胞(理研セルバンクより入手)に導入した。具体的には、12穴培養プレートの1ウェル当たりに1mlの10%FBSを含むHam’sF12培地(life technologies社製)で培養された2×10個のCHO−K1細胞をPBS(−)で洗浄したのちに、1ウェル当たり1mlの10% FBSを含むHam’sF12培地を新たに加えたウェルに30μlのOptiMEM(life technologies社製)に溶解した上記各ベクター250ngとPolyfect transfection reagent(QIAGEN社製)30μlとを混合したものを添加した。上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を、200μg/mlゼオシン(life technologies社製)ならびに200μg/mlジェネチシン(ロシュ社製)を添加した10%FBSを含むHam’sF12培地で培養したのち、96ウェルプレートの1ウェル当たりに0.5個となるように上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を播種して、ニワトリモノクローナル抗体#1の可変領域を有するヒト−ニワトリキメラ抗体#1(#1)を安定的に産生する細胞株を作製した。上記方法と同様にして、ニワトリモノクローナル抗体#2ならびに#3についてもヒト−ニワトリキメラ抗体#2(#2)ならびにヒト−ニワトリキメラ抗体#3(#3)を安定的に産生する細胞株を作製した。
【0242】
作製した細胞株を150cmフラスコを用いて5×10個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(life technologies社製)30mlを用いて5日間培養し、#1、#2又は#3を含む培養上清を得た。
【0243】
同様にして、配列番号40で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、ニワトリ抗体由来のリーダー配列とマウスIgGのH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、配列番号44で示されるにニワトリモノクローナル抗体#1の軽鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、ニワトリ抗体由来のリーダー配列とマウスIgGのL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。これらを上記と同様にCHO−K1細胞に導入してニワトリモノクローナル抗体#1の可変領域を有するマウス−ニワトリキメラ抗体#1を安定的に産生する細胞株を作製した。上記方法と同様にして、ニワトリモノクローナル抗体#2ならびに#3についてもマウス−ニワトリキメラ抗体#2(#2)ならびにマウス−ニワトリキメラ抗体#3(#3)を安定的に産生する細胞株を作製した。
【0244】
作製した細胞株を150cmフラスコを用いて5×10個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(life technologies社製)30mlを用いて5日間培養し、マウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2ならびにマウス−ニワトリキメラ抗体#3を含む培養上清を得た。
【0245】
(3)取得したモノクローナル抗体を用いた胆嚢癌細胞表面でのCAPRIN−1タンパク質の発現
次にCAPRIN−1遺伝子の発現が確認された胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。TGBC14TKB10細胞を1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに実施例4で作製した癌細胞表面に反応する、#1から#22の抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体ならびに上記(2)で作製した抗CAPRIN−1マウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2、マウス−ニワトリキメラ抗体#3を含む培養上清(100μl)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1% FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)で懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、#1から#22の抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体ならびにマウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2、マウス−ニワトリキメラ抗体#3を含む培養上清の代わりにアイソタイプコントロール抗体を用いて行い、コントロールとした。その結果、#1〜#22のモノクローナル抗体、マウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2、マウス−ニワトリキメラ抗体#3を添加された細胞は、コントロールに比べて、いずれも蛍光強度が20%以上強かった。具体的例を挙げると、マウス−ニワトリキメラ抗体#1を用いた場合は200%以上の蛍光強度の増強を示した。このことから、上記ヒト胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
【0246】
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗ヒトCAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100
(4)抗CAPRIN−1抗体のヒト胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍効果(ADCC活性)
上記で得た抗体のうち、ヒト−ニワトリキメラ抗体#1を用いてヒト胆嚢癌細胞に対する細胞障害活性(ADCC活性)を評価した。上記(2)で得たヒト−ニワトリキメラ抗体#1を含む培養上清をHitrap ProteinA SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを活性測定用の抗体として用いた。10個のヒト胆嚢癌細胞株TGBC14TKBを50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり2×10個ずつ添加して標的細胞とした。これに、上記精製抗体を1穴あたり1.2μg添加した。さらに、ヒト末梢血リンパ球細胞から以下の手法を用いてヒトNK細胞を含む細胞集団を分離した。すなわち、ヒト末梢血単核球細胞をFITC蛍光色素で標識された抗体(抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD20抗体、抗ヒトCD19抗体、抗ヒトCD11c抗体、抗HLA−DR抗体(ベクトンアンドディッキンソン社))で反応させ、セルソーター(FACS Vantage SE(ベクトンアンドディッキンソン社))を用いて、上記抗体で染まらないNK細胞を含んだ細胞集団を分離したもの、又はヒトNK細胞分離キット(NKセルアイソレーションキット(ミルテニー社製))を用いて分離したものを得た。得られたNK細胞を含む細胞を1ウェル当たり2×10個添加して、37℃、5%、COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による胆嚢癌細胞に対するADCC活性を算出した。その結果、TGBC14TKBに対して、CAPRIN−1タンパク質自体には反応するが、癌細胞の細胞表面に反応しないモノクローナル抗体ならびに抗体を添加しなかった場合の細胞障害活性はいずれも5%未満であったのに対して、ヒト−ニワトリキメラ抗体#1は20%の細胞障害活性が得られた。なお、#1〜#22の抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体、ヒト−ニワトリキメラ抗体#2ならびにヒト−ニワトリキメラ抗体#3についても上記と同様にしてTGBC14TKBに対する細胞障害活性を調べたところ、CAPRIN−1タンパク質自体には反応するが、癌細胞の細胞表面に反応しないモノクローナル抗体ならびに抗体を添加しなかった場合の細胞障害活性は5%未満であったのに対して、15%以上の細胞障害活性が見られた。以上の結果より、取得した抗CAPRIN−1モノクローナル抗体は、ADCC活性によってCAPRIN−1タンパク質を発現する癌細胞を障害することが示された。なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体、ヒトNK細胞を含む細胞集団及びクロミウム51を取り込ませた2×10個の腫瘍細胞を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出した腫瘍細胞に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0247】
式:細胞障害活性(%)=抗CAPRIN−1抗体及びヒトNK細胞を含む細胞集団を加えた際の腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0248】
[実施例7] 癌細胞の細胞表面に反応する抗CAPRIN−1抗体が結合するCAPRIN−1タンパク質中のペプチドの同定
上記で取得した、癌細胞の細胞表面に反応する#12〜#22の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を用いて、それらが認識するCAPRIN−1タンパク質中の部分配列の同定を行った。
【0249】
まず、PBSで1μg/μlの濃度に溶解した組換えCAPRIN−1タンパク質溶液100μlに、終濃度が10mMになるようにDTT(Fluka社製)を添加し、95℃、5分間反応させてCAPRIN−1タンパク質内のジスルフィド結合の還元を行い、次に終濃度20mMのヨードアセトアミド(和光純薬社製)を添加し、37℃、遮光条件下にて30分間チオール基のアルキル化反応を行った。得られた還元アルキル化CAPRIN−1タンパク質40μgに、#12〜#22の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体をそれぞれ50μg添加し、20mM リン酸緩衝液(pH7.0)1mlにメスアップして撹拌混合しながら4℃で一晩反応させた。
【0250】
次に、トリプシン(プロメガ社製)を終濃度0.2μgとなるように添加し、37℃1時間、2時間、4時間、12時間反応させた後、予め1%BSA(シグマ社製)を含むPBSでブロッキングし、PBSで洗浄したプロテインA−ガラスビーズ(GE社製)と1mM 炭酸カルシウム、NP−40緩衝液(20mM リン酸緩衝液(pH7.4)、5mM EDTA、150mM NaCl、1%NP−40)中で混合し、それぞれ30分間反応させた。
【0251】
反応液を25mM炭酸アンモニウム緩衝液(pH8.0)で洗浄した後、0.1% ギ酸100μlを用いて抗原抗体複合体を溶出し、溶出液についてQ−TOF Premier(Waters−MicroMass社製)を用いてLC−MS解析を行った。解析は機器に付属のプロトコールに従った。
【0252】
その結果、#12〜#22の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体がいずれも認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号273のポリペプチドが同定された。さらに、モノクローナル抗体#13〜#16、#17〜#19及び#21が認識する、上記配列番号273のポリペプチド中の部分配列として配列番号274のペプチドが同定され、さらにその部分配列ペプチドである配列番号275のペプチドをモノクローナル抗体#13〜#16が認識することが判った。
【0253】
また、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3、マウスモノクローナル抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11を用いて、それらが認識するCAPRIN−1タンパク質中のエピトープペプチドの同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0254】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0255】
これに、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1(#1)、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3(#3)及びマウスモノクローナル抗体(#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11)を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体ウェルにはHRPが標識された抗ヒトIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液を、マウスモノクローナル抗体にはHRPが標識された抗マウスIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液を、それぞれ50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0256】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、抗CAPRIN−1抗体のヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、抗体#1〜#5の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体がいずれも認識するCAPRIN−1の部分配列として、配列番号266のポリペプチドが同定された。さらに、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、マウスモノクローナル抗体#3及び#4が認識する、上記配列番号266のポリペプチド中の部分配列として配列番号267のペプチドが同定され、マウスモノクローナル抗体#1、#2及び#5が認識する、上記配列番号266のポリペプチド中の部分配列として配列番号268のペプチドが同定された。したがって、配列番号266のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体のヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、マウスモノクローナル抗体#1、#2、#3、#4及び#5のエピトープ領域を含んでいることが判った。また、抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#6、#7及び#8がいずれも認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号270のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。したがって、配列番号270のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体#6、#7ならびに#8のエピトープ領域を含んでいることが判った。さらにまた、抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#9、#10及び#11がいずれも認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号272のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。したがって、配列番号272のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体#9、#10ならびに#11のエピトープ領域を含んでいることが判った。さらにまた、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3が認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号269のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。したがって、配列番号269のポリペプチドがヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3のエピトープ領域を含んでいることが判った。
【0257】
[実施例8] CAPRIN−1タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体#30、#34〜36の作製
(1)マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30、#34〜36の作製
WO2010/016526の実施例3で調製した配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1タンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎に7回投与を行い、免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15% FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%COの条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0258】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0259】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する複数個のハイブリドーマ株を得た。
【0260】
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体4個(マウス抗CAPRIN−1抗体#30、#34〜36)を選抜した。
【0261】
(2)各マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体が認識するCAPRIN−1エピトープの同定
取得したモノクローナル抗体4個それぞれが認識するCAPRIN−1エピトープ領域の同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0262】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0263】
これに、抗CAPRIN−1抗体#1を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗マウスIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0264】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。
【0265】
その結果、マウス抗CAPRIN−1抗体#30が認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号429のポリペプチド、マウス抗CAPRIN−1抗体#34が認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号431のポリペプチド、マウス抗CAPRIN−1抗体#35及び36が認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号432のポリペプチドが同定された。
【0266】
(3)各マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の可変領域遺伝子のクローニング
取得したモノクローナル抗体について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子配列及びそのアミノ酸配列を解析した。
【0267】
その結果、マウス抗CAPRN−1抗体#30は配列番号344に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号348に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号349に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号350に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号341、配列番号342、配列番号343に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号345、配列番号346、配列番号347に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0268】
また、マウス抗CAPRN−1抗体#34は配列番号401に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号405に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号406に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号407に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号398、配列番号399、配列番号400に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号402、配列番号403、配列番号404に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0269】
マウス抗CAPRN−1抗体#35は配列番号411に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号415に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号416に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号417に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号408、配列番号409、配列番号410に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号412、配列番号413、配列番号414に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0270】
マウス抗CAPRN−1モノクローナル抗体#36は配列番号421に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号425に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号426に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号427に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号418、配列番号419、配列番号420に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号422、配列番号423、配列番号424に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0271】
(4)各マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を用いた胆嚢癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
ヒトの胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。上記胆嚢癌細胞株5×10細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに各マウス抗CAPRIN−1抗体を最終濃度が20μg/mlとなるように反応させて、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、100倍希釈したAlexa488標識Goat anti−mouse IgG抗体(life technologies社製)を反応させ、氷上で30時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールとして、二次抗体のみを反応させたものを陰性コントロールとした。その結果、抗CAPRIN−1抗体を添加された細胞は、コントロールに比べて、胆嚢癌細胞も蛍光強度が35%以上強かった。このことから、胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパクが発現していることが確認された。
【0272】
[実施例9] CAPRIN−1タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体#31〜33の作製
(1)マウス抗CAPRIN−1抗体#31の作製
WO2010/016526の実施例3で調製した配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1タンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎に7回投与を行い、免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15%FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%COの条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0273】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0274】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する61個のハイブリドーマ株を得た。
【0275】
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するマウスモノクローナル抗体1個(マウス抗CAPRIN−1抗体#31)を選抜した。
【0276】
(2)マウス抗CAPRIN−1抗体#31が認識するCAPRIN−1エピトープの同定
上記(1)で取得した癌細胞の細胞表面に反応するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(マウス抗CAPRIN−1抗体#31)を用いて、認識するCAPRIN−1エピトープ領域の同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0277】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0278】
これに、抗CAPRIN−1抗体#31を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗マウスIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0279】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。
【0280】
その結果、(1)で得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#31が認識するCAPRIN−1の部分配列として、配列番号430のポリペプチドが同定された。
【0281】
(3)マウス抗CAPRIN−1抗体#32及び33の作製
上記(1)と同様の方法で、(2)で同定した配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドとキャリアタンパク質のKLH(Keyhole limpet haemocyanin)との融合タンパク質を免疫原として、等量のアジュバント剤TiterMax Gold(登録商標)(CytRx社)と混合して7日間隔でマウスの腹腔に1回あたり100μg投与した。合計4回の投与を行った後、最終免疫から3日後のマウスから脾臓細胞を得て、上記(1)と同様の方法にてマウスミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製した。その後、作製したハイブリドーマの培養上清中に含まれる各抗体とWO2010/016526の実施例3で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/ml並びに免疫原として用いた配列番号5のアミノ酸配列とキャリアタンパク質のBSAとの融合タンパク質との反応性を指標に抗体を選抜した。WO2010/016526の実施例3で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlと配列番号5のアミノ酸配列とキャリアタンパク質のBSAとの融合タンパク質30μg/mlをそれぞれ96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加して4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで洗浄後、ブロックエース(DSファーマバイオメディカル社)溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、PBS−Tでウェルを洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温で2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して5〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを選抜した。
【0282】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.3個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1の部分配列の配列番号430のアミノ酸配列に対する結合親和性を指標に上記と同様の方法を用いて、配列番号430のアミノ酸に対する抗体を産生するハイブリドーマを得た。
【0283】
得られたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いたサンプル、及び二次抗体のみを反応させたサンプルを陰性コントロールとして行った。その結果、陰性コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するマウスモノクローナル抗体2個(マウス抗CAPRIN−1抗体#32、マウス抗CAPRIN−1抗体#33)を得た。
【0284】
得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#32並びに#33が免疫原であるCAPRIN−1の部分配列である配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に反応することを調べた。0.1Mの炭酸ナトリウム水溶液で30μg/mlに調製した配列番号430のアミノ酸配列を含む溶液及び配列番号430のアミノ酸配列を含まないCAPRIN−1の部分配列をそれぞれELISA用96ウェルプレートイモビライザーアミノ(ヌンク社)に100μg/mlずつ添加して、4℃にて一昼夜反応させてペプチドをウェルに結合させた。ペプチドが結合したウェルに10mMエタノールアミンを含む0.1M炭酸ナトリウム水溶液を添加して室温で1時間静置した。ウェル内の溶液を除去後、PBS−Tで洗浄したのち、ブロックエース溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。ウェル内の溶液を除去し、PBS−Tで洗浄後、マウス抗CAPRIN−31#32並びに#33を含む培養上清をそれぞれ1ウェルあたりに50μL添加して、室温にて1時間反応させた。その後PBS−Tで洗浄して、ブロックエース溶液で5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり50μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを十分に洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して5〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定したところ、配列番号430のアミノ酸配列を含まないCAPRIN−1の部分配列には全く反応せず、配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドのみにマウス抗CAPRIN−1抗体#32並びに#33は特異的に反応した。したがって、配列番号430のポリペプチドがマウスモノクローナル抗体#32及び#33のエピトープ領域を含んでいることが確認された。
【0285】
(4)マウス抗CAPRIN−1抗体#31〜33の特徴付け
(1)と(3)で得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#31〜33について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子の増幅断片を取得し、遺伝子配列並びにそのアミノ酸配列を解析した。その結果得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#31の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号381に、及びアミノ酸配列を配列番号376に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号382、及びアミノ酸配列を配列番号380に示す。また、得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#32の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号391に、及びアミノ酸配列を配列番号386に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号392に及びアミノ酸配列を配列番号390に示す。さらにまた、得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#33の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号397に、及びアミノ酸配列を配列番号396、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号392に、及びアミノ酸配列を配列番号390に示す。
【0286】
また、マウス抗CAPRIN−1抗体#31の重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号373、配列番号374、配列番号375のアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号377、配列番号378、配列番号379のアミノ酸配列からなることが確認された。また、マウス抗CAPRIN−1抗体#32の重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号383、配列番号384、配列番号385のアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号387、配列番号388、配列番号389のアミノ酸配列からなることが確認された。さらにまた、マウス抗CAPRIN−1抗体#33の重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号393、配列番号394、配列番号395のアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号387、配列番号388、配列番号389のアミノ酸配列からなることが確認された。
【0287】
[実施例10] マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を用いた胆嚢癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
ヒトの胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかをマウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を用いて調べた。TGBC14TKBを5×10細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これにマウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を最終濃度が20μg/mlとなるようにそれぞれ反応させて、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、100倍希釈したAlexa488標識Goat anti−mouse IgG抗体(life technologies社製)を反応させ、氷上で30時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールとして、二次抗体のみを反応させたものを陰性コントロールとした。その結果、マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を添加されたTGBC14TKBは、コントロールに比べて蛍光強度が35%以上強かった。このことから、上記胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。
【0288】
[実施例11] ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体の作製
マウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの重鎖可変領域を含んだ遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、マウス抗体由来のリーダー配列と配列番号264のアミノ酸配列を含むヒトIgG1のH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、マウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの軽鎖可変領域を含んだ遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、マウス抗体由来のリーダー配列と配列番号265のアミノ酸配列を含むヒトIgG1のL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。
【0289】
次に、上記にあるマウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの重鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターと、軽鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターをCHO−K1細胞(理研セルバンクより入手)に導入した。具体的には、12穴培養プレートの1ウェル当たりに1mlの10%FBSを含むHam’s F12培地(life technologies社製)で培養された2×10個のCHO−K1細胞をPBS(−)で洗浄したのちに、1ウェル当たり1mlの10%FBSを含むHam’s F12培地を新たに加えたウェルに30μlのOptiMEM(life technologies社製)に溶解した上記各ベクター250ngとPolyfect transfection reagent(QIAGEN社製)30μlとを混合したものを添加した。上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を、200μg/mlゼオシン(life technologies社製)並びに200μg/mlジェネチシン(ロシュ社製)を添加した10%FBSを含むHam’sF12培地で培養したのち、96ウェルプレートの1ウェル当たりに0.5個となるように上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を播種して、マウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの可変領域を有するヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36をそれぞれ安定的に産生する細胞株を作製した。
【0290】
作製した細胞株を150cmフラスコを用いて5×10個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(life technologies社製)30mlを用いて5日間培養し、ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36をそれぞれ含む培養上清を得た。
【0291】
[実施例12] 抗CAPRIN−1抗体の胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍活性(ADCC活性)
配列番号429〜432に示すCAPRIN−1由来ペプチドに対する抗体におけるCAPRIN−1を発現する胆嚢癌細胞に対する細胞障害性の強さを評価するためにヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36を用いてADCC活性を測定した。胆嚢癌細胞株TGBC14TKBを10個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で3回洗浄した。96穴V底プレート各ウェルにヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36をそれぞれのウェルに添加して最終濃度が5μg/mlとなるように添加し、さらにエフェクター細胞にヒト末梢血リンパ球細胞から定法を用いて分離したヒトNK細胞を1ウェル当たり2×10個添加した。そこにクロミウム51を取り込ませた前記胆嚢癌細胞を1ウェルあたり2×10個となるように混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により胆嚢癌細胞株に対する細胞障害活性を算出した。
【0292】
式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及びリンパ球を加えた際の標的細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0293】
その結果、いずれのヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体も胆嚢癌細胞に対して20%以上の活性を示したのに対して、陰性コントロールとして用いたヒトIgG1抗体では胆嚢癌細胞に対しても7%未満の活性であった。
【0294】
[実施例13] ウサギを用いた抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の作製
(1)ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の作製
抗原タンパク質(ヒトCAPRIN−1)300μgを等量のフロイントの完全アジュバントと混合し、これをウサギ1羽当たりの抗原溶液とした。2回目以降の免疫にはフロインとの不完全アジュバントと混合したものを使用した。抗原溶液を7週齢のウサギの腹腔内に投与後、4週間毎に7回投与を行って免疫を完了した。最後の免疫から4日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とウサギのミエローマ細胞とを5:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むIMDM培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて、5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた10% FBSを含むIMDM培地(HAT選択培地)300mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート30枚に播種した。7日間、37℃、5% COの条件で培養することで、脾臓細胞とウサギミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0295】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する反応性を指標にハイブリドーマを選抜した。CAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ウサギ抗体を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0296】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する反応性を指標にハイブリドーマを選抜した。CAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ウサギIgG抗体を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すウサギモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株を複数個得た。
【0297】
次にそれらCAPRIN−1タンパク質に反応性を示すウサギモノクローナル抗体からCAPRIN−1が発現する癌細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、2×10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231V並びにヒト肺癌細胞株QG56をそれぞれ1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.05% FBSを含むPBS(−)で100倍希釈したFITC標識抗ウサギIgG(H+L)抗体あるいはAlexa488標識抗ウサギIgG(H+L)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、ハイブリドーマ培養用培地を用いて行い、陰性コントロールのサンプルとした。その結果、陰性コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、CAPRIN−1が発現している癌細胞MDA−MB−231並びにQG56の細胞表面に反応するウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体1個(ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1)を選抜した。
【0298】
次に、選抜したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1が認識するCAPRIN−1エピトープを同定した。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μLずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。確認のため本プレートにCAPRIN−1タンパクを固相化したウェルも前記の方法に従って用意した。これに、定法で精製したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1を0.1ug/mLの濃度で1穴あたり50μL添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗ウサギIgG抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μLずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μL添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μL添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1は、CAPRIN−1の部分配列である合成した93個のペプチドのうち、配列番号430に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのみに反応性を示し、他のポリペプチドには反応性を示さなかった。また。ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1はCAPRIN−1タンパクに特異的に反応性を示した。この結果からウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1のエピトープは、配列番号430のポリペプチドに含まれていることが判った。
【0299】
次に、上記で得られたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子の増幅断片を取得し、遺伝子配列並びにそのアミノ酸配列を解析した。具体的にはウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1を産生するハイブリドーマからmRNAを抽出し、ウサギ可変領域配列に特異的なプライマーを使用したRT−PCR法により、本抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の遺伝子を取得した。配列決定のために、それら遺伝子をpCR2.1ベクター(life technologies社製)にクローニングした。クローニングして得られた各プラスミド中のVH領域及びVL領域の遺伝子配列は、M13フォワードプライマー及びM13リバースプライマーを用いて、蛍光シーケンサーによりそれぞれ決定した。
【0300】
その結果得られたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1は、配列番号359に示す重鎖可変領域及び重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号351、配列番号352、配列番号353のアミノ酸配列からなり、配列番号361に示す軽鎖可変領域及び軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号354、配列番号355、配列番号356のアミノ酸配列からなることが確認された。
【0301】
(2)ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の作製
上記で取得したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域を発現させるための配列番号358に示す遺伝子と、軽鎖可変領域を発現させるための配列番号360に示す遺伝子をそれぞれヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクター及びヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。作製した2つの組み換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入してヒト化されたヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1を含む培養上清を得た。
【0302】
(3)ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の抗原特異性、癌細胞への反応性及び抗腫瘍活性
(2)で得たヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の培養上清を定法に従ってHitrap ProteinA SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを用いて、抗原特異性と癌細胞への反応性及び抗腫瘍効果を調べた。
【0303】
まず、(1)と同様にして、CAPRIN−1タンパク質およびウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1のエピトープである配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対するヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の反応特異性を調べたところ、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1と同様にCAPRIN−1タンパク質および配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する反応特異性を有していることを確認した。
【0304】
次に胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の各細胞の細胞表面上でのCAPRIN−1タンパク質の反応性を調べた。各細胞株それぞれ10細胞を1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離した。上記抗体を含む各細胞培養上清(100μl)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで100倍に希釈したAlexa488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を添加し、4℃で60分間静置した。PBS(−)で洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールには二次抗体のみを反応したものを用いた。その結果、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、陰性コントロールに比べて、蛍光強度が30%以上強い反応性を示した。このことから、上記ヒト癌細胞株の細胞膜表面上に配列番号430で示されるCAPRIN−1タンパク質の一部が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗CAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
【0305】
さらに次に、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の胆嚢癌細胞株TGBC14TKBに対する抗腫瘍活性を評価した。10個の胆嚢癌細胞株を50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄しターゲット細胞を準備した。精製されたヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1が最終濃度が5μg/mlとなるように96穴V底プレートにそれぞれ添加した。次に、定法に従って調製したヒト末梢血リンパ球細胞からヒトNK細胞を分離し、1ウェル当たり2×10個を添加した。ターゲットと抗体を添加した96ウェルV底プレートに1ウェル当たり2×10個を混合し、37℃、5%、COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による胆嚢癌細胞に対する細胞障害活性を算出した。陰性コントロールにはアイソタイプコントロール抗体を添加したものを用いた。その結果、アイソタイプコントロール抗体を用いた場合の細胞障害活性は胆嚢癌細胞に対しても5%未満であったのに対して、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、胆嚢癌細胞に対しても25%以上の抗腫瘍活性を示した。以上の結果より、配列番号430に示すCAPRIN−1由来ペプチドに対する抗体ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1はADCC活性によってCAPRIN−1を発現する胆嚢癌細胞に対して抗腫瘍活性を発揮することが明らかとなった。
【0306】
[実施例14] ヒト化抗CAPRIN−1抗体#1〜3の作製
次に、ウサギ抗CAPRIN−1抗体#1のヒト化抗体を作製した。ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域のアミノ配列情報を基に、重鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号351、配列番号352及び配列番号357のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む重鎖可変領域(配列番号363)を発現できるように、配列番号362の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号354、配列番号355及び配列番号356のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む軽鎖可変領域(配列番号365)を発現できるように、配列番号364の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入して、ヒト化抗CAPRIN−1抗体#1を含む培養上清を得た。
【0307】
また、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域中のアミノ配列情報を基に、CDR1〜3が配列番号351、配列番号352及び配列番号353のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む重鎖可変領域(配列番号368)を発現できるように、配列番号367の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号354、配列番号355及び配列番号356のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む軽鎖可変領域(配列番号370)を発現できるように、配列番号369の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入して、ヒト化抗CAPRIN−1抗体#2を含む培養上清を得た。
【0308】
さらに、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域中のアミノ配列情報を基に、CDR1〜3が配列番号351、配列番号352及び配列番号353のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む重鎖可変領域(配列番号372)を発現できるように、配列番号371の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号354、配列番号355及び配列番号356のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む軽鎖可変領域(配列番号370)を発現できるように、配列番号369の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入して、ヒト化抗CAPRIN−1抗体#3を含む培養上清を得た。
【0309】
ヒト化抗CAPRIN−1抗体の抗原特異性、癌細胞への反応性及び抗腫瘍活性
上記で得た3種のヒト化抗CAPRIN−1抗体#1〜#3のCAPRIN−1に対する反応性を評価した結果、CAPRIN−1タンパク質、配列番号430に示すエピトープペプチド及び胆嚢癌細胞株に対する反応性はヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1と同レベルであった。さらに、これら3種のヒト化抗CAPRIN−1抗体の胆嚢癌細胞株に対する抗腫瘍活性を評価したところ、いずれの抗体もヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1と同レベルの抗腫瘍活性を示した。
【0310】
[実施例15] マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#23〜29を用いた胆嚢癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
次に、WO/2013/018894で得られた配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号279で表される重鎖可変領域と配列番号280、281及び282で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号283で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#23、配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号279で表される重鎖可変領域と配列番号286、287及び288で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号289で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#24、配列番号291、292及び293で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号294で表される重鎖可変領域と配列番号295、296及び297で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号298で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#25、WO/2013/018894で得られた配列番号301、302及び303で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号304で表される重鎖可変領域と配列番号305、306及び307で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号308で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#26、WO/2013/018891で得られた配列番号311、312及び313で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号314で表される重鎖可変領域と配列番号315、316及び317で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号318で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#27、WO/2013/018889で得られた配列番号321、322及び323で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号324で表される重鎖可変領域と配列番号325、326及び327で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号328で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#28及びWO/2013/018883で得られた配列番号331、332及び333で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号334で表される重鎖可変領域と配列番号335、336及び337で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号338で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#29を用いて、実施例10と同様に胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べたところ、実施例10のマウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36と同等の胆嚢癌細胞株への反応性が得られた。
【0311】
[実施例16] ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29の胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍活性
実施例11と同様の方法にて実施例15に記載のマウス抗CAPRIN−1抗体#23〜29のそれぞれの可変領域を有するヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29をそれぞれ安定的に産生する細胞株を作製して、ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29をそれぞれ含む培養上清を得た。この上清を定法で精製したものを用いて、胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍活性を調べた。CAPRIN−1を発現する胆嚢癌細胞に対する細胞障害性の強さを評価するためにヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29を用いてADCC活性を測定した。実施例12と同様の方法で、胆嚢癌細胞株TGBC14TKBに対するADCC活性を評価した結果、いずれのヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体も胆嚢癌細胞株TGBC14TKBに20%以上の活性を示したのに対して、陰性コントロールとして用いたヒトIgG1抗体では胆嚢癌細胞に対して5%未満の活性であった。
【産業上の利用可能性】
【0312】
本発明の抗体は、胆嚢癌の治療及び/又は予防に有用である。
【0313】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]