【実施例】
【0207】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例によって制限されないものとする。
【0208】
[実施例1] SEREX法による癌抗原タンパク質の同定
(1)cDNAライブラリーの作製
健常な犬の精巣組織から酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム法(Acid guanidium−Phenol−Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex−dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0209】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリーを合成した。cDNAファージライブラリーの作製にはcDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA GigapackIII Gold Clonig Kit (STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリーを作製した。作製したcDNAファージライブラリーのサイズは7.73×10
5pfu/mlであった。
【0210】
(2)血清によるcDNAライブラリーのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣cDNAファージライブラリーを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2210クローンとなるように宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthcare Bio−Scinece社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris−HCl, 150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0211】
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Expressファージを宿主大腸菌(XL1−Blure MRF’)に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO
3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS−カラム(GE Healthcare Bio−Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク質固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌及びファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
【0212】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS−T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG−h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO
4、50mM Tris−HCl、0.01%ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、5個の陽性クローンを単離した。
【0213】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した5個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液250μlさらにExAssist helper phage(STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心分離を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0214】
精製したプラスミドは、配列番号31に記載のT3プライマーと配列番号32に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号5,7,9,11,13に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列(配列番号6,8,10,12,14)を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた5個の遺伝子全てがCAPRIN−1タンパク質をコードする遺伝子であることが判明した。5個の遺伝子間の配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において塩基配列100%、アミノ酸配列99%であった。この遺伝子のヒト相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列98%であった。ヒト相同因子の塩基配列を配列番号1,3に、アミノ酸配列を配列番号2,4に示す。また、取得したイヌ遺伝子のウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列97%であった。ウシ相同因子の塩基配列を配列番号15に、アミノ酸配列を配列番号16に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列93〜97%であった。また、取得したイヌ遺伝子のウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列97%であった。ウマ相同因子の塩基配列を配列番号17に、アミノ酸配列を配列番号18に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列87〜89%、アミノ酸配列95〜97%であった。マウス相同因子の塩基配列を配列番号19,21,23,25,27に、アミノ酸配列を配列番号20,22,24,26,28に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列89〜91%、アミノ酸配列95〜96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列82%、アミノ酸配列87%であった。ニワトリ相同因子の塩基配列を配列番号29に、アミノ酸配列を配列番号30に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列81〜82%、アミノ酸配列86%であった。
【0215】
(4)ヒト胆嚢癌細胞でのCAPRIN−1遺伝子発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しヒトの胆嚢癌細胞株TGBC14TKB(独立行政法人理化学研究所より入手)における発現をRT−PCR法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50〜100mg及び各細胞株5〜10×10
6個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号33及び34に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、94℃−30秒、60℃−30秒、72℃−30秒のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号1の塩基配列(ヒトCAPRIN−1遺伝子)中の698番〜1124番塩基の領域を増幅するものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号35及び36に記載)も同時に用いた。その結果、本細胞株TGBC14TKBで発現が確認された。
【0216】
[実施例2] 抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体の作製
WO2010/016526の実施例3に従って作製したヒトCAPRIN−1組換えタンパク質1mgを等容量の不完全フロイントアジュバント(IFA)溶液と混合し、これを2週間毎に4回、ウサギの皮下に投与を行った。その後血液を採取し、ポリクローナル抗体を含む抗血清を得た。さらにこの抗血清をプロテインG担体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて精製し、抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体を得た。また、抗原を投与していないウサギの血清を上記と同様にしてプロテインG担体を用いて精製したものをコントロール抗体とした。
【0217】
[実施例3] ヒト胆嚢癌でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
(1)ヒト胆嚢癌細胞上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
CAPRIN−1遺伝子の発現が確認されたヒト胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。上記で遺伝子発現が認められたTGBC14TKB10
6細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに実施例2で調製した抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体2μg(5μl)を添加し、さらに95μlの0.1%牛胎児血清を含むPBSで懸濁後、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、5μlのFITC標識ヤギ抗ラビットIgG抗体(サンタクルズ社製)及び95μlの0.1%牛胎児血清(FBS)を含むPBSで懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体の代わりに実施例2で調製したコントロール抗体を用いて行い、コントロールとした。その結果、抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を添加されたTGBC14TKBは、コントロールに比べて、いずれも蛍光強度が20%以上強かった。このことから、上記ヒト胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
【0218】
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗ヒトCAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
【0219】
(2)ヒト胆嚢癌組織におけるCAPRIN−1タンパク質の発現解析
パラフィン包埋されたヒト胆嚢癌組織アレイ(BIOMAX社製)の胆嚢癌組織26検体を用いて、免疫組織化学染色を行った。ヒト胆嚢癌組織アレイを60℃で3時間処理後、キシレンを満たした染色瓶に入れて5分ごとにキシレンを入れ替える操作を3回行った。次にキシレンの代わりにエタノール及びPBS−Tで同様の操作を行った。0.05%Tween20を含む10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)を満たした染色瓶にヒト胆嚢癌組織アレイを入れ、125℃で5分間処理後、室温で40分以上静置した。切片周囲の余分な水分をキムワイプでふき取り、DAKOPENで囲み、Peroxidase Block(DAKO社製)を適量滴下した。室温で5分間静置後、PBS−Tを満たした染色瓶に入れて5分ごとにPBS−Tを入れ替える操作を3回行った。ブロッキング液として、10%FBSを含むPBS−T溶液をのせ、モイストチャンバー内で室温で1時間静置した。実施例2で調製した抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体を5%FBSを含むPBS−T溶液で10μg/mlに調製した溶液をのせ、モイストチャンバー内で4℃で一晩静置し、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、Peroxidase Labelled Polymer Conjugated(DAKO社製)適量滴下し、モイストチャンバー内で室温で30分間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、DAB発色液(DAKO社製)をのせ、室温で10分程度静置した後、発色液を捨て、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、蒸留水でリンスし、70%、80%、90%、95%、100%の各エタノール溶液に順番に1分間ずつ入れた後、キシレン中で一晩静置した。スライドガラスを取り出し、Glycergel Mounting Medium(DAKO社製)で封入後、観察を行った。その結果、CAPRIN−1タンパク質は全胆嚢癌組織26検体の内、19検体(73%)で強い発現が認められた。
【0220】
[実施例4] 抗CAPRIN−1ポリクローナル抗体の胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍効果(ADCC活性)
抗CAPRIN−1抗体が、CAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞を障害することができるかどうかを検討した。実施例2で得た抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を用いて評価を行った。CAPRIN−1タンパク質の発現が確認されているヒト胆嚢癌細胞TGBC14TKBを10
6個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり10
3個ずつ添加した。これに、上記抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を1μg添加し、さらにヒト末梢血から分離したリンパ球をそれぞれ2×10
5個ずつ添加して、37℃、5%CO
2の条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム(Cr)51の量を測定し、抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体による胆嚢癌細胞に対するADCC活性を算出した。その結果、抗原が免疫されていないウサギの末梢血から調製したコントロール抗体を用いて同様の操作を行った場合、TGBC14TKBに対して5%未満であり、抗体を添加しなかった場合においても5%未満であったのに対して、抗ヒトCAPRIN−1ポリクローナル抗体を加えた場合には、14%以上のADCC活性が確認された。したがって、抗CAPRIN−1抗体を用いたADCC活性により、CAPRIN−1タンパク質を発現する胆嚢癌細胞を障害することができることが明らかになった。なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体、リンパ球及びクロミウム51を取り込ませた10
3個の腫瘍細胞を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式
*により算出した腫瘍細胞に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0221】
*式:細胞障害活性(%)=抗CAPRIN−1抗体及びリンパ球を加えた際の腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0222】
[実施例5] 抗CAPRIN−1マウス及びニワトリモノクローナル抗体の作製
実施例2で作製したヒトCAPRIN−1組換えタンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎にさらに3回及び24回投与を行い免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15%FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0223】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0224】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すマウスモノクローナル抗体を産生する150個のハイブリドーマ株を得た。
【0225】
次にそれらマウスモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1タンパク質が発現する癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10
6個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するマウスモノクローナル抗体22個(マウスモノクローナル抗体#1〜#22)を選抜した。
【0226】
また、ニワトリモノクローナル抗体を作製するために、実施例2で調製した配列番号2に示される、抗原タンパク質(ヒトCAPRIN−1タンパク質)300μgを等量のフロイントの完全アジュバントと混合し、これをニワトリ1羽当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を7週齢のニワトリの腹腔内に投与後、4週間毎に7回投与を行い免疫を完了した。最後の免疫から4日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞と、鳥類細網内皮症ウイルスを用いてニワトリから形質転換法により樹立した、軽鎖が欠損しているニワトリミエローマ細胞とを5:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むIMDM培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて、5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた10%FBSを含むIMDM培地(HAT選択培地)300mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート30枚に播種した。7日間、37℃、5%CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とニワトリミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0227】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ニワトリIgY抗体(SIGMA社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0228】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。ヒトCAPRIN−1タンパク質溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ニワトリIgY抗体(SIGMA社製))を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株を複数個得た。
【0229】
次にそれらモノクローナル抗体のうち、CAPRIN−1タンパク質が発現する癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、5×10
5個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで30倍希釈したFITC標識ヤギ抗ニワトリIgG(H+L)抗体(SouthernBiotech社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、ハイブリドーマ培養用培地を用いて行い、コントロールのサンプルとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、CAPRIN−1タンパク質を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体3個(ニワトリモノクローナル抗体#1、#2、#3)を選抜した。
【0230】
[実施例6] 選抜した抗体の特徴付け
(1)抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の可変領域遺伝子のクローニング
実施例5で選抜した22個のマウスモノクローナル抗体ならびに3個のニワトリモノクローナル抗体をそれぞれ産生する各ハイブリドーマ株から、mRNAを抽出し、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマにはマウスFR1由来配列及びマウスFR4由来の配列に特異的なプライマーを使用し、ニワトリモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマにはニワトリFR1由来配列及びニワトリFR4由来の配列に特異的なプライマーを使用したRT−PCR法により、全ての抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の遺伝子を取得した。配列決定のために、それら遺伝子をpCR2.1ベクター(life technologies社製)にクローニングした。
【0231】
(1)−1 RT−PCR
10
6個のマウスモノクローナル抗体を産生する各ハイブリドーマ株から、mRNA micro purification kit(GEヘルスケア社製)を用いてmRNAを調製し、SuperScriptII 1st strand synthesis kit(life technologies社製)を用いて、得られたmRNAを逆転写してcDNAを合成した。これら操作は各キットの添付プロトコールに従って行った。得られたcDNAを用いて、PCR法により抗体遺伝子の増幅を行った。VH領域の遺伝子取得のために、マウス重鎖FR1配列に特異的なプライマー(配列番号257)及びマウス重鎖FR4配列に特異的なプライマー(配列番号258)を使用した。またVL領域の遺伝子取得のために、マウス軽鎖FR1配列に特異的なプライマー(配列番号259)及びマウス軽鎖FR4に特異的なプライマー(配列番号260)を使用した。これらプライマーはJones, S.T. and Bending, M.M. Bio/Technology 9, 88−89 (1991)を参考に設計した。PCRは、Ex−taq(タカラバイオ社製)を用いた。10×EX Taq Buffer 5μl、dNTP Mixture(2.5mM)4μl、プライマー(1.0μM)各2μl、Ex Taq(5U/μl)0.25μlにcDNAサンプルを加え、滅菌水により総量50μlとした。94℃で2分処理後、変性94℃1分、アニーリング58℃30秒、伸長反応72℃1分の組み合わせで30サイクルの条件で行った。
【0232】
また、10
6個のニワトリモノクローナル抗体を産生する各ハイブリドーマ株から、High Pure RNA Isolation Kit(Roche社製)を用いて全RNAを抽出した後、PrimeScriptII 1st strand cDNA Synthesis Kit(Takara社製)を用いてcDNAを合成した。これら操作は各キットの添付プロトコールに従って行った。 合成したcDNAを鋳型としKOD−Plus−DNA Polymerase(TOYOBO社製)を用いて、常法に従い、PCR法にて、ニワトリ抗体重鎖遺伝子可変領域及びニワトリ抗体軽鎖遺伝子可変領域をそれぞれ増幅した。ニワトリ抗体のVH領域の遺伝子取得のために、ニワトリ重鎖FR1配列に特異的なプライマー及びニワトリ重鎖FR4配列に特異的なプライマーを使用した。またVL領域の遺伝子取得のために、ニワトリ軽鎖FR1配列に特異的なプライマー及びニワトリ軽鎖FR4に特異的なプライマーを使用した。
【0233】
(1)−2 クローニング
上記で得られた各PCR産物を用いてアガロースゲルにて電気泳動を行い、VH領域及びVL領域それぞれのDNAバンドを切り出した。DNA断片はQIAquick Gel purification kit(キアゲン社製)を用いてその添付プロトコールに従って行った。精製した各DNAはTAクローニングキット(life technologies社製)を用いてpCR2.1ベクターにクローニングした。連結したベクターをDH5aコンピテントセル(TOYOBO社製)に定法に従い形質転換を行った。各形質転換体それぞれ10クローンを培地(100μg/mlアンピシリン)で37℃一晩培養後、各プラスミドDNAをQiaspin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて精製した。
【0234】
(1)−3 配列決定
上記で得られた各プラスミド中のVH領域及びVL領域の遺伝子配列解析は、M13フォワードプライマー(配列番号261)及びM13リバースプライマー(配列番号262)を用いて、蛍光シーケンサー(ABI社製DNAシーケンサー3130XL)により、ABI社製のビッグダイターミネーターVer3.1サイクルシーケンシングキットを用いて、その添付プロトコールに従い行った。その結果、各々の遺伝子配列及びアミノ酸配列が決定された。
【0235】
すなわち、これらのモノクローナル抗体は、配列番号40(配列番号45)、配列番号50(配列番号55)、配列番号60(配列番号65)、配列番号70(配列番号75)、配列番号80(配列番号85)、配列番号90(配列番号95)、配列番号100(配列番号105)、配列番号110(配列番号115)、配列番号120(配列番号125)、配列番号130(配列番号131)、配列番号135(配列番号140)、配列番号145(配列番号150)、配列番号160(配列番号165)、配列番号170(配列番号175)、配列番号200(配列番号205)、配列番号210(配列番号215)、配列番号220(配列番号225)、配列番号230(配列番号235)、配列番号240(配列番号245)又は配列番号250(配列番号255)のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域(括弧内は遺伝子配列の配列番号)と、配列番号44(配列番号46)、配列番号54(配列番号56)、配列番号64(配列番号66)、配列番号74(配列番号76)、配列番号84(配列番号86)、配列番号94(配列番号96)、配列番号104(配列番号106)、配列番号114(配列番号116)、配列番号124(配列番号126)、配列番号139(配列番号141)、配列番号149(配列番号151)、配列番号155(配列番号156)、配列番号164(配列番号166)、配列番号174(配列番号176)、配列番号180(配列番号181)、配列番号185(配列番号186)、配列番号190(配列番号191)、配列番号195(配列番号196)、配列番号204(配列番号206)、配列番号214(配列番号216)、配列番号224(配列番号226)、配列番号234(配列番号236)、配列番号244(配列番号246)又は配列番号254(配列番号256)のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域(括弧内は遺伝子配列の配列番号)を含み、ここで、該VH領域に配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67、配列番号77、配列番号87、配列番号97、配列番号107、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号142、配列番号157、配列番号167、配列番号197、配列番号207、配列番号217、配列番号227、配列番号237又は配列番号247のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号38、配列番号48、配列番号58、配列番号68、配列番号78、配列番号88、配列番号98、配列番号108、配列番号118、配列番号128、配列番号133、配列番号143、配列番号158、配列番号168、配列番号198、配列番号208、配列番号218、配列番号228、配列番号238又は配列番号248のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号39、配列番号49、配列番号59、配列番号69、配列番号79、配列番号89、配列番号99、配列番号109、配列番号119、配列番号129、配列番号134、配列番号144、配列番号159、配列番号169、配列番号199、配列番号209、配列番号219、配列番号229、配列番号239又は配列番号249のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれ、該VL領域に配列番号41、配列番号51、配列番号61、配列番号71、配列番号81、配列番号91、配列番号101、配列番号111、配列番号121,配列番号136、配列番号146、配列番号152、配列番号161、配列番号171、配列番号177、配列番号182、配列番号187、配列番号192、配列番号201、配列番号211、配列番号221、配列番号231、配列番号241又は配列番号251のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号42、配列番号52、配列番号62、配列番号72、配列番号82、配列番号92、配列番号102、配列番号112、配列番号122,配列番号137、配列番号147、配列番号153、配列番号162、配列番号172、配列番号178、配列番号183、配列番号188、配列番号193、配列番号202、配列番号212、配列番号222、配列番号232、配列番号242又は配列番号252のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号43、配列番号53、配列番号63、配列番号73、配列番号83、配列番号93、配列番号103、配列番号113、配列番号123、配列番号138、配列番号148、配列番号154、配列番号163、配列番号173、配列番号179、配列番号184、配列番号189、配列番号194、配列番号203、配列番号213、配列番号223、配列番号233、配列番号243又は配列番号253のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれる。
【0236】
得られたモノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号40、配列番号50、配列番号60、配列番号70、配列番号80、配列番号90、配列番号100、配列番号110、配列番号120、配列番号130、配列番号135、配列番号145、配列番号160、配列番号170、配列番号200、配列番号210、配列番号220、配列番号230、配列番号240及び配列番号250に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号44、配列番号54、配列番号64、配列番号74、配列番号84、配列番号94、配列番号104、配列番号114、配列番号124,配列番号139、配列番号149、配列番号155、配列番号164、配列番号174、配列番号180、配列番号185、配列番号190、配列番号195、配列番号204、配列番号214、配列番号224、配列番号234、配列番号244及び配列番号254に示す。
【0237】
すなわちマウスモノクローナル抗体#1は配列番号70の重鎖可変領域と配列番号74の軽鎖可変領域から成り、#2は配列番号80の重鎖可変領域と配列番号84の軽鎖可変領域から成り、#3は配列番号90の重鎖可変領域と配列番号94の軽鎖可変領域から成り、#4は配列番号100の重鎖可変領域と配列番号104の軽鎖可変領域から成り、#5は配列番号110の重鎖可変領域と配列番号114の軽鎖可変領域から成り、#6は配列番号120の重鎖可変領域と配列番号124の軽鎖可変領域から成り、#7は配列番号130の重鎖可変領域と配列番号124の軽鎖可変領域から成り、#8は配列番号135の重鎖可変領域と配列番号139の軽鎖可変領域から成り、#9は配列番号145の重鎖可変領域と配列番号149の軽鎖可変領域から成り、#10は配列番号145の重鎖可変領域と配列番号155の軽鎖可変領域から成り、#11は配列番号160の重鎖可変領域と配列番号164の軽鎖可変領域から成り、#12は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号174の軽鎖可変領域から成り、#13は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号180の軽鎖可変領域から成り、#14は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号185の軽鎖可変領域から成り、#15は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号190の軽鎖可変領域から成り、#16は配列番号170の重鎖可変領域と配列番号195の軽鎖可変領域から成り、#17は配列番号200の重鎖可変領域と配列番号204の軽鎖可変領域から成り、#18は配列番号210の重鎖可変領域と配列番号214の軽鎖可変領域から成り、#19は配列番号220の重鎖可変領域と配列番号224の軽鎖可変領域から成り、#20は配列番号230の重鎖可変領域と配列番号234の軽鎖可変領域から成り、#21は配列番号240の重鎖可変領域と配列番号244の軽鎖可変領域から成り、#22は配列番号250の重鎖可変領域と配列番号254の軽鎖可変領域から成る。
【0238】
得られたニワトリモノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号40、配列番号50、配列番号60に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号44、配列番号54、配列番号64に示す。
【0239】
すなわち、ニワトリモノクローナル抗体#1は配列番号40の重鎖可変領域と配列番号44の軽鎖可変領域から成り、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号37、配列番号38、配列番号39のアミノ酸配列から成り、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号41、配列番号42、配列番号43のアミノ酸配列から成り、ニワトリモノクローナル抗体#2は配列番号50の重鎖可変領域と配列番号54の軽鎖可変領域から成り、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号47、配列番号48、配列番号49のアミノ酸配列から成り、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号51、配列番号52、配列番号53のアミノ酸配列から成り、ニワトリモノクローナル抗体#3は配列番号60の重鎖可変領域と配列番号64の軽鎖可変領域から成り、そのうち、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号57、配列番号58、配列番号59のアミノ酸配列から成り、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号61、配列番号62、配列番号63のアミノ酸配列から成る。
【0240】
(2)ヒト−ニワトリキメラ組換え抗体及びマウス−ニワトリキメラ抗体の作製
上記(1)で得られた、配列番号40で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、配列番号263を含むニワトリ抗体由来のリーダー配列と配列番号264を含むヒトIgG
1のH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、配列番号44で示されるにニワトリモノクローナル抗体#1の軽鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、配列番号263を含むニワトリ抗体由来のリーダー配列と配列番号265を含むヒトIgG
1のL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。
【0241】
次に、配列番号40で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターと、配列番号44で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の軽鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターをCHO−K1細胞(理研セルバンクより入手)に導入した。具体的には、12穴培養プレートの1ウェル当たりに1mlの10%FBSを含むHam’sF12培地(life technologies社製)で培養された2×10
5個のCHO−K1細胞をPBS(−)で洗浄したのちに、1ウェル当たり1mlの10% FBSを含むHam’sF12培地を新たに加えたウェルに30μlのOptiMEM(life technologies社製)に溶解した上記各ベクター250ngとPolyfect transfection reagent(QIAGEN社製)30μlとを混合したものを添加した。上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を、200μg/mlゼオシン(life technologies社製)ならびに200μg/mlジェネチシン(ロシュ社製)を添加した10%FBSを含むHam’sF12培地で培養したのち、96ウェルプレートの1ウェル当たりに0.5個となるように上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を播種して、ニワトリモノクローナル抗体#1の可変領域を有するヒト−ニワトリキメラ抗体#1(#1)を安定的に産生する細胞株を作製した。上記方法と同様にして、ニワトリモノクローナル抗体#2ならびに#3についてもヒト−ニワトリキメラ抗体#2(#2)ならびにヒト−ニワトリキメラ抗体#3(#3)を安定的に産生する細胞株を作製した。
【0242】
作製した細胞株を150cm
2フラスコを用いて5×10
5個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(life technologies社製)30mlを用いて5日間培養し、#1、#2又は#3を含む培養上清を得た。
【0243】
同様にして、配列番号40で示されるニワトリモノクローナル抗体#1の重鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、ニワトリ抗体由来のリーダー配列とマウスIgG
1のH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、配列番号44で示されるにニワトリモノクローナル抗体#1の軽鎖可変領域の遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、ニワトリ抗体由来のリーダー配列とマウスIgG
1のL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。これらを上記と同様にCHO−K1細胞に導入してニワトリモノクローナル抗体#1の可変領域を有するマウス−ニワトリキメラ抗体#1を安定的に産生する細胞株を作製した。上記方法と同様にして、ニワトリモノクローナル抗体#2ならびに#3についてもマウス−ニワトリキメラ抗体#2(#2)ならびにマウス−ニワトリキメラ抗体#3(#3)を安定的に産生する細胞株を作製した。
【0244】
作製した細胞株を150cm
2フラスコを用いて5×10
5個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(life technologies社製)30mlを用いて5日間培養し、マウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2ならびにマウス−ニワトリキメラ抗体#3を含む培養上清を得た。
【0245】
(3)取得したモノクローナル抗体を用いた胆嚢癌細胞表面でのCAPRIN−1タンパク質の発現
次にCAPRIN−1遺伝子の発現が確認された胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。TGBC14TKB10
6細胞を1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに実施例4で作製した癌細胞表面に反応する、#1から#22の抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体ならびに上記(2)で作製した抗CAPRIN−1マウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2、マウス−ニワトリキメラ抗体#3を含む培養上清(100μl)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1% FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)で懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、#1から#22の抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体ならびにマウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2、マウス−ニワトリキメラ抗体#3を含む培養上清の代わりにアイソタイプコントロール抗体を用いて行い、コントロールとした。その結果、#1〜#22のモノクローナル抗体、マウス−ニワトリキメラ抗体#1、マウス−ニワトリキメラ抗体#2、マウス−ニワトリキメラ抗体#3を添加された細胞は、コントロールに比べて、いずれも蛍光強度が20%以上強かった。具体的例を挙げると、マウス−ニワトリキメラ抗体#1を用いた場合は200%以上の蛍光強度の増強を示した。このことから、上記ヒト胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
【0246】
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗ヒトCAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100
(4)抗CAPRIN−1抗体のヒト胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍効果(ADCC活性)
上記で得た抗体のうち、ヒト−ニワトリキメラ抗体#1を用いてヒト胆嚢癌細胞に対する細胞障害活性(ADCC活性)を評価した。上記(2)で得たヒト−ニワトリキメラ抗体#1を含む培養上清をHitrap ProteinA SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを活性測定用の抗体として用いた。10
6個のヒト胆嚢癌細胞株TGBC14TKBを50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり2×10
3個ずつ添加して標的細胞とした。これに、上記精製抗体を1穴あたり1.2μg添加した。さらに、ヒト末梢血リンパ球細胞から以下の手法を用いてヒトNK細胞を含む細胞集団を分離した。すなわち、ヒト末梢血単核球細胞をFITC蛍光色素で標識された抗体(抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD20抗体、抗ヒトCD19抗体、抗ヒトCD11c抗体、抗HLA−DR抗体(ベクトンアンドディッキンソン社))で反応させ、セルソーター(FACS Vantage SE(ベクトンアンドディッキンソン社))を用いて、上記抗体で染まらないNK細胞を含んだ細胞集団を分離したもの、又はヒトNK細胞分離キット(NKセルアイソレーションキット(ミルテニー社製))を用いて分離したものを得た。得られたNK細胞を含む細胞を1ウェル当たり2×10
5個添加して、37℃、5%、CO
2の条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による胆嚢癌細胞に対するADCC活性を算出した。その結果、TGBC14TKBに対して、CAPRIN−1タンパク質自体には反応するが、癌細胞の細胞表面に反応しないモノクローナル抗体ならびに抗体を添加しなかった場合の細胞障害活性はいずれも5%未満であったのに対して、ヒト−ニワトリキメラ抗体#1は20%の細胞障害活性が得られた。なお、#1〜#22の抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体、ヒト−ニワトリキメラ抗体#2ならびにヒト−ニワトリキメラ抗体#3についても上記と同様にしてTGBC14TKBに対する細胞障害活性を調べたところ、CAPRIN−1タンパク質自体には反応するが、癌細胞の細胞表面に反応しないモノクローナル抗体ならびに抗体を添加しなかった場合の細胞障害活性は5%未満であったのに対して、15%以上の細胞障害活性が見られた。以上の結果より、取得した抗CAPRIN−1モノクローナル抗体は、ADCC活性によってCAPRIN−1タンパク質を発現する癌細胞を障害することが示された。なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体、ヒトNK細胞を含む細胞集団及びクロミウム51を取り込ませた2×10
3個の腫瘍細胞を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式
*により算出した腫瘍細胞に対する細胞障害活性を示した結果である。
【0247】
*式:細胞障害活性(%)=抗CAPRIN−1抗体及びヒトNK細胞を含む細胞集団を加えた際の腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた腫瘍細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0248】
[実施例7] 癌細胞の細胞表面に反応する抗CAPRIN−1抗体が結合するCAPRIN−1タンパク質中のペプチドの同定
上記で取得した、癌細胞の細胞表面に反応する#12〜#22の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を用いて、それらが認識するCAPRIN−1タンパク質中の部分配列の同定を行った。
【0249】
まず、PBSで1μg/μlの濃度に溶解した組換えCAPRIN−1タンパク質溶液100μlに、終濃度が10mMになるようにDTT(Fluka社製)を添加し、95℃、5分間反応させてCAPRIN−1タンパク質内のジスルフィド結合の還元を行い、次に終濃度20mMのヨードアセトアミド(和光純薬社製)を添加し、37℃、遮光条件下にて30分間チオール基のアルキル化反応を行った。得られた還元アルキル化CAPRIN−1タンパク質40μgに、#12〜#22の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体をそれぞれ50μg添加し、20mM リン酸緩衝液(pH7.0)1mlにメスアップして撹拌混合しながら4℃で一晩反応させた。
【0250】
次に、トリプシン(プロメガ社製)を終濃度0.2μgとなるように添加し、37℃1時間、2時間、4時間、12時間反応させた後、予め1%BSA(シグマ社製)を含むPBSでブロッキングし、PBSで洗浄したプロテインA−ガラスビーズ(GE社製)と1mM 炭酸カルシウム、NP−40緩衝液(20mM リン酸緩衝液(pH7.4)、5mM EDTA、150mM NaCl、1%NP−40)中で混合し、それぞれ30分間反応させた。
【0251】
反応液を25mM炭酸アンモニウム緩衝液(pH8.0)で洗浄した後、0.1% ギ酸100μlを用いて抗原抗体複合体を溶出し、溶出液についてQ−TOF Premier(Waters−MicroMass社製)を用いてLC−MS解析を行った。解析は機器に付属のプロトコールに従った。
【0252】
その結果、#12〜#22の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体がいずれも認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号273のポリペプチドが同定された。さらに、モノクローナル抗体#13〜#16、#17〜#19及び#21が認識する、上記配列番号273のポリペプチド中の部分配列として配列番号274のペプチドが同定され、さらにその部分配列ペプチドである配列番号275のペプチドをモノクローナル抗体#13〜#16が認識することが判った。
【0253】
また、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3、マウスモノクローナル抗体#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11を用いて、それらが認識するCAPRIN−1タンパク質中のエピトープペプチドの同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0254】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0255】
これに、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1(#1)、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3(#3)及びマウスモノクローナル抗体(#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11)を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体ウェルにはHRPが標識された抗ヒトIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液を、マウスモノクローナル抗体にはHRPが標識された抗マウスIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液を、それぞれ50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0256】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、抗CAPRIN−1抗体のヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、抗体#1〜#5の抗CAPRIN−1モノクローナル抗体がいずれも認識するCAPRIN−1の部分配列として、配列番号266のポリペプチドが同定された。さらに、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、マウスモノクローナル抗体#3及び#4が認識する、上記配列番号266のポリペプチド中の部分配列として配列番号267のペプチドが同定され、マウスモノクローナル抗体#1、#2及び#5が認識する、上記配列番号266のポリペプチド中の部分配列として配列番号268のペプチドが同定された。したがって、配列番号266のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体のヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#1、マウスモノクローナル抗体#1、#2、#3、#4及び#5のエピトープ領域を含んでいることが判った。また、抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#6、#7及び#8がいずれも認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号270のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。したがって、配列番号270のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体#6、#7ならびに#8のエピトープ領域を含んでいることが判った。さらにまた、抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#9、#10及び#11がいずれも認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号272のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。したがって、配列番号272のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体#9、#10ならびに#11のエピトープ領域を含んでいることが判った。さらにまた、ヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3が認識するCAPRIN−1タンパク質の部分配列として、配列番号269のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。したがって、配列番号269のポリペプチドがヒト−ニワトリキメラモノクローナル抗体#3のエピトープ領域を含んでいることが判った。
【0257】
[実施例8] CAPRIN−1タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体#30、#34〜36の作製
(1)マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30、#34〜36の作製
WO2010/016526の実施例3で調製した配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1タンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎に7回投与を行い、免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15% FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0258】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0259】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する複数個のハイブリドーマ株を得た。
【0260】
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10
6個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体4個(マウス抗CAPRIN−1抗体#30、#34〜36)を選抜した。
【0261】
(2)各マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体が認識するCAPRIN−1エピトープの同定
取得したモノクローナル抗体4個それぞれが認識するCAPRIN−1エピトープ領域の同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0262】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0263】
これに、抗CAPRIN−1抗体#1を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗マウスIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0264】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。
【0265】
その結果、マウス抗CAPRIN−1抗体#30が認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号429のポリペプチド、マウス抗CAPRIN−1抗体#34が認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号431のポリペプチド、マウス抗CAPRIN−1抗体#35及び36が認識するCAPRIN−1の部分配列として配列番号432のポリペプチドが同定された。
【0266】
(3)各マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の可変領域遺伝子のクローニング
取得したモノクローナル抗体について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子配列及びそのアミノ酸配列を解析した。
【0267】
その結果、マウス抗CAPRN−1抗体#30は配列番号344に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号348に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号349に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号350に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号341、配列番号342、配列番号343に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号345、配列番号346、配列番号347に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0268】
また、マウス抗CAPRN−1抗体#34は配列番号401に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号405に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号406に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号407に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号398、配列番号399、配列番号400に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号402、配列番号403、配列番号404に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0269】
マウス抗CAPRN−1抗体#35は配列番号411に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号415に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号416に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号417に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号408、配列番号409、配列番号410に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号412、配列番号413、配列番号414に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0270】
マウス抗CAPRN−1モノクローナル抗体#36は配列番号421に示すアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号425に示すアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものであった。重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号426に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号427に示す。さらに、重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号418、配列番号419、配列番号420に示すアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号422、配列番号423、配列番号424に示すアミノ酸配列からなることが示された。
【0271】
(4)各マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体を用いた胆嚢癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
ヒトの胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。上記胆嚢癌細胞株5×10
5細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに各マウス抗CAPRIN−1抗体を最終濃度が20μg/mlとなるように反応させて、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、100倍希釈したAlexa488標識Goat anti−mouse IgG抗体(life technologies社製)を反応させ、氷上で30時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールとして、二次抗体のみを反応させたものを陰性コントロールとした。その結果、抗CAPRIN−1抗体を添加された細胞は、コントロールに比べて、胆嚢癌細胞も蛍光強度が35%以上強かった。このことから、胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパクが発現していることが確認された。
【0272】
[実施例9] CAPRIN−1タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体#31〜33の作製
(1)マウス抗CAPRIN−1抗体#31の作製
WO2010/016526の実施例3で調製した配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトCAPRIN−1タンパク質100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/cマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎に7回投与を行い、免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15%FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5%CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0273】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0274】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。WO2010/016526の実施例3に記載の手法で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5%BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する61個のハイブリドーマ株を得た。
【0275】
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10
6個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するマウスモノクローナル抗体1個(マウス抗CAPRIN−1抗体#31)を選抜した。
【0276】
(2)マウス抗CAPRIN−1抗体#31が認識するCAPRIN−1エピトープの同定
上記(1)で取得した癌細胞の細胞表面に反応するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(マウス抗CAPRIN−1抗体#31)を用いて、認識するCAPRIN−1エピトープ領域の同定を行った。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。
【0277】
各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
【0278】
これに、抗CAPRIN−1抗体#31を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗マウスIgG(life technologies社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
【0279】
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。
【0280】
その結果、(1)で得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#31が認識するCAPRIN−1の部分配列として、配列番号430のポリペプチドが同定された。
【0281】
(3)マウス抗CAPRIN−1抗体#32及び33の作製
上記(1)と同様の方法で、(2)で同定した配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドとキャリアタンパク質のKLH(Keyhole limpet haemocyanin)との融合タンパク質を免疫原として、等量のアジュバント剤TiterMax Gold(登録商標)(CytRx社)と混合して7日間隔でマウスの腹腔に1回あたり100μg投与した。合計4回の投与を行った後、最終免疫から3日後のマウスから脾臓細胞を得て、上記(1)と同様の方法にてマウスミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製した。その後、作製したハイブリドーマの培養上清中に含まれる各抗体とWO2010/016526の実施例3で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/ml並びに免疫原として用いた配列番号5のアミノ酸配列とキャリアタンパク質のBSAとの融合タンパク質との反応性を指標に抗体を選抜した。WO2010/016526の実施例3で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlと配列番号5のアミノ酸配列とキャリアタンパク質のBSAとの融合タンパク質30μg/mlをそれぞれ96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加して4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで洗浄後、ブロックエース(DSファーマバイオメディカル社)溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、PBS−Tでウェルを洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温で2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して5〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを選抜した。
【0282】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.3個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1の部分配列の配列番号430のアミノ酸配列に対する結合親和性を指標に上記と同様の方法を用いて、配列番号430のアミノ酸に対する抗体を産生するハイブリドーマを得た。
【0283】
得られたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10
6個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(life technologies社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いたサンプル、及び二次抗体のみを反応させたサンプルを陰性コントロールとして行った。その結果、陰性コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するマウスモノクローナル抗体2個(マウス抗CAPRIN−1抗体#32、マウス抗CAPRIN−1抗体#33)を得た。
【0284】
得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#32並びに#33が免疫原であるCAPRIN−1の部分配列である配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に反応することを調べた。0.1Mの炭酸ナトリウム水溶液で30μg/mlに調製した配列番号430のアミノ酸配列を含む溶液及び配列番号430のアミノ酸配列を含まないCAPRIN−1の部分配列をそれぞれELISA用96ウェルプレートイモビライザーアミノ(ヌンク社)に100μg/mlずつ添加して、4℃にて一昼夜反応させてペプチドをウェルに結合させた。ペプチドが結合したウェルに10mMエタノールアミンを含む0.1M炭酸ナトリウム水溶液を添加して室温で1時間静置した。ウェル内の溶液を除去後、PBS−Tで洗浄したのち、ブロックエース溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。ウェル内の溶液を除去し、PBS−Tで洗浄後、マウス抗CAPRIN−31#32並びに#33を含む培養上清をそれぞれ1ウェルあたりに50μL添加して、室温にて1時間反応させた。その後PBS−Tで洗浄して、ブロックエース溶液で5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を1ウェル当たり50μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを十分に洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して5〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定したところ、配列番号430のアミノ酸配列を含まないCAPRIN−1の部分配列には全く反応せず、配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドのみにマウス抗CAPRIN−1抗体#32並びに#33は特異的に反応した。したがって、配列番号430のポリペプチドがマウスモノクローナル抗体#32及び#33のエピトープ領域を含んでいることが確認された。
【0285】
(4)マウス抗CAPRIN−1抗体#31〜33の特徴付け
(1)と(3)で得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#31〜33について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子の増幅断片を取得し、遺伝子配列並びにそのアミノ酸配列を解析した。その結果得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#31の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号381に、及びアミノ酸配列を配列番号376に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号382、及びアミノ酸配列を配列番号380に示す。また、得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#32の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号391に、及びアミノ酸配列を配列番号386に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号392に及びアミノ酸配列を配列番号390に示す。さらにまた、得られたマウス抗CAPRIN−1抗体#33の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号397に、及びアミノ酸配列を配列番号396、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号392に、及びアミノ酸配列を配列番号390に示す。
【0286】
また、マウス抗CAPRIN−1抗体#31の重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号373、配列番号374、配列番号375のアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号377、配列番号378、配列番号379のアミノ酸配列からなることが確認された。また、マウス抗CAPRIN−1抗体#32の重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号383、配列番号384、配列番号385のアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号387、配列番号388、配列番号389のアミノ酸配列からなることが確認された。さらにまた、マウス抗CAPRIN−1抗体#33の重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号393、配列番号394、配列番号395のアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号387、配列番号388、配列番号389のアミノ酸配列からなることが確認された。
【0287】
[実施例10] マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を用いた胆嚢癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
ヒトの胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかをマウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を用いて調べた。TGBC14TKBを5×10
5細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これにマウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を最終濃度が20μg/mlとなるようにそれぞれ反応させて、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、100倍希釈したAlexa488標識Goat anti−mouse IgG抗体(life technologies社製)を反応させ、氷上で30時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールとして、二次抗体のみを反応させたものを陰性コントロールとした。その結果、マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36を添加されたTGBC14TKBは、コントロールに比べて蛍光強度が35%以上強かった。このことから、上記胆嚢癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。
【0288】
[実施例11] ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体の作製
マウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの重鎖可変領域を含んだ遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、マウス抗体由来のリーダー配列と配列番号264のアミノ酸配列を含むヒトIgG1のH鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA4/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。また、マウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの軽鎖可変領域を含んだ遺伝子増幅断片の両端を制限酵素処理した後精製し、マウス抗体由来のリーダー配列と配列番号265のアミノ酸配列を含むヒトIgG1のL鎖定常領域を既に挿入済みのpcDNA3.1/myc−His(life technologies社製)ベクターへ常法に従って挿入した。
【0289】
次に、上記にあるマウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの重鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターと、軽鎖可変領域が挿入された上記組換えベクターをCHO−K1細胞(理研セルバンクより入手)に導入した。具体的には、12穴培養プレートの1ウェル当たりに1mlの10%FBSを含むHam’s F12培地(life technologies社製)で培養された2×10
5個のCHO−K1細胞をPBS(−)で洗浄したのちに、1ウェル当たり1mlの10%FBSを含むHam’s F12培地を新たに加えたウェルに30μlのOptiMEM(life technologies社製)に溶解した上記各ベクター250ngとPolyfect transfection reagent(QIAGEN社製)30μlとを混合したものを添加した。上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を、200μg/mlゼオシン(life technologies社製)並びに200μg/mlジェネチシン(ロシュ社製)を添加した10%FBSを含むHam’sF12培地で培養したのち、96ウェルプレートの1ウェル当たりに0.5個となるように上記組換えベクターを導入したCHO−K1細胞を播種して、マウス抗CAPRIN−1抗体#30〜36のそれぞれの可変領域を有するヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36をそれぞれ安定的に産生する細胞株を作製した。
【0290】
作製した細胞株を150cm
2フラスコを用いて5×10
5個/mlで血清を含まないOptiCHO培地(life technologies社製)30mlを用いて5日間培養し、ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36をそれぞれ含む培養上清を得た。
【0291】
[実施例12] 抗CAPRIN−1抗体の胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍活性(ADCC活性)
配列番号429〜432に示すCAPRIN−1由来ペプチドに対する抗体におけるCAPRIN−1を発現する胆嚢癌細胞に対する細胞障害性の強さを評価するためにヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36を用いてADCC活性を測定した。胆嚢癌細胞株TGBC14TKBを10
6個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で3回洗浄した。96穴V底プレート各ウェルにヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#30〜36をそれぞれのウェルに添加して最終濃度が5μg/mlとなるように添加し、さらにエフェクター細胞にヒト末梢血リンパ球細胞から定法を用いて分離したヒトNK細胞を1ウェル当たり2×10
5個添加した。そこにクロミウム51を取り込ませた前記胆嚢癌細胞を1ウェルあたり2×10
3個となるように混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式
*により胆嚢癌細胞株に対する細胞障害活性を算出した。
【0292】
*式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及びリンパ球を加えた際の標的細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
【0293】
その結果、いずれのヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体も胆嚢癌細胞に対して20%以上の活性を示したのに対して、陰性コントロールとして用いたヒトIgG1抗体では胆嚢癌細胞に対しても7%未満の活性であった。
【0294】
[実施例13] ウサギを用いた抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の作製
(1)ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の作製
抗原タンパク質(ヒトCAPRIN−1)300μgを等量のフロイントの完全アジュバントと混合し、これをウサギ1羽当たりの抗原溶液とした。2回目以降の免疫にはフロインとの不完全アジュバントと混合したものを使用した。抗原溶液を7週齢のウサギの腹腔内に投与後、4週間毎に7回投与を行って免疫を完了した。最後の免疫から4日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とウサギのミエローマ細胞とを5:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10% FBSを含むIMDM培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて、5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた10% FBSを含むIMDM培地(HAT選択培地)300mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート30枚に播種した。7日間、37℃、5% CO
2の条件で培養することで、脾臓細胞とウサギミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
【0295】
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパク質に対する反応性を指標にハイブリドーマを選抜した。CAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ウサギ抗体を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ、吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
【0296】
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する反応性を指標にハイブリドーマを選抜した。CAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ウサギIgG抗体を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパク質に反応性を示すウサギモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株を複数個得た。
【0297】
次にそれらCAPRIN−1タンパク質に反応性を示すウサギモノクローナル抗体からCAPRIN−1が発現する癌細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、2×10
5個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231V並びにヒト肺癌細胞株QG56をそれぞれ1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.05% FBSを含むPBS(−)で100倍希釈したFITC標識抗ウサギIgG(H+L)抗体あるいはAlexa488標識抗ウサギIgG(H+L)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、ハイブリドーマ培養用培地を用いて行い、陰性コントロールのサンプルとした。その結果、陰性コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、CAPRIN−1が発現している癌細胞MDA−MB−231並びにQG56の細胞表面に反応するウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体1個(ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1)を選抜した。
【0298】
次に、選抜したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1が認識するCAPRIN−1エピトープを同定した。ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μLずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5%Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。確認のため本プレートにCAPRIN−1タンパクを固相化したウェルも前記の方法に従って用意した。これに、定法で精製したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1を0.1ug/mLの濃度で1穴あたり50μL添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、HRPが標識された抗ウサギIgG抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液をウェルに50μLずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μL添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μL添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1は、CAPRIN−1の部分配列である合成した93個のペプチドのうち、配列番号430に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのみに反応性を示し、他のポリペプチドには反応性を示さなかった。また。ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1はCAPRIN−1タンパクに特異的に反応性を示した。この結果からウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1のエピトープは、配列番号430のポリペプチドに含まれていることが判った。
【0299】
次に、上記で得られたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1について、WO2010/016526の実施例5に記載の方法に従って可変領域をコードする遺伝子の増幅断片を取得し、遺伝子配列並びにそのアミノ酸配列を解析した。具体的にはウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1を産生するハイブリドーマからmRNAを抽出し、ウサギ可変領域配列に特異的なプライマーを使用したRT−PCR法により、本抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の遺伝子を取得した。配列決定のために、それら遺伝子をpCR2.1ベクター(life technologies社製)にクローニングした。クローニングして得られた各プラスミド中のVH領域及びVL領域の遺伝子配列は、M13フォワードプライマー及びM13リバースプライマーを用いて、蛍光シーケンサーによりそれぞれ決定した。
【0300】
その結果得られたウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1は、配列番号359に示す重鎖可変領域及び重鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号351、配列番号352、配列番号353のアミノ酸配列からなり、配列番号361に示す軽鎖可変領域及び軽鎖可変領域中のCDR1〜3がそれぞれ配列番号354、配列番号355、配列番号356のアミノ酸配列からなることが確認された。
【0301】
(2)ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の作製
上記で取得したウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域を発現させるための配列番号358に示す遺伝子と、軽鎖可変領域を発現させるための配列番号360に示す遺伝子をそれぞれヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクター及びヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。作製した2つの組み換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入してヒト化されたヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1を含む培養上清を得た。
【0302】
(3)ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の抗原特異性、癌細胞への反応性及び抗腫瘍活性
(2)で得たヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の培養上清を定法に従ってHitrap ProteinA SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを用いて、抗原特異性と癌細胞への反応性及び抗腫瘍効果を調べた。
【0303】
まず、(1)と同様にして、CAPRIN−1タンパク質およびウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1のエピトープである配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対するヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の反応特異性を調べたところ、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1と同様にCAPRIN−1タンパク質および配列番号430のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する反応特異性を有していることを確認した。
【0304】
次に胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の各細胞の細胞表面上でのCAPRIN−1タンパク質の反応性を調べた。各細胞株それぞれ10
6細胞を1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離した。上記抗体を含む各細胞培養上清(100μl)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで100倍に希釈したAlexa488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(life technologies社製)を添加し、4℃で60分間静置した。PBS(−)で洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールには二次抗体のみを反応したものを用いた。その結果、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、陰性コントロールに比べて、蛍光強度が30%以上強い反応性を示した。このことから、上記ヒト癌細胞株の細胞膜表面上に配列番号430で示されるCAPRIN−1タンパク質の一部が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗CAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
【0305】
さらに次に、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1の胆嚢癌細胞株TGBC14TKBに対する抗腫瘍活性を評価した。10
6個の胆嚢癌細胞株を50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄しターゲット細胞を準備した。精製されたヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1が最終濃度が5μg/mlとなるように96穴V底プレートにそれぞれ添加した。次に、定法に従って調製したヒト末梢血リンパ球細胞からヒトNK細胞を分離し、1ウェル当たり2×10
5個を添加した。ターゲットと抗体を添加した96ウェルV底プレートに1ウェル当たり2×10
3個を混合し、37℃、5%、CO
2の条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による胆嚢癌細胞に対する細胞障害活性を算出した。陰性コントロールにはアイソタイプコントロール抗体を添加したものを用いた。その結果、アイソタイプコントロール抗体を用いた場合の細胞障害活性は胆嚢癌細胞に対しても5%未満であったのに対して、ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1は、胆嚢癌細胞に対しても25%以上の抗腫瘍活性を示した。以上の結果より、配列番号430に示すCAPRIN−1由来ペプチドに対する抗体ヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1抗体#1はADCC活性によってCAPRIN−1を発現する胆嚢癌細胞に対して抗腫瘍活性を発揮することが明らかとなった。
【0306】
[実施例14] ヒト化抗CAPRIN−1抗体#1〜3の作製
次に、ウサギ抗CAPRIN−1抗体#1のヒト化抗体を作製した。ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域のアミノ配列情報を基に、重鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号351、配列番号352及び配列番号357のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む重鎖可変領域(配列番号363)を発現できるように、配列番号362の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号354、配列番号355及び配列番号356のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む軽鎖可変領域(配列番号365)を発現できるように、配列番号364の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入して、ヒト化抗CAPRIN−1抗体#1を含む培養上清を得た。
【0307】
また、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域中のアミノ配列情報を基に、CDR1〜3が配列番号351、配列番号352及び配列番号353のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む重鎖可変領域(配列番号368)を発現できるように、配列番号367の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号354、配列番号355及び配列番号356のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む軽鎖可変領域(配列番号370)を発現できるように、配列番号369の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入して、ヒト化抗CAPRIN−1抗体#2を含む培養上清を得た。
【0308】
さらに、ウサギ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1の重鎖可変領域中のアミノ配列情報を基に、CDR1〜3が配列番号351、配列番号352及び配列番号353のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む重鎖可変領域(配列番号372)を発現できるように、配列番号371の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の重鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。同様にして、軽鎖可変領域中のCDR1〜3が配列番号354、配列番号355及び配列番号356のアミノ酸からなり、フレームワーク領域がヒト抗体の配列を含む軽鎖可変領域(配列番号370)を発現できるように、配列番号369の塩基配列を設計し、これをヒトIgG1の軽鎖定常領域が挿入された哺乳類細胞発現用ベクターに挿入した。上記2つの組換え発現ベクターを定法に従って哺乳類細胞に導入して、ヒト化抗CAPRIN−1抗体#3を含む培養上清を得た。
【0309】
ヒト化抗CAPRIN−1抗体の抗原特異性、癌細胞への反応性及び抗腫瘍活性
上記で得た3種のヒト化抗CAPRIN−1抗体#1〜#3のCAPRIN−1に対する反応性を評価した結果、CAPRIN−1タンパク質、配列番号430に示すエピトープペプチド及び胆嚢癌細胞株に対する反応性はヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1と同レベルであった。さらに、これら3種のヒト化抗CAPRIN−1抗体の胆嚢癌細胞株に対する抗腫瘍活性を評価したところ、いずれの抗体もヒト−ウサギキメラ抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1と同レベルの抗腫瘍活性を示した。
【0310】
[実施例15] マウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#23〜29を用いた胆嚢癌細胞膜面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現解析
次に、WO/2013/018894で得られた配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号279で表される重鎖可変領域と配列番号280、281及び282で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号283で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#23、配列番号276、277及び278で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号279で表される重鎖可変領域と配列番号286、287及び288で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号289で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#24、配列番号291、292及び293で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号294で表される重鎖可変領域と配列番号295、296及び297で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号298で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#25、WO/2013/018894で得られた配列番号301、302及び303で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号304で表される重鎖可変領域と配列番号305、306及び307で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号308で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#26、WO/2013/018891で得られた配列番号311、312及び313で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号314で表される重鎖可変領域と配列番号315、316及び317で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号318で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#27、WO/2013/018889で得られた配列番号321、322及び323で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号324で表される重鎖可変領域と配列番号325、326及び327で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号328で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#28及びWO/2013/018883で得られた配列番号331、332及び333で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号334で表される重鎖可変領域と配列番号335、336及び337で表されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域(それぞれCDR1、CDR2、CDR3)を含む配列番号338で表される軽鎖可変領域からなる抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#29を用いて、実施例10と同様に胆嚢癌細胞株TGBC14TKBについて、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べたところ、実施例10のマウス抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#30〜36と同等の胆嚢癌細胞株への反応性が得られた。
【0311】
[実施例16] ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29の胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍活性
実施例11と同様の方法にて実施例15に記載のマウス抗CAPRIN−1抗体#23〜29のそれぞれの可変領域を有するヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29をそれぞれ安定的に産生する細胞株を作製して、ヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29をそれぞれ含む培養上清を得た。この上清を定法で精製したものを用いて、胆嚢癌細胞に対する抗腫瘍活性を調べた。CAPRIN−1を発現する胆嚢癌細胞に対する細胞障害性の強さを評価するためにヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体#23〜29を用いてADCC活性を測定した。実施例12と同様の方法で、胆嚢癌細胞株TGBC14TKBに対するADCC活性を評価した結果、いずれのヒト−マウスキメラ抗CAPRIN−1抗体も胆嚢癌細胞株TGBC14TKBに20%以上の活性を示したのに対して、陰性コントロールとして用いたヒトIgG1抗体では胆嚢癌細胞に対して5%未満の活性であった。