特許第6107667号(P6107667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107667
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20170327BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20170327BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20170327BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20170327BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170327BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20170327BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H01F27/36 B
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
   B60L11/18 C
   H02J50/10
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-557535(P2013-557535)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2013052671
(87)【国際公開番号】WO2013118745
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-23440(P2012-23440)
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】前川 祐司
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5807712(JP,B2)
【文献】 特開2012−196015(JP,A)
【文献】 特開2000−114078(JP,A)
【文献】 特開2008−054424(JP,A)
【文献】 特表2012−502610(JP,A)
【文献】 特開2009−303316(JP,A)
【文献】 特開2003−068544(JP,A)
【文献】 特開2010−070048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/36
H02J 50/10
H02J 7/00
B60L 5/00
B60L 11/18
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電コイルを有する給電装置と、受電コイルを有する受電装置とを具備し、前記給電コイルから前記受電コイルに非接触給電によって電力供給を行う非接触給電システムであって、
前記給電装置及び前記受電装置の双方それぞれに設けられるカバーを有し、
前記カバーは、前記給電コイルの周面及び前記受電コイルの周面を含む周囲とコイル間の周囲とを覆うことによって漏れ磁束を遮蔽する磁束遮蔽部を含み、
前記磁束遮蔽部は、伸縮自在である非接触給電システム。
【請求項2】
前記カバーは、密閉されており、
給電時には、前記カバーにガスを供給することにより前記カバーを膨張させて前記給電コイル及び前記受電コイルの周囲とコイル間の周囲とを覆って前記カバー外と遮蔽状態にし、また非給電時には、前記カバー内のガスを排気することにより前記カバーを収縮させて前記遮蔽状態を解除するガス給排気機構をさらに具備する請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記カバーには、前記給電コイルと前記受電コイルとの間に位置する部位に他の部位よりも透磁率の高い材料が配置されている請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記受電装置は、受電した電力をバッテリに充電し、前記バッテリの電力によって駆動する移動車両である請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記カバーは、
前記給電コイルを内包する状態で前記給電装置側に設置された袋状であり、膨張した状態において前記受電コイル側の部位が磁束透過部かつ当該磁束透過部以外の部位が磁束遮蔽部として形成された給電用カバーと、
前記受電コイルを内包する状態で前記受電装置側に設置された袋状であり、膨張した状態において前記給電コイル側の部位が磁束透過部かつ当該磁束透過部以外の部位が磁束遮蔽部として形成された受電用カバーと
を含む請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記磁束遮蔽部は、アルミニウム又は銅を含んで形成される請求項に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
給電コイルを有する給電装置及び受電コイルを有する受電装置の双方それぞれに設けられ、
前記給電コイルの周面及び前記受電コイルの周面を含む周囲とコイル間の周囲とを覆うことによって漏れ磁束を遮蔽する磁束遮蔽部を含み、
前記磁束遮蔽部は、伸縮自在であるカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムに関する。本願は、2012年2月6日に、日本に出願された特願2012−23440号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電動車両が備える受電コイルと給電装置が備える給電コイルとの周囲に発生する漏れ磁束を遮蔽する非接触給電システムが開示されている。上記非接触給電システムにおいて、電動車両には、円筒形をし、コイル軸が上下方向(垂直方向)となる姿勢で底部に設けられ、一方の端面のみを底部から露出する受電コイルと、受電コイルの側面と他方の端面とを覆うシールドボックスとが設けられている。一方、給電装置には、受電コイルと同径の円筒形であり、一方の端面が受電コイルの一方の端面に対向するよう地面に埋設された給電コイルと、給電コイルの側面と他方の端面とを覆うシールドボックスとが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2010−70048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、受電コイル及び給電コイルの一方の端面(対向面)のみを露出して、これらコイルの側面及び他方の端面をシールドボックスにより覆うことで漏洩磁束を遮蔽している。しかしながら、受電コイルと給電コイルとの間は、シールドによって覆われていない。そのため、上記従来技術では、受電コイルと給電コイルのコイル間から漏れ磁束が周囲に放射されるという問題がある。特に、電動車両の底部に受電コイルが設けられ、または給電コイルが地面に埋設されている場合には、車高によってコイル間が広く設定されてしまう。このため、漏れ磁束が周囲に放射されやすい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来技術よりも周囲に放射される漏れ磁束を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る非接触給電システムは、給電コイルを有する給電装置と、受電コイルを有する受電装置とを具備し、前記給電コイルから前記受電コイルに非接触給電によって電力供給を行う。前記非接触システムは、前記給電装置及び前記受電装置の少なくとも一方に設けられ、前記給電コイル及び前記受電コイルの周囲とコイル間の周囲とを覆うことによって漏れ磁束を遮蔽するカバーを具備する。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様において、前記非接触給電システムは、ガス給排気機構を具備する。前記カバーは、伸縮自在でありかつ密閉されている。前記ガス給排気機構は、給電時には、前記カバーにガスを供給することにより前記カバーを膨張させて、前記給電コイル及び前記受電コイルの周囲とコイル間の周囲とを覆って前記カバー外と遮蔽状態にする。また、ガス給排気機構は、非給電時には、前記カバー内のガスを排気することにより前記カバーを収縮させて前記遮蔽状態を解除する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、上記第1または第2の態様において、前記カバーには、前記給電コイルと前記受電コイルとの間に位置する部位に他の部位よりも透磁率の高い材料が配置されている。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、上記第1〜第3のいずれか1つの態様において、前記受電装置は、受受電した電力をバッテリに充電し、前記バッテリの電力によって駆動する移動車両である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、給電中にカバーによって給電コイル及び受電コイルの周囲とコイル間を構成する非接触給電空間とが覆われているので、給電コイル及び受電コイルとコイル間とから周囲に放射される漏れ磁束を遮蔽もしくは低減することができる。したがって、給電コイル及び受電コイルとコイル間を構成する非接触給電空間から放射される漏れ磁束を低減することができる。
漏れ磁束とは、給電コイル及び受電コイルの端部から、直接的もしくは間接的に、自己もしくは他のコイル端部へ到達しない磁束をいう。
非接触給電空間とは、給電コイル及び受電コイルの端部から放射されている磁束が電磁場を形成している空間をいう。
カバーとは、ガスや流体が透過しない材質で構成された覆うもの、包むもの、蓋や傘などを含み、又はこれらと均等のものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る非接触給電システムの機能構成を示すブロック図である。
図2A】本発明の一実施形態における給電用カバー及び受電用カバーが膨張し、互いに当接した状態を示す模式図である。
図2B】本発明の一実施形態における給電用カバー及び受電用カバーが膨張し、当接した状態における当接面を示す模式図である。
図2C】本発明の一実施形態における給電用カバー及び受電用カバーが膨張し、当接していない状態を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る非接触給電システムAは、図1に示すように、地面に埋設された地上給電装置Sと、地上給電装置Sから給電を受ける移動車両Mとを備えている。非接触給電システムAは、非接触給電方式の1つである磁界共鳴方式に基づいて、地上給電装置Sから移動車両Mに電力を非接触給電する。
【0013】
地上給電装置Sは、例えば交差点または踏切における停車位置、あるいは駐車場の駐車位置等に埋設され、これら駐停車位置に駐停車した移動車両Mに対して非接触給電を行う。地上給電装置Sは、図1に示すように、電源1、整流回路2、給電回路3、給電コイル4、給電用カバー5、給電用ガス給排気機構6、及び給電用制御部7を備えている。
【0014】
電源1は、その出力端が整流回路2の入力端に接続されており、移動車両Mへの給電に必要となる交流電力を整流回路2に供給する交流電源である。電源1は、例えば200Vまたは400V等の三相交流電力、あるいは100Vの単相交流電力を供給する系統電源である。
整流回路2は、その入力端が電源1に接続され、その出力端が給電回路3に接続されている。整流回路2は、電源1から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、前記直流電力を給電回路3に出力する。
【0015】
給電回路3は、その入力端が整流回路2に接続され、その出力端が給電コイル4の両端に接続されている。給電回路3は、給電コイル4と給電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備えている。給電回路3は、給電用制御部7から入力される制御指令に基づいて、整流回路2から供給された直流電力を電源1の交流電力よりも周波数が高い交流電力(高周波電力)に変換して給電コイル4に供給する一種のインバータである。
【0016】
給電コイル4は、所定のコイル径を有するヘリカルコイル又はソレノイドコイルである。給電コイル4は、たとえば、そのコイル軸を上下方向(垂直方向)とした姿勢で、プラスチックス、繊維強化プラスチックス、セラミックス、又はこれらの複合材等の非磁性材料によってモールドされた状態で、上述した駐停車位置に設置されている。給電コイル4は、両端が給電回路3の出力端に接続されており、給電回路3から高周波電力が供給されて磁界を発生することによって、移動車両Mに対して非接触で給電を行う。給電コイル4は、磁気結合していれば、そのコイル軸を水平方向とした姿勢であってもよく、角度を持って傾斜していてもよい。
【0017】
給電用カバー5は、ゴム等の伸縮自在な弾性材を膜状に成形して袋状にした一種の風船であり、給電コイル4を内包する状態で地面に設置されている。給電用カバー5は、密閉されており、給電用ガス給排気機構6からガス(例えば空気)が供給されると、図2Aに示すように給電コイル4の周囲に膨張する。また、給電用カバー5には、図2Bに示すように、膨張した状態において給電コイル4の受電コイル11側の当接面の部位が、磁束透過部5aとして形成されている。給電用カバー5には、膨張した状態において磁束透過部5a以外の部位が、磁束遮蔽部5bとして形成されている。また、当接しない場合、給電用カバー5や受電用カバー15は、図2Cに示すように膨張する。
【0018】
磁束透過部5aは、母材である膜状弾性材の表面及び内部にフェライト等の高透磁率材料の粉体を付着又は混合させて、形成されている。磁束透過部5aは、磁束に対する透過性能と伸縮性能との両方を有してもよいが、当接する部分は伸縮しなくてもよい。磁束遮蔽部5bは、母材である膜状弾性材の表面や内部にアルミニウムや銅粉等の磁束遮蔽材からなる常磁性粉体を付着または混合させて、形成されている。磁束遮蔽部5bは、磁束に対する遮蔽性能と伸縮性能との両方を有する。
【0019】
給電用ガス給排気機構6は、給電用制御部7から入力される制御指令に基づいて給電用カバー5内にガスを供給すると共に、給電用カバー5からガスを排気する一種のポンプである。給電用制御部7は、マイクロプロセッサやメモリ等を備え、所定の給電用制御プログラムに基づいて機能するソフトウエア型制御装置である。給電用制御部7は、給電回路3及び給電用ガス給排気機構6を制御する。給電用制御部7の処理の詳細については、後述する動作説明の中で説明する。
【0020】
移動車両Mは、運転者によって運転されて道路上を走行する自動車であり、例えば電力を動力源として走行する電気自動車やハイブリッド自動車である。移動車両Mは、図1に示すように、受電コイル11、受電回路12、充電回路13、バッテリ14、受電用カバー15、受電用ガス給排気機構16、及び受電用制御部17を備えている。なお、図1では省略しているが、移動車両Mは、エンジン、走行モータ、操作ハンドル、及びブレーキ等の走行に必要な構成要素も備えている。移動車両Mは必ずしも動力源として電力を用いるものではなくてもよいが、移動車両の電力使用機器に電力を供給できるものである。
【0021】
受電コイル11は、地上給電装置Sの給電コイル4と略同一のコイル径を有するヘリカルコイルもしくはソレノイドコイルである。受電コイル11は、給電コイル4と磁気結合可能なように、そのコイル軸がたとえば上下方向(垂直方向)となる姿勢で、移動車両Mの底部に設けられている。受電コイル11は、その両端が受電回路12の入力端に接続されており、給電コイル4の磁界が作用すると電磁誘導や磁界共鳴によって起電力を発生し、前記起電力を受電回路12に出力する。受電コイル11は、磁気結合していれば、そのコイル軸を水平方向とした姿勢であってもよく、角度を持ち傾斜していてもよい。
【0022】
受電回路12は、その入力端が受電コイル11の両端に接続され、その出力端が充電回路13の入力端に接続されている。受電回路12は、受電コイル11と受電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備えている。受電回路12は、受電コイル11から供給された交流電力を直流電力に変換して、前記直流電力を充電回路13に供給する一種の整流回路である。なお、受電回路12の共振用コンデンサの静電容量は、給電側共振回路の共振周波数と受電側共振回路の共振周波数とが同一周波数になるように設定されている。
【0023】
充電回路13は、その入力端が受電回路12の出力端に接続され、その出力端がバッテリ14の入力端に接続されており、受電回路12から供給される電力(直流電力)をバッテリ14に充電する。バッテリ14は、移動車両Mに搭載された再充電が可能な電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池)であり、走行モータ等(不図示)に駆動電力を供給する。
【0024】
受電用カバー15は、上述した給電用カバー5と同様にゴム等の伸縮自在な弾性材を膜状に成形して袋状にした一種の風船であり、受電コイル11を内包する状態で移動車両Mの底部に設置されている。受電用カバー15は、密閉されており、受電用ガス給排気機構16からガス(例えば空気)が供給されると、図2Aに示すように受電コイル11の周囲に膨張する。また、受電用カバー15には、図2Bに示すように、膨張した状態において受電コイル11の端面(下面)の直下に符合する部位が磁束透過部15aとして形成されている。受電用カバー15には、膨張した状態において磁束透過部15a以外の部位が磁束遮蔽部15bとして形成されている。
【0025】
磁束透過部15aは、上述した給電用カバー5の磁束透過部5aと同様に、母材である膜状弾性材の表面又は内部にフェライト等の高透磁率材料の粉体を付着又は混合させて形成されている。磁束透過部15aは、磁束に対する透過性能と伸縮性能との両方を有してもよいが、伸縮しなくてもよい。磁束遮蔽部15bは、上述した給電用カバー5の磁束遮蔽部5bと同様に、母材である膜状弾性材の表面や内部にアルミニウムや銅粉等で構成される磁束遮蔽材からなる常磁性粉体を付着または混合させて形成されている。磁束遮蔽部15bは、磁束に対する遮蔽性能と伸縮性能との両方を有する。
【0026】
受電用ガス給排気機構16は、受電用制御部17から入力される制御指令に基づいて受電用カバー15内にガスを供給すると共に、受電用カバー15からガスを排気する一種のポンプである。受電用制御部17は、マイクロプロセッサやメモリ等を備え、所定の受電用制御プログラムに基づいて機能するソフトウエア型制御装置である。受電用制御部17は、充電回路13及び受電用ガス給排気機構16を制御する。給電用制御部7の処理の詳細については、後述する動作説明の中で説明する。
【0027】
次に、構成された本非接触給電システムAの動作について説明する。
最初に、非給電時における移動車両M及び地上給電装置Sの動作について説明する。移動車両Mの受電用制御部17は、非給電時(例えばユーザによる移動車両Mの通常運転時)に、受電用カバー15が膨らんでいる場合に、移動車両Mの走行の妨げとなる。これに対して、受電用カバー15が完全に収縮するように、受電用ガス給排気機構16に受電用カバー15内のガスを排気させる。また、受電用制御部17は、充電回路13を停止させる。一方、地上給電装置Sの給電用制御部7は、非給電時(つまり、給電対象である移動車両Mが駐停車位置に停車していない時)に、給電回路3を停止する。それと同時に、給電用制御部7は、給電用カバー5が完全に収縮するように、給電用ガス給排気機構6に給電用カバー5内のガスを排気させる。
【0028】
その後、ユーザは、移動車両Mを運転して、地上給電装置Sの設置場所まで移動車両Mを移動させて停車させる。移動車両Mの受電用制御部17は、音波センサあるいは光センサ等の位置センサ(不図示)の出力から、地上給電装置Sの設置位置を把握する。受電用制御部17は、上記のように音波センサあるいは光センサ等の位置センサの出力から、地上給電装置Sの上方まで移動したことを検知する。検知した受電用制御部17は、図2A及び図2Bに示すように、受電用カバー15が給電用カバー5と当接して膨張するように、受電用ガス給排気機構16にガスを供給させる。また、その後、受電用制御部17は、充電回路13に充電準備動作を開始させる。
圧力センサ(図不示)にて、受電用カバー15の内部圧力を監視し、所定圧力で当接していることで受電用制御部17は、充電回路13に充電動作を開始させる。
【0029】
地上給電装置Sの給電用制御部7は、移動車両Mと同じく音波センサあるいは光センサ等の位置センサ(不図示)の出力から、移動車両Mの位置を把握する。給電用制御部7は、音波センサあるいは光センサ等の位置センサの出力から、地上給電装置Sの上方に移動車両Mが移動して停止したことを検知する。検知した給電用制御部7は、給電用カバー5が受電用カバー15と当接して完全に膨張するように、給電用ガス給排気機構6にガスを供給させる。また、その後、給電用制御部7は、給電回路3にバッテリ14の給電準備動作を開始させる。
圧力センサ(図不示)にて、受電用カバー15の内部圧力を監視し、所定圧力で当接していることで受電用制御部17は、充電回路13に充電動作を開始させることもできる。
また、当接状態を確認して、ガス供給量とカバーの内部圧力を計測することにより給電コイルと受電コイル間の距離や相対位置を確認して給電する高周波電力の周波数を調節することもできる。
なお、ガス供給量と各カバーの内部ガスの圧力により、カバーの当接状態を確認し、給電可能であるか否かを確認する。
【0030】
上記動作によって、図2A及び図2Bに示すように、地上給電装置Sの給電用カバー5と移動車両Mの受電用カバー15とが、磁束透過部5aと磁束透過部15aとが当接する状態で接触する。つまり、磁気結合している給電コイル4の磁束端面と受電コイル11の磁束端面との間には、磁束透過部5a及び磁束透過部15aが配置される。一方、給電コイル4の周面(側方)には磁束遮蔽部5bが配置され、受電コイル11の周面(側方)には磁束遮蔽部15bが配置される。
【0031】
上記した状態で、給電回路3から給電コイル4に高周波電力が給電される。高周波電力が給電された際、給電コイル4の端面から放射される磁束(主磁束)は、磁束透過部5a及び磁束透過部15aを介して、受電コイル11の端面に入射し、共鳴する。各コイルの両端から放射される磁束は、磁束透過部5a及び磁束透過部15aを介して給電用カバー5内と受電用カバー15内で結合して共鳴する。
一方、給電コイル4と受電コイル11の端面から放射される磁束(漏れ磁束)に関して、磁束遮蔽部5b及び磁束遮蔽部15bによって、上記磁束の給電用カバー5及び受電用カバー15外への漏洩が遮蔽される。
【0032】
移動車両Mの受電用制御部17は、バッテリ14の充電状態を監視しながら充電回路13を制御することにより、バッテリ14を適切に充電する。受電用制御部17は、バッテリ14が満充電状態となったことを検知する。検知した受電用制御部17は、受電用ガス給排気機構16を制御して受電用カバー15を完全に収縮させることにより、上記当接状態を解除する。検知した受電用制御部17は、給電回路3の制御を停止すると共に、給電用ガス給排気機構6を制御して、給電用カバー5を完全に収縮させる。そして、ユーザは、表示器等(不図示)により満充電状態となったことを認識すると、移動車両Mを運転して、地上給電装置Sの設置場所から移動する。一方、地上給電装置Sの給電用制御部7は、音波センサあるいは光センサ等の位置センサ(不図示)の出力から移動車両Mが移動したことを検知する。
【0033】
本実施形態によれば、磁束遮蔽部5b及び磁束遮蔽部15bによって、給電コイル4の漏れ磁束が給電用カバー5及び受電用カバー15の外部へ漏れることが防止される。その結果、漏れ磁束を、従来技術よりも低減することができる。また、本実施形態によれば、給電コイル4の磁束端面と受電コイル11の磁束端面との間に、磁束透過部5a及び磁束透過部15aが配置されている。これにより、主磁束に対する磁気抵抗を低減することが可能である。その結果、高周波電力の伝送効率を、従来技術よりも向上させることができる。さらに、本実施形態によれば、給電コイル4と受電コイル11との間の空間が、給電用カバー5及び受電用カバー15によって占められる。したがって、給電中の給電コイル4と受電コイル11との間に異物が侵入することを完全に防止することができる。
なお、ガス供給量と各カバーの内部ガスの圧力により、カバーの当接状態を確認し、カバー膨張時に異物があると当接状態が異物により異常な状態となり、給電可能でないことが確認できる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、地上給電装置Sと移動車両Mとの間の電力伝送に磁界共鳴方式を採用している。この磁界共鳴方式は、電磁誘導方式と比べて、給電コイル4と受電コイル11との位置ズレに強く(位置ズレを許容できる)、弱い磁界で高効率かつ長距離の電力伝送を実現できる。従って、本実施形態によれば、電磁誘導方式を採用する装置に比べて、高精度な位置決め機構が不要(上述した音波センサや光センサ等の汎用的な位置センサで足りる)である。その結果、地上給電装置Sと移動車両Mとの間での電力伝送を、低コストで実現することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、地上給電装置Sに給電用カバー5を設けると共に移動車両Mに受電用カバー15を設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、地上給電装置Sと移動車両Mとのいずれか一方に給電用カバー5あるいは受電用カバー15を設け、この1つのカバーによって給電コイル4及び受電コイル11を覆ってもよい。図3は、例えば、移動車両Mのみに受電用カバー15を設けた場合を例示している。つまり、受電用カバー15は、受電コイル11を内包すると共に、膨張することによって給電コイル4をも覆う。この場合、受電用カバー15の磁束透過部15aは、図3に示すように、給電コイル4の磁束端面に接する。磁束端面が水平方向であっても覆うことで磁気結合が保たれる。
【0036】
(2)上述した場合においては、ジャミング転移現象を利用してもよい。つまり、受電用カバー15内にガスと共に粉体を供給することにより、受電用カバー15内を粉体で満たすと共に受電用カバー15を膨張させて給電コイル4を覆う。その後、受電用カバー15内のガスのみを排気することによって、受電用カバー15内の粉体を疑似的に固形物化する。この状態において、粉体は給電コイル4及び受電コイル11を覆う状態で固形化される。これにより、給電コイル4に対して受電コイル11を固定することができる。
【0037】
(3)さらに、図3に示したもの以外に上記実施形態と異なる形状のカバーとして、給電コイル4及び受電コイル11との間に磁束に対する透過性能の高い磁束透過部5a及び磁束透過部15aが配置されていないシリコンゴム等の伸縮自在な弾性体のみで構成されたカバーでもよい。つまり、磁束透過部5a及び磁束透過部15aに相通する部位を、母材のみから形成して、給電,受電コイル4、11の周囲と給電,受電コイル4、11のコイル間とを覆うようにしてもよい。
【0038】
(4)上記実施形態では、給電装置が、地面に埋設された地上給電装置Sであり、受電装置が地上を走行する移動車両Mである。本発明はこれに限定されない。例えば、給電装置が水中に設置された水中給電装置であり、受電装置が水中を移動する水中航走体であってもよい。また、上記水中航走体は、水中の水質などを調査する場合には、水質データを外部に取り出さなければならない。この場合、水中給電装置の給電用カバー5及び水中航走体の受電用カバー15の内部に通信アンテナを設け、前記通信アンテナを介して水質データを外部に取り出すようにしてもよい。つまり、通信ケーブルを介して水中給電装置を地上の水質データ管理装置等に有線接続し、水中航走体が電力伝送時(バッテリ14の充電時)に通信アンテナを介して水質データを水中給電装置へ無線送信し、水中給電装置が通信アンテナを介して水中航走体から受信した水質データを水質データ管理装置等へ有線送信してもよい。
また、カバー内に供給する流体として、ガス体以外に液体でもよい。特に磁界共鳴方式の場合、液体の種類にはコイルやカバーを傷めない性質のものであればイオン性のある塩水でもよく、蒸留水やアルコール等でもよい。特にガスと液体の比重が異なるので、ガスとの併用をすることで給電装置や受電装置のバランスを調節することができる。
【0039】
(5)上記実施形態では、非接触給電する方法として磁界共鳴方式を採用したが、電磁誘導方式を採用するようにしてもよい。
(6)上記実施形態では、給電時のみに給電用カバー5及び受電用カバー15を膨張させ、非給電時には給電用カバー5及び受電用カバー15を収縮させている。本発明はこれに限定されない。移動車両Mの走行の邪魔にならなければ、非給電時に、給電用カバー5及び受電用カバー15を膨張させてもよい。この場合、給電用ガス給排気機構6及び受電用ガス給排気機構16は省略可能である。
(7)上記実施形態では、給電用カバー5及び受電用カバー15が膨張した場合に角部を有した略球状や略半球状として説明したが、膨張した場合の形状はこれらに限定されない。この場合、円錐台や直方体となるように膜状弾性体で構成されるカバーの一部を弾性を有さない部材もしくは弾性の低い部材をと弾性を有する部材を組み合わせることで構成される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、給電コイル及び受電コイルとコイル間を構成する非接触給電空間から周囲に放射される漏れ磁束を遮蔽し、放射される漏れ磁束を従来技術よりも低減することができる。
【符号の説明】
【0041】
A…非接触給電システム、S…地上給電装置、M…移動車両、1…電源、2…整流回路、3…給電回路、4…給電コイル、5…給電用カバー、6…給電用ガス給排気機構、7…給電用制御部、11…受電コイル、12…受電回路、13…充電回路、14…バッテリ、15…受電用カバー、16…受電用ガス給排気機構、17…受電用制御部、5a,15a…磁束透過部、5b,15b…磁束遮蔽部
図1
図2A
図2B
図2C
図3