(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の頭部保護エアバッグ装置においても、上記特許文献2に記載の頭部保護エアバッグ装置と同様に、エアバッグの折り畳み完了後に、折り畳み形状を維持し、折り崩れを防止するための部材が必要であった。そして、折り崩れ防止用の部材としてテープ材を用い、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲にテープ材を巻き付ける場合、テープ材が、折り完了体に対して大きく位置ずれしてしまう場合があり、テープ材を、折り完了体に対する大きな位置ずれを抑制して、折り完了体に巻き付ける点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲に、大きな位置ずれを生じさせることなく、折り崩れ防止用のテープ材を巻き付けることが可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、窓の車内側における上縁側の収納部位に、折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて窓の車内側を覆うように膨張するエアバッグを、備え、
エアバッグが、膨張完了時の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んで、車両の前後方向に略沿うような長尺状として形成される折り完了体の周囲に、前記エアバッグの折り崩れを防止して、かつ、エアバッグの展開膨張時に破断可能とされる可撓性を有した帯状のテープ材を、折り完了体の周方向に略沿わせるように巻き付けられて、収納部位に収納される構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
エアバッグが、膨張完了時に車内側に位置する車内側壁部と車外側に位置する車外側壁部とを離隔させるように内部に膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備え、
非流入部が、エアバッグの外周縁を構成する周縁部を、備える構成とされ、
周縁部における膨張完了時の上縁側となる上縁側部位
に、テープ材の端縁と干渉して、テープ材の前記折り完了体に対する位置ずれを防止可能な位置ずれ防止手段が、形成され
、
位置ずれ防止手段が、上縁側部位を上側から切り欠くようにして形成されて、折り完了体におけるテープ材を巻き付ける被巻き付け部と、被巻き付け部から立ち上がるように形成されるとともにテープ材の前後両側に配置される立ち上がり部と、を備え、
立ち上がり部において、テープ材側の端面が、テープ材の端縁と干渉してテープ材の位置ずれを規制する規制面とされ、
テープ材の前後両側の規制面が、それぞれ、先端側をテープ材側となる前後方向の中央側に向けるように、左右方向に対して傾斜して、構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグにおいて、膨張完了時の上縁側となる周縁部の上縁側部位に、テープ材の折り完了体に対する位置ずれを防止可能な位置ずれ防止手段が、配置されていることから、折り完了体に対して、テープ材が大きく位置ずれすることを抑制できる。そのため、粘着剤層を備えず、単に折り完了体の周囲に巻き付けて端縁相互を結合させるタイプのテープ材を使用する場合にも、折り完了体の周囲への巻き付け後、車両搭載時まで、折り完了体に対してテープ材が大きく位置ずれすることを抑制できる。また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、位置ずれ防止手段は、エアバッグ自体に凹部若しくは凸部を設けるようにして、形成されるもので、別部材を必要とせず、単に、エアバッグ用基布から裁断する際のエアバッグの外形形状を変更するだけでよいことから、製造コストや部品点数の増大も招かない。
【0009】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体の周囲に、大きな位置ずれを生じさせることなく、折り崩れ防止用のテープ材を巻き付けることができる。
【0011】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置
では、折り完了体に対してテープ材が前後に移動しようとしても、テープ材の前後両側において、テープ材を巻き付ける被巻き付け部から立ち上がるように形成される立ち上がり部が、テープ材の端縁と干渉して、さらなるテープ材の前後移動を、的確に抑制できることから、折り完了体に対して、テープ材が前後に移動することを、的確に防止できる。
【0013】
さらに、本発明の頭部保護エアバッグ装置
では、規制面が、先端側を前後の内方に向かって突出させるように、形成されることから、テープ材が折り完了体に対して前後に移動した際に、この規制面と、テープ材を巻き付ける被巻き付け部を構成する切欠凹部の底の部位と、の間の鋭角状の隅部に嵌るように進入する態様となって、テープ材が規制面の周縁の部位から抜け難く、テープ材が、この規制面の周縁を構成する部位を超えて移動することを的確に防止できる。そのため、折り完了体に対して、テープ材が前後に大きく移動することを、一層的確に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1に示すように、2つの窓(サイドウィンド)W1,W2を有した二列シートタイプの車両Vに搭載されている。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ19と、インフレーター14と、取付ブラケット11,15と、エアバッグカバー9と、エアバッグ19を折り畳んで形成される折り完了体45の周囲に巻き付けられるテープ材46と、を備えて構成されている。エアバッグ19は、
図1に示すように、車両Vの車内側における窓W1,W2の上縁側の収納部位Pにおいて、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、折り畳まれて収納されている。
【0016】
エアバッグカバー9は、
図1,2に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁から、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1(車体)側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。また、エアバッグカバー9は、折り畳まれて収納されるエアバッグ19(折り完了体45)の車内側を覆うように配設されるとともに、展開膨張時のエアバッグ19を車内側へ突出可能とするために、エアバッグ19に押されて開き可能な構成とされている。
【0017】
インフレーター14は、エアバッグ19に膨張用ガスを供給するもので、
図1に示すように、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター14は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ19の後述するガス流入口部22に挿入させ、ガス流入口部22の後端22a外周側に配置されるクランプ17(
図1参照)を利用して、エアバッグ19に対して連結されている。また、インフレーター14は、インフレーター14を保持する取付ブラケット15と、取付ブラケット15をボディ(車体)1側のインナパネル2に固定するためのボルト16と、を利用して、インナパネル2においてセンターピラー部CPの上方となる位置に、取り付けられている。インフレーター14は、図示しないリード線を介して、車両の図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が車両Vの側面衝突を検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動するように構成されている。
【0018】
取付ブラケット11は、2枚の板金製のプレートから構成されるもので、
図2に示すように、エアバッグ19の後述する各取付部37を挟むようにして、各取付部37に取り付けられ、取付ボルト12を利用して、各取付部37を、ボディ1側のインナパネル2に取付固定している。
【0019】
エアバッグ19は、
図1の二点鎖線に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスを内部に流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2や、窓W1,W2の間に配置されるセンターピラー部CPのセンターピラーガーニッシュ6、及び、窓W2の後側に配置されるリヤピラー部RPのリヤピラーガーニッシュ7の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。
【0020】
エアバッグ19は、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって、製造されている。エアバッグ19は、
図3に示すように、膨張完了時に車内側に位置する車内側壁部20aと車外側に位置する車外側壁部20bとを離隔させるように内部に膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部20と、膨張用ガスを流入させない非流入部27と、を備えて構成されている。
【0021】
ガス流入部20は、実施形態の場合、ガス案内流路21、ガス流入口部22、及び、保護膨張部23を、備えて構成されている。
【0022】
ガス案内流路21は、
図3に示すように、エアバッグ19の上縁19a側において、前後方向に略沿って延びるように、前後の略全域にわたって配設されるもので、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、ガス案内流路21の下方に配置される保護膨張部23の領域に、案内する構成である。また、実施形態の場合、ガス案内流路21における前後の中央付近には、インフレーター14と接続されるガス流入口部22が、ガス案内流路21と連通されて、ガス案内流路21から上方に突出するように、配設されている。実施形態の場合、ガス流入口部22は、ガス案内流路21に対して後上がりに傾斜して形成されて、後端22a側を、インフレーター14を挿入可能に開口されている。そして、ガス流入口部22は、インフレーター14を内部に挿入させた状態で、外周側に配置されるクランプ17を利用して、インフレーター14に連結されることとなる。
【0023】
保護膨張部23は、膨張完了時に、前席の側方の窓W1の車内側を覆うように配置される前席用膨張部24と、後席の側方の窓W2の車内側を覆うように配置される後席用膨張部25と、を備えている。各前席用膨張部24,後席用膨張部25は、内部領域を、後述する区画部38,39によって区画されて、膨張完了時の厚さを規制される構成とされるもので、区画部38,39により区画された複数の縦セル24a,24b,24c,24d,24e,25a,25bを、前後で並設させて構成されている。詳細には、前席用膨張部24は、5つの縦セル24a,24b,24c,24d,24eを前後で並設させて構成され、後席用膨張部25は、2つの縦セル25a,25bを前後で並設させて構成されている。
【0024】
非流入部27は、周縁部28、取付部37、区画部38,39、板状部40、及び、連結ベルト41を、備えて構成されている。
【0025】
周縁部28は、エアバッグ19の外周縁を構成するもので、ガス流入口部22の後端22a側を除いて、ガス流入部20の周囲を全周にわたって囲むように、形成されている。周縁部28において、エアバッグ19の膨張完了時の上縁19a側となる上縁側部位29には、エアバッグ19を折り畳んで形成される折り完了体45の周囲に巻き付けるテープ材46の位置ずれを防止するための位置ずれ防止手段30が、形成されている。
【0026】
位置ずれ防止手段30は、
図4に示すように、上縁側部位29の上縁側を端縁29aから切り欠いて形成される切欠凹部31と、その周縁部位32と、から構成されるもので、実施形態の場合、位置ずれ防止手段30は、テープ材46に合わせて、前後方向に沿って4箇所に、配置されている(
図3参照)。切欠凹部31は、実施形態の場合、
図4に示すように、底辺を下側に位置させるようにして上方を開口させた略台形状とされている。すなわち、切欠凹部31は、前後方向に沿って配置される下縁31aと、下縁31aの前後両端側からそれぞれ延びて先端(上端)側を切欠凹部31の前後方向の中央側に向けるように傾斜して配置される前縁31b,後縁31cと、を備えている。そして、実施形態では、切欠凹部31の周縁部位32において、下縁31a側を構成する下縁側部位33が、折り完了体45において、テープ材46を巻き付ける被巻き付け部を、構成している。また、切欠凹部31の周縁部位32において、前縁31b側と後縁31c側とを構成する前縁側部位34,後縁側部位35が、被巻き付け部を構成する下縁側部位33から立ち上がるように形成されて、テープ材36の前後両側に配置される立ち上がり部を、構成し、この前縁側部位34,後縁側部位35の端縁34a,35aが、テープ材46の折り完了体45に対する位置ずれを規制する規制面を、構成している。前縁側部位34,後縁側部位35の端縁34a,35aは、上述したごとく、先端(上端34b,35b)側をテープ材46側となる前後方向の中央側に向けるように、上下方向(折り完了体45の状態における左右方向)に対して傾斜して配置されている。実施形態の場合、前縁31b,後縁31c(前縁側部位34,後縁側部位35の端縁34a,35a)は、下縁31aに対する傾斜角度を、45°程度として、構成されている。また、下縁31aの長さ寸法L1(
図4参照)は、テープ材46の幅寸法W(
図4参照)より大きく設定されている。実施形態の場合、前縁側部位34と後縁側部位35との上端(端縁34a,35aの上端34b,35b)側の離隔距離L2(
図4参照)も、テープ材46の巻き付けが容易なように、テープ材46の幅寸法Wより大きく設定されている。具体的には、実施形態の場合、下縁31aの長さ寸法L1は、テープ材46の幅寸法Wの2倍程度に設定されている。
【0027】
取付部37は、エアバッグ19をボディ1側のインナパネル2に取り付けるための部位であり、
図3に示すように、エアバッグ19の上縁19a側となる周縁部28の上縁側部位29から上方に突出するようにして、前後方向に沿って複数配置されている。実施形態の場合、取付部37は、5個配置されている。各取付部37には、取付ボルト12を挿通可能な取付孔(図符号省略)が、形成されている。
【0028】
区画部38,39は、前席用膨張部24及び後席用膨張部25の領域内に、それぞれ、配置されるもので、各前席用膨張部24,後席用膨張部25の内部領域を、複数の縦セル24a,24b,24c,24d,24e,25a,25bに区画する部位である。実施形態の場合、区画部38A,38B,38C,38Dは、周縁部28の下縁側から上方に延びるように形成され、区画部39は、板状部40の上部前端から前下方に延びるように形成されている。板状部40は、略長方形状として、前席用膨張部24と後席用膨張部25との間においてガス案内流路21の下方となる位置に、配置されている。連結ベルト41は、エアバッグ19と別体として、エアバッグ19の前端側に縫着されるもので、外形形状を略帯状として、エアバッグ19の上下の略中央となる位置から、前方に突出するように前後方向に略沿って配置され、先端側に、取付部37と同様に、ボディ1側のインナパネル2に取り付けられる取付部41aを、有している。
【0029】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、車内側壁部20aと車外側壁部20bとを重ねて平らに展開した状態のエアバッグ19を、下縁19b側を上縁19a側に接近させつつ、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳んで、折り完了体45を形成する。具体的には、実施形態では、エアバッグ19において、上縁19a側の領域であるガス案内流路21の部位を、前後方向に沿った複数の折目を付けて蛇腹折りするとともに、ガス案内流路21より下方となる保護膨張部23の部位を、下縁19b側を車外側に向かって巻くようにロール折りして、
図2,5,6に示すように、前後方向に沿うような長尺状の折り完了体45を形成する。この折り完了体45の状態において、位置ずれ防止手段30を構成する切欠凹部31は、折り完了体45の上面45a側に露出して配置されることとなる(
図7参照)。
【0030】
その後、折り完了体45の周囲に、テープ材46を巻き付ける。テープ材46は、折り畳まれたエアバッグ19の折り崩れを防止(折り完了体45の折畳形状を維持)して、かつ、エアバッグ19の展開膨張時に破断可能とされるもので、可撓性を有した帯状体から、形成されている。実施形態の場合、テープ材46は、不織布製として、折り完了体45への巻き付け時に、端部相互を溶着させることにより、端部相互を結合されて、折り畳まれたエアバッグ19の折り崩れを防止している。すなわち、テープ材46は、巻き付け時に折り完了体45に接着されるような接着層(粘着層)を備えていない構成である。詳細には、テープ材46は、折り完了体45において、切欠凹部31の配置される位置となる前後方向に沿った4箇所に、巻き付けられるもので、それぞれ、被巻き付け部を構成している周縁部位32の下縁側部位33の外周側に、巻き付けられる(
図6,7参照)。
【0031】
その後、取付ブラケット15を取付済みのインフレーター14を、クランプ17を利用して、エアバッグ19のガス流入口部22と接続させ、エアバッグ19の各取付部37に、取付ブラケット11を固着させてエアバッグ組付体を形成する。
【0032】
次いで、取付ブラケット15を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させ、ボルト16止めして、インフレーター14をインナパネル2に固定するとともに、各取付部37を、取付ブラケット11ごと、取付ボルト12を用いてインナパネル2に取り付ければ、エアバッグ組付体をボディ1に取り付けることができる。そして、インフレーター14に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、センターピラーガーニッシュ6やリヤピラーガーニッシュ7をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0033】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後に、インフレーター14が作動されれば、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGがエアバッグ19内に流入して、膨張するエアバッグ19がテープ材46を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁で構成されるエアバッグカバ−9を押し開いて、収納部位Pから下方へ突出しつつ、
図1の二点鎖線に示す如く、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0034】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ19において、膨張完了時の上縁19a側となる周縁部28の上縁側部位29に、テープ材46の折り完了体45に対する位置ずれを防止可能な位置ずれ防止手段30が、配置されていることから、折り完了体45に対して、テープ材46が大きく位置ずれすることを抑制できる。そのため、実施形態のごとく、粘着剤層を備えず、単に折り完了体45の周囲に巻き付けて端縁相互を結合させるタイプのテープ材46を使用する場合にも、折り完了体45の周囲への巻き付け後、車両搭載時まで、折り完了体45に対してテープ材46が大きく位置ずれすることを抑制できる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、位置ずれ防止手段30は、エアバッグ19の周縁部28自体に凹部を設けるようにして、形成されるもので、別部材を必要とせず、単に、エアバッグ用基布から裁断する際のエアバッグ19(周縁部28)の外形形状を変更するだけでよいことから、製造コストや部品点数の増大も招かない。
【0035】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ19を折り畳んで形成される折り完了体45の周囲に、大きな位置ずれを生じさせることなく、折り崩れ防止用のテープ材46を巻き付けることができる。
【0036】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、位置ずれ防止手段30が、テープ材46を巻き付ける被巻き付け部としての下縁側部位33と、下縁側部位33から立ち上がるように形成されるとともにテープ材46の前後両側に配置される立ち上がり部としての前縁側部位34,後縁側部位35と、を備え、前縁側部位34,後縁側部位35のテープ材46側の端縁34a,35aが、テープ材46の位置ずれを規制する規制面とされている。そのため、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り完了体45に対してテープ材46が前後に移動しようとしても、テープ材46の前後両側において、テープ材46を巻き付ける下縁側部位33から立ち上がるように形成される前縁側部位34,後縁側部位35が、テープ材46の端縁46a,46aと干渉して、さらなるテープ材46の前後移動を、的確に抑制できることから、折り完了体45に対して、テープ材46が前後に移動することを、的確に防止できる。
【0037】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、位置ずれ防止手段30が、上縁側部位29を上側から切り欠くようにして形成される切欠凹部31と、その周縁部位32と、から構成され、規制面を構成する前縁側部位34,後縁側部位35の端縁34a,35aが、それぞれ、先端(上端34b,35b)側をテープ材側となる前後方向の中央側に向けるように、左右方向に対して傾斜される構成である。そのため、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、テープ材46が折り完了体45に対して前後に移動した際に、先端側を前後の内方に向かって突出させるように傾斜している端縁34a,35aと、テープ材46を巻き付ける被巻き付け部を構成する切欠凹部31の下縁側部位33と、の間の鋭角状の隅部に嵌るように進入する態様となって、テープ材46が端縁34a,35aの周縁の部位(前縁側部位34,後縁側部位35)から抜け難く、テープ材46が、前縁側部位34,後縁側部位35を超えて移動することを的確に防止できる。そのため、折り完了体45に対して、テープ材46が前後に大きく移動することを、一層的確に防止できる。なお、このような点を考慮しなければ、位置ずれ防止手段を上縁側部位を凹ませるような凹部から構成する場合にも、立ち上がり部のテープ材側の端面を、
図4の二点鎖線に示すごとく、上下方向(折り完了体の状態における左右方向)に略沿わせるように(下縁に対して略直交させるように)構成してもよい。立ち上がり部の高さ寸法(テープ材側の端面の長さ寸法)が十分に大きければ、立ち上がり部のテープ材側の端面を、上下方向に略沿わせるように構成していても、テープ材の移動を的確に防止できる。
【0038】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、特に、端縁34a,35aの下縁側部位33に対する傾斜角度を、45°程度に設定していることから、前縁側部位34,後縁側部位35の前後方向の中央側(テープ材46側)への突出量が大きく、また、端縁34a,35aと下縁31aとの間の隙間も先細り状となる。そのため、テープ材46の移動時に、テープ材46の端縁46aが、各端縁34a,35aと下縁側部位33(下縁31a)との間の先細り状の隙間に進入すれば、テープ材46が、
図8に示すように、この先細り状の隙間に食い込むような態様となり、テープ材46が、大きく突出している前縁側部位34,後縁側部位35を乗り越えて移動することを、的確に抑制することができる。
【0039】
なお、実施形態では、位置ずれ防止手段30を、周縁部28の上縁側部位29を略台形状に切り欠いて形成される切欠凹部31とその周縁部位32とから構成しているが、位置ずれ防止手段の外形形状は、実施形態に限られるものではない。例えば、
図9に示すように、位置ずれ防止手段30Aを、エアバッグ19Aにおける周縁部28Aの上縁側部位29Aに、上方に突出するような略長方形状の突出部48(凸部)を、前後で2つ並設させたものから、構成してもよい。各突出部48は、前後で略対称形として構成されるもので、前後方向の中央側の縁部48aを、先端(上端)側を前後方向の中央側に向けるように、上縁側部位29Aの端縁29aに対して傾斜させて構成されている。このような構成の位置ずれ防止手段30Aでは、被巻き付け部は、突出部48,48間の上縁側部位29Aの端縁29aから構成されることとなり、突出部48が、立ち上がり部を構成することとなる。そして、突出部48において前後で対向する縁部48a(前後方向の中央側の縁部)が、規制面を構成することとなる。なお、このような構成の位置ずれ防止手段においても、
図9の二点鎖線に示すように、突出部における前後方向の中央側の縁部を、上下方向(折り完了体の状態における左右方向)に略沿わせるように(上縁側部位29Aの端縁29aに対して略直交させるように)構成してもよい。
【0040】
また、位置ずれ防止手段30Bを、
図10に示すように、エアバッグ19Bの周縁部28Aの上縁側部位29Aに、上側から切れ目を入れるようにして、2本のスリット50を、前後で並設させることにより、構成してもよい。各スリット50は、前後で略対称形として構成されるもので、先端(下端)側にかけて拡開されるように、上縁側部位29Aの端縁に対して傾斜した略「ハ」字形状とされている。このような構成の位置ずれ防止手段では、テープ材を巻き付ける被巻き付け部51は、スリット50,50間の部位から、構成されることとなり、各スリット50の前後両側の部位が、テープ材を巻き付けた際に被巻き付け部51から立ち上がる立ち上がり部52,52を、構成することとなる。そして、このスリット50の前後両側の部位の端縁(スリット50自体の周縁部位50a)が、規制面を構成することとなる。なお、このような構成の位置ずれ防止手段においても、スリットを、上下方向(折り完了体の状態における左右方向)に略沿わせるように(上縁側部位の端縁に対して略直交させるように)、構成してもよい。なお、単にスリットを設けた構成の位置ずれ防止手段30Bであっても、上述の位置ずれ防止手段30,30Aと同等の作用を得ることが可能であるが、折り完了体の周囲にテープ材を巻き付ける際に、被巻き付け部を構成する部位が周囲の部位から相対的に凹んでいる方が、被巻き付け部を容易に視認できることから、作業性を考慮すれば、位置ずれ防止手段30,30Aのごとく、被巻き付け部を構成する部位を、周囲の部位から相対的に凹ませる構成とすることが、好ましい。
【0041】
なお、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、位置ずれ防止手段30が、折り完了体45の前後の略全域にわたって4箇所に点在されているが、位置ずれ防止手段の配置数及び配置位置はこれに限られるものではない。例えば、折り完了体の前端側若しくは後端側において、折り完了体から突出するように配置されるエアバッグの2つの取付部の間から前方あるいは後方に外れた領域にテープ材を巻き付ける構成の頭部保護エアバッグ装置の場合、端側の取付部から前方あるいは後方に外れた領域のみの少なくとも1箇所のみに、位置ずれ防止手段を配置させる構成としてもよい。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、位置ずれ防止手段を設けることにより、テープ材の位置ずれを的確に抑制できることから、取付部から前方あるいは後方に外れた領域に、粘着層を備えないテープ材を巻き付ける構成の頭部保護エアバッグ装置に、好適に使用することができる。