特許第6107692号(P6107692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000002
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000003
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000004
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000005
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000006
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000007
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000008
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000009
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000010
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000011
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000012
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000013
  • 特許6107692-電磁シールド部材およびワイヤハーネス 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107692
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】電磁シールド部材およびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20170327BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20170327BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20170327BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01R4/02 C
   H01R4/64 C
   H01B7/00 306
   H01B7/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-21181(P2014-21181)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-149179(P2015-149179A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】水谷 美生
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−214690(JP,A)
【文献】 特開2013−000792(JP,A)
【文献】 特開2013−099074(JP,A)
【文献】 特開昭60−182800(JP,A)
【文献】 特開平10−199583(JP,A)
【文献】 特開2011−028952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H01R 4/02
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ導電性の芯線および前記芯線の外周面に形成された絶縁被覆を有する複数の被覆シールド素線と、
環状に形成され、複数の前記被覆シールド素線各々の端部が環状に並ぶ状態で溶接されている金属製の環状保持部を有する端部保持部材と、を備え、
前記環状保持部における前記被覆シールド素線各々の端部が溶接された部分に、
前記被覆シールド素線の前記芯線と接触する芯線支え部と、
前記芯線支え部に隣接し前記芯線支え部よりも窪んで形成され前記被覆シールド素線の溶接時に前記被覆シールド素線の端部から溶出した前記絶縁被覆が流れ込む凹部と、が形成されている、電磁シールド部材。
【請求項2】
前記環状保持部の前記芯線支え部は、前記凹部側に対し反対側の部分から前記凹部の縁まで徐々に深くなる傾斜面を含む、請求項1に記載の電磁シールド部材。
【請求項3】
前記端部保持部材は、
環状の筒部および前記筒部に連なり他の部材に留められる留め部を有する導電性のシールドシェル部材と、
並列に並ぶ複数の前記被覆シールド素線各々における前記芯線の端部が並んで溶接された曲げ変形可能な金属製の帯状部材が、前記シールドシェル部材における前記筒部の外周面に接続された構造を有する前記環状保持部と、を含む、請求項1または請求項2に記載の電磁シールド部材。
【請求項4】
前記端部保持部材は、前記環状保持部を成す筒部と前記筒部と連なり他の部材に留められる留め部とを有する金属製のシールドシェル部材である、請求項1または請求項2に記載の電磁シールド部材。
【請求項5】
並列に並ぶ3本以上の前記被覆シールド素線各々における両端部の間の中間部どうしを、前記環状保持部に保持されることによって環状に並ぶ状態において隣り合う第一被覆シールド素線と第二被覆シールド素線との間以外において間隔を空けて連結する柔軟なシールド素線連結部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電磁シールド部材。
【請求項6】
前記第一被覆シールド素線の前記中間部と前記第二被覆シールド素線の前記中間部とを間隔を空けて緩やかに結束するシールド素線結束部材をさらに備える、請求項5に記載の電磁シールド部材。
【請求項7】
電磁シールドの対象となる主電線と、
前記主電線の周囲を囲んで形成された電磁シールド部材と、を備え、
前記電磁シールド部材は、
それぞれ導電性の芯線および前記芯線の外周面に形成された絶縁被覆を有する複数の被覆シールド素線と、
前記主電線の一部を囲む環状に形成され、複数の前記被覆シールド素線各々の両端部各々が環状に並ぶ状態で溶接されている金属製の環状保持部を有する導電性の一対の端部保持部材と、を備え、
前記環状保持部における前記被覆シールド素線の端部が溶接された部分に、
前記被覆シールド素線の前記芯線と接触する芯線支え部と、
前記芯線支え部に隣接し前記芯線支え部よりも窪んで形成され前記被覆シールド素線の溶接時に前記被覆シールド素線の端部から溶出した前記絶縁被覆が流れ込む凹部と、が形成されている、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズを遮蔽する電磁シールド部材およびそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスにおいて、電線の変形に応じて変形自在なシールド部材として、特許文献1に示されるような筒状の編組線が採用されることが多い。編組線は、裸導線が筒状に編まれた構造を有する。裸導線は、例えばメッキされた銅の線材である。シールド部材は、電磁シールドの対象となる電線の周囲を囲む筒状に形成されている。以下、電磁シールドの対象となる電線のことを主電線と称する。
【0003】
一般に、主電線が金属製の筐体の開口から筐体内へ配線される場合、筒状の編組線は、その端部が金属製の筐体における開口部から突出した筒部に被せられ、カシメリングにより筐体の開口の筒部に接続される。カシメリングは、編組線の端部を筐体の筒部との間に挟み込んで保持する。これにより、編組線の端部が筐体接地される。
【0004】
また、特許文献1が示す例では、編組線の端部は、筐体における開口の縁部に固定される金属製のシールドシェル部材にカシメリングによって接続される。シールドシェル部材は、金属製の筐体における電線導入用の開口部から突出して形成された筒の部分に相当し、筐体に対して取り付け可能な独立した部材である。
【0005】
シールドシェル部材は、編組線の端部が被せられる筒部とその筒部と連なり筐体に留められる留め部とを有する。なお、特許文献1が示すシールドシェルにおいて、筒状部材が筒部の一例であり、第3フランジ部が留め部の一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−344398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両用のシールド部材において、裸導線の代わりに絶縁電線(被覆電線)をシールド素線として採用することが有効な場合がある。
【0008】
例えば、シールド部材の軽量化とシールド特性の要求仕様とを両立するために、軽量なアルミニウムを主成分とするアルミニウム線とシールド特性に優れた銅を主成分とする銅線とをシールド素線に混在させたい場合がある。この場合、少なくともアルミニウム線が被覆されていれば、アルミニウム線の異種金属接触腐食を防ぐことができる。
【0009】
絶縁電線がシールド素線として採用される場合、その絶縁電線(シールド素線)の端部において、絶縁被覆が導線(芯線)の筐体接地の邪魔になる。また、シールド部材を構成する絶縁電線(シールド素線)ごとに端部の絶縁被覆を剥ぎ取ることは多大な手間を要する。
【0010】
本発明は、シールド部材において絶縁電線がシールド素線として採用される場合にシールド素線の端部を簡易に筐体接地できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様に係る電磁シールド部材は、複数の被覆シールド素線と端部保持部材とを備える。複数の上記被覆シールド素線は、それぞれ導電性の芯線およびその芯線の外周面に形成された絶縁被覆を有する。即ち、被覆シールド素線は絶縁電線である。上記端部保持部材は、環状に形成され、複数の上記被覆シールド素線各々の端部が環状に並ぶ状態で溶接されている金属製の環状保持部を有する導電性の部材である。上記環状保持部における上記被覆シールド素線各々の端部が溶接された部分に、芯線支え部とその芯線支え部に隣接する凹部とが形成されている。上記芯線支え部は、上記被覆シールド素線の上記芯線と接触する部分である。上記凹部は、上記芯線支え部よりも窪んで形成され上記被覆シールド素線の溶接時に上記被覆シールド素線の端部から溶出した上記絶縁被覆が流れ込む部分である。
【0012】
第2態様に係る電磁シールド部材は、第1態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第2態様において、上記環状保持部の上記芯線支え部は、上記凹部側に対し反対側の部分から上記凹部の縁まで徐々に深くなる傾斜面を含む。
【0013】
第3態様に係る電磁シールド部材は、第1態様または第2態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第3態様において、上記端部保持部材は、シールドシェル部材と上記環状保持部とを含む。上記シールドシェル部材は、環状の筒部およびその筒部に連なり他の部材に留められる留め部を有する導電性の部材である。この場合、上記環状保持部は、並列に並ぶ複数の上記被覆シールド素線各々における上記芯線の端部が並んで溶接された曲げ変形可能な金属製の帯状部材が、上記シールドシェル部材における上記筒部の外周面に接続された構造を有する。
【0014】
第4態様に係る電磁シールド部材は、第1態様または第2態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第4態様において、上記端部保持部材は、上記環状保持部を成す筒部とその筒部と連なり他の部材に留められる留め部とを有する金属製のシールドシェル部材である。
【0015】
第5態様に係る電磁シールド部材は、第1態様から第4態様のいずれか1つに係る電磁シールド部材の一態様である。第5態様に係る電磁シールド部材は、柔軟なシールド素線連結部をさらに備える。上記シールド素線連結部は、並列に並ぶ3本以上の上記被覆シールド素線各々における両端部の間の中間部どうしを、上記環状保持部に保持されることによって環状に並ぶ状態において隣り合う第一被覆シールド素線と第二被覆シールド素線との間以外において間隔を空けて連結する。
【0016】
第6態様に係る電磁シールド部材は、第5態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第6態様に係る電磁シールド部材は、シールド素線結束部材をさらに備える。上記シールド素線結束部材は、上記第一被覆シールド素線の上記中間部と上記第二被覆シールド素線の上記中間部とを間隔を空けて緩やかに結束する部材である。
【0017】
第7態様に係るワイヤハーネスは、電磁シールドの対象となる主電線と、主電線の周囲を囲んで形成された上記の各態様に係る電磁シールド部材とを備える。この場合、電磁シールド部材における上記端部保持部材は、上記主電線の一部を囲む環状に形成される。
【発明の効果】
【0018】
上記の各態様において、被覆シールド素線は、シールド素線として機能する絶縁電線である。また、金属製の環状保持部に、被覆シールド素線の端部の芯線と接触する芯線支え部と、被覆シールド素線の端部から溶出した絶縁被覆が流れ込む凹部と、が形成されている。被覆シールド素線各々の端部は、芯線支え部および凹部の位置において、絶縁被覆が形成されたままの状態で加熱される。この場合、加熱された絶縁被覆が被覆シールド素線の端部から凹部内へ溶出する。そのため、被覆シールド素線の端部において、溶けた絶縁被覆が芯線と芯線支え部との間に残留することによる溶接不良が生じることを防止できる。その結果、被覆シールド素線の芯線が確実に環状保持部に対して接合される。
【0019】
従って、上記の各態様によれば、被覆シールド素線の端部の絶縁被覆を予め剥がす工程を要することなく、被覆シールド素線の端部を簡易に環状保持部に接合することができ、ひいては被覆シールド素線の端部を簡易に筐体接地できる。
【0020】
また、第2態様によれば、被覆シールド素線の端部において溶けた絶縁被覆が、傾斜面を伝って凹部内へ流れ込みやすい。その結果、溶接不良をより確実に防ぐことができる。
【0021】
また、第3態様によれば、被覆シールド素線各々における芯線の端部を、シールドシェル部材に接続される前の平坦な帯状部材に対して溶接することができる。そのため、被覆シールド素線を容易に環状保持部(帯状部材)に溶接することができる。なお、被覆シールド素線の端部が溶接された帯状部材は、シールドシェル部材の筒部の外周面に沿って環状に曲げられ、その筒部に接続される。
【0022】
また、第4態様によれば、被覆シールド素線各々の端部が、シールドシェル部材の筒部(環状保持部)に対して直接溶接される。この場合、被覆シールド素線と筒部との間に介在する部材を省くことができるため、電磁シールド部材の構成部品の点数を少なくすることができる。
【0023】
また、第5態様において、複数の被覆シールド素線は、間隔を空けて並ぶ状態で、柔軟なシールド素線連結部によって連結されている。そのため、電磁シールド部材が主電線の経路に沿って曲げて取り付けられた場合であっても、被覆シールド素線相互の間隔が概ね一定に維持され、複数の被覆シールド素線が周方向において一部に偏ることなく概ね一様に分布する。その結果、被覆シールド素線の間に部分的に大きな隙間が形成されてしまってシールド性能が悪化することを防止できる。
【0024】
さらに、第5態様によれば、複数の被覆シールド素線が柔軟なシールド素線連結部によってすだれ状に一体化されている。そのため、被覆シールド素線各々を環状保持部に溶接する際における複数の被覆シールド素線の取り扱いが容易となる。
【0025】
また、第6態様によれば、シールド素線結束部材が、シールド素線連結部で連結されていない第一被覆シールド素線とその隣の第二被覆シールド素線との間に大きな隙間が形成されてしまうことも防止できる。従って、シールド性能の悪化をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係るワイヤハーネス10の端部の斜視図である。
図2】ワイヤハーネス10の主要部の分解斜視図である。
図3】ワイヤハーネス10が備える電磁シールド部材における被覆シールド素線の端部周辺の断面図である。
図4】ワイヤハーネス10が備える電磁シールド部材を製造する途中の被覆シールド素線溶接工程を示す図である。
図5】ワイヤハーネス10に適用可能な第1応用例に係る電磁シールド部材が備えるシールド素線群の平面図である。
図6】第1応用例に係るワイヤハーネス10Aの主要部の斜視図である。
図7】第2応用例に係るワイヤハーネス10Bの主要部の斜視図である。
図8】ワイヤハーネス10に適用可能な第3応用例に係る電磁シールド部材の主要部の斜視図である。
図9】第3応用例に係る電磁シールド部材を製造する途中の被覆シールド素線溶接工程を示す図である。
図10】ワイヤハーネス10に適用可能な第4応用例に係る電磁シールド部材の主要部の斜視図である。
図11】ワイヤハーネス10に適用可能な第5応用例に係る電磁シールド部材における被覆シールド素線の溶接部分の断面図である。
図12】ワイヤハーネス10に適用可能な第6応用例に係る電磁シールド部材における被覆シールド素線の溶接部分の断面図である。
図13】ワイヤハーネス10に適用可能な応用例に係るシールド素線群の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される電磁シールド部材およびそれを備えるワイヤハーネスは、例えば自動車などの車両用である。
【0028】
<ワイヤハーネス>
まず、図1〜4を参照しつつ、実施形態に係るワイヤハーネス10の構成について説明する。図1,2が示すように、ワイヤハーネス10は、電磁シールドの対象となる主電線81を含むモールド樹脂付電線9と電磁シールド部材1とを備えている。
【0029】
<モールド樹脂付電線>
モールド樹脂付電線9は、端子付電線80と樹脂モールド部7とを含む。端子付電線80は、主電線81およびその端部に接続された端子82を有する。なお、図1,2は、主電線81の一方の端部の付近におけるモールド樹脂付電線9の構造を示している。モールド樹脂付電線9は、主電線81の両端部において図1,2が示す構造を有している。
【0030】
主電線81は、例えば線状の導体である芯線811とその外周面に形成された絶縁被覆812とを有する絶縁電線である。この場合、主電線81の端部において、芯線811の端部が絶縁被覆812の端から延び出て形成されている。
【0031】
主電線81の芯線811は、例えば銅またはアルミニウムを主成分とする金属の線材である。また、主電線81の絶縁被覆812は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどを主成分とする絶縁性(非導電性)の合成樹脂の被覆である。
【0032】
端子82は、主電線81における芯線811の端部に接続された金具である。例えば、端子82が芯線811の端部に溶接によって接続されること、または端子82が芯線811の端部に圧着されることなどが考えられる。端子82は、例えば銅もしくは黄銅などの銅合金の部材またはそれらの部材に、錫(Sn)のメッキもしくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された導電性の部材である。
【0033】
樹脂モールド部7は、主電線81の芯線811における絶縁被覆812から延び出た部分全体と端子82における芯線811と接触する部分とを密封する状態に成形された合成樹脂の部材である。樹脂モールド部7は、端子付電線80における絶縁被覆812の端部から端子82の一部までの領域をインサート部とするインサート成形によって形成される。
【0034】
樹脂モールド部7は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレートまたはポリアミドなどの絶縁性の合成樹脂の成形部材である。
【0035】
本実施形態においては、モールド樹脂付電線9は、複数の端子付電線80を備え、樹脂モールド部7は、複数の端子付電線80における主電線81の端部をそれらが並列に並ぶ状態で一括して保持している。なお、主電線81が1本であることも考えられる。
【0036】
<電磁シールド部材>
電磁シールド部材1は、複数の被覆シールド素線2と端部保持部材3とを含む。図3は、電磁シールド部材1における被覆シールド素線2の端部周辺の縦断面図である。なお、図1〜3は、複数の被覆シールド素線2の一方の端部の付近における電磁シールド部材1の構造を示している。電磁シールド部材1は、複数の被覆シールド素線2の両端部において図1〜3が示す構造を有している。
【0037】
図3が示すように、被覆シールド素線2各々は、導電性の芯線21およびその芯線21の外周面に形成された絶縁被覆22を有する絶縁電線である。複数の素線が撚り合わされた撚り線が芯線21として採用されれば、被覆シールド素線2の柔軟性を高めることができる。また、芯線21が単線であることも考えられる。
【0038】
例えば、被覆シールド素線2は、線状の導体(芯線21)とその導体の表面に樹脂塗料の塗布によって形成された絶縁被覆(エナメル被覆)とを有するエナメル線である。被覆シールド素線2がエナメル線である場合、その絶縁被覆22は、例えば変性ポリウレタン、ポリエスルテイミドまたはポリアミドイミドなどを含む絶縁性の合成樹脂の被覆である。
【0039】
なお、被覆シールド素線2の絶縁被覆22が、芯線21の外側に押出成形によって形成された被覆であることも考えられる。この場合の絶縁被覆22は、例えばポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどを主成分とする絶縁性の合成樹脂の被覆である。
【0040】
被覆シールド素線2の芯線21は、例えば銅またはアルミニウムなどを主成分とする金属の線材である。全ての被覆シールド素線2の芯線が同じ金属材料の線材であることも考えられるが、電磁シールド部材1がそれぞれ材料の異なる芯線21を有する複数種類の被覆シールド素線2を含むことも考えられる。
【0041】
例えば、電磁シールド部材1において、軽量なアルミニウムを主成分とする芯線21を有する被覆シールド素線2と、シールド特性に優れた銅を主成分とする芯線21を有する被覆シールド素線2とが混在していることが考えられる。複数種類の芯線21の割合は、例えば電磁シールド部材1の軽量化とシールド特性とのバランスを考慮して決定される。
【0042】
端部保持部材3は、環状に形成された導電性の部材である。本実施形態において、端部保持部材3は、金属製の環状保持部31とシールドシェル部材30とを含む。図1が示すように、環状保持部31は、複数の被覆シールド素線2各々の端部20が環状に並ぶ状態で溶接されている金属製の部材である。
【0043】
図1,2が示すように、シールドシェル部材30は、環状の筒部301およびその筒部301に連なった留め部302を有する導電性の部材である。留め部302は、モールド樹脂付電線9の接続先の機器を収容する金属製の不図示の筐体に留められる部分である。留め部302は筒部301からその外側に形成されている。
【0044】
シールドシェル部材30の筒部301には、主電線81の通路を成す貫通孔300が形成されている。シールドシェル部材30は、筒部301の貫通孔300と筐体の開口とが重なる状態で筐体に取り付けられる。
【0045】
図1,2が示す例では、シールドシェル部材30を筐体に留めるためのネジが通されるネジ孔303が留め部302に形成されている。シールドシェル部材30は、例えばアルミニウムの部材または表面にメッキが形成された鉄などの金属の部材である。
【0046】
本実施形態においては、モールド樹脂付電線9の樹脂モールド部7が、シールドシェル部材30における筒部301の貫通孔300に嵌め入れられる。これにより、樹脂モールド部7を貫通する端子付電線80が、筒部301の貫通孔300を貫通した状態になる。
【0047】
図2が示すように、本実施形態における環状保持部31は、曲げ変形可能な金属製の帯状部材がシールドシェル部材30における筒部301の外周面に接続された構造を有する。金属製の帯状部材(環状保持部31)には、複数の被覆シールド素線2各々における芯線21の端部が並んで溶接されている。
【0048】
本実施形態においては、複数の被覆シールド素線2が交差せずに並列に並ぶ状態で被覆シールド素線2各々の端部20が金属製の帯状部材(環状保持部31)に溶接されている。そして、被覆シールド素線2の端部20が溶接された帯状部材は、シールドシェル部材30の筒部301の外周面に沿って環状に曲げられ、その筒部301に接続される。
【0049】
以下の説明において、被覆シールド素線2各々の端部20における環状保持部31に溶接された部分のことを溶接部200と称する。また、環状保持部31における被覆シールド素線2各々の端部20が溶接された部分のことを被溶接部4と称する。
【0050】
例えば、帯状部材(環状保持部31)は、その長手方向における両端部どうしがカシメ加工により連結され、これにより環状に形成される。また、帯状部材(環状保持部31)の両端部が折り重ねられることによって連結されることも考えられる。また、帯状部材(環状保持部31)が筒部301に対するカシメ加工により圧着されることも考えられる。
【0051】
図1が示す例では、環状保持部31は、溶接部200を筒部301との間に挟み込む状態で筒部301に接続されている。これにより、被覆シールド素線2の端部20が筒部301と環状保持部31との間に挟み込まれるため、被覆シールド素線2が環状保持部31から外れにくくなる。
【0052】
複数の被覆シールド素線2各々の両端部各々が、2つの端部保持部材3各々によって環状に保持されている。そのため、複数の被覆シールド素線2は、2つの端部保持部材3により、主電線81の周囲を囲む筒状に並ぶ状態に保持されている。
【0053】
図3は、電磁シールド部材1における被覆シールド素線2の端部20周辺の断面図である。図3が示すように、環状保持部31の被溶接部4には、芯線支え部41とその芯線支え部41に隣接する凹部42とが形成されている。
【0054】
芯線支え部41は、被覆シールド素線2の芯線21と接触する部分である。凹部42は、芯線支え部41よりも窪んで形成されている。凹部42は、被覆シールド素線2の溶接時に被覆シールド素線2の端部20から溶出した絶縁被覆22が流れ込む部分である。
【0055】
図4は、電磁シールド部材1を製造する途中の被覆シールド素線溶接工程を示す図である。溶接部200は、被覆シールド素線2各々における絶縁被覆22が形成されたままの端部20が溶接機90で加熱されることによって形成される。溶接機90の典型例は超音波溶接機であり、この場合、溶接機90は被覆シールド素線2の端部20に押し当てられる超音波ホーン901と、被覆シールド素線2の端部20を環状保持部31を介して支えるアンビル902とを有する。
【0056】
被覆シールド素線2の端部20は、超音波ホーン901から出力される超音波振動によって温度が上昇する。これにより、被覆シールド素線2の端部20において、絶縁被覆22が溶出し、さらに、露出した芯線21が芯線支え部41に溶着する。芯線21における芯線支え部41に溶着した部分である溶接部200は環状保持部31と電気的に接続される。
【0057】
以下の説明において、被覆シールド素線2の溶接の際に被覆シールド素線2の端部20から溶出した絶縁被覆22のことを溶出被覆220と称する。溶出被覆220は、被溶接部4の凹部42内へ流れ込んだ後に固化する。従って、溶出被覆220が芯線21と芯線支え部41との間に残留しにくい。
【0058】
より具体的には、被覆シールド素線2各々の端部20は、環状保持部31の被溶接部4に沿う状態で溶接機90によって溶接される。その際、被覆シールド素線2各々の端部20における芯線支え部41および凹部42に対向する部分の絶縁被覆22は、溶けて凹部42内へ流れ込む。さらに、被覆シールド素線2各々の端部20における芯線支え部41に対向する部分の芯線21は、絶縁被覆22の溶出によって露出し、芯線支え部41に接触する。さらにその芯線21が、芯線支え部41に溶着する。
【0059】
本実施形態において、芯線支え部41は、凹部42側に対し反対側の部分から凹部42の縁まで徐々に深くなる傾斜面を含む。図3,4が示す例では、芯線支え部41の表面全体が傾斜面を成している。そのため、溶出被覆220が、芯線支え部41に対向する位置から傾斜面(芯線支え部41の表面)を伝って凹部42内へ流れ込みやすい。
【0060】
<効果>
電磁シールド部材1において、被覆シールド素線2各々は、シールド素線として機能する絶縁電線である。また、金属製の環状保持部31に、被覆シールド素線2の端部20の芯線21と接触する芯線支え部41と溶出被覆220が流れ込む凹部42とが形成されている。
【0061】
被覆シールド素線2各々の端部20は、芯線支え部41および凹部42の位置において、絶縁被覆22が形成されたままの状態で加熱される。この場合、加熱された絶縁被覆22が被覆シールド素線2の端部20から凹部42内へ溶出する。そのため、被覆シールド素線2の端部20において、溶出被覆220が芯線21と芯線支え部41との間に残留することによる溶接不良が生じることを防止できる。その結果、被覆シールド素線2の芯線21が確実に環状保持部31に対して接合される。
【0062】
従って、電磁シールド部材1が採用されれば、被覆シールド素線2の端部20の絶縁被覆22を予め剥がす工程を要することなく、被覆シールド素線2の端部20を簡易に環状保持部31に接合することができ、ひいては被覆シールド素線2の端部20を簡易に筐体接地できる。
【0063】
また、電磁シールド部材1が採用されれば、被覆シールド素線2各々における芯線21の端部を、シールドシェル部材30に接続される前の平坦な帯状部材(環状保持部31)に対して溶接することができる。そのため、被覆シールド素線2を容易に環状保持部31(帯状部材)に溶接することができる。
【0064】
<第1応用例>
次に、図5,6を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第1応用例に係る電磁シールド部材1Aおよびそれを備える第1応用例に係るワイヤハーネス10Aについて説明する。図5は電磁シールド部材1Aが備えるシールド素線群2Xの平面図であり、図6はワイヤハーネス10Aの斜視図である。図5,6において、図1〜4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、第1応用例におけるワイヤハーネス10と異なる点について説明する。
【0065】
シールド素線群2Xは、図1,2に示された複数の被覆シールド素線2にシールド素線連結部5が追加された構成を有している。以下の説明において、3本以上の被覆シールド素線2のうち、帯状部材(環状保持部31)における最も第一端寄りに溶接されたものを第一被覆シールド素線201と称し、帯状部材(環状保持部31)における最も第二端寄りに溶接されたものを第二被覆シールド素線202と称し、残りの全てを第三被覆シールド素線203と称する。
【0066】
第一被覆シールド素線201および第二被覆シールド素線202は、環状保持部31に保持されることによって環状に並ぶ状態において隣り合う2本の被覆シールド素線2である。
【0067】
シールド素線連結部5は、柔軟性を有する部材である。シールド素線連結部5は、3本以上の被覆シールド素線2各々における両端部20の間の中間部どうしを、第一被覆シールド素線201と第二被覆シールド素線202との間以外において間隔を空けて連結している。
【0068】
即ち、シールド素線連結部5は、全ての第三被覆シールド素線203の中間部を間隔を空けて一連に連結している。さらに、シールド素線連結部5は、第一被覆シールド素線201の中間部と少なくとも1本の第三被覆シールド素線203の中間部とを間隔を空けて連結している。さらに、シールド素線連結部5は、第二被覆シールド素線202の中間部と少なくとも1本の第三被覆シールド素線203の中間部とを間隔を空けて連結している。
【0069】
なお、図5が示す例では、シールド素線連結部5は、隣り合う被覆シールド素線2どうしを間隔を空けて連結しているが、そうでない例も考えられる。例えば、シールド素線連結部5が2つ隣りの被覆シールド素線2どうしを連結することなども考えられる。
【0070】
シールド素線連結部5は、例えば柔軟性を有する合成樹脂の部材である。シールド素線連結部5を構成する合成樹脂は、例えば弾性を有するエラストマー、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンなどであることが考えられる。
【0071】
シールド素線連結部5は、環状保持部31に溶接される前の複数の被覆シールド素線2に形成される。即ち、シールド素線群2Xの端部が環状保持部31に溶接される前の時点において、複数の被覆シールド素線2は柔軟なシールド素線連結部5によってすだれ状に一体化されている。
【0072】
すだれ状のシールド素線群2Xの両端部各々は、2つの環状保持部31(帯状部材)各々に溶接されて溶接部200を形成している。さらに、図6が示すように、2つの環状保持部31各々は環状に曲げられる。図6が示す例では、帯状部材(環状保持部31)の両端部は、折り重ねられることによって連結された連結部310を形成している。これにより電磁シールド部材1Aが形成される。なお、図6には、シールドシェル部材30の描画が省略されている。
【0073】
シールド素線群2Xを含む電磁シールド部材1Aは、主電線81の経路に沿って曲げて取り付けられた場合であっても、被覆シールド素線2相互の間隔が概ね一定に維持され、複数の被覆シールド素線2が周方向において一部に偏ることなく概ね一様に分布する。その結果、被覆シールド素線2の間に部分的に大きな隙間が形成されてしまってシールド性能が悪化することを防止できる。
【0074】
さらに、複数の被覆シールド素線2がすだれ状に一体化されているため、被覆シールド素線2各々を環状保持部31に溶接する際における複数の被覆シールド素線2の取り扱いが容易となる。
【0075】
<第2応用例>
次に、図7を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第2応用例に係る電磁シールド部材1Bについて説明する。図7はワイヤハーネス10Bの斜視図である。図7において、図1〜6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。なお、図7においてもシールドシェル部材30の描画が省略されている。
【0076】
電磁シールド部材1Bは、電磁シールド部材1Aの応用例である。以下、電磁シールド部材1Bにおけるワイヤハーネス10Aと異なる点について説明する。
【0077】
電磁シールド部材1Bは、電磁シールド部材1Aの構成に加えてシールド素線結束部材6を備えている。シールド素線結束部材6は、第一被覆シールド素線201の中間部と第二被覆シールド素線202の中間部とを間隔を空けて緩やかに結束する部材である。
【0078】
例えば、シールド素線結束部材6は、第一被覆シールド素線201の中間部および第二被覆シールド素線202の中間部に螺旋状に緩やかに巻き付けられた紐状の部材である。図7が示す例では、紐状のシールド素線結束部材6の端部60が接着剤などによって環状保持部31に固定されている。
【0079】
また、電磁シールド部材1Bが採用されれば、シールド素線結束部材6が、シールド素線連結部5で連結されていない第一被覆シールド素線201とその隣の第二被覆シールド素線202との間に大きな隙間が形成されてしまうことも防止できる。従って、シールド性能の悪化をより確実に防止できる。
【0080】
<第3応用例>
次に、図8,9を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第3応用例に係る電磁シールド部材1Cについて説明する。図8は電磁シールド部材1Cの主要部の斜視図である。図9は、電磁シールド部材1Cを製造する途中の被覆シールド素線溶接工程を示す図である。図8,9において、図1〜7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Cにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0081】
電磁シールド部材1Cにおいて、筒部301とその筒部301と連なる留め部302とを有する金属製のシールドシェル部材30それ自体が、端部保持部材3を成している。
【0082】
即ち、電磁シールド部材1Cにおいて、被覆シールド素線2各々の端部20が、シールドシェル部材30の筒部301に対して直接溶接されている。図8が示す例では、被覆シールド素線2各々の端部20は、筒部301の外周面に溶接されている。
【0083】
そして、シールドシェル部材30の筒部301の外周面に、芯線支え部41および凹部42を有する被溶接部4が形成されている。従って、溶出被覆220は、筒部301の外周面に形成された凹部42内に流れ込む。
【0084】
図9は、被覆シールド素線2の端部20がシールドシェル部材30の筒部301の被溶接部4に溶接されている様子を示す。図9が示す例では、溶接機90の超音波ホーン901が筒部301の被溶接部4に沿う被覆シールド素線2の端部20に押し当てられている。さらに、溶接機90のアンビル902が、被覆シールド素線2の端部20を筒部301を介して支えている。
【0085】
また、図9が示す例において、溶接機90のアンビル902は、筒部301の貫通孔300に挿入可能なように、片持ち梁状に張り出して形成されている。
【0086】
電磁シールド部材1Cが採用されれば、被覆シールド素線2とシールドシェル部材30の筒部301との間に介在する部材を省くことができるため、電磁シールド部材1Cの構成部品の点数を少なくすることができる。
【0087】
<第4応用例>
次に、図10を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第4応用例に係る電磁シールド部材1Dについて説明する。図10は電磁シールド部材1Dの主要部の斜視図である。図10において、図1〜8に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0088】
電磁シールド部材1Dは電磁シールド部材1Cの応用例である。以下、電磁シールド部材1Dにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0089】
電磁シールド部材1Dにおいて、複数の被覆シールド素線2は、一般的な編組線と同様に筒状に編み込まれた構造を有している。
【0090】
そして、電磁シールド部材1Dにおいても、被覆シールド素線2各々の端部20が、シールドシェル部材30の筒部301に対して直接溶接されている。図10が示す例では、被覆シールド素線2各々の端部20は、筒部301の外周面に形成された被溶接部4に溶接されている。
【0091】
電磁シールド部材1Dが採用される場合も、被覆シールド素線2とシールドシェル部材30の筒部301との間に介在する部材を省くことができる。また、シールド素線連結部5およびシールド素線結束部材6を省くことができる。そのため、電磁シールド部材1Dの構成部品の点数を少なくすることができる。
【0092】
<第5応用例>
次に、図11を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第5応用例に係る電磁シールド部材1Eにおける被覆シールド素線2の溶接構造について説明する。図11は電磁シールド部材1Eにおける被覆シールド素線2の溶接部分の断面図である。図11において、図1〜10に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Eにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0093】
電磁シールド部材1Eの環状保持部31にも、被溶接部4と同じ役割を果たす被溶接部4Aが形成されている。被溶接部4Aは、被覆シールド素線2の端部20の芯線21と接触する芯線支え部41と、それに隣接する凹部42Aとが形成された部分である。
【0094】
被溶接部4Aにおいて、凹部42Aは、芯線支え部41よりも窪んで形成されている。但し、本応用例における凹部42Aは、環状保持部31を貫通する孔である。この場合、被覆シールド素線2の溶接時に、凹部42Aに流れ込んだ溶出被覆220の一部または全部が、凹部42A(貫通孔)を通過する。なお、図11は、溶出被覆220の一部が凹部42A内に残留した状態を示す。
【0095】
図11が示すような被溶接部4Aが形成された電磁シールド部材1Eが採用される場合も、電磁シールド部材1が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0096】
<第6応用例>
次に、図12を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第6応用例に係る電磁シールド部材1Fにおける被覆シールド素線2の溶接構造について説明する。図12は電磁シールド部材1Fにおける被覆シールド素線2の溶接部分の断面図である。図12において、図1〜11に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Fにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0097】
電磁シールド部材1Fの環状保持部31にも、被溶接部4と同じ役割を果たす被溶接部4Bが形成されている。被溶接部4Bは、被覆シールド素線2の端部20の芯線21と接触する芯線支え部41Bと、それに隣接する凹部42Bとが形成された部分である。
【0098】
被溶接部4Bにおいて、一対の芯線支え部41Bは、それらの周囲の部分よりも突出して形成された凸部である。被覆シールド素線2の溶接部200は、凸状の一対の芯線支え部41Bの頭頂部分に溶接されている。一方、凹部42Bは、一対の芯線支え部41Bの間の部分である。一対の芯線支え部41Bが突出しているため、それらの間の凹部42Bは相対的に窪んで形成されている。
【0099】
図12が示すような被溶接部4Bが形成された電磁シールド部材1Fが採用される場合も、電磁シールド部材1が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0100】
<シールド素線群の応用例>
次に、図13を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な応用例に係るシールド素線群2Yについて説明する。図13はシールド素線群2Yの平面図である。図13において、図1〜9に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、シールド素線群2Yにおけるシールド素線群2Xと異なる点について説明する。
【0101】
シールド素線群2Yもシールド素線群2Xと同様に複数の被覆シールド素線2がシールド素線連結部5Aによってすだれ状に連結された構造を有している。
【0102】
シールド素線連結部5Aは、柔軟性を有する紐状の部材であり、シールド素線連結部5と同じ機能を果たす。シールド素線連結部5Aは、3本以上の被覆シールド素線2各々における両端部20の間の中間部どうしを、第一被覆シールド素線201と第二被覆シールド素線202との間以外において間隔を空けて連結している。
【0103】
図13が示す例では、シールド素線連結部5Aは、被覆シールド素線2各々の中間部に結び付けられた複数の結び部52とそれら結び部52を繋ぐ紐状基部51とを有している。このようなシールド素線連結部5Aによって複数の被覆シールド素線2が連結された構造を有するシールド素線群2Yが、シールド素線群2Xの代わりに採用されることも考えられる。
【0104】
<その他の応用例>
電磁シールド部材1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fにおいて、環状保持部31に溶接されるシールド素線が、複数の被覆シールド素線2と複数の裸電線とを含むことも考えられる。この場合、シールド素線として採用される裸電線各々は同種の金属の電線である。
【0105】
なお、本発明に係る電磁シールド部材およびワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態および各応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態および各応用例を適宜、変形するまたは一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F 電磁シールド部材
10,10A,10B ワイヤハーネス
2 被覆シールド素線
20 被覆シールド素線の端部
200 溶接部
201 第一被覆シールド素線
202 第二被覆シールド素線
203 第三被覆シールド素線
21 被覆シールド素線の芯線
22 被覆シールド素線の絶縁被覆
220 溶出被覆
2X,2Y シールド素線群
3 端部保持部材
30 シールドシェル部材
300 シールドシェル部材の貫通孔
301 筒部
302 留め部
303 ネジ孔
31 環状保持部
310 環状保持部の連結部
4,4A,4B 被溶接部
41,41B 芯線支え部
42,42A,42B 凹部
5,5A シールド素線連結部
51 紐状基部
52 結び部
6 シールド素線結束部材
60 シールド素線連結部材の端部
7 樹脂モールド部
80 端子付電線
81 主電線
811 主電線の芯線
812 主電線の絶縁被覆
82 端子
9 モールド樹脂付電線
90 溶接機
901 超音波ホーン
902 アンビル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13