特許第6107745号(P6107745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安川電機の特許一覧

特許6107745電力変換装置、及び、電力変換装置の異常診断方法
<>
  • 特許6107745-電力変換装置、及び、電力変換装置の異常診断方法 図000002
  • 特許6107745-電力変換装置、及び、電力変換装置の異常診断方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107745
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】電力変換装置、及び、電力変換装置の異常診断方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/297 20060101AFI20170327BHJP
【FI】
   H02M5/297
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-107190(P2014-107190)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-223059(P2015-223059A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年8月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】高山 茂典
(72)【発明者】
【氏名】末島 賢志
(72)【発明者】
【氏名】猪木 敬生
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2733807(EP,A2)
【文献】 特開2010−148334(JP,A)
【文献】 特開2008−086088(JP,A)
【文献】 特開2013−106468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/00 − 5/48
H02M 7/42 − 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を、周波数が異なる交流電力に変換する電力変換部と、
前記電力変換部を駆動するゲート駆動部と、
前記ゲート駆動部に供給するゲート駆動信号を生成するゲート駆動信号発生部と、
前記ゲート駆動部と前記ゲート駆動信号発生部との間に接続され、外部の上位装置からの指令に応じて前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給及び遮断を切り換える2つの遮断部と、
前記外部の上位装置からの指令が、前記ゲート駆動信号を供給させる指令であるときに、前記2つの遮断部のうちの少なくとも一方の遮断部の異常状態を診断する診断部と、
前記診断部によって前記一方の遮断部が異常状態であると診断された場合に、前記2つの遮断部のうちの他方の遮断部に、前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給を遮断させる遮断制御部と、
を備え、
前記一方の遮断部は、出力信号と関連したフィードバック信号を生成し、
前記診断部は、前記指令と前記フィードバック信号とに基づいて、前記一方の遮断部の異常状態を診断する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記診断部は、前記一方の遮断部が異常状態であると診断した場合に、前記遮断制御部に通知し、
前記遮断制御部は、前記診断部からの通知に応じて前記他方の遮断部への前記指令の供給を遮断することによって、前記他方の遮断部に、前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給を遮断させる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記2つの遮断部はそれぞれ、出力信号と関連したフィードバック信号を生成し、
前記診断部は、前記指令と前記2つの遮断部からのフィードバック信号とに基づいて、前記2つの遮断部の異常状態をそれぞれ診断する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記2つの遮断部のうちの何れか一方の遮断部が異常状態であると診断した場合に、前記遮断制御部に通知し、
前記遮断制御部は、前記診断部からの通知に応じて前記2つの遮断部のうちの他方の遮断部への前記指令の供給を遮断することによって、前記他方の遮断部に、前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給を遮断させる、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記他方の遮断部は、前記指令の供給の遮断に応じて電源電力の供給を遮断することによって、前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給を遮断する、
請求項2又は4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記ゲート駆動信号は、PWM信号、又は、方形波信号である、請求項1〜5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
交流電力を、周波数が異なる交流電力に変換する電力変換部と、前記電力変換部を駆動するゲート駆動部と、前記ゲート駆動部に供給するゲート駆動信号を生成するゲート駆動信号発生部と、前記ゲート駆動部と前記ゲート駆動信号発生部との間に接続され、外部の上位装置からの指令に応じて前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給及び遮断を切り換える2つの遮断部とを備える電力変換装置の異常診断方法であって、
前記外部の上位装置からの指令が、前記ゲート駆動信号を供給させる指令であるときに、前記2つの遮断部のうちの少なくとも一方の遮断部の異常状態を、前記一方の遮断部からの出力信号と関連したフィードバック信号と前記指令とに基づいて診断し、
前記一方の遮断部が異常状態であると診断された場合に、前記2つの遮断部のうちの他方の遮断部に、前記ゲート駆動部への前記ゲート駆動信号の供給を遮断させる、
電力変換装置の異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、及び、電力変換装置の異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インバータ等を用いて電力変換を行って交流電力を生成する電力変換装置があり、この種の電力変換装置はしばしば、モータを駆動するために用いられる。特許文献1には、この種の電力変換装置として、インバータを用いて直流電力から交流電力を生成するモータ制御装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のモータ制御装置は、インバータを駆動するゲート駆動回路と、ゲート駆動回路に与えるPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成するPWM発生回路と、ゲート駆動回路とPWM発生回路との間に直列に接続された2つの3ステートバッファとを備え、これらの3ステートバッファのゲートの開閉は、外部の2つの停止スイッチとそれぞれ連動する。このモータ制御装置によれば、外部の2つの停止スイッチによって2つの3ステートバッファのゲートを閉じ、ゲート駆動回路へのPWM信号の供給を遮断し、インバータを停止し、モータを停止することができる。これにより、従来、モータとインバータとの間に設けていたコンタクタ(Electromagnetic Contactor)を省略でき、省スペース化を実現し、システムトータルコストを削減できる。また、停止スイッチ及び3ステートバッファによる安全停止回路の二重化によって、安全性を高めることができる。
【0004】
また、このモータ制御装置は、3ステートバッファの異常状態を示す信号の論理積を生成する。これにより、外部の上位装置によって安全停止回路自体の異常状態を検出することができ、安全性をより高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5370724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、従来に比して更に安全性を高めることができる電力変換装置、及び、電力変換装置の異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電力変換装置は、交流電力を、周波数が異なる交流電力に直接変換する電力変換部と、電力変換部を駆動するゲート駆動部と、ゲート駆動部に供給するゲート駆動信号を生成するゲート駆動信号発生部と、ゲート駆動部とゲート駆動信号発生部との間に接続され、外部の上位装置からの指令に応じてゲート駆動部へのゲート駆動信号の供給及び遮断を切り換える2つの遮断部と、2つの遮断部のうちの少なくとも一方の遮断部の異常状態を診断する診断部と、診断部によって一方の遮断部が異常状態であると診断された場合に、2つの遮断部のうちの他方の遮断部に、ゲート駆動部へのゲート駆動信号の供給を遮断させる遮断制御部とを備え、一方の遮断部は、出力信号と関連したフィードバック信号を生成し、診断部は、指令とフィードバック信号とに基づいて、一方の遮断部の異常状態を診断する。
【0008】
また、本開示の電力変換装置の異常診断方法は、交流電力を、周波数が異なる交流電力に直接変換する電力変換部と、電力変換部を駆動するゲート駆動部と、ゲート駆動部に供給するゲート駆動信号を生成するゲート駆動信号発生部と、ゲート駆動部とゲート駆動信号発生部との間に接続され、外部の上位装置からの指令に応じてゲート駆動部へのゲート駆動信号の供給及び遮断を切り換える2つの遮断部とを備える電力変換装置の異常診断方法であって、2つの遮断部のうちの少なくとも一方の遮断部の異常状態を、前記一方の遮断部からの出力信号と関連したフィードバック信号と前記指令とに基づいて診断し、一方の遮断部が異常状態であると診断された場合に、2つの遮断部のうちの他方の遮断部に、ゲート駆動部へのゲート駆動信号の供給を遮断させる。
【0009】
また、本開示の電力変換装置は、交流電力を、周波数が異なる交流電力に直接変換する電力変換回路と、電力変換回路を駆動するゲート駆動回路と、ゲート駆動回路に供給するゲート駆動信号を生成するゲート駆動信号発生回路と、ゲート駆動回路とゲート駆動信号発生回路との間に直列に接続され、外部の上位装置からの指令に応じてゲート駆動回路へのゲート駆動信号の供給及び遮断を切り換える2つの遮断回路(ゲートバッファ)と、2つの遮断回路のうちの少なくとも一方の遮断回路の異常状態を診断する診断手段(診断回路)と、診断手段によって一方の遮断回路が異常状態であると診断された場合に、2つの遮断回路のうちの他方の遮断回路に、ゲート駆動回路へのゲート駆動信号の供給を遮断させる遮断制御手段(遮断制御回路)とを備え、一方の遮断回路は、出力信号と関連したフィードバック信号を生成し、診断手段は、指令とフィードバック信号とに基づいて、一方の遮断回路の異常状態を診断してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、従来に比して更に安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る電力変換装置を示す回路ブロック図である。
図2】別の実施形態に係る電力変換装置を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電力変換装置を示す回路ブロック図である。図1に示す電力変換装置1は、電力変換部(電力変換回路)10と、PWM発生部(PWM発生回路、ゲート駆動信号発生部、ゲート駆動信号発生回路)20と、ゲート駆動部(ゲート駆動回路)30と、2つの遮断部(遮断回路、ゲートバッファ)40,50と、診断部(診断手段、診断回路)60と、遮断制御部(遮断制御手段、遮断制御回路)70と、フォトカプラ41,51,61とを備える。
【0014】
電力変換部10は、複数のスイッチング素子を含み、交流電力を、周波数が異なる交流電力に直接変換する。例えば、三相交流モータを駆動するために、三相交流電力を、周波数が異なる三相交流電力に直接変換する場合、電力変換部10はマトリクスコンバータ回路(サイクロコンバータ回路)を含む。マトリクスコンバータ回路は、三相交流電源と三相交流モータとの間に9個の双方向スイッチを含む。まず、3個の双方向スイッチの一端は三相交流電源のU相、V相、W相にそれぞれ接続され、当該3個の双方向スイッチの他端は三相交流モータのU相に接続される。また、別の3個の双方向スイッチの一端は三相交流電源のU相、V相、W相にそれぞれ接続され、当該3個の双方向スイッチの他端は三相交流モータのV相に接続される。また、残りの3個の双方向スイッチの一端は三相交流電源のU相、V相、W相にそれぞれ接続され、当該3個の双方向スイッチの他端は三相交流モータのW相に接続される。そして、9個の双方向スイッチはそれぞれ、2つのスイッチング素子から構成される。すなわち、電力変換部10は、18個のスイッチング素子を含むこととなる。これらのスイッチング素子の一例としては、FET(Field effect transistor)やIGBT(Insulated GateBipolar Transistor)等が挙げられる。電力変換部10は、PWM発生部20及びゲート駆動部30によって駆動される。
【0015】
PWM発生部20は、外部の上位装置からの指令(例えば、後述するHWBB1,HWBB2)に基づいて、電力変換部10を駆動するためのPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成する。例えば、PWM発生部20は、電力変換部10における18個のスイッチング素子それぞれのために、6つのPWM信号を生成する。PWM発生部20は、PWM信号をゲート駆動部30に供給する。また、PWM発生部20は、外部の上位装置からの指令に応じて、ゲート駆動部30へのPWM信号の供給を停止する。
【0016】
ゲート駆動部30は、PWM発生部20からのPWM信号に基づいて、電力変換部10を駆動するための駆動信号を生成する。例えば、ゲート駆動部30は、PWM発生部20からの6つのPWM信号に基づいて、電力変換部10における18個のスイッチング素子を駆動するための18個の駆動信号をそれぞれ生成する。PWM発生部20とゲート駆動部30との間には、2つの遮断部40,50が直列に接続されている。
【0017】
遮断部40,50はそれぞれ、外部の上位装置からの指令HWBB1,HWBB2に応じて、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給及び遮断を切り換える。例えば、遮断部40,50はそれぞれ、6つのPWM信号のために6つの3ステートバッファを含む。指令HWBB1,HWBB2はそれぞれ、フォトカプラ41,51を介して遮断部40,50のイネーブル端子に入力される。
【0018】
ここで、指令HWBB1,HWBB2は、モータを停止するために電力変換部10への駆動信号の供給を停止する指令、すなわち、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断する指令である。指令HWBB1,HWBB2は、ノーマリオン信号を含み、例えば、モータを動作するときにはLowレベルであり、モータを停止するときにHighレベルとなる。指令HWBB1,HWBB2は、特許文献1に記載の2つの停止スイッチそれぞれからの信号を含んでもよい。
【0019】
例えば、指令HWBB1が動作を示すLowレベルである場合、フォトカプラ41がオン状態となり、遮断部40のイネーブル端子にLowレベルの動作指令HWBB1が入力される。すると、このLowレベルの動作指令HWBB1に応じて3ステートバッファのゲートが開き、遮断部40は、PWM発生部20からのPWM信号を遮断部50に供給する。同様に、指令HWBB2が動作を示すLowレベルである場合、フォトカプラ51がオン状態となり、遮断部50のイネーブル端子にLowレベルの動作指令HWBB2が入力される。すると、このLowレベルの動作指令HWBB2に応じて3ステートバッファのゲートが開き、遮断部50は、遮断部40からのPWM信号をゲート駆動部30に供給する。
【0020】
一方、指令HWBB1が停止を示すHighレベルである場合、フォトカプラ41がオフ状態となり、遮断部40のイネーブル端子にHighレベルの停止指令HWBB1が入力される。すると、このHighレベルの停止指令HWBB1に応じて3ステートバッファのゲートが閉じて、3ステートバッファの出力がハイインピーダンスとなり、遮断部40は、PWM発生部20から遮断部50へのPWM信号の供給を遮断する。同様に、指令HWBB2が停止を示すHighレベルである場合、フォトカプラ51がオフ状態となり、遮断部50のイネーブル端子にHighレベルの停止指令HWBB2が入力される。すると、このHighレベルの停止指令HWBB2に応じて3ステートバッファのゲートが閉じて、3ステートバッファの出力がハイインピーダンスとなり、遮断部50は、遮断部40からゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断する。これにより、特許文献1同様に、遮断部40,50による安全停止回路の二重化によって、安全性を高めることができる。
【0021】
また、遮断部40,50はそれぞれ、自身の正常状態及び異常状態を示す情報として、自身の出力信号に関連したフィードバック信号FB1,FB2を診断部60に供給する。例えば、遮断部40,50が正常状態である場合、フィードバック信号FB1,FB2は、Lowレベルである。一方、遮断部40,50が異常状態である場合には、フィードバック信号FB1,FB2は、Highレベルとなる。
【0022】
診断部60は、外部の上位装置からの指令HWBB1と、遮断部40からのフィードバック信号FB1とに基づいて、遮断部40の正常状態及び異常状態を診断する。また、診断部60は、外部の上位装置からの指令HWBB2と、遮断部50からのフィードバック信号FB2とに基づいて、遮断部50の正常状態及び異常状態を診断する。診断部60は、遮断部40,50のうちの何れか一方が異常状態であると診断した場合、遮断制御部70に通知する。
【0023】
診断部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random AccessMemory)等を含み、ROMに記憶されているプログラムをCPUで実行することによって構成される。
【0024】
診断部60は、指令HWBB1が動作を示すLowレベルである場合、Lowレベルの動作指令HWBB1を遮断部40に供給するように、Lowレベルの信号SO1を遮断制御部70に通知するようにプログラムされ、構成されている。また、診断部60は、指令HWBB2が動作を示すLowレベルである場合、Lowレベルの動作指令HWBB2を遮断部50に供給するように、Lowレベルの信号SO2を遮断制御部70に通知するようにプログラムされ、構成されている。
【0025】
また、診断部60は、指令HWBB1が動作を示すLowレベルである場合、フィードバック信号FB1がLowレベルであれば、遮断部40が正常状態であると診断し、遮断制御部70へのLowレベルの信号SO2の供給を継続するようにプログラムされ、構成されている。同様に、診断部60は、指令HWBB2が動作を示すLowレベルである場合、フィードバック信号FB2がLowレベルであれば、遮断部50が正常状態であると診断し、遮断制御部70へのLowレベルの信号SO1の供給を継続するようにプログラムされ、構成されている。
【0026】
一方、指令HWBB1が動作を示すLowレベルである場合に、フィードバック信号FB1がHighレベルならば、診断部60は、遮断部40が異常状態であると診断し、異常を示すHighレベルの信号SO2にて遮断制御部70に通知するようにプログラムされ、構成されている。同様に、指令HWBB2が動作を示すLowレベルである場合、フィードバック信号FB2がHighレベルならば、診断部60は、遮断部50が異常状態であると診断し、異常を示すHighレベルの信号SO1にて遮断制御部70に通知するようにプログラムされ、構成されている。
【0027】
また、診断部60は、遮断部40,50の異常状態を示す信号の論理積信号EDMを生成するようにプログラムされ、構成されている。信号EDMは、フォトカプラ61を介して外部の上位装置へ供給される(EDM監視)。これにより、特許文献1同様に、外部の上位装置によって安全停止回路自体の異常状態を検出することができ、安全性を高めることができる。
【0028】
遮断制御部70は、診断部60によって一方の遮断部40が異常状態であると診断された場合、他方の遮断部50への指令HWBB2の供給を遮断する。一方、遮断制御部70は、診断部60によって一方の遮断部50が異常状態であると診断された場合、他方の遮断部40への指令HWBB1の供給を遮断する。
【0029】
例えば、遮断制御部70は、遮断部40,50のイネーブル端子に対してそれぞれ直列に介在する2つのトランジスタ71,72を含む。トランジスタ71のコレクタは遮断部40のイネーブル端子に接続され、エミッタにはフォトカプラ41を介して指令HWBB1が入力され、ベースには診断部60からの信号SO1が入力される。一方、トランジスタ72のコレクタは遮断部50のイネーブル端子に接続され、エミッタにはフォトカプラ51を介して指令HWBB2が入力され、ベースには診断部60からの信号SO2が入力される。
【0030】
例えば、遮断制御部70におけるトランジスタ71は、診断部60からLowレベルの信号SO1を受けてオン状態となり、指令HWBB1を遮断部40に供給する。また、遮断制御部70におけるトランジスタ72は、診断部60からLowレベルの信号SO2を受けてオン状態となり、指令HWBB2を遮断部50に供給する。
【0031】
一方、遮断制御部70におけるトランジスタ71は、診断部60から遮断部50の異常を示すHighレベルの信号SO1を受けてオフ状態となり、遮断部40への指令HWBB1の供給を遮断する。また、遮断制御部70におけるトランジスタ72は、診断部60から遮断部40の異常を示すHighレベルの信号SO2を受けてオフ状態となり、遮断部50への指令HWBB2の供給を遮断する。
【0032】
次に、電力変換装置の動作、及び、異常診断方法を示す。まず、Lowレベルの動作指令HWBB1,HWBB2が入力されると、診断部60からの信号SO1,SO2がLowレベルとなり、遮断制御部70におけるトランジスタ71,72がオン状態となり、遮断部40,50にLowレベルの動作指令HWBB1,HWBB2が供給される。
【0033】
遮断部40,50が正常状態である場合、遮断部40,50における3ステートバッファのゲートが開き、PWM発生部20からゲート駆動部30へPWM信号が供給される。このとき、遮断部40,50のフィードバック信号FB1,FB2がLowレベルとなる。すると、診断部60によって、Lowレベルの動作指令HWBB1,HWBB2とLowレベルのフィードバック信号FB1,FB2とに基づいて遮断部40,50が正常状態であると診断し、信号SO1,SO2をLowレベルのままとする。すると、遮断制御部70によって、遮断部40,50にLowレベルの動作指令HWBB1,HWBB2を供給し続け、遮断部40,50によって、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給が継続される。
【0034】
一方、例えば、遮断部40が異常状態となると、遮断部40のフィードバック信号FB1がHighレベルとなる。すると、診断部60によって、Lowレベルの動作指令HWBB1とHighレベルのフィードバック信号FB1とに基づいて遮断部40が異常状態であると診断し、異常を示すHighレベルの信号SO2にて遮断制御部70に通知する。すると、遮断制御部70におけるトランジスタ72がオフ状態となり、遮断制御部70によって、遮断部50への指令HWBB2の供給を遮断する。すると、正常状態であるもう一方の遮断部50によって、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断することができる。
【0035】
また、例えば、遮断部50が異常状態となると、遮断部50のフィードバック信号FB2がHighレベルとなる。すると、診断部60によって、Lowレベルの動作指令HWBB2とHighレベルのフィードバック信号FB2とに基づいて遮断部50が異常状態であると診断し、異常を示すHighレベルの信号SO1にて遮断制御部70に通知する。すると、遮断制御部70におけるトランジスタ71がオフ状態となり、遮断制御部70によって、遮断部40への指令HWBB1の供給を遮断する。すると、正常状態であるもう一方の遮断部40によって、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断することができる。
【0036】
この実施形態の電力変換装置によれば、2つの遮断部40,50のうちの少なくとも一方の遮断部の異常状態を診断する診断部60と、診断部60によって一方の遮断部が異常状態であると診断された場合に、2つの遮断部40,50のうちの他方の遮断部に、ゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断させる遮断制御部70とを内蔵するので、外部の上位装置を介さずに安全停止回路としての遮断部40,50自体の異常状態を診断、一方の遮断部が異常状態である場合に、正常状態である他方の遮断部を遮断制御することができ、安全性をより高めることができる。
【0037】
ところで、欧州エレベータ安全規格によれば、モータと電力変換装置との間のコンタクタ(ElectromagneticContactor)を省略するためには、安全規格IEC61508のSIL3レベル相当であることが要求されている。一方、特許文献1に記載のモータ制御装置は、安全規格IEC61508のSIL2レベル相当であり、欧州向けエレベータに用いられる場合、コンタクタ(Electromagnetic Contactor)を省略できず、欧州向けエレベータの小型化、低コスト化が実現できなかった。しかしながら、この実施形態の電力変換装置は、安全規格IEC61508のSIL3レベル相当であるので、欧州向けエレベータに用いられる場合、コンタクタ(Electromagnetic Contactor)を省略でき、欧州向けエレベータの小型化、低コスト化が可能である。
【0038】
また、この実施形態では、2つの遮断部40,50のうちの何れか一方の遮断部が、出力信号と関連したフィードバック信号を生成し、診断部60が、指令と当該一方の遮断部からのフィードバック信号とに基づいて、当該一方の遮断部の異常状態を診断してもよい。この場合、診断部60は、当該一方の遮断部が異常状態であると診断した場合に、遮断制御部70に通知し、遮断制御部70は、診断部60からの通知に応じて2つの遮断部40,50のうちの他方の遮断部への指令の供給を遮断することによって、他方の遮断部に、ゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断させてもよい。
【0039】
また、この実施形態では、上述したように、2つの遮断部40,50の両方が、出力信号と関連したフィードバック信号を生成し、診断部60が、指令HWBB1,HWBB2と2つの遮断部40,50からのフィードバック信号FB1,FB2とに基づいて、2つの遮断部40,50の両方の異常状態を診断してもよい。この場合、診断部60は、2つの遮断部40,50のうちの何れか一方の遮断部が異常状態であると診断した場合に、遮断制御部70に通知し、遮断制御部70は、診断部60からの通知SO1,SO2に応じて2つの遮断部40,50のうちの他方の遮断部への指令の供給を遮断することによって、他方の遮断部に、ゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断させてもよい。
【0040】
また、図2に、別の実施形態に係る電力変換装置の回路ブロック図を示す。図2に示す電力変換装置1Aは、電力変換装置1において、遮断部40に代えて遮断部40Aを備える点で本実施形態と異なっている。電力変換装置1Aの他の構成は、電力変換装置1と同一である。
【0041】
遮断部40Aは、例えば、6つのPWM信号のために6つのフォトカプラを含む。また、遮断部40Aは、6つのフォトカプラへの電源電圧の供給及び遮断を切り換えるシャットオフ回路42を含み、シャットオフ回路42はトランジスタを含む。例えば、遮断制御部70からLowレベルの指令HWBB1が供給される場合、シャットオフ回路42におけるトランジスタがオン状態となり、シャットオフ回路42はフォトカプラに電源電力Vccを供給し、フォトカプラがオン状態となり、PWM発生部20からゲート駆動部30へPWM信号が供給される。一方、例えば、遮断制御部70からHighレベルの指令HWBB1が供給される場合、シャットオフ回路42におけるトランジスタがオフ状態となり、シャットオフ回路42はフォトカプラへの電源電力Vccの供給を遮断し、フォトカプラがオフ状態となり、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給が遮断される。
【0042】
また、遮断部50が異常状態となり、遮断制御部70からLowレベルの指令HWBB1の供給が遮断されると、シャットオフ回路42におけるトランジスタがオフ状態となり、シャットオフ回路42はフォトカプラへの電源電力Vccの供給を遮断し、フォトカプラがオフ状態となり、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給が遮断される。このように、遮断部40Aは、遮断制御部70からLowレベルの指令HWBB1の供給が遮断されると、シャットオフ回路42によってフォトカプラへの電源電力Vccの供給を遮断し、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給を遮断する。
【0043】
また、遮断部40Aは、シャットオフ回路42の異常状態をフィードバック信号FB1によって診断部60に通知してもよい。この場合、診断部60は、シャットオフ回路42からのフィードバック信号FB1に基づいて、シャットオフ回路42の異常状態を診断する。例えば、シャットオフ回路42のトランジスタが開放異常状態である場合、診断部60は、動作を示すLowレベルの指令HWBB1と、シャットオフ回路42の異常状態を示すフィードバック信号FB1とから、シャットオフ回路42のトランジスタの異常状態を診断できるようにプログラムされ、構成されていてもよい。また、シャットオフ回路42のトランジスタが短絡異常状態である場合、診断部60は、停止を示すHighレベルの指令HWBB1と、シャットオフ回路42の異常状態を示すフィードバック信号FB1とから、シャットオフ回路42のトランジスタの異常状態を診断できるようにプログラムされ、構成されていてもよい。
【0044】
この別の実施形態の電力変換装置1Aによれば、遮断部40Aがフォトカプラとシャットオフ回路42とを含み、シャットオフ回路42によってフォトカプラへの電源電力の供給を遮断することができるので、PWM発生部20からゲート駆動部30へのPWM信号の供給を確実に遮断することができ、安全性をより高めることができる。
【0045】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、電力変換装置1における遮断部40,50の配列順序、及び、電力変換装置1Aにおける遮断部40A,50の配列順序は、変更してもよい。また、電力変換装置1Aにおける遮断部50が、遮断部40Aと同一の構成であってもよい。また、本実施形態では、2つの遮断部を備える安全停止回路の二重化を例示したが、3つ以上の遮断部を備えることにより三重化以上の安全停止回路を実現可能である。また、本実施形態では、ゲート駆動部30に供給するゲート駆動信号を生成するゲート駆動信号発生部として、PWM信号を生成するPWM発生部20を例示したが、ゲート駆動信号発生部はこれに限定されない。例えば、ゲート駆動信号発生部は、PWM信号に代えて方形波信号(スイッチのON/OFF信号)を生成してもよい。また、診断部60は論理回路等の回路素子の組み合わせ回路でも実現可能であることは、本開示内容より、当業者によって認識できる。
【符号の説明】
【0046】
1,1A…電力変換装置、10…電力変換部、20…PWM発生部、30…ゲート駆動部、40,40A,50…遮断部、41,51,61…フォトカプラ、42…シャットオフ回路、60…診断部、70…遮断制御部、71,72…トランジスタ。
図1
図2