(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る電源装置1を含む構成を示す図である。
電源装置1は車両の電源装置であり、車両に搭載される負荷に電力を供給する。
【0015】
電源装置1は、モータジェネレータ2を備える。モータジェネレータ2はインバータを備えており、制御に応じて、インバータを介して発電機として電力を供給し、またはインバータを介して負荷として電力を消費する。
【0016】
モータジェネレータ2に、第一スイッチ3および第一回路部10が接続される。第一スイッチ3と第一回路部10とは直列に配置される。第一回路部10は、鉛電池11および補機12を備える。鉛電池11および補機12は、モータジェネレータ2に対して互いに並列に配置される。補機12は負荷の例である。補機12以外の負荷が第一回路部10に含まれてもよい。なお、鉛電池11は、たとえばアイドリングストップ鉛電池ではない通常の鉛電池であるが、アイドリングストップ鉛電池をとくに除外するものではない。
【0017】
また、モータジェネレータ2に対して、第一スイッチ3および第一回路部10と並列に、第二スイッチ4および第二回路部20が接続される。第二スイッチ4と第二回路部20とは直列に配置される。第二回路部20はニッケル水素電池21を備える。ニッケル水素電池21は、モータジェネレータ2に対し、鉛電池11と並列に配置される。第二回路部20は、ニッケル水素電池21に接続される負荷を含んでもよい。
【0018】
また、モータジェネレータ2に対して、第一スイッチ3および第一回路部10と並列に、第三スイッチ5および第三回路部30(スタータ回路部)が接続される。すなわち、第三回路部30は、モータジェネレータ2に対し、鉛電池11と並列に配置され、また、第一スイッチ3、第二スイッチ4および5は、モータジェネレータ2に対して互いに並列に配置される。第三スイッチ5と第三回路部30とは直列に配置される。第三回路部30は、キャパシタ31およびスタータ32を備える。キャパシタ31およびスタータ32は、モータジェネレータ2に対して互いに並列に配置される。
【0019】
電源装置1は、上述の構成のうち、少なくとも、モータジェネレータ2、第一スイッチ3、第二スイッチ4、第三スイッチ5、鉛電池11、ニッケル水素電池21およびキャパシタ31を備えて構成され、負荷(たとえば補機12およびスタータ32)に電力を供給する。とくに、電源装置1は、3つの蓄電装置(鉛電池11、ニッケル水素電池21およびキャパシタ31)を並列に配置した構成であるということができる。
【0020】
とくに図示しないが、電源装置1は、電源装置1の動作を制御する制御装置を備える。制御装置はたとえば演算手段および記憶手段を備えるコンピュータ(たとえばマイクロプロセッサ等)によって構成される。また、以下ではとくに明記しないが、
図1に示す各構成要素の制御は、この制御装置により実行される。
【0021】
第一スイッチ3は、オンおよびオフに制御可能であり、第一スイッチ3がオンである場合には、第一回路部10(とくに鉛電池11)はモータジェネレータ2に接続され、第一スイッチ3がオフである場合には、第一回路部10(とくに鉛電池11)はモータジェネレータ2から遮断される。なお、本明細書において、ある回路要素が他の回路要素から「遮断される」という表現は、これらの回路要素の双方を通って電流が流れるような回路が構成されていないことを意味し、必ずしもこれらの回路要素が互いに完全に絶縁されていることまでは意味しない。
【0022】
第一スイッチ3がオフである場合には、鉛電池11のみが補機12に電力を供給する。第一スイッチ3がオンである場合に、モータジェネレータ2が回生動作中であれば、鉛電池11に代わって、または鉛電池11と共に、モータジェネレータ2が補機12に電力を供給する。さらに、第一スイッチ3がオンである場合に、第二スイッチ4または第三スイッチ5がオンであれば、鉛電池11に代わって、または鉛電池11と共に、ニッケル水素電池21またはキャパシタ31が補機12に電力を供給する。
【0023】
同様に、第二スイッチ4は、オンおよびオフに制御可能であり、第二スイッチ4がオンである場合には、第二回路部20(すなわちニッケル水素電池21)はモータジェネレータ2に接続され、第二スイッチ4がオフである場合には、第二回路部20(すなわちニッケル水素電池21)はモータジェネレータ2から遮断される。
【0024】
さらに同様に、第三スイッチ5は、オンおよびオフに制御可能であり、第三スイッチ5がオンである場合には、第三回路部30(とくにキャパシタ31)はモータジェネレータ2に接続され、第三スイッチ5がオフである場合には、第三回路部30(とくにキャパシタ31)はモータジェネレータ2から遮断される。
【0025】
第三スイッチ5がオフである場合には、キャパシタ31のみがスタータ32に電力を供給する。第三スイッチ5がオンである場合に、モータジェネレータ2が回生動作中であれば、キャパシタ31に代わって、またはキャパシタ31と共に、モータジェネレータ2がスタータ32に電力を供給する。さらに、第三スイッチ5がオンである場合に、第一スイッチ3または第二スイッチ4がオンであれば、キャパシタ31に代わって、またはキャパシタ31と共に、鉛電池11またはニッケル水素電池21がスタータ32に電力を供給する。
【0026】
また、電源装置1の制御装置は、鉛電池11、ニッケル水素電池21およびキャパシタ31の上限電圧を予め記憶している。これらの上限電圧とは、たとえば制御の基準となる所定の閾値を意味する。鉛電池11の上限電圧は、鉛電池11のガス発生電位であってもよく、その場合にはたとえば14.4Vである。ニッケル水素電池21の上限電圧はたとえば16Vである。キャパシタ31の上限電圧はたとえば18Vである。電源装置1の制御装置は、鉛電池11、ニッケル水素電池21およびキャパシタ31それぞれの電圧が、対応する上限電圧を超えないように制御してもよい。このような制御の具体的内容は、当業者が適宜設計可能である。
【0027】
ニッケル水素電池21は、鉛電池11の上限電圧よりも高い電圧において充電可能な蓄電装置の例である。鉛電池11の上限電圧よりも高い電圧において充電可能な蓄電装置は、ニッケル水素電池21以外の二次電池またはキャパシタを用いても構成可能である。たとえばリチウムイオン電池を用いてもよい。また、キャパシタ31は、鉛電池11およびニッケル水素電池21の上限電圧よりも高い電圧において充電可能な蓄電装置の例である。
【0028】
次に、実施の形態1に係る電源装置1の動作を説明する。
図2は、様々な車両要求に対応する電源装置1の動作を示す表である。
車両要求とは、車両に要求される動作である。たとえば、アイドリングストップしていたエンジン(内燃機関)が再始動する場合、モータジェネレータ2が力行動作を行う場合、および、モータジェネレータ2が回生動作を行う場合のそれぞれにおいて、電源装置1は各スイッチの状態を異なるパターンに制御する。
【0029】
アイドリングストップしていたエンジン(内燃機関)が再始動する場合には、電源装置1は、第三スイッチ5をオフに制御した後にスタータ32を動作させ、少なくともスタータ32の動作が終了するまで第三スイッチ5をオフに維持する。すなわち、スタータ32が動作している間は第三スイッチ5をオフとすることにより、鉛電池11およびニッケル水素電池21をスタータ32から遮断する。この結果、スタータ32への電力供給はキャパシタ31のみから行われ、鉛電池11およびニッケル水素電池21はスタータ32から独立して動作するので、補機12への電力供給を十分に維持することができる。
【0030】
なお、この場合、第一スイッチ3および第二スイッチ4の制御は任意であり、当業者が適宜設計可能である。
【0031】
モータジェネレータ2が力行動作を行う場合には、電源装置1は、第一スイッチ3をオフに、第二スイッチ4をオンに、第三スイッチ5をオフに、それぞれ制御する。すなわち、3つの蓄電装置のうちニッケル水素電池21のみをモータジェネレータ2に接続する。この結果、モータジェネレータ2への電力供給はニッケル水素電池21のみから行われ、鉛電池11およびキャパシタ31はモータジェネレータ2から独立して動作する。したがって、鉛電池11は補機12への電力供給を十分に維持することができ、また、キャパシタ31はスタータ32の動作に備えて十分な電力の蓄電を維持することができる。
【0032】
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合には、蓄電装置の電圧(たとえばキャパシタ31の電圧)に応じ、電源装置1は異なる制御を行う。
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合において、キャパシタ31の電圧が14.4V以下である場合には、電源装置1は、第一スイッチ3、第二スイッチ4および第三スイッチ5をすべてオンに制御する。すなわち、3つの蓄電装置をすべてモータジェネレータ2に接続する。ここで、14.4Vという値は、3つの蓄電装置それぞれの上限電圧のうち、最も低い値である。
【0033】
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合において、キャパシタ31の電圧が14.4Vを超え16V以下である場合には、電源装置1は、第一スイッチ3をオフに制御し、第二スイッチ4および第三スイッチ5をいずれもオンに制御する。すなわち、鉛電池11をモータジェネレータ2から遮断し、ニッケル水素電池21およびキャパシタ31のみをモータジェネレータ2に接続する。ここで、16Vという値は、3つの蓄電装置それぞれの上限電圧のうち、中間の値(2番目に低い値)である。
【0034】
この場合には、上限電圧を超えた蓄電装置(この場合には鉛電池11)については充電が禁止され、上限電圧以下の蓄電装置(この場合にはニッケル水素電池21およびキャパシタ31)については充電が実行される。
【0035】
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合において、キャパシタ31の電圧が16Vを超え18V以下である場合には、電源装置1は、第一スイッチ3および第二スイッチ4をいずれもオフに制御し、第三スイッチ5をオンに制御する。すなわち、鉛電池11およびニッケル水素電池21をモータジェネレータ2から遮断し、キャパシタ31のみをモータジェネレータ2に接続する。ここで、18Vという値は、3つの蓄電装置それぞれの上限電圧のうち、最も高い値である。
【0036】
この場合にも、上限電圧を超えた蓄電装置(この場合には鉛電池11およびニッケル水素電池21)については充電が禁止され、上限電圧以下の蓄電装置(この場合にはキャパシタ31のみ)については充電が実行される。
【0037】
このように、回生動作において、各蓄電装置の上限電圧に応じてきめ細かい制御を行うことにより、上限電圧の低い蓄電装置(鉛電池11)の制約を受けず、各蓄電装置の上限電圧により適合した充電を行うことができ、回生電力をより有効に活用できる。
【0038】
以上のように、実施の形態1に係る電源装置1は、各蓄電装置の特性に適合した動作を行うので、各蓄電装置の能力を最大限に引き出すことができる。
たとえば、各蓄電装置が充電可能な電圧に合わせて接続構成を制御するので、より広い電圧範囲での回生動作に対応でき、回生電力の有効活用により燃費が向上する。また、たとえば、高価なアイドリングストップ鉛電池に代えて通常の鉛電池11を用いることができ、その場合には電源装置1全体を低コスト化することができる。
【0039】
上述の実施の形態1では、電源装置1は3つのスイッチを備えるが、変形例として、これらのスイッチのうち1つを省略してもよい。すなわち、電源装置1は、第一スイッチ3、第二スイッチ4および第三スイッチ5のうち少なくとも2つを備えていればよい。
【0040】
たとえば第一スイッチ3を省略した場合には、鉛電池11はエンジン再始動および力行動作においても放電することになるが、3つの蓄電装置の上限電圧に応じた回生電力の有効活用については実施の形態1と同様に可能である。
【0041】
また、第二スイッチ4を省略した場合には、キャパシタ31の電圧が16Vを超えた場合に回生動作を行わない構成としてもよい。この場合であっても、モータジェネレータ2の力行動作に係る効果については、実施の形態1と同様に得ることができる。また、鉛電池11の上限電圧を超える範囲の一部においては回生可能であるので、3つの蓄電装置の上限電圧に応じた回生電力の有効活用については、少なくとも一部の効果を得ることができる。
【0042】
さらに、第三スイッチ5を省略した場合には、キャパシタ31は力行動作においても放電することになるが、3つの蓄電装置の上限電圧に応じた回生電力の有効活用については実施の形態1と同様に可能である。また、エンジン再始動の際には、第一スイッチ3および第二スイッチ4をオフとすれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0043】
このように、スイッチのうち1つを省略することにより、電源装置1を全体として低コスト化することができる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1では、各スイッチは、モータジェネレータ2に対し、それぞれ1つの蓄電装置のみの断接を制御していた。実施の形態2は、実施の形態1における第三スイッチ5を省略した上で、1つのスイッチが、モータジェネレータ2に対して、キャパシタ31を含む2つの蓄電装置の断接を制御する構成としたものである。以下、実施の形態1との相違点を説明する。
【0045】
図3は、実施の形態2に係る電源装置1aを含む構成を示す図である。実施の形態1(
図1)と異なり、第三スイッチ5が省略されており、実施の形態1における第一回路部10と第三回路部30とを含む第三回路部30a(スタータ回路部)が、第一スイッチ3aに接続されている。すなわち、鉛電池11、補機12、キャパシタ31およびスタータ32は、いずれも第一スイッチ3aと直列に配置されており、第一スイッチ3aがキャパシタ31の断接を制御する。
図4は、様々な車両要求に対応する電源装置1aの動作を示す表である。
図4に示す制御の具体的内容は、当業者が適宜変更可能である。
【0046】
また、実施の形態2において、第一スイッチ3aでなく第二スイッチ4がキャパシタ31の断接を制御するように構成してもよい。
図5は、実施の形態2のこのような変形例に係る電源装置1bを含む構成を示す図である。実施の形態1(
図1)と異なり、第三スイッチ5が省略されており、実施の形態1における第二回路部20と第三回路部30とを含む第三回路部30b(スタータ回路部)が、第二スイッチ4bに接続されている。すなわち、ニッケル水素電池21、キャパシタ31およびスタータ32は、いずれも第二スイッチ4bと直列に配置されており、第二スイッチ4bがキャパシタ31の断接を制御する。
図6は、様々な車両要求に対応する電源装置1bの動作を示す表である。
図6に示す制御の具体的内容は、当業者が適宜変更可能である。
【0047】
以上のように、実施の形態2に係る電源装置1aおよび1bは、各蓄電装置の特性に適合した動作を行うので、各蓄電装置の能力を最大限に引き出すことができる。
たとえば、回生電力の有効活用により燃費が向上する。また、たとえば、高価なアイドリングストップ鉛電池に代えて通常の鉛電池11を用いることができ、その場合には電源装置1aまたは1b全体を低コスト化することができる。
【0048】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1において、第一スイッチ3と第三スイッチ5とを直列に配置する構成としたものである。
図7は、実施の形態3に係る電源装置1cを含む構成を示す図である。第一スイッチ3cおよび第三スイッチ5cと、第二スイッチ4とは、モータジェネレータ2に対して並列に配置される。また、第三スイッチ5cおよび第三回路部30c(スタータ回路部)は、第一スイッチ3cと直列に配置される。さらに、第三スイッチ5cおよび第三回路部30cは、モータジェネレータ2に対して、第一回路部10c(とくに鉛電池11)と並列に配置される。
【0049】
図8は、様々な車両要求に対応する電源装置1cの動作を示す表である。
図8に示す制御の具体的内容は、当業者が適宜変更可能である。
【0050】
アイドリングストップしていたエンジンが再始動する場合には、電源装置1は、第三スイッチ5cをオフに制御した後にスタータ32を動作させ、少なくともスタータ32の動作が終了するまで第三スイッチ5cをオフに維持する。すなわち、スタータ32が動作している間は第三スイッチ5cをオフとすることにより、鉛電池11およびニッケル水素電池21をスタータ32から遮断する。この結果、スタータ32への電力供給はキャパシタ31のみから行われ、鉛電池11およびニッケル水素電池21はスタータ32から独立して動作するので、補機12への電力供給を十分に維持することができる。
【0051】
なお、この場合、第一スイッチ3cおよび第二スイッチ4の制御は任意であり、当業者が適宜設計可能である。
【0052】
モータジェネレータ2が力行動作を行う場合には、電源装置1は、第一スイッチ3cをオフに、第二スイッチ4をオンに、第三スイッチ5cをオフに、それぞれ制御する。すなわち、3つの蓄電装置のうちニッケル水素電池21のみをモータジェネレータ2に接続するとともに、キャパシタ31を補機12から遮断する。この結果、モータジェネレータ2への電力供給はニッケル水素電池21のみから行われ、鉛電池11およびキャパシタ31はモータジェネレータ2から独立して動作する。したがって、鉛電池11は補機12への電力供給を十分に維持することができ、また、キャパシタ31はスタータ32の動作に備えて十分な電力の蓄電を維持することができる。
【0053】
なお、力行動作のための鉛電池11の放電を許容できる場合等には、第一スイッチ3cをオンに制御してもよい。
【0054】
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合には、蓄電装置の電圧(たとえばキャパシタ31の電圧)に応じ、電源装置1は異なる制御を行う。
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合において、キャパシタ31の電圧が14.4V以下である場合には、電源装置1は、第一スイッチ3c、第二スイッチ4および第三スイッチ5cをすべてオンに制御する。すなわち、3つの蓄電装置をすべてモータジェネレータ2に接続する。
【0055】
モータジェネレータ2が回生動作を行う場合において、キャパシタ31の電圧が14.4Vを超え16V以下である場合には、電源装置1は、第一スイッチ3cをオフに制御し、第二スイッチ4をオフに制御する。第三スイッチ5cの制御は任意であり、当業者が適宜設計可能である。すなわち、鉛電池11およびキャパシタ31をモータジェネレータ2から遮断し、ニッケル水素電池21のみをモータジェネレータ2に接続する。
【0056】
以上のように、実施の形態3に係る電源装置1cは、各蓄電装置の特性に適合した動作を行うので、各蓄電装置の能力を最大限に引き出すことができる。
たとえば、回生電力の有効活用により燃費が向上する。また、たとえば、高価なアイドリングストップ鉛電池に代えて通常の鉛電池11を用いることができ、その場合には電源装置1c全体を低コスト化することができる。