(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程において、前記電源端子の前記蓋部に対する取付姿勢を、前記蓋部の周縁部の前記円筒部に溶接される溶接部分(100)からガラスシール部分(84)までの距離が最も近くなる第1姿勢よりも、前記溶接部分から前記ガラスシール部分までの距離が最も遠くなる第2姿勢に近い姿勢にする、
請求項1に記載の圧縮機の製造方法。
前記シェルはSPCE(steel plate cold deep drawn extra)−Sによって形成されており、前記蓋部は、SS400によって形成されている、
請求項3に記載の圧縮機の製造方法。
前記蓋部の周縁部の前記円筒部に溶接される溶接部分(100)から前記ガラスシール部分までの高さは、13.7mm以下である、請求項1に記載の圧縮機の製造方法。
前記電源端子は、前記蓋部の周縁部の前記円筒部に溶接される溶接部分(100)からガラスシール部分(84)までの距離が最も近くなる第1姿勢よりも、前記溶接部分から前記ガラスシール部分までの距離が最も遠くなる第2姿勢に近い姿勢で、前記蓋部に配置されている、
請求項7に記載の圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、冷却用の不活性ガスを容器内へ流す設備が必要となり、製造コストが大幅に増加する。
【0006】
そこで、本発明の課題は、製造コストの増加を抑えるとともに、溶接によるひずみを軽減可能な圧縮機の製造方法、および圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る圧縮機の製造方法は、周縁部を含む金属製のシェルと、シェルを貫通し貫通部分がガラスシールされている複数の電極とを有する電源端子と、電源端子が配置された蓋部と円筒部とを有し圧縮機構を覆うケーシングとを備え、円筒部の外径が100mm未満の圧縮機の製造方法であって、第1工程と、第2工程と、を備える。第1工程は、
電源端子を、蓋部において蓋部の中心よりも蓋部の周縁部寄りに配置し、電源端子のシェルの周縁部をケーシングの蓋部に溶接する。第2工程は、蓋部の周縁部のうち電源端子に最も近い最接近ポイントから
蓋部の中心を中心として150°〜210°の範囲にあるポイントを溶接開始ポイントとして円筒部に蓋部の周縁部を全周溶接する。
【0008】
第1観点に係る圧縮機の製造方法では、全周溶接の溶接開始ポイントを電源端子に最も近い最接近ポイントから150°〜210°の範囲とすることによって、入熱量が最大となる溶接開始ポイントからガラスシール部分までの距離を確保でき、ガラスシール部分への入熱量を削減可能となる。このため、溶接によって電源端子部分にひずみが生じることを抑制できる。
【0009】
また、従来は、入熱による影響を低減するために、蓋部の周縁部の溶接される部分から電源端子までの高さを所定の距離以上に確保していた。しかしながら、第1観点に係る圧縮機の製造方法では、入熱量を削減できるため、蓋部の周縁部の溶接される部分から電源端子までの高さを低くでき、圧縮機全体の高さを低くできる。
【0010】
本発明の第2観点に係る圧縮機の製造方法は、第1観点に係る方法であって、電源端子から周縁部までの部分の蓋部の平均板厚が3mm未満である。
【0011】
第2観点に係る圧縮機の製造方法では、入熱量を削減可能なため、平均板厚を3mm未満と薄くでき、材料費等にかかるコストを安くできる。
【0012】
本発明の第3観点に係る圧縮機の製造方法は、第1観点に係る方法であって、第1工程において、電源端子の蓋部に対する取付姿勢を、蓋部の周縁部の円筒部に溶接される溶接部分からガラスシール部分までの距離が最も近くなる第1姿勢よりも、溶接部分からガラスシール部分までの距離が最も遠くなる第2姿勢に近い姿勢にする。
【0013】
第3観点に係る圧縮機の製造方法では、ガラスシール部分を出来るだけ、溶接される蓋部の周縁部から遠ざけることが出来、全周溶接において電源端子近傍を溶接する際の入熱によるガラスシール部分に与えるひずみを軽減できる。
【0014】
本発明の第4観点に係る圧縮機の製造方法は、第3観点に係る方法であって、シェルはSPCE-S(steel plate cold deep drawn extra)によって形成されており、蓋部は、SS400によって形成されている。
【0015】
第4観点に係る圧縮機の製造方法では、シェルの材質として蓋部の材質よりも熱伝導率が低い材質を用いることによって、電源端子の前記蓋部に対する取付姿勢を第1姿勢よりも第2姿勢に近い姿勢にすることによるガラスシール部分への入熱の低減効果をより大きくすることが出来る。
【0016】
本発明の第5観点に係る圧縮機の製造方法は、第1観点にかかる方法であって、蓋部の周縁部の円筒部に溶接される溶接部分からガラスシール部分までの高さは、13.7mm以下である。
【0017】
第5観点に係る圧縮機の製造方法では、入熱量を削減可能なため、このように溶接部分からガラスシール部分までの高さを13.7mm以下と低くでき、圧縮機全体の高さを低くできる。
【0018】
本発明の第6観点に係る圧縮機の製造方法は、第1観点にかかる方法であって、蓋部の周縁部の円筒部に溶接される溶接部分から電源端子までの長さは、22.12mm以下である。
【0019】
第6観点に係る圧縮機の製造方法では、入熱量を削減可能なため、このように溶接部分から電源端子までの長さを22.12mm以下と短くでき、圧縮機の高さや径の寸法を小さくできる。
【0020】
本発明の第7観点に係る圧縮機は、電源端子と、ケーシングと、を備える。電源端子は、周縁部を含む金属製のシェルと、シェルを貫通し貫通部分がガラスシールされている複数の電極とを有する。ケーシングは、電源端子が取り付けられた蓋部と、蓋部の周縁部と全周溶接された円筒部とを有し、圧縮機構を覆う。
電源端子は、蓋部において蓋部の中心よりも蓋部の周縁部寄りに配置される。円筒部の外径が100mm未満であり、全周溶接の溶接開始ポイントは、蓋部の周縁部のうち電源端子に最も近い最接近ポイントから
蓋部の中心を中心として150°〜210°の範囲に設けられている。
【0021】
第7観点に係る圧縮機では、全周溶接の溶接開始ポイントが電源端子に最も近い最接近ポイントから150°〜210°の範囲に設けられていることによって、入熱量が最大となる溶接開始ポイントからガラスシール部分までの距離を確保でき、ガラスシール部分への入熱量を削減可能となる。このため、溶接によって電源端子部分にひずみが生じることを抑制できる。
【0022】
また、従来は、入熱による影響を低減するために、蓋部の周縁部の溶接される部分から電源端子までの高さを所定の距離以上に確保していた。しかしながら、第7観点に係る圧縮機では、入熱量を削減できるため、蓋部の周縁部の溶接される部分から電源端子までの高さを低くでき、圧縮機全体の高さを低くできる。
【0023】
本発明の第8観点に係る圧縮機は、第7観点に係る圧縮機であって、電源端子は、蓋部の周縁部の円筒部に溶接される溶接部分からガラスシール部分までの距離が最も近くなる第1姿勢よりも、溶接部分からガラスシール部分までの距離が最も遠くなる第2姿勢に近い姿勢で、蓋部に配置されている。
【0024】
第8観点に係る圧縮機では、ガラスシール部分を出来るだけ、溶接される蓋部の周縁部から遠ざけることが出来、全周溶接において電源端子近傍を溶接する際の入熱によるガラスシール部分に与えるひずみを軽減できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1観点に係る圧縮機の製造方法では、全周溶接の溶接開始ポイントを電源端子に最も近い最接近ポイントから150°〜210°の範囲とすることによって、入熱量が最大となる溶接開始ポイントからガラスシール部分までの距離を確保でき、ガラスシール部分への入熱量を削減可能となる。このため、溶接によって電源端子部分にひずみが生じることを抑制できる。
【0026】
また、入熱量を削減できるため、蓋部の周縁部の溶接される部分から電源端子までの高さを低くでき、圧縮機全体の高さを低くできる。
【0027】
本発明の第2観点に係る圧縮機の製造方法では、材料費等にかかるコストを安くできる。
【0028】
本発明の第3観点に係る圧縮機の製造方法では全周溶接において電源端子近傍を溶接する際の入熱によるガラスシール部分に与えるひずみを軽減できる。
【0029】
本発明の第4観点に係る圧縮機の製造方法では、ガラスシール部分への入熱の低減効果をより大きくすることが出来る。
【0030】
本発明の第5又は第6観点に係る圧縮機の製造方法では、圧縮機全体の高さを低くできる。
【0031】
本発明の第7又は第8観点に係る圧縮機では、ガラスシール部分への入熱量を削減可能となる。このため、溶接によって電源端子部分にひずみが生じることを抑制できる。
【0032】
また、入熱量を削減できるため、蓋部の周縁部の溶接される部分から電源端子までの高さを低くでき、圧縮機全体の高さを低くできる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の一実施形態に係るロータリ圧縮機10およびロータリ圧縮機10の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0035】
(1)全体構成
本実施形態に係るロータリ圧縮機10は、例えば、空気調和装置の室外機に使用され、空気調和装置の冷媒回路の一部を構成する。
図1は、本実施形態のロータリ圧縮機10を示す縦断面図である。
図2は、
図1のロータリ圧縮機10の平面図である。
【0036】
ロータリ圧縮機10は、アキュムレータ500を介して流入する冷媒ガスを圧縮する。アキュムレータ500は、ロータリ圧縮機10内に液状の冷媒が送り込まれないようにするため冷媒の気液分離を行なう。
【0037】
(2)詳細構成
ロータリ圧縮機10は、主に、ケーシング20と、圧縮機構30と、モータ40と、クランクシャフト50と、吸入管60と、吐出管70と、電源端子80とを備える。ロータリ圧縮機10で圧縮される冷媒としては、例えばR32、R22、R410Aおよび二酸化炭素などが用いられる。
【0038】
(2−1)ケーシング
ケーシング20は、主として、圧縮機構30と、モータ40と、クランクシャフト50とを収容している。吸入管60、吐出管70および電源端子80は、ケーシング20を貫通し、ケーシング20と気密を保つように接続されている。
【0039】
ケーシング20は、上下が開口した円筒状の円筒部21と、円筒部21の上側に配置された蓋部22と、円筒部21の下側に配置された底部23とを有する。円筒部21、蓋部22および底部23は、SS400によって形成されている。
【0040】
蓋部22は、主に、上面部220と、周縁部221とを有している。上面部220は、平面視において略円形状である。周縁部221は、上面部220の周縁から下方に向かって伸びており、円筒部21の上端211と接続されている。蓋部22の周縁部221と円筒部21の上端211は、全周溶接によって気密を保つように接続されている。蓋部22の周縁部221は、円筒部21の上端211の内側に入り込んでいる。
図1において、蓋部22と円筒部21の溶接部分100が示されている。溶接部分100については、後述にて詳しく説明する。蓋部22には、電源端子80が配置されており、蓋部22と気密を保つように接続されている。
【0041】
底部23は、皿形状の部材であり、円形状の底面部230と、底面部230の周縁から上方に向かって伸びた周縁部231とを有している。底面部230の周縁部231と円筒部21の下端212が全周溶接されることにより、底部23と円筒部21は気密を保つように連結されている。底部23の周縁部231は、円筒部21の下端212の内側に入り込んでいる。
図1において、底部23と円筒部21の溶接部分101が示されている。
【0042】
本実施形態のロータリ圧縮機10の円筒部21の外径φ1は、100mm未満である。
【0043】
(2−2)圧縮機構
圧縮機構30は、主として、ピストン31と、フロントヘッド32と、シリンダ33と、リアヘッド34と、マフラ35とを有している。
【0044】
フロントヘッド32、シリンダ33およびリアヘッド34は、溶接や締結などによって気密を保つように連結されている。
【0045】
圧縮機構30は、低圧の冷媒ガスを吸引して圧縮し、高圧の冷媒ガスを吐出する。ケーシング20の内部空間であって、圧縮機構30の上方の空間は、圧縮機構30によって圧縮された冷媒が吐出される高圧空間である。この高圧空間のうち、圧縮機構30の上方であって、モータ40の下方の高圧空間を下部高圧空間90とよび、モータ40の上方の高圧空間を上部高圧空間91とよぶ。
【0046】
圧縮機構30は、底部23によって形成される油貯留部92に貯留されている潤滑油に浸かっており、潤滑油は圧縮機構30の摺動部に供給される。
【0047】
圧縮機構30は、フロントヘッド32、シリンダ33およびリアヘッド34によって囲まれて形成される圧縮室36を有する。ピストン31は圧縮室36に配置されている。圧縮室36は、ピストン31によって吸入室と吐出室とに区画されており、吸入室は吸入管60と連通し、吐出室はマフラ空間93(後述する)を介して下部高圧空間90と連通している。
【0048】
ピストン31には、クランクシャフト50の偏心軸部51が嵌め込まれている。クランクシャフト50が回転すると、ピストン31は、偏心軸を中心に回転運動を行なう。ピストン31の回転運動によって、吸入室と吐出室の容積が周期的に変化する。
【0049】
フロントヘッド32は、クランクシャフト50を支持するための上部軸受32aを有している。上部軸受32aは、フロントヘッド32の上面の中央部から上方に向って延びて形成されている。フロントヘッド32は、圧縮機構30の外部空間であるマフラ空間93(後述する)に圧縮室36内の冷媒を吐出するための吐出ポート(図示せず)を有している。
【0050】
シリンダ33は、円筒形状であり、フロントヘッド32とリアヘッド34の間に挟まれている。シリンダ33の上面は、フロントヘッド32によって覆われている。シリンダ33の下面は、リアヘッド34によって覆われている。
【0051】
リアヘッド34は、クランクシャフト50を支持するための下部軸受34aを有している。下部軸受34aは、リアヘッド34の下面の中央部から下方に向って延びて形成されている。
【0052】
マフラ35は、フロントヘッド32の上面に固定されている。マフラ35は、フロントヘッド32の吐出ポート(図示せず)から冷媒が吐出される際に発生する騒音を低減するために設けられている。マフラ35とフロントヘッド32によって囲まれてマフラ空間93が形成されている。図示していないが、マフラ35には孔が形成されており、この孔によってマフラ空間93と下部高圧空間90が連通する。
【0053】
(2−3)モータ
モータ40は、圧縮機構30の上方に配置されるブラシレスDCモータである。モータ40は、主として、ステータ41と、ロータ42とを有している。ステータ41は、円筒形状であり、ケーシング20の円筒部21の内周面21aに固定される。ロータ42は、円柱形状であり、ステータ41の内側に配置される。
【0054】
ステータ41とロータ42の間には、エアギャップ43と呼ばれる隙間が形成されている。ステータ41の外周面には、鉛直方向に沿ってコアカット(図示せず)と呼ばれる溝が形成されている。下部高圧空間90と上部高圧空間91は、エアギャップ43およびコアカットを介して連通している。
【0055】
ステータ41は、主として、ステータコア44と、インシュレータ45とを有する。インシュレータ45は、ステータコア44の鉛直方向の両端面に取り付けられている。ステータコア44は、電磁鋼から形成される部材であり、略筒形状である。ステータコア44の軸方向は、鉛直方向と略一致している。ステータコア44の外周面が、円筒部21の内周面21aと溶接等により固定されている。ステータコア44には、複数のティースが形成されている。ティースにはインシュレータ45とともに導線が巻き付けられており、コイル46が形成されている。
【0056】
ロータ42は、ロータコア47と、上部板48と、下部板49とを有している。ロータコア47は、鉛直方法に積層された複数の金属板から構成される。ロータコア47には、磁石が埋め込まれている。上部板48は、ロータコア47の上端面を覆う金属板である。下部板49は、ロータコア47の下端面を覆う金属板である。
【0057】
(2−4)クランクシャフト
クランクシャフト50は、その回転軸50aが鉛直方向と一致するように配置されており、回転軸50aを中心に回転する。クランクシャフト50は、偏心軸部51を有している。クランクシャフト50の偏心軸部51は、圧縮機構30のピストン31と連結している。クランクシャフト50の上部は、ロータ42と連結されている。クランクシャフト50は、上部軸受32aと下部軸受34aによって回転可能に支持されている。
【0058】
(2−5)吸入管
吸入管60は、ケーシングの円筒部21を貫通している。ケーシング20の内部において、吸入管60の端部は圧縮機構30にはめ込まれている。ケーシング20の外部において、吸入管60の端部は、アキュムレータ500に接続されている。
【0059】
アキュムレータ500において液状成分が分離された冷媒が吸入管60を介して圧縮機構30へと送り込まれる。
【0060】
(2−6)吐出管
吐出管70は、ケーシング20の蓋部22の中央近傍を略鉛直方向に貫通している。ケーシング20の内部において、吐出管70の端部は、上部高圧空間91に配置されている。ケーシング20の外部における吐出管70の端部は、冷媒回路に接続されている。圧縮機構30によって圧縮された冷媒が吐出管70を通して冷媒回路へと供給される。
【0061】
(2−7)電源端子
電源端子80は、外部からモータ40等に電気を供給する端子である。
【0062】
図3は、
図2のAA間矢視断面図である。
図4は、
図2に示す電源端子80近傍の拡大図である。なお、
図3では、電源端子80の半分が断面図として示され、残り半分が正面図として示されている。
【0063】
図2及び
図3に示すように、電源端子80は、蓋部22において中心22aよりも周縁部221よりに配置されている。
【0064】
本実施形態の電源端子80は、シェル81と、3本の電極82とを備えている。
【0065】
シェル81は、SPCE-S(steel plate cold deep drawn extra)を材料として形成されており、蓋部22に形成された貫通孔222を塞ぐように配置されている。シェル81は、電極82を支持する部材であり、蓋部22と接続されている。
【0066】
シェル81は、
図3に示すように、主に、支持部810と、支持部810の周縁に形成された略円筒状の周縁部811とを有する。周縁部811は、その軸方向が鉛直方向と略一致するように、貫通孔222の内側に配置されている。支持部810は、周縁部811の上側の開口を塞ぐように形成されており、蓋部22の上面部220と略並行に配置されている。周縁部811は、そのケーシング20の内部側の端に、径方向外側に向かって拡がった鍔部812(
図3参照)を有している。
【0067】
シェル81は、プロジェクション溶接によって蓋部22と気密を保つように接続されている。
【0068】
シェル81の支持部810には、3つの円形状の貫通孔83(
図2参照)が形成されており、それぞれの貫通孔83内に電極82が配置されている。貫通孔83内には、ガラスシール部分84が形成されており、ガラスシール部分84によって電極82が貫通された状態で貫通孔83は封止されている。また、ガラスシール部分84はガラス材料によって形成されているため、電極82とシェル81の間の絶縁が保たれる。
【0069】
図4に示すように、上方から見て略円形状のシェル81の中心を81aとすると、3つの電極82は、中心81aに対して回転対称に配置されており、3つのガラスシール部分84も、中心81aに対して回転対称に配置されている。詳細には、ガラスシール部分84の中心を84aとすると、3つのガラスシール部分84の中心84aは、中心81aを中心として略120度間隔(図中ではθ1=120°)で配置されている。
【0070】
なお、3つのガラスシール部分84は同様の構成であるが、
図4では、後述する説明において3つのガラスシール部分84の位置の区別を容易にするために、括弧内に番号が付されている。
【0071】
(2−8)溶接部分
上述したように、蓋部22の周縁部221と、円筒部21の上端211は全周溶接されている。
図2では、溶接部分100が、ドットで示されている。電源端子80から最も近い溶接部分100の位置が、ポイントP1として示されている。この電源端子80に最も近い溶接部分の位置を、以下、端子最接近ポイントという。この端子最接近ポイントP1は、全周溶接の際に、電源端子80に最も接近するポイントである。
【0072】
なお、本実施形態では、蓋部22および電源端子80は平面視において略円形状であり、端子最接近ポイントP1は、
図2に示すように、蓋部22の中心22aとシェル81の中心81aを通る鉛直面S1と、溶接部分100の交点である。
【0073】
溶接部分100を全周溶接するときの溶接開始ポイントP0は、蓋部22の中心22aを中心として、端子最接近ポイントP1から150°〜210°の範囲に設定されている。
【0074】
端子最接近ポイントP1から時計回り(矢印B参照)に、中心22aを基準に150°(図中θ2参照)回転した周縁部221上の点がポイントP2と図示され、中心22aとポイントP2を結ぶ鉛直面S2が図示されている。端子最接近ポイントP1から時計回りに、中心22aを基準に210°(図中θ3参照)回転した周縁部221上の点がポイントP3と図示され、中心22aとポイントP3を結ぶ鉛直面S3が図示されている。溶接開始ポイントP0は、鉛直面S2と鉛直面S3によって形成される劣角の範囲(150°〜210°)に設定されている(矢印Cの範囲)。
【0075】
図2では、溶接開始ポイントP0は、一例として端子最接近ポイントP1から180°回転した位置に設定されているが、P1から150°〜210°の範囲であればよい。
【0076】
(2−9)電源端子の取付姿勢
次に、本実施形態の電源端子80の蓋部22に対する取付姿勢について説明する。
【0077】
溶接時の電源端子80への入熱量によってガラスシール部分84とシェル81の間に生じるひずみを低減するために、本実施形態のロータリ圧縮機10では、溶接部分100からガラスシール部分84を遠ざけるような姿勢で、電源端子80が蓋部22に取り付けられている。
【0078】
本実施形態では、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が、最も遠くなる第2姿勢(
図2および
図4参照)で電源端子80が蓋部22に取り付けられており、第2姿勢が最も好適な電源端子80の取付姿勢である。
【0079】
ここで、
図2および
図4に示す第2姿勢を説明するにあたり、理解を容易にするため、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が最も短くなる第1姿勢についての説明も行う。
【0080】
(2−9−1.第1姿勢)
図5は、電源端子80が第1姿勢で蓋部22に取り付けられている状態を示す図である。
図5に示す第1姿勢では、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が最も短くなるように、電源端子80が蓋部22に取り付けられている。
【0081】
ここで、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離とは、溶接部分100のガラスシール部分84に最も近いポイントからガラスシール部分84までの距離をいう。
【0082】
第1姿勢における溶接部分100のガラスシール部分84に最も近いポイントについて説明する。
【0083】
図5では、3つのガラスシール部分84の位置の区別を容易にするために、中心84aが中心81aよりも蓋部22の周縁部221側に位置しているガラスシール部分84に(1)が付され、ガラスシール部分84(1)から時計回りに84(2)、84(3)の符号が付されている。
【0084】
第1姿勢では、シェル81の中心81aよりも蓋部22の内側に、2つのガラスシール部分84(2)、84(3)の中心84aが位置し、1つのガラスシール部分84(1)の中心84aが中心81aよりも蓋部22の周縁部221側に位置している。このため、第1姿勢では、3つのガラスシール部分84のうちガラスシール部分84(1)が溶接部分100の最も近くに位置している。
【0085】
このガラスシール部分84(1)の中心84aと、蓋部22の中心22aを通る鉛直面と溶接部分100の交点が、溶接部分100のガラスシール部分84(1)に最も近いポイントとなる。ガラスシール部分84(1)が3つのガラスシール部分84のうち最も溶接部分100に近いため、このポイントが、3つのガラスシール部分84全体に対して最も近い溶接部分100のポイントといえる。このようなガラスシール部分84に最も近いポイントを、以下、シール最接近ポイントという。
【0086】
第1姿勢では、ガラスシール部分84(1)の中心84aが鉛直面S1上に配置されているため、溶接部分100のガラスシール部分84に最も近いシール最接近ポイントは、上述した端子最接近ポイントP1と一致する。
【0087】
このように溶接部分100の電源端子80に最も近い端子最接近ポイントと、溶接部分100のガラスシール部分84に最も近いシール最接近ポイントが一致する場合、ガラスシール部分84とそのシール最接近ポイントの距離は最も短くなる。すなわち、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離は最も短くなる。
【0088】
なお、端子最接近ポイントP1から電源端子80までの蓋部22に沿った距離d1(
図3参照)は、例えば、22.12mm以下に設定されている。
【0089】
また、
図5において、端子最接近ポイントP1からガラスシール部分84(1)までの蓋部22に沿った距離d3は、例えば、約25.5mm以下に設定される。
【0090】
(2−9−2.第2姿勢)
次に、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が、最も遠くなる第2姿勢について説明を行う。
【0091】
第2姿勢は、
図4に示すように、第1姿勢に対して中心81aを基準に電源端子80を60度時計回りに回転させた姿勢といえる。
【0092】
第2姿勢における溶接部分100のガラスシール部分84に最も近いポイントについて説明する。
【0093】
第2姿勢では、
図4に示すように、1つのガラスシール部分84(2)の中心84aがシェル81の中心81aよりも蓋部22の内側よりに位置し、残り2つのガラスシール部分84(1)、84(3)の中心84aがシェル81の中心81aよりも蓋部22の外側よりに位置している。
【0094】
ここで、ガラスシール部分84(1)の中心84aと蓋部22の中心22aを通る鉛直面をS4とすると、鉛直面S4と溶接部分100の交点が、溶接部分100のガラスシール部分84(1)に最も近いポイントP4となる。また、ガラスシール部分84(3)の中心84aと中心22aを通る鉛直面をS5とすると、鉛直面S5と溶接部分100の交点が、溶接部分100のガラスシール部分84(3)に最も近いポイントP5となる。
【0095】
第2姿勢では、ポイントP4からガラスシール部分84(1)までの距離d2と、ポイントP5からガラスシール部分84(3)までの距離d4は等しくなっている。
【0096】
そのため、第2姿勢では、3つのガラスシール部分84全体に対して最も近い溶接部分100のシール最接近ポイントは、ポイントP4とポイントP5の2箇所となる。
【0097】
なお、第2姿勢は、溶接部分100の電源端子80に最も近い端子最接近ポイントP1が鉛直面S4と鉛直面S5によって形成される角の中央に位置するような取付姿勢ともいえる。このとき、
図4の平面視において、端子最接近ポイントP1および中心22aを通る鉛直面S1と、シェル81の中心81aおよびガラスシール部分84(1)の中心84aを通る線とのなす角度は60度であり、鉛直面S1と、中心81aおよびガラスシール部分84(3)の中心84aを通る線とのなす角度は、60度である。また、中心22aと中心81aの間において、1つのガラスシール部分84(2)の中心84aが鉛直面S1上に位置している。
【0098】
次に、第1姿勢と第2姿勢の間の姿勢におけるシール最接近ポイントからガラスシール部分84までの距離について説明する。
【0099】
第1姿勢から第2姿勢に向かうように中心81aを基準に時計回りに回転させて電源端子80を配置すると、
図6に示すように、第1姿勢よりもガラスシール部分84(1)は周縁部221から遠ざかることになる。
【0100】
図6は、電源端子80を第1姿勢の状態から時計回りに30度回転させて蓋部22に取り付けた状態を示す図である。
図6では、蓋部22の中心22aとガラスシール部分84(1)の中心84aを通る鉛直面S6が示されており、この鉛直面S6と溶接部分100の交点が、溶接部分100のガラスシール部分84に最も近くなるシール最接近ポイントP6である。シール最接近ポイントP6からガラスシール部分84(1)までの距離d5は、距離d3よりも長く、距離d2よりも短くなる。
【0101】
このように、蓋部22に対して電源端子80を第1姿勢よりも第2姿勢に近い姿勢で取り付けた方が、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離を長く出来、溶接時の入熱を低減できる。
【0102】
なお、端子最接近ポイントP1から電源端子80までの蓋部22に沿った距離d1(
図3参照)は、一例として22.12mm以下に設定されている。また、端子最接近ポイントP1から電源端子80までの蓋部22の平均厚み(図中W1参照)は、3mm未満である。
【0103】
シール最接近ポイントP4からガラスシール部分84(1)までの蓋部22の表面に沿った距離d2(
図4参照)は、26.72mm以下に設定されている。なお、
図4では平面図上でd2が示されているが、実際には、
図3のd1に示したように蓋部22の表面に沿った距離である。
【0104】
第2姿勢の方が、第1姿勢に対して、溶接部分100のガラスシール部分84に最も近いシール最接近ポイントからガラスシール部分までの距離を1.22mm長くできる。これにより、溶接の際のガラスシール部分84への入熱量を低減できる。
【0105】
さらに、溶接部分100からガラスシール部分84までの高さh1(
図3参照)は、一例として13.7mm以下に設定されている。
【0106】
(3)圧縮機の動作
ロータリ圧縮機10の動作について説明する。
【0107】
電源端子80から供給される電力によってモータ40が駆動すると、ロータ42に連結されているクランクシャフト50の偏心軸部51は、回転軸50aを中心として偏心回転する。
【0108】
クランクシャフト50の回転により、偏心軸部51に連結されているピストン31は、圧縮室36において回転軸50aを中心にして回転する。ピストン31の回転により圧縮室36の吸入室および吐出室の容積が周期的に変化する。
【0109】
低圧のガス冷媒は、アキュムレータ500から吸入管60を通って圧縮室36の吸入室に吸入される。吸入室の容積は、ピストン31の回転運動によって減少する。これにより、吸入室の冷媒が圧縮され、吸入室は、高圧のガス冷媒が満たされた吐出室となる。高圧のガス冷媒は、吐出室から吐出ポートを介してマフラ空間93を通過して、下部高圧空間90に吐出される。
【0110】
下部高圧空間90に吐出された冷媒は、ステータ41とロータ42の間のエアギャップ43およびコアカットを通過して上部高圧空間91に流入する。上部高圧空間91の冷媒は、吐出管70からケーシング20の外部に吐出される。
【0111】
(4)圧縮機の製造方法
次に、本実施形態の圧縮機の製造方法について説明する。
【0112】
図7は、本実施形態の圧縮機の製造方法を説明するためのフロー図である。
【0113】
図7に示すように、ステップS101(第1工程の一例)において、蓋部22に電源端子80が取り付けられる。電源端子80の蓋部22への取り付けはプロジェクション溶接によって行われる。プロジェクション溶接では、溶接箇所に電流を流して溶接を行うため1対の溶接用の電極が用いられる。
図8は、プロジェクション溶接を説明するための部分断面模式図である。蓋部22の貫通孔222に電源端子80が挿入されると、貫通孔222の内側の縁にシェル81の周縁部811が当接する。
【0114】
ここで、電源端子80は、そのガラスシール部分84がシール最接近ポイントから最も遠ざかるような取付姿勢で蓋部22に取り付けられる(
図2および
図4参照)。
【0115】
この状態で、鍔部812の端面に抵抗溶接機の電極300が当接される。また、蓋部22の貫通孔222の外周部分にも、抵抗溶接機の電極301が当接される。このように、電源端子80を電極300、301で挟んだ状態で、電極300と電極301の間に通電すると、電源端子80および蓋部22の接触部分が溶融して一体化する。
【0116】
以上の動作により、電源端子80が蓋部22に取り付けられる。
【0117】
次に、ステップS102において、円筒部21の内側に取り付けられているモータ40等と電源端子80の間の配線が行われる。
【0118】
次に、ステップS103において、蓋部22の周縁部221が、円筒部21の上端211の内側に圧入される。
【0119】
次に、ステップS104(第2工程の一例)において、蓋部22の周縁部221が、円筒部21の上端211とアーク溶接により全周溶接される。ここで、
図2において説明した溶接開始ポイントP0から時計回り(矢印B方向)に全周溶接が行われる。溶接開始ポイントP0では、その位置で溶接がとどまる時間が長くなるため、最も入熱量が多くなる。そして、蓋部22の周縁部221の全周のアーク溶接が行われて一周し、溶接箇所が再び溶接開始ポイントP0まで達すると、溶接動作が終了する。溶接開始ポイントP0では、他の部分と比較して材料の溶融量が多くなるため、溶接部分100が大きく形成される(
図3における左右の溶接部分100参照)。
【0120】
次に、ステップS105において、底部23の周縁部231が、円筒部21の下端212の内側に圧入される。
【0121】
次に、ステップS106において、円筒部21の下端212と底部23の周縁部231の全周溶接がアーク溶接によって行われる。なお、底部23には電源端子などが設けられていないため、ステップS106では、どの位置から全周溶接を始めてもよい。
【0122】
(5)特徴
(5−1)
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法は、周縁部を含む金属製のシェル81と、シェル81を貫通し貫通部分がガラスシールされている複数の電極82とを有する電源端子80と、電源端子80が配置された蓋部22と円筒部21とを有し圧縮機構30を覆うケーシング20とを備え、円筒部21の外径が100mm未満のロータリ圧縮機10の製造方法であって、第1工程と、第2工程と、を備える。第1工程は、電源端子80のシェル81の周縁部811をケーシング20の蓋部22に溶接する。第2工程は、蓋部22の周縁部221のうち電源端子80に最も近い端子最接近ポイントP1から150°〜210°の範囲にあるポイントを溶接開始ポイントP0として円筒部21に蓋部22の周縁部221を全周溶接する。
【0123】
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法では、全周溶接の溶接開始ポイントP0を電源端子80に最も近い端子最接近ポイントP1から150°〜210°の範囲とすることによって、入熱量が最大となる溶接開始ポイントP0からガラスシール部分84までの距離を確保でき、ガラスシール部分84への入熱量を削減可能となる。このため、溶接によって電源端子部分にひずみが生じることを抑制できる。
【0124】
また、従来は、入熱による影響を低減するために、蓋部22の周縁部221の溶接される部分である溶接部分100から電源端子80までの高さを所定の距離以上に確保していた。しかしながら、本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法では、入熱量を削減できるため、溶接部分100から電源端子80までの高さを低くでき、ロータリ圧縮機10全体の高さを低くできる。
【0125】
(5−2)
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法は、電源端子80から周縁部221までの部分の蓋部22の平均板厚が3mm未満である。
【0126】
本実施形態のロータリ圧縮機の製造方法では、入熱量を削減可能なため、平均板厚を3mm未満と薄くでき、材料費等にかかるコストを安くできる。
【0127】
(5−3)
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法では、第1工程において、電源端子80の蓋部22に対する取付姿勢を、蓋部22の周縁部221の円筒部21に溶接される溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が最も近くなる第1姿勢よりも、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が最も遠くなる第2姿勢に近い姿勢にする。
【0128】
これにより、ガラスシール部分84を出来るだけ、溶接される蓋部22の周縁部221から遠ざけることが出来、全周溶接において電源端子80近傍を溶接する際の入熱によるガラスシール部分84に与えるひずみを軽減できる。
【0129】
(5−4)
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法は、シェル81はSPCE-S(steel plate cold deep drawn extra)によって形成されており、蓋部22は、SS400によって形成されている。
【0130】
このように、シェル81の材質として蓋部22の材質よりも熱伝導率が低い材質を用いることによって、電源端子の蓋部22に対する取付姿勢を第1姿勢よりも第2姿勢に近い姿勢にすることによるガラスシール部分84への入熱の低減効果をより大きくすることが出来る。
【0131】
(5−5)
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法は、蓋部22の周縁部221の円筒部21に溶接される溶接部分100からガラスシール部分84までの高さは、13.7mm以下である。
【0132】
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法では、入熱量を削減可能なため、このように溶接部分100からガラスシール部分84までの高さを13.7mm以下と低くでき、圧縮機全体の高さを低くできる。
【0133】
(5−6)
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法は、蓋部の周縁部の円筒部に溶接される溶接部分100から電源端子80までの長さは、22.12mm以下である。
【0134】
本実施の形態のロータリ圧縮機の製造方法では、入熱量を削減可能なため、このように溶接部分(最接近ポイントP1)から電源端子80までの長さを22.12mm以下と短くでき、ロータリ圧縮機10の高さや径の寸法を小さくできる。
【0135】
(5−7)
本実施の形態のロータリ圧縮機10は、電源端子80と、ケーシング20と、を備える。電源端子80は、周縁部811を含む金属製のシェル81と、シェル81を貫通し貫通部分がガラスシールされている複数の電極82とを有する。ケーシング20は、電源端子80が取り付けられた蓋部22と、蓋部22の周縁部221と全周溶接された円筒部21とを有し、圧縮機構30を覆う。円筒部21の外径が100mm未満であり、全周溶接の溶接開始ポイントP0は、蓋部22の周縁部221のうち電源端子80に最も近い最接近ポイントP1から150°〜210°の範囲に設けられている。
【0136】
本実施の形態のロータリ圧縮機10では、全周溶接の溶接開始ポイントP0が電源端子80に最も近い最接近ポイントP1から150°〜210°の範囲に設けられていることによって、入熱量が最大となる溶接開始ポイントP0からガラスシール部分84までの距離を確保でき、ガラスシール部分84への入熱量を削減可能となる。このため、溶接によって電源端子80部分にひずみが生じることを抑制できる。
【0137】
また、従来は、入熱による影響を低減するために、蓋部22の周縁部221の溶接される部分から電源端子80までの高さを所定の距離以上に確保していた。しかしながら、ロータリ圧縮機10では、入熱量を削減できるため、蓋部22の周縁部221の溶接される部分から電源端子80までの高さを低くでき、ロータリ圧縮機10全体の高さを低くできる。
【0138】
(5−8)
本実施の形態のロータリ圧縮機10では、電源端子80は、蓋部22の周縁部221の円筒部21に溶接される溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が最も近くなる第1姿勢よりも、溶接部分100からガラスシール部分84までの距離が最も遠くなる第2姿勢に近い姿勢で、蓋部22に配置されている。
【0139】
これにより、ガラスシール部分84を出来るだけ、溶接される蓋部22の周縁部221から遠ざけることが出来、全周溶接において電源端子80近傍を溶接する際の入熱によるガラスシール部分84に与えるひずみを軽減できる。
【0140】
(6)変形例
(6−1)
上記実施形態では、
図4に示すように、電源端子80は、溶接部分からガラスシール部分84までの距離が最も遠くなる第2姿勢で蓋部22に取り付けられているが、第2姿勢に限られるものではなく、第1姿勢であってもよい。しかしながら、溶接による入熱を減少させる観点からは、第1姿勢よりも第2姿勢に近い姿勢で電源端子80を蓋部22に取り付けるほうが好ましい。
【0141】
(6−2)
上記実施形態では、電極82が3つ設けられているため、ガラスシール部分84が3つ形成されていたが、3つに限られるものではない。
【0142】
(6−3)
上記実施形態では、全周溶接の溶接開始ポイントP0が、蓋部22の周縁部221のうち電源端子80に最も近い端子最接近ポイントP1から150°〜210°の範囲に設けられた圧縮機としてロータリ圧縮機10が用いられているが、スクロール圧縮機等の他の圧縮機が用いられてもよい。