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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験者から得た試料中の、下記に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は該ポリペプチドの存在を検出する工程を含むことを特徴とする、ファイブロブラストグロースファクターレセプター3(FGFR3)遺伝子とトランスフォーミング アシディック コイルド−コイル コンテイニングプロテイン3(TACC3)遺伝子との融合遺伝子又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質の検出方法:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド。
前記ポリヌクレオチドの存在を検出する工程が下記のi)又はii)の工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出する方法:
i)被験者から得た試料中の該ポリヌクレオチドにプローブをハイブリダイズさせる工程;及び
ii)被験者から得た試料中の該ポリヌクレオチドをプライマーで増幅させる工程。
下記に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子の検出用キット:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド。
配列番号1の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号1の塩基番号2281〜2856の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
配列番号3の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号3の塩基番号2281〜2961の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
配列番号5の塩基番号1〜2368の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号5の塩基番号2369〜3003の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
FGFR3遺伝子に由来する部分から設計したプローブとTACC3遺伝子に由来する部分から設計したプローブとを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出するためのプローブセットであって、各プローブは下記に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子からなる、プローブセット:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド。
前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、請求項17に記載のプローブセット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
癌の新たな原因遺伝子であるポリヌクレオチドを解明し、これにより、当該ポリヌクレオチド又はそれがコードするポリペプチドの検出方法、及びその検出用キット、プライマーセット及びプローブセットを提供することを課題とする。また、これらの融合蛋白質を発現する癌患者への本発明のポリペプチドを阻害する薬物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肺癌患者及び膀胱癌患者検体から得たキナーゼであるFGFR3の一部とTACC3遺伝子の一部とが融合した新規の融合遺伝子を単離同定し(実施例1、2、3及び23)、これらの融合遺伝子が肺癌患者検体及び膀胱癌患者検体に存在すること(実施例4、5、6、20及び23)、またこれらの融合遺伝子を発現させるためレトロウイルスを作製し(実施例7、10及び24)、感染細胞が腫瘍形成能を有し、癌の原因遺伝子であることを見出した(実施例8、11及び25)。該新規融合遺伝子及び該新規融合遺伝子によりコードされる融合蛋白質をヒト膀胱癌患者由来細胞株や肺癌患者検体及び膀胱癌患者検体から検出する方法を構築した(実施例4、5、6、19、20、27及び28)。また、該融合遺伝子によりコードされる融合蛋白質の阻害作用をもつ薬物が感染細胞の腫瘍形成能を阻害することから、この融合蛋白質又はこれをコードする融合遺伝子を発現する癌患者(すなわち、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌患者)に対して該融合蛋白質の阻害剤が有効であることを見出した(実施例9、12、13、14、16、22及び30)。
これまで、野生型のFGFR3単独では、癌細胞に形質転換しないものと考えられていたが、野生型であってもTACC3と融合することで、癌細胞に形質転換することは、非常に驚くべきことであった。また、このFGFR3とTACC3との融合蛋白質は、驚くべきことに、FGFR3キナーゼのカルボキシ末端側で融合していることが確認されており、現在までに知られているアミノ末端での融合キナーゼとは異なる構造をしていた。
本発明者は、これらの知見から、これらの融合遺伝子の検出法を構築し、そのためのキット、プライマーセット及びプローブセットを提供し、これらの融合遺伝子又はそれにコードされる融合蛋白質を検出することにより、融合蛋白質の阻害剤による薬物治療の対象となる癌患者を選別することを可能とした。さらに、該融合蛋白質阻害剤(特には、化合物A〜E、Dovitinib、AZD4547、BGJ398又はLY2874455)がFGFR3とTACC3との融合蛋白質の活性を阻害し、FGFR3とTACC3との融合蛋白質を発現する(すなわち、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の)癌(例えば肺癌や膀胱癌)などに有効であることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]被験者から得た試料中の、下記に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は該ポリペプチドの存在を検出する工程を含むことを特徴とする、ファイブロブラストグロースファクターレセプター3(FGFR3)遺伝子とトランスフォーミング アシディック コイルド−コイル コンテイニングプロテイン3(TACC3)遺伝子との融合遺伝子又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質の検出方法:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
[2]前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[1]に記載の方法、
[3]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[1]に記載の方法、
[4]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[1]に記載の方法、
[5]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、[1]に記載の方法、
[6]下記に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子の検出用キット:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
[7]前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[6]に記載のキット、
[8]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[6]に記載のキット、
[9]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[6]に記載のキット、
[10]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、[6]に記載のキット、
[11]FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出するためのプライマーセットであって、下記a)〜e)からなる群より選択されるプライマーセット:
a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるアンチセンスプライマー及び該ポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるセンスプライマーを含むプライマーセット、
b)配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるアンチセンスプライマー及び該ポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるセンスプライマーを含むプライマーセット、及び
c)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるアンチセンスプライマー及び該ポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるセンスプライマーを含むプライマーセット、
d)配列番号25に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるアンチセンスプライマー及び該ポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるセンスプライマーを含むプライマーセット、
e)配列番号27に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるアンチセンスプライマー及び該ポリヌクレオチドの相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子からなるセンスプライマーを含むプライマーセット、
[12]配列番号1の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号1の塩基番号2281〜2856の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット、
[13]配列番号3の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号3の塩基番号2281〜2961の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット、
[14]配列番号5の塩基番号1〜2368の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号5の塩基番号2369〜3003の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット、
[15]配列番号25の塩基番号1〜2242の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号25の塩基番号2243〜3144の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット、
[16]配列番号27の塩基番号1〜2233の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号27の塩基番号2234〜3135の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット、
[17]FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出するためのプローブセットであって、下記a)〜c)からなる群より選択されるプローブセット:
a)配列番号1の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む複数種の隣接したプローブペアからなるプローブセット(好ましくは、20種のプローブセットを含む)、及び、配列番号1の塩基番号2281〜2856の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む複数種の隣接したプローブペアからなるプローブセット(好ましくは、20種のプローブセットを含む)を含むプローブセット、
b)配列番号3の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む複数種の隣接したプローブペアからなるプローブセット(好ましくは、20種のプローブセットを含む)、及び、配列番号3の塩基番号2281〜2961の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む複数種の隣接したプローブペアからなるプローブセット(好ましくは、20種のプローブセットを含む)を含むプローブセット、
c)配列番号5の塩基番号1〜2368の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む複数種の隣接したプローブペアからなるプローブセット(好ましくは、20種のプローブセットを含む)、及び、配列番号5の塩基番号2369〜3003の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む複数種の隣接したプローブペアからなるプローブセット(好ましくは、20種のプローブセットを含む)を含むプローブセット、
[18]前記ポリヌクレオチドの存在を検出する工程が、被験者から得た試料及び[17]記載のプローブセットを用いてインサイチュハイブリダイゼーションを行う工程、ハイブリダイゼーションのシグナルを増幅する工程、並びに前記のシグナルの重なりを検出する工程を含むことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子の検出方法、
[19]FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出するための[17]に記載のプローブセット及びハイブリダイズしたシグナルを増幅する試薬を含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子の検出用キット、
[20]前記ポリペプチドの存在を検出する工程が、i)被験者から得た試料に該ポリペプチドのFGFR3遺伝子由来部分を認識する抗体(一次抗体)及び該ポリペプチドのTACC3遺伝子由来部分を認識する抗体(一次抗体)を接触させる工程、ii)該一次抗体にそれぞれ結合する、オリゴヌクレオチドを連結したそれぞれの二次抗体を添加する工程、iii)該二次抗体が連結した該オリゴヌクレオチドと部分的に相補的な二種類のオリゴヌクレオチド及びそれらが近接した際にライゲーションさせて該二次抗体間に環状構造を形成することができるライゲースを含有するライゲーション溶液を添加し、ライゲーション反応させる工程、iv)形成された環状構造に沿って核酸を伸長させる工程、v)伸長した核酸にハイブリダイズすることのできる標識されたオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる工程、及び、vi)該標識シグナルを検出する工程を含むことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のFGFR3とTACC3との融合蛋白質の検出方法、
[21][1]〜[5]のいずれかに記載のFGFR3とTACC3との融合蛋白質の検出方法で使用するための、前記融合ポリペプチドのFGFR3遺伝子由来部分を認識する抗体(一次抗体)及び前記融合ポリペプチドのTACC3遺伝子由来部分を認識する抗体(一次抗体)、該一次抗体にそれぞれ結合する、オリゴヌクレオチドを連結した二次抗体、該二次抗体に連結した該オリゴヌクレオチドと部分的に相補的な二種類のオリゴヌクレオチド、それらが近接した際にライゲーションさせて該二次抗体間に環状構造を形成することができるライゲース、及び標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含む、FGFR3とTACC3との融合蛋白質の検出用キット、
[22]下記に記載のポリペプチドを阻害する物質を含有する、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌治療用医薬組成物:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
[23]前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸番号461〜947 、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[22]に記載の医薬組成物、
[24]前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、[22]に記載の医薬組成物、
[25]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[22]に記載の医薬組成物、
[26]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチドである、[22]に記載の医薬組成物、
[27]前記ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである[22]に記載の医薬組成物、
[28]前記ポリペプチドを阻害する物質が、Dovitinib、AZD4547、BGJ398又はLY2874455である、[22]〜[27]のいずれかに記載の癌治療用医薬組成物、
[29]前記癌が、肺癌又は膀胱癌である、[22]〜[27]のいずれかに記載の癌治療用医薬組成物。
[30]FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌治療用医薬組成物の製造のための、下記に記載のポリペプチドを阻害する物質の使用:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
[31]FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌の治療のための、下記に記載のポリペプチドを阻害する物質の使用:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
[32]FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌の治療のための、下記に記載のポリペプチドを阻害する物質:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
[33]下記に記載のポリペプチドを阻害する物質の有効量を対象に投与することからなる、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌の治療方法:
配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982又は配列番号6のアミノ酸番号461〜996に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド。
【0007】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の存在の検出方法:
被験者から得た試料中の、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの存在を検出する工程、
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
また、本発明は、
該ポリヌクレオチドの存在を検出する工程が、被験者から得た試料及び前記[17]記載の標識プローブセットを用いてインサイチュハイブリダイゼーションを行う工程、並びに前記標識のシグナルの重なりを検出する工程を含むことを特徴とする、本段落に記載のFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の存在の検出方法、
に関する。
【0008】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の診断方法:
被験者から得た試料中の、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの存在を検出する工程、
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
また、本発明は、
該ポリヌクレオチドの存在を検出する工程が、被験者から得た試料及び前記[17]記載の標識プローブセットを用いてインサイチュハイブリダイゼーションを行う工程、並びに前記標識のシグナルの重なりを検出する工程を含むことを特徴とする、本段落に記載のFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の診断方法、
に関する。
また、別の態様として、本発明は、上記2つの態様の診断方法によりFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)と診断された患者に対して本発明のポリペプチドを阻害する物質(ある態様では化合物AZD4547、化合物Dovitinib、化合物BGJ398又は化合物LY2874455)を投与することを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の治療方法、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の存在の検出方法:
(1)被験者から得た試料を鋳型とし、前記[11]〜[16]のいずれかに記載されたプライマーセットを用いてPCRを行う工程、及び
(2)PCR産物の存在を検出する工程、
に関する。
【0010】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の診断方法:
(1)被験者から得た試料を鋳型とし、前記[11]〜[16]のいずれかに記載されたプライマーセットを用いてPCRを行う工程、及び
(2)PCR産物の存在を検出する工程、
に関する。
また、別の態様として、本発明は、上記の診断方法によりFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)と診断された患者に対して本発明のポリペプチドを阻害する物質(ある態様では化合物AZD4547、化合物Dovitinib、化合物BGJ398又は化合物LY2874455)を投与することを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の治療方法、
に関する。
【0011】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とする、染色体の再構成(genomic rearrangement)を検出する方法:
被験者から得た試料中の、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの存在を検出する工程、
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
【0012】
さらに、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とする、染色体の再構成(genomic rearrangement)を検出する方法:
(1)i)被験者から得た試料、ii)FGFR3遺伝子をコードする5’側ゲノム領域を含む蛍光標識プローブ(第一プローブ)、及びiii)TACC3遺伝子をコードする3’ゲノム領域を含む蛍光標識プローブ(第二プローブ)を用い(ここで、第一プローブと第二プローブの蛍光は異なる)、インサイチュハイブリダイゼーションを行う工程、及び
(2)前記標識のシグナルの重なりを検出する工程、
に関する。
【0013】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の存在の検出方法:
(1)i)被験者から得た試料、ii)FGFR3遺伝子をコードする5’側ゲノム領域を含む蛍光標識プローブ(第一プローブ)、及びiii)TACC3遺伝子をコードする3’ゲノム領域を含む蛍光標識プローブ(第二プローブ)を用い(ここで、第一プローブと第二プローブの蛍光は異なる)、インサイチュハイブリダイゼーションを行う工程、及び
(2)前記標識のシグナルの重なりを検出する工程、
に関する。
【0014】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の診断方法:
(1)i)被験者から得た試料、ii)FGFR3遺伝子をコードする5’側ゲノム領域を含む蛍光標識プローブ(第一プローブ)、及びiii)TACC3遺伝子をコードする3’ゲノム領域を含む蛍光標識プローブ(第二プローブ)を用い(ここで、第一プローブと第二プローブの蛍光は異なる)、インサイチュハイブリダイゼーションを行う工程、及び
(2)前記標識のシグナルの重なりを検出する工程、
に関する。
また、別の態様として、本発明は、上記の診断方法によりFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)と診断された患者に対して本発明のポリペプチドを阻害する物質(ある態様では化合物AZD4547、化合物Dovitinib、化合物BGJ398、又は化合物LY2874455)を投与することを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の治療方法、
に関する。
【0015】
また、本発明は、
下記(1)〜(3)に記載のポリペプチド(以下、「本発明のポリペプチド」とも称する)又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」とも称する):
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
【0016】
また、本発明は、被験者から得た試料中の、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドの存在を検出する工程を含むことを特徴とする、FGFR3とTACC3との融合蛋白質の検出方法:
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
【0017】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の存在の検出方法:
被験者から得た試料中の、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドの存在を検出する工程、
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
【0018】
また、本発明は、
下記工程を含むことを特徴とするFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の診断方法:
被験者から得た試料中の、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドの存在を検出する工程、
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947(又は配列番号2)、配列番号4のアミノ酸番号461〜982(又は配列番号4)、配列番号6のアミノ酸番号461〜996(又は配列番号6)、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043(又は配列番号26)又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040(又は配列番号28)に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
に関する。
また、別の態様として、本発明は、上記の診断方法によりFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)と診断された患者に対して、上記(1)〜(3)に記載のポリペプチドを阻害する物質(ある態様では化合物AZD4547、化合物Dovitinib、化合物BGJ398、又は化合物LY2874455)を投与することを含むFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の治療方法、
に関する。
【0019】
Science. 2012 Sep 7;337(6099):1231−5. Epub 2012 Jul 26.には、癌化能を示すFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子が存在すること、FGFR阻害剤PD173074、AZD4547、BGJ398がFGFR3−TACC3融合遺伝子発現細胞の増殖を阻害すること、FGFR阻害治療が有益なグリオブラストーマ患者群の同定にFGFR3−TACC3融合遺伝子発現が寄与する可能性を示唆する報告がなされているが、本願最先の優先日(2012年3月8日)後の文献である。当該文献には、本発明のFGFR3−TACC3_v1及びFGFR3−TACC3_v2と融合点を同じくする遺伝子断片の配列が記載されているが、その全長は明らかにされておらず、本発明のFGFR3−TACC3_v3、FGFR3−TACC3_v5a、及びFGFR3−TACC3_v5bやその検出方法プライマーセット、プローブセット、検出キットは全く開示も示唆もされていない。また、肺癌及び膀胱癌についての記載も示唆もない。
また、Hum Mol Genet. 2012. Nov21(Hum Mol Genet. 2013 Feb 15;22(4):795−803)には、癌化能を有するFGFR3とTACC3との融合遺伝子(本発明のFGFR3−TACC3_v1)が膀胱癌に存在することが報告されているが、本発明のFGFR3−TACC3_v1を開示した本願最先の優先日(2012年3月8日)及び本願第2の優先日(2012年9月5日)後の文献である。当該文献には、本発明のFGFR3−TACC3_v2、FGFR3−TACC3_v3、FGFR3−TACC3_v5a、及びFGFR3−TACC3_v5bやその検出方法プライマーセット、プローブセット、検出キットは全く開示も示唆もされていない。また、肺癌についての記載も示唆もない。
さらに、J Clin Invest. 2013 February 1; 123(2): 855_865.にはいくつかの癌化能を有するFGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子がグリオブラストーマに存在することが報告されているが、本文献は、本発明のFGFR3−TACC3_v1及びFGFR3−TACC3_v2を開示した本願最先の優先日(2012年3月8日)、本願第2の優先日(2012年9月5日)及び本願第3の優先日(2012年12月21日)より後に出版された文献である。当該文献には、本発明のFGFR3−TACC3_v3、FGFR3−TACC3_v5a、及びFGFR3−TACC3_v5bやその検出方法プライマーセット、プローブセット、検出キットは全く開示も示唆もされていない。また、肺癌及び膀胱癌についての記載も示唆もない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の検出方法は、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)を検出する方法として利用できる。また、本発明の検出方法は、染色体の再構成を検出する方法として利用できる。また、本発明の検出方法によれば、本発明のポリペプチドを阻害する物質による治療の適用対象者であるか否かを鑑別することができる。本発明の検出用キット、プライマーセット及びプローブセットは、本発明の検出方法に用いることができる。また、本発明のポリペプチドを阻害する物質は、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子陽性又はFGFR3とTACC3との融合蛋白質陽性の癌(特に肺癌又は膀胱癌)の治療用医薬組成物として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<本発明の検出方法>
本発明の検出方法は、融合遺伝子又は融合蛋白質を検出する方法であり、該方法は、被験者から得た試料中の、特定のポリヌクレオチド、又は、ポリペプチドの存在を検出する工程を含む。被験者から得た試料としては、被験者からの採取物(生体から分離した試料)、具体的には、任意の採取された組織、体液(好ましくは血液)、肺胞・気管支洗浄液、生検された試料、尿中癌細胞、喀痰試料を用いるが、好適には、被験者の肺患部又は膀胱患部の生検試料又は喀痰試料を用いる。試料からゲノムDNAを抽出して用いることができ、またその転写産物(ゲノムが転写及び翻訳される結果生じる産物;例えばmRNA、cDNA、蛋白質)を用いることができる。特にはmRNA又はcDNAを調製して用いることが好ましい。また、試料をフォルマリン固定してパラフィンに包埋して安定化した標本(FFPE)を用いることができる。FFPEを薄くスライスしたFFPE切片中を用いてもよい。FFPE切片中を用いれば、そこに存在するポリヌクレオチドやポリペプチドを直接検出することができる。
【0022】
融合遺伝子の検出方法における「ポリヌクレオチドの存在を検出する工程」において、その検出対象となるポリヌクレオチド(以下、「検出対象ポリヌクレオチド」と称する)は、「FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子」であり、これは、FGFR3遺伝子の一部とTACC3遺伝子の一部とを含む遺伝子である。
【0023】
「FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子」としては、FGFR3の機能ドメインの一つであるキナーゼドメインをコードする配列とTACC3の機能ドメインの一つであるコイルド−コイルドメインをコードする配列を有する融合遺伝子があげられる。癌を引き起こす融合遺伝子としてPTC−RET(Clin. Cancer Res.2009;7119−7123)、KIF5B−ALK(Clin. Cancer Res. 2009;3143−3149)、KIF5B−RET(Nature medicine 2012;Feb 12;Epub ahead of print、Nat Med. 2012 Feb 12;18(3):375−7)、EML4−ALK(Nature 2007;561−566)などが知られており、これらの融合遺伝子は5’末端側にコイルド−コイルドメインを持つ蛋白質の遺伝子と3’末端側にリガンド結合部位を欠損したキナーゼ遺伝子が結合した融合遺伝子であり、NIH3T3細胞に強制的に発現させると形質転換を引き起こすことが知られている。例えば、リガンド結合部位を有さないKIF5B−RET融合遺伝子を発現させた3T3細胞は、リガンド非依存的にRETキナーゼ活性化に重要である905番目のチロシン自己リン酸化が引き起こされ活性化される。この自己リン酸化は、RET阻害剤であるVandetanibにより阻害され細胞死を引き起こすことが知られている(Nature medicine 2012;Feb 12;Epub ahead of print、Nat Med. 2012 Feb 12;18(3):375−7)。また、同様にリガンド結合部位を有さないEML4−ALK融合遺伝子を内在的に発現している細胞株でもALKのキナーゼ活性に重要である1604番目のリン酸化が引き起こされており、ALKに阻害活性をもつTAE684によりリン酸化が阻害され増殖が阻害されることが知られている(Clin.Cancer Res.2008;4275−4283)。さらに、EML4−ALK融合遺伝子を発現している肺癌患者に対し、ALKキナーゼ阻害剤であるCrizotinibが有効な治療薬であることが示唆されている(Drug Des. Devel. Ther. 2011; 471−485)。これらの融合遺伝子にコードされる融合蛋白質の活性化機構として、コイルド−コイルドメインを介したホモ二量体化により、融合しているキナーゼドメインのリガンド非依存的な恒常的活性化が引き起こされることが示唆されている。さらには、融合しているキナーゼの阻害剤を使用することにより、このように融合蛋白質の機能を阻害することができることが示唆されている。従って、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子についても、FGFR3のキナーゼドメインとTACC3のコイルド―コイルドメインが癌化を引き起こす重要なドメインと予測される。従って、前記「検出対象ポリヌクレオチド」としては、例えば、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子のうち、FGFR3のキナーゼドメインとTACC3のコイルド―コイルドメインに該当する配列をコードする配列を有するポリヌクレオチドである、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。ある態様において、これらの領域内の部分を検出することによっても、検出対象ポリヌクレオチドの存在を検出することができる。
(1)配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド[以下、「相同ポリペプチド」とも称する]、
(2)配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸番号461〜947、配列番号4のアミノ酸番号461〜982、配列番号6のアミノ酸番号461〜996、配列番号26のアミノ酸番号461〜1043又は配列番号28のアミノ酸番号461〜1040に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド[以下、「機能的等価改変体ポリペプチド」とも称する]、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【0024】
好ましい前記検出対象ポリヌクレオチドとしては、下記(1)〜(3)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
(1)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、
(2)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、又は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド、あるいは、
(3)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【0025】
さらに好ましい前記検出対象ポリヌクレオチドとしては、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号25又は配列番号27に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0026】
配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、FGFR3遺伝子バリアント3(GenBank登録番号:NM_001163213.1)の塩基番号257(エキソン2のファーストメチオニンに対応)から2536(エキソン18の3’末端に対応)とTACC3遺伝子(GenBank登録番号:NM_006342.1)の塩基番号2050(エキソン11の5’末端に対応)から2625(エキソン16のストップコドンに対応)までの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号1に示される塩基配列の内、塩基番号1〜2280の配列はFGFR3遺伝子に由来し、塩基番号2281〜2856の配列はTACC3遺伝子に由来する。この融合ポリヌクレオチドをFGFR3−TACC3_v1と称する。配列番号1の塩基番号1〜2856は、融合蛋白質のオープンリーディングフレーム(ORF)であり、このORFにコードされるアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0027】
配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、FGFR3遺伝子バリアント3(GenBank登録番号:NM_001163213.1)の塩基番号257(エキソン2のファーストメチオニンに対応)から2536(エキソン18の3’末端に対応)とTACC3遺伝子(GenBank登録番号:NM_006342.1)の塩基番号1945(エキソン10の5’末端に対応)から2625(エキソン16のストップコドンに対応)までの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号3に示される塩基配列の内、塩基番号1〜2280の配列はFGFR3遺伝子に由来し、塩基番号2281〜2961の配列はTACC3遺伝子に由来する。この融合ポリヌクレオチドをFGFR3−TACC3_v2と称する。配列番号3の塩基番号1〜2961は、融合蛋白質のORFであり、このORFにコードされるアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0028】
配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、FGFR3遺伝子バリアント3(GenBank登録番号:NM_001163213.1)の塩基番号257(エキソン2のファーストメチオニンに対応)から2624(エキソン19の途中に対応)とTACC3遺伝子(GenBank登録番号:NM_006342.1)のイントロン59塩基を挟み、塩基番号2050(エキソン11の5’末端に対応)から2625(エキソン16のストップコドンに対応)までの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号5に示される塩基配列の内、塩基番号1〜2368の配列はFGFR3遺伝子に由来し、塩基番号2369〜2427の配列はTACC3のゲノム配列に由来し、塩基番号2428〜3003の配列はTACC3遺伝子に由来する。この融合ポリヌクレオチドをFGFR3−TACC3_v3と称する。配列番号5の塩基番号1〜3003は、融合蛋白質のORFであり、このORFにコードされるアミノ酸配列を配列番号6に示す。
【0029】
配列番号25に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、FGFR3遺伝子バリアント3(GenBank登録番号:NM_001163213.1)の塩基番号257から2498(ただし、1980番目はCではなくG)とTACC3遺伝子(GenBank登録番号:NM_006342.1)の塩基番号1771から2672までの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。配列番号25に示される塩基配列の内、塩基番号1〜2242の配列はFGFR3遺伝子に由来し、塩基番号2243〜3144の配列はTACC3遺伝子に由来する。この融合ポリヌクレオチドをFGFR3−TACC3_v5aと称する。配列番号25の塩基番号1〜3144は、融合蛋白質質のORFであり、このORFにコードされるアミノ酸配列を配列番号26に示す。
【0030】
配列番号27に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、FGFR3遺伝子バリアント3(GenBank登録番号:NM_001163213.1)の塩基番号257から2498とTACC3遺伝子(GenBank登録番号:NM_006342.1)の塩基番号1771から2672までの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。ただし、一部にポリヌクレオチドの欠失と挿入が存在する。欠失している部分は、FGFR3遺伝子(NM_001163213.1)の690番目から701番目(エキソン4の3’側の配列)に相当する。挿入されている部分は、FGFR3遺伝子(NM_001163213.1)の1528番目と1529番目の間(エキソン10とエキソン11の間)に相当し、CAGという配列が挿入されている。配列番号27に示される塩基配列の内、塩基番号1〜2233の配列はFGFR3遺伝子に由来し、塩基番号2234〜3135の配列はTACC3遺伝子に由来する。この融合ポリヌクレオチドをFGFR3−TACC3_v5bと称する。配列番号28の塩基番号1〜3135は、融合蛋白質のORFであり、このORFにコードされるアミノ酸配列を配列番号28に示す。
【0031】
FGFR3−TACC3_v1、FGFR3−TACC3_v2、FGFR3−TACC3_v3、FGFR3−TACC3_v5a、FGFR3−TACC3_v5bを総称してFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチドと称する。
【0032】
別の態様における前記検出対象ポリヌクレオチドとしては、配列番号1の塩基番号1381〜2841に対応するFGFR3−TACC3_v1の部分配列、配列番号3の塩基番号1381〜2946に対応するFGFR3−TACC3_v2の部分配列、配列番号5の塩基番号1381〜2988に対応するFGFR3−TACC3_v3などが挙げられる。
【0033】
好ましい「相同ポリペプチド」としては、「配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド」が挙げられるが、該同一性が、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上であるアミノ酸配列を含むポリペプチドが特に好ましい。
【0034】
好ましい「機能的等価改変体ポリペプチド」としては、「配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列において、1〜10個、好ましくは1〜数個、更に好ましくは1〜7個、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド」が好ましく、「配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド」が特に好ましい。
【0035】
なお、本明細書における前記「同一性」とは、NEEDLE program(J Mol Biol 1970; 48: 443-453)検索によりデフォルトで用意されているパラメータを用いて得られた値Identityを意味する。前記のパラメータは以下のとおりである。
Gap penalty = 10
Extend penalty = 0.5
Matrix = EBLOSUM62
【0036】
あるポリペプチドが「腫瘍形成能を有する」ことは、後記実施例8に記載の方法で確認する。具体的には、当該融合遺伝子をNIH3T3細胞に導入し、スフェロイドプレートを用いて足場非依存的な細胞増殖作用を確認する方法が挙げられる。また、当該融合遺伝子を導入した細胞をヌードマウスの皮下に接種した後、一定期間観察し、腫瘍形成を確認する方法であっても良い。
【0037】
本発明の検出方法における検出対象ポリヌクレオチドとしては、「配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列を含み、しかも腫瘍形成能を有するポリペプチド」をコードするポリヌクレオチドが好ましく、「配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号26又は配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードするポリヌクレオチドが最も好ましい。
【0038】
本発明の融合遺伝子の検出方法における「ポリヌクレオチドの存在を検出する工程」は、被験者から得た試料のゲノム中の検出対象ポリヌクレオチド(融合点を含むゲノム配列)の存在を検出すること、被験者から得た試料から抽出したゲノムDNAの転写産物(例えばmRNA又はcDNA)を調製し、検出対象ポリヌクレオチドに対応するmRNA又はcDNAの存在を検出すること、あるいは、必要に応じて前処理した被験者から得た試料中の検出対象ポリヌクレオチドの存在をインサイチュハイブリダイゼーションにより検出することにより実施する。
【0039】
ゲノムDNAの抽出は公知の方法で行うことができ、市販のDNA抽出キットを用いて簡便に行うことができる。
【0040】
検出工程は公知の遺伝子解析法(例えば、遺伝子検出法として常用されるPCR、LCR(Ligase chain reaction)、SDA(Strand displacement amplification)、NASBA(Nucleic acid sequence−based amplification)、ICAN(Isothermal and chimeric primer−initiated amplification of nucleic acids)、LAMP法(Loop−mediated isothermal amplification)、TMA法(Gen−Probe’s TMA system)、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)法、更にマイクロアレイなど周知の方法)に従って実施することができる。例えば、検出対象ポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸をプローブとしたハイブリダイゼーション技術、又は、検出対象ポリヌクレオチドにハイブリダイズするDNAをプライマーとした遺伝子増幅技術等を利用する。
【0041】
具体的には、被験者から得た試料由来の核酸、例えば、mRNA等を用いて測定する。mRNA量の測定は、検出対象ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計したプライマーを用いて遺伝子増幅反応方法にて測定する。本発明の検出方法に用いられるプライマー、又は、検出用キットに含まれるプライマーは、検出対象ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるものであれば、特には限定されず、検出対象ポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて設計する。PCR増幅モニター法におけるプライマー設計は、プライマー設計ソフトウェア(例えば、Primer Express; アプライドバイシステムズ社)などを利用してできる。また、PCR産物のサイズが大きくなると増幅効率が悪くなるため、センスプライマーとアンチセンスプライマーは、mRNA又はcDNAを対象に増幅したときの増幅産物の大きさが1kb以下になるように設定するのが適切である。
【0042】
より具体的には、センスプライマー(5’−プライマー)をFGFR3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(特にはcDNA)のFGFR3遺伝子領域内の任意の部分)から、アンチセンスプライマー(3’−プライマー)をTACC3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(特にはcDNA)のTACC3遺伝子領域内の任意の部分)から設計する。あるいは、センスプライマー又はアンチセンスプライマーの一方を、該融合ポリヌクレオチドの融合点(後述)を含む領域に対応するように設計してもよい。好ましくは、本発明の検出用キットに含まれるプライマーセットを用い、更に好ましくは、本発明の検出用キットに最も好適に含まれるプライマーセットを用いる。PCR増幅モニター法では、各遺伝子に対応した上記センスプライマーを混ぜることにより、1反応液により全ての検出対象ポリヌクレオチドを検出するマルチプレックスPCR(Multiplex PCR)を設計することもできる。各増幅技術に適した方法によって目的とした遺伝子(全体又はその特異的部分)が増幅されたか否かを確認することができる。例えば、PCR法では、PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色等によって目的とするサイズの増幅断片が得られたか否かを確認できる。目的とするサイズの増幅断片が得られた場合は、被験者から得た試料において、検出対象ポリヌクレオチドが存在していたことになる。このように、検出対象ポリヌクレオチドの存在を検出することができる。
【0043】
本発明の融合遺伝子の検出方法としては、被験者から得た試料中の、特定のポリヌクレオチドの存在を遺伝子増幅反応により検出する工程に加え、さらに目的とするサイズの増幅断片が得られたか否かを検出する工程を含むことが好ましい。
【0044】
ハイブリダイゼーション技術を利用した検出は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロット法、DNAマイクロアレイ法、RNAプロテクション法などを使用して行う。ハイブリダイゼーションに用いるプローブとしては、検出対象ポリヌクレオチド又はそれらの相補鎖にストリンジェントな条件下で(好ましくはよりストリンジェントな条件下で)ハイブリダイズする連続した少なくとも32塩基の核酸分子であって、融合点を中心にその上流及び下流のそれぞれ16塩基からなる配列(具体的には、配列番号1に示される塩基配列の第2265番〜第2296番(第2280番/第2281番)、又は配列番号3に示される塩基配列の第2265番〜第2296番(第2280番/第2281番)、配列番号5に示される塩基配列の第2353番〜第2384番(第2368番/第2369番)配列番号25に示される塩基配列の第2227番〜第2258番(第2242番/第2243番)、又は配列番号27に示される塩基配列の第2218番〜第2249番(第2233番/第2234番)。なお、括弧内の塩基番号は融合点を示す。)、又はそれらの相補鎖を含むプローブを用いることができる。
【0045】
なお、本明細書における融合点とは、FGFR3遺伝子由来の部分とTACC3遺伝子由来の部分とが融合した点を意味する。
【0046】
インサイチュハイブリダイゼーション技術を利用した検出は、公知のFISH法(fusion assay)に従って実施することができる。又は、クロモジェニックインサイチュハイブリダイゼーション(CISH)法とシルバーインサイチュハイブリダイゼーション(SISH)法を組み合わせたヒュージョンアッセイで実施することができる。
【0047】
インサイチュハイブリダイゼーション技術を利用した検出は、公知のRNA FISH法(J. Mol. Diagn. 2012; 22−29)に従って実施することができる。より具体的には、検出プローブをFGFR3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(mRNA)のFGFR3遺伝子領域内の任意の部分)から、別の検出プローブをTACC3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(mRNA)のTACC3遺伝子領域内の任意の部分)から設計する。被験者から得た試料と該プローブのハイブリダイゼーションを行う。引き続き、シグナルを増幅させる試薬のハイブリダイゼーションを行い、シグナルを増幅させる。FGFR3遺伝子に由来する部分からのシグナルとTACC3遺伝子に由来する部分からのシグナルとのシグナルの重なりを検出する。上記FGFR3遺伝子に由来する部分から設計したプローブとTACC3遺伝子に由来する部分から設計したプローブを検出する蛍光試薬又は発色試薬を別することにより、当該由来の異なる二種のプローブが同じ場所(同一分子内)にあるか否かを観察することができる。当該二種のプローブが同じ場所(同一分子内)にあることを観察することにより、検出対象ポリヌクレオチドの存在を検出することができる。シグナルを増幅させるために用いる試薬としては、PreAmplifier Mix QT(Affymetrix社)、Amplifier Mix QT(Affymetrix社)、Label Probe Mix(Affymetrix社)、及びLabel Probe Diluent QT(Affymetrix社)を用いることができる。
【0048】
また、本明細書における「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate、SDS)、50%ホルムアミド、200μg/mL鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」の条件である。「よりストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/mL鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件である。
【0049】
さらには、RT−PCR等の遺伝子増幅技術を利用することができる。RT−PCR法においては、遺伝子の増幅過程においてPCR増幅モニター(リアルタイムPCR)法(Genome Res., 6(10), 986, 1996)を用いることにより、検出対象ポリヌクレオチドの存在について、より定量的な解析を行うことが可能である。PCR増幅モニター法としては、例えば、ABI PRISM7900(アプライドバイシステムズ社)を用いることができる。リアルタイムPCRは公知の方法であり、そのための装置及びキットは市販されており、これらを利用して簡便に行える。
【0050】
本発明における融合遺伝子又は融合蛋白質の検出は、被験者から得た試料における、検出対象ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド(以下、「検出対象ポリペプチド」と称する)の存在を直接検出することによって実施してもよい。「FGFR3とTACC3との融合蛋白質」は検出対象ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド(すなわち、検出対象ポリペプチド)である。検出対象ポリペプチドのうち、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv1、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv2、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv3、配列番号26に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv5a、配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv5bと称する。FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv1、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv2、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv3、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv5a、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv5bを総称してFGFR3−TACC3融合ポリペプチド(FGFR3−TACC3融合蛋白質)と称する。
【0051】
例えば、検出対象ポリペプチドを検出する工程において、検出は、被験者から得た試料(例えば、被験者から得た癌組織や細胞)由来の可溶化液を調製し、その中に含まれる検出対象ポリペプチドを、融合ポリペプチドを構成する各蛋白質に対する抗体(例えば、FGFR3に対する抗体とTACC3に対する抗体)を組み合わせることによる免疫学的測定法及び酵素活性測定法を組み合わせた方法等により実施してもよい。また、適宜前処理(例えば、パラフィンの除去)してある被験者から得た試料(例えば、FFPE切片)に含まれる検出対象ポリペプチドを、融合ポリペプチドを構成する各蛋白質に対する抗体(例えば、FGFR3に対する抗体とTACC3に対する抗体)を組み合わせることによる免疫組織染色技術により検出を実施してもよい。これらの手法としては、検出対象ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いた、酵素免疫測定法、2抗体サンドイッチELISA法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、ウェスタンブロッティング法、免疫組織染色等の手法が挙げられる。
【0052】
免疫組織染色技術を利用した検出は、一分子単位で目的ポリペプチドを特異的に検出する公知の技術Proximity Ligation Assay(Nat. Methods. 2006; 995−1000)に従って実施することができる。より具体的には、前記融合ポリペプチドのFGFR3遺伝子由来部分を認識する抗体と、前記融合ポリペプチドのTACC3遺伝子由来部分を認識する抗体を用いて、当該二つの抗体が同一分子を認識していることを上記技術によって検出することにより、検出対象ポリペプチドの存在を検出することができる。さらに具体的には、検出は、i)被験者から得た試料に前記融合ポリペプチドのFGFR3遺伝子由来部分を認識する抗体(一次抗体)及び前記融合ポリペプチドのTACC3遺伝子由来部分を認識する抗体(一次抗体)を接触させる工程、ii)該一次抗体にそれぞれ結合する、オリゴヌクレオチドが連結された二次抗体を添加する工程、iii)該オリゴヌクレオチドを連結した二次抗体、二次抗体に連結した該オリゴヌクレオチドと部分的に相補的な二種類のオリゴヌクレオチド及びそれらが近接した際にライゲーションさせて該二次抗体間に環状構造を形成することができるライゲースを含有する溶液を添加し、ライゲーション反応させる工程、iv)形成された環状構造に沿って核酸を伸長させる工程、v)伸長した核酸にハイブリダイズすることのできる標識されたオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせる工程、vi)該標識シグナルを検出する工程により、実施することができる。ある態様としては、PLAプローブやDuolink II試薬キットならびにDuolink II Bright field試薬キット(Olink社)に含まれる試薬を用いることができる。
【0053】
本発明の検出方法における検出対象ポリヌクレオチド又は検出対象ポリペプチドが、被験者から得た試料から検出された場合は、当該被験者は、当該ポリヌクレオチド又は当該ポリペプチド陽性の癌を有する対象(患者)であり、本発明のポリペプチドを阻害する物質(ある態様では化合物AZD4547、化合物Dovitinib、化合物BGJ398又は化合物LY2874455)による治療の適用対象となる。
【0054】
<本発明の検出用キット、本発明のプライマーセット、本発明のプローブセット>
本発明のプライマーセットを含む検出用キットには、少なくとも、本発明の検出方法における検出対象ポリヌクレオチドを特異的に増幅できるように設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマー(プライマーセットとも称する)が含まれる。本発明のプライマーセットは、検出対象ポリヌクレオチド増幅用のプライマーとして機能するポリヌクレオチドのセットである。
【0055】
本発明のプライマーセットには、
FGFR3遺伝子に由来する部分から設計されるセンスプライマー及びTACC3遺伝子に由来する部分から設計されるアンチセンスプライマーを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出するためのプライマーセットであって、該アンチセンスプライマーは「検出対象ポリヌクレオチド」にストリンジェントな条件下(好ましくは、よりストリンジェントな条件下)でハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基の核酸分子)からなり、該センスプライマーは「検出対象ポリヌクレオチド」の相補鎖にストリンジェントな条件(好ましくは、よりストリンジェントな条件下)でハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基の核酸分子)からなる、プライマーセット
が含まれる。
本発明のプライマーセットにおいて、センスプライマー又はアンチセンスプライマーの一方を、該融合ポリヌクレオチドの融合点(前述)を含む部分に対応するように設計してもよい。
【0056】
本発明のプライマーセットの具体的な態様として、以下(1)〜(5)からなる群より選択されるプライマーセットが挙げられる:
(1)配列番号1の塩基番号1から2280間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号1の塩基番号2281から2856間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
(2)配列番号3の塩基番号1から2280間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号3の塩基番号2281から2961間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
(3)配列番号5の塩基番号1から2368間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号5の塩基番号2369から3003間の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット。
(4)配列番号25の塩基番号1〜2242の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号25の塩基番号2243〜3144の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット、
[16]配列番号27の塩基番号1〜2233の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマー及び配列番号27の塩基番号2234〜3135の任意の連続する少なくとも16塩基のオリゴヌクレオチドに対して相補的であるオリゴヌクレオチドからなるアンチセンスプライマーのプライマーセット
【0057】
前記プライマーセットにおいては、センスプライマーとアンチセンスセンスプライマーの選択位置の間隔が1kb以下であるか、あるいは、センスプライマーとアンチセンスセンスプライマーにより増幅される増幅産物の大きさが1kb以下であることが好ましい。
また、本発明のプライマーは、通常、15〜40塩基、好ましくは16〜24塩基、更に好ましくは18〜24塩基、特に好ましくは20〜24塩基の鎖長を有する。
【0058】
本発明のプライマーセットは、本発明の検出方法において、検出対象ポリヌクレオチドを増幅及び検出するために用いることができる。また、本発明のプライマーセットに含まれる各プライマーは、特に限定されるものではないが、例えば、化学合成法によって製造することができる。
【0059】
本発明のプローブセットを含む検出用キットには、少なくとも、本発明の検出方法における検出対象ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズできるように設計した、FGFR3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(mRNA)のFGFR3遺伝子領域内の任意の部分)から設計したプローブセット及びTACC3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(mRNA)のTACC3遺伝子領域内の任意の部分)から設計したプローブセット(プローブセットとも称する)及びハイブリダイズしたシグナルを増幅する試薬が含まれる。該プローブセットは、検出対象ポリヌクレオチドにハイブリダイズするプローブセットとして機能するポリヌクレオチドのセットである。
【0060】
本発明のプローブセットには、
FGFR3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(mRNA)のFGFR3遺伝子領域内の任意の部分)から設計したプローブとTACC3遺伝子に由来する部分(例えば、前記融合ポリヌクレオチド(mRNA)のTACC3遺伝子領域内の任意の部分)から設計したプローブとを含む、FGFR3遺伝子とTACC3遺伝子との融合遺伝子を検出するためのプローブセットであって、各プローブは「検出対象ポリヌクレオチド」にハイブリダイズする核酸分子からなる、プローブセットが含まれる。
ある態様では、各プローブは、分岐DNAプローブ(branched DNA probe)であり、配列情報に基づいた分岐DNAプローブはアフィメトリクス社より入手できる。
【0061】
本発明のプローブセットの具体的な態様として、以下(1)〜(3)からなる群より選択されるプローブセットが挙げられる。
(1)配列番号1の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む隣接したプローブペアからなるプローブセットを複数種(好ましくは、20種のプローブセットを含む)、及び、配列番号1の塩基番号2281〜2856の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む隣接したプローブペアからなるプローブセットを複数種(好ましくは、20種のプローブセットを含む)を含むプローブセット、
(2)配列番号3の塩基番号1〜2280の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む隣接したプローブペアからなるプローブセットを複数種(好ましくは、20種のプローブセットを含む)及び配列番号3の塩基番号2281〜2961の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む隣接したプローブペアからなるプローブセットを複数種(好ましくは、20種のプローブセットを含む)を含むプローブセット、
(3)配列番号5の塩基番号1〜2368の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む隣接したプローブペアからなるプローブセットを複数種(好ましくは、20種のプローブセットを含む)及び配列番号5の塩基番号2369〜3003の任意の連続する少なくとも16塩基に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む隣接したプローブペアからなるプローブセットを複数種(好ましくは、20種のプローブセットを含む)を含むプローブセット。
ここで、隣接したプローブペアからなるプローブセットは、多い方がシグナルが得られやすいため、好ましい。ある態様では、20種程度が用いられる。
【0062】
本発明のプローブセットは、本発明の検出方法において、検出対象ポリヌクレオチドを検出するために用いることができる。また、本発明のプローブセットに含まれる各プローブは、特に限定されるものではないが、例えば、化学合成法によって製造することができる。
【0063】
<本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療用医薬組成物>
癌患者の検体から単離同定した融合ポリヌクレオチド(実施例1〜3)は、癌の原因遺伝子であることが示され(実施例8、実施例11)、一部の肺癌又は膀胱癌患者に融合ポリヌクレオチドの存在が検出された(実施例4〜6)。更に、本発明のポリペプチドの活性及び/又は発現を阻害することにより足場非依存性の細胞増殖が阻害される(すなわち抗癌作用が示される)という本発明者らが見出した新規な知見(実施例9、実施例12、実施例13、実施例14、実施例16)から、本発明のポリペプチドを阻害(本発明のポリペプチドの活性及び/又は発現を阻害)する物質は、本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療効果を有することがわかった。
本発明には、本発明のポリペプチドを阻害する物質(例えば、後述の医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法のいずれかによって得られた物質[例えば、二重鎖核酸(siRNAを含む)、蛋白質(抗体又は抗体断片を含む)、ペプチド、又はそれ以外の化合物])を有効成分とする本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療用医薬組成物が包含される。
【0064】
本発明の医薬組成物における有効成分は、後述の医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法により選択することができる。例えば後述の実施例9記載の化合物Dovitinib(Clinical Cancer Reserach 2011; 17:7451−7461に記載の化合物、4−Amino−5−fluoro−3−[6−(4−methylpiperazin−1−yl)−1H−benzo[d]imidazol−2−yl]quinoline−2(1H)−one)、AZD4547(WO2008075068 Example 154とAACR2011, poster 3568;タイトル:「Characterization of AZD4547: An orally bioavailable, potent and selective inhibitor of FGFR tyrosine kinases 1,2 and 3」に記載の化合物、N−{5−[2−(3,5−dimethoxyphenyl)ethyl]−2H−pyrazol−3−yl}−4−[(3R,5S)−3,5−dimethylpiperazin−1−yl]benzamide)、及びBGJ398(Journal of Medicinal Chemistry 2011;54;7066−7083に記載の化合物、3−(2,6−dichloro−3,5−dimethoxy−phenyl)−1−{6−[4−(4−ethyl−piperazin−1−yl)、実施例21に記載の化合物LY2874455(WO2010129509 Example 1;Mol Cancer Ther, 2011, 10, 2200−2210;(R)−(E)−2−{4−[2−{5−[1−(3,5−dichloropyridin−4−yl)ethoxy]−1H−indazol−3−yl}vinyl]−1H−pyrazol−1−yl}ethanol)を挙げることができる。また、製造例1から5、実施例29及び実施例30に記載された化合物である、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-{3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}ピリミジン-2-アミン(化合物A)、2-[4-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1H-ピラゾール-1-イル]エタノール(化合物B)、(2R)-3-[4-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパン-1,2-ジオール(化合物C)、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル]ピリミジン-2-アミン(化合物D)、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-{1-メチル-5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-1H-ピラゾール-3-イル}ピリミジン-2-アミン(化合物E)を挙げることができる。
また、公知のFGFR3阻害活性を有する低分子化合物(FGFR3阻害剤)から後述の医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法によって選択した化合物を本発明の医薬組成物における有効成分として用いることができる。特に、化合物AZD4547、化合物Dovitinib、化合物BGJ398及び化合物LY2874455を例示することができる。
【0065】
本発明の医薬組成物の有効成分として例示される二重鎖核酸は、二重鎖の核酸(RNA又はDNA)部分と、好ましくはセンス鎖及びアンチセンス鎖の3'末端のオーバーハングとからなり、RNAiを誘導する。RNAiは進化的に保存された現象で、RNaseIIIエンドヌクレアーゼによって生じる21〜23塩基の二重鎖核酸を介して起こる(Genes Dev. 15, 485−490, 2001)。3'側のオーバーハングはそれぞれ1又は2塩基の任意の核酸であるが、2塩基が好ましい。なお、前記塩基数(21〜23塩基)は、オーバーハングを含むセンス鎖又はアンチセンス鎖の各々の塩基数である。また、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ塩基数であることもできるし、異なる塩基数であることもできるが、同じ塩基数であることが好ましい。
【0066】
二重鎖核酸の3'側オーバーハングを構成するリボ核酸としては、例えば、U(ウリジン)、A(アデノシン)、G(グアノシン)、又はC(シチジン)を用いることができ、3'側のオーバーハングを構成するデオキシリボ核酸としては、例えば、dT(デオキシチミジン)、dA(デオキシアデノシン)、dG(デオキシグアノシン)、又はdC(デオキシシチジン)を用いることができる。
【0067】
本発明の医薬組成物の有効成分として用いることのできる二重鎖核酸は、二重鎖部分が配列番号1、配列番号3及び配列番号5に記載の塩基に基づいて設計される、本発明のポリペプチドの発現阻害活性を有する二重鎖核酸である。
【0068】
本発明のポリペプチドを阻害する物質(例えば、後述の医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法により得られた物質[例えば、二重鎖核酸、蛋白質(抗体又は抗体断片を含む)、ペプチド、又はそれ以外の化合物])を有効成分とする製剤は、前記有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる薬理学上許容される担体、賦形剤、及び/又はその他の添加剤を用いて、医薬組成物として調製することができる。
【0069】
投与としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、又は経口用液剤などによる経口投与、あるいは、静注(点滴を含む)、筋注、若しくは皮下注などの注射剤、坐剤、経皮投与剤、又は膀胱内注入や経粘膜投与剤などによる非経口投与を挙げることができる。特に胃で消化されるペプチドにあっては、静注等の非経口投与が好ましい。
【0070】
経口投与のための固体組成物においては、1又はそれ以上の活性物質と、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合することができる。前記組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、又は溶解若しくは溶解補助剤などを含有することができる。錠剤又は丸剤は、必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆することができる。
【0071】
経口のための液体組成物は、例えば、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はエリキシル剤を含むことができ、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、精製水又はエタノールを含むことができる。前記組成物は、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、又は防腐剤を含有することができる。
【0072】
非経口のための注射剤としては、無菌の水性若しくは非水性の溶液剤、懸濁剤、又は乳濁剤を含むことができる。水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、希釈剤として、例えば、注射用蒸留水又は生理用食塩水などを含むことができる。非水溶性の溶液剤又は懸濁剤の希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、アルコール類(例えば、エタノール)、又はポリソルベート80等を含むことができる。前記組成物は、更に湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解若しくは溶解補助剤、又は防腐剤などを含むことができる。前記組成物は、例えば、バクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、又は照射によって無菌化することができる。また、無菌の固体組成物を製造し、使用の際に、無菌水又はその他の無菌用注射用媒体に溶解し、使用することもできる。
【0073】
投与量は、有効成分すなわち医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法により得られた物質の活性の強さ、症状、投与対象の年齢、又は性別等を考慮して、適宜決定することができる。好ましくは、腫瘍付近の血中濃度又は腫瘍内濃度が薬剤が本発明のポリペプチドの活性又は発現を50%阻害する濃度の3〜30倍、例えば、10倍になるような量で、投与量は経路によって算出することができる。例えば、経口投与の場合、その投与量は、通常、成人(体重60kgとして)において、1日につき約0.1〜100mg、好ましくは0.1〜50mgである。非経口投与の場合、注射剤の形では、1日につき0.01〜50mg、好ましくは0.01〜10mgである。
【0074】
本発明の医薬組成物による治療対象は、本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のポリペプチドの存在が検出された被験者(すなわち、本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌患者)である。本発明のポリヌクレオチドによって癌化した細胞が本発明のポリペプチドを阻害する物質により死滅することから、本発明のポリペプチドを阻害する物質が本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)の有効な治療剤になる。
【0075】
以下に、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、及び化合物Eの製造法を示す。なお、文章中において、「ESI+」は質量分析におけるm/z値(イオン化法ESI、(M+H)
+)を、「APCI/ESI+」は質量分析におけるm/z値(イオン化法APCIとESIの同時測定、(M+H)
+)を、「NMR1」はジメチルスルホキシド-d
6中の
1H-NMRにおけるδ(ppm)を、「NMR2」はCDCl
3中の
1H-NMRにおけるδ(ppm)をそれぞれ示す。
【0076】
製造例1 化合物Aの製造
(1)3,5-ジメトキシ安息香酸メチル(1g)とアセトニトリル(20mL)の混合物を氷冷し、N-フルオロ-N'-(クロロメチル)トリエチレンジアミンビス(テトラフルオロボラート) (4.09g)を加え、室温で終夜撹拌した。反応混合物に飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム及び塩基性シリカゲルを加え、30分間撹拌した後、濾過した。濾液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシ安息香酸メチル(292mg)を得た。
ESI+:233.
(2)2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシ安息香酸メチル(10g)とテトラヒドロフラン(50mL)の混合物を氷冷し、水素化ホウ素リチウム(3.0M テトラヒドロフラン溶液, 43mL)を加えた後、室温で65時間撹拌した。反応混合物を再び氷冷し、さらに水素化ホウ素リチウム(3.0M テトラヒドロフラン溶液, 14mL)を加え、室温で22時間撹拌した。反応混合物を氷冷し、氷水(300mL)の中にゆっくり加えた。さらに濃塩酸(25mL)をゆっくり加えて、室温で1時間撹拌した。トルエン/酢酸エチル(1:1)で抽出し、有機層を飽和重曹水及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)メタノール(8.67g)を得た。
ESI+:205.
(3)(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)メタノール(1.71g)、トリエチルアミン(2.57mL)及びテトラヒドロフラン(34mL)の混合物を氷冷し、メタンスルホニル クロリド(716μL)を加えた後、1時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル メタンスルホネート(2.32g)を得た。
NMR2:3.04(3H,s),3.88(6H,s),5.34(2H,s),6.72(1H,t,J=8.2Hz).
(4)2-クロロ-5-ヒドロキシピリミジン(4.38g)、炭酸カリウム(9.27g)及びN,N-ジメチルホルムアミド(79mL)の混合物に、2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル メタンスルホネート(7.89g)を加えた後、60℃で1時間撹拌した。反応混合物に水を加え、生じた固体を濾取し、水で洗浄した後、減圧乾燥し、2-クロロ-5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン(8.53g)を得た。
APCI/ESI+:317.
(5)アルゴン雰囲気下、2-クロロ-5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン(1.03g)、3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリン(1.29g)、1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジイルビス(ジフェニルホスフィン)(609mg)、炭酸セシウム(3.19g)及びジオキサン(20.6mL)の混合物に、酢酸パラジウム(146mg)を室温で加え、100℃で4時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/濃アンモニア水)、続いて塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製した後、酢酸エチル、続いてエタノールで再結晶し、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-{3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}ピリミジン-2-アミン(化合物A:830mg)を得た。
ESI+:585.
NMR1:1.45-1.60(2H,m),1.73-1.84(2H,m),2.14(3H,s),2.17-2.58(11H,m),3.24-3.36(2H,m),3.75(3H,s),3.87(6H,s),5.16(2H,s),6.79(1H,d,J=8.8Hz),7.07(1H,t,J=8.4Hz),7.24(1H,dd,J=8.8,2.4Hz),7.32(1H,d,J=2.4Hz),8.29(2H,s),9.21(1H,s).
【0077】
製造例2 化合物Bの製造
(1)アルゴン雰囲気下、製造例1(4)と同様の方法で製造した2-クロロ-5-[ (2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン(800mg)、2-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)エタノール(642mg)、1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジイルビス(ジフェニルホスフィン)(472mg)、炭酸セシウム(2.47g)及びジオキサン(16mL)の混合物に、酢酸パラジウム(113mg)を室温で加え、100℃で6時間撹拌した。反応混合物に水とクロロホルムを加え、不溶物をセライト濾過で濾別した後、濾液をクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し、2-[4-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1H-ピラゾール-1-イル]エタノール(化合物B:139mg)を得た。
ESI+:408.
NMR1:3.69(2H,dd,J=11.0,5.6Hz),3.87(6H,s),4.07(2H,t,J=5.6Hz),4.83(1H,t,J=5.4Hz),5.14(2H,s),7.07(1H,t,J=8.4Hz),7.45(1H,d,J=0.6Hz),7.88(1H,d,J=0.6Hz),8.26(2H s),9.20(1H,s).
【0078】
製造例3 化合物Cの製造
(1)アルゴン雰囲気下、製造例1(4)と同様の方法で製造した2-クロロ-5-[(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン(1.33g)、1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-アミン(913mg)、1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジイルビス(ジフェニルホスフィン)(785mg)、炭酸セシウム(4.11g)及びジオキサン(26.6mL)の混合物に、酢酸パラジウム(189mg)を室温で加え、100℃で4時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-[1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリミジン-2-アミン(1.73g)を得た。
APCI/ESI+:448.
(2)5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-[1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリミジン-2-アミン(3.59g)及びメタノール(20mL)の混合物に、4M塩化水素/ジオキサン溶液(40mL)を加え、室温で6時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、残渣に飽和重曹水を加えた。生じた固体を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄した後、減圧乾燥し、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-(1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-アミン(2.9g)を得た。
APCI/ESI+: 364.
(3)5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-(1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-アミン(50mg)、炭酸カリウム(57mg)及びN,N-ジメチルホルムアミド(1mL)の混合物に[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]メチル 4-メチルベンゼンスルホネート(118mg)を加え、60℃で1時間、110℃で4日間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過した。濾液を減圧濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-(1-{[(4R)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-アミン(39mg)を得た。
APCI/ESI+:478.
(4)5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-(1-{[(4R)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]メチル}-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-アミン(45mg)及びテトラヒドロフラン(2mL)の混合物に1M塩酸(1mL)を加え、50℃で3時間撹拌した。反応混合物に飽和重曹水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製した後、酢酸エチルで固化し、(2R)-3-[4-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパン-1,2-ジオール(化合物C:25mg)を得た。
ESI+:438.
NMR1:3.23-3.38(2H,m),3.72-3.80(1H,m),3.84-3.96(7H,m),4.15(1H,dd,J=13.8,4.1Hz),4.67(1H,t,J=5.6Hz),4.91(1H,d,J=5.3Hz),5.14(2H,s),7.06(1H,t,J=8.4Hz),7.45(1H,d,J=0.6Hz),7.87(1H,d,J=0.6Hz),8.26(2H,s),9.21(1H,s).
【0079】
製造例4 化合物Dの製造
(1)製造例1(5)と同様にして、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)アニリン、及び、製造例1(4)と同様の方法で製造した2-クロロ-5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジンを原料として用いて、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル]ピリミジン-2-アミン(化合物D)を得た。
ESI+:472.
NMR1:2.21(3H,s),2.41-2.48(4H,m),2.98-3.08(4H,m),3.87(6H,s),5.15(2H,s),6.81-6.90(2H,m),7.07(1H,t,J=8.4Hz),7.47-7.55(2H,m),8.26(2H,s),9.15(1H,s).
【0080】
製造例5 化合物Eの製造
(1)(1-メチル-3-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)メタノール(398mg)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(459μL)及び酢酸エチル(8mL)の混合物に、p-トルエンスルホン酸 一水和物(96mg)を加え、室温で1.5時間撹拌した。さらに3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(459μL)及びp-トルエンスルホン酸 一水和物(96mg)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過した。濾液を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-メチル-3-ニトロ-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)メチル]-1H-ピラゾール(487mg)を得た。
APCI/ESI+:242.
(2)アルゴン雰囲気下、1-メチル-3-ニトロ-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)メチル]-1H-ピラゾール(487mg)、テトラヒドロフラン(4.9mL)及びエタノール(4.9mL)の混合物に、10%パラジウム-炭素(50mg)を加えた。水素雰囲気下、12時間撹拌した後、セライト濾過により不溶物を除いた。濾液を減圧濃縮し、1-メチル-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)メチル]-1H-ピラゾール-3-アミン(426mg)を得た。
APCI/ESI+:212.
(3)製造例3(1)と同様にして、1-メチル-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)メチル]-1H-ピラゾール-3-アミン、及び、製造例1(4)と同様の方法で製造した2-クロロ-5-[(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジンを原料として用いて、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-{1-メチル-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)メチル]-1H-ピラゾール-3-イル}ピリミジン-2-アミンを得た。
APCI/ESI+:492.
(4)5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-{1-メチル-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)メチル]-1H-ピラゾール-3-イル}ピリミジン-2-アミン(706mg)とメタノール(8mL)の混合物に4M塩化水素/ジオキサン溶液(8mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、残渣に飽和重曹水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、[3-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル]メタノール(444mg)を得た。
ESI+:408.
(5)[3-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル]メタノール(350mg)、トリエチルアミン(359μL)、ジクロロメタン(7mL)及びテトラヒドロフラン(7mL)の混合物を氷冷し、メタンスルホニル クロリド(120μL)を加えた後、室温で3時間撹拌した。反応混合物に水及び酢酸エチルを加え、生じた固体を濾取した後、減圧乾燥し、[3-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル]メチル メタンスルホネート(218mg)を得た。
NMR2:2.96(3H,s),3.85(3H,s),3.89(6H,s),5.16(2H,s),5.25(2H,s),6.68(1H,t,J=8.0Hz),6.91(1H,s),7.63(1H,brs),8.24(2H,s).
(6)[3-({5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル]メチル メタンスルホネート(795mg)とN-メチルピロリドン(15.9mL)の混合物に、1-メチルピペラジン(901μL)を加え、80℃で2時間撹拌した。反応混合物に水及び飽和重曹水を加え、生じた固体を濾取した後、濾液をクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣を先に濾取した固体と合わせた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)、続いて塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で精製した後、エタノール/ジイソプロピルエーテルにて固化し、5-[(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]-N-{1-メチル-5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-1H-ピラゾール-3-イル}ピリミジン-2-アミン(化合物E:168mg)を得た。
ESI+:490.
NMR1:2.14(3H,s),2.18-2.53(8H,m),3.45(2H,s),3.67(3H,s),3.87(6H,s),5.15(2H,s),6.46(1H,s),7.06(1H,t,J=8.4Hz),8.26(2H,s),9.42(1H,s).
【0081】
<医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法>
医薬組成物の有効成分をスクリーニングする方法には、[1]本発明のポリペプチドを阻害する物質をスクリーニングする方法と、[2]本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤をスクリーニングする方法とが含まれる。
[1]本発明のポリペプチドを阻害(本発明のポリペプチドの活性及び/又は発現を阻害)する物質をスクリーニングする方法
本発明のポリペプチドを阻害する物質のスクリーニング方法は、下記工程(i)〜(iii)を含む限り、特に限定されるものではない:
(i)本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチドを発現している細胞に試験物質を接触させる工程、
(ii)該ポリペプチドが阻害されるか否かを分析する工程、及び
(iii)該ポリペプチドを阻害する物質を選択する工程。
【0082】
本スクリーニング方法には、以下の方法が含まれる。
(a)インビトロ(in vitro)型スクリーニング方法;
(1)本発明のポリペプチドに試験物質を接触させる工程、(2)該ポリペプチドの活性が阻害されるか否かを分析する工程、及び(3)該ポリペプチドの活性を阻害する物質を選択する工程を含むことを特徴とする、本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質をスクリーニングする方法。
【0083】
(b)細胞型スクリーニング方法;
(1)本発明のポリペプチドを発現している細胞に試験物質を接触させる工程、(2)該ポリペプチドの活性が阻害されるか否かを分析する工程、及び(3)該ポリペプチドの活性を阻害する物質を選択する工程を含むことを特徴とする、本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質をスクリーニングする方法。
【0084】
(c)発現阻害型スクリーニング方法;
(1)本発明のポリペプチドを発現している細胞に試験物質を接触させる工程、(2)該ポリペプチドの発現が阻害されるか否かを分析する工程、及び(3)該ポリペプチドの発現を阻害する物質を選択する工程を含むことを特徴とする、本発明のポリペプチドの発現を阻害する物質をスクリーニングする方法。
【0085】
各スクリーニング方法について以下に説明する。本発明のポリペプチドを発現している細胞には、本発明のポリペプチドを天然に発現している細胞と、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターで細胞を形質転換することにより、本発明のポリペプチドを発現させた細胞とが含まれるが、本発明のポリペプチドを発現している細胞としては、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターで細胞を形質転換することにより、本発明のポリペプチドを発現させた細胞が好ましい。
【0086】
(a)インビトロ型スクリーニング方法
インビトロ型スクリーニング方法には、精製した本発明のポリペプチドに試験物質を添加して接触させ(接触させる工程)、該試験物質により本発明のポリペプチドの活性が阻害されたか否かを、試験物質を接触させなかった場合の本発明のポリペプチドの活性に比較して分析し(分析する工程)、本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質(すなわち本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤)を選択する方法が含まれる。
【0087】
医薬組成物の有効成分をスクリーニング方法において、各工程は、具体的には、例えば、以下のように実施できる。精製した本発明のポリぺプチドに試験物質を添加し接触させた後、ATPを添加し、該ポリペプチドの活性を測定する。コントロールとして、該精製したポリぺプチドと試験物質の溶媒(例えばDMSO)とを混合し接触させた後、ATPを添加し、該ポリペプチドの活性を測定する。バックグラウンドコントロールとして、ATPを添加しない条件を設定することができる。試験物質により本発明のポリペプチドの活性が阻害されたか否かを分析する。試験物質により本発明のポリペプチドの活性(すなわち自己リン酸化活性)が阻害されたか否かは、試験物質による本発明のポリペプチドのチロシンリン酸化レベルの変化を分析することにより判定できる。すなわち、溶媒コントロール添加(すなわち接触)時に比較し、試験物質添加(すなわち接触)時に本発明のポリペプチドの活性(すなわち自己リン酸化活性)が阻害されていた場合、その試験物質を、本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質(すなわち本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤)として選択する。上記工程において、ATPを添加する前にペプチド基質を添加して混合すること、及び、該ペプチド基質に対するリン酸化活性を本発明のポリペプチドの活性として分析する(すなわち、試験物質により本発明のポリペプチドの活性が阻害されたか否かを、本発明のポリペプチドによるペプチド基質のリン酸化レベルの変化を分析することによって判定する)以外は上記と同様にして行うスクリーニング方法も、本発明のインビトロ型スクリーニング方法に含まれる。上記記載の方法で、50%以上活性を阻害する濃度が10μM以下、好ましくは1μM以下、更に好ましくは0.1μM以下のものを本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質として選択する。例えば、実施例21の方法を本発明のインビトロ型スクリーニング方法として用いることができる。
【0088】
(b)細胞型スクリーニング方法
細胞型スクリーニング方法には、本発明のポリペプチドを発現している細胞と試験物質を混合(すなわち添加)して接触させ(接触させる工程)、該試験物質により本発明のポリペプチドの活性が阻害されたか否かを、試験物質を接触させなかった場合の本発明のポリペプチドの活性に比較して分析し(分析する工程)、本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質(すなわち本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤)を選択する方法が含まれる。具体的には、例えば以下のように実施できる。
【0089】
まず、本発明のポリペプチドを発現している細胞と試験物質又は溶媒コントロール(例えばDMSO)とをそれぞれ接触させる。一定時間細胞を培養した後、培養した細胞を溶解して調製した細胞溶解液を用いて、公知のSDS電気泳動法及び抗リン酸化FGFR3抗体(例えばCell Signaling Technology社)を用いたイムノブロッティングにより本発明のポリペプチドの活性(すなわち自己リン酸化活性)を測定することによって、試験物質により本発明のポリペプチドの活性(すなわち自己リン酸化活性)が阻害されたか否かを分析する。試験物質により本発明のポリペプチドの活性が阻害されたか否かは、試験物質による本発明のポリペプチドのチロシンリン酸化レベルの変化を分析することにより判定できる。すなわち、溶媒コントロール添加(すなわち接触)時に比較し、試験物質添加(すなわち接触)時に本発明のポリペプチドの活性が阻害されていた場合、その試験物質を、本発明のポリペプチドの活性を阻害する物質(すなわち本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤)として選択する。
【0090】
(c)発現阻害型スクリーニング方法
発現阻害型スクリーニング方法には、本発明のポリペプチドを発現している細胞と試験物質を混合(すなわち添加)して接触させ(接触させる工程)、該試験物質により本発明のポリペプチドの発現が阻害されたか否かを、試験物質を接触させなかった場合の本発明のポリペプチドの発現に比較して分析し(分析する工程)、本発明のポリペプチドの発現を阻害する物質(すなわち本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療剤(特には肺癌又は膀胱癌)治療剤)を選択する方法が含まれる。具体的には、例えば以下のように実施できる。
【0091】
本発明のポリペプチドを発現している任意の細胞と試験物質又は溶媒コントロール(例えばDMSO)とをそれぞれ接触させる。培養後、細胞の抽出物を調製し、次いで、抽出物を用いて、試験物質により本発明のポリペプチドの発現が阻害されたか否かを分析する。本発明のポリペプチドの発現が阻害されたか否かは、本発明のポリペプチドのmRNA又は蛋白質の発現が阻害されたか否かにより分析することができる。より具体的には、前記細胞抽出液に存在する本発明のポリペプチドのmRNA又は蛋白質の量を公知の発現量分析方法、例えば、ノーザンブロット法や定量的PCR法又はイムノブロット法やELISA法等で同定する。試験物質により本発明のポリペプチドの発現が阻害されたか否かは、試験物質による本発明のポリペプチドの発現量の変化を分析することにより判定できる。すなわち、溶媒コントロール接触時に比較し、試験物質接触時に本発明のポリペプチドの発現量(mRNA又は蛋白質量)が低下していた場合、その試験物質を、本発明のポリペプチドの発現を阻害する物質(すなわち本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤)として選択する。
【0092】
[2]本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療剤をスクリーニングする方法
本発明のポリペプチドを阻害(本発明のポリペプチドの活性及び/又は発現を阻害)する物質をスクリーニングする方法は、本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(好ましくは肺癌又は膀胱癌)治療剤をスクリーニングする方法として利用できる。すなわち、本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療剤をスクリーニングする方法は、上記[1]本発明のポリペプチドを阻害する物質をスクリーニングする方法のi)、ii)及びiii)を含む。
【0093】
本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療剤をスクリーニングする方法では、試験物質が本発明のポリペプチドを阻害するか否かを分析し、本発明のポリペプチドを阻害する物質を選択した後、選択された試験物質が、本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)治療活性を有することを確認する工程を更に含むことが好ましい。
【0094】
選択された試験物質が、本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌治療活性を有することを確認する工程;
選択された物質が本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)治療活性を有することを確認する工程としては、公知の評価方法又はそれを改良した方法、例えば、本発明のポリペプチドを発現した培養細胞や腫瘍モデル動物に選択された物質を処置し分析する方法を実施する工程が挙げられる(臨床腫瘍学 セカンドエディション、癌と化学療法社)。
【0095】
選択された物質が本発明のポリヌクレオチド陽性又は本発明のポリペプチド陽性の癌(特には肺癌又は膀胱癌)治療活性を有することを確認する工程として好ましいのは、(1)ヒト癌(特には肺癌又は膀胱癌)由来の内在的に本発明のポリペプチドを発現する癌細胞を用いて、選択された試験物質が該細胞の増殖阻害作用及び/若しくは細胞死誘導作用を有することを確認する工程、(2)選択された試験物質が本発明のポリペプチドを発現させた形質転換細胞の足場非依存的増殖に対する阻害作用を有することを確認する工程、並びに/又は、(3)選択された試験物質が本発明のポリヌクレオチドを発現する細胞をヌードマウスに接種し形成した腫瘍増殖に対する阻害作用を有することを確認する工程である。
【0096】
上記ヌードマウスを用いた方法では、本発明のポリペプチドを内在性に発現する癌細胞や、本発明のポリペプチドの発現により形質転換させた細胞を皮下、皮内、腹腔や各臓器に移植した腫瘍モデル動物である担癌モデル動物(例えば本発明のポリペプチドを発現させたNIH3T3細胞を移植したヌードマウスなど)を用いることができる。
【0097】
医薬組成物の有効成分をスクリーニング法で使用する試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、市販の化合物(ペプチドを含む)、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(N.Terrett et al., Drug Discov. Today, 4(1):41,1999)によって得られた化合物群、微生物の培養上清、植物や海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物、二重鎖核酸、抗体又は抗体断片、あるいは、医薬組成物の有効成分をスクリーニング法により選択された化合物(ペプチドを含む)を化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を挙げることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明は該実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法に従って実施可能である。また、市販の試薬やキット等を用いる場合には市販品の指示書に従って実施可能である。
【0099】
[実施例1]FGFR3−TACC3_v1の単離
肺癌臨床検体(米国アステランド社)200検体に対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びランダムプライマー(ランダムプライマーズ、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号7で示されるFGFR3_TACC3_RT_F及び配列番号8で示されるFGFR3_TACC3_RT_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq;タカラバイオ株式会社)を用いてPCR(98℃10秒、55℃15秒、68℃1分30秒を30サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号9で示されるFGFR3_TACC3_nested_F及び配列番号10で示されるFGFR3_TACC3_nested_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃1分を30サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、サンプルLg344のみで、約500base pair(bp)のPCR産物を得た。
その後、PCR産物をダイデオキシシーケンス法により配列決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、約500bpのPCR産物は、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のコーディングシーケンス(以下CDS)のエキソン18の3'末端が、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のCDSのエキソン11の5’末端と融合している配列であることが明らかになった。
扁平上皮肺癌患者肺癌組織由来RNA(米国アステランド社)Lg344検体RNAに対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びオリゴ(dT)プライマー(オリゴ (dT)20プライマー、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号11で示されるFGFR3−TACC3_cloning_F及び配列番号12で示されるFGFR3−TACC3_cloning_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(KOD −plus− Ver.2;東洋紡績株式会社)を用いてPCR(98℃15秒、60℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号13で示されるFGFR3_TACC3_cloning_BamHI_F及び配列番号14で示されるFGFR3_TACC3_cloning_EcoRI_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、約2.9kbpのPCR産物を得た。PCR産物をクローニングベクター(TOPO XL PCR Cloning Kit;ライフテクノロジーズ社)にクローニングした。インサートはダイデオキシシーケンス法により配列を決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、約2.9kbpのPCR産物では、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSの5'末端からエキソン18の3'末端までが、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のCDSのエキソン11の5’末端からCDSの3’末端までと融合している転写産物(FGFR3−TACC3_v1)(配列番号1)が存在していることが明らかになった。配列番号1によりコードされるポリペプチドを配列番号2に示す。
また、FGFR3−TACC3_v1のORF全長を蛋白質として発現するため、上記クローニングベクターを制限酵素BamHIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製し、さらにEcoRIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製した。このORFを含むDNA断片を発現ベクター(pMXs−puro;コスモバイオ社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI及びEcoRIサイトにクローニングし発現プラスミド(FGFR3−TACC3_v1/pMXs−puro)を構築した。
【0100】
[実施例2]FGFR3−TACC3_v2の単離
膀胱癌臨床検体(米国アステランド社)59検体に対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びランダムプライマー(ランダムプライマーズ、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号7で示されるFGFR3_TACC3_RT_F及び配列番号8で示されるFGFR3_TACC3_RT_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq;タカラバイオ株式会社)を用いてPCR(98℃10秒、55℃15秒、68℃1分30秒を30サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号9で示されるFGFR3_TACC3_nested_F及び配列番号10で示されるFGFR3_TACC3_nested_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃1分を30サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、サンプルBd106検体で、約600bpのPCR産物を得たことがわかった。
その後、PCR産物をダイデオキシシーケンス法により配列決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、約600bpのPCR産物は、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSのエキソン18の3'末端が、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のCDSのエキソン10の5’末端と融合している配列であることが明らかになった。
膀胱癌患者膀胱癌組織由来RNA(米国アステランド社)Bd106検体RNAに対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びオリゴ(dT)プライマー(オリゴ (dT)20プライマー、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号11で示されるFGFR3−TACC3_cloning_F及び配列番号12で示されるFGFR3−TACC3_cloning_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(KOD −plus− Ver.2;東洋紡績株式会社)を用いてPCR(98℃15秒、60℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号13で示されるFGFR3_TACC3_cloning_BamHI_F及び配列番号14で示されるFGFR3_TACC3_cloning_EcoRI_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、約3.0kbpのPCR産物を得たことがわかった。PCR産物をクローニングベクター(TOPO XL PCR Cloning Kit;ライフテクノロジーズ社)にクローニングした。インサートはダイデオキシシーケンス法により配列を決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ)。この結果、約3.0kbpのPCR産物では、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSの5'末端からエキソン18の3'末端までが、TACC3(NM_006342.1)のCDSのエキソン10の5’末端からCDSの3’末端までと融合している転写産物(FGFR3−TACC3_v2)(配列番号3)が存在していることが明らかになった。配列番号3によりコードされるポリペプチドを配列番号4に示す。
また、FGFR3−TACC3_v2のORF全長を蛋白質として発現するため、上記クローニングベクターを制限酵素BamHIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製し、さらにEcoRIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製した。このORFを含むDNA断片を発現ベクター(pMXs−puro;コスモバイオ社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI及びEcoRIサイトにクローニングし発現プラスミド(FGFR3−TACC3_v2/pMXs−puro)を構築した。
【0101】
[実施例3]FGFR3−TACC3_v3の単離
膀胱癌臨床検体(米国アステランド社)59検体に対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びランダムプライマー(ランダムプライマーズ、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号7で示されるFGFR3_TACC3_RT_F及び配列番号8で示されるFGFR3_TACC3_RT_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(TaKaRa Ex Taq;タカラバイオ株式会社)を用いてPCR(98℃10秒、55℃15秒、68℃1分30秒を30サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号9で示されるFGFR3_TACC3_nested_F及び配列番号10で示されるFGFR3_TACC3_nested_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃1分を30サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、サンプルBd021検体で、約650bpのPCR産物を得たことがわかった。
その後、PCR産物をダイデオキシシーケンス法により配列決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、約650bpのPCR産物は、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSのエキソン19の途中配列が、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のイントロン10−11の一部に融合し、さらにTACC3遺伝子のCDSのエキソン11の5’末端と融合している配列であることが明らかになった。
膀胱癌患者膀胱癌組織由来RNA(米国アステランド社)Bd021検体RNAに対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びオリゴ(dT)プライマー(オリゴ (dT)20プライマー、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号11で示されるFGFR3−TACC3_cloning_F及び配列番号12で示されるFGFR3−TACC3_cloning_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(KOD −plus− Ver.2;東洋紡績株式会社)を用いてPCR(98℃15秒、60℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号13で示されるFGFR3_TACC3_cloning_BamHI_F及び配列番号14で示されるFGFR3_TACC3_cloning_EcoRI_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、約3.0kbpのPCR産物を得たことがわかった。PCR産物をクローニングベクター(TOPO XL PCR Cloning Kit;ライフテクノロジーズ社)にクローニングした。インサートはダイデオキシシーケンス法により配列を決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、約3.0kbpのPCR産物では、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSの5'末端からエキソン19の途中配列が、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のイントロン10−11の一部に融合し、さらにTACC3のCDSのエキソン11の5’末端からCDSの3'末端までと融合している転写産物(FGFR3−TACC3_v3)(配列番号5)が存在していることが明らかになった。配列番号5によりコードされるポリペプチドを配列番号6に示す。
また、FGFR3−TACC3_v3のORF全長を蛋白質として発現するため、上記クローニングベクターを制限酵素BamHIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製し、さらにEcoRIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製した。このORFを含むDNA断片を発現ベクター(pMXs−puro;コスモバイオ社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI及びEcoRIサイトにクローニングし発現プラスミド(FGFR3−TACC3_v3/pMXs−puro)を構築した。
【0102】
[実施例4]FGFR3−TACC3_v1の検出
肺癌臨床検体由来RNA(米国アステランド社)200サンプルからcDNAを作製し、cDNAを基質とし、配列番号15で示されるFGFR3-TACC3(F18T11)_qPCR_F及び配列番号16で示されるFGFR3-TACC3(F18T11)_qPCR_Rをプライマーセットとして、定量的PCRキット(Power SYBR Green PCR Master Mix;ライフテクノロジーズ社)を用い、アプライドバイオシステムズ7900HTシステムにて、定量PCR(95℃ 10分の後、95℃15秒、59℃60秒を45サイクル)を行い遺伝子発現量を測定した。その結果、肺癌検体においては上述のサンプルLg344のみで増幅が確認された。また、膀胱癌臨床検体由来RNA(米国アステランド社)59サンプルからcDNAを作製し、cDNAを基質として同様に実施し、複数の検体から増幅が確認された。
【0103】
[実施例5]FGFR3−TACC3_v2の検出
膀胱癌臨床検体由来RNA(米国アステランド社)59サンプルからcDNAを作製し、cDNAを基質とし、配列番号17で示されるFGFR3-TACC3(F18T10)_qPCR_F及び配列番号18で示されるFGFR3-TACC3(F18T10)_qPCR_Rをプライマーセットとして、定量的PCRキット(Power SYBR Green PCR Master Mix;ライフテクノロジーズ社)を用い、アプライドバイオシステムズ7900HTシステムにて、定量PCR(95℃ 10分の後、95℃15秒、59℃60秒 を45サイクル)を行い遺伝子発現量を測定した。その結果、膀胱癌検体において複数の検体から増幅が確認された。
【0104】
[実施例6]FGFR3−TACC3_v3の検出
膀胱癌臨床検体由来RNA(米国アステランド社)59サンプルからcDNAを作製し、cDNAを基質とし、配列番号19で示されるFGFR3-TACC3(F19T11)_qPCR_F及び配列番号20で示されるFGFR3-TACC3(F19T11)_qPCR_Rをプライマーセットとして、定量的PCRキット(Power SYBR Green PCR Master Mix;ライフテクノロジーズ社)を用い、アプライドバイオシステムズ7900HTシステムにて、定量PCR(95℃ 10分の後、95℃15秒、59℃60秒 を45サイクル)を行い遺伝子発現量を測定した。その結果、膀胱癌検体において複数の検体から増幅が確認された。
【0105】
[実施例7] FGFR3−TACC3_v1のレトロウイルス溶液の作製
FGFR3−TACC3_v1/pMXs−puro(実施例1)を9μg、トランスフェクション試薬(FUGENE(登録商標)HD、Roche社)を用いて、Platinum−E細胞にトランスフェクションを実施した。トランスフェクション24時間後に10%牛血清(ニチレイバイオサイエンス社)を含むD−MEM培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium培地;インビトロジェン社)を交換し、さらに24時間の培地上清を採取しレトロウイルス溶液を作製した。
【0106】
[実施例8] FGFR3−TACC3_v1の足場非依存的増殖亢進作用の検討
実施例7においてFGFR3−TACC3_v1/pMXs−puroを用いて作製したウイルス溶液にポリブレン(Polybrene;SIGMA−ALDRICH社)を4μg/mLの濃度で添加したのち、NIH3T3細胞に添加し感染させた。添加6時間後に10%牛血清(ニチレイバイオサイエンス社)を含むD−MEM培地に交換し、感染1日後に10%牛血清(ニチレイバイオサイエンス社)及び1μg/mLのピューロマイシン(SIGMA−ALDRICH社)を含むD−MEM培地(インビトロジェン社)に交換し、5%CO
2存在下、37℃で4週間培養を続け、FGFR3−TACC3_v1を安定発現するNIH3T3細胞を取得した。(FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞と命名した。)
FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞の足場非依存的増殖亢進能を検討するため、96ウェルスフェロイドプレート(スミロンセルタイトスフェロイド96U;住友ベークライト社)にFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞及び空ベクターであるpMXs−puroを感染させたNIH3T3細胞(Mock/NIH3T3細胞)を、それぞれ1ウェル当り1×10
3個となるように10%牛血清(ニチレイバイオサイエンス社)を含むD−MEM培地(インビトロジェン社)で播種した。5%CO
2存在下、37℃で培養後、翌日(Day1)及び4日後(Day4)の細胞数を細胞数測定試薬(CELLTITER−Glo
TM Luminescent Cell Viability Assay;Promega社)を用いてマニュアルの方法に従って測定した。検出には発光測定装置を用いた。Mock/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで細胞数のカウントは増加しなかったのに対してFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで約3.1倍の細胞数のカウントの増加が確認された。以上のことから、FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞は足場非依存的細胞増殖を示すことが明らかとなった。
【0107】
[実施例9]FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞に対する融合ポリペプチド阻害剤の足場非依存的細胞増殖阻害作用
足場非依存的な細胞増殖の測定(コロニー法など)は、化合物の抗癌作用(薬理効果)を検討する系として知られている(臨床腫瘍学 セカンドエディション、癌と化学療法社)。コロニー法に代わる細胞非接着性の増殖を測定する方法として、前述のようなスフェロイドプレートを用いる方法がある。
96ウェルスフェロイドプレート(スミロンセルタイトスフェロイド96U;住友ベークライト社)に、FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞を、1ウェル当り1×10
3個となるように10%牛胎児血清を含むDMEM培地で播種した。また、ポジティブコントロール用に培地のみ添加したウェルを調製した。5%CO
2存在下、37℃にて一晩培養後、Dovitinib、AZD4547及びBGJ398を最終濃度100nMで添加した。ネガティブコントロールとして化合物の溶媒であるDMSOを化合物添加時と同濃度(0.1%)になるように添加した。その後、5%CO
2存在下、37℃で4日間培養し、細胞数測定試薬(CellTiter−Glo
TM Luminescent Cell Viability Assay;Promega社)を添加し20分撹拌した後、発光測定装置を用いて測定した。ポジティブコントロール、ネガティブコントロールの値をそれぞれ100%阻害値、0%阻害値として各化合物の増殖阻害%を算出した。その結果、Dovitinib、AZD4547及びBGJ398の阻害%はそれぞれ40%、74%、92%であった。
以上の結果は、FGFR3−TACC3_v1を発現する癌細胞や腫瘍の増殖をFGFR3−TACC3融合ポリペプチドの阻害剤が阻害できることを示している。
本発明のポリペプチド阻害剤による治療の有効性が期待される適用対象者を本発明の検出方法により識別することで、テーラーメード医療が実践できることが示された。
【0108】
[実施例10] FGFR3−TACC3_v2及びFGFR3−TACC3_v3のレトロウイルス溶液の作製
実施例2及び3で作製したFGFR3−TACC3_v2/pMXs−puro及びFGFR3−TACC3_v3/pMXs−puroを用い、実施例7の方法に従いレトロウイルス溶液を作製した。
【0109】
[実施例11] FGFR3−TACC3_v2及びFGFR3−TACC3_v3の足場非依存的増殖亢進作用の検討
実施例10においてFGFR3−TACC3_v2/pMXs−puro及びFGFR3−TACC3_v3/pMXs−puroを用いて作製したウイルス溶液を用いて、実施例8の方法に従いFGFR3−TACC3_v2及びFGFR3−TACC3_v3を安定発現するNIH3T3細胞を取得した。(それぞれFGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞と命名した。)
FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞の足場非依存的増殖亢進能を検討するため、実施例8と同様の方法で検討した。Mock/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで細胞数のカウントは増加しなかったのに対して、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで約2.8倍の細胞数のカウントの増加が確認された。また、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで約2.3倍の細胞数のカウントの増加が確認された。以上のことから、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞は足場非依存的細胞増殖を示すことが明らかとなった。
【0110】
[実施例12]FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対する本発明のポリペプチド阻害剤の足場非依存的細胞増殖阻害作用
実施例9と同様の方法でFGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞増殖阻害作用の評価を行った。その結果、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞に対するDovitinib、AZD4547及びBGJ398の阻害%はそれぞれ21%、60%、90%であった。また、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対するDovitinib、AZD4547及びBGJ398の阻害%はそれぞれ32%、51%、87%であった。
以上の結果は、FGFR3−TACC3_v2及びFGFR3−TACC3_v3を発現する癌細胞や腫瘍の増殖をFGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤が阻害できることを示している。
FGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤による治療の有効性が期待される適用対象者を本発明の検出方法により識別することで、テーラーメード医療が実践できることが示された。
【0111】
[実施例13]FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対するFGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤の抗腫瘍試験
リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、 PBS)に懸濁したFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞3×10
6個を4週齡の雄性cann.Cg−Foxn1Nu/Crlcrlj(Nu/Nu)ヌードマウス(日本チャールズリバー社)の背部皮下に注射して植えつけた。植付け3日後にFGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤であるAZD4547及びBGJ398の投与を開始した。試験は溶媒群及び化合物群を各4匹から5匹で行い、0.5%メチルセルロース(methylCELLULOSE、信越化学工業株式会社)/99.5%蒸留水の組成の溶媒にAZD4547及びBGJ398を懸濁し、それぞれ30mg/kgを経口投与した。投与は11日間1日1回行い、体重及び腫瘍径を2日から3日毎に測定した。腫瘍体積の算出には以下の式を用いた。
[腫瘍体積(mm
3)]=[腫瘍の長径(mm)]×[腫瘍の短径(mm)]
2×0.5
化合物投与開始日及び投与終了日の溶媒群の腫瘍体積をそれぞれ100%阻害、0%阻害としてAZD4547及びBGJ398の阻害率を算出した。結果、AZD4547及びBGJ398はFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞(腫瘍)の増殖をそれぞれ51%、90%阻害した。
FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対する抗腫瘍作用も同様に検討した。結果、AZD4547及びBGJ398は、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞(腫瘍)の増殖をそれぞれ61%及び90%阻害した。またFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞(腫瘍)の増殖をそれぞれ73%及び88%阻害した。
【0112】
[実施例14]FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞腫瘍に対するFGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤投与によるキナーゼ阻害作用
下記以外は実施例13と同様にして、AZD4547及びBGJ398のキナーゼ阻害作用を観察した。FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞3×10
6個を植えつけ、植付け3日後にAZD4547及びBGJ398の投与を開始した。試験は溶媒群及び化合物群各5匹で行い、最終投与4時間後に解剖して腫瘍を摘出した。その後、溶解液(Cell Lysis Buffer;Cell Signaling Technology社、Phosphatase Inhibitor Cocktail;Thermo Scientific社、Complete;Roche社)を用いて腫瘍の蛋白質抽出液を速やかに調製し、腫瘍内の総FGFR3及びリン酸化FGFR3の測定をELISAキット(R&D社)を用いて実施した。ELISAは添付の手順書に従って実施したが、検出は化学発光試薬(BMケミルミネッセンスELISA基質;Roche社)及び発光測定装置(ARVO;PerkinElmer社)による化学発光の検出へと変更した。
リン酸化FGFR3値を総FGFR3値で補正した値(リン酸化FGFR3/総FGFR3)をリン酸化レベルとし、溶媒群のリン酸化レベルを0%阻害、絶対値0を100%阻害として各化合物群のチロシン自己リン酸化阻害率を算出した。結果、AZD4547及びBGJ398群では溶媒群に比べ腫瘍内のFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv1のチロシン自己リン酸化がそれぞれ58%、77%減少していた。
FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対しても同様に検討した結果、AZD4547及びBGJ398群では溶媒群に比べ、腫瘍内のFGFR3−TACC3_v2のチロシン自己リン酸化がそれぞ54%、66%減少していた。また、腫瘍内のFGFR3−TACC3_v3のチロシン自己リン酸化がそれぞれ78%、85%減少していた。
これらの結果から、上記動物モデルにおけるAZD4547及びBGJ398の抗腫瘍作用が腫瘍内のFGFR3−TACC3融合ポリペプチドのキナーゼ活性を阻害する作用に基づくことが確認された。
【0113】
[実施例15]膀胱癌患者由来細胞株RT−112からのFGFR3−TACC3_v1の単離
膀胱癌患者由来細胞株RT−112(Leibniz−Institut DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHより購入)より精製したRNAに対して、逆転写酵素(SuperScriptIII、ライフテクノロジーズ社)及びオリゴ(dT)プライマー(オリゴ (dT)20プライマー、ライフテクノロジーズ社)を用いて、キットのプロトコールにしたがって逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、配列番号11で示されるFGFR3−TACC3_cloning_F及び配列番号12で示されるFGFR3−TACC3_cloning_Rのプライマーを用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(KOD −plus− Ver.2;東洋紡績株式会社)を用いてPCR(98℃15秒、60℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。その後、10倍希釈した前述PCR産物を鋳型として、配列番号13で示されるFGFR3_TACC3_cloning_BamHI_F及び配列番号14で示されるFGFR3_TACC3_cloning_EcoRI_Rのプライマーを用い、同じDNAポリメラーゼを用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃3分30秒を25サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動した結果、約2.9kbpのPCR産物が得られた。PCR産物をクローニングベクター(TOPO XL PCR Cloning Kit;ライフテクノロジーズ社)にクローニングし、インサートをダイデオキシシーケンス法(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)により配列を決定した結果、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSの5'末端からエキソン18の3'末端までが、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のCDSのエキソン11の5’末端からCDSの3'末端までと融合している転写産物(FGFR3−TACC3_v1)(配列番号1)と同一であることが明らかになった。
【0114】
[実施例16] 膀胱癌患者由来細胞株RT−112に対するFGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤の足場非依存的細胞増殖阻害作用
96ウェルスフェロイドプレート(スミロンセルタイトスフェロイド96U;住友ベークライト)に、RT−112細胞を、1ウェル当り2×10
3個となるように10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地で播種した。また、ポジティブコントロール用に培地のみ添加したウェルを調製した。5%CO
2存在下、37℃にて一晩培養後、Dovitinib、AZD4547及びBGJ398を最終濃度100nMでそれぞれ添加した。ネガティブコントロールとして化合物の溶媒であるDMSOを化合物添加時と同濃度(0.1%)になるように添加した。その後、5%CO
2存在下、37℃で5日間培養し、細胞数測定試薬(CellTiter−Glo
TM Luminescent Cell Viability Assay;Promega社)を添加し20分撹拌した後、発光測定装置を用いて測定した。ポジティブコントロール、ネガティブコントロールの値をそれぞれ100%阻害値、0%阻害値として各化合物の増殖阻害%を算出した。その結果、Dovitinib、AZD4547及びBGJ398の阻害%はそれぞれ80%、90%、90%であった。
【0115】
[実施例17]FGFR3−TACC3融合ポリペプチドの検出
細胞中のFGFR3−TACC3融合ポリペプチドを検出する方法を以下の通り構築した。FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞及びネガティブコントロールとしてNIH3T3細胞を培養した。PBSにて1回洗浄後、細胞を溶解液(Cell Lysis Buffer;Cell Signaling Technology社、Phosphatase Inhibitor Cocktail;Thermo Scientific社、Complete;Roche社)にて氷上で10分溶解させた。遠心後得られた上清に対して抗FGFR3抗体(SIGMA−ALDRICH社)を添加し4℃にて一晩反応させた。その後、プロテインGビーズ(Protein G Sepharose 4 Fast Flow;GE Healthcare社)を添加し4時間免疫沈降を行った。遠心後に沈降物を洗浄液(組成は上述の溶解液と同様)にて4回洗浄し、SDS溶液添加後5分間煮沸させ沈殿物を懸濁した。遠心後この上清に対して抗TACC3抗体(R and D systems社)を用いたイムノブロッティングを行った。結果、FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞の免疫沈降物では、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv1が検出されたが、NIH3T3細胞では検出されなかった。FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対しても同様に検討した結果、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞の免疫沈降物において、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv2及びFGFR3−TACC3融合ポリペプチドv3がそれぞれ検出された。また、RT−112細胞に対しても同様の方法で検討した結果、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドv1が検出された。
以上の結果から、抗FGFR3抗体及び抗TACC3抗体を組み合わせて用いることで、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドを発現している癌細胞や癌組織中の本発明のポリペプチドの存在を検出することが可能となり、本発明のポリペプチド陽性癌患者を判定することが可能であることが明らかとなった。
【0116】
[実施例18]FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片におけるFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)のインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)法による検出
FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞又はFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞を4週齡雄ヌードマウス(CAnN・Cg−Foxn1nu/CrlCrlj(nu/nu)、日本チャ−ルスリバー)の皮下に3×10
6個にて移植し、15日後、細胞塊の増殖を確認し担癌マウスを作製した。
作製した担癌マウスから、増殖した癌細胞を含む組織を切り出し、生理食塩水で洗浄後、10%中性緩衝ホルマリン(SIGMA−ALDRICH社)で室温で48〜144時間固定し、自動包埋装置(ティッシューテックVIP、サクラファインテックジャパン株式会社)を用いて定法に従い脱水したのち、パラフィン(ティッシュプレップ、株式会社ファルマ)に包埋した。パラフィン包埋後の組織サンプルを厚さ5μmで切り出しFFPE切片とした。
準備したFFPE切片をヒートブロック(MG−2200;東京理化器械株式会社)上で60℃、15分間加熱したのち、10%ホルマリン(和光純薬工業株式会社)で室温、30分間固定した。PBS(Invitrogen社)で3回洗浄、完全に乾燥し、キシレン(和光純薬工業株式会社)で室温、10分間処理した。次に、FFPE切片をPBSで3回洗浄し、Pretreatment Solution(Affymetrix社)で100℃、10分間煮沸した。さらに、精製水で2回、PBSで1回洗浄し、Protease Solution(Affymetrix社)でインキュベータ(HybEZ Hybridization System;Advanced Cell Diagnostics社)内で40℃、20分間処理した。その後、PBSで3回洗浄し、4%ホルマリン(和光純薬工業株式会社)で室温、5分間固定し、PBSで3回洗浄した。FGFR3遺伝子(GenBank登録番号:NM_000142.3)の塩基配列のうち、全てのバリアントに共通する塩基番号2851〜4281に特異的なbrancedDNAプローブ(QuantiGene ViewRNA Probe Set Type4;Affymetrix社)、及びTACC3遺伝子(GenBank登録番号:NM_006342.1)の塩基配列のうち塩基番号2200〜2838に特異的なbrancedDNAプローブ(QuantiGene ViewRNA Probe Set Type1;Affymetrix社)を、Probe Set Diluent QT(Affymetrix社)で40倍希釈し、Probe Set Solutionを作製した。本溶液をFFPE切片に添加し、インキュベータ内で40℃、2時間反応させ、ポリヌクレオチド(mRNA)にハイブリダイゼーションさせた。その後、FFPE切片をWash Buffer(Affymetrix社)で3回洗浄し、PreAmplifier Mix QT(Affymetrix社)でインキュベータ内で40℃、25分間反応させた。さらに、FFPE切片をWash Bufferで3回洗浄し、Amplifier Mix QT(Affymetrix社)でインキュベータ内で40℃、15分間反応させた。Wash Bufferで3回洗浄し、Label Probe Mix(Affymetrix社)を25分の1容量含むLabel Probe Diluent QT(Affymetrix社)でインキュベータ内で40℃、30分間反応させた。次に、Wash Bufferで2回、PBSで1回洗浄し、蛍光色素DAPI(Affymetrix社)を含むPBSで室温、15分間反応させた。PBSで2回洗浄したあと、封入剤EcoMount(Biocare Medical社)で封入し、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700;Carl Zeiss社)で蛍光観察した。FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞のFFPE切片のいずれにおいてもFGFR3のシグナル及びTACC3のシグナルが検出され、さらにFGFR3のシグナルとTACC3のシグナルのほとんどが共局在した。これによりFGFR3−TACC3融合遺伝子を強制的に発現させた細胞を含むFFPE切片では、FGFR3のシグナルとTACC3のシグナルが共局在することが示された。
【0117】
[実施例19]RT−112細胞におけるFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)のISH法による検出
実施例18と同様の手順でヒト膀胱癌患者由来細胞株RT−112細胞及びヒト胃癌患者由来細胞株HSC−39細胞のFFPE標本を作製し、ISH法によるFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)の検出を行った。実施例18のヒートブロックによる処理以降の方法で処理し、封入後の標本を蛍光観察した。取得した画像をIN Cell Analyzer 2000(GE Healthcare社)で解析したところ、FGFR3−TACC3_v1を発現するRT−112細胞(実施例15)のFFPE切片では共局在するFGFR3のシグナルとTACC3のシグナルが多数検出されたのに対し、実施例番号23記載のRT−PCRによってFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)を発現しないことを確認しているHSC−39細胞のFFPE切片では共局在するFGFR3のシグナルとTACC3のシグナルはほとんど検出されなかった。これにより、FGFR3−TACC3融合遺伝子を内在的に発現する細胞を含むFFPE切片においてFGFR3のシグナルとTACC3のシグナルが共局在し、FGFR3−TACC3融合遺伝子を発現しない細胞では共局在しないことから、このような共局在シグナルを測定することにより、FGFR3−TACC3融合遺伝子の有無を判定できることが示された。
【0118】
[実施例20]膀胱癌患者由来FFPE切片におけるFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)のISH法による検出
米国アステランド社から購入した膀胱癌患者由来組織のFFPE切片を、実施例18のヒートブロックによる処理以降の方法で処理し、封入後の切片を蛍光観察した。取得した画像をIN Cell Analyzer 2000(GE Healthcare社)で解析したところ、FGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)を発現しないことを実施例23記載のRT−PCR法によって確認した膀胱癌患者組織由来FFPE切片と比較して、FGFR3−TACC3_v2を発現することを実施例23記載のRT−PCR法によって確認した膀胱癌患者組織由来FFPE切片では、共局在するFGFR3のシグナルとTACC3のシグナルの数が明らかに多かった。
英国ティッシュソリューションズ社から購入した複数の膀胱癌患者組織由来FFPE切片についても同様の方法にて、FGFR3のシグナルとTACC3のシグナルの共局在を調べた。その結果、FGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)を発現しないことを実施例23記載のRT−PCR法によって確認した膀胱癌患者組織由来FFPE切片と比較して、FGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチド(mRNA)を発現することを前述の実施例記載のRT−PCR法によって確認した膀胱癌患者組織由来FFPE切片では、共局在するFGFR3のシグナルとTACC3のシグナルの数が明らかに多かった。
これにより、膀胱癌患者組織由来FFPE切片においても、共局在するシグナルを観察することにより、FGFR3−TACC3融合遺伝子の有無を判定できることが示された。
【0119】
[実施例21]FGFR3−TACC3融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性に対する化合物の阻害作用
(1)FLAGタグ融合発現プラスミド(FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+))の構築
5’末端にFLAGタグを融合させたFGFR3−TACC3融合ポリヌクレオチドを取得するために、実施例1、2及び3でクローニングしたベクターを鋳型として用いて、5’末端にFLAGタグを付加させるPCRを実施した。配列番号21で示されるFGFR3_N_FLAG_BamHI及び配列番号14で示されるFGFR3_TACC3_cloning_EcoRI_Rのプライマー及びDNAポリメラーゼ(KOD −plus− Ver.2;東洋紡績株式会社)を用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃3分30秒を12サイクル)を行った。PCR産物をクローニングベクター(TOPO XL PCR Cloning Kit;ライフテクノロジーズ社)へクローニングした。インサートはダイデオキシシーケンス法により配列を決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、PCR産物は配列番号1、配列番号3及び配列番号5に記載されている配列のうち、ファーストメチオニンをコードする3塩基(ATG)が削除され、開始コドンとFLAGタグをコードする核酸配列(配列番号22)が5’末端に付加された核酸配列であることを確認した。これらによりコードされるポリペプチドを、それぞれFGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドと称し、これらを総称してFGFR3−TACC3(N−FLAG)融合ポリペプチドと称する。また、これらのFLAG配列を付加したFGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)のORF全長を蛋白質として発現する発現ベクター構築のため、上記クローニングベクターを制限酵素BamHIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製し、さらにEcoRIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製した。このORFを含むDNA断片を発現ベクター(pcDNA3.1/Zeo(+);ライフテクノロジーズ社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI及びEcoRIサイトにクローニングし発現プラスミド(FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+))を構築した。
【0120】
(2)FGFR3−TACC3(N−FLAG)融合ポリペプチドの取得
トランスフェクション実施前日に、コラーゲンコートされた15cmディッシュ1枚あたり0.5×10
7個のHEK293細胞を10%牛胎児血清を含むD−MEM培地を用いて10枚培養した。トランスフェクション当日に、FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)/pcDNA3.1/Zeo(+)をそれぞれディッシュ1枚あたり27μg、トランスフェクション試薬(FUGENE(登録商標)HD;Roche社)を81μL用いて、HEK293細胞にトランスフェクションを実施した。トランスフェクション24時間後に培地を取り除きPBSにて3回洗浄し、1mLのPBSを加えセルスクレイパー(コーニング社)により細胞を剥がした後、ポリプロピレン製チューブに回収した。1200rpmで5分間遠心した後、上清を取り除き150μLの細胞溶解液(50mM Tris HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1%NP−40、1mM EDTA、プロテアーゼ阻害剤カクテルcomplete(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社))を加え氷上にて30分間インキュベーションし細胞を溶解させた。遠心後得られた上清中に存在するFGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドをそれぞれM2抗体アフィニティゲル(ANTI−FLAG M2 Affinity Gel;SIGMA−ALDRICH社)を用いて製品情報に記載された方法に従って精製した。洗浄及び溶出は洗浄液(50mM Tris HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1%NP−40、1mM EDTA、プロテアーゼ阻害剤カクテルcomplete(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社))、溶出液(20mM Tris HCl(pH7.4)、10mM MgCl
2、10mM MnCl
2、0.5mg/mL FLAG peptide)をそれぞれ使用し、100μLの溶出液を得た。FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドが得られたことを溶出液に対して抗FGFR3抗体(Cell Signaling Technology社)及び抗FLAG M2抗体(SIGMA−ALDRICH社)を用いたイムノブロッティングならびに銀染色を行い、確認した。
【0121】
(3)FGFR3−TACC3(N−FLAG)融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性の検出
上記で精製したFGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドのペプチド基質に対するリン酸化活性をキナーゼ活性検出キット(HTRF KinEASE−TK;Cisbio社)を用いて検討した。384ウェルのLow−volume Black plate(コーニング社)を用い、上記溶出液の1倍希釈溶液、3倍希釈溶液又は10倍希釈溶液の各1μLを酵素源として、キット同封の5×Kinase bufferにDTT及びMg
2+をそれぞれ最終濃度1mM及び5mMとなるように添加し反応溶液とした。基質として、キット同封のTK Substrateを最終濃度が2.0μMとなるように、ATP未添加及びATPの最終濃度が100μMとなるように添加し、最終容量5.0μLとしてそれぞれ室温にて1時間反応させた。反応後、キット推奨の方法に従いSa−XL665及びTK Antibody−Eu(K)溶液を調製し、それぞれ2.5μL添加し、室温にて1時間反応後、HTRFのカウント(すなわちペプチド基質のリン酸化)を検出した。その結果、ATP未添加に対しATP添加では、HTRFのカウントが、上記FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド又はFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドを含む各溶出液1倍希釈溶液1μLを添加した時は、それぞれ約38倍、約40倍及び約38倍増加、上記溶出液3倍希釈溶液1μLを添加した時は、それぞれ約27倍、34倍、31倍、上記溶出液10倍希釈溶液1μLを添加した時は、それぞれ5倍、18倍、11倍に増加していることが明らかとなった。
以上のように、キナーゼ活性検出キットを用いることにより、FGFR3−TACC3(N−FLAG)融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性を検出することが可能であった。
【0122】
(4)FGFR3−TACC3(N−FLAG)融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性に対する化合物の阻害作用
FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性に対する化合物Dovitinib、AZD4547、BGJ398及びLY2874455の阻害作用を上記キナーゼ活性検出キット及び同様の384ウェルプレートを用いて検討した。1.0μLの各化合物溶液を、DMSOの最終濃度が0.1%、化合物の最終濃度がDovitinibは1μM、100nM、10nM、AZD4547及びBGJ398はそれぞれ100nM、10nM、1nM、LY2874455は10nM、1nM、0.1nMになるように添加し、又はコントロールとしてDMSOを0.1%となるように添加して、FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチドについては上記溶出液2倍希釈溶液1μL、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチドについては上記溶出液3倍希釈溶液1μL、及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドについては上記溶出液3倍希釈溶液1μLを添加した。ついで、基質として、キット同封のTK Substrateを最終濃度が2.0μMとなるように添加し、室温にて15分間反応させた。次に、ATP未添加及びATPの最終濃度が100μMとなるように添加し、、最終容量5.0μLとしてそれぞれ室温にて一時間反応させた。その他は、上述の(3)の方法と同様に調製したSa−XL665及びTK Antibody−Eu(K)溶液をそれぞれ2.5μL添加し、室温にて1時間反応後、HTRFのカウントを検出した。化合物非存在下(DMSOを化合物添加時と同濃度である0.1%)でのATP未添加及び添加時のリン酸化のカウントをそれぞれ100%阻害、0%阻害として、化合物によるFGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドのキナーゼ活性の阻害%を以下の式より算出した。
[化合物によるキナーゼ活性阻害(%)]=(1−[化合物添加ATP添加時のリン酸化のカウント−化合物未添加ATP未添加時のリン酸化のカウント]/[化合物未添加ATP添加時のリン酸化のカウント−化合物未添加ATP未添加時のリン酸化のカウント])×100
その結果、精製FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドのペプチド基質に対するリン酸化活性を化合物Dovitinib、AZD4547、BGJ398及びLY2874455が阻害すること見出した。各化合物の各々の最終濃度でのペプチド基質に対する阻害割合(%)を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
[実施例22]FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞に対するLY2874455化合物の足場非依存的細胞増殖阻害作用
LY2874455化合物の最終濃度が10nMとなるようにした以外は、実施例9と同様の方法を用いてFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞増殖阻害作用の評価を行った。その結果、LY2874455の阻害%はそれぞれ88%、90%、89%であった。
以上の結果は、FGFR3−TACC3_v1、FGFR3−TACC3_v2及びFGFR3−TACC3_v3を発現する癌細胞や腫瘍の増殖をFGFR3−TACC3融合ポリペプチド阻害剤であるLY2874455が阻害できることを示している。
【0125】
[実施例23]ヒト浸潤性膀胱癌検体からのFGFR3−TACC3_v5a及びFGFR3−TACC3_v5bの単離
ヒト浸潤性膀胱癌検体(英国ティッシュソリューション社)に対して、逆転写酵素キット(スーパースクリプIIIファーストストランドシンセテーススーパーミックス;ライフテクノロジーズ社)のプロトコールにしたがい、オリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
次に、FGFR3_F002プライマー(配列番号23)及びTACC3_R002プライマー(配列番号24)を用いて、上記で得たcDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼ(PrimeSTAR;タカラバイオ式会社)を用いてPCR(94℃2分の後、98℃10秒、68℃3.5分を40サイクル)を行った。
これらのプライマーはそれぞれFGFR3遺伝子の5’UTRおよびTACC3の3’UTRに該当するので、FGFR3とTACC3との融合遺伝子が存在すれば、バリアントを問わず全ての融合遺伝子を検出することができる。
得られたPCR産物をクローニングベクター(Zero blunt TOPO PCR Kit ;ライフテクノロジーズ社)にクローニングし、インサートをダイデオキシシーケンス法(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)により配列を決定した。その結果、NCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のCDSの5’からエキソン18の途中まで(257番目から2498番目)が、TACC3遺伝子(NM_006342.1)のCDSのエキソン7の途中(1771番目から2672番目)と融合している転写産物(FGFR3−TACC3_v5a)と一塩基を除いて同一であることが明らかになった(配列番号25)。その一塩基はNCBIに登録されているFGFR3遺伝子(NM_001163213.1)の1980番目にあり、登録ではCであるが決定した配列はGであった。また、同時に、FGFR3遺伝子(NM_001163213.1)のエキソン4の3’側の配列(690番目から701番目)が欠失し、また、エキソン10とエキソン11の間にCAG配列が挿入された配列を持つ転写産物(FGFR3−TACC3_v5b)(配列番号27)も存在することが明らかとなった。配列番号25によりコードされるポリペプチドを配列番号26に、配列番号27によりコードされるポリペプチドを配列番号28に示す。
【0126】
[実施例24]FGFR3−TACC3_v5a及びFGFR3−TACC3_v5bのレトロウイルス溶液の作製
FGFR3−TACC3_v5a及びFGFR3−TACC3_v5bのORF全長を蛋白質として発現するため、レトロウイルス溶液作製用発現プラスミドを以下の通り構築した。実施例23で作製した、クローニングしたベクターをそれぞれ鋳型として用いて、配列番号7で示されるFGFR3_TACC3_cloning_BamHI_F及び配列番号8で示されるFGFR3_TACC3_cloning_EcoRI_Fのプライマー、並びにDNAポリメラーゼ(KOD −plus− Ver.2;東洋紡績株式会社)を用いてPCR(98℃15秒、55℃15秒、68℃3分30秒を15サイクル)を行った。PCR反応後、電気泳動したところ、それぞれ目的サイズののPCR産物が得られた。PCR産物をクローニングベクター(TOPO XL PCR Cloning Kit;ライフテクノロジーズ社)にクローニングした。インサートはダイデオキシシーケンス法により配列を決定した(BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit;ライフテクノロジーズ社)。この結果、PCR産物は、それぞれ、配列番号25又は配列番号27を含むことを確認した。FGFR3−TACC3_v5a及びFGFR3−TACC3_v5bのORF全長を蛋白質として発現するため、上記クローニングベクターを制限酵素BamHIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製し、さらにEcoRIで37℃、3時間の酵素反応を行い制限酵素処理したDNA断片を精製した。このORFを含むDNA断片を発現ベクター(pMXs−puro;コスモバイオ社)のマルチクローニングサイトに存在するBamHI及びEcoRIサイトにクローニングし発現プラスミド(FGFR3−TACC3_v5a/pMXs−puro及びFGFR3−TACC3_v5b/pMXs−puro)を構築した。
これらの構築ベクターを用いて実施例7の方法に従いレトロウイルス溶液を作製した。
【0127】
[実施例25]FGFR3−TACC3_v5a及び及びFGFR3−TACC3_v5bの足場非依存的増殖亢進作用の検討
実施例24においてFGFR3−TACC3_v5a/pMXs−puro及びFGFR3−TACC3_v5b/pMXs−puroを用いて作製したウイルス溶液を用いて、実施例8の方法に従いFGFR3−TACC3_v5a及び及びFGFR3−TACC3_v5bを安定発現するNIH3T3細胞を取得した。(それぞれFGFR3−TACC3_v5a発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v5b発現/NIH3T3細胞と命名した。)
FGFR3−TACC3_v5a発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v5b発現/NIH3T3細胞の足場非依存的増殖亢進能を検討するため、実施例8と同様の方法で検討した。Mock/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで細胞数のカウントは増加しなかったのに対して、FGFR3−TACC3_v5a発現/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで約2.6倍の細胞数のカウントの増加が確認された。また、FGFR3−TACC3_v5b発現/NIH3T3細胞はDay1からDay4までで約2.7倍の細胞数のカウントの増加が確認された。以上のことから、FGFR3−TACC3_v5a発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v5b発現/NIH3T3細胞は足場非依存的細胞増殖亢進作用を示すことが明らかとなった。
【0128】
[実施例26] FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞のホルマリン固定標本におけるFGFR3−TACC3融合ポリペプチドの免疫染色法による検出
(1)サンプル調製
実施例8で作製されたFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞及びNIH3T3細胞をカバーグラス上で一晩培養した。翌日培養液を除いた後、3.7%ホルムアルデヒドで室温10分間反応させて細胞を固定した。PBSで洗浄後、0.2%Triton X−100(ナカライ社)にて室温10分間反応させた後、0.5%SDSにて室温25分間反応させた。PBSで洗浄後、Blocking solution(Olink社)でブロッキングした。
(2)目的融合ポリペプチドの検出
上記(1)で調製したサンプルを、Can Get Signal immunostain SolutionA(東洋紡株式会社)で希釈したFGFR3抗体(宿主:マウス Santacruz社)とTACC3抗体(宿主:ヤギ R&D社)で、4℃、一晩インキュベートした。
翌日Wash buffer A(Olink社)で洗浄後、Can Get Signal immunostain SolutionAで希釈をしたDuolink InSitu PLA probe anti−Mouse MINUSとDuolink InSitu PLA probe anti−Goat PLUS(いずれもOlink社)でカバーグラスを室温、1時間浸した。Wash buffer Aで洗浄した後、Duolink II試薬キットのLigation−Ligase溶液(Olink社)に浸し、37℃、30分間インキュベートした。この工程により十分近接した位置にある2種類のInSitu PLA probe抗体の間に環状オリゴヌクレオチドが形成される。Wash buffer Aで洗浄した後、同キットのAmplification−Polymerase溶液(Olink社)を添加し、37℃で100分間インキュベートした。この工程により環状オリゴヌクレオチドを鋳型として核酸が伸長し、且つその伸長した核酸に蛍光標識されたオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする。Wash buffer B(Olink社)で2回、Wash buffer Bを水で100倍希釈した溶液で1回洗浄した後、Duolink Mounting Medium with DAPI(Olink社)で封入し、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700;Carl Zeiss社)を用いて蛍光観察した。FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞では多数の蛍光ドットが存在する細胞が観察されるのに対して、NIH3T3細胞においては蛍光ドットはほとんど観察されなかった。この蛍光ドットは環状オリゴヌクレオチドを鋳型として伸長した核酸にハイブリダイズした蛍光標識オリゴヌクレオチドに由来し、2種類の抗原すなわちFGFR3とTACC3が十分近接した状態すなわち同一分子内に存在していることに由来する。従って本実施例の方法で、蛍光ドットの有無を観察することによって、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドの存在の有無が判定(検出)できることが示された。
【0129】
[実施例27] RT−112細胞におけるのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本におけるFGFR3−TACC3融合ポリペプチドの免疫染色法による検出
(1)サンプル調製
実施例19で作製した、FGFR3−TACC3_v1を発現するRT−112細胞と発現しないHSC−39細胞のFFPE標本をキシレンとエタノールにそれぞれ3回、各8分間浸すことでパラフィンを除き、イムノセーバー(日新EM株式会社)に浸して煮沸した。PBSで切片を洗浄した後、0.2%Triton X−100で室温10分間反応させた。PBSで洗浄後Protein Block Serum−Free(Dako社)でブロッキングした。
(2)目的融合ポリぺプチドの検出
実施例26(2)と同様の手順で免疫染色法による検出を行い、蛍光観察した。FGFR3−TACC3_v1を発現するRT−112細胞では多数の蛍光ドットが観測されたのに対して、FGFR3−TACC3_v1を発現していないHSG−39細胞でにはそのような蛍光ドットはほとんど観測されなかった。これにより、FGFR3−TACC3融合遺伝子を内在的に発現する細胞を含むFFPE切片において蛍光ドットを観察することにより、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドの存在の有無を判定(検出)できることが示された。
【0130】
[実施例28] 膀胱癌患者由来FFPE切片におけるFGFR3−TACC3融合ポリペプチドの免疫染色による検出
(1)サンプル調製
英国ティッシュソリューションズ社から購入した膀胱肺癌臨床検体のFFPE切片をキシレンとエタノールにそれぞれ3回、各8分間浸すことでパラフィンを除き、イムノセーバー(日新EM株式会社)に浸して煮沸した。Milli−Q水でFFPE切片を洗浄した後、3%過酸化水素水で30分室温でインキュベートした。PBSで洗浄後、0.2%Triton X−100で室温10分間反応させた後、0.5%SDS溶液で20分反応させた。PBSで洗浄後Protein Block Serum−Free(Dako社)でブロッキングした。
(2)目的融合ポリペプチドの検出
Can Get Signal immunostain SolutionA(東洋紡)で希釈したFGFR3抗体(宿主:マウス Santacruz社)とTACC3抗体(宿主:ヤギ R&D社)でFFPE切片を4℃一晩インキュベートした。
翌日のWash buffer A(Olink社)で洗浄後、Can Get Signal immunostain SolutionAで希釈をしたDuolink InSitu PLA probe anti−Mouse MINUSとDuolink InSitu PLA probe anti−Goat PLUS(いずれもOlink社)でFFPE切片を室温で1時間浸した。Wash buffer Aで洗浄した後、Duolink II Bright field試薬キットのLigation−Ligase溶液(Olink社)に浸し、37℃で30分間インキュベートした。この工程で実施例26、27と同様に環状オリゴヌクレオチドが形成される。Wash buffer Aで洗浄後、同キットのAmplification−Polymerase溶液(Olink社)で37℃で120分間インキュベートした。この工程により環状オリゴヌクレオチドを鋳型として核酸が伸長する。Wash buffer Aで洗浄後同キットのDetection Bright Field solutionに浸して室温で1時間浸した。この工程により、先の工程で伸長した核酸にHorseradish peroxidase(HRP)標識されたオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする。Wash buffer Aで洗浄後、同キットのSubstrate solutionを添加し、室温で10分から15分反応させた。Milli−Q水で洗浄した後、同キットのNuclear stain solutionを添加し、室温で2分反応させた後、水道水で洗浄した。その後エタノールとキシレンを用いて脱水と透徹をした後、封入した。
顕微鏡(BZ−9000;KEYENCE社)で明視野観察すると、FGFR3−TACC3_v1を発現することが実施例23の方法で確認されている膀胱癌患者組織由来FFPE切片では赤い染色が観察されているのに対して、実施例23の方法でFGFR3とTACC3との融合遺伝子の発現が確認されていない患者組織由来切片では赤い染色が観察されなかった。この赤い染色は環状オリゴヌクレオチドを鋳型として伸長した核酸にハイブリダイズしたHRP標識オリゴヌクレオチドに由来し、実施例26及び27と同様にFGFR3とTACC3が同一分子内に存在していることに由来する。従って赤い染色が観察された切片においてFGFR3とTACC3が融合した状態で存在することが示された。これにより、本実施例の方法で、膀胱癌患者組織由来FFPE切片においても、赤い染色を観察することにより、FGFR3−TACC3融合ポリペプチドの存在の有無を判定(検出)できることが示された。
【0131】
[実施例29]FGFR3−TACC3(N−FLAG)融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性に対する化合物A、B、C、D及びEの阻害作用
実施例21(4)の方法に従い、化合物A、B、C、D及びEのFGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドのインビトロキナーゼ活性に対する阻害作用を検討した。ただし、各化合物の最終濃度は100nM、10nM、1nMとなるように添加した。
その結果、精製FGFR3−TACC3_v1(N−FLAG)融合ポリペプチド、FGFR3−TACC3_v2(N−FLAG)融合ポリペプチド及びFGFR3−TACC3_v3(N−FLAG)融合ポリペプチドのペプチド基質に対するリン酸化活性を化合物A、B、C、D及びEが阻害すること見出した。各化合物の各々の最終濃度でのペプチド基質に対する阻害割合(%)を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
[実施例30]FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞、及び膀胱癌患者由来細胞株RT−112に対する化合物A、B、C、D及びEの足場非依存的細胞増殖阻害作用
FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞及びFGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞については、実施例9と同様の培地を用いて、膀胱癌患者由来細胞株RT−112については、1ウェル当り1×10
3個となるように10%牛胎児血清及び2mM L−glutamineを含むRPMI1640培地で播種した。また、各化合物の最終濃度は100nM、10nM、1nMとなるように添加した。そのほかの条件は実施例9と同様の方法を用いて、化合物A、B、C、D及びEのFGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞及び膀胱癌患者由来細胞株RT−112の増殖阻害作用の評価を行った。その結果、化合物A、B、C、D及びEは、FGFR3−TACC3_v1発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v2発現/NIH3T3細胞、FGFR3−TACC3_v3発現/NIH3T3細胞及び膀胱癌患者由来細胞株RT−112の足場非依存的増殖亢進作用を阻害することを見出した。各化合物の各々の最終濃度での細胞増殖に対する阻害割合(%)を表3に示す。
以上の結果により、FGFR3−TACC3_v1、FGFR3−TACC3_v2及びFGFR3−TACC3_v3を発現する癌細胞や腫瘍の増殖が、化合物A、B、C、D、E及びFにより阻害できることが明らかとなった。
【0134】
【表3】