【実施例】
【0042】
次に、実施例によって本発明の不織布を詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。実施例中における各物性値は、次の方法により測定したものであり、測定回数3回についての平均値をとったものである。
【0043】
<不織布の厚さの試験方法>
目付50g/m
2の不織布を5枚重ねた厚さを、ノギスで測定する。
【0044】
[保液率の試験方法]
JIS L 1907 7.2(2010年版)の吸水率に準じて測定する。目付50g/m
2の不織布から試験片10cm角に切り出して、質量(A)を測定する。その試験片をイオン交換水の中に30秒間浸した。その後、試験片の一角をピンセットでつまんで液から取り出し、1分後の質量(B)を測定する。
保液率(C)は、下記式で算出される。
・保液率C(%)=(B−A)/A×100。
【0045】
<残存率(保液性)の試験方法>
JIS L 1907 7.2(2010年版)の吸水率に準じて測定する。目付50g/m
2の不織布から試験片10cm角に切り出して、質量(A)を測定する。その試験片をイオン交換水の中に30秒間浸した。その後、試験片の一角をピンセットでつまんで液から取り出し、5分後の質量(D)を測定する。
残存率(E)は、下記式で算出される。
・E(%)=(D−A)/A×100。
【0046】
<拭き取り性>
目付50g/m
2の不織布から試験片10cm角に切り出して4つ折りにして使用する。試験片に質量の3倍の水を含浸させる。5名の被験者の腕に口紅を塗布して、拭き取ることにより性能を比較した。評価内容は、次のとおりであり、○を合格とした。
○:拭き取り性良好
△:やや口紅が残る
×:ほとんど口紅が拭き取れない。
【0047】
<肌触り>
目付50g/m
2の不織布から試験片10cm角に切り出して4つ折りにして使用する。試験片に質量の3倍の水を含浸させる。5名の被験者の腕を拭いてもらい、次の基準に従って触感評価し、○を合格とした。
○:肌触りが良い
△:拭いた後の肌がやや違和感有り
×:拭いた後の肌がチクチクする。
【0048】
<手持ち感(風合い)>
目付50g/m
2の不織布から試験片10cm角に切り出して4つ折りにして使用する。試験片に質量の3倍の水を含浸させる。5名の被験者に試験片を握ってもらい、次の基準に従って触感評価し、○を合格とした。
○:風合いが柔らか
△:風合いがやや硬い
×:風合いが硬い。
【0049】
[実施例1]
扁平度が2.1、異形度が2.7、凸部比が0.8で横断面形状が8個の凸部を有する扁平多葉断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)20質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)80質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表1に、評価結果を表2に示す。
【0050】
[実施例2]
扁平度が2.1、異形度が2.7、凸部比が0.8で横断面形状が8個の凸部を有する扁平多葉断面ポリエステル系繊維(単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm)50質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm)50質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表1に、評価結果を表2に示す。
【0051】
[実施例3]
扁平度が2.1、異形度が2.7、凸部比が0.8で横断面形状が8個の凸部を有する扁平多葉断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)80質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)20質量%を均一に混綿した後、目付60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧50kg/cm
2、速度1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表1に、評価結果を表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
[比較例1]
扁平度が2.1、異形度が2.7、凸部比が0.8で横断面形状が8個の凸部を有する扁平多葉断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)15質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)85質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2,速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0055】
[比較例2]
扁平度が2.1、異形度が2.7、凸部比が0.8で横断面形状が8個の凸部を有する扁平多葉断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)85質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)15質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0056】
[比較例3]
レーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)100質量%で目付60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2,速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0057】
[比較例4]
扁平度が1.0で横断面形状の円周上に6個の凸部を有する異形断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm、)80質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)20質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0058】
[比較例5]
横断面形状の円周上に3個の凸部を有する異形断面(Y型)ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)80質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)20質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0059】
[比較例6]
横断面形状がC型を有する異形断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)80質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)20質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0060】
[比較例7]
丸形断面ポリエステル繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)80質量%とレーヨン繊維(単繊維繊度:1.7dtex、繊維長:51mm)20質量%を均一に混綿した後、目付が60g/cm
2のカード繊維ウェブを常法により作製し、ウォータージェットの水圧が50kg/cm
2、速度が1m/分、ノズル形状:0.1mmφ、0.6mmピッチ、834ホール、500mm効き幅で両面加工によりシートを作製した後、更に120℃の温度で乾燥し、目付が50g/m
2の不織布を得た。不織布の繊維構成を表3に、評価結果を表4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
実施例1〜3が示すように、繊維構成が繊維横断面の円周上に8個の凸部を有する扁平断面ポリエステル繊維20〜80質量%とレーヨン20〜80質量%で作成された不織布は、保液率が高いため水や薬液等の液体を保液しやすく、かつ残存率も低いことから、保液した薬液を放出し有効に利用できることが確認された。また、拭き取り性や手持ち感(風合い)と、肌触りも良好であった。
【0064】
一方、比較例1で示されるように、セルロース系繊維の含有率が80質量%を超えると、肌触りは良好であるものの、不織布の嵩高性が損なわれるため、保液
率が低くなると共に、セルロース系繊維が繊維内に薬液を保持してしまうため、残存率が高く、薬液の放出性不良の原因となる。
【0065】
更に、比較例2で示されるように、扁平多葉断面ポリエステルの含有率が80質量%を超えると、セルロース系繊維のしなやかさが損なわれるため、肌触りが悪くなる。
【0066】
これに対し、比較例3〜7で示されるように、扁平でない他の異型断面ポリエステル繊維を使用すると、保液
率は高くなるが、残存率が著しく低くなっていることから、不織布内の液保持性が弱く、不織布使用時の液流れの原因となる。また、偏平でないことから風合いも硬く、肌触りも著しく悪くなる。