(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高温流体が流通する高温流路と低温流体が流通する低温流路とを有し、前記高温流路を流通する前記高温流体と前記低温流路を流通する前記低温流体との間で熱交換を行う熱交換器本体と、
前記熱交換器本体の前記高温流路の入口に接続され外部から前記高温流体を前記高温流路に流入させる高温入口管と、
前記熱交換器本体の前記低温流路の入口に接続され外部から前記低温流体を前記低温流路に流入させる低温入口管と、
前記高温入口管および前記低温入口管のうち少なくともいずれか一方の管内に配置され高温流体または低温流体を攪乱させる整流リングと、
前記整流リングの下流域に形成されるコア領域に感知点が配置されるように設けられた温度センサーと
を具備し、
前記整流リングが、
前記高温流体または前記低温流体を通過させる開口部を有し、
前記開口部の上流側の開口径が前記高温入口管または前記低温入口管の内径と等しく、前記開口部の下流側の開口径が前記上流側の開口径よりも小さいことを特徴とする熱交換器。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は冷凍サイクルの一つの要素として使用され、冷凍サイクル内の作動流体の温度を目標温度に変えるための不可欠なパーツである。熱交換器には様々な種類が存在する。その中でマイクロ流路熱交換器の卓越した性能が認識されつつあり、実用化に向けて開発が進められている。
【0003】
このようなマイクロ流路熱交換器には積層型マイクロ流路熱交換器がある。この積層型マイクロ流路熱交換器は、例えば、表面に微細な高温流路が形成された伝熱板と、表面に微細な低温流路が形成された伝熱板を交互に積層して構成された積層体の上面と底面に保護用の金属板を重ねて、真空の状態で加圧・加熱することによって各伝熱板および各金属板が互いに拡散接合されて一体化される(例えば非特許文献1)。
【0004】
積層型マイクロ流路熱交換器をプレート式熱交換器と比較した場合の構造上の特徴としては、各層により多くの流路を形成できること、短流路を形成できることなどが挙げられる。これにより、積層型マイクロ流路熱交換器はプレート式熱交換器に比べ小型化が可能である。
【0005】
また、積層型マイクロ流路熱交換器は伝熱性、冷媒充填量の低減および高耐圧、耐熱など性能面でも従来の熱交換器より優れた点を有する。例えば、伝熱壁(板)を介した作動流体同士の熱通過率が高い、流路形状損失が低い、プレート式熱交換器と流動損失が同じ場合では流路面積を縮小できる、圧縮された作動流体の圧力損失を低減できる、熱交換器全体の容積減少による冷凍サイクルに充填される作動流体の量を減少させることができる、等である。
【0006】
積層型マイクロ流路熱交換器の作動流体が出入する出入口には温度センサーがそれぞれ設けられる。温度センサーを設ける目的は、温度センサーで測定した温度をもとに熱交換器で熱交換された熱量を算出したり、流出する作動流体を目標温度にまで制御したりするためである。
【0007】
この目的を達成するには、温度センサーが作動流体の温度を正確に測定できる必要がある。例えば、2つの作動流体の間で熱交換を行う場合、流入する作動流体と流出する作動流体の温度差から、熱交換器の熱交換能力(伝熱量)は次の式で求めることができる。
Q([J/s]=[W])
=c
p,l([J/kgK])×G
l([kg/s])×(T
Low,out−T
Low,in)([K])
=c
p,h([J/kgK])×G
h([kg/s])×(T
High,in−T
High,out)([K])
Q:伝熱量[J/s]=[W]
c
p,l:低温作動流体の比熱[J/kgK]
c
p,h:高温作動流体の比熱[J/kgK]
G
l:低温作動流体の質量流量[kg/s]
G
h:高温作動流体の質量流量[kg/s]
(T
Low,out−T
Low,in):(低温作動流体の熱交換器出口温度と低温作動流体の入口温度との温度差[K])
(T
High,in−T
High,out):(高温作動流体の熱交換器入口温度と低温作動流体の出口温度との温度差[K])
【0008】
また、給湯機などでは、マイクロ流路熱交換器の出口を流れる作動流体の温度を正確に測定することは、作動流体が目標温度に達しているかを確認するために必要である。また、マイクロ流路熱交換器の入口を流れる作動流体の温度を正確に測定することは、貯湯タンクから流出した作動流体を加熱する必要があるかを確認するために必要であり、また作動流体を目標温度にまで加熱するために必要な熱量を導くためにも必要である。
【0009】
積層型マイクロ流路熱交換器の出入口を流れる作動流体の温度の測定には、熱電対などの温度センサーを用いている。温度センサーの感知点によって測定された熱起電力は、感知点と繋がっている熱電対素線を介して熱起電力−温度変換回路に伝達される。多くの場合、温度センサーは熱交換器の作動流体の入口および出口に取り付けられている配管の外表面に半田などで固定されている。この場合、温度センサーの感知点は作動流体と直接接していないため、作動流体の正確な温度を測定することができない。
【0010】
よって、測定した温度には、熱交換器を形成する金属の熱伝導による誤差1と、温度センサーを取り付けた位置の温度と実際の出入口を流れる作動流体の温度との温度差による誤差2と、出入口に接続される各出入口管内を流れる作動流体の温度境界層による管の中心付近を流れる作動流体の温度と管の壁面付近を流れる作動流体の温度との温度差による誤差3と、温度センサーによる測定方法の測定誤差4などが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
プレート式熱交換器は、外形寸法が例えば、95(幅)×325(長さ)×81.96(高さ)(mm)であり、このプレート式熱交換器と同じ熱交換能力を有する積層型マイクロ流路熱交換器の外形寸法80(幅)×106(長さ)×43.2(高さ)(mm)よりも大きいため、周囲の空気と接する表面積が大きく、空気中の熱がプレート式熱交換器内に移動したり、プレート式熱交換器内の熱が空気中に移動したりするなどして外乱を受けやすい。このため、外乱などの他の影響を受けていない作動流体の実際の温度を測定するには限界がある。
【0013】
一方、積層型マイクロ流路熱交換器は周囲の空気と接する表面積が小さく、空気中の熱が熱交換器本体内に移動したり、熱交換器本体内の熱が空気中に移動したりするなどの外乱が少ないため、プレート式熱交換器に比べ、作動流体の実際の温度を測定しやすい。作動流体の実際の温度を測定することができれば、エアコンや床暖房などに用いられている積層型マイクロ流路熱交換器において、室内空気の温度などを設定温度に調整する際、測定誤差に基づく温度調整のための無駄なエネルギーが消費されずにすむ。
【0014】
しかし、実際のエアコンや床暖房などに用いられている積層型マイクロ流路熱交換器では、熱交換器本体の出入口を流れる作動流体の温度を直接測定するのではなく、前述のように熱交換器本体の出入口に接続される配管の表面温度を測定している。例えば床暖房などに用いられているマイクロ流路熱交換器の場合、入口を流れる作動流体(例えば、水)の温度は低温であるが、入口に接続される作動流体が流れる配管の表面温度は、金属表面の熱伝導により空気中から熱が配管内に移動し、実際の作動流体の温度より高く測定される場合がある。また、出口を流れる作動流体の温度は高温であるが、出口に接続される作動流体が流れる配管の表面温度は、金属表面の熱伝導により空気中への熱の移動により実際の作動流体の温度より低く測定される場合がある。これらは、温度センサーの設置位置による誤差(上述の誤差1から3)である。
また、積層型マイクロ流路熱交換器は小型であるため、熱交換器本体の熱伝導により出口管と入口管の間で熱の授受がされて、出口管または入口管のうち温度の低い方は温度が高く、一方温度の高い方は温度が低く測定されることがある。
【0015】
このように、積層型マイクロ流路熱交換器の出入口に接続される配管の表面に設置された温度センサーによる作動流体の温度を測定する方法では、作動流体の実際の温度を測定することができない。
【0016】
そこで、熱交換器本体の出入口を流れる作動流体の実際の温度を測定するために、熱交換器本体の出入口の配管内に温度センサーの感知点(熱電対の温接点)を差し込み、配管内を流れる作動流体に温度センサーの感知点を直に接触させることで、熱交換器本体の出入口を流れる作動流体の温度を直接測定する方法が検討されている。
【0017】
しかし、この方法によっても、作動流体が配管内を流れるとき、配管の内壁近傍では作動流体の流れが減速されるために、配管内を流れる作動流体に不均一な温度分布が生じ、配管内を流れる作動流体に温度センサーの感知点を直に接触させても作動流体の実際の温度を正確に測定することができない問題があった。
【0018】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、熱交換器本体の出入口を流れる作動流体の温度を正確に測定することのできる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱交換器は、高温流体が流通する高温流路と低温流体が流通する低温流路とを有し、前記高温流路を流通する前記高温流体と前記低温流路を流通する前記低温流体との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記熱交換器本体の前記高温流路の入口に接続され外部から前記高温流体を前記高温流路に流入させる高温入口管と、前記熱交換器本体の前記低温流路の入口に接続され外部から前記低温流体を前記低温流路に流入させる低温入口管と、前記高温入口管および前記低温入口管内のうち少なくともいずれか一方の管内に配置され高温流体または低温流体を攪乱させる整流リングと、前記整流リングの下流域に形成されるコア領域に感知点が配置されるように設けられた温度センサーとを具備する。
【0020】
また、本発明に係る熱交換器において、前記整流リングが、前記高温流体または前記低温流体を通過させる開口部を有し、前記開口部の上流側の開口径が前記高温入口管または前記低温入口管の内径と等しく、前記開口部の下流側の開口径が前記上流側の開口径よりも小さいものであってよい。
【0021】
また、本発明に係る熱交換器がマイクロ流路熱交換器であってよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱交換器本体の入口に接続された高温入口管または低温入口管のうち少なくともいずれか一方の管内に配置された整流リングの下流域に形成されるコア領域に温度センサーの感知点が配置されるため、熱交換器本体の入口および出口を流れる作動流体の温度を正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ流路熱交換器を示す斜視図、
図2は
図1のマイクロ流路熱交換器を一部分解して示す斜視図である。
【0025】
[全体の構成]
これらの図に示すように、このマイクロ流路熱交換器1は、流路層積層体である熱交換器本体2と、高温側外殻板3Aと、低温側外殻板3Bと、高温流体を流入させる高温入口管5Aと、高温流体を流出させる高温出口管5Bと、低温流体を流入させる低温入口管5Cと、低温流体を流出させる低温出口管5Dとを有する。なお、以下の記載では、高温入口管5A、高温出口管5B、低温入口管5Cおよび低温出口管5Dを総称して出入口管と呼ぶ。
【0026】
図中、熱交換器本体2のZ軸の矢印の方向と反対の方向の面を「高温側の面」または「下面」、各部材の、Z軸の矢印の方向の面を「低温側の面」または「上面」とする。熱交換器本体2の高温側の面には高温側外殻板3Aが接合され、熱交換器本体2の低温側の面には低温側外殻板3Bが接合されている。
【0027】
熱交換器本体2は、2種類の伝熱板2A、2Bを交互に複数枚積層して構成される。2種類の伝熱板の構成については後で説明する。
【0028】
熱交換器本体2を構成する2種類の伝熱板2A、2Bと、高温側外殻板3Aと、低温側外殻板3Bは、例えば、熱伝導率が高い同じ種類の金属板からなる。より具体的には、ステンレス鋼などが用いられる。これらの金属板は積層された後、拡散接合によって互いに接合されることによって略直方体形状の積層体となる。なお、伝熱板2A、2Bの板厚は、高温流路または低温流路を形成できると共に、拡散接合が出来るものであれば、どのような厚みでもよい。
【0029】
以降、説明上の必要に応じて、マイクロ流路熱交換器1のZ軸に垂直な面を「主面」と呼び、主面以外のX軸やY軸に垂直な4つの面を「側面」と呼ぶこととする。
【0030】
図2に示すように、マイクロ流路熱交換器1の各側面には、各々、熱交換器本体2内の高温流路に作動流体の1つである高温流体を流入させる高温入口ヘッダ21と、熱交換器本体2内の高温流路から高温流体を流出させる高温出口ヘッダ22と、熱交換器本体2内の低温流路に作動流体の他の1つである低温流体を流入させる低温入口ヘッダ23と、熱交換器本体2内の低温流路から低温流体を流出させる低温出口ヘッダ24が形成されている。
【0031】
図1に示したように、高温入口ヘッダ21には外から高温入口管5Aが挿入され、溶接などによって熱交換器本体2に接合される。この高温入口管5Aの外側端部には、高温流体を流入させるための図示しない外部配管が着脱可能に接続される。高温出口ヘッダ22には外から高温出口管5Bが挿入され、熱交換器本体2に溶接などにより接合されている。この高温出口管5Bには、高温流体を流出させるための図示しない外部配管が着脱可能に接続される。低温入口ヘッダ23には外から低温入口管5Cが挿入され、熱交換器本体2に溶接などにより接合されている。この低温入口管5Cには低温流体を流入させるための図示しない外部配管が着脱可能に接続される。低温出口ヘッダ24には外から低温出口管5Dが挿入され、熱交換器本体2に溶接などにより接合されている。この低温出口管5Dには低温流体を流出させるための図示しない外部配管が着脱可能に接続される。
【0032】
[熱交換器本体2の構成]
次に、熱交換器本体2の構成を説明する。
前述したように、熱交換器本体2は、2種類の伝熱板2A、2Bを交互に複数枚積層して構成される。これらの伝熱板2A、2Bにはエッチング処理によって溝および切り欠き部が形成されている。伝熱板2A、2Bでは、それぞれの溝に流す流体が異なるので、溝のパターンは異なっているが、切り欠き部は、伝熱板2Aおよび2Bの積層後に各ヘッダ部となるように形成されるので、切り欠き部の形状は同一である。なお、伝熱板2Aおよび2Bに溝や切り欠き部を形成する処理はエッチング処理だけでなく、例えば、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などでもよい。また、3Dプリンターのような積層造形技術を用いることで溝のへりを形成してもよい。
【0033】
図3および
図4は2種類の伝熱板2A、2Bを示す斜視図である。ここで、
図3に示す伝熱板2Aは「高温伝熱板2A」、
図4に示す伝熱板2Bは「低温伝熱板2B」である。
【0034】
(高温伝熱板2Aの構成)
図3に示すように、高温伝熱板2Aには、高温流体の流路を形成する溝25A、30A、31Aおよび切り欠き部26A、27A、28A、29Aがそれぞれ設けられている。溝25A、30A、31Aは高温伝熱板2Aの一方の面にのみ設けられる。溝25A、30A、31Aの深さはどこも均一であってよい。切り欠き部26A、27A、28A、29Aは、高温伝熱板2Aの基材の4辺に各々対応する所定の部位を基材の厚み分除去することによって形成される。
【0035】
以後、説明の必要に応じて、高温伝熱板2Aの各々の切り欠き部26A、27A、28A、29Aを、第1の切り欠き部26A(高温分配部)、第2の切り欠き部27A(高温合流部)、第3の切り欠き部28A、および第4の切り欠き部29Aと呼ぶ。
【0036】
高温伝熱板2Aにおいて、図中Y軸方向の両端部にそれぞれ設けられる第1の切り欠き部26Aと第2の切り欠き部27Aとの間の領域には、これら第1の切り欠き部26Aと第2の切り欠き部27Aとの間を連通する複数の溝25A、30A、31Aが形成されている。なお、
図3において、溝25Aの数は3本であるが、もっと幅の小さい数多くの溝を形成するようにしても良い。
【0037】
高温伝熱板2Aにおける上記の各溝25A、30A、31Aは、X軸方向に沿って形成された複数の溝25Aと、Y軸方向に沿って形成された2本の溝30A、31Aで構成される。Y軸方向に沿って形成された2本の溝30A、31Aのうち一方の溝30Aは一端が第1の切り欠き部26Aと連通し、他方の溝31Aは一端が第2の切り欠き部27Aと連通する。X軸方向に沿って形成された複数の溝25Aは各々2本の溝30A、31Aの間を連通する。これにより、後述のように形成される高温伝熱板2Aの高温入口ヘッダ21および高温出口ヘッダ22と、低温伝熱板2Bの低温入口ヘッダ23および低温出口ヘッダ24との位置関係を互いに90度異なるようにしている。
【0038】
(低温伝熱板2Bの構成)
図4に示すように、低温伝熱板2Bには、低温流体の流路を形成する溝25Bおよび切り欠き部26B、27B、28B、29Bがそれぞれ設けられている。溝25Bは低温伝熱板2Bの一方の面にのみ設けられる。溝25Bの深さはどこも均一であってよい。切り欠き部26B、27B、28B、29Bは、低温伝熱板2Bの基材の4辺に各々対応する所定の部位を基材の厚み分除去することによって形成される。
【0039】
以後、説明の必要に応じて、低温伝熱板2Bの各々の切り欠き部26B、27B、28B、29Bを、第5の切り欠き部26B、第6の切り欠き部27B、第7の切り欠き部28B(低温分配部)、および第8の切り欠き部29B(低温合流部)と呼ぶ。
【0040】
低温伝熱板2Bにおいて、図中X軸方向の両端部にそれぞれ設けられる第7の切り欠き部28Bと第8の切り欠き部29Bとの間には、これら第7の切り欠き部28Bと第8の切り欠き部29Bとの間を連通する複数の溝25Bが形成されている。これら複数の溝25Bは、高温伝熱板2Aに形成された複数の溝25Aと、Y軸方向にて同じ位置に各々形成されている。
【0041】
(高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとの積層構造)
上記のような構成を有する高温伝熱板2Aおよび低温伝熱板2Bは、
図5および
図6に示すように、双方の溝25A、25B、30A、31Aが設けられた面の向きを一致させて、各々複数交互に重ね合わせて積層される。このようにして熱交換器本体2が構成される。
【0042】
この熱交換器本体2において、高温伝熱板2Aの第1の切り欠き部26Aと低温伝熱板2Bの第5の切り欠き部26Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、高温入口ヘッダ21を形成する。
【0043】
高温伝熱板2Aの第2の切り欠き部27Aと低温伝熱板2Bの第6の切り欠き部27Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、高温出口ヘッダ22を形成する。
【0044】
高温伝熱板2Aの第3の切り欠き部28Aと低温伝熱板2Bの第7の切り欠き部28Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、低温入口ヘッダ23を形成する。
【0045】
高温伝熱板2Aの第4の切り欠き部29Aと低温伝熱板2Bの第8の切り欠き部29Bは、高温伝熱板2Aと低温伝熱板2Bとが交互に複数積層されることで、低温出口ヘッダ24を形成する。
【0046】
(高温流路と低温流路について)
図5は熱交換器本体2における高温流路を示す斜視図である。
高温流路は、高温伝熱板2Aの各溝25A、30A、31Aと低温伝熱板2Bの下面との間に形成される。高温流体は、高温入口ヘッダ21から流入し、溝30Aを通って複数の溝25Aに分配される。複数の溝25Aを通過した高温流体は溝31Aで合流し、高温出口ヘッダ22より流出する。このような高温流体の流れが各々の高温伝熱板2Aに対応する高温流路層において生じる。なお、高温流路層は、高温伝熱板2Aの各溝25A、30A、31Aと、第1の切り欠き部26Aと、第2の切り欠き部27Aとで形成される。
【0047】
図6は熱交換器本体2における低温流路を示す斜視図である。
低温流路は、低温伝熱板2Bの溝25Bと低温側外殻板3Bの下面および高温伝熱板2Aの下面との間に形成される。低温流体は、低温入口ヘッダ23から流入し、複数の溝25Bを通って低温出口ヘッダ24から流出する。このような低温流体の流れが各々の低温伝熱板2Bに対応する低温流路層において生じる。なお、低温流路層は、低温伝熱板2Bの各溝25Bと、第7の切り欠き部28Bと、第8の切り欠き部29Bとで形成される。
【0048】
熱交換器本体2において高温流路層と低温流路層は交互に積層されているので、高温伝熱板2Aおよび低温伝熱板2Bを介して高温流体と低温流体との間で熱交換が行われる。
【0049】
[熱交換器本体出入口の流体温度の検出構造]
この実施形態のマイクロ流路熱交換器1では、熱交換器本体2の入口および出口を流れる高温流体および低温流体の温度を直接測定することを可能とするために、次のような構成を採用している。
【0050】
図1に示したように、熱交換器本体2には、高温入口ヘッダ21に挿入される高温入口管5Aを流れる高温流体の温度を測定する第1の温度センサー31A、高温出口ヘッダ22に挿入される高温出口管5Bを流れる高温流体の温度を測定する第2の温度センサー31B、低温入口ヘッダ23に挿入される低温入口管5Cを流れる低温流体の温度を測定する第3の温度センサー31C、および低温出口ヘッダ24に挿入される低温出口管5Dを流れる低温流体の温度を測定する第4の温度センサー31Dが配設される。
【0051】
図7および
図8は、
図1に示す切断線A−Aと切断線B−Bで熱交換器本体2を切断した第1の温度センサー31Aの取り付け構造を示す断面図である。
図7は高温入口管5Aにおける軸方向(流体の流通方向)に温度センサー31Aの取り付け構造を見た場合のX−Z断面図であり、
図8はそのY−Z断面図である。他の温度センサー31B、31C、31Dの取り付け構造も同様であるため、ここでは第1の温度センサー31Aの取り付け構造のみ説明する。
【0052】
熱交換器本体2の低温側外殻板3Bには第1の温度センサー31Aである熱電対を熱交換器本体2内に差し込むための孔部32が設けられる。熱交換器本体2の入口に挿入された高温入口管5Aの低温側外殻板3B側の部位には、低温側外殻板3Bの孔部32に連通する孔部33が設けられる。低温側外殻板3Bと高温入口管5Aの各々の孔部32,33には、例えばステンレス製などの金属保護管34が配置される。第1の温度センサー31Aの各リード線35、35は絶縁・断熱部材36によって被覆され、金属保護管34内に保持される。第1の温度センサー31Aの各リード線35、35には例えば直径が0.5mmから1mm程度のものを用いることができ、セラミック薄膜などによって耐久性を高めたものであることが望ましい。第1の温度センサー31Aの各リード線35、35の先端に設けられた温接点36(温度センサーの感知点)は、高温入口管5A内を流通する流体に直接触れられるように配置される。温接点36は、流体からの圧力をできるだけ受けないよう、例えば、直径が0.5mmや1mm程度の球体であることが望ましい。
【0053】
第1の温度センサー31Aの各リード線35、35は、外部との電気的な接続のために金属保護管34の上端より上方に突出される。第1の温度センサー31Aの各リード線35、35を突出させた絶縁・断熱層36の上面において、リード線35、35の外周の絶縁・断熱層36との隙間はシール材41によって塞がれる。また、金属保護管34の上端において絶縁・断熱層36と金属保護管34との隙間は別のシール材42によって塞がれる。さらに、高温側外殻板3Aの孔部32と金属保護管34との隙間も別のシール材43によって塞がれる。
【0054】
これらのシール材41,42,43は作動流体の圧力に応じて選択される。
例えば、作動流体の圧力が0.5MP以下である場合には接着材シールを用いることができる。作動流体の圧力が2MP以下である場合にはテープ状のシールテープを用いることが望ましい。作動流体の圧力が6.5MP以下である場合には穴の開いた円形状のシールワッシャーを用いることが望ましい。
【0055】
以上、第1の温度センサー31Aの取り付け構造を説明したが、第2の温度センサー31B、第3の温度センサー31C、第4の温度センサー31Dの取り付け構造も同様である。
【0056】
このように、第1の温度センサー31Aの温接点36が高温入口管5A内を流通する高温流体に直に触れることによって、熱交換器本体2に流入する高温流体の温度を直接測定することができる。同様に、熱交換器本体2より流出する高温流体、熱交換器本体2に流入する低温流体、熱交換器本体2より流出する低温流体の各々の温度を、第2の温度センサー31B、第3の温度センサー31C、第4の温度センサー31Dによって直接測定することができる。
【0057】
しかしながら、各出入口管5A、5B、5C、5D内を流れる作動流体は、各出入口管5A、5B、5C、5Dの内壁近傍では減速されることによって不均一な温度分布が形成される。このため、作動流体の温度を直接測定しても必ずしも正確な温度が測定できるとは限らない。
【0058】
そこで、本実施形態では、熱交換器本体2の出入口の各出入口管5A、5B、5C、5D内に作動流体の速度および温度が略一定となるコア領域を形成するための整流リングを配置した。この整流リングの下流域に形成されるコア領域に温度センサーの温接点を配置した。
【0059】
図7および
図8に示したように、高温入口管5A内には整流リング52が配置される。整流リング52は高温入口管5Aに対して同軸に開口部52aを有し、この開口部52aの入口側の径Dは高温入口管5Aの内径と等しく、出口側の径dは入口側の径Dのおよそ三分の二の大きさである。そして開口部52aの入口側から出口側までの間はすり鉢状のテーパー面となっている。この構造は、熱交換器本体2の低温流体が流入する入口に接続された低温入口管5Cについても同様である。
【0060】
図9は、
図1に示す切断線C−Cで切断した熱交換器本体2の高温流体が流出する出口に接続された高温出口管5Bおよび整流リング52を示すY−Z断面図である。
同図に示すように、熱交換器本体2の高温流体が流出する出口に接続された高温出口管5B内にも同様に整流リング52が配置される。
この構造は、熱交換器本体2の低温流体が流出する出口に接続された低温出口管5Dについても同様である。
【0061】
図10は、整流リング52の上流域および下流域での作動流体の速度分布を示す図である。整流リング52が入口管に設けられている場合、開口部52aの出口側52cが熱交換器本体2の入口との境界53になる。
外部もしくは熱交換器本体2より各出入口管5A、5B、5C、5Dに流入してきた作動流体は、整流リング52の上流域において各出入口管5A、5B、5C、5Dの内壁近傍で減速されることによって、各出入口管5A、5B、5C、5Dの中心軸からの距離が大きくなるに従って速度が低くなる不均一な速度分布を示す。整流リング52の上流域において各出入口管5A、5B、5C、5Dの内壁近傍を流れていた作動流体は、整流リング52の開口部52aのテーパー面52bによって各出入口管5A、5B、5C、5Dの中心軸に向かう方向に誘導され、整流リング52の開口部52aの中心付近を通過する他の流れと混ざり合う。この結果、整流リング52の開口部52aの出口側52c直後の下流域に、作動流体の速度が整流リング52の上流域での各出入口管5A、5B、5C、5D内の作動流体の平均速度よりも高速で略一定のコア領域Cが発生する。一例として、整流リング52の入口側の径をDとし、出口側の径を2/3Dとしたとき、整流リング52の開口部52aの出口側52cから下流に6D離れた位置までの間にコア領域Cが形成される(径方向でも軸方向でもほぼ均一な温度分布領域を大きく形成できることで、熱電対の設置がし易くなり、流体の温度の測定も正確になる)。コア領域Cの外は速度境界層および温度境界層である。このコア領域Cでは、作動流体の速度が略一定であり、温度分布も略均一であるから、このコア領域Cに温度センサーの温接点36を配置することによって、速度境界層および温度境界層の影響を受けることなく作動流体の温度を正確に測定することができる。
【0062】
本実施形態では、
図8および
図9に示すように、整流リング52の開口部52aの出口側52cの位置から下流側に2Dの距離の位置に温接点36がくるように温度センサー31A、31Bを配置した。これにより、速度境界層および温度境界層の影響を受けることなく、熱交換器本体2の入口または出口に流入または流出する作動流体の温度を正確に測定することができる。これにより、熱交換熱量の算出や、流出する作動流体の目標温度への制御などをより正確に行うことができる。
【0063】
なお、整流リング52の開口部52aの形状に関して、開口部52aのテーパー面52bは断面において一定の傾斜面であってよいが、本発明はこれに限定したものではなく、開口部52aの面積を徐々に狭くすればよく、サイン波面、放物曲線面、あるいは双曲線面であってもよい。
【0064】
また、本実施形態では、熱交換器本体2内を流れる2つの作動流体を並行流としているが、対向流に変更したい場合は、入口管と出口管を入れ替えることで、整流リングにより形成されるコア領域C内に温度センサーの温接点を配置することができる。また、高温伝熱板2A、低温伝熱板2Bの流路のパターンを変更すれば、2つの作動流体を直交流にすることも可能である。
【0065】
さらに、本実施形態では、熱交換器本体2の入口を流れる作動流体の温度を測定するために、入口管5A、5C内に温度センサー31A、31Bの温接点36を配置しているが、本発明はこれに限定したものではなく、熱交換器本体2の入口ヘッダ21、23内に温度センサー31A、31Bの温接点36を配置しても良い。また、本実施形態では、整流リングは各出入口管5A、5B、5C、5Dの全てに設けているが、本発明はこれに限定したものではなく、入口管のみや出口管のみに整流リングを設けても良い。
【0066】
以上、積層型マイクロ流路熱交換器について本発明を適用した場合の実施形態を説明したが、本発明はプレート式熱交換器など、他の形式の熱交換器にも適用することができる。
【0067】
その他、本技術は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。