【実施例1】
【0045】
図5及び
図6を参照しながら本発明の実施例1に係る、射出成形機の成形サイクル終了方法を説明する。実施例1に係る、射出成形機の成形サイクル終了方法は、先に、
図1乃至
図4を用いて説明した、インラインスクリュ式射出装置1を有する射出成形機で実施することを前提にして説明する。
【0046】
図5は、横軸を成形サイクル回数(N)として、実施例1において、成形サイクルを終了させるための工程を説明するためのイメージ図である。成形サイクルを開始(N=1)してから5回目までの成形サイクル(A1〜A5)をA成形サイクルとする。材料供給部14へ樹脂材料14aが供給されている場合の計量工程開始時を示す
図3とは異なり、新たに成形サイクルを開始させた直後の成形サイクルA1では、スクリュ16の樹脂流路10に樹脂材料14aが全くない状態でスクリュ16を回転させ、樹脂材料14aの供給を開始させる。そのため、供給させた樹脂材料14aを、樹脂流路10を介してスクリュ16前方に流動させる間に可塑化を進行させ、貯留部15bへの貯留(計量)が開始されるまで所定の時間を要する。
【0047】
また、上記の成形サイクルA1も含め、冷間状態のインラインスクリュ式射出装置1の温度が、樹脂材料14aの供給開始後、加熱バレル15bやその内部のスクリュ16を含め、良品を成形するのに好適な温度に昇温され安定(サチュレート)するまでにも所定の時間を要する。インラインスクリュ式射出装置1の温度が良品を成形するのに好適な温度に昇温されるまでの間、あるいは、インラインスクリュ式射出装置1自体の受熱と放熱とがバランスして、安定(サチュレート)するまでの間、加熱手段15aや、回転するフライト16aと樹脂材料14aとの接触時や樹脂材料14a同士の接触時に生じるせん断エネルギによる熱エネルギの一部が、樹脂材料14aの可塑化ではなく、これら樹脂材料14aが直接的に接触する同射出装置の昇温に消費される。
【0048】
一方、成形サイクル開始前、すなわち、樹脂材料14aを供給させる前から、加熱バレル15の加熱手段15aによる加熱を開始させて、インラインスクリュ式射出装置1の温度を予め昇温させることは可能である。しかしながら、成形サイクルにおける、インラインスクリュ式射出装置1に関する受熱及び放熱を伴うサチュレートするまでの熱履歴は、先に説明したように加熱手段15aの加熱制御のみによって補完制御できるものではない。従って、樹脂材料14aの可塑化や射出充填を行わせることなく、加熱手段15aの加熱制御のみで、冷間状態のインラインスクリュ式射出装置1を、樹脂材料14aの供給開始直後の成形サイクルで良品を成形できるように、同装置を好適に昇温・サチュレートさせることは難しい。
【0049】
また、図示しない型締機構及び金型側でも、同様の理由で、所定の温度に昇温され安定(サチュレート)するまでにも所定の時間を要すると共に、樹脂材料14aの射出充填を行わせることなく、金型側に接続させた金型温度調整装置(温調機)等の温度制御のみで、型締機構及び金型を好適に昇温・サチュレートさせることは難しい。そのため、次の成形サイクルA2以降のA成形サイクルにおいて、
図3に示す状態から計量工程を開始させることができたとしても、貯留部15bの樹脂材料14aの可塑化状態、及び、金型側の温度調整が安定して、良品を成形できる成形サイクルに到達するには、所定回数の成形サイクルが必要となる。当然ながら、この良品を成形できる成形サイクルに到達するまでの成形サイクルにおいては、不良品が成形され、計量工程開始から完了までの、スクリュ16に生じる回転トルクの平均値(平均回転トルク1)は、良品を成形できる成形サイクルにおける平均回転トルク1とは、回避し得ない変動に起因する差異以上の差異が生じる。
【0050】
ここで、実施例1においては、1成形サイクルにおいて、可塑化させた樹脂材料14aを、貯留部15bに設定量まで貯留させる計量工程において、スクリュ16に生じる回転トルクの平均値(平均回転トルク1)を算出させる(平均回転トルク1算出工程)。加熱バレル15内への樹脂材料14aの供給を継続させている間に、平均回転トルク1算出工程において算出させる平均回転トルク1は、後述する、平均回転トルク2、及び、同平均回転トルク2を算出させて、これを安定成形トルク基準値として設定させる平均回転トルク2算出工程において、その基準となる重要な数値である。
【0051】
また、正常な計量状態下で計量が進行した場合でも、スクリュ16に生じる回転トルクが変動する計量工程中に、射出装置内の樹脂材料が所望する保持量に到達した状態の負荷電流をピンポイントで電流設定値として設定させる特許文献1の射出成形機の材料検知方法に対して、計量工程中のスクリュ16に生じる回転トルクを平均化して平均回転トルク1として取り扱うことで、スクリュ16の回転トルクを、同回転トルクに生じる変動の影響を減少させた安定した基準とすることができる。
【0052】
そのため、上記のような、良品を成形できる成形サイクルに到達する前の、成形開始後の不安定な成形サイクルにおいては、所定回数、平均回転トルク1算出工程を行わないことが好ましい。樹脂成形品やそのサイズ及び要求品質、更に、成形・射出条件によって、成形開始から、良品を成形できる成形サイクルに到達する成形サイクルの回数は様々である。そこで、平均回転トルク1算出工程を行わない所定回数を、試験成形等により好適に求めることが好ましい。実施例1では、上記所定回数を5回とし、6回目の成形サイクルB1から良品を成形できるものとする。
【0053】
次に、良品を成形できる6回目の成形サイクルB1から、選択された複数回の各成形サイクルにおいて上述した平均回転トルク1算出工程を行わせ、各成形サイクルの平均回転トルク1を算出させる。説明の理解を容易にするため、実施例1では、成形サイクルの選択方法及び回数を連続する5回(10回目まで)のB成形サイクルとして、各成形サイクル(B1〜B5)において、平均回転トルク1算出工程を行わせ、各成形サイクルの平均回転トルク1を算出させるものとする。そして、B成形サイクル最後の10回目の成形サイクルB5の計量工程の完了と略同時に、各成形サイクルB1〜B5において算出させた平均回転トルク1を合計して、その合計値を選択された回数5で除した平均回転トルク2を算出させる。そして、B成形サイクルで算出させた平均回転トルク2を安定成形トルク基準値として、図示しない制御装置に設定させる。このように、平均回転トルク2を算出させ、算出させた平均回転トルク2を安定成形トルク基準値として設定させるのが平均回転トルク2算出工程である。
【0054】
B成形サイクルの平均回転トルク2算出工程で設定させた安定成形トルク基準値をT
Bとする。一方、安定成形トルク基準値T
Bを設定させた10回目の成形サイクルの直後の11回目の成形サイクルにおける平均回転トルク1を、直前の10回目の成形サイクルで設定させた安定成形トルク基準値T
Bと比較させる(平均回転トルク比較工程)。
【0055】
また、7回目の成形サイクルから新たな平均回転トルク2算出工程を開始させ、連続する5回目の成形サイクル、すなわち、11回目の成形サイクルの計量工程の完了と略同時に、平均回転トルク2を算出させて、これを安定成形トルク基準値T
Cとして設定させる。この7回目から11回目までの連続する5回の成形サイクルを、便宜上、C成形サイクル(C1〜C5)と呼称する。そして、B成形サイクルと同様に、安定成形トルク基準値T
Cを設定させた11回目の成形サイクルの直後の12回目の成形サイクルにおける平均回転トルク1を、直前の11回目の成形サイクルで設定させた安定成形トルク基準値T
Cと比較させる(平均回転トルク比較工程)。
【0056】
更に、8回目、9回目と成形サイクル毎に新たに平均回転トルク2算出工程を開始させ、連続する5回のD成形サイクル、E成形サイクルにおいて、安定成形トルク基準値T
D、T
Eをそれぞれ設定させる。そして、それぞれの安定成形トルク基準値を設定させた成形サイクルの直後の成形サイクルにおける平均回転トルク1を、直前の成形サイクルで設定させた安定成形トルク基準値と比較させる平均回転トルク比較工程を行わせる。
【0057】
このように、実施例1においては、良品を成形できる6回目の成形サイクルから、平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を開始させて、安定成形トルク基準値を設定させた後の成形サイクルにおいて、直近の設定回数の成形サイクルから算出・設定させた安定成形トルク基準値と、その直後の成形サイクルにおける平均回転トルク1とを比較させる平均回転トルク比較工程を成形サイクル毎に行わせることを特徴としている。
【0058】
ここで、ある試験成形の、連続する成形サイクルにおいて、これまで
図5を参照しながら説明したように、成形開始から5回のA成形サイクル後、6回目のB成形サイクルから、平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を開始させて、安定成形トルク基準値を設定させたときの、成形サイクルを終了させる直前の成形サイクルの、計量工程におけるスクリュ16の平均回転トルク1と、設定成形終了値の3種類の候補値を
図6のグラフに示す。設定成形終了値は、本発明において、最終成形サイクルを判断するための、平均回転トルク2に対する平均回転トルク1との差異である。実施例1においては、基準値としての信頼性が高い、安定成形トルク基準値(平均回転トルク2)をベースとして試験成形等でこれを求める方法を説明する。
【0059】
図6のグラフは、横軸が成形サイクルの回数(N)で、50回目の成形サイクル以降が示されている。縦軸は、スクリュ16の回転トルクを示しており、回転トルク値そのものではなく、スクリュ16を回転駆動させる、図示しない計量用駆動機構のサーボモータの定格回転トルクを100%とした場合の%で表示である。各成形サイクルの回数上にプロットされた四角が、その成形サイクルにおける計量工程の平均回転トルク1であり、これら四角を直線で結んだもの(実線1)が、スクリュ16の平均回転トルク1の変化を示す。回避し得ない要因等に起因すると思われる若干の変動が確認されるが、成形サイクルの50回目から58回目までは、成形サイクル毎の平均回転トルク1の差異は大きくはなく、比較的安定した値を示している。
【0060】
ここで、
図6の点線2、実線3及び一点鎖線4は、各成形サイクルにおいて設定させた安定成形トルク基準値(各成形サイクルの直近5回の成形サイクルのスクリュ16の平均回転トルク2)をベースとする設定成形終了値の3種類の候補値をプロットし、滑らかに結んだものである。それぞれの候補値を説明すると、点線2は安定成形トルク基準値を10%ダウンさせたもの(安定成形トルク基準値の90%)で、同じく、実線3は20%ダウンさせたもの(80%)で、一点鎖線4は30%ダウンさせたもの(70%)である。
【0061】
実施例1の試験成形においては、
図6の58回目の成形サイクルの計量工程完了後に、樹脂材料14aの供給を停止させている。そのため、59回目以降の成形サイクルにおいては、成形サイクル毎にスクリュ16の平均回転トルク1が減少する。直近5回の各成形サイクルにおける平均回転トルク1から算出させた平均回転トルク2(安定成形トルク基準値)もその影響を受けるため、点線2、実線3及び一点鎖線4も成形サイクル毎に減少する。この
図6の成形サイクルの場合、60回目(三角形表示)の成形サイクルの平均回転トルク比較工程において、その平均回転トルク1が、安定成形トルク基準値を20%ダウンさせた値(実線3)、すなわち、安定成形トルク基準値の80%に到達(低下)すると共に、良品が成形された最後の成形サイクルとなる結果を得た。
【0062】
このように、実施例1においては、連続する成形サイクルにおいて、ある成形サイクルの計量工程における、スクリュ16の平均回転トルク1が、その成形サイクル直近5回(設定回数)の平均回転トルク2の80%に到達(低下)する成形サイクル(実施例1の場合は60回目)が、樹脂材料の供給を停止させた後、樹脂量不足の不良品が成形されず、射出装置内の樹脂材料の保持量を最小にさせる条件であり、且つ、平均回転トルク2(安定成形トルク基準値)の80%が設定成形終了値であることが試験成形で確認された。従って、樹脂成形品を製造する実際の成形においても、この条件を満たす成形サイクルを最終成形サイクルとすることにより、本発明の目的を達成することができる。
【0063】
本発明は、平均回転トルク比較工程において、平均回転トルク1が、安定成形トルク基準値から、設定成形終了値を下回った成形サイクルを最終成形サイクルとして、成形サイクルを終了させるものである。従って、実施例1においては、設定成形終了値を安定成形トルク基準値の80%として設定させれば良い。
【0064】
実施例1においては、スクリュ16の平均回転トルク1に、回避し得ない要因等に起因すると思われる若干の変動が確認される。しかしながら、樹脂材料14aの供給を停止させる前の、成形サイクル毎の平均回転トルク1の差異は大きくはなく、比較的安定した値を示しており、設定成形終了値(安定成形トルク基準値の80%)に到達する程の変動はない。計量工程におけるスクリュ16の回転トルクそのものではなく、回転トルクの平均値(平均回転トルク1)を、安定成形トルク基準値と比較させるため、スクリュ16の回転トルクの変化が変動を伴っても、特許文献1の射出成形機の材料検知方法のような誤検知の可能性を低下させる。
【0065】
また、実施例1においては、安定成形トルク基準値(平均回転トルク2)に基づいて設定成形終了値を設定させている。安定成形トルク基準値(平均回転トルク2)は、連続する設定回数(直近5回)の成形サイクルにおける平均回転トルク1を再び平均化した値であるため、
図6の実線3他に示すように、安定成形トルク基準値(平均回転トルク2)に基づく、各成形サイクルの設定成形終了値は、3候補共に、同じ成形サイクルの平均回転トルク1よりも変動が抑制される。その結果、特許文献1の射出成形機の材料検知方法のような誤検知の可能性をより低下させる。
【0066】
更に、ある1成形サイクルの計量工程において、想定外の突発的な要因により回転トルクの大きな変動が生じ、その成形サイクルの平均回転トルク1に変動を生じさせたとしても、複数の平均回転トルク1を平均化させる(安定成形トルク基準値/平均回転トルク2)ことにより、その変動の影響を抑制することができる。このようにして算出させる安定成形トルク基準値は、特許文献2のパージ動作の停止方法のように、ある1成形サイクルの1計量工程を1時系列として算出させた、スクリュの回転トルクの移動平均値より信頼性が高いことは明らかである。
【0067】
更に、実施例1においては、連続する直近5回の成形サイクルにおける平均回転トルク1から平均回転トルク2を都度算出させ、安定成形トルク基準値を都度設定させる。そのため、
図6に示すように、樹脂材料14aの供給を停止させた後の平均回転トルク1の変化(低下)に、安定成形トルク基準値(平均回転トルク2)に基づく設定成形終了値がすぐに追従して変化(低下)している。このように、都度、最新の安定成形トルク基準値が設定されることにより、良品が成形される状態下でも、成形が行われる環境の温度変化や、射出成形機の温度変化等に起因して生じる可能性がある、平均回転トルク1や平均回転トルク2(安定成形トルク基準値)の変動の影響を抑制して、成形サイクルを所望するタイミング終了させることができる。
【0068】
このような設定成形終了値や、平均回転トルク2を算出させるための成形サイクルの選択方法や回数等は、
図6で説明したように、設定成形終了値や選択方法や回数を変更させながら試験成形等を行い、樹脂量不足の不良品が成形されず、射出装置内の樹脂材料の保持量を最小にさせるタイミングを判定できる適切な設定値を求めれば良い。また、平均回転トルク1、平均回転トルク2及び上記設定終了値は、%表示ではなく回転トルク値表示あっても良い。
【0069】
しかしながら、本発明における安定成形トルク基準値の高い信頼性を鑑みれば、上記設定終了値は、試験成形等で求めた、樹脂量不足の不良品が成形されず、射出装置内の樹脂材料の保持量を最小にさせるタイミングを判定できる平均回転トルク1の回転トルク値そのものを設定値とするよりは、試験成形等で求めた、樹脂量不足の不良品が成形されず、射出装置内の樹脂材料の保持量を最小にさせるタイミングを判定できる平均回転トルク1を、同じく試験成形等で求めた平均回転トルク2(安定成形トルク基準値)に関連付けて、実施例1のように、上記設定終了値を同安定成形トルク基準値から低下する割合(%)を設定値とすることがより好ましい。
【実施例2】
【0070】
次に、
図7を参照しながら、本発明の実施例2に係る、射出成形機の成形サイクル終了方法を説明する。実施例2においても、先に説明したインラインスクリュ式射出装置1を有する射出成形機を前提にする。また、実施例2が実施例1と異なる点は、選択された成形サイクルにおける、スクリュ16の平均回転トルク2算出工程及び平均回転トルク比較工程が行われるタイミングのみである。それ以外の点については実施例1と基本的に同じため、同じ構成については、実施例1と同じ符号を使用すると共に、重複する説明は割愛する。
【0071】
実施例1と同様に、平均回転トルク1算出工程を行わない所定回数を5回とし、6回目の成形サイクルB1から良品を成形できるものとする。また、平均回転トルク2算出工程において、平均回転トルク2を算出させるための成形サイクルの選択方法及び回数も、実施例1と同じ連続する5回とする。
【0072】
良品を成形できる6回目の成形サイクルB1から、連続する5回のB成形サイクルの各成形サイクルにおいて平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を行わせ、10回目の成形サイクルB5の計量工程の完了と略同時に、平均回転トルク2を算出させ、安定成形トルク基準値T
Bを設定させる。
【0073】
そして、続く11回目の成形サイクルC1から、連続する5回のC成形サイクルの各成形サイクルにおいて平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を行わせ、15回目の成形サイクルC5の計量工程の完了と略同時に、平均回転トルク2を算出させ、安定成形トルク基準値T
Cを設定させる。また、C成形サイクルの各成形サイクル(C1〜C5)の平均回転トルク1を、前のB成形サイクルで設定させた安定成形トルク基準値T
Bと比較させる(平均回転トルク比較工程)。
【0074】
更に、16回目の成形サイクルD1から、連続する5回のD成形サイクルの各成形サイクルにおいて平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を行わせると共に、D成形サイクルの各成形サイクル(D1〜D5)の平均回転トルク1を、前のC成形サイクルで設定させた安定成形トルク基準値T
Cと比較させる。
【0075】
このように、実施例2においては、平均回転トルク2算出工程の選択された複数回(連続する5回)の成形サイクルを1セットとして、1セット毎に安定成形トルク基準値を設定させると共に、平均回転トルク比較工程において、1セットの各成形サイクルの平均回転トルク1を、直前の1セットで設定させた安定成形トルク基準値と比較させることを特徴としている。
【0076】
実施例2の形態は、実施例1の成形に対して、スクリュ16の平均回転トルク1の変動が無く、比較的平均回転トルク1が安定している成形に好適である。特に、射出装置のサイズに対して1成形サイクルに要する計量樹脂量が少なく、材料供給停止後、5回から6回程度、良品が成形できる場合に、平均回転トルク2算出工程の成形サイクルの選択回数をこれより少なく(2〜3回)することにより、実施例1よりも比較的簡易な制御で、平均回転トルク1や平均回転トルク2の変動が生じた場合でも、これを反映させることができる。尚、平均回転トルク比較工程において採用する設定成形終了値や、平均回転トルク2を算出させるための成形サイクルの選択方法及び回数等については実施例1と同様であるため説明は割愛する。
【0077】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1及び実施例2においては、良品を成形できる6回目の成形サイクルB1から平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を行わせるものとしたが、成形開始後、任意の成形サイクルから、選択された複数回で平均回転トルク2算出工程を行わせた後、算出させた安定成形トルク基準値を制御装置に記憶させて、別の任意の成形サイクルから、この安定成形トルク基準値を使用して平均回転トルク比較工程を行わせても良い。
【0078】
また、実施例1及び実施例2においては、連続する良品を成形できる6回目の成形サイクルB1から、連続する5回の成形サイクルにおいて、平均回転トルク1算出工程及び平均回転トルク2算出工程を行わせるものとしたが、例えば、連続する10回の成形サイクルから、1回目、3回目、のように1つ飛ばしの複数回の成形サイクルが選択されても良いし、連続する50回の成形サイクルから、5回目、10回目、のように複数回飛ばしの複数回の成形サイクルが選択されても良い。このような成形サイクルの選択により、制御装置の負荷を増加させることなく、平均回転トルク2の値の安定性の確保が期待できる。
【0079】
一方、射出成形機の射出装置には、インラインスクリュ式射出装置とは構成が異なるプリプラ式射出装置がある。プリプラ式射出装置は、可塑化シリンダ及び射出シリンダがそのノズル側で連結された構成であって、回転するスクリュを内蔵した可塑化シリンダにより可塑化させた樹脂材料を、樹脂流路を介して可塑化シリンダ前方と連結されている射出シリンダ内の貯留部に貯留させ、計量工程完了後、射出シリンダ内で長手方向に摺動可能に配置させたプランジャを前進させて、同貯留部に貯留させた樹脂材料を金型に射出充填させるものである。樹脂材料を可塑化させる可塑化シリンダと樹脂材料を射出充填させる射出シリンダとが独立している構成が、インラインスクリュ式射出装置の構成との大きな差異である。実施例1及び実施例2において、インラインスクリュ式射出装置を有する射出成形機を前提に説明したが、プリプラ式射出装置を有する射出成形機においても、本発明の実施は可能である。