特許第6108067号(P6108067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108067
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20170327BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   B60H1/22 651C
   B60H1/22 671
   F25B47/02 570Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-240699(P2012-240699)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88153(P2014-88153A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森▲高▼ 篤司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晋哉
(72)【発明者】
【氏名】梅津 康平
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−020239(JP,A)
【文献】 特開2012−045977(JP,A)
【文献】 特許第3379155(JP,B2)
【文献】 特開平07−212902(JP,A)
【文献】 特開2004−245479(JP,A)
【文献】 特開2011−255735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を圧縮する圧縮手段と、
前記熱媒体を減圧させる減圧手段と、
前記熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱媒体を用いた空調制御を行う制御手段と、
を備えた電動車両の車両用空調装置であって、
前記制御手段は、
前記熱交換器のうち室外の空気と熱交換を行う室外熱交換器に着霜が生じているか否かを判定する着霜判定手段を有し、
暖房時に、前記着霜判定手段により着霜したと判定された場合、且つ、
電動車両に搭載された駆動用の電池に対する充電が普通充電で行われている場合には、前記圧縮手段から圧縮された熱媒体を前記室外熱交換器を通過させることで前記室外熱交換器と室外空気との間で熱交換して放熱すると共に前記減圧手段による前記熱媒体の減圧は行わない除霜運転を行い、
前記電池に対する充電が急速充電で行われている場合には、前記着霜判定手段による判定にかかわらず、前記熱媒体により前記電池の冷却を行い、前記除霜運転を禁止することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記除霜運転は、前記電池の充電量が所定量以上となった場合に開始することを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記室外熱交換器を通過する熱媒体の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記除霜運転中に前記温度検出手段により検出される温度が所定値よりも大きくなった場合に、前記除霜運転を停止することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記除霜運転は、開始後所定時間経過すると停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記除霜運転は、前記電池への充電の入力電流を使用して行われることを特徴とする請求
項1〜4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置としては、コンプレッサと室内コンデンサと室外コンデンサと室内エバポレータと減圧手段とを有するヒートポンプシステム(蒸気圧縮式冷凍サイクル)が知られている。電気自動車では、エンジン車とは違い、駆動源からの熱を暖房に利用することができないため、このようなヒートポンプシステムが採用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の車両用ヒートポンプシステムでは、冷房運転時には、コンプレッサから吐出された冷媒が室外交換器で放熱し、この冷媒が室内エバポレータで蒸発することでエバポレータを通過する風が冷却される。他方で、暖房運転時には、コンプレッサから吐出された冷媒が室内コンデンサで放熱して、この放熱により室内コンデンサを通過する風が暖められる。
【0003】
このようなヒートポンプシステムにおいては暖房運転時に室外コンデンサに着霜することがある。この場合に、運転途中で除霜運転を行うと、その間空調を使うことができず、乗員が不便を感じることがあるので、充電中に除霜運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3379155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、着霜時に充電を行う場合には必ず除霜運転を行っているが、急速充電時は普通充電時に比べ、電池が高温となりやすい。よって、急速充電中に除霜運転を行うと、駆動用電池の冷却が不十分となり、充電時間が長くなる虞がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、駆動用電池の冷却を十分に行い、効率的に除霜運転することができる車両用空調装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用空調装置は、熱媒体を圧縮する圧縮手段と、前記熱媒体を減圧させる減圧手段と、前記熱媒体と空気との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱媒体を用いた空調制御を行う制御手段と、を備えた電動車両の車両用空調装置であって、前記制御手段は、前記熱交換器のうち室外の空気と熱交換を行う室外熱交換器に着霜が生じているか否かを判定する着霜判定手段を有し、暖房時に、前記着霜判定手段により着霜したと判定された場合、且つ、電動車両に搭載された駆動用の電池に対する充電が普通充電で行われている場合には、前記圧縮手段から圧縮された熱媒体を前記室外熱交換器を通過させることで前記室外熱交換器と室外空気との間で熱交換して放熱すると共に前記減圧手段による前記熱媒体の減圧は行わない除霜運転を行い、前記電池に対する充電が急速充電で行われている場合には、前記着霜判定手段による判定にかかわらず、前記熱媒体により前記電池の冷却を行い、前記除霜運転を禁止することを特徴とする。
本発明では、電動車両に搭載された二次電池への充電開始時に急速充電か普通充電かを判定し、普通充電の場合には除霜運転を行うことで、急速充電時には除霜運転を行わない。急速充電時に除霜運転を行うと、急速充電時に高温となりやすい駆動用電池への電池冷却が不十分となり、充電時間が長くなるためである。従って、本発明では急速充電時には除霜運転を禁止するとともに電池冷却を優先させることで、急速充電時の電池温度上昇を抑制でき、効率的に電動車両の除霜運転制御を行うことが可能である。
【0008】
前記除霜運転は、前記電池の充電量が所定量以上となった場合に開始することが好ましい。充電量が所定量以上である場合にのみ除霜運転することで、車両の走行機能を確保することができる。
【0009】
前記室外熱交換器を通過する熱媒体の温度を検出する温度検出手段を備え、前記除霜運転中に前記温度検出手段により検出される温度が所定値よりも大きくなった場合に、前記除霜運転を停止することが好ましい。室外熱交換器を通過する熱媒体の温度が所定値よりも大きくなると、除霜が完了したと判定できるからである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態としては、前記除霜運転は、開始後所定時間経過すると停止することが挙げられる。
【0011】
前記除霜運転は、前記電池への充電の入力電流を使用して行われることが好ましい。駆動用の電池の充電量を減少させないためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用空調装置によれば、駆動用電池の冷却を十分に行い、効率的な車両の除霜運転制御を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の車両用空調装置にかかるヒートポンプシステムの模式図。
図2】本実施形態の車両用空調装置の冷房時のヒートポンプシステムの駆動を説明するための模式図。
図3】本実施形態の車両用空調装置の暖房時のヒートポンプシステムの駆動を説明するための模式図。
図4】本実施形態の車両用空調装置の除霜時のヒートポンプシステムの駆動を説明するための模式図。
図5】本実施形態の車両用空調装置における着霜判定を説明するためのフローチャート。
図6】本実施形態の車両用空調装置における除霜制御を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
はじめに、本実施形態の車両用空調装置にかかるヒートポンプシステムについて図1を用いて説明する。
【0015】
車両用空調装置Iは、ヒートポンプシステム1を有する。ヒートポンプシステム1は、電動コンプレッサ(圧縮手段)11、室内コンデンサ(熱交換器)12、室外コンデンサ(熱交換器)13、エバポレータ(熱交換器)14、アキュムレータ15、第1膨張弁(減圧手段)21、第2膨張弁(減圧手段)22を備え、これらはそれぞれ熱媒体の流路を構成する配管16によって接続されている。詳しくは後述するが、ヒートポンプシステム1は、電動コンプレッサ11、室内コンデンサ12、室外コンデンサ13、第2膨張弁22、アキュムレータ15がこの順で配管16により接続されて構成された冷房経路を備える。また、ヒートポンプシステム1は、電動コンプレッサ11、室内コンデンサ12、第1膨張弁21、室外コンデンサ13、アキュムレータ15がこの順で配管16により接続されて構成された暖房経路を備える。
【0016】
また、車両用空調装置Iは、ヒートポンプシステム1を駆動するための制御部(制御手段)10を備えている。
【0017】
制御部10は、室外コンデンサ13を通過する冷媒の温度を検出する熱媒体温度センサ31と、車体に設けられた室外温度を検出する室外温度センサ32とを備える。また、車両は電気自動車用制御装置であるEV−ECUを有し、制御部10には、このEV−ECUから駆動用二次電池(図示せず)の充電状態(普通充電状態であるのか、又は急速充電状態であるのか)が入力される。
【0018】
駆動用二次電池から電力供給を受ける電動コンプレッサ11は、乗員により空調の作動指示が入力されると、制御部10により駆動を開始し、熱媒体を圧縮して高温高圧状態とする。
【0019】
室内コンデンサ12は、熱媒体と車室内の空気との間で熱交換を行う。室内コンデンサ12は、空調用ハウジング17内に設けられている。空調用ハウジング17内には、図示しないブロアファンと、上述したエバポレータ14、エアミックスダンパ18、PTCヒーター19が設けられている。室内コンデンサ12は、空調用ハウジング17内において、エバポレータ14の下流側に設けられている。また、エアミックスダンパ18は、エバポレータ14と室内コンデンサ12との間に設けられて、暖房時と冷房時とで開閉状態が異なるように構成されている。PTCヒーター19は、室内コンデンサ12よりも下流側に設けられている。室内コンデンサ12を通過した熱媒体は、配管16を介して室外コンデンサ13に送出される。
【0020】
室内コンデンサ12と室外コンデンサ13との間の配管16には、第1膨張弁21と、この第1膨張弁21に対して並列に設けられた二方電磁弁23が設けられている。二方電磁弁23は制御部10によりその開閉が制御される。二方電磁弁23がオン状態となった場合には熱媒体は第1膨張弁21側を流れ、二方電磁弁23がオフ状態となった場合には熱媒体は二方電磁弁23側を流れる。
【0021】
室外コンデンサ13は、熱媒体と車室外の空気との間で熱交換を行う。室外コンデンサ13の下流側には三方電磁弁24が設けてあり、冷暖房時に三方電磁弁24を切り換えることで熱媒体の通過する流路を変更することができる。即ち、室外コンデンサ13を通過した熱媒体は、詳細は後述するように配管16aを介して冷房時にはエバポレータ14に送出し、暖房時には配管16bを介してアキュムレータ15に送出される。本実施形態においては、三方電磁弁24の切換作動は制御部10により制御される。即ち、制御部10により三方電磁弁24がオン状態であると制御されると熱媒体は配管16aを流れ、三方電磁弁24がオフ状態であると制御されると熱媒体は配管16bを流れる。
【0022】
三方電磁弁24とエバポレータ14との間には、第2膨張弁22が設けられている。第2膨張弁22は、減圧手段として機能し、熱媒体を膨張させ減圧させることで熱媒体温度を低下させる。
【0023】
エバポレータ14は、熱媒体と車室内の空気との間で熱交換を行い、車室内へ送る空気を冷却する。
【0024】
アキュムレータ15は、熱媒体のリザーバとして機能する。
【0025】
冷房時におけるヒートポンプシステムの作動について図2を用いて説明する。
【0026】
乗員により冷房指示が入力されると、制御部10が、二方電磁弁23がオフ、三方電磁弁24がオン状態となるようにそれぞれ制御を行うとともに、電動コンプレッサ11を作動させる。
【0027】
電動コンプレッサ11から、圧縮され、高温高圧になった熱媒体が配管16を通って室内コンデンサ12に入力される。室内コンデンサ12は冷房時には作動しないので、熱媒体は室内コンデンサ12を単に通過する。なお、エアミックスダンパ18は冷房時には室内コンデンサ12に対向するように開閉状態が設定される。
【0028】
室内コンデンサ12を通過した熱媒体は、二方電磁弁23がオフ状態となっていることから二方電磁弁23側を流れ、室外コンデンサ13に入力される。室外コンデンサ13に入力された熱媒体は、室外コンデンサ13で室外空気と熱交換することで放熱し、熱媒体温度がやや下がる。
【0029】
次に、室外コンデンサ13からの熱媒体は三方電磁弁24がオン状態であることから、第2膨張弁22に入力されて熱媒体は減圧される。減圧された熱媒体は、温度も低下する。
【0030】
第2膨張弁22からの熱媒体はエバポレータ14に入力される。エバポレータ14で熱媒体は室内空気と熱交換し、室内空気から吸熱して室内空気を冷却する。この冷却された室内空気が冷風として車室内に供給される。
【0031】
エバポレータ14から出力された熱媒体はアキュムレータ15に入力され、その後電動コンプレッサ11に入力されて再度圧縮され、上記と同様に熱媒体は流路を流通する。
【0032】
次いで、暖房時のヒートポンプシステムの作動を図3を用いて説明する。
【0033】
乗員により暖房指示が入力されると、制御部10が、二方電磁弁23がオン、三方電磁弁24がオフとなるようにそれぞれ制御を行うとともに、電動コンプレッサ11を作動させる。
【0034】
電動コンプレッサ11から、圧縮され、高温高圧になった熱媒体が配管16を通って室内コンデンサ12に入力される。室内コンデンサ12は暖房時には作動して、熱媒体は室内コンデンサ12において車室内の空気との間で熱交換を行い、放熱される。放熱された空気は、さらにPTCヒーター19を通過することでより加熱され、この加熱された室内空気が温風として車室内に供給される。なお、この場合には、エアミックスダンパ18は室内コンデンサ12に対向しないように開閉状態が設定される。
【0035】
室内コンデンサ12を通過した熱媒体は、二方電磁弁23がオン状態となっていることから第1膨張弁21側を流れ、減圧され温度も低下する。この減圧された熱媒体は、室外コンデンサ13に入力される。室外コンデンサ13に流入した熱媒体は、室外コンデンサ13で室外空気と熱交換することで吸熱し、熱媒体温度がやや上がる。
【0036】
次に、室外コンデンサ13からの熱媒体は三方電磁弁24がオフ状態であることから、アキュムレータ15に流入し、その後電動コンプレッサ11に流入して再度圧縮され、上記と同様に熱媒体は流路を流通する。
【0037】
暖房運転を行うと、外気温との関係で室外コンデンサ13に着霜することが考えられる。本実施形態の空調装置は、室外コンデンサ13の着霜を除去するための除霜運転モードを有する。
【0038】
除霜運転について図4を用いて説明する。
【0039】
除霜運転時には、三方電磁弁24及び二方電磁弁23は両方オフ状態となる。電動コンプレッサ11から吐出された熱媒体が室内コンデンサ12を通過する。そして、熱媒体は高圧縮、高温状態のままオフ状態の二方電磁弁23を通過して室外コンデンサ13を通過する。そして、この室外コンデンサ13において熱交換し、室外コンデンサ13で放熱を行うことで、室外コンデンサ13に付着した霜を除去することができる。そして、放熱を行い温度が下がった熱媒体がオフ状態の三方電磁弁24を通過してアキュムレータ15に入力され、再度電動コンプレッサ11に入力される。このようにして室外コンデンサ13の着霜を除去することができる。
【0040】
ところが、このような除霜運転中には暖房運転が停止されてしまうため、暖房運転中に暖房運転を中止して除霜運転を行うことは好ましくない。そこで、本実施形態では、制御部10は暖房運転中に着霜したことを検出すると、普通充電時まで待って、普通充電時に除霜運転を行う。
【0041】
以下、詳細に制御部10による除霜制御について説明する。
【0042】
車両運転中に暖房運転指令が制御部10に入力されると、制御部10の図示しない着霜判定部(着霜判定手段)は、着霜判定を行う。室外コンデンサ13を通過する熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサ31から熱媒体温度を取得すると共に、車体に設けられた室外温度を検出する室外温度センサ32から室外温度を取得する。そして、制御部10の着霜判定部は、熱媒体温度が所定値以下であり、かつ、熱媒体温度と室外温度との差が所定値以上であると共に、暖房運転が行われている場合(即ち暖房指示が制御部10に入力されている場合)には、室外コンデンサ13が着霜していると判定する。この時、制御部10は、車両が運転停止するまで、この判定を記録しておく。
【0043】
次に、充電開始時に、まず、EV−ECUが普通充電か急速充電かどうかを判定する。急速充電時には、空調装置は駆動用電池の冷却に用いる必要があるため、普通充電かどうかを判定している。EV−ECUはこの判定結果を制御部10に入力する。
【0044】
EV−ECUは、普通充電であると判定した場合に、さらに、現在の充電量が所定の充電量以上であるかどうかを判定する。所定の充電量まで充電がされていない場合には、充電を優先すべきだからである。EV−ECUはこの判定結果を制御部10に入力する。
【0045】
そして、現在の充電量が所定の充電量以上であれば、制御部10は上記の除霜運転を行い、室外コンデンサ13における霜を除去する。除霜運転をするための電力は駆動用電池からではなく、充電で車両に入力される電力を使用する。
【0046】
除霜運転中、制御部10は室外コンデンサ13を通過する熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサ31の温度が所定以上になったか否かにより、霜が除去されたか否かを判定する。また、制御部10は除霜制御の開始と共にタイマーをセットし、所定時間この除霜制御を行う。この所定時間は通常の霜であれば除去することができる程度の時間が設定されている。そして、制御部10は熱媒体温度センサ31の温度が所定値以上となるか、または所定時間が経過するかどうかを判定し、どちらかの条件が満たされた場合に除霜運転を停止させる。そして、普通充電が再開する。
【0047】
一方で、EV−ECUが急速充電であると判定した場合には、制御部10は除霜運転を禁止し、空調装置を駆動用電池の冷却に用いる。急速充電時は駆動用電池が高温になりやすいため、駆動用電池に対する電池冷却が優先される。
【0048】
このように、本実施形態では、充電時に除霜運転を行うが、充電が普通充電の場合に限定して除霜運転を行う。急速充電時には除霜運転を禁止するとともに電池冷却を優先することで、急速充電時の電池温度上昇を抑制でき、急速充電時の充電時間が短くして効率的な車両の除霜運転制御を行うことができる。また、充電量が所定の充電量以上である場合にのみ除霜運転を行うことで、充電量が不足する状態を抑制できる。
【0049】
このような制御部10による制御について、図5、6を用いてより詳細に説明する。
【0050】
図5に示すように、ステップS1で制御部は通常の暖房運転のための制御を行う。ステップS2で制御部は上述した着霜判定を定期的に行い、着霜したと判定したらステップS3へ進む。着霜したと判定するまで、制御部はステップS1へ戻り、着霜判定を繰り返す。ステップS3で、制御部は着霜フラグをオンとする。
【0051】
その後、車両を停止して充電を開始すると制御部は起動して、図6に示す制御を開始する。初めに、ステップS11でEV−ECUが普通充電か急速充電かを判定し、その結果を制御部に入力する。制御部は、急速充電であるとの判定結果が入力された場合、ステップS18へ進む。普通充電である場合、ステップS12へ進む。
【0052】
ステップS12では、着霜フラグがオンであるかどうかを判定する。着霜フラグがオンでなければ、普通充電が終了するまで制御部は制御を停止する。着霜フラグがオンである場合ステップS13へ進む。
【0053】
ステップS13では、充電量が所定量以上であるかどうかを判定する。充電量が所定量以上でなければ、ステップS12へ戻る。充電量が所定量以上であれば、ステップS14へ進む。
【0054】
ステップS14では、除霜運転を行うための条件が満たされているとして、制御部は上記した除霜運転を行う。ステップS15へ進む。
【0055】
ステップS15では、制御部は除霜運転開始から所定時間(例えば30分)が経過しているか、または霜が除去されているかどうかを判定する。どちらかの条件を満たしている場合には、ステップS16へ進む。どちらの条件も満たしていない場合には、ステップS14へ戻って除霜運転を行う。
【0056】
ステップS16では、除霜運転を停止する。これにより、普通充電が再開される。ステップS17に進む。ステップS17では、普通充電が終了して制御が終了する。なお、普通充電の再開時に着霜が残っている場合には着霜フラグはオン状態として次回普通充電時に再度除霜運転を行うが、完全に除霜した場合には、着霜フラグをオフとする。
【0057】
また、ステップS11で急速充電と判定された場合に進んだステップS18では、制御部は、空調装置の除霜運転を禁止するとともに駆動用電池の冷却を行う。
【0058】
このように、本実施形態では、充電時に除霜運転を行うが、充電が普通充電の場合に限定して除霜運転を行う。急速充電時には除霜運転を禁止するとともに電池冷却を優先して行うことで、急速充電時の電池温度上昇を抑制し、駆動用電池の冷却を十分に行うことができ、かつ、効率的な車両の除霜運転制御を行うことができる。また、充電量が所定の充電量以上である場合にのみ除霜運転を行うことで、充電量が不足する状態を抑制できる。
【0059】
本実施形態では,普通充電か急速充電かの判定を、車両(車両用空調装置Iの外部)に設けられた図示しない電気自動車用制御装置であるEV−ECUにて実施したが、これに限定されない。制御部10自体が普通充電か急速充電かを判定してもよい。
【0060】
本実施形態では、駆動用電池の充電量が所定量以上であるかどうかの判定をEV−ECUにて実施したが、これに限定されない。制御部10自体が充電量をモニタしていてもよい。
【0061】
本実施形態では、電気自動車を例として説明したが、これに限定されない。プラグインハイブリッド車等の電動車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の車両用空調装置は、効率的に除霜運転することができる。従って、車輌製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ヒートポンプシステム
10 制御部
11 電動コンプレッサ
12 室内コンデンサ
13 室外コンデンサ
14 エバポレータ
15 アキュムレータ
16 配管
17 空調ハウジング
18 エアミックスダンパ
19 ヒーター
21 第1膨張弁
22 第2膨張弁
23 二方電磁弁
24 三方電磁弁
I 車両用空調装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6