特許第6108071号(P6108071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108071
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】エアーマットレス装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/05 20060101AFI20170327BHJP
   A47C 27/10 20060101ALI20170327BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   A61G7/05
   A47C27/10 A
   A61G5/10 705
   A61G5/10 706
   A61G5/10 710
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-278106(P2012-278106)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121365(P2014-121365A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100069981
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 精孝
(74)【代理人】
【識別番号】100087860
【弁理士】
【氏名又は名称】長内 行雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166224
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 成夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 潔
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 秀規
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−509793(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0046762(US,A1)
【文献】 特開2011−177502(JP,A)
【文献】 実開平05−007229(JP,U)
【文献】 特開2009−268506(JP,A)
【文献】 特開2005−253535(JP,A)
【文献】 特開平05−285031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/05
A47C 27/10
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を充填可能な複数のエアーセルが表面に設けられると共に、前記エアーセル内に空気を吸気する手段と、前記エアーセル内の空気を排気する手段とを備え、利用者の背中、臀部及び大腿部、ふくらはぎ、踵に対応する部分の境界部から折り曲げた状態とフルフラットな状態になるフルリクライニング型車椅子に使用できるエアーマットレス装置であって、
利用者の背中、臀部及び大腿部、ふくらはぎ、踵に対応する部分に配置されている前記エアーセルがグループ化されて、前記背中に対応する部分の複数のエアーセルが第1エアーセル群、前記臀部及び大腿部に対応する部分の複数のエアーセルが第2エアーセル群、前記ふくらはぎに対応する部分の複数のエアーセルが第3エアーセル群、前記踵に対応する部分のエアーセルが第4エアーセル群に設定され、
前記第1乃至第4エアーセル群のそれぞれに対して独立して空気の吸排気を行える手段と、
前記第1エアーセル群のエアーセル配置面と前記第2エアーセル群のエアーセル配置面を前記境界部から折り曲げて各配置面間のなす角度を90度以上180度未満にするときに、前記第1エアーセル群と前記第2エアーセル群との折り曲げ部分に位置するエアーセル内の空気及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との折り曲げ部分に位置するエアーセル内の空気を排気する手段と、
エアーセルへの空気供給とエアーセルからの空気排気を制御する制御部と、
各エアーセルの底部に設けられ、エアーセルの潰れ量が所定値以上になったことをスイッチにより検知して所定の電気信号を発生する底付きセンサとを備え、
前記制御部は、前記第1エアーセル群のエアーセル配置面と前記第2エアーセル群のエアーセル配置面を前記境界部から折り曲げて各配置面のなす角度を180度未満にするときに、前記第1エアーセル群と前記第2エアーセル群との境界部のエアーセル内の空気及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との境界部のエアーセル内の空気を排気すると共に、前記第1エアーセル群と前記第2エアーセル群との境界部のエアーセル内の底付きセンサ及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との境界部のエアーセル内の底付きセンサのスイッチの検知を無効にする手段を備えている
ことを特徴とするエアーマットレス装置。
【請求項2】
少なくとも前記第1及び第2エアーセル群においては中央を境にして左側のエアーセルと右側のエアーセルに対して独立して空気の吸排気を行える手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のエアーマットレス装置
【請求項3】
少なくとも前記第1乃至第3エアーセル群においては左右最外側に配置されているエアーセルに対して独立して空気の吸排気を行える手段を備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアーマットレス装置
【請求項4】
前記第1エアーセル群はエアーマットレスの長さ方向に交互に並ぶ列ごとに独立して空気の吸排気を行える手段を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のエアーマットレス装置
【請求項5】
前記第1乃至第4のエアーセル群のそれぞれにおいて複数のエアーセルはエアーマットレスの幅方向及び長さ方向のそれぞれに並べて配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のエアーマットレス装置
【請求項6】
前記エアーマットレスは、少なくとも前記第1乃至第3エアーセル群においては左右最外側に配置されているエアーセルに対して独立して空気の吸排気を行える手段を備え、
前記制御部は、前記第1エアーセル群のエアーセル配置面と前記第2エアーセル群のエアーセル配置面を前記境界部から折り曲げて各配置面間のなす角度を90度以上180度未満にするときに、少なくとも前記第1乃至第3エアーセル群においては左右最外側に配置されているエアーセルに対して他のエアーセルよりも高圧の空気を充填する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のエアーマットレス装置。
【請求項7】
前記エアーマットレスは、前記第1エアーセル群においてはエアーマットレスの長さ方向に交互に並ぶ列毎に独立して空気の吸排気を行える手段を備え、
前記制御部は、前記第1エアーセル群のエアーセル配置面と前記第2エアーセル群のエアーセル配置面を前記境界部から折り曲げて各配置面間のなす角度を90度以上180度未満にするときに、角度変更開始時から所定時間、エアーセルと身体との摩擦により背中にせん断力が作用するときの摩擦力が緩和するように、前記第1エアーセル群におけるエアーマットレスの長さ方向に交互に並ぶ列毎に且つ隣接する列のエアーセルに対して吸気と排気が異なるように各エアーセルの吸排気を行う
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のエアーマットレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルフラットになるフルリクライニング型車椅子に用いることが可能で、使用者の身体における褥瘡の発生を低減できるエアーマットレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入院患者等における褥瘡(床ずれ)の発生が問題となっており、このような褥瘡を予防若しくは治療する目的で、臥位における体圧分散等を実現する空気マットレスにおいては、同一形状のエアーセルを略正方向の座面全体に規則的に密に配列したものが知られている。
【0003】
例えば、褥瘡の発生を低減するための装置として、実開平7−42631号公報(特許文献1)に開示される治療用空気マットが知られている。
【0004】
この治療用空気マットは、空気マット本体が中央部で分割された左右一対の独立空気室で構成されているとともに、左右の独立空気室に膨張時にその内側の高さが低く、外側の高さが高くなるように適宜高さの連結部材で区割された大小複数の連通した膨張部が設けられ、独立空気室にそれぞれ空気供給口が形成されているもので、空気室の膨張、収縮の繰り返しによって患者の体位変換を行うようにしたものである。
【0005】
また、これに類似する空気マット装置が、実開平6−438号公報(特許文献2)、特開2000−197672号公報(特許文献3)、特開2002−65405号公報(特許文献4)等にも開示されている。
【0006】
上記特許文献2に開示される空気マット装置は、複数の空気袋を内蔵し該空気袋の膨張により外表面に突状部を形成するマット本体と、空気袋を膨張・収縮させる給排装置とを備え、マット本体に、マット本体の外表面温度を上昇させる発熱体を設置したものであり、空気袋の膨張により外表面に突状部を形成するマット本体と、身体の突状部近辺との接触・分離が断続的に行われることを利用して、よりマッサージ効果を高めるようにしたものである。
【0007】
上記特許文献3に開示されるエアマット装置は、袋状のエアーセルを複数本並設したエアマットと、このエアマットの各エアーセル内にエアを注入するエアポンプと、このエアポンプを制御する制御部と、制御部内に、手動操作で作動し、エアポンプを制御してエアーセル内の圧力を所定の時間、所定の加圧をする加圧機構とを備え、病人等が長期に渡って床に伏せる場合などに生じる褥瘡を予防すると共にギャッジアップ時のボトミングによる不具合を解消できるようにしたものである。
【0008】
また、上記特許文献4に開示されるエアマットは、重ね合わされた可撓性を有する第1シート及び中間シートよりなり該両シートの接合部である第1接合部を介して複数連接形成されてなる第1エアーセル群と、重ね合わされた可撓性を有する上記中間シート及び第2シートよりなり該両シートの接合部である第2接合部を介して複数連接形成されてなる第2エアーセル群とを備え、上記第2エアーセル群を構成する第2エアーセルは上記第1エアーセル群を構成する第1エアーセルの2倍の幅を有し、上記第2接合部が上記第1接合部に一致せしめられてなり、かかる構成において、第1エアーセル群を上面とした場合、第1エアーセルの間の第1接合部が第2エアーセルの空気圧に押されて盛り上がる方向の力を受け、第1接合部及びその周辺に平坦に近い領域を形成しているため、これに就寝した患者の体重が加わったとき、この領域が患者の体を接触時から面にて支え、他方、第2エアーセル群を上面とした場合、その空気圧を低く抑えることにより、患者の体を広い面にて、均等に支え、体圧分散を良好にし、局部的に圧力が加わることにより発生する床ずれを防止するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7−42631号公報
【特許文献2】実開平6−438号公報
【特許文献3】特開2000−197672号公報
【特許文献4】特開2002−65405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年では介護用ベッドや車椅子において、フルフラットな状態と座位をとれる状態とに変形可能なベッドや車椅子が普及している。
【0011】
しかし、従来例のエアマットにおいては、介護用ベッドやフルフラットになるフルリクライニング型車椅子に用いて、座位を取る場合と臥位或いは臥位に近い状態の場合のそれぞれの体圧分散の最適化を両立させたものは実現されていない。
【0012】
一方、臥位状態で寝返りが困難な利用者は、一定時間毎に介護者によって身体の向きを替えるなどの必要があり、被介護者、介護者共に負担が大きい。
【0013】
本発明の目的は上記の問題点に鑑み、フルフラットな状態と座位をとれる状態とに変形可能なベッドや車椅子に使用できるエアーマットレス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の目的を達成するために、空気を充填可能な複数のエアーセルが表面に設けられると共に、前記エアーセル内に空気を吸気する手段と、前記エアーセル内の空気を排気する手段とを備え、利用者の背中、臀部及び大腿部、ふくらはぎ、踵に対応する部分の境界部から折り曲げた状態とフルフラットな状態になるフルリクライニング型車椅子に使用できるエアーマットレス装置であって、
利用者の背中、臀部及び大腿部、ふくらはぎ、踵に対応する部分に配置されている前記エアーセルがグループ化されて、前記背中に対応する部分の複数のエアーセルが第1エアーセル群、前記臀部及び大腿部に対応する部分の複数のエアーセルが第2エアーセル群、前記ふくらはぎに対応する部分の複数のエアーセルが第3エアーセル群、前記踵に対応する部分のエアーセルが第4エアーセル群に設定され、前記第1乃至第4エアーセル群のそれぞれに対して独立して空気の吸排気を行える手段と、前記第1エアーセル群のエアーセル配置面と前記第2エアーセル群のエアーセル配置面を前記境界部から折り曲げて各配置面間のなす角度を90度以上180度未満にするときに、前記第1エアーセル群と前記第2エアーセル群との折り曲げ部分に位置するエアーセル内の空気及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との折り曲げ部分に位置するエアーセル内の空気を排気する手段と、エアーセルへの空気供給とエアーセルからの空気排気を制御する制御部と各エアーセルの底部に設けられ、エアーセルの潰れ量が所定値以上になったことをスイッチにより検知して所定の電気信号を発生する底付きセンサとを備え、前記制御部は、前記第1エアーセル群のエアーセル配置面と前記第2エアーセル群のエアーセル配置面を前記境界部から折り曲げて各配置面のなす角度を180度未満にするときに、前記第1エアーセル群と前記第2エアーセル群との境界部のエアーセル内の空気及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との境界部のエアーセル内の空気を排気すると共に、前記第1エアーセル群と前記第2エアーセル群との境界部のエアーセル内の底付きセンサ及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との境界部のエアーセル内の底付きセンサのスイッチの知を無効にする手段を備えているエアーマットレスを提案する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエアーマットレス装置は、臥位状態での使用から車椅子等で座位状態での使用に切り替える際に、第1エアーセル群のエアーセル配置面と第2エアーセル群のエアーセル配置面のなす角度を180度未満にするときに、第1エアーセル群と第2エアーセル群との境界部のエアーセル内の空気及び前記第3エアーセル群と前記第4エアーセル群との境界部のエアーセル内の空気のみを排気することができるので、車椅子の形状に合わせてエアーマットレスを容易に折り曲げることができると共に、底付きセンサの誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態におけるエアーマットレス装置を示す外観斜視図
図2】本発明の一実施形態におけるエアーマットレス装置を用いたフルリクライニング型車椅子を示す外観斜視図
図3】本発明の一実施形態におけるエアーマットレス本体のエアーセルの分割を説明する図
図4】本発明の一実施形態におけるエアーセルの側面断面図
図5】本発明の一実施形態におけるエアーセルの斜視図
図6】本発明の一実施形態におけるエアーマットレスの要部側面断面図
図7】本発明の一実施形態におけるエアーセルの動作説明図
図8】本発明の一実施形態におけるエアーセルの動作説明図
図9】本発明の一実施形態におけるエアーセルの動作説明図
図10】本発明の一実施形態におけるスイッチの側面断面図
図11】本発明の一実施形態におけるスイッチの動作説明図
図12】本発明の一実施形態における電気系配線及び空気流通回路を示す図
図13】本発明の一実施形態におけるエアーセルに初期圧力の空気を充填する際の制御を説明するフローチャート
図14】本発明の一実施形態におけるエアーマットレス本体を着座形態に変形するときの制御を説明するフローチャート
図15】本発明の一実施形態におけるエアーマットレス本体に身体を横たわらせたときの制御を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態におけるエアーマットレス装置を示す外観斜視図、図2は本発明の一実施形態におけるエアーマットレス装置を用いたフルリクライニング型車椅子を示す外観斜視図、図3は本発明の一実施形態におけるエアーマットレス本体のエアーセルの分割を説明する図、図4はエアーセルの側面断面図、図5はエアーセルの斜視図、図6はエアーマットレスの要部側面断面図、図7乃至図9はエアーセルの動作説明図、図10はスイッチの側面断面図、図11はスイッチの動作説明図、図12は電気系配線及び空気流通回路を示す図である。
【0021】
図1において、1はエアーマットレス装置で、エアーマットレス本体100と、制御ユニット200によって構成されている。
【0022】
本実施形態におけるエアーマットレス本体100は、例えば図2に示すようにフルリクライニング型車椅子BCや病院等のベッドに敷いて用いるもので、幅が80cm、長さが210cmの長方形の板状をなしている。また、エアーマットレス本体100は、柔軟性を有する部材からなり、その表面にはマトリックス状に配置されて立設された複数のエアーセル10を有している。
【0023】
また、エアーマットレス本体100の一側面には、後述する電磁バルブ(電磁弁)駆動用の電力供給用配線を接続するためのコネクタ123と、空気供給口となる空気供給チューブ接続用のコネクタ124とが設けられている。これらのコネクタ123,124にはケーブル216と空気供給チューブ217が接続されている。
【0024】
また、ケーブル216と空気供給チューブ217は、コネクタ214,215を介して制御ユニット200に接続されている。
【0025】
制御ユニット200は、直方体形状の筐体211を備え、筐体211の一側面にコネクタ214,215と、初期制御スイッチ221、着座制御スイッチ222、圧力切換制御スイッチ223、操作部224が設けられ、筐体211の所定位置から先端にプラグ218aが設けられた電源コード218が引き出されている。なお、制御ユニット200内にはAC/DCコンバータとバッテリーを備えており、AC/DCコンバータのAC入力側に接続された電源コード218のプラグ218aを周知の商用電源コンセント(家庭用AC100V)に接続して用いる際にはAC/DCコンバータの出力電力により制御ユニット200等の電気回路が駆動されると共にバッテリーが充電され、商用電源コンセントの電力を使用できないときは制御ユニット200等の電気回路をバッテリーにて駆動することが可能である。
【0026】
このエアーマットレス本体100は、使用者の背骨、座骨、尾骨、ふくらはぎ、踵の近傍を軟らかく支持するための複数のエアーセル10を備えており、図3に示すように背中を支えるための複数のエアーセル10からなる第1エアーセル群111と、臀部及び大腿部を支えるための複数のエアーセル10からなる第2エアーセル群112、ふくらはぎ部分を支えるための複数のエアーセル10からなる第3エアーセル群113、踵部分を支えるための複数のエアーセル10からなる第4エアーセル群114に分けられている。
【0027】
さらに、第1乃至第4エアーセル群111〜114のエアーセル10は、複数のグループA〜Xに分けられ、各グループ毎にエアーセルの吸排気を行えるように空気配管が設けられている。
【0028】
すなわち、第1エアーセル群111のエアーセル10は8つのグループA〜G,Iに分けられて空気配管が設けられている。第1エアーセル群111は左右に2分割され図2に向かって左側にグループA〜C,Gのエアーセル10が配置され、右側にグループD〜F,Iのエアーセル10が配置されている。グループA,Bのエアーセル10はそれぞれ横一列に並べられ且つこれらの列は縦に交互に配置されている。グループCは左最側端に縦に並ぶ1列のエアーセル10からなる。グループGのエアーセル10は第1エアーセル群111と第2エアーセル群112との境に位置するエアーセル10である。グループD,Eのエアーセル10はそれぞれ横一列に並べられ且つこれらの列は縦に交互に配置されている。グループFは右最側端に縦に並ぶ1列のエアーセル10からなる。また、グループIのエアーセル10は第1エアーセル群111と第2エアーセル群112との境に位置するエアーセル10である。
【0029】
第2エアーセル群112のエアーセル10は8つのグループH,J〜Pに分けられて空気配管が設けられている。第2エアーセル群112は左右に2分割され図2に向かって左側にグループH,K〜Mのエアーセル10が配置され、右側にグループJ,N〜Pのエアーセル10が配置されている。グループHのエアーセル10は第1エアーセル群111と第2エアーセル群112との境に位置するエアーセル10である。グループK,Lのエアーセル10はそれぞれ横一列に並べられ且つこれらの列は縦に交互に配置されている。グループMは左最側端に縦に並ぶ1列のエアーセル10からなる。グループJのエアーセル10は第1エアーセル群111と第2エアーセル群112との境に位置するエアーセル10である。グループN,Oのエアーセル10はそれぞれ横一列に並べられ且つこれらの列は縦に交互に配置されている。グループPは右最側端に縦に並ぶ1列のエアーセル10からなる。
【0030】
第3エアーセル群113のエアーセル10は5つのグループQ〜Uに分けられて空気配管が設けられている。グループQ,Rのエアーセル10はそれぞれ横一列に並べられ且つこれらの列は縦に交互に配置されている。グループSは左最側端に縦に並ぶ1列のエアーセル10からなる。グループTは右最側端に縦に並ぶ1列のエアーセル10からなる。グループUのエアーセル10は第3エアーセル群113と第4エアーセル群114との境に位置するエアーセル10である。
【0031】
第4エアーセル群114のエアーセル10は3つのグループV〜Xに分けられて空気配管が設けられている。グループVのエアーセル10は第3エアーセル群113と第4エアーセル群114との境に位置するエアーセル10である。グループW,Xのエアーセル10はそれぞれ横一列に並べられ且つこれらの列は縦に交互に配置されている。
【0032】
上記のように第1エアーセル群111と第2エアーセル群112は、使用者の身体中心に対して左右独立グループとなっている。これにより、座位での体感安定性を得ることができる。(左右同一グループにした場合、例えば、体が傾き、左側のエアーセルに体重が作用した場合、エアーセル内の空気が右側のエアーセルに移動し、左側のエアーセルが沈み込み、体の傾きを助長し、不安定な状態或いは転倒に至ることが危惧される。)
さらに、座位での両端部M,P,S,Tのエアーセルの空気圧を高くすることで、身体の左右のずり落ちを防止することができる。
【0033】
図4乃至図11に示すように、各エアーセル10は、下端が開口している空気袋11と、空気袋11を着脱自在に取付可能なベース部材12と、空気袋11をベース部材12に保持するリング状の保持部材13とを有する。
【0034】
空気袋11は軟質のゴムやプラスチック等の可撓性の材料から成り、内部に空気を封入可能である。空気袋11は、上下方向に延びる断面円形状の側面としての筒状部11aと、筒状部11aの上端を閉鎖するように形成された上端面11bとを有する。筒状部11a及び上端面11bは1mm以下の均一な厚み寸法を有する薄膜状に形成されている。筒状部11aの下端は開口しており、筒状部11aの下端の開口縁部11cは筒状部11aの他の部分よりも大きな厚み寸法を有するとともに、筒状部11aの他の部分の内周面よりも径方向内側に突出している。
【0035】
ベース部材12は空気袋11の材料よりも硬いゴムやプラスチックから成り、円板状に形成されている。ベース部材12の上端面には上方に突出する断面円形状の上端側突出部12aが設けられ、上端側突出部12aには上下方向に延びる4つの通気穴12bが設けられている。また、上端側突出部12aの先端側の外周面には基端側の外周面よりも径方向外側に突出している径方向突出部12cが設けられている。空気袋11の開口縁部11cは上端側突出部12aの外周面に嵌合により取付けられ、開口縁部11cの内周面が上端側突出部12aの径方向突出部12cに下方から係合する。また、空気袋11の開口縁部11cを上端側突出部12aに嵌合した後に、保持部材13を開口縁部11cの外周面に取付けると、開口縁部11cが上端側突出部12a側に押付けられる。これにより、開口縁部11cと上端側突出部12aとの間が密閉され、空気袋11と上端側突出部12aの上端面によって空気室ARが形成される。
【0036】
ベース部材12の下端面には下方に突出する断面円形状の下端側突出部12dが設けられている。下端側突出部12dには必要に応じてその外周面から各通気穴12bまで貫通する空気通路12eが設けられ、各空気通路12eに連結パイプPが挿入されることにより、各ベース部材12の通気穴12bが互いに連通する。
【0037】
ベース部材12の上端側突出部12aの中央部には薄膜部12fが形成されている。薄膜部12fはベース部材12と一体に形成され、上下方向に弾性変形可能である。薄膜部12fの下方には断面矩形状の穴12gが設けられ、穴12gは上下方向に延びるように形成されるとともに下端側突出部12dの下面に開口している。薄膜部12fの上面には上方に向かって延びる突起12hが一体に設けられ、突起12hは円柱状に形成されている。突起12hには延設部材としての弾性部材14が取付けられ、弾性部材14は薄膜部12の上面から上方に向かって延びるように形成されている。弾性部材14は金属製のコイルスプリング或いは軟質のゴムやプラスチック等の可塑性部材(特許公開2010−104500、特許公開2009−226109、特許公開2009−95376)である。
【0038】
穴12g内には検知手段としてのスイッチ15(底付きセンサ)が取付けられている。スイッチ15は、中空状に形成された本体15aと、本体15aの上端面に上下方向に移動可能に設けられたボタン部材15bと、ボタン部材15bの下方に設けられた第1接点部材15cと、第1接点部材15cの下方に設けられた第2接点部材15dとを有する。
【0039】
本体15aはプラスチック等の絶縁材料から成り、ベース部材12の穴12fの内形よりもわずかに大きい外形を有する。即ち、本体15aがベース部材12の穴12g内に嵌め込まれることにより、スイッチ15がベース部材12の穴12gに着脱自在に取付けられている。また、薄膜部12fの下面とボタン部材15bの上端面とが距離SGだけ離れるように、スイッチ15がベース部材12に取付けられている。
【0040】
ボタン部材15bはプラスチック等の絶縁材料から成る。
【0041】
第1接点部材15cは銅等の金属材料から成り、薄い板状に形成されている。第1接点部材15cはボタン部材15bの下端面と接触している。第1接点部材15cの一端は絶縁材料から成る一端側支持部材15eに支持され、第1接点部材15cの他端は絶縁材料から成る他端側支持部材15fに支持されている。また、第1接点部材15cの一端には第1電気配線15gが接続されている。
【0042】
第2接点部材15dは銅等の金属材料から成り、薄い板状に形成されている。第2接点部材15dは第1接点部材15cの下面と所定距離Gだけ離れた位置に配置されている。第2接点部材15dの一端は一端側支持部材15eに第1接点部材15cと絶縁状態に支持され、第2接点部材15dの他端は他端側支持部材15fに第1接点部材15cと絶縁状態に支持されている。また、第2接点部材15dの他端には第2電気配線15hが接続されている。
【0043】
ベース部材12には周知の圧力センサ16も設けられている。圧力センサ16の上端はベース部材12の上端面から上方に突出しており、圧力センサ16は空気室AR内の空気圧を大気圧基準で検出可能である。
【0044】
支持部材60は空気袋11の材料よりも硬い柔軟性を有するゴムやプラスチックからなる。また、支持部材60の着座面の後端側は徐々に幅寸法が小さくなるように形成されている。支持部材60には複数の貫通孔61が設けられ、エアーセル10の下端側突出部12dが貫通孔61に支持部材60の上端面側から挿入されると、下端側突出部12dが貫通孔61に嵌合し、各エアーセル10の下端側が支持部材60に着脱自在に支持されるようになっている。
【0045】
また、図12に示すように、制御ユニット200には、圧縮空気を供給可能な周知の電動ポンプから成るポンプ70と、周知の第1乃至第24電磁弁V1〜V24と、可撓性の第1乃至第18連結パイプ(図示せず)と、ポンプ70及び各電磁弁V1〜V24を制御するための制御部61とが設けられている。制御部61は周知のCPU及び制御基板を有する。なお、各電磁弁V1〜V24のそれぞれは弁を2つ備え、ポンプ70からエアーセル10への空気供給とエアーセル10からの排気及びエアーセル10内の気圧の維持を切り替えることができるものである。また、電磁弁V1〜V24をエアーマットレス本体100に設けても良い。
【0046】
支持部材60の着座面の前端側の下端面には中空部62が形成され、中空部62内に供給側圧力センサ91と、排気側圧力センサ92と、図示しない電気配線が配置されている。また、支持部材60の中空部62内には複数のゴムブロックが設けられ、各圧力センサ91,92が各ゴムブロックの間に嵌め込まれて支持部材60の下端面に着脱自在に取付けられている。各圧力センサ91,92は大気圧基準で空気圧を検出可能である。供給側圧力センサ91はポンプ70と各電磁弁V1〜V24との入力側との間に設けられ、ポンプ70から各電磁弁V1〜V24を介してエアーセル10に供給される空気の圧力を検出する。また、排気側圧力センサ92は各エアーセル10の電磁弁V1〜V24の排気口に連結された共通の排気パイプに設けられ、電磁弁V1〜V24を介して各エアーセル10から排気される空気の圧力を検出する。
【0047】
制御部61は図示しない電気配線によってポンプ70、各電磁弁V1〜V24、各圧力センサ91,92、各エアーセル10のスイッチ15及び各エアーセル10の圧力センサ16と接続され、制御ユニット200には初期制御スイッチ221、着座制御スイッチ222、圧力切換制御スイッチ223、操作部224が設けられている。また、各エアーセル10、ポンプ70、各電磁弁V1〜V24及び各圧力センサ91,92は互いに各連結パイプ(図示せず)によって接続されている。電気配線及び各連結パイプは支持部材60の下端面側に配置されている。
【0048】
電磁弁V1はグループAのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V2はグループBのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V3はグループCのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V4はグループDのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V5はグループEのエアーセル10とポンプ70との間に設けられている。
【0049】
また、電磁弁V6はグループFのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V7はグループGのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V8はグルーHプのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V9はグループIのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V10はグループJのエアーセル10とポンプ70との間に設けられている。
【0050】
電磁弁V11はグループKのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V12はグループLのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V13はグループMのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V14はグループNのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V15はグループOのエアーセル10とポンプ70との間に設けられている。
【0051】
電磁弁V16はグループPのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V17はグループQのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V18はグループRのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V19はグループSのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V20はグループTのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V21はグループUのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V22はグループVのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V23はグループWのエアーセル10とポンプ70との間に設けられ、電磁弁V24はグループXのエアーセル10とポンプ70との間に設けられている。
【0052】
以上のように構成されたエアーマットレスは、例えばフルリクライニング型車椅子に載置されて使用される。また、ポンプ70によって各エアーセル10内に初期圧力P0の空気が充填されている状態で、着座者が車椅子の着座面に載置されたエアーマットレス本体100に着座するようになっている。エアーマットレスの制御部61のメモリ96には、体重区分、初期圧力P0、所定の高圧P1、所定の低圧P2、動作時間、切換時間などが予め入力されており、これらは操作部214を用いて変更可能である。
【0053】
ここで、スイッチ15の動作について説明する。各エアーセル10上に着座者が着座すると、各エアーセル10が着座者の臀部の形状に応じてそれぞれ潰れていく。ここで、各エアーセル10の空気室ARの底面の一部が上下方向に弾性変形可能な薄膜部12fによって形成され、薄膜部12fの上面から上方に向かって延びる弾性部材14が設けられているので、各エアーセル10のうち最も潰れているエアーセル10の空気袋11の上端側が弾性部材14に接触すると、弾性部材14に下方に向かう力が加わる(図7及び図8参照)。これにより、弾性部材14が下方向に圧縮変形し始め、薄膜部12fが下方に向かって弾性変形し始める。さらに、空気袋11の上端側が下方に向かって移動すると、さらに弾性部材14が下方向に圧縮変形するとともに、薄膜部12fが下方に向かって弾性変形し、薄膜部12fの下面がスイッチ15のボタン部材15bの上端面に当接するとともに、ボタン部材15bが薄膜部12fに押されて所定距離Gだけ下方に向かって移動する(図9及び図10参照)。これにより、ボタン部材15bによって第1接点部材15cの中央部が所定距離Gだけ下方に向かって移動し、第1接点部材15cと第2接点部材15dとが接触する(図11参照)。即ち、第1電気配線15gと第2電気配線15hとが通電し、薄膜部12fの変形量が距離SG以上になったことがスイッチ15によって検知される。また、この時にエアーセル10の空気袋11の上端側とベース部材12の上端面とが所定距離Lになっており、空気袋11の上端側とベース部材12の上端面とが所定距離Lよりも近い位置にあると、その空気袋11は臀部Hを軟らかく支持することができなくなる。この時の第1エアーセル10の潰れ量を所定量とする。尚、ここでは前記所定量を空気袋11が臀部Hを軟らかく支持することができなくなる潰れ量としたが、前記所定量を他の潰れ量にすることも可能である。
【0054】
次に、各エアーセル10に初期圧力P0の空気を充填する場合のエアーマットレスの動作について、制御部61の動作を示す図13に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、各電磁弁V1〜V24はポンプ70からエアーセル10へ空気を供給できる状態にされている(以下、供給の状態を供給と称する)。
【0055】
先ず、初期制御スイッチ221の操作があると(SA1)、第1乃至第24電磁弁V1〜V24を供給状態にするとともに(SA2)、ポンプ70を作動させる(SA3)。この状態で供給側圧力センサ91の検出値が初期圧力P0に達すると(SA4)、ポンプ70を停止させる(SA5)。これにより、ポンプ70から供給される空気がA乃至Xグループの各エアーセル10内に充填され、各エアーセル10内の空気圧が初期圧力P0となる。
【0056】
ここで、ポンプ70によって各エアーセル10内に空気が供給されている際に、各エアーセル10上に使用者が横たわる場合があるが、この場合は供給側圧力センサ91の検出値が急激に上昇する。この際に供給側圧力センサ91の検出値が初期圧力P0以上になると、各エアーセル10への空気の充填が終了する。このため、供給側圧力センサ91の検出値が急激に上昇せずに前記空気の充填が終了した場合は(SA6)、メモリ96に初期制御完了を記憶し(SA7)、使用者が横たわる前に前記空気の充填が完了したことを識別できるようにしている。
【0057】
また、第1エアーセル群111のエアーセル配置面と第2エアーセル群112のエアーセル配置面のなす角度を180度未満にするとき、すなわち、各エアーセル10上に使用者が横たわった状態から背上げをする場合、或いは、エアーマットレス本体を車椅子に装着する場合は、折れ曲がる部分のエアーセル10内の空気を排気すると共このエアーセル10内のスイッチ15の検知を無効にし、さらに、背上げをする際に第1エアーセル群111においてエアーセル10と身体との摩擦により背中にせん断力が作用するときに、背面のエアーセルの空気圧をグループ毎に排気、吸気させ、摩擦力を緩和させる。さらにまた、背上げした際に、幅方向中央側よりも両側の空気圧を高くすることにより身体のホールド性の向上を図っている。これらの動作を行うときは制御ユニット200の着座制御スイッチ222を操作する。
【0058】
この場合のエアーマットレスの動作について、制御部61の動作を図14に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0059】
先ず、着座制御スイッチ221の操作があると(SB1)、第1乃至第6及び第11乃至第20及び第23,24電磁弁V1〜V6,V11〜V20,V23,V24を供給状態にし、第7乃至第10及び第21,22電磁弁V7〜V10,V21,V22を排気状態にするとともに(SB2)、グループG〜J,U,Vのエアーセル10のスイッチ15の検知を無効にする(SB3)。これにより、エアーマットレス本体100を車椅子に装着するときに折れ曲がる部分のエアーセル10内の空気を排気して折り曲げやすくすると共この排気したエアーセル10内のスイッチ15の検知を無効にして誤検出を防止する。
【0060】
次いで、ポンプ70を作動させる(SB4)。この状態で供給側圧力センサ91の検出値が初期圧力P0に達すると(SB5)、ポンプ70を停止させる(SB6)。これにより、ポンプ70から供給される空気がA乃至Xグループの各エアーセル10内に充填され、各エアーセル10内の空気圧が初期圧力P0となる。この後、グループA,DとグループB,Eへの空気供給と排気を交互に所定時間行う(SB7)。このように、グループA,DとグループB,Eへの空気供給と排気を交互に行うことにより、背上げをする際に第1エアーセル群111においてエアーセル10と身体との摩擦により背中にせん断力が作用するときに摩擦力を緩和させることができる。
【0061】
この後、グループC,F,M,P,S,Tのエアーセル10の空気圧を初期圧力P0以上の圧力Phまで高める(SB8)。これにより、エアーマットレス本体100の幅方向中央部のエアーセル10の空気圧よりも幅方向の最も外側のエアーセル10の空気圧が高くなるので、身体のホールド性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態のエアーマットレス装置1は、エアーセル10への空気の供給と排気をエアーマットレス本体100の幅方向中央を境にして左右独立して行えるようにしているので、身体を支えるエアーセル10の空気圧の偏りを防止することができる。
【0063】
ここでは、一例としてエアーマットレスを平らに敷いた状態での制御を説明する。すなわち、各エアーセル10上に使用者が横たわるとともに、使用者の身体に加わる圧力を分散させた後、使用者の身体に生ずる鬱血等を効果的に防止するため、グループA〜Xの各エアーセル10内の空気圧を所定の低圧及び所定の高圧に交互に調整する。この場合の動作について、制御部61の動作を図15に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
先ず、圧力切換制御スイッチ223が操作されると(SC1)、タイマーの計時を開始し(SC2)、使用者が各エアーセル10上に横たわる。これにより、使用者が横たわると各エアーセル10のうち少なくとも1つのエアーセル10の圧力センサ16の検出値が上昇する。前記圧力センサ16の検出値が上昇すると(SC3)、第1乃至第24電磁弁V1〜V24を排気状態に設定する(SC4)。これにより、グループA〜Xの各エアーセル10内の空気が徐々に排気される。これにより、グループA〜Xの各エアーセル10内の空気が使用者の身体によって加わる圧力で排気され、エアーセル10が徐々に潰れていく。ここで、各グループA〜Xにおいて少なくとも1つのエアーセル10のスイッチ15によってエアーセル10の潰れ量が所定量以上であると検知されると(SC5)、第1乃至第24電磁弁V1〜V24を維持状態に設定してエアーセル10への空気の吸排気を停止する(SC6)。
【0065】
次に、第1乃至第24電磁弁V1〜V24を供給状態に設定するとともに(SC7)、ポンプ70を作動し(SC8)、前記スイッチ15の検知がされなくなってから潰れ量が所定量以上を検知した時の圧力よりプラス5%になるまで加圧する(SC9)。これにより、各エアーセル10のうち最も潰れているエアーセル10の潰れ量が前記所定の潰れ量よりもわずかに小さくなるように、各エアーセル10内の空気量が正確に調整される。
【0066】
次に、タイマーの計時が所定時間Tに達したか否かを判定し(SC10)、タイマーの計時が所定時間Tに達したときに前記ステップ2に移行して前記ステップ2〜9を実行する。また、タイマーの計時が所定時間Tに達しないときは制御ユニット200の停止スイッチがオンされたか否かを判定し(SC11)、オンされないときは前記ステップSC10に移行し、オンされたときは処理を終了する。
【0067】
本実施形態ではエアーマットレス本体100の左右に分けてエアーセルのグループを設けているので、左右のグループのエアーセル内の空気圧を独立して調整することができる。
【0068】
このように、本実施形態によれば、各エアーセル10の潰れ量をそれぞれ検知可能であり、各エアーセル10上に使用者が横たわった後に、少なくとも1つのエアーセル10の潰れ量が所定量以上であると検知されるまで、各エアーセル10内の空気が徐々に排気されるとともに、前記排気の後に各エアーセル10内に空気が徐々に供給され、前記エアーセル10の潰れ量が所定量以上を検知したときの圧力よりプラス5%になるまで加圧して各エアーセル10内の空気量を正確に調整することができ、使用者の身体に加わる圧力を効果的に分散させる上で極めて有利である。即ち、使用者によって体重や身体の形状が異なる場合でも、各エアーセル10の潰れ量が所定量になるように各エアーセル10内の空気量を正確に調整することができる。さらに、エアーマットレス本体100の左右に分けてエアーセルのグループを設け、左右のグループのエアーセル内の空気圧を独立して調整することができるようにしているので、左右のバランスを最良の状態に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のエアーマットレス及びエアーマットレス装置は、フルフラットな状態と座位をとれる状態とに変形可能なベッドや車椅子に使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…エアーマットレス装置、100…エアーマットレス本体、111…第1エアーセル群、112…第2エアーセル群、113…第3エアーセル群、114…第4エアーセル群、123,124…コネクタ、200…制御ユニット、211…筐体、214,215…コネクタ、218…電源コード、218a…プラグ、221…初期制御スイッチ、222…着座制御スイッチ、223…圧力切換制御スイッチ、224…操作部、10…エアーセル、11…空気袋、12…ベース部材、12f…薄膜部、13…保持部材、14…弾性部材、15…スイッチ、16…圧力センサ、60…支持部材、61…貫通孔、62…中空部、70…ポンプ、V1〜V24…電磁弁、91…供給側圧力センサ、92…排出側圧力センサ、96…メモリ、AR…空気室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15