(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推進器は、前記座席の上部又は下部に配置されるように、前記サブフレームを介して前記メインフレームに接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸機。
前記操縦桿は、前記サブフレームから前記座席の前方まで延設されており、該操縦桿を前後方向に回動させることによって前記サブフレームを前記メインフレームに対して前後方向に回動させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図11を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は動力伝達機構を示す構成図、である。
【0019】
本発明の第一実施形態に係る垂直離着陸機1は、
図1(a)及び(b)に示すように、揚力及び推力を発生させる推進器2と、座席41及び接地脚42を支持するメインフレーム4と、推進器2を支持するとともにメインフレーム4に対して前後方向に回動可能に配置されたサブフレーム5と、メインフレーム4に支持されるとともに推進器2に動力を供給する動力供給手段3と、サブフレーム5に接続された操縦桿6と、を有し、推進器2は、メインフレーム4の左右に各々配置された一対のダクテッドファン21L,21Rと、ダクテッドファン21L,21Rに配置された左右方向に延びる回動軸22と、回動軸22に接続された制御翼23と、を備え、制御翼23を回動させることによってサブフレーム5がメインフレーム4に対して相対移動可能に構成されている。
【0020】
前記推進器2は、メインフレーム4の左側(操縦者の左手側)に配置されるダクテッドファン21Lと、メインフレーム4の右側(操縦者の右手側)に配置されるダクテッドファン21Rと、これらのダクテッドファン21L,21Rを連結するサブフレーム5と、を有している。ダクテッドファン21L,21Rは、一般に、略円筒形状のダクト21aと、ダクト21a内に回転可能に配置されたプロペラ21bと、により構成されており、プロペラ21bの中心部の前方(上流側)にはノーズコーン21cが配置され、プロペラ21bの中心部の後方(下流側)にはテールコーン21dが配置されている。ノーズコーン21cは、プロペラ21bにより吸い込まれる気体をダクト21a内に滑らかに案内する機能を有し、テールコーン21dはダクト21aから排出される気体を整流する機能を有している。
【0021】
また、ダクテッドファン21L,21Rに形成された環状の流路の内側(メインフレーム4側)には、
図1(a)及び(b)に示したように、回動軸22及び制御翼23が配設されている。回動軸22は、ダクテッドファン21L,21Rのダクト21aとテールコーン21dとの間に掛け渡されており、その軸方向は、垂直離着陸機1の前後方向と垂直な方向(すなわち、左右方向)を向くように配設されている。回動軸22は、一端がダクト21aに形成された軸受部21eに回動可能に支持されており、他端がテールコーン21d内に配置されたアクチュエータ22aに接続されている。また、回動軸22は、ダクテッドファン21L,21Rの前後方向中心部(ダクテッドファン21L,21Rの回転軸を結ぶ線分上)に配置されている(以下、かかる配置の回動軸を「中心部回動軸」と称する)。
【0022】
そして、この回動軸22には、断面翼形状を有する制御翼23が接続されている。したがって、アクチュエータ22aを作動させることによって、回動軸22を軸回りに回動させることができ、制御翼23を前後方向に揺動させることができる。アクチュエータ22aと回動軸22との間には、減速機を介在させるようにしてもよい。なお、
図1(b)において、説明の便宜上、プロペラ21b、ノーズコーン21c及びテールコーン21dを、破線で図示している。
【0023】
また、図示しないが、上述した回動軸22及び制御翼23は、ダクテッドファン21L,21Rに形成された環状の流路の内側(メインフレーム4側)だけでなく、外側(大気側)にも配置するようにしてもよい。各ダクテッドファン21L,21Rに配置された二本の回動軸22は、アクチュエータ22aを個別に有していてもよいし、傘歯車等の動力伝達機構を介してアクチュエータ22aを共有していてもよい。なお、各ダクテッドファン21L,21Rに個別にアクチュエータ22aを配置した場合には、垂直離着陸機1の姿勢に応じて左右の制御翼23の回動角度を変更することにより、サブフレーム5の捻れを抑制することができる。
【0024】
前記動力供給手段3は、例えば、
図1(c)に示した動力伝達機構により、ダクテッドファン21L,21Rに動力を供給する原動機である。動力源としては、原動機に替えて、電動モータやレシプロエンジン等を使用してもよいし、過給機を設置するようにしてもよい。動力供給手段3は、メインフレーム4の背面に固定されており、機体上部に配置されたオイルタンク31から燃料が供給され、燃料を燃焼させて動力を出力し、後方に配置された排気ノズル32から排気ガスを排出する。なお、
図1(c)において、説明の便宜上、回動軸22及び制御翼23の図を省略してある。
【0025】
図1(c)に示したように、垂直離着陸機1の動力伝達機構は、動力供給手段3と、動力供給手段3の出力軸の先端に接続されたスプロケット33と、両端部に傘歯車34aを有するとともに中間部にスプロケット34bを有する動力伝達シャフト34と、スプロケット33,34b間に掛け渡されたローラチェーンと、動力伝達シャフト34を回転可能に支持する軸受35と、を有し、動力供給手段3により出力される動力は、チェーン駆動機構を介して動力伝達シャフト34に伝達され、動力伝達シャフト34の回転は傘歯車34aを介してダクテッドファン21L,21Rの駆動軸に伝達される。
【0026】
動力供給手段3と動力伝達シャフト34との動力伝達は、チェーン駆動機構に限定されるものではなく、ベルト駆動機構であってもよいし、歯車駆動機構であってもよいし、減速機や増速機を介在させるようにしてもよい。また、各ダクテッドファン21L,21Rの回転数を個別に制御したい場合には、各ダクテッドファン21L,21Rに個別に動力供給手段3を接続するようにしてもよい。動力伝達シャフト34を支持する軸受35は、動力供給手段3が固定されるメインフレーム4に配置されており、動力供給手段3の出力軸と動力伝達シャフト34との位置関係が変動しないように構成されている。
【0027】
前記メインフレーム4は、機体の骨格をなす部材であって、推進器2、動力供給手段3、座席41、接地脚42等を支持する構成部品である。メインフレーム4は、機体の軽量化を図るためにフレーム構造であることが好ましい。メインフレーム4の下部には、乗員が着座する座席41(例えば、前部座席及び後部座席)、着陸時に地面等に接地する脚部を構成する複数の接地脚42、機体のモーメントやバランスを安定させる尾翼43、乗員の足を支持するフットレスト44等が配置されている。座席41にはシートベルトを配置してもよいし、接地脚42にはダンパーを配置してもよい。
【0028】
また、座席41の前方には整流手段であるカウル45が接続されている。カウル45の一部は、視界を確保するために透明の部材により構成されており、側面部にはバックミラーが配置されていてもよい。また、座席41とカウル45との接続部46は、コンソールボックスとして使用するようにしてもよいし、動力供給手段3の操作スイッチや操作レバーを配置する制御部として使用するようにしてもよい。
【0029】
また、メインフレーム4の背面には動力供給手段3の本体が固定されており、メインフレーム4の上部(天井部)にはオイルタンク31が固定されている。また、メインフレーム4の天井部には、雨避け用のルーフ部を構成する板部材を配置するようにしてもよい。
【0030】
前記サブフレーム5は、左右のダクテッドファン21L,21Rを接続する構成部品である。また、サブフレーム5には、座席41の前方に延設された操縦桿6が接続されている。操縦桿6は、サブフレーム5から座席41の前方まで延設されており、操縦桿6を前後方向に回動させることによってサブフレーム5をメインフレーム4に対して前後方向に回動させるように構成されている。操縦桿6は、サブフレーム5及び推進器2を回動させるものであるため、推進器2の外周面に操縦桿6が接続されていてもよい。そして、サブフレーム5は、
図1(c)に示したように、フレーム連結部51によりメインフレーム4に回動可能に接続される。
【0031】
かかるフレーム構造により、座席41や動力供給手段3はメインフレーム4に固定されていることから、一体構造をなしており、相対移動しないように構成されている。一方、推進器2(ダクテッドファン21L,21R)はサブフレーム5に固定されていることから、サブフレーム5をメインフレーム4に回動可能に接続することにより、推進器2(ダクテッドファン21L,21R)を座席41や動力供給手段3に対して相対移動(回動)させることができる。
【0032】
フレーム連結部51は、動力伝達シャフト34の回転軸とサブフレーム5の回動軸とが同軸上に配置されるように構成されている。また、フレーム連結部51は、例えば、メインフレーム4の下面に接続されるとともに動力伝達シャフト34を挿通可能な第一筒部を有する本体部51aと、サブフレーム5の下面に接続されるとともに第一筒部の内側に挿嵌される第二筒部を有する回動部51bと、第一筒部と第二筒部との間に配置された軸受(図示せず)と、を有する。かかる構成によれば、動力伝達シャフト34とダクテッドファン21L,21Rとの連結部(傘歯車34a)における接続状態を維持したまま、ダクテッドファン21L,21Rを動力伝達シャフト34の回転軸に沿って回動させることができ、推進器2の向きを変更することができる。なお、フレーム連結部51は、メインフレーム4とサブフレーム5とを相対移動(回動)させることができればよく、図示した構成に限定されるものではない。
【0033】
上述したように、推進器2を有するサブフレーム5は、機体の骨格を形成するメインフレーム4に対して回動可能に構成されており、操縦桿6を操作して動力伝達シャフト34の軸回りに回動させることによって、推進器2(ダクテッドファン21L,21R)を前後方向に回動(傾斜)させることができ、機体の進行方向等を制御することができる。ここで、動力供給手段3はメインフレーム4に固定されていることから、サブフレーム5の軽量化を図ることができるものの、推進器2(ダクテッドファン21L,21R)の作動中にサブフレーム5を回動させるには、推力や揚力に負けない大きな力を必要とする。本発明は、このサブフレーム5をメインフレーム4に対して相対移動(回動)させる際に必要とする力を低減するために、制御翼23を配置したものである。
【0034】
なお、上述した動力供給手段3は、図示しないが、メインフレーム4ではなくサブフレーム5に配置されていてもよい。この場合、動力伝達シャフト34の回転軸とサブフレーム5の回動軸とは、同軸上に配置する必要はなく、動力伝達機構の簡素化を図ることができる一方で、サブフレーム5の重量が増加し、サブフレーム5の操作(回動)に大きな力を必要とすることとなる。しかしながら、上述した制御翼23を配置することにより、サブフレーム5をメインフレーム4に対して相対移動(回動)させる際に必要とする力を低減することができる。
【0035】
ここで、制御翼23の動作について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。
図2は、第一実施形態に係る垂直離着陸機の作用を示す図であり、(a)は浮上状態、(b)は制御翼前方回動状態、(c)はサブフレーム回動状態、(d)は前進状態、(e)は制御翼後方回動状態、(f)はサブフレーム回動状態、を示している。
図3は、第一実施形態に係る垂直離着陸機の他の作用を示す図であり、(a)は空中静止状態、(b)は機体傾斜状態、(c)は制御翼前方回動状態、(d)はメインフレーム回動状態、(e)は制御翼後方回動状態、(f)はサブフレーム回動状態、を示している。なお、各図において、説明の便宜上、垂直離着陸機1の機体本体を符号10として簡略化して図示するとともに、操縦桿6及び軸受部21eの図を省略してある。
【0036】
図2(a)〜(d)は、垂直離着陸機1を浮上状態から前進状態に移行させる動作を示している。
図2(a)は垂直離着陸機1の浮上状態を示している。この浮上状態では、推進器2は上下方向に向いており、上方から空気を吸い込み下方に空気を噴き出すことによって機体本体10を浮上又は浮揚させる。このとき、制御翼23は、推進器2の気流を阻害しないように、下方に真っ直ぐ向いた状態に保持されている。
【0037】
垂直離着陸機1を前進させたい場合には、推進器2を前方に傾斜させて後方に向かって空気を噴き出し、推進力を得る必要がある。かかる操作は、基本的に操縦桿6で行うことになるが、本実施形態ではその操作に必要な力を低減するために、制御翼23の揚力を利用している。まず、
図2(b)に示したように、制御翼23を前方に回動させると、プロペラ21bを通過した空気は、制御翼23の前面に衝突し、制御翼23は後方に向けて揚力を発生させる。
【0038】
その結果、
図2(c)に示したように、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動し、推進器2の頭部(ノーズコーン21c側)が前方を向くように回動することとなる。したがって、制御翼23を回動させるだけで所定の方向に推進器2を回動させることができ、操縦桿6の操作に必要な力を低減することができ、操縦をサポートすることができる。
【0039】
最終的に、
図2(d)に示したように、推進器2を傾斜させた状態を保持したまま、制御翼23を推進器2の傾斜角度と同じ角度となるように回動させることにより、推進器2の後方に空気を噴き出すことができ、安定した推進力を得ることができる。
【0040】
次に、前進状態から浮上状態又は浮揚状態に戻る場合には、
図2(e)に示したように、推進器2が傾斜した状態で制御翼23を後方に回動させる。このとき、プロペラ21bを通過した空気は、制御翼23の後面に衝突し、制御翼23は前方に向けて揚力を発生させる。
【0041】
その結果、
図2(f)に示したように、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動し、推進器2の頭部(ノーズコーン21c側)が上方を向くように回動することとなる。したがって、制御翼23を回動させるだけで所定の方向に推進器2を回動させることができ、操縦桿6の操作に必要な力を低減することができ、操縦をサポートすることができる。
【0042】
上述した制御翼23の回動は、
図1(a)に示したアクチュエータ22aによって操作され、アクチュエータ22aの駆動は座席41又は操縦桿6に配置された操作ボタンや操作レバー(図示せず)によって制御される。
【0043】
図3(a)〜(f)は、空中静止状態にある垂直離着陸機1が突風等の外乱によって煽られて姿勢が崩れた場合に、空中静止状態に復帰させる場合の動作を示している。
図3(a)は垂直離着陸機1の空中静止状態を示している。この空中静止状態では、推進器2は上下方向に向いており、上方から空気を吸い込み下方に空気を噴き出すことによって、機体本体10に生じる重力と揚力とを釣り合わせるようにしている。このとき、制御翼23は、推進器2の気流を阻害しないように、下方に真っ直ぐ向いた状態に保持されている。
【0044】
空中静止状態にある垂直離着陸機1が突風等の外乱を受けた場合、例えば、
図3(b)に示したように、推進器2、機体本体10及び制御翼23の位置関係を保持したまま、垂直離着陸機1の全体が前方に傾く場合がある。この傾斜状態から空中静止状態に復帰させる場合には、まず、
図3(c)に示したように、制御翼23を前方に回動させる。このとき、プロペラ21bを通過した空気は制御翼23の前面に衝突し、制御翼23は後方に向けて揚力を発生させる。
【0045】
したがって、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動しようとするが、機体本体10の姿勢が崩れて機体本体10の重心がずれていることから、
図3(d)に示したように、機体本体10(メインフレーム4)が推進器2(サブフレーム5)に対して相対移動することとなる。なお、この動作は、推進器2(サブフレーム5)が機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動していることと同義である。
【0046】
図3(d)に示した状態では、機体本体10の姿勢は正常な状態に戻っているものの、推進器2が前方に傾斜していることから、空中静止状態を維持することができず、垂直離着陸機1は前進しようとしてしまう。そこで、次に、推進器2の姿勢を正常な状態に戻すための操作を行う。
【0047】
図3(e)に示したように、推進器2が傾斜した状態で制御翼23を後方に回動させる。このとき、プロペラ21bを通過した空気は、制御翼23の後面に衝突し、制御翼23は前方に向けて揚力を発生させる。その結果、
図3(f)に示したように、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動し、推進器2の頭部(ノーズコーン21c側)が上方を向くように回動することとなる。
【0048】
最終的に、
図3(a)に示した状態となるように、制御翼23を回動させることにより、垂直離着陸機1を空中静止状態に復帰させることができる。上述した制御翼23の回動は、
図1(a)に示したアクチュエータ22aによって操作され、アクチュエータ22aの駆動は座席41又は操縦桿6に配置された操作ボタンや操作レバー(図示せず)によって制御するようにしてもよい。また、機体本体10に姿勢の傾きを検出するジャイロスコープ等のセンサを配置して、機体本体10が傾斜した場合に自動的にアクチュエータ22aを操作して制御翼23の回動を制御するようにしてもよい。
【0049】
続いて、本発明の他の実施形態に係る垂直離着陸機について、
図4〜
図7を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、本発明の第二実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、である。
図5は、本発明の第三実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、である。
図6は、本発明の第四実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、である。
図7は、本発明の第五実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、である。なお、各図において、上述した第一実施形態に係る垂直離着陸機1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0050】
図4(a)及び(b)に示した第二実施形態に係る垂直離着陸機1は、ダクテッドファン21L,21Rの流路内の前部に配置された前部回動軸22fと、ダクテッドファン21L,21Rの流路内の後部に配置された後部回動軸22rと、を有するものである。これらの前部回動軸22f及び後部回動軸22rには、第一実施形態と同様に、制御翼23が接続されている。以下、前部回動軸22f及び後部回動軸22rのように、ノーズコーン21c又はテールコーン21dの前後に配置された回動軸を「側部回動軸」と称する。図示した第二実施形態では、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)は、制御翼23がダクト21aの流路内に収まる位置に配置されている。前部回動軸22f及び後部回動軸22rの軸受部21e及びアクチュエータ22aは、ダクト21aのハウジング内に配置される。なお、
図4(a)において、説明の便宜上、ダクテッドファン21Rを点線で図示している。
【0051】
かかる第二実施形態に係る垂直離着陸機1は、第一実施形態における中心部回動軸に替えて側部回動軸に制御翼23を接続したものである。第二実施形態における制御翼23の操作方法は、例えば、
図2(a)〜(f)や
図3(a)〜(f)に示した第一実施形態における制御翼23と実質的に同一であり、詳細な説明を省略する。
【0052】
図5(a)及び(b)に示した第三実施形態に係る垂直離着陸機1は、上述した第二実施形態における制御翼23をダクト21aの下部に配置したものである。このように、制御翼23をダクト21aの流路の外に配置することにより、制御翼23の表面積を大きく形成することができ、制御翼23の応答性を向上させることができる。なお、
図5(a)において、説明の便宜上、ダクテッドファン21Rを点線で図示している。
【0053】
図6(a)及び(b)に示した第四実施形態に係る垂直離着陸機1は、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)をダクト21aのハウジングの一部に配置したものである。ダクト21aのハウジングは、前面部及び後面部の一部が制御翼23を挿入可能な形状に切り欠かれている。かかる構成によれば、推進器2の流路中に制御翼23が常時配置されていないことから、制御翼23を使用しない場合における気流の乱れや圧損を低減することができる。また、ダクト21aの内面から制御翼23の表面に沿って空気を流すことができ、揚力を効率よく発生させることができる。
【0054】
図7(a)及び(b)に示した第五実施形態に係る垂直離着陸機1は、上述した中心部回動軸(回動軸22)及び側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)の両方を推進器2に配置したものである。これらの中心部回動軸及び側部回動軸に接続された制御翼23は、上述した他の実施形態と同様の操作を行うことによって垂直離着陸機1の姿勢を制御することができる。また、このように、中心部回動軸及び側部回動軸を有する場合に、中心部回動軸(回動軸22)に接続された制御翼23をダクテッドファン21L,21Rの推力偏向用に使用し、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23をサブフレーム5の傾動用に使用することもできる。なお、これらの制御翼23は、ダクト21a内に収まるように配置されていてもよいし、ダクト21aの外にはみ出るように配置されていてもよい。
【0055】
ここで、第五実施形態における制御翼23の動作について、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。
図8は、第五実施形態に係る垂直離着陸機の作用を示す図であり、(a)は浮上状態、(b)は制御翼前方回動状態、(c)はサブフレーム回動状態、(d)は前進状態、を示している。
図9は、第五実施形態に係る垂直離着陸機の他の作用を示す図であり、(a)は空中静止状態、(b)は機体傾斜状態、(c)は推力偏向用制御翼回動状態、(d)はメインフレーム回動状態、(e)は傾動用制御翼回動状態、(f)はサブフレーム回動状態、を示している。なお、各図において、説明の便宜上、垂直離着陸機1の機体本体を符号10として簡略化して図示するとともに、操縦桿6の図を省略してある。
【0056】
図8(a)〜(d)は、垂直離着陸機1を浮上状態から前進状態に移行させる動作を示している。
図8(a)は垂直離着陸機1の浮上状態を示している。この浮上状態では、推進器2は上下方向に向いており、上方から空気を吸い込み下方に空気を噴き出すことによって機体本体10を浮上又は浮揚させる。このとき、全ての制御翼23は、推進器2の気流を阻害しないように、下方に真っ直ぐ向いた状態に保持されている。
【0057】
垂直離着陸機1を前進させたい場合には、推進器2を前方に傾斜させて後方に向かって空気を噴き出し、推進力を得る必要がある。かかる操作は、基本的に操縦桿6で行うことになるが、本実施形態ではその操作に必要な力を低減するために、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23の揚力を利用している。まず、
図8(b)に示したように、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23を前方に回動させると、プロペラ21bを通過した空気は、制御翼23の前面に衝突し、制御翼23は後方に向けて揚力を発生させる。
【0058】
その結果、
図8(c)に示したように、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動し、推進器2の頭部(ノーズコーン21c側)が前方を向くように回動することとなる。したがって、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23を回動させるだけで所定の方向に推進器2を回動させることができ、操縦桿6の操作に必要な力を低減することができ、操縦をサポートすることができる。なお、中心部回動軸(回動軸22)に接続された制御翼23は、推力偏向用制御翼であるため、ここでは使用しない。
【0059】
最終的に、
図8(d)に示したように、推進器2を傾斜させた状態を保持したまま、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23を推進器2の傾斜角度と同じ角度となるように回動させることにより、推進器2の後方に空気を噴き出すことができ、推進力を得ることができる。なお、前進状態から浮上状態又は浮揚状態に戻る場合の操作については、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23の回動方向を反転させるだけであるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0060】
図9(a)〜(f)は、空中静止状態にある垂直離着陸機1が突風等の外乱によって煽られて姿勢が崩れた場合に、空中静止状態に復帰させる場合の動作を示している。
図9(a)は垂直離着陸機1の空中静止状態を示している。この空中静止状態では、推進器2は上下方向に向いており、上方から空気を吸い込み下方に空気を噴き出すことによって、機体本体10に生じる重力と揚力とを釣り合わせるようにしている。このとき、全ての制御翼23は、推進器2の気流を阻害しないように、下方に真っ直ぐ向いた状態に保持されている。
【0061】
空中静止状態にある垂直離着陸機1が突風等の外乱を受けた場合、例えば、
図9(b)に示したように、推進器2、機体本体10及び制御翼23の位置関係を保持したまま、垂直離着陸機1の全体が前方に傾く場合がある。この姿勢では、推進器2が前方に傾斜していることから、垂直離着陸機1は操縦者の意向に反して前進しようとしてしまう。そこで、まず、
図9(c)に示したように、中心部回動軸(回動軸22)に接続された制御翼23を前方に回動させる。このとき、プロペラ21bを通過した空気は、中心部回動軸に接続された制御翼23によって、下方に向かって噴き出されるように偏向されることとなり、垂直離着陸機1の前進を抑制することができる。
【0062】
また、同時に、中心部回動軸に接続された制御翼23は後方に向けて揚力を発生させることから、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動しようとする。このとき、機体本体10の姿勢が崩れて機体本体10の重心がずれていることから、
図9(d)に示したように、機体本体10(メインフレーム4)が推進器2(サブフレーム5)に対して相対移動することとなる。なお、この動作は、推進器2(サブフレーム5)が機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動していることと同義である。
【0063】
図9(d)に示した状態では、機体本体10の姿勢は正常な状態に戻っているものの、推進器2が前方に傾斜していることから、空中静止状態を維持することができず、垂直離着陸機1は前進しようとしてしまう。そこで、次に、推進器2の姿勢を正常な状態に戻すための操作を行う。
【0064】
図9(e)に示したように、推進器2が傾斜した状態で側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23を後方に回動させる。このとき、プロペラ21bを通過した空気は、側部回動軸に接続された制御翼23の後面に衝突し、制御翼23は前方に向けて揚力を発生させる。その結果、
図9(f)に示したように、推進器2(サブフレーム5)は機体本体10(メインフレーム4)に対して相対移動し、推進器2の頭部(ノーズコーン21c側)が上方を向くように回動することとなる。
【0065】
最終的に、
図9(a)に示した状態となるように、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)に接続された制御翼23を回動させることにより、垂直離着陸機1を空中静止状態に復帰させることができる。
【0066】
このように、制御翼23を推力偏向用と推進器傾動用とに機能分担させることにより、突風等の外乱によって垂直離着陸機1が煽られた場合であっても、推進器2を正常な状態に戻す前に、直ちに推力発生方向を偏向することができ、その後、推進器2を元の状態に復帰させることができ、円滑かつ迅速な姿勢制御を行うことができる。
【0067】
続いて、本発明の他の実施形態に係る垂直離着陸機について、
図10及び
図11を参照しつつ説明する。ここで、
図10は、本発明の第六実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、である。
図11は、本発明の第七実施形態に係る垂直離着陸機を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図、である。なお、各図において、上述した第一実施形態に係る垂直離着陸機1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0068】
図10(a)及び(b)に示した第六実施形態に係る垂直離着陸機1は、側部回動軸(前部回動軸22f及び後部回動軸22r)及び制御翼23をダクテッドファン21L,21Rの上部に配置したものである。具体的には、側部回動軸及び制御翼23は、プロペラ21bよりも上部のダクト21a内に配置される。かかる構成であっても、回動軸及び制御翼23がダクテッドファン21L,21Rの下部に配置されている実施形態と同様の操作により、垂直離着陸機1の姿勢制御を行うことができる。
【0069】
図11(a)〜(c)に示した第七実施形態に係る垂直離着陸機1は、推進器2(ダクテッドファン21L,21R)を座席41の下部に配置したものである。ここで、座席41の下部とは、推進器2への動力伝達シャフト(図示せず)が座席41よりも下部にある状態を意味している。すなわち、推進器2は、座席41の下部に配置されるように、サブフレーム5を介してメインフレーム4に接続されている。かかる構成の垂直離着陸機1においても、上述した第一実施形態〜第六実施形態に示した制御翼23を推進器2に配置することにより、垂直離着陸機1の姿勢制御を行うことができる。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、垂直離着陸機1が突風等の外乱によって後方に傾斜した場合には
図3(a)〜(f)及び
図9(a)〜(f)に記載した各制御翼23の回動方向を反転させるだけでよい、側部回動軸は前部回動軸22f又は後部回動軸22rのいずれか一方のみを配置してもよい、推進器2は二対以上のダクテッドファンを有していてもよいし、推進器2は一対のダクテッドファン21L,21Rに加えて後部に一つのダクテッドファンを有していてもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。