特許第6108083号(P6108083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6108083-車両の制御装置 図000002
  • 特許6108083-車両の制御装置 図000003
  • 特許6108083-車両の制御装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108083
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20170327BHJP
   F02D 41/10 20060101ALI20170327BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20170327BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20170327BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20170327BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20170327BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20170327BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20170327BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20170327BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170327BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20170327BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   F02D23/00 A
   F02D23/00 F
   F02D23/00 N
   F02D23/00 P
   F02D23/00 H
   F02D41/10 310
   F02D41/04 310G
   F02P5/15 H
   F02P5/15 F
   F02D45/00 312E
   F02D45/00 312M
   F02D43/00 301R
   F02D43/00 301K
   F02D43/00 301B
   F02B37/16 B
   F02B37/18 A
   F02B37/12 302B
   B60W10/06
   B60W10/11
   F16H61/04
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-40927(P2013-40927)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-169645(P2014-169645A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】三原 法行
(72)【発明者】
【氏名】東 邦彦
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−183934(JP,A)
【文献】 特開2008−196502(JP,A)
【文献】 特開平03−061651(JP,A)
【文献】 特開平09−144866(JP,A)
【文献】 特開2006−327509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 23/00 〜 23/02
F02D 41/00 〜 45/00
F02P 5/145 〜 5/155
F02B 37/12 〜 37/18
F16H 61/04
B60W 10/04 〜 10/06
B60W 10/11 〜 10/115
F02D 29/00 〜 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、排気通路に配設されたタービンを有する内燃機関と、前記内燃機関からの動力が入力され、前記内燃機関の動力を断接するクラッチと複数のギヤと複数の切換手段とを有し、前記内燃機関から入力される動力を増減速し出力軸より出力する自動変速機と、運転者の要求や前記車両の走行状態に基づいて前記自動変速機の作動を制御する第1制御手段と、前記運転者の要求及び前記第1制御手段の要求に基づき、前記内燃機関の作動を制御する第2制御手段と、を備える車両の制御装置であって、
前記内燃機関は、前記タービンを迂回するバイパス通路に設けられ、前記バイパス通路へ流れる排ガスの流量を調整するウェストゲートバルブを有し、
前記制御装置は、アクセルペダル操作に基づき前記車両が緩加速するか急加速するかを判定し、
前記第1制御手段は、前記緩加速と判定されると、前記車両の緩加速時の前記自動変速機のアップシフト開始前に前記第2制御手段にアップシフト要求信号および要求トルクを供給し、前記急加速と判定されると、前記車両の急加速時の前記自動変速機のダウンシフト開始前に前記第2制御手段にダウンシフト要求信号を供給し
前記第2制御手段は、前記第1制御手段より前記アップシフト要求信号が供給されると、前記ウェストゲートバルブを開側に作動させる開弁制御を実施し、前記開弁制御完了後に前記第1制御手段の要求するトルクに前記内燃機関の出力を合わせる制御を実施し、前記第1制御手段より前記ダウンシフト要求信号が供給されると、前記ウェストゲートバルブを閉側に作動させる閉弁制御を実施し、前記閉弁制御完了後に前記第1制御手段の要求するトルクに前記内燃機関の出力を合わせる制御を実施することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関は、吸気通路に吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段を有し、
前記第2制御手段は、前記第1制御手段よりアップシフト要求信号が供給されると、前記ウェストゲートバルブの開側への作動に加え、前記吸入空気量調整手段の閉側への作動或いは点火時期の遅角化の少なくとも一方を実施することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に自動変速装置の変速時の内燃機関の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の変速装置には、車両の燃費向上や運転者の負担軽減を目的とした特許文献1のようなトルクコンバータを使用しない機械式自動変速装置が用いられている。
特許文献1のような機械式自動変速装置では、手動変速装置における変速機の操作(セレクト及びシフト)及びクラッチの断接をアクチュエータにより作動させることで、トルクコンバータを不要とした自動変速を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−33045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の機械式自動変速機では、運転者の要求や車両の走行状態に基づき、車両に備えられる制御装置にて変速機及びクラッチを作動させ、ギヤ段の変速を行っている。
このような機械式自動変速機に用いられる機械式自動変速機の制御装置は、運転者が車両を加速させるためにアクセルペダルを操作すると、アップシフトやダウンシフトの変速動作を行うために内燃機関の制御装置に対して、内燃機関の出力トルクの低減要求を出力する。そして、機械式自動変速機の制御装置は、内燃機関の出力トルクの低減要求の出力後に、機械式自動変速機の入力軸の回転速度と内燃機関の出力軸の回転速度の同期のために内燃機関の出力トルクの増加要求を出力する。
【0005】
そして、内燃機関の制御装置は、内燃機関の出力トルクの低減要求が入力されると、内燃機関のスロットル開度や点火時期を調整して、内燃機関の出力トルクを低減している。
しかしながら、機械式自動変速機を備える車両には、ターボチャージャ等の過給機を備える内燃機関が用いられるものがある。
このような過給機を備える内燃機関では、例えば、運転者より加速要求があり、機械式自動変速機にて変速(アップシフト)を実施する場合に、機械式自動変速機の制御装置から過給機を備える内燃機関の制御装置に出力トルクの低減要求が出力されても、過給機にて過給が行われているので、内燃機関のスロットル開度や点火時期の調整では、十分な出力トルクの低減を行うことができない虞がある。
【0006】
したがって、出力トルクの低減に時間を要することとなり変速時間の長期化や、出力トルク低減不足による機械式自動変速機とのトルク差により内燃機関及び機械式自動変速機の耐久性が悪化する虞があり好ましいことではない。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両加速時の変速時間の長期化や内燃機関及び自動変速機の耐久性悪化を防止することのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両の制御装置では、車両に搭載され、排気通路に配設されたタービンを有する内燃機関と、前記内燃機関からの動力が入力され、前記内燃機関の動力を断接するクラッチと複数のギヤと複数の切換手段とを有し、前記内燃機関から入力される動力を増減速し出力軸より出力する自動変速機と、運転者の要求や前記車両の走行状態に基づいて前記自動変速機の作動を制御する第1制御手段と、前記運転者の要求及び前記第1制御手段の要求に基づき、前記内燃機関の作動を制御する第2制御手段と、を備える車両の制御装置であって、前記内燃機関は、前記タービンを迂回するバイパス通路に設けられ、前記バイパス通路へ流れる排ガスの流量を調整するウェストゲートバルブを有し、前記制御装置は、アクセルペダル操作に基づき前記車両が緩加速するか急加速するかを判定し、前記第1制御手段は、前記緩加速と判定されると、前記車両の緩加速時の前記自動変速機のアップシフト開始前に前記第2制御手段にアップシフト要求信号および要求トルクを供給し、前記急加速と判定されると、前記車両の急加速時の前記自動変速機のダウンシフト開始前に前記第2制御手段にダウンシフト要求信号を供給し、前記第2制御手段は、前記第1制御手段より前記アップシフト要求信号が供給されると、前記ウェストゲートバルブを開側に作動させる開弁制御を実施し、前記開弁制御完了後に前記第1制御手段の要求するトルクに前記内燃機関の出力を合わせる制御を実施し、前記第1制御手段より前記ダウンシフト要求信号が供給されると、前記ウェストゲートバルブを閉側に作動させる閉弁制御を実施し、前記閉弁制御完了後に前記第1制御手段の要求するトルクに前記内燃機関の出力を合わせる制御を実施することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の車両の制御装置では、請求項1において、前記内燃機関は、吸気通路に吸入空気量を調整する吸入空気量調整手段を有し、前記第2制御手段は、前記第1制御手段よりアップシフト要求信号が供給されると、前記ウェストゲートバルブの開側への作動に加え、前記吸入空気量調整手段の閉側への作動或いは点火時期の遅角化の少なくとも一方を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、車両の緩加速時におけるアップシフト開始前にウェストゲートバルブを開側に作動させることで、瞬時に過給手段への排ガスの導入量を減少させ、過給手段による吸気の過給を停止させて内燃機関の燃焼室に導入される空気量を減少させることができるので、内燃機関の出力トルクを瞬時に低下させることができる。
したがって、アップシフト開始前に瞬時に、そして十分に内燃機関の出力トルクを低下させることができるので、変速時間の長期化や内燃機関及び自動変速機の耐久性悪化を防止することができる。
【0011】
また、内燃機関の出力トルクの低下を点火時期の遅角化で行っていないので、未燃ガスの排出による触媒劣化を抑制することができる。
しかも、車両の急加速時に第1制御手段よりダウンシフト要求信号が供給されると、ウェストゲートバルブを閉側に作動させて、過給手段への排ガスの導入量を増加させ、過給手段による吸気の過給を行い内燃機関の燃焼室に空気を積極的に導入することで、急加速におけるダウンシフト時に内燃機関の回転速度を自動変速機の回転速度に追従を良くすることができるので、変速時間を短縮することができる。そのうえ、ウェストゲートバルブを閉側に作動させることで、ダウンシフト完了後の吸気の過給立ち上がりを早くすることができ、内燃機関の出力トルクの立ち上がりを早くすることができるので、運転者の操作に対する車両の加速レスポンスを向上させることができる。
また、請求項2の発明によれば、車両の緩加速におけるアップシフト時にウェストゲートバルブを開側への作動と共に、吸入空気量調整手段の閉側への作動或いは点火時期の遅角化の少なくとも一方を実施することで、更に内燃機関の出力トルクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る車両の制御装置が適用された車両の概略構成図である。
図2】本発明に係る車両に搭載されたエンジンの概略構成図である。
図3】本発明に係る車両の制御装置が適用された車両における加速時のエンジンとトランスミッションの作動制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、車両の制御装置が適用された車両1の概略構成図である。また、図2は、車両1に搭載されたガソリンエンジン(以下、エンジン10という)(内燃機関)の概略構成図である。
図1に示すように、車両1は、動力源としてのエンジン10と、運転者の要求或いは車両1の走行状態に合わせて当該エンジン10の出力を増速或いは減速して出力するトランスミッション(機械式自動変速機)30と、トランスミッションコントロールユニット(第1制御手段)40と、エンジンコントロールユニット(第2制御手段)50とで構成されている。そして、車両1には、運転者が操作するアクセルペダル60とシフト装置61とが備えられている。
【0016】
図2に示すように、エンジン10には燃焼室11が設けられている。そして、エンジン10には、空気を燃焼室11に導入する吸気管12aと吸気マニホールド12bと吸気ポート12cからなる吸気通路12が燃焼室11と連通するように設けられている。更にエンジン10には、排ガスを燃焼室11から排出する排気ポート13aと排気マニホールド13bと排気管13cとからなる排気通路13が燃焼室11と連通するように設けられている。そして、エンジン10には、燃焼室11に臨むようにして、燃焼室11内に導入された燃料と空気との混合気に点火する点火プラグ14と、燃料を燃焼室11内に供給する燃料噴射弁15とが設けられている。
【0017】
エンジン10の吸気通路12には、ターボチャージャ(過給手段)16のコンプレッサハウジング16aが連通するように備えられている。そして、ターボチャージャ16のコンプレッサハウジング16aとエンジン10の燃焼室11との間の吸気通路12には、ターボチャージャ16のコンプレッサハウジング16a側よりインタクーラ17と電子制御スロットルバルブ(吸入空気量調整手段)18とが設けられている。そして、エンジン10の吸気通路12の最上流には、エアクリーナ19が設けられている。また、エンジン10の吸気通路12には、ターボチャージャ16のコンプレッサハウジング16aの上流側とコンプレッサハウジング16aの下流側とを連通するようにバイパスバルブ20を備えるバイパス通路12dが設けられている。
【0018】
エンジン10の排気通路13には、ターボチャージャ16のタービンハウジング16bが連通するように備えられている。そして、エンジン10の排気通路13には、ターボチャージャ16のタービンハウジング16bの上流側とタービンハウジング16bの下流側とを連通するようにバイパス通路(本発明のバイパス通路に相当)13dが設けられている。そして、バイパス通路13dには、電動ウェストゲートバルブ(本発明のウェストゲートバルブに相当)21が設けられている。また、ターボチャージャ16のタービンハウジング16b下流の排気通路13には、排ガス中のCO、HC及びNOxを浄化する機能を有する三元触媒22が備えられている。
【0019】
ターボチャージャ16は、タービンハウジング16bより導入される排ガスによってタービンを回転させ、当該タービンと同軸に備えられるコンプレッサにてエアクリーナ18より導入された吸入空気を圧縮するものである。
インタクーラ17は、ターボチャージャ16のコンプレッサにて、圧縮され高温となった吸入空気を冷却するものである。
【0020】
電子制御スロットルバルブ18は、燃焼室11に導入される吸入空気の量を調節するものである。そして、電子制御スロットルバルブ18には、スロットルバルブの開き度合を検出するスロットルポジションセンサ18aが備えられている。
エアクリーナ19は、最上流から吸入された吸入空気中のゴミを取り除くものである。
バイパスバルブ20は、ターボチャージャ16のコンプレッサにて圧縮された吸入空気を、バイパス通路12dを介してコンプレッサハウジング16aの上流に迂回させる吸入空気の量を調整するものである。
【0021】
電動ウェストゲートバルブ21は、モータ等の動力にてバタフライ式のバルブを作動させ、バイパス通路13dに流入する排ガスの流量を調整する、即ちターボチャージャ16のタービンハウジング16bに流入する排ガスの流量を調整し、ターボチャージャ16のコンプレッサに圧縮される吸入空気の圧力及び流量を調整するものである。そして、電動ウェストゲートバルブ21には、ウェストゲートバルブの開き度合を検出するポジションセンサが備えられている。
【0022】
吸気マニホールド12bと排気マニホールド13bには、それぞれが連通するように排ガスの一部を吸気へ戻す、即ち排ガスを吸気に再循環させる排気再循環通路23が設けられている。そして、排気再循環通路23は、吸気マニホールド12bの上流に、排ガスが吸気に戻る量、即ち再循環させる排ガスの流量を調整する排気再循環バルブ24を介して接続されている。また、排気再循環通路23には、吸気マニホールド12bに導入する排ガスを冷却する排気再循環クーラ25が設けられている。
【0023】
トランスミッション30は、機械式自動変速装置であり、手動変速装置における変速機の操作(セレクト及びシフト)(本発明の切換手段に相当)及びクラッチの断接をアクチュエータの作動により行うものであり、トルクコンバータを不要とし自動変速を可能とするものである。即ち、トランスミッション30は、車両1の走行状態や運転者の要求に基づき、自動変速を行いエンジン10より入力される動力を増速或いは減速させて、駆動軸等の駆動系構成部品を介してタイヤ62に出力するものである。そして、当該トランスミッション30の変速動作は、後述するトランスミッションコントロールユニット40にて制御される。なお、当該トランスミッション30は、それぞれにクラッチを有する複数の入力軸を備え、各入力軸で予めギヤ段を選択しておき、それぞれのクラッチを断接して各入力軸に入力する動力を切り換えることで瞬時に変速を行うダブルクラッチ式の機械式自動変速装置であっても、単一クラッチを有する一本の入力軸を備え、当該クラッチを切断した後にギヤ段を選択し、ギヤ段の選択後にクラッチを接続して変速するシングルクラッチ式の機械式自動変速装置のいずれであってもよい。
【0024】
トランスミッションコントロールユニット40は、トランスミッション30の変速制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
トランスミッションコントロールユニット40の入力側には、エンジンコントロールユニット50と、運転者が任意に変速を行うためのシフト装置61や、車両1の車速を検出する図示しない車速センサ等の各種センサ類が、電気的に接続されており、これらセンサ類からの検出情報がトランスミッションコントロールユニット40に入力される。
【0025】
一方、トランスミッションコントロールユニット40の出力側には、上記トランスミッション30やエンジンコントロールユニット50等が電気的に接続されており、トランスミッション30での変速を指示する変速指示信号や、エンジンコントロールユニット50でのエンジン10の出力トルクを低減或いは増加を要求するアップシフト要求信号やダウンシフト要求信号等の変速要求信号が出力される。
【0026】
そして、トランスミッションコントロールユニット40は、エンジンコントロールユニット50より供給される車速等の車両の走行状態情報や、シフト装置61より供給される運転者の変速要求に基づいて、トランスミッション30のギヤ段が最適なギヤ段となるようにトランスミッション30の変速制御を行う。また、トランスミッションコントロールユニット40は、エンジンコントロールユニット50より供給される車速等の車両の走行状態情報や、シフト装置61より供給される運転者の変速要求に基づいて変速時に発生するショックを予測し、変速ショックの発生を抑えるためにエンジン10が出力すべきトルクを要求トルクとして演算し、ダウンシフト時にはダウンシフト要求およびダウンシフト要求トルクを、アップシフト時にはアップシフト要求およびアップシフト要求トルクをエンジンコントロールユニット50に供給する。
【0027】
エンジンコントロールユニット50は、エンジン10の運転制御をはじめとして車両10の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
エンジンコントロールユニット50の入力側には、アクセルペダル60の操作量であるアクセル開度を検出するアクセルポジションセンサ60a、図示しないクランク角センサ等のセンサ類や、バイパスバルブ20、電動ウェストゲートバルブ21、排気再循環バルブ24等の各種装置や、車両の車速を検出する図示しない車速センサ等の各種センサ類や、トランスミッションコントロールユニット40が、電気的に接続されており、これらセンサ類からの検出情報がエンジンコントロールユニット50に入力される。
【0028】
一方、エンジンコントロールユニット50の出力側には、上記点火プラグ14、燃料噴射弁15、電子制御スロットルバルブ18、バイバスバルブ20、電動ウェストゲートバルブ21、排気再循環バルブ24等の各種装置及びトランスミッションコントロールユニット40が電気的に接続されており、これら各種装置には各種センサ類からの検出情報に基づき演算された点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度、バイパスバルブ開度、ウェストゲートバルブ開度、排気再循環バルブ開度や、車両の走行状態情報等がそれぞれ出力される。
【0029】
そして、エンジンコントロールユニット50は、アクセルポジションセンサ60aより供給されるアクセル開度に基づいて、エンジン10の出力トルクの制御を行う。また、エンジンコントロールユニット50は、車両1の加速時にトランスミッションコントロールユニット40より供給されるアップシフト要求信号やダウンシフト要求信号等の変速要求信号に基づいて、電動ウェストゲートバルブ21を全開或いは全閉となるように電動ウェストゲートバルブ21を作動させる開弁制御或いは閉弁制御の弁作動制御を行う。更にエンジンコントロールユニット50は、開弁制御或いは閉弁制御の弁作動制御完了後にはエンジン10の出力をトランスミッションコントロールユニット40より供給されるダウンシフト要求トルク或いはアップシフト要求トルクに合わせる制御を行う。
【0030】
以下、このように構成された本発明に係る車両の制御装置が適用された車両1における加速時のトランスミッションコントロールユニット40及びエンジンコントロールユニット50にて実施されるトランスミッション30及びエンジン10の作動制御について説明する。
図3は、本発明に係る車両の制御装置が適用された車両1における加速時のエンジンとトランスミッションの作動制御のフローチャートである。なお、本作動制御は、運転者によりアクセルペダル60が操作され、車両1が加速を開始するような場合に実施される。
【0031】
図3に示すように、ステップS10では、緩加速要求があるか、否かを判別する。詳しくは、運転者により車両1が緩加速を開始するように緩やかに且つ少ない操作量でアクセルペダル60が操作されたか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で運転者により車両1が緩加速を開始するようにアクセルペダル60が操作されていれば、ステップS12に進む。また、偽(No)で、運転者により車両1を緩加速させるようにアクセルペダル60が操作されるのでなく、車両1を急加速させるように急激且つ多い操作量でアクセルペダル60が操作されていれば、ステップS20に進む。
【0032】
ステップS12では、運転者により車両1の緩加速要求があると、トランスミッションコントロールユニット40は、走行状態に合わせてシフトアップが必要な時にエンジンコントロールユニット50にアップシフト要求信号を供給する。そして、ステップS14に進む。
ステップS14では、エンジンコントロールユニット50は、電動ウェストゲートバルブ21を全開にする(本発明の開弁制御に相当)。なお、本ステップでは、エンジンコントロールユニット50は、電動ウェストゲートバルブ21を全開としているが、これに限られるものではなく、電動ウェストゲートバルブ21を開側に作動させてもよい。即ち、ターボチャージャ16のタービンハウジング16bに導入される排ガスの流量が減少するように電動ウェストゲートバルブ21の開度を制御する。そして、ステップS16に進む。
【0033】
ステップS16では、トランスミッションコントロールユニット40の演算結果に応じたトルクへエンジン10の出力を低減する。詳しくは、トランスミッション30の変速時のショックを軽減するために、トランスミッション30の入力軸と同期するように、エンジン10の出力軸の回転速度とトルクをトランスミッションコントロールユニット40の演算結果に合わせて低減する制御を行う。そして、ステップS18に進む。
【0034】
ステップS18では、アップシフト制御を行う。即ち、トランスミッションコントロールユニット40にて、トランスミッション30の作動を制御して、アップシフトを行った後にクラッチを接続する。そして、ステップS28に進む。
また、ステップS20では、運転者により車両1の急加速要求があると、トランスミッションコントロールユニット40は、クラッチの切断後にエンジンコントロールユニット50にダウンシフト要求信号を供給する。そして、ステップS22に進む。
【0035】
ステップS22では、エンジンコントロールユニット50は、電動ウェストゲートバルブ21を全閉にする(本発明の閉弁制御に相当)。なお、本ステップでは、エンジンコントロールユニット50は、電動ウェストゲートバルブ21を全閉としているが、これに限られるものではなく、電動ウェストゲートバルブ21を閉側に作動させてもよい。即ち、ターボチャージャ16のタービンハウジング16bに導入される排ガスの流量が増加するように電動ウェストゲートバルブ21の開度を制御する。そして、ステップS24に進む。
【0036】
ステップS24では、ブリッピング制御を行う。詳しくは、トランスミッション30の変速時のショックを軽減するために、トランスミッション30の入力軸と同期するように、エンジン10の出力軸の回転速度を一時的に上昇させるブリッピング制御を行う。そして、ステップS26に進む。
ステップS26では、ダウンシフト制御を行う。即ち、トランスミッションコントロールユニット40にて、トランスミッション30の作動を制御して、ダウンシフトを行った後にクラッチを接続する。そして、ステップS28に進む。
【0037】
そして、ステップS28では、要求加速を満足したか、否かを判別する。詳しくは、運転者によりアクセルペダル60の操作が緩和、即ちアクセル開度が緩加速要求或いは急加速要求時のアクセル開度に対して減少したか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)でアクセル開度が減少し、要求加速を満足していると判別できれば、本ルーチンをリターンする。また、偽(No)で、アクセル開度が減少しておらず、要求加速を満足していないと判別できれば、ステップS10へ戻る。
【0038】
このように、本発明に係る車両の制御装置では、運転者により車両1の緩加速要求、即ち運転者により車両が緩加速を開始するように緩やかに且つ少ない操作量でアクセルペダル60が操作されると、トランスミッションコントロールユニット40は、シフトアップが必要な時にエンジンコントロールユニット50にアップシフト要求信号を供給する。そして、エンジンコントロールユニット50は、ターボチャージャ16のタービンハウジング16bに導入される排ガスの流量が少なくなるように電動ウェストゲートバルブ21を全開にする。そして、トランスミッション30の変速時のショックを軽減するために、トランスミッション30の入力軸と同期するように、エンジン1の回転速度とトルクをトランスミッションコントロールユニット40の演算結果に合わせて低減する。そして、トランスミッションコントロールユニット40にて、トランスミッション30の作動を制御してアップシフトを行った後にクラッチを接続する。また、運転者により車両1の急加速要求があると、トランスミッションコントロールユニット40は、クラッチの切断後にエンジンコントロールユニット50にダウンシフト要求信号を供給する。そして、エンジンコントロールユニット50は、ターボチャージャ16のタービンハウジング16bに導入される排ガスの流量が多くなるように電動ウェストゲートバルブ21を全閉にする。そして、トランスミッション30の変速時のショックを軽減するために、トランスミッション30の入力軸と同期するように、エンジン10の出力軸の回転速度を一時的に上昇させるブリッピング制御を行う。そして、当該ブリッピング制御後にトランスミッションコントロールユニット40にて、トランスミッション30の作動を制御してダウンシフトを行った後にクラッチを接続する。そして、アップシフト或いはダウンシフトが完了すると運転者によりアクセルペダル60の操作が緩和、即ちアクセル開度が緩加速要求或いは急加速要求時のアクセル開度に対して減少していれば、運転者の要求加速を満足したとして、本制御を終了している。
【0039】
したがって、車両1の緩加速時におけるアップシフト開始前に電動ウェストゲートバルブ21を全開或いは開側に作動させることで、瞬時にターボチャージャ16への排ガスの導入量を減少させ、ターボチャージャ16による吸気の過給を停止させてエンジン10の燃焼室11に導入される空気量を減少させることができるので、エンジン10の出力トルクを瞬時に低下させることができる。
【0040】
よって、アップシフト開始前に、瞬時に、そして十分にエンジン10の出力トルクを低下させることができるので、変速時間の長期化やエンジン10及びトランスミッション30の耐久性悪化を防止することができる。
また、エンジン10の出力トルクの低下を点火時期のリタード(遅角化)で行っていないので、未燃ガスの排出による三元触媒22の劣化を抑制することができる。
【0041】
また、車両1の急加速時にトランスミッションコントロールユニット40よりエンジンコントロールユニット50にダウンシフト要求信号が供給されると、電動ウェストゲートバルブ21を全閉或いは閉側に作動させて、ターボチャージャ16への排ガスの導入量を増加させ、ターボチャージャ16による吸気の過給を行いエンジン10の燃焼室11に空気を積極的に導入することで、急加速におけるダウンシフト時にエンジン10の回転速度をトランスミッション30の入力軸の回転速度に追従を良くすることができるので、変速時間を短縮することができる。
【0042】
また、電動ウェストゲートバルブ21を全閉或いは閉側に作動させることで、ダウンシフト完了後の吸気の過給立ち上がりを早くすることができ、エンジン10の出力トルクの立ち上がりを早くすることができるので、運転者の操作に対する車両1の加速レスポンスを向上させることができる。
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、本実施形態は、ステップS22での処理を、電動ウェストゲートバルブ21を全開或いは開側に作動させるようにしているが、これに限定されるものではなく、電動ウェストゲートバルブ21の全開或いは開側への作動後に、電子制御スロットルバルブ18の閉側への作動、や点火時期のリタード(遅角化)を行ってもよい。このように、車両の緩加速におけるアップシフト時に電動ウェストゲートバルブを開側への作動と共に、電子制御スロットルバルブ18の閉側への作動或いは点火時期のリタード(遅角化)を実施することで、更にエンジン10の出力トルクを低下させることができる。
【0044】
また、車両1における加速時のエンジン10とトランスミッション30の作動制御を、運転者によりアクセルペダル60が操作され、車両1が加速を開始するような場合に実施するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、運転者によりシフト装置61が操作され、変速要求があるような場合に、本作動制御を行うようにしても良い。
さらに、上記タービンの同軸上に配置されるものはコンプレッサに限らず、例えば発電機やファンが装着されても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
10 エンジン(内燃機関)
12 吸気通路
13 排気通路
13d バイパス通路
16 ターボチャージャ(過給手段)
18 電子制御スロットルバルブ(吸入空気量調整手段)
21 電動ウェストゲートバルブ(ウェストゲートバルブ)
30 トランスミッション(機械式自動変速機)
40 トランスミッションコントロールユニット(第1制御手段)
50 エンジンコントロールユニット(第2制御手段)
図1
図2
図3