【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様において、被験者の鼻腔の後部に振動を与えることにより、視床下部の活動を刺激するように配置された膨張可能な刺激部材と;刺激部材を膨張させるように配置された膨張部材であって、少なくとも部分的に刺激部材内に配置された、刺激部材と流体連通するように配置された複数の開口部を有する管状構造を備える膨張部材と;膨張部材に接続され、刺激部材を振動させるように配置された振動部材とを備える、被験者の視床下部を刺激するためのデバイスが提供される。
【0013】
第1の態様によるデバイスを用いた鼻腔の後部の振動刺激は、これにより、視床下部の活動に影響を与える。視床下部の活動は、異なる定性的および/または定量的方法によって直接または間接的に測定され得る。特に、たとえば血流、酸素消費、および代謝活動等の生理学的パラメータの変化は、視床下部の活動のレベルの変化に相関する。したがって、このような生理学的パラメータを、視床下部の活動の
レベルとして使用することができる。視床下部の活動を機能的神経イメージング等により直接モニタできるようにする
レベルもあり;異なる身体反応、たとえば瞳孔の大きさおよび心臓の活動等により間接的にモニタできるようにする
レベルもある。
【0014】
第1の態様によるデバイスを用いて治療される患者の現在の健康状態に応じて、刺激は、視床下部の活動のレベルを多少異なって変更することができる。たとえば、視床下部の異常な活動に関連する病状を持つ患者を第1の態様によるデバイスを用いて治療する場合、刺激によって視床下部の活動が正常になり得る。この状況における正常化とは、視床下部の活動が周囲脳組織の活動に匹敵する状態を指すことができる。片頭痛発作中の片頭痛患者には、たとえば、視床下部における高い酸素消費が確認されている。第1の態様によるデバイスを用いた刺激により、患者の視床下部の酸素消費を低下させ;片頭痛発作を終わらせることにより、患者を正常かつ健康な状態に戻すことができる。
【0015】
第1の態様によるデバイスは、鼻腔の後部に振動を与えるように配置される。より詳細には、第1の態様のデバイスは、下鼻甲介、中鼻甲介および/または上鼻甲介の一部、たとえば下鼻甲介および中鼻甲介の後ろ2/3等の、鼻腔の骨構造に振動刺激を与えるように配置され得る。中鼻甲介および上鼻甲介は頭蓋底に付着しているため、中鼻甲介および上鼻甲介に与えられる振動が、視床下部に機械的に伝達され得る。
【0016】
第1の態様によるデバイスは、鼻腔の後部の振動刺激に特に適合される。膨張部材の管状構造は、刺激部材の内部と流体連通するための複数の開口部を備える。鼻腔の複雑な解剖学的構造のために刺激部材の長さに沿った場所に閉塞がある場合でも、これらの開口部により、刺激部材は、鼻腔の後部に位置するときに結果的に確実に膨張する。複数の開口部は、鼻腔の後部での刺激部材の正確な挿入および位置決めを容易にする可撓性を有する管状構造をさらに提供する。好ましくは、刺激部材が非膨張状態で鼻腔に導入される。
【0017】
一実施形態では、膨張部材が管状構造と流体連通して配置された細長構造をさらに備え、好ましくは、細長構造が刺激部材の実質的に外側に配置される。
【0018】
一実施形態では、刺激部材が鼻腔の後部の組織に当接するように配置される。したがって、刺激部材は、鼻腔の後部の組織に直接接触する。さらに、刺激部材は、鼻腔の後部の組織に、たとえば約70〜110mbar、約80〜110mbar、約90〜105mbar、およびたとえば約75〜100mbarのような約70〜120mbarの圧力で当接するように配置され得る。
【0019】
別の実施形態では、刺激部材が、40〜100Hzの周波数の振動を鼻腔の後部に与えるように配置され得る。したがって、振動刺激が、1つの選択された周波数、たとえば68Hz、または約50〜80Hz、約50〜75Hz、約50〜70Hz、約55〜75Hz、約60〜75Hz、および約60〜70Hz等の所定の周波数間隔内の複数の周波数で実行され得ることを理解されたい。
【0020】
一実施形態では、刺激部材が、視床下部に影響を与えるが鼻腔には影響を与えないように配置される。したがって、デバイスは、振動刺激を鼻腔の後部に与えて視床下部を選択的に刺激することができるが、たとえば、被験者の鼻腔の前部での振動刺激の影響が全く、または最小限しか確認することができない。このような選択的な視床下部刺激は、たとえば、頭蓋、たとえば中鼻甲介および/または上鼻甲介の一部に接続された骨構造に振動刺激を与えることによって達成され得る。
【0021】
一実施形態では、管状構造の長手方向に実質的に垂直な第1の方向への管状構造の曲げ剛性が、第1の方向および管状構造の長手方向に実質的に垂直な第2の方向への曲げ剛性とは異なる。したがって、管状構造は、矢状面における鼻腔の、時には不規則な形状に従うのに十分な弾性を有する。同時に、鼻への導入中に誤って横方向に曲がることが避けられる。
【0022】
一実施形態では、膨張部材の管状構造が一端部に1つの開口部を有し、前記1つの開口部が刺激部材内に、刺激部材の内部と流体連通して自由に配置される。端部開口部の自由配置によって、鼻腔内の敏感な組織を傷つけるおそれのある突出部分を避けることにより刺激部材の平滑表面の維持を容易にすることができる。
【0023】
一実施形態では、膨張部材の管状構造の前記端部から刺激部材内の内壁までの距離が、約1〜約10mmの範囲にある。この距離は、刺激部材が膨張するときに実質的に変化しないとされ得る。刺激部材が弾性である一部の例では、この距離が、以下で第2の状態とも呼ばれる膨張状態に刺激部材が配置されるときの、刺激部材の内壁までの距離を指すことができる。
【0024】
一実施形態では、複数の開口部が管状構造の長手方向に沿って分散される。複数の開口部は、たとえば、長手方向に沿って管状構造の対向側部に交互に配置され得、長手方向に垂直な管状構造の横断面が、両側の1つの開口部のみに交差する。管状構造の長手方向に沿って分散された開口部の数は、5等の4〜6とすることができる。楕円形切欠きであり得る複数の開口部は、約1〜約5mmの範囲の大きさを独立して有することができる。したがって、すべての開口部が同一の大きさまたは形状を有する必要はない。
【0025】
一実施形態では、膨張部材の管状構造が、約2〜約4mm等の約1〜約5mmの範囲の外径を有する。約5mm以下の直径により、鼻孔および鼻腔への導入ならびに鼻腔の後部での位置決めがさらに容易になり得る。
【0026】
一実施形態では、膨張部材の細長構造は管状で、膨張部材の管状構造の直径の2〜4倍の直径を有する。したがって、振動刺激中に主に鼻腔内に位置することになる膨張部材の部分である管状構造は、主に鼻腔の外側に位置することになる膨張部材の部分である細長構造よりも小さい直径を有する。
【0027】
一実施形態では、刺激部材内に配置される前記管状構造の部分の長さが、約40〜約60mmである。この管状構造の長さにより、鼻腔の後部への刺激部材の挿入および位置決めがさらに容易になり得る。
【0028】
一実施形態では、約5〜約15mmの長さを有する、膨張部材の細長構造の部分が、刺激部材内に配置される。この細長構造の部分は、管状構造の末端、好ましくは管状構造の端部を囲むことができる。細長構造のこの部分の周りに配置された刺激部材は、好ましくは、デバイスが使用されているときに、わずかにのみ膨張することができる。
【0029】
一実施形態では、デバイスは、刺激部材を鼻腔に導入するための、鼻腔に対する刺激部材の好ましい角度方向を示す可視マーク(visual marking)をさらに備える。このような可視マークにより、鼻腔への導入が容易になる。
【0030】
一実施形態では、刺激部材が、鼻腔の後部の組織に当接するように配置された刺激部と;鼻腔の前部の組織に当接するように配置された保持部とをさらに備え、刺激部が、鼻腔の後部に振動を与えることにより視床下部を刺激するように配置される。したがって、刺激部は、視床下部の刺激を達成するために鼻腔の後部に振動を与えるように配置され、保持部は、周囲組織に振動を与えることなく、振動刺激中に鼻腔内の固定位置で刺激部材を保持するように配置され得る。
【0031】
一実施形態では、保持部は、刺激部材内に配置された膨張部材の細長構造の部分を含む。したがって、保持部は、少なくとも細長構造の一部および刺激部材の一部を含むことができる。この細長構造の部分は、鼻孔等の鼻腔の外側部分で刺激部材の保持を有効にする大きさ、すなわち直径を有することができる。あるいは、少なくとも部分的に膨張した刺激部材と組み合わせた細長構造により、鼻孔等の鼻腔の外側部分での保持を有効にする。
【0032】
一実施形態では、膨張部材が、刺激部材に流体を供給するためのような、刺激部材と流体連通するように配置された少なくとも1つのチャネルを備える。膨張部材が管状構造および細長構造を備えた実施形態では、チャネルが2つの構造を互いに、かつ刺激部材の内部と流体接続する。
【0033】
一実施形態では、刺激部材が、刺激部材を被験者の鼻腔に導入可能な第1の状態と、刺激部材が鼻腔の後部の組織に当接するようになる体積まで刺激部材が膨張した第2の状態とに配置可能である。
【0034】
本発明の他のデバイス態様は、被験者の鼻腔の後部に振動を与えることにより視床下部の活動を刺激するように配置された刺激部材を備える、被験者の視床下部を刺激するためのデバイスを含む。
【0035】
さらなるデバイス態様は、被験者の鼻腔の後部に振動を与えることにより、視床下部の活動を刺激するように配置された膨張可能な刺激部材と、刺激部材を膨張させるように配置された膨張部材とを備え、膨張部材が、少なくとも部分的に刺激部材内に配置された、刺激部材と流体連通するように配置された少なくとも1つの開口部を有する管状構造と、管状構造と流体連通して配置された、管状で膨張部材の管状構造の2〜4倍の直径を有する細長構造とを備える、被験者の視床下部を刺激するためのデバイスを提供する。
【0036】
一実施形態では、デバイスが、刺激部材を振動させるように配置された振動部材をさらに備え、刺激部材が膨張可能であり、刺激部材を被験者の鼻腔に導入可能な第1の状態と、刺激部材が鼻腔の後部の組織に当接するような体積まで刺激部材が膨張した第2の状態とに配置可能である。第1の状態では、刺激部材が、人の鼻孔および鼻腔への導入を容易にするように、実質的に非膨張状態に配置される。第2の状態では、刺激部材が、鼻腔の後部の周囲組織に直接接触するような体積まで膨張される。膨張は、たとえば、刺激部材を第2の状態まで膨張させるように配置された膨張部材によって行われ得る。この膨張は、刺激部材に供給される流体によって達成され、したがってこのような流体を取り囲むように配置され得る。刺激部材は、鼻腔の後部で膨張すると、振動部材により振動される。振動は、たとえば流体を刺激部材の内外へ汲み出すことにより、組織に伝達され得る。
【0037】
一実施形態では、刺激部材が膨張可能であり、視床下部を刺激するためのデバイスが、刺激部材を膨張させるように構成された膨張部材をさらに備える。膨張部材は、好ましくは、流体を刺激部材に供給することにより前記膨張を達成するための少なくとも1つのチャネルを備える。刺激部材は、たとえば膨張部材を部分的に囲むように配置され、膨張部材が刺激部材内に少なくとも部分的に配置されるようにする。
【0038】
本発明の一態様に関して開示された実施形態は、必要に応じて、本発明の他の態様にも関連することを理解されたい。
【0039】
別の態様では、第1の態様等の本発明のデバイス態様によるデバイスと;視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号の時間サンプルを取得するように配置されたデータ収集モジュールと;入力信号の少なくとも1つの前に取得された時間サンプルを記憶するように配置されたメモリ・モジュールと;入力信号および前に取得された時間サンプルを処理するように配置された解析モジュールと;デバイスの刺激部材により鼻腔の後部に与えられる振動の周波数を調節するように配置された周波数調整モジュール;刺激部材により鼻腔の後部に与えられる振動の振幅を調節するように配置された振幅調整モジュール、および刺激部材が鼻腔の後部の組織に当接する圧力を調節するように配置された圧力調整モジュールの少なくとも1つとを備える、被験者の鼻腔の後部に振動を与えることにより被験者の視床下部を刺激するためのシステムが提供される。
【0040】
本発明の他の態様に関して開示された実施形態は、必要に応じて、本発明のシステム態様にも関連することを理解されたい。したがって、システムは、たとえば、デバイス態様において定義された個々の実施形態によるデバイスを備えることができる。
【0041】
時間サンプルは、特定の時点の少なくとも1つの測定値または記録値と理解すべきである。時間サンプルは、入力信号の値、刺激部材により与えられる振動の周波数、刺激部材により与えられる振動の振幅、および/または刺激部材が組織に当接する圧力、ならびに治療開始から経過した時間の1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0042】
前述したシステム態様によるシステムにおいて、パラメータ振動周波数、振動振幅、および当接圧力の少なくとも1つが独立して調整され得る。振動周波数および圧力の例示的な範囲が、デバイス態様に関連して開示される。システムの調整モジュールは、手動で、または制御ユニットにより制御され得る。システムは、たとえば、周波数調整モジュール、振幅調整モジュール、および圧力調整モジュールから選択された、少なくとも2つの調整モジュールを備えることができる。別の例では、システムが、周波数調整モジュール、振幅調整モジュール、および圧力調整モジュールを備える。
【0043】
一実施形態では、解析モジュールが、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号が第1の閾値に達したときに、鼻腔の後部の刺激を終了させるように配置される。したがって、解析モジュールは、入力信号を第1の閾値と比較して、第1の閾値を超えたときに、鼻腔内の刺激を終了させるよう命令を発する。これにより、閾値への到達は、視床下部の刺激の所望のレベルの達成を表し、刺激を終了させるべきであることを示す。第1の閾値は、絶対的または相対的に予め判定され、または計算され得る。たとえば、視床下部の活動の第1の閾値は、視床下部周囲の脳の部分の活動のレベルに対応するものとして、相対的または絶対的に定義され得る。
【0044】
しかしながら、一部の患者は、第2の鼻腔内に振動を与えることによる、さらなる視床下部の刺激を必要とする可能性がある。したがって、別の実施形態では、解析モジュールが、視床下部の活動の
レベルが第2の閾値に達したときに、第1の鼻腔内での刺激を終了させて、第2の鼻腔の後部の刺激を提案するように配置される。第1の閾値と対照的に、第2の閾値は、刺激を第1の鼻腔内で終了させ第2の鼻腔内で継続すべきである、視床下部の活動のレベルを表す。したがって、第1の鼻腔内での刺激は、同一の鼻腔内における継続した刺激が患者にこれ以上利点を与えない飽和レベルに到達した可能性がある。このような場合、第2の閾値は、刺激を患者の第2の鼻腔内で継続すべきであることを示す。第1の閾値と同様に、第2の閾値は、視床下部の活動の
レベルの変化率のあるレベルを反映することができる。
【0045】
一実施形態では、メモリ・モジュールが、入力信号の前に取得された時間サンプルの履歴、ならびに、履歴内の入力信号の前に取得された値のそれぞれに関連する印加周波数、印加振幅、および印加圧力の少なくとも1つを記憶するようにさらに配置される。前に取得された時間サンプルの履歴は、振動刺激中に連続して収集された複数の時間サンプルであってもよい。
【0046】
一実施形態では、解析モジュールが、前記履歴を処理し、入力信号の変化と周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つとの相関を特定し、さらに前記相関を含むデータベースを作成するように、さらに配置される。処理は、入力信号のほぼ一定の値の期間の特定と、それに続く振動パラメータの1つまたはそれ以上の調節および入力信号の対応する変化を含み得る。このような事象から、振動パラメータおよび入力信号の相関が特定され得る。このような相関の一例は、圧力が上昇するときの入力信号の増加である。これらの相関を記憶する例示的な方法は、現在の入力信号値、入力信号の所望の変化(たとえば増加または減少)、および現在の振動パラメータを考慮して振動パラメータの必要な調節を調べることのできるデータベースにあるであろう。
【0047】
別の代替例は、たとえば、入力信号の2つの取得された個々の値または時間サンプルを比較することにあり得る。したがって、別の実施形態では、解析モジュールが、入力信号を入力信号の前に取得された値または時間サンプルと比較し、入力信号および前に取得された値もしくは時間サンプルの差が閾値許容範囲にある場合に、周波数調整モジュール、振幅調整モジュール、および圧力調整モジュールの少なくとも1つに、周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つを調節するよう指示するように配置される。この閾値許容範囲は、ある刺激設定についての視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号の最小の必要な変化として定義され得る。理解できるように、視床下部の活動に対する特定の所望の効果に応じて、閾値許容範囲を多少異なって定義してもよい。閾値許容範囲は、たとえば、被験者の視床下部の刺激中に予め判定され、計算され、または導き出されてもよく、絶対的または相対的に表されてもよい。
【0048】
前もしくは後の値または時間サンプルは、たとえば、入力信号の2つの連続して取得された値であり得る。あるいは、前に取得された値は、たとえば、最後のn個(nは整数)のサンプルの平均として;前に取得されたすべての値の加重平均として、または前および後に取得された値の関数として定義され得る。(1つまたは複数の)前の値は、メモリ・モジュールに記憶される。
【0049】
前および後に取得された値の差が小さすぎる場合、または閾値許容範囲内にあるか、誤った符号を有する場合、周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つが調節される。前記パラメータの調節は、たとえば、入力信号の差が所望通りになるまでランダムに、または予め定義された格子からの設定を適用することにより、もしくは発見的探索を適用することにより体系的に行うことができる。あるいは、前のパラメータ設定を、メモリ・モジュールの対応する取得値と、視床下部の活動の変化が最も多く特定され得る多次元パラメータ空間の方向と共に記憶することができる。続いて、特定された方向に沿った新しいパラメータ設定を試験することができる。一実施形態では、ランダム調節と;所望の活動レベル変化と周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つとの相関を含む、予めプログラムされたルックアップ・テーブルから計算された調節と、解析モジュールにより特定された相関を含むデータベースから計算された調節とから選択された方法を使用して、調節を行うことができる。前記パラメータをこのような構造化された方法で調節することにより、視床下部の活動の所望のレベルの達成が簡単になり、最適化され得る。
【0050】
一実施形態では、解析モジュールは、入力信号が視床下部の活動の所望のレベルを反映する所望値に近付いているか否かを判定するようにさらに配置され、前記判定が、入力信号および所望値の差を、前に取得された値または時間サンプルおよび所望値の差と比較す
ることを含み、かつ目標
レベルに近付いていないと判定された場合に、周波数調整モジュール、振幅調整モジュール、および圧力調整モジュールの少なくとも1つに、ランダム調節と;予め定義された格子からの設定を適用することにより計算された調節と、発見的探索を適用することにより計算された調節と、所望の活動レベル変化と周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つとの相関を含むルックアップ・テーブルから計算された調節と;解析モジュールにより特定された相関を含むデータベースから計算された調節とから選択された方法を使用して、周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つを調節するよう指示するように配置される。このように、治療を人の個人差に適合させることができる。1人の患者の所望の視床下部の活動を達成する振動パラメータは、別の患者に対して調節されなければならない場合がある。この手順を自動化すれば、振動刺激治療を行うスタッフの教育の必要性を減らすことができる。さらに、有効な振動刺激治療についてのさらなる知識が時間と共に蓄積されて、治療を継続的に改善することができる。
【0051】
一実施形態では、解析モジュールが、最大刺激期間に達したときに刺激を終了させるようにさらに配置される。最大刺激時間は、どの活動レベルが達成されているかに関係なく、その後で刺激が終了され最大期間として定義され得る。これは、予想通りに治療に反応せず特別な注意が必要な患者を検出する方法として見ることができる。システムは、医師の介入なしで患者の自動治療を良好に施すことができる。訓練を受けた看護師または同様のスタッフが、治療開始のための工程を行うことができる。しかしながら、特定の最大刺激期間内に所望の活動レベルを達成できない場合がある。このような場合には、自動治療セッションを終了させることができ、より高度な訓練を受けた医療専門家が、手動で制御された治療を継続するか、または他の行為を行うことができる。デバイス態様に関連して説明したように、視床下部の活動の異なる可能な
レベルまたは推定値がある。システム態様の一実施形態では、視床下部の活動の
レベルが、機能的神経イメージングにより取得される。これは、データ収集モジュールが受ける入力信号が、機能的神経イメージングにより測定された視床下部の活動をこうして反映することを意味する。より詳細には、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号が、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により測定された酸素消費、陽電子断層撮影法(PET)により測定された代謝活動、脳磁気図記録法(MEG)により測定された磁気信号、および脳波検査法(EEG)により測定された電気信号からなる群から選択され得る。このような
レベルおよびモニタ方法は、視床下部の活動の直接的な
レベルの例である。新規の改良された方法およびデバイスが、機能的神経イメージングの分野において開発され、本発明の態様で使用可能となることが予想される。
【0052】
あるいは、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号が、たとえば心拍数と;瞳孔の大きさと;体温、痛覚、および血圧とからなる群から選択された
レベル等の、視床下部の活動を反映する異なる身体反応に基づいていてもよい。このような
レベルは、一般に、視床下部の活動の間接的な
レベルと考えられる。痛覚は、患者が経験する痛みの主観的または客観的な推定と理解すべきである。
【0053】
別の実施形態では、システムが、複数の幾何学的に異なる刺激部材を備える。複数の刺激部材は、たとえば、形状ならびに長さ、幅および/または直径が異なっていてもよい。刺激部材を複数の刺激部材から選択して使用することにより、鼻の解剖学的構造の差による刺激の差が減少する。システムが解析モジュールを備える実施形態では、このようなモジュールが、視床下部の刺激によって受ける反応を予想反応範囲と比較するようにさらに配置され得る。受ける反応が予想範囲に対応しない場合、解析モジュールは、それに応じて、たとえば、操作者に刺激部材を交換するよう促すことができる。
【0054】
他のシステム態様では、本発明の第1の態様により定義されたデバイスと;視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号を取得するように配置されたデータ収集モジュールと;第1の態様によるデバイスの刺激部材により鼻腔の後部に与えられる振動の周波数を調節するように配置された周波数調整モジュール;刺激部材により鼻腔の後部に与えられる振動の振幅を調節するように配置された振幅調整モジュール、および刺激部材が鼻腔の後部の組織に当接する圧力を調節するように配置された圧力調整モジュールの少なくとも1つとを備える、被験者の視床下部を刺激するためのシステムが提供される。
【0055】
一実施形態では、システムが、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号を解析するように配置された解析モジュールをさらに備え、視床下部の活動の
レベルの解析に基づく解析モジュールが、周波数調整モジュール、振幅調整モジュール、および圧力調整モジュールの少なくとも1つに、周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つを調節するよう指示するように配置される。解析は、たとえば、所定の刺激期間後に、視床下部の活動の
レベルを活動の目標レベルと比較すること、および活動の目標レベルが達成されない場合に前記パラメータの少なくとも1つを調節することを伴ってもよい。別の代替例は、たとえば、入力信号の2つの取得された個々の値を比較することにあってもよい。したがって、別の実施形態において、解析モジュールは、入力信号の前に取得された値を入力信号の後に取得された値と比較し、後に取得された値および前に取得された値の差が閾値許容範囲内にある場合に、調整モジュールに前述の通りに指示するように配置される。この閾値許容範囲は、ある刺激設定についての視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号の最小の必要な変化として定義され得る。理解できるように、視床下部の活動に対する特定の所望の効果に応じて、閾値許容範囲を多少異なって定義してもよい。閾値許容範囲は、たとえば、被験者の視床下部の刺激中に予め判定され、計算され、または導き出されてもよく、絶対的または相対的に表されてもよい。
【0056】
本発明のデバイスおよびシステム態様に関連して説明した実施形態および例は、必要に応じて、本発明の以下の方法態様に等しく関連するものであることを理解されたい。
【0057】
さらなる態様では、第1の態様によるデバイスの刺激部材を被験者の鼻腔に導入する工程と;鼻腔の後部の治療部位を選択する工程と;選択された治療部位の組織に当接するように刺激部材を配置する工程と;少なくとも1つの視床下部刺激周波数を選択する工程とを含む、被験者の視床下部の刺激を準備するための方法が提供される。理論上の推定および/または本発明による視床下部の刺激から前に収集されたデータに基づいて、刺激を準備する方法は、より効率的な視床下部の刺激を可能にするために、たとえば刺激部材の改良された位置決め、および視床下部への振動の伝達を行うことができる。これにより、治療期間を比較的短くすることができる。したがって、この方法により、被験者の治療法を準備し選択する。準備方法は、特定の患者についての第1の1回のみの治療、または第2のもしくはさらなる回の治療を準備することを目的とすることができる。方法が、特定の
患者についての第2のまたはさらなる回の治療を準備することに関する場合、視床下部の活動の
レベル、および前回の治療中に使用され収集されたパラメータ等のデータが、第2のもしくはさらなる回の治療のパラメータの選択の基礎となり得る。
【0058】
鼻腔の後部の治療部位は、視床下部の振動刺激の効果を最大化するように選択され得る。治療部位の選択は、理論的なモデリング、特定の患者についての解剖学的詳細の知識、または特定の患者についての前回の治療の結果に基づくことができる。場合によって、骨構造のある部分、たとえば、鼻腔の後部の下鼻甲介および中鼻甲介の後ろ2/3等の下鼻甲介、中鼻甲介および/または上鼻甲介の一部が刺激部材に接触するように、治療部位が選択され得る。
【0059】
準備方法は、視床下部の刺激についての第1または第2の閾値を選択する工程をさらに含むことができる。第1および第2の閾値は、本発明のシステム態様において定義され、したがって、刺激を第1の(または第2の)鼻腔内で終了させ、場合によって第2の鼻腔内で継続させることのできる活動のレベルを表す。
【0060】
準備方法は、選択された治療部位の組織に、たとえば約70〜110mbar、約80〜110mbar、約90〜105mbar、たとえば約75〜100mbar等の約70〜120mbarの圧力で当接するように刺激部材を配置する工程をさらに含むことができる。さらに、視床下部刺激周波数を、40〜100Hzの範囲から選択することができる。すなわち、選択された周波数は、たとえば約50〜75Hz、約50〜70Hz、たとえば約60〜75Hz、および約60〜70Hz等の約50〜80Hzにあってもよい。
【0061】
さらなる方法態様では、被験者の鼻腔の後部に振動を与える工程を含む、被験者の視床下部を刺激するための方法が提供される。したがって、視床下部の活動は、刺激方法により影響され得る。加えて、かつ前述したように、複数の疾患は視床下部の機能障害を特徴とする。被験者の少なくとも第1の鼻腔の後部に視床下部刺激振動治療を行うことにより、方法はこうして、たとえば片頭痛、メニエール病、高血圧、群発頭痛、不整脈、ALS、過敏性腸症候群、睡眠障害、糖尿病、肥満、多発性硬化症、耳鳴り、アルツハイマー病、気分障害、不安障害、およびてんかん等の視床下部の機能障害を特徴とする疾患を持つ患者に対して代替療法を提供することができる。
【0062】
振動刺激は、約40〜100Hzの範囲から選択された少なくとも1つの周波数で振動を与える工程をさらに含むことができる。刺激方法は、約70〜120mbarの圧力を鼻腔の後部の組織に及ぼす工程をさらに含むことができる。振動周波数および圧力のさらなる例は、本発明のデバイス態様に関連して開示される通りである。
【0063】
方法は、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号を取得する工程と;鼻腔の後部に与えられる振動の周波数;鼻腔の後部に与えられる振動の振幅;および鼻腔の後部の組織に及ぼされる圧力の少なくとも1つを調節する工程とをさらに含むことができる。
【0064】
一実施形態では、方法が、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号を取得する工程と;鼻腔の後部に与えられる振動の周波数、鼻腔の後部に与えられる振動の振幅、および鼻腔の後部の組織に及ぼされる圧力の少なくとも1つと共に、前記入力信号の連続時間サンプルを記憶する工程とを含む。
【0065】
一実施形態では、方法が、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号が第1の閾値に達したときに、鼻腔の後部内の振動刺激を終了させる工程をさらに含む。方法は、鼻腔が第1の鼻腔である場合に、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号が第1の鼻腔内の刺激について第2の閾値に達したときに、被験者の第2の鼻腔の後部に振動を与える工程をさらに含むことができる。したがって、第2の閾値が達成されたときに、振動刺激が第1の鼻腔内で終了され、第2の鼻腔内で継続される。方法態様の第1および第2の閾値は、システム態様の第1および第2の閾値と同様に定義される。
【0066】
別の実施形態では、方法が、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号を解析する工程と、周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つを視床下部の活動の
レベルの解析に基づいて調節する工程とを含む。一実施形態では、方法が、入力信号を入力信号の前に取得された値または時間サンプルと比較する工程と、後に取得された値および前に取得された値の差が閾値許容範囲内にある場合に周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つを調節する工程とをさらに含む。前に取得された値、閾値許容範囲、および調節方法は、本発明のシステム態様に関連して定義された通りである。前記調節する工程は、たとえば、ランダム調節と;予め定義された格子からの設定を適用することにより計算された調節と;発見的探索を適用することにより計算された調節と;所望の活動レベル変化と周波数、振幅
、および圧力の少なくとも1つとの相関を含む予めプログラムされたルックアップ・テーブルから計算された調節と;記憶された時間サンプルの変化と周波数、振幅、および圧力の記憶された少なくとも1つの変化との相関を特定することにより計算された調節とから選択された方法を使用して実行され得る。
【0067】
一実施形態では、方法が、入力信号が視床下部の活動の所望のレベルを反映する所望値に近付いているか否かを判定する工程をさらに含み、前記判定する工程が、入力信号および所望値の差を前の時間サンプルおよび所望値の差と比較する工程を含み;かつ所望値に近付いていないと判定された場合に、ランダム調節と;予め定義された格子からの設定を適用することにより計算された調節と;発見的探索を適用することにより計算された調節と;所望の活動レベル変化と周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つとの相関を含むルックアップ・テーブルから計算された調節と;ならびに記憶された時間サンプルの変化と周波数、振幅、および圧力の記憶された少なくとも1つの変化との相関を特定することにより計算された調節とから選択された方法を使用して周波数、振幅、および圧力の少なくとも1つを調節する工程を含む。
【0068】
一実施形態では、方法が、最大刺激時間に達したときに刺激を終了させる工程をさらに含む。
【0069】
一実施形態では、方法が、機能的神経イメージングにより、視床下部の活動の
レベルを反映する入力信号を取得する工程をさらに含む。機能的神経イメージングにより取得可能な視床下部の活動の
レベルの例は、本発明のデバイスおよびシステム態様に関連して定義される。機能的神経イメージング以外の方法により取得可能な視床下部の活動の
レベルの例は、デバイスおよびシステム態様に関連して定義された異なる身体反応である。
【0070】
一実施形態では、方法が、鼻腔の後部の治療部位を選択する工程と、選択された治療部位に振動を与える工程とをさらに含む。
【0071】
一実施形態では、振動刺激が、a)鼻腔の後部の振動刺激のために配置された刺激部材を備えたデバイスを設ける工程と、b)好ましくは実質的に非膨張状態の刺激部材を、被験者の鼻腔の後部に導入する工程と、c)鼻腔の後部の周囲組織に圧力を及ぼすように刺激部材を膨張させる工程と、d)刺激部材を鼻腔の後部内で振動させる工程とを含む。振動デバイスの例は、本発明のデバイス態様に開示されたデバイスである。方法の一実施形態では、本発明のシステム態様で説明したシステムが使用される。
【0072】
結果として、本発明のデバイスおよびシステム態様の実施形態は、必要に応じて方法態様に関連する。
【0073】
a)で設けられるデバイスは、膨張可能な刺激部材と、刺激部材内に少なくとも部分的に配置される管状構造とを備えることができ、管状構造は、刺激部材と流体連通するように配置された複数の開口部を備える。
【0074】
方法は、刺激部材を実質的に非膨張状態にする工程と;刺激部材を鼻腔から取り外す工程と;被験者の第2の鼻腔内で前記工程b)〜d)を繰り返す工程とをさらに含むことができる。
【0075】
本発明のさらなる目的および特徴が、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになろう。
【0076】
ここで例示的な実施形態であり、同一の要素が同一の符号で示される図を参照する。