特許第6108300号(P6108300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6108300複合体及びその作製方法及びそれらを含有するフライングセイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108300
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】複合体及びその作製方法及びそれらを含有するフライングセイル
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/06 20060101AFI20170327BHJP
   B64C 31/036 20060101ALI20170327BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   B32B27/06
   B64C31/036
   B32B27/40
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-208540(P2012-208540)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-67169(P2013-67169A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】1158412
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512246064
【氏名又は名称】ポルシェ インダストリ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ステファン, ヴェラン
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01114771(EP,A1)
【文献】 特開2005−231192(JP,A)
【文献】 実開平02−106439(JP,U)
【文献】 実開昭61−043032(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0170720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B64C 31/036
B64D 17/02
D63H 9/06
D03D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された同一の又は異なる2枚のポリウレタン(PU)フィルムを含み、前記2枚のPUフィルムの間に、強化メッシュと、少なくとも1つの所定の応力線に沿って方向付けられた少なくとも1本の織地強化スレッドとが挿入され、
前記ポリウレタンが、芳香族又は脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタン、または、
脂肪族ポリエステルベースのポリウレタンである、複合体。
【請求項2】
前記PUフィルムが溶着によって互いに接合されている、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記PUフィルムが積層によって互いに接合されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項4】
前記メッシュが、2〜20mmに及ぶメッシュ開口を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記メッシュが、4〜15mmに及ぶメッシュ開口を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
強化布地が、複合体の内側に配置され、複合体の一部に対して並べられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
前記布地が、PU接着剤によって複合体の内側に積層されている、請求項に記載の複合体。
【請求項8】
前記PUフィルムは、5μm〜50μmの間の厚さを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
前記PUフィルムは、10MPa〜100MPaの間の弾性率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記PUフィルムは、5g/m2〜25g/m2の間の重量を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
前記PUフィルムは、100%以上の破断点伸びを有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1種の複合体を含むセイル。
【請求項13】
フライングセイルからなる、請求項12に記載のセイル。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合体からなる前縁、及び/又は請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合体からなる内部パーティションを含む、パラグライダーセイル。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合体からなる前縁を含み、請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合体からなるサスペンド型の内部パーティションを含む、パラグライダーセイル。
【請求項16】
複合体で作製されたサスペンド型のパーティションを含み、サスペンド型のパーティション1つ当たり2〜4本の間、好ましくは2又は3本のサスペンションラインを含む、請求項1215のいずれか一項に記載のセイル。
【請求項17】
PUフィルムによって全体的に又は部分的に形成された上部及び/又は下部を含む、請求項1216のいずれか一項に記載のセイル。
【請求項18】
縫い合わせによって接合された強化布地形成領域及び/又はサスペンションラインを取着するための領域を含む複合体スワッチを含む、請求項1217のいずれか一項に記載のセイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にセイル、例えばフライングセイルを作製するための新しい複合体、それを作製するための方法、及び得られるセイル、例えばフライングセイルに関する。
【背景技術】
【0002】
フライングセイル、例えばパラグライディングセイルの分野において、布地の製造業者は長い間、特に軽さ、機械的性能、耐経年劣化性、及びまとまり具合などの様々な性質を組み合わせようとしてきた。この目的のために、製造業者は、特に折り目が付き難くなるように軽量で耐性のある柔軟な布地を用い、薄い厚さから始めることを試みている。これら最適化された性質の全てを有する布地を得ることは、今日では依然として難しい。
【0003】
フライングセイルのデザインに関し、ポリアミド又はポリエステルのスレッドから生成され、ポリマー組成物、一般にシリコーン、メラミン/ホルモル、ポリウレタン、又はアクリルでコーティングされた織地を使用することは、特に日常的なことである。これら2種の材料の組合せによって、適用に必要な機械的性質(例えば、引裂抵抗、寸法安定性)及び多孔度を与えることが可能になる。しかし、コーティングされた布地は、ある剛性を有し、良好な耐経年劣化性を持たない。さらに、これらの織地は、折畳み復元力又はマーキング(折り目のブランクライン)を有する可能性がある。さらに、布地は縦糸及び横糸を十字交差させることにより伝統的に生成されるので、パラグライダーセイルを形成するためにコーティングされ成形された布地の小片には、斜め延伸、即ち縦方向及び横方向に対して傾いた方向での斜め延伸と呼ばれる、繰り返し生じる問題がある。この方向では、基礎布地を形成するスレッドは、必要な伸び抵抗を与えず、したがって、剛性及び斜め延伸抵抗をもたらすコーティングが日常的に求められている。それにも関わらず、このコーティングには、特にコーティングされた布地が堅くなり、引裂抵抗が低下し、重量が増し、折り目のマーキングが増加するという欠点がある。
【0004】
さらに、パラグライダーセイルはサスペンションラインを備え、このラインを取着するセイル部分の応力は取り除かなければならない。これら応力を分散させるように、これらサスペンションラインをある数有することは、一般的なことである。しかし、これらサスペンションラインは、抗力に、したがってキャノピーの性能に、直接影響を及ぼす。現在使用されているコーティングされた布地は、サスペンションラインの数を著しく減少させることができないが、その理由は、そのような減少によって、サスペンションラインが取着されるキャノピー部分に過剰な応力が加えられる可能性があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セイル、例えばフライングセイルを生成するのに使用することができる、軽量で柔軟な、機械抵抗(引裂抵抗、延伸抵抗)のある、折畳み可能な複合体を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、応力又は拘束の方向での延伸が低減されるような複合体を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、有益な柔軟性を有するような複合体を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、折畳み復元力又はマーキングが僅かしか又は全くないような複合体を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、良好な耐経年劣化性を有するような、特に応力の方向での延伸の際に良好な安定性を保つような複合体を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、フライングセイルのサスペンションラインの数の減少を可能にするような複合体を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、これらの性質の全てを有するセイル、例えばフライングセイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的並びにその他の目的は、互いに接合された(例えば、積層された又は溶着された)同一の又は異なる2枚のポリウレタンフィルム(以下、PUフィルムと呼ぶ。)を含み、これら2枚のフィルムの間には少なくとも1つの強化メッシュと少なくとも1つの所定の応力線に沿って方向付けられた少なくとも1本の織地強化スレッドとが挿入されている、複合体である本発明の対象によって達成される。
【0013】
2枚のフィルムと強化メッシュとの組合せは、特に、フライングセイルに使用されるより効果的な材料の場合よりも大きな機械抵抗で軽量複合体を得ることを可能にする。この組合せは、非常に効果的で耐久性のある、応力の方向での延伸を得ることも可能にし、一般に2%未満、好ましくは1%未満であるが、経年劣化後のポリウレタンでコーティングされた布地については10%までにすることができる。したがって、本発明による複合体は、耐久的に柔軟性があるが、その延伸は、最初は剛性であり時間と共により柔軟になってその斜め延伸抵抗が失われる従来技術のコーティングされた布地とは異なり、経時的に増大しない。
【0014】
一実施形態によれば、本発明による複合体の2枚のPUフィルムは同じ材料で作製され、即ちこれらのフィルムは組成が同一である。別の実施形態によれば、2枚のPUフィルムは異なる組成を有する。別の実施形態によれば、2枚のPUフィルムは、同じ組成を有するが異なる厚さを有する。別の実施形態によれば、PUフィルムの1枚は特定の外観を有し、例えばこのフィルムは、特に通常の真空技法により得られた装飾又はアルミニウム堆積物又は別の金属コーティングを有する。
【0015】
ポリウレタンフィルムは、ポリウレタンフィルム又はポリウレタンベースのフィルムである。ポリウレタンベースのフィルムとは、少なくとも1個のウレタン官能基を含む少なくとも1種のポリマーを含むフィルムを意味し;そのようなフィルムは、例えば、ポリウレタンと少なくとも1種のその他の構成成分、例えば少なくとも1種のその他のモノマー若しくは少なくとも1種のその他のポリマーとを含んでいてもよく、又は少なくとも1個のウレタン官能基と少なくとも1種のその他の構成成分、例えば少なくとも1種のその他のモノマー若しくは少なくとも1種のその他のポリマーとを含んでいてもよい。これらのポリウレタンベースのフィルムは、一般にコポリマーである。
【0016】
特にそのようなポリウレタンベースのフィルムは、特にポリエーテル及び/又はポリアミドタイプの少なくとも1種のその他のポリマーとのポリウレタンコポリマーである。これらのコポリマーは、好ましくはブロックコポリマーである。非限定的な例として、ポリウレタン−ブロック−ポリエーテルコポリマー、ポリウレタン−ブロック−ポリアミドコポリマー、又はポリウレタン−ブロック−ポリエーテル−ブロック−ポリアミドコポリマーを挙げることが可能である。
【0017】
ポリウレタンは、剛性部分(イソシアネート)及び柔軟性部分(ポリオール)を含む。これら2成分の比により、多かれ少なかれ剛性のポリマーを得ることが可能になる。
【0018】
イソシアネートとは、単独である又は1種若しくは複数のその他のイソシアネート及び/又はポリイソシアネートとの混合物である、イソシアネート及びポリイソシアネートの両方を意味する。「イソシアネート」という用語は、「イソシアネート」及び「ポリイソシアネート」という用語を含むと理解しなければならない。
【0019】
ポリウレタンは、好ましくは芳香族又は脂肪族ポリエーテル又はポリエステルベースのポリウレタンである。したがって、ポリウレタンは、ポリエーテル又はポリエステルタイプのポリオール部分と、芳香族又は脂肪族イソシアネート部分とを含む(直鎖状又は分枝状)。
【0020】
特定の実施形態では、ポリウレタンが芳香族ポリエーテルベースのポリウレタンである。
【0021】
別の実施形態では、ポリウレタンが脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタンである。
【0022】
別の実施形態では、ポリウレタンが脂肪族ポリエステルベースのポリウレタンである。
【0023】
一般に、当業者なら、ポリウレタンの分野について十分気付いており、本発明によるフィルム組成物を提示することが可能である。
【0024】
やはり非限定的な例として、PUフィルムのそれぞれの厚さは、典型的にはおよそ十マイクロメートル程度であり、例えば5〜50μmの間、好ましくは5〜25μmの間である。
【0025】
好ましくは、PUフィルムは高い破断点伸びを有し、特に100%以上、好ましくは150〜200%の間(ISO規格527−3により測定した場合)である。
【0026】
好ましくは、PUフィルムは、10〜100の間、好ましくは10〜40MPaの弾性率を有する。
【0027】
対照的に、本発明の場合に類似した複合体を作製するのにも使用されるポリエステルフィルムは、一般に10%未満の低い破断点伸びを有し、比較的剛性であり、3000MPaよりも大きい高い弾性率を有する。したがって、本発明のPUフィルムは、ポリエステルフィルムよりもさらに柔軟性があり、折畳みマーキングのない非破壊性複合体を得るのを可能にする。
【0028】
有利には、PUフィルムのそれぞれの重量は、5〜25g/mの間、好ましくは8〜20g/mの間、例えば10〜15g/mの間である。
【0029】
有利には、2枚のPUフィルムの間に配置された、複合体を形成するその他の要素、特に強化メッシュ及びスレッド)は、2枚のPUフィルムがある表面上で互いに接触可能になるように設計される。この表面は、表面全体にわたってその他の構成要素を挿入することなく、2枚のPUフィルムの間の結合を可能にするのに十分である。言い換えれば、本発明の特徴によれば、PUフィルムは互いに対して接合(例えば、積層又は溶着)される。
【0030】
溶着は、互いに接触するPUフィルムの面の間に接着剤を挿入しない、最適な実施形態である。したがって、特に好ましい実施形態では、PUフィルムは、一方が他方に接触した状態で溶着される。
【0031】
複合体において、メッシュは、典型的には複合体の引裂抵抗を増大させることによって、取着されたPUフィルムを機械的に強化することが意図される。より一般的には、スレッドの十字交差は、この十字交差の基本パターンの形状に応じてメッシュの平面内の方向に従い異なるメッシュの機械抵抗性が得られる。
【0032】
本発明による複合体を形成するメッシュは、事前に確立された基本パターンである、メッシュの平面内で規則的に繰り返すことにより互いに対して並べられた直線的なスレッドのアセンブリを含んでいてもよい。
【0033】
一実施形態では、このパターンは、45°〜90°の間、一般には45°及び/又は90°の角度で交差するスレッドを含む。このパターンは、例えば、その対角線の一方、好ましくは両方を備えた、平行6面体からなるものであってもよい。このパターンは、例えば、その対角線の一方又はその対角線の両方を備えたダイヤモンド形状であってもよい。言い換えれば、メッシュの平面により画定された両方向での前述のパターンの規則的な繰り返しによって、この全体的なメッシュが得られる。したがって、メッシュを形成する異なるスレッドは、事前に確立された形状に応じて互いに対して位置決めされ、共にメッシュの平面内で相対的な向き及び相対的な間隔で位置決めされる。
【0034】
実施形態によれば、2つのメッシュは重ね合わせられる。好ましくは、これらのメッシュは相補的に並べられ、即ち、スレッドが異なる方向に向いた全体的なアセンブリが得られるように並べられる。
【0035】
(1つ又は複数の)強化メッシュの基本的な役割は、2枚の接合されたPUシートに強度を与えることである。(1つ又は複数の)強化メッシュは、これらのメッシュによって、セイルに加えられた応力を取り除き又は取り除くのを助ける(上述の強化スレッドによって)ことも可能である。この役割は、特に、メッシュを形成するスレッドの一部、例えば対角線によって本質的に満足させることができる。
【0036】
好ましくは、非限定的な例として、メッシュを形成するスレッドは、ポリエステル、アラミド、及び炭素などで作製される。同じメッシュにおいて、それぞれ異なる材料及びそれぞれ異なるカウントで作製されたスレッドを、混合してもよい。
【0037】
好ましくは、メッシュのスレッドは、布地において横糸として作用するあるスレッドと十字交差しており、一方、その他のスレッドは縦糸として作用する。或いは、これらのスレッドは十字交差せず、少なくとも2つの重ね合わせた層に分布させることによって重ね合わせられる。場合によっては、スレッドは、それらの十字交差又はそれらの重なり合いの際、互いに対して積層され又は溶着され得る。詳細な例に関し、当業者は、欧州特許出願公開A−1 1111 114号を参照することができる。
【0038】
メッシュの厚さは、重なり合うスレッドの本数の何倍もの最大値にメッシュの厚さが局所的に増大する領域で、方向Zにおいて、スレッドの少なくとも2本が十字交差し又は重なり合っている不定期な領域を除き、このメッシュのほとんどのスレッドの太さに等しい。非限定的な例として、スレッドの太さ、したがって、メッシュの厚さは、複数のスレッドが重なり合う領域とは別に、特にスレッドカウントに応じて百若しくは数百マイクロメートル程度又はさらにそれ以上になる可能性がある。したがって、この厚さは、50〜300μmの間、好ましくは100〜250μmの間にすることができる。
【0039】
メッシュは、例えば平坦なものであってもよい。
【0040】
有利には、メッシュの重量は5〜50g/mの間であり、好ましくは10〜30g/mの間である。
【0041】
やはり有利には、メッシュは、特に溶着又は積層によって2枚のPUフィルムが互いに接合するようそれらの取着を確実にするのに十分な表面上で、これら2枚のPUフィルムを互いに接触させることが可能である開口を有する。したがって、2枚のPUフィルムの間での十分な接触面を保ちながら、及び予期される性質を与えるメッシュを使用しながら、ある割合でメッシュの開口を変えることが可能である。最適には、メッシュの開口は2〜20mmに及んでもよく、好ましくは4〜15mmに及んでもよい(メッシュにより画定された開口の側面の平均寸法)。
【0042】
織地強化スレッドは、このスレッドを所定の応力線に沿って向けた状態で、応力を伝達させることを意図する。
【0043】
一実施形態では、(1本又は複数の)強化スレッドは、サスペンションラインの応力線に沿って並べられる。したがって、スレッドのそれぞれは、その長さが、セイルの複合体の平面内で、特定の長手方向に延び、又は場合によっては曲線状になる。
【0044】
スレッドは、複合体のアセンブリ前にこれらのスレッドが互いに対して機械的に独立しているという意味で、個別のスレッドである。
【0045】
スレッドは、所定の方向に長さが延びる全本体を含み、又はさらにそのような全本体からなる。
【0046】
したがって、一実形態では、本発明は、少なくとも1つのサスペンションラインに接合すること又は少なくとも1つのサスペンションラインを含むこと又はサスペンションラインの少なくとも1つの取着点を含むことが意図される、内部パーティション(セイル間壁)に関する。この実施形態では、パーティションは、本発明による複合体中に生成され、サスペンションラインから生じた応力を取り除く目的の少なくとも1本の強化スレッドを含む。特に、少なくとも1本の強化スレッドは、サスペンションラインとの取着点又は接触点から延びる。
【0047】
一実施形態では、強化スレッドは、円形の断片を有する。
【0048】
別の実施形態では、強化スレッドは長円形の横断面、即ちその幅より長さが長い横断面を有し、言い換えれば、複合体中にあるとされる場合のスレッドの最大の太さ(e)は、その最大長さ(l)の0.06倍未満、好ましくは0.05倍未満であり、即ち、後者が複合体中にあるとされる場合のスレッドの幅の0.06倍、好ましくは0.05倍であり、前述のスレッドの長さは、複合体中のその長手方向に沿ったこのスレッドの寸法に対応することが理解される。それらの平坦な構成により、本発明による個々の強化スレッドは、これらのスレッドの少なくとも1本が延びる領域でのこの厚さの少ないばらつきが、これらフィルムが層剥離する危険性なしに特に2枚のポリウレタンフィルムによって複合体の残りの部分により吸収される方向において、複合体の全厚に著しいばらつきをもたらさない。平坦なスレッドには、複合体に、したがって、前記複合体を含むセイル又はセイル要素(特に、内部パーティション)に大きな柔軟性を与え、同時に複合体が局所的に剛性化するのが避けられるという利点もある。さらに、平坦な強化スレッドの存在から得られた複合体の外部緩和は非常に少量であり、辛うじて存在している状態である。これは、あるとしてもごく僅かな、風との摩擦による抵抗しかもたらさないので、このタイプの複合体を含むセイルに利点をもたらす。さらに、2本以上の平坦な強化スレッドが重ね合わされているセイル領域においても、セイルの構成要素の累積厚さは適度なままであり;したがって、異なる強化スレッドとメッシュとの間の凝集力は、2枚の積層フィルムの間の材料が不連続になることなく維持される。
【0049】
(1本又は複数の)織地強化スレッドは、横断面において、その全本体の長円形の輪郭の幅が重なり方向に延びるように複合体中に並べられる。
【0050】
これらのいわゆる「平坦」なスレッドには、PUフィルムとのその接触面を最適化し、複合体の厚さを減じるという利点がある。
【0051】
好ましくは、織地強化スレッドはフィラメントアセンブリを含み、前記フィラメントは、有機材料、特にアラミド;ポリアミド;ポリエステル、例えばベクトラン(Vectran)(登録商標)などの芳香族ポリエステル;又はポリエチレン、例えばペンテックス(Pentex)(登録商標)などの、高密度ポリエチレン(HDPE)若しくはポリエチレンナフトール(PEN);又は無機材料、特に炭素で生成される。
【0052】
強化スレッドは、ISO規格527−3による適切な破壊抵抗、特に50〜800Nの間の破壊抵抗を有し、この抵抗の値は、有機材料の性質及びスレッドカウントに応じて変化させることが可能である。
【0053】
スレッドの全本体は、コア及び/又は外側をコーティングすることが有利である。コーティングは、スレッドを構成するフィラメントの間にこのコーティングを挿入することによって、これらのフィラメントの間に凝集結合剤を形成すると予測することができる。
【0054】
有利には、全本体の周辺にあるフィラメントをコーティングしてもよく、したがってコーティングは、全本体をコーティングするシースを形成する。
【0055】
この結合剤及びこのシースは、フィラメントを全本体の所定位置に保持することに有利に関与する。有利には、結合剤の特定の機能は、全本体における毛管現象による水の浸透を制限し又は防止さえすることである。シースは、特にスレッドを巻くことによって及び/又は複合体におけるスレッドの物理化学的な一体性を改善することによって、スレッドの使用を容易にすることを可能にする。
【0056】
結合剤及びシースを形成するのに使用される(1種又は複数の)コーティング材料は、同一であり又は異なっており、好ましくは同一で、ポリマー、特にアクリル、ポリウレタン、又はポリエチレンベースのポリマーの中から選択される。好ましくは材料は、ポリエーテル、脂肪族、又は芳香族ベースのポリウレタンから選択される。好ましくは材料は、PUフィルムと同じタイプのものであり又は同一のものでもある。
【0057】
一方ではコーティングされたスレッドのカウント及びコーティングされていないスレッドのカウントの差と、他方ではコーティングされていないスレッドのカウントとの比の百倍と定義される強化スレッドの全本体におけるコーティングの含量は、5〜100%の間である。複合体の重量、したがって前記複合体を含有するセイルの重量を減少させるためには、好ましくは50%未満である。
【0058】
有利には、フィラメントがアラミドで作製された場合、場合によってはコーティング含量が50%未満のコーティング材料の存在下、全本体は、一方ではdtexで表されるそのカウントと、ミリメートルで表されるその長円形の輪郭の円周又は最大長との比の値、1000未満を有する。
【0059】
実際に、本発明による平坦な強化スレッドを生成するための様々な方法は、本発明の文脈を超えることなくこの分野の専門家により考え出すことができる。例として、これらの方法の1つでは、実質的に円形の断面を有する既存のスレッドから開始して、このスレッドを、場合によってはコーティング操作、特にサイジング操作を伴う1回又は複数回の平坦化操作に供することを伴う。コーティングに関し、当業者なら、詳細な例として文献US−A−2010/0089017を参照することができる。或いは、スレッドは、上述の構造が得られるように、特にこれらのフィラメントを互いに対して並べることによって、フィラメントから直接生成してもよい。いずれの場合も、特に本発明の複合体を生成するために、有利にはその後の使用のために巻かれ又は保存することが可能な、平坦化した又は平坦なスレッドが使用される。
【0060】
任意選択の特徴によれば、複合体は、この複合体の内側に、特にPUフィルムの1つに接触した状態で、例えば強化メッシュとPUフィルムの1つとの間に配置された布地(強化布地)を含む。この布地は、複合体の一部のみに対して、例えば縁部又は隅に対して配置される。布地は、複合体を局所的に強化することが意図され、例えばサスペンションラインの取着点を強化すること、又は考えられる適用例、例えばパラグライディングで伝統的に使用される布地にアセンブリを縫い合わせることが可能な部分、特に斜めパーティション、下部(内輪)、上部(外輪)、及び前縁を形成するために強化することが意図される。強化布地は、考えられる適用例で通常使用されるもの、例えば、ポリマー組成物、一般にメラミン/ホルモル、ポリウレタン、又はアクリルでコーティングされた、ポリアミド又はポリエステルのスレッドによる布地に類似していてもよい。これらの布地は、単に原材料のまま(未処理、コーティングされていない)であってもよい。布地は、適切な接着剤、好ましくはPUベースの接着剤によって、複合体のその他の構成要素に固定される。布地は、再活性化可能なPV接着剤と共に、予めサイズ決めがなされていてもよい。この局所的接着剤の添加は、パラグライダーの重量を著しく増加させない。
【0061】
本発明による組成物は、抗UV処理に供してもよい。
【0062】
本発明による複合体は、特に、複合体がセイルで実施された後はしばしば目に見える外面となる片面に、表面コーティングを有していてもよい。このコーティングは、装飾的及び/又は抗UV保護コーティングであってもよい。一実施形態では、複合体は、パラグライダーセイルの前縁を形成することが意図され、複合体は、反射コーティング、例えばアルミニウム化コーティングを含む。
【0063】
本発明は、本発明による少なくとも1種の複合体を含むセイルにも関する。セイルは、好ましくはフライングセイルである。フライングセイルとは、風により膨らますことが可能な航空機エンジンを備えた任意のタイプのセイル、例えば、パラグライダー、パラシュート、熱気球、カイトサーフ、カイト、及び飛行船などを意味する。
【0064】
一般に、パラグライダーは、
空気に最初に接触する、セイルの空気力学的プロファイルの部分である、その前縁;
セイルの空気力学的プロファイルの後部の薄い部分である、空気流の方向にあるその後縁;
セイルを形成する各セイルを画定するパーティション(内部斜めパーティション又はセイル間壁);
凸状の反りを有するセイルの上部である、上部又は外輪;
平坦であり又は凹状の若しくは僅かに凹状の反りを有する、セイルの内部である、下部又は内輪;
セイルの方向を定めることが可能なサスペンションライン
で定義することが可能である。
【0065】
本発明は、特に、その前縁及び/又はパーティションが本発明による複合体である、パラグライダーセイルに関する。好ましくは前縁は、ポリウレタンが脂肪族ポリエステルベースのポリウレタンである、本発明による複合体である。好ましくはパーティションは、ポリウレタンが芳香族又はそうでなければ脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタンである、本発明による複合体である。
【0066】
一実施形態では、パラグライダーセイルは、本発明による複合体によって形成された前縁を有する。
【0067】
一実施形態では、パラグライダーセイルは、上述の、本発明による複合体によって形成された、サスペンド(吊支)型のパーティションを有する。
【0068】
一実施形態では、パラグライダーセイルは、本発明による複合体で作製された前縁と、本発明による複合体で作製されたサスペンド型のパーティションとを有する。非サスペンド型のパーティションは、コーティングされた布地など、伝統的に使用された材料で作製されていてもよい。これらのパーティションは、織地強化スレッドを含まない、本発明による複合体で作製されていてもよい。
【0069】
下部及び上部は、伝統的に布地で作製される。上記にて、布地部分を複合体部分に、特に本発明による布地強化インサートを含む複合体部分に縫い合わせることが可能であることが述べられた。
【0070】
一実施形態では、セイルは、縫い合わせることによって接合された強化布地形成領域及び/又はサスペンションラインを取着するための領域を含む複合体スワッチ(swatch:見本)を含む。
【0071】
一実施形態では、下部及び/又は上部を部分的に又は全体的に、本発明で既に述べたように、例えば30〜40g/cmの単純なPUフィルムにより形成してもよく、このPUフィルムは、本発明による複合体で加熱することにより溶着することが可能である。特に、セイルは後に、本発明による複合体で作製された前縁を含むことになる。セイルは、サスペンド型の複合体パーティションを含む複合体パーティションから構成されてもよい。
【0072】
有利には、パーティションを形成する複合体は穿孔されており、好ましくは微小穿孔される。
【0073】
有利には、セイルでの本発明による複合体の使用は、サスペンションラインの数を減少させることを可能にする。好ましくは、強化スレッドにより強化されサスペンドされた、各パーティションごとのサスペンションラインの数は、2〜4本の間であり、好ましくは2本又は3本である。
【0074】
有利には、サスペンド型のセイルパーティションでの強化スレッドの使用は、サスペションラインの取着点の数を減少させ、したがって、飛行中の抗力を制限することを可能にする。
【0075】
本発明は、本発明による複合体を作製するための方法にも関する。
【0076】
本発明による複合体は、下記の通り調製することができる:
(a)第1のPUフィルムを提供する;
(b)少なくとも1本の技術的強化スレッドを堆積する;
(c)強化メッシュを堆積する;
(d)次いで第2のPUフィルムをメッシュ上に堆積する。
【0077】
ステップ(b)及び(c)は逆であってもよい。
【0078】
ステップ(c)と(d)との間に、例えば、強化布地を挿入するステップを加えることが可能である。
【0079】
この方法の代替例は、PUフィルムの間にメッシュ及び織地強化スレッドを予め位置決めし、次いで例えばこれらの間に凹部を生成することにより、これらフィルムを取着させるステップからなる。
【0080】
これらの方法のそれぞれにおいて、PUフィルムは、任意の適切な手段によって、例えば積層によって1つに保持され、このとき接着剤は、外側に提供され又はフィルムの一方及び/又は他方に含浸させることが可能である。PU接着剤は、有利に使用される。好ましくは、PUフィルムは加熱溶着によって1つに保持され、したがって、この方法は、ポリウレタンフィルムの加熱溶着を可能にする圧力下で加熱する追加のステップを含む。溶着は、超音波、又は溶着をもたらすよう十分な加熱を確実にするのを可能にする任意のその他の手段により行ってもよい。
【0081】
本発明は、単なる例として提供された以下の記述に照らして及び図面を参照することにより、理解することがより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】パラグライダーの概略斜視図である。
図2】複合体の構成要素を示す、概略分解斜視図である。
図3図2の平面IIIに沿った概略断面図である。
図4図3の円で囲まれた領域IVをより拡大して示す概略図である。
図5】コーティングされたポリウレタン布地及び本発明による複合体に関する、フローティング(浮遊)時間の関数としての、3lb(1.36kg)より下の応力の方向に沿った伸びの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は、セイル(2)及びサスペンションライン(3)を含む、パラグライダー(1)の概略斜視図である。セイル(2)は、下部(2A)及び上部(2B)を有する。セイルの前面に、上部(2B)は前縁(2C)を有する。下部と上部との間には前後セイル(2D)が画定され、このセイルは前面に向かって前縁(2C)に至り、セイル間壁又はパーティション(4)によって横方向に、対になって分離される。
【0084】
図2に明瞭に示されるように、複合体は、少なくとも4つの重なり層、即ち複合体の2つの対向面を構成する2つの対向するポリウレタンフィルム5及び6、並びにこれらのフィルム5及び6の間にある、メッシュ7と、複数の個別のスレッド、即ち図3に示される例においてはそれぞれ81、82、及び83で示される3本のスレッドからなる層8の形をした織地強化スレッドとを含む。図2において、Zは、複合体の厚さに対応する直線方向を示し;したがって、重なり合うこの方向Zに沿って、フィルム5、メッシュ7、スレッド81、82、及び83の層8、及びフィルム6が、連続して位置付けられる。複合体の組み立てられた状態では、この複合体は平面状に平らに拡がっているが、複合体を構成する種々の層は一般に、方向Zに垂直に平面内で延びる。
【0085】
複合体がセイル内に収容される場合、複合体は一般に3次元形状を有し、セイルが作動している間は多かれ少なかれ皿状の形になることを理解しなければならない。
【0086】
メッシュ7は、基本的な事前に確立されたパターンである、メッシュ7の平面内に規則的に繰り返し互いに対して並べられた直線状のスレッド71のアセンブリを含み、又は図2の例においてはさらに上述のようなアセンブリからなる。したがって、図2で考慮される実施形態の例では、このパターンは、その対角線のそれぞれを備えるダイヤモンド形状からなる。言い換えれば、メッシュ7の平面により画定された両方向における前述のパターンの規則的な繰り返しによって、このメッシュの全体が得られる。したがって、メッシュ7を構成する種々のスレッド71は、メッシュの平面内の相対的な向き及び相対的な間隔の両方で、事前に確立された形状に沿って互いに対して位置決めされる。
【0087】
本発明による複合体を含むセイルのコンテキストにおいて、スレッド81、82、83のそれぞれは、セイルの平面内でその長さが、特定の長手方向X81、X82、X83に延び、場合によっては図2に示されるように曲線状になる。したがって、それ自体が知られている手法では、これらのスレッド81、82、83のそれぞれは、その長手方向X81、X82、X83に沿って、このセイルが作動している間に著しい応力がセイルに加えられるように、特に予備的な臨時の計算によって事前に決定された、事前に確立された軌跡に従う。したがって、その後セイルを形成する複合体に加えられる応力は、結果的に寸法が決められるスレッド81、82、及び83の1本又は複数によって本質的に又はほぼ全体的に耐えられる。
【0088】
当然ながら、実際に、複合体中のスレッド81、82、及び83に類似した強化スレッドの総数は、一般に3本よりさらに大きいことが理解される。
【0089】
したがって、スレッド82は、方向X82を幾何学的に表す軸を実質的に中心としながらその長さが方向X82に添って延びる、全本体820(図3)を含み、本明細書で考慮される例においてはさらにそのような全本体からなる。図3に明らかに示されるように、スレッド82は、その長手方向X82を横断する断面において、本明細書が関係する分野で伝統的に使用される織地強化スレッドで予測されるように、円形の又は円形にさらに近いプロファイルを持たない。代わりに、スレッド82の全本体820の横断面、即ちその長手方向X82に垂直な幾何平面におけるその断面は、長円形の形状、即ちその幅より著しく長い形状を有する。全体積に応じたスレッド82を考慮した場合、本体820は、その厚さよりも著しく大きな幅を有することを意味し、スレッドの厚さは、方向Zで考慮されるその寸法であるのに対し、その幅は、複合体の平面内で長手方向X82に垂直な寸法であることが理解される。したがって、図2では、lは、スレッド82の全本体820の長円形の断面の長さを示し、一方、eは、この長円形の断面の幅を示し、それぞれスレッド82の幅及び厚さに関する。
【0090】
したがって、スレッド82は、平らな又は平坦化したスレッドと言うことができ、この文献において、その厚さとその幅との比e/l、即ちその全本体820の長円形の断面の最大幅と長さとの比は、0.06未満であり、好ましくは0.05未満でさえあることを意味する。実際に、スレッド82の全本体820の平らな又は平坦化した形状は、この全本体の構成に関連付けられる。事実、図4に図式的に示されるように、本体820は1片ではなく、多数の基本的なフィラメント821の凝集から得られ:これらフィラメント821のそれぞれは、他から個別に分離されていてもよく、したがって、この意味で、モノフィラメントと言うことができる。個々に、これらのフィラメント821のそれぞれは、軸X82を横断する断面で、直径が約十マイクロメートル程度、特に3〜30μmの間である、実質的に円形の断面を有すると見なすことができる。これらのフィラメント821が、全本体820で凝集状態にあると見なされる場合、これらのフィラメント821は、上述の長円形の断面をこの全本体820に与えるように互いに対して並べられ、したがって、数百及びさらに千又は数千のフィラメント、言い換えれば少なくとも200、又は少なくとも1000本ものフィラメントが、全本体820を形成するように凝集されることに留意されたい。この結果、全本体820は、1ミリメートルの10分の1程度であり、方向Zに沿って、10本程度のフィラメント821が、全本体820の厚さ全体にわたって連続して位置付けられることを意味する。より具体的な定量的実施例を以下に示す。
【0091】
有利には、図3及び4に示す実施形態によれば、スレッド82の全本体820は、コア及び/又は外部のサイズが決められている。より具体的には、図4に図式的に示されるように、コーティング材料がフィラメント821の間に挿入され、したがって、これらフィラメントの間に粘着用の結合剤822が形成される。さらにコーティング材料は、この本体820をコーティングするシース823が形成されるよう、全本体820の周辺に位置付けられたフィラメント821を包むように設けられる。
【0092】
実際、これらの形状が長円形の輪郭を有するなら、全本体820の横断面に関して様々な形状を考えることができる。したがって、図3に図式的に示される実施形態では、全本体820の横断面の輪郭は、2つの実質的に平坦な対向するセグメント820A及び820Bを有し、その間でその輪郭の幅が画定され、言い換えれば全本体820の厚さeが画定される。これは、セグメント820A及び820Bが、距離eでオフセットされながら、方向Zに実質的に垂直に延びることを意味する。これら平坦なセグメント820A及び820Bのそれぞれの端部は、全本体820の横の輪郭の2つの対向するセグメント820C及び820Dにより対になって接続され、これらセグメント820C及び820Dは、特に平坦なセグメント820A及び820Bを連続的に接合することにより凸状である。当然ながら、セグメント820A及び820Bは、全本体820の周辺に位置付けられた一連のフィラメント821によって、場合によってはシース823の一部で覆われることによって画定されるという意味で、厳密には平坦ではない。この実施形態の利点は、全本体820の厚さeが、本体820の幅の方向に局所的な最大値を特に有することなく、この本体の幅のほとんどにわたって実質的に一定の値を有することである。したがって、これは、本発明による平らな又は平坦化した形状が最適化されることを意味する。
【0093】
そうは言うものの、図示されない代替例として、全本体820の横断面の長円形の輪郭は、方向X82を幾何学的に表す軸を中心とし、小さな軸が方向Zに沿って延びる、楕円に実質的に対応させてもよく又はより一般には実質的に楕円形の輪郭に対応させてもよい。この場合、この輪郭の最大幅と最大長との比は、楕円形状の小さな半径と大きな半径との比に対応する。より一般には、上述の形状以外の形状を、全本体820の長円形の横の輪郭に関して考えることができる。有利な態様によれば、フィラメント821がアラミドで作製される場合、スレッド82のカウントとその全本体820の幅lとの比は、所定の値よりも低い。これは、所与のスレッドカウントに関し、この本体のフィラメント821を大きな幅l全体に分布させるのに十分小さい全本体820の厚さeを提供することになる。このように、前述の比は、コーティングされていない全本体820のカウントをdtexで表す場合及びその幅l、即ちその長円形の輪郭の長さをミリメートルで表す場合、1000(千)未満であることが有利である。場合によっては、結合剤822及び/又はシース823の形をとるコーティング材料の存在下、前述の比の値は、コーティング含量が50%未満である状態で妥当であり続ける。
【0094】
実施例1:コーティングされたポリウレタン布地及び本発明による複合体の、フローティング時間の関数としての、3 lb(1.36kg)の応力下での方向に沿った変化の比較研究
布地は、ポリアミドスレッドからなる(55スレッド/cm縦糸及び45横糸)。これは、リップストップ織りである。重量は45g/mである(ポリウレタン−メラミンホルムアルデヒド樹脂コーティング7g/m)。
【0095】
複合体は、25μmの2枚の芳香族ポリエーテルベースのフィルム、ポリエステルダイヤモンド形状メッシュ、及び厚さ100μmであり30%の接着剤でサイズ決めされ(最終カウント4300dtex)5cm当たり4スレッドのアラミドスレッド3300dtexを含む。これらのスレッドは互いに平行であり、ダイヤモンド形状の頂点を通過するように並べられる。応力は、スレッドの方向に加えられる。
【0096】
布地は、対角線上の剛性によって特徴付けられる。縦糸の角度は、ウォースレッドに対して45°である。横糸の角度は、横糸スレッドに対して45°である。伸びは、布地の対角線上に及び複合体のアラミドスレッドの方向に沿って加えられた3ポンド(lb、即ち1.36kg)の力の下で、%を単位として測定される。この伸びは、対角線上の布地の剛性を特徴付ける。使用される規格はNF EN ISO 13934−1であり:幅50mm及び長さ300mmの試験サンプルが生成される。動力計のクランプは200mmだけ切り離され、測定は、100mm/分の速度で行う。
【0097】
測定は、新しい布地(即ち、経年劣化を受けていない布地)及び経年劣化した布地で行われる。布地の経年劣化は、高速でミルタイプのアセンブリに固定された布地をフローティングさせることにより行われる(4ブレードアセンブリであり、布地がこれらブレードの1つの端部に取着されている)。
【0098】
結果を図5に示す。結果は、本発明による複合体が、経年劣化の後であっても、従来技術のコーティングされた布地よりもさらに低い斜め延伸を有することを示す。さらに結果は、複合体の経年劣化に合わせて伸びが変化しないことを示す。
【符号の説明】
【0099】
1…パラグライダー、2…セイル、3…サスペンションライン、4…セイル間壁又はパーティション、5,6…ポリウレタンフィルム、7…メッシュ、8…層、81,82,83…スレッド。
図1
図2
図3
図4
図5