特許第6108427号(P6108427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108427
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】尿素水噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170327BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   F01N3/08 BZAB
   B01D53/56
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-140013(P2012-140013)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-5744(P2014-5744A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595055162
【氏名又は名称】一般社団法人日本舶用工業会
(73)【特許権者】
【識別番号】591124293
【氏名又は名称】東海合金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
(72)【発明者】
【氏名】村嶋 良二
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080437(JP,A)
【文献】 特表2012−508107(JP,A)
【文献】 特開2009−041502(JP,A)
【文献】 特開2008−019773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00 − 3/38
F02M 61/00 − 61/20
B01D 53/56、53/73、53/86−53/96
B05B 7/00 − 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水を供給する尿素水流路と、加圧空気を供給する気体流路とが構成され、尿素水と加圧空気とが混合されて、混合流路の下流側端部の噴射口から噴射される尿素水噴射ノズルであって、
前記尿素水噴射ノズルを構成する空気ノズルは、前記気体流路に連通する分岐流路と、前記分岐流路に連通する側面吐出口と、前記気体流路と尿素水流路とに連通する混合流路と、を有し、
前記側面吐出口は、前記尿素水噴射ノズルを構成する空気ノズルの外周側面に設けられており、
前記空気ノズルの下流側の側面は、噴射口から所定の範囲内において噴射口に近接するにつれて混合流路からの距離が短くなる砲弾状の曲面に形成され、
前記気体流路から供給されて側面吐出口から吐出された加圧空気は、前記側面吐出口から尿素水の噴射方向と同一の方向に吐出され、前記砲弾状に形成されている曲面に沿って、前記空気ノズルを包み込むように進んで混合流路の噴射口に到達し、前記混合流路から噴射される尿素水に混合される
ことを特徴とする尿素水噴射ノズル。
【請求項2】
前記尿素水噴射ノズルは、二重管と、空気ノズルと、ナットと、を有し、
前記空気ノズルは、前記ナットによって二重管に接続され、
前記二重管は、外管と、外管の内部に配置される内管とから構成され、
前記内管には、尿素水の流路である尿素水流路が構成され、
前記内管と外管との隙間には、加圧空気の流路である気体流路が構成され、
前記空気ノズルには、空気ノズルの気体流路孔に連通するように、側面から分岐流路が形成され、
前記空気ノズルとナットとの間には、前記側面吐出口が構成され、
前記側面吐出口は、前記空気ノズルの外周にて空気ノズルを囲むように構成される
ことを特徴とする請求項1記載の尿素水噴射ノズル。
【請求項3】
前記側面吐出口は、スリットにて構成される
ことを特徴とする請求項2記載の尿素水噴射ノズル。
【請求項4】
前記尿素水噴射ノズルは、前記空気ノズルを囲むように加圧空気が滞留する空間を有し、
前記気体流路と前記スリットとは、前記加圧空気が滞留する空間に連通される
ことを特徴とする請求項3記載の尿素水噴射ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水噴射ノズルに関する。特に、船舶用の排気浄化装置における尿素水噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気に含まれるNOx(窒素酸化物)を低減させるために、排気管の内部に選択還元型のNOx触媒(SCR触媒)を配設し、アンモニアを還元剤として、NOxを窒素と水とに還元する排気浄化装置が知られている。例えば特許文献1のごとくである。
【0003】
特許文献1に記載されている排気浄化装置は、排気管の内部に配置される尿素水噴射ノズルから尿素水を排気中に供給し、排気の熱によって尿素水からアンモニアを生成することでNOxを窒素と水に還元するものである。しかし、尿素水噴射ノズルの表面に残留している尿素水の水分が排気の熱によって蒸発することで尿素が析出および成長し、排気管が閉塞されてしまう問題があった。
【0004】
一方、尿素水噴射ノズルのような2流体混合型のノズルにおいて、薬液(塗液)を霧状にするための圧縮気体をノズル先端に吐出しつつ、塗液と混合させることでノズル先端に塗液が付着して塊となる事態を防止するノズルが公知である。例えば特許文献2のごとくである。
【0005】
しかし、特許文献2に記載されているノズルは、塗液がノズルの先端に付着することを防止するものである。このため、船舶用の排気浄化装置における尿素水噴射ノズルのように上方に向けて尿素水を噴射する場合、ノズル全体に尿素水が付着するため、特許文献1に開示されている技術を適用しても尿素の析出および成長を効果的に防止できない点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−360578号公報
【特許文献2】特開2009−045511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、尿素水噴射ノズルの表面に尿素が析出し成長することを抑制する、尿素水噴射ノズルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
請求項1においては、尿素水を供給する尿素水流路と、加圧空気を供給する気体流路とが構成され、尿素水と加圧空気とが混合されて、混合流路の下流側端部の噴射口から噴射される尿素水噴射ノズルであって、前記尿素水噴射ノズルを構成する空気ノズルは、前記気体流路に連通する分岐流路と、前記分岐流路に連通する側面吐出口と、前記気体流路と尿素水流路とに連通する混合流路と、を有し、前記側面吐出口は、前記尿素水噴射ノズルを構成する空気ノズルの外周側面に設けられており、前記空気ノズルの下流側の側面は、噴射口から所定の範囲内において噴射口に近接するにつれて混合流路からの距離が短くなる砲弾状の曲面に形成され、前記気体流路から供給されて側面吐出口から吐出された加圧空気は、前記側面吐出口から尿素水の噴射方向と同一の方向に吐出され、前記砲弾状に形成されている曲面に沿って、前記空気ノズルを包み込むように進んで混合流路の噴射口に到達し、前記混合流路から噴射される尿素水に混合されるものである。
【0010】
請求項2においては、前記尿素水噴射ノズルは、二重管と、空気ノズルと、ナットと、を有し、前記空気ノズルは、前記ナットによって二重管に接続され、前記二重管は、外管と、外管の内部に配置される内管とから構成され、前記内管には、尿素水の流路である尿素水流路が構成され、前記内管と外管との隙間には、加圧空気の流路である気体流路が構成され、前記空気ノズルには、空気ノズルの気体流路孔に連通するように、側面から分岐流路が形成され、前記空気ノズルとナットとの間には、前記側面吐出口が構成され、前記側面吐出口は、前記空気ノズルの外周にて空気ノズルを囲むように構成されるものである。
【0011】
請求項3においては、前記側面吐出口は、スリットにて構成されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記尿素水噴射ノズルは、前記空気ノズルを囲むように加圧空気が滞留する空間を有し、前記気体流路と前記スリットとは、前記加圧空気が滞留する空間に連通されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1に係る発明によれば、尿素水噴射用の気体を利用して、尿素水噴射ノズルの側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズルの表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、尿素水噴射ノズルの側面吐出口から噴射口まで間の側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズルの表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、尿素水噴射ノズルの全ての側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズルの表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、側面吐出口から吐出される気体の圧力が均一になり、むら無く尿素水噴射ノズルの全ての側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズルの表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の構成を示す図。
図2】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の尿素水噴射ノズルを示す一部断面図。
図3図2における尿素水噴射ノズルのA矢視図。
図4図2における尿素水噴射ノズルの別実施形態のA矢視図。
図5】(a)本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の尿素水噴射ノズルから尿素水を排気管の内部に供給している状態を示す図(b)図5(a)における尿素水噴射ノズルのB矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図1および図2を用いて本発明の一実施形態に係る排気浄化装置100について説明する。なお、本実施形態における「上流側」とは、流体の流れ方向における上流側を示し、「下流側」とは流体の流れ方向における下流側を示す。
【0020】
図1に示すように、排気浄化装置100は、エンジン20から排出される排気を浄化するものである。排気浄化装置100は、エンジン20の排気管21に設けられる。排気浄化装置100は、尿素水噴射ノズル1、加圧空気供給ポンプ(コンプレッサ)6、加圧空気弁8、尿素水供給ポンプ9、切替弁11、NOx検出部12、制御部13、第一供給流路14、第二供給流路15、NOx触媒18等を具備する。
【0021】
尿素水噴射ノズル1は、尿素水を排気管21の内部に供給するものである。尿素水噴射ノズル1は、管状部材から構成され、その一側(下流側)を排気管21の外部から内部へ挿通するようにして設けられる。この尿素水噴射ノズル1は、二重管2、液ノズル3、空気ノズル4、ナット5等を具備する(図2参照)。
【0022】
加圧空気供給ポンプ(コンプレッサ)6は、加圧空気をエアタンク7に供給するものである。加圧空気供給ポンプ6は、空気を加圧(圧縮)して供給する。加圧空気供給ポンプ6は、エアタンク7の圧力が所定の圧力を下回った場合、空気をエアタンク7に供給し、エアタンク7の圧力が所定の圧力に達すると停止する。なお、加圧空気供給ポンプ6は、本実施形態において、特に限定するものではなく、エアタンク7の圧力を維持できるものであればよい。
【0023】
加圧空気弁8は、加圧空気の流路を連通または遮断する。加圧空気弁8は、第二供給流路15に設けられる。加圧空気弁8は、電磁弁で構成され、ソレノイドが制御部13と接続される。加圧空気弁8は、スプールを摺動させることにより位置Vおよび位置Wに切り換えることが可能である。加圧空気弁8が位置Vの状態にある場合、第二供給流路15は遮断される。従って、尿素水噴射ノズル1には、加圧空気が供給されない。加圧空気弁8が位置Wの状態にある場合、第二供給流路15は連通される。従って、尿素水噴射ノズル1には、加圧空気が供給される。なお、加圧空気弁8は、電磁弁で構成されるが、特に限定するものではなく、駆動モータ等によって位置V、または位置Wに保持する構成でもよい。
【0024】
尿素水供給ポンプ9は、尿素水を供給する。尿素水供給ポンプ9は、第一供給流路14に設けられる。尿素水供給ポンプ9は、尿素水タンク10内の尿素水を所定の流量で第一供給流路14を介して、尿素水噴射ノズル1に供給する。なお、尿素水供給ポンプ9は、本実施形態において、特に限定するものではなく、尿素水を所定の流量で供給できるものであればよい。
【0025】
切替弁11は、尿素水の流路を切り替える。切替弁11は、第一供給流路14の尿素水供給ポンプ9の下流側に設けられる。また、切替弁11には、ドレンポット16が流路15aを介して接続されている。切替弁11は、電磁弁で構成されソレノイドが制御部13と接続される。切替弁11は、スプールを摺動させることにより位置Xおよび位置Yに切り換えることが可能である。
【0026】
切替弁11が位置Xの状態にある場合、第一供給流路14は遮断され、尿素水噴射ノズル1とドレンポット16とが連通される。従って、尿素水噴射ノズル1には、尿素水が供給されず、切替弁11よりも下流側の第一供給流路14内および尿素水噴射ノズル1内の尿素水給水がドレンポット16に排出される。切替弁11が位置Yの状態にある場合、第一供給流路14は連通される。従って、尿素水噴射ノズル1には、尿素水が供給される。
【0027】
NOx検出部12は、エンジン20の排気に含まれるNOx排出量を検出するものである。NOx検出部12は、NOxセンサ等から構成され、排気管21の途中部であってNOx触媒18よりも上流側に配置される。なお、NOxセンサを配置する位置やNOxセンサの数は、本実施形態において、特に限定するものではなく、NOx排出量を適宜検出できる構成であればよい。
【0028】
制御部13は、尿素水供給ポンプ9、切替弁11、加圧空気弁8等を制御する。制御部13には、尿素水供給ポンプ9、切替弁11、加圧空気弁8等を制御するための種々のプログラムやデータが格納される。制御部13は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。また、制御部13は、エンジン20を制御するECU22と一体的に構成することも可能である。
【0029】
制御部13は、ECU22、加圧空気弁8、尿素水供給ポンプ9、および切替弁11にそれぞれ接続される。
【0030】
制御部13は、ECU22からエンジン20に関する各種情報をそれぞれ取得することが可能である。制御部13は、NOx検出部12と接続され、NOx検出部12が検出するNOx排出量を取得することが可能である。また、制御部13は、加圧空気弁8、尿素水供給ポンプ9、および切替弁11をそれぞれ制御することが可能である。
【0031】
NOx触媒18は、NOxの還元反応を促進させるものである。NOx触媒18は排気管21の内部であって、尿素水噴射ノズル1よりも下流側に配置される。NOx触媒18はハニカム状に構成され、尿素水が熱・加水分解されて生成されるアンモニアが排気に含まれるNOxを窒素と水とに還元する反応を促進させる。
【0032】
次に、図2および図3を用いて、内部混合式の尿素水噴射ノズル1について具体的に説明する。なお、尿素水噴射ノズル1の方式は、本実施形態に限定されるものではなく、外部混合式の尿素噴射ノズルでもよい。
【0033】
図2に示すように、尿素水噴射ノズル1は、二重管2、液ノズル3、空気ノズル4、ナット5を具備する。
【0034】
二重管2は、尿素水噴射ノズル1の主たる構成部材であり、尿素水の流路と加圧空気の流路とを構成する。二重管2は、一側が排気管21の内部に位置し、他側(上流側)が排気管21の外部に位置するように配置される。二重管2の下流側端部は、排気管21の内部に配置されるNOx触媒18の上流側に配置される。
【0035】
二重管2は、外管2bと、外管2bの内部に配置される内管2aとから構成される。内管2aには、尿素水の流路である尿素水流路2cが構成される。内管2aと外管2bとの隙間には、加圧空気の流路である気体流路2dが構成される。外管2bの外側の途中部には、排気管21と水密的に接続可能な図示しない接続部が構成される。内管2aの下流側端部および外管2bの下流側端部には、雌ネジ部2eおよび雄ネジ部2fが形成される。二重管2の上流側端部には、尿素水流路2cと連通される尿素水供給ポート2gと、気体流路2dと連通される気体供給ポート2hとが構成される。
【0036】
液ノズル3は、尿素水が噴射される。液ノズル3は、略円筒状の部材から形成され、二重管2の下流側に配置される。液ノズル3の一側(下流側)端部は軸心部を中心として略円錐状に形成される。この端部の中心部には、略円柱状の凸部3aが軸方向に突出して形成される。液ノズル3の他側(上流側)端部には、雄ネジ部3bが軸方向に突出するように形成される。さらに、液ノズル3の軸心部には、尿素水流路3cが雄ネジ部3bから凸部3aまで液ノズル3全体を軸方向に貫通するように形成される。この尿素水流路3cは、途中部で下流側に向けて縮径され、尿素水流路3cの下流側端部の内径が尿素水流路3cの上流側端部の内径より小さくなるように形成される。
【0037】
液ノズル3は、雄ネジ部3bが二重管2の雌ネジ部2eに螺合される。これにより、二重管2と液ノズル3とが接続されて、尿素水流路3cと二重管2の尿素水流路2cとが連通される。こうして、尿素水流路3cに、二重管2の尿素水流路2cから尿素水が供給可能に構成される。
【0038】
空気ノズル4は、霧化された尿素水が噴射される。空気ノズル4は略円柱状の部材から形成される。空気ノズル4は、他側(上流側)端が二重管2の下流側端部に当接するようにして液ノズル3の下流側に配置される。空気ノズル4の軸心部には、途中部で一側(下流側)に向かって縮径する略円錐状の縮径部を有する孔が、上流側端から下流側端に向けて、貫通するように形成される。孔の上流側端部は、液ノズル3の下流側端部を挿入しても圧縮空気が通過可能な空間が構成される程度の内径に形成される。縮径部の縮径側端の軸心部には、尿素水の混合流路4cが形成される。そして、空気ノズル4の下流側端部には、混合流路4cの開口部である噴射口4eが形成される。
【0039】
空気ノズル4の上流側端部の側面には、つば部4aが形成される。空気ノズル4の下流側の側面は、噴射口4eを頂点とする砲弾状に形成される。つまり、空気ノズル4の下流側の側面は、噴射口4eから所定の範囲内において噴射口4eに近接するにつれて混合流路4cからの距離が短くなる曲面4bが形成される。なお、本実施形態において、空気ノズル4の下流側の側面を砲弾状としたがこれに限定されるものではなく、円錐状や円錐台形状としてもよい。
【0040】
空気ノズル4は、ナット5により二重管2に接続される。空気ノズル4の上流側の孔には、液ノズル3の下流側端部が挿入される。この際、空気ノズル4の孔と液ノズル3との間に隙間が形成される。当該隙間は、気体流路4dとして二重管2の気体流路2dと混合流路4cとに連通するように構成される。こうして、混合流路4cには、液ノズル3の尿素水流路3cから尿素水が供給され、気体流路4dから加圧空気が供給される。つまり、空気ノズル4は、二重管2に螺合されることで、噴射口4eから尿素水が噴射可能に構成される。
【0041】
空気ノズル4には、その側面から空気ノズル4の孔に連通するように一以上の分岐流路4fが形成される。つまり、分岐流路4fは、空気ノズル4の側面から気体流路4dに連通するように形成される。気体流路4dに加圧空気が供給されると分岐流路4fを介して空気ノズル4の側面に加圧空気の一部が吐出される。分岐流路4fは、空気ノズル4の側面に吐出させる加圧空気の量に応じて、分岐流路4fの数や、流路内径が決定される。
【0042】
ナット5は、二重管2と空気ノズル4とを締結する。ナット5の内径には、空気ノズル4のつば部4aに係合される段付部5aが形成される。段付部5aの上流側は、二重管2の雄ネジ部2fに螺合される雌ネジ部5bが形成される。段付部5aの下流側は、空気ノズル4が隙間無く挿入可能な程度の内径に形成される。また、段付部5aの下流側であって、空気ノズル4の分岐流路4fに対向する部分に拡径部が形成される。当該拡径部の下流側は、空気ノズル4の外径よりもわずかに大きい内径に形成される。
【0043】
ナット5は、空気ノズル4のつば部4aに段付部5aが係合するようにして二重管2の雄ネジ部2fに雌ネジ部5bを螺合して固定される。これにより、空気ノズル4の上流側端部が二重管2の下流側端部に密接して固定される。この際、ナット5の拡径部と空気ノズル4の側面とから気体が滞留する空間5cが構成される。これにより、空間5cは、空気ノズル4の分岐流路4fを介して加圧空気が供給可能に構成される。
【0044】
図2および図3に示すように、空間5cよりも下流側のナット5と空気ノズル4との間には、スリット5dが構成される。つまり、スリット5dは、空気ノズル4を囲むようにして側面に沿って構成される。さらに、スリット5dは、空間5cに連通されている。すなわち、空間5cに供給される加圧空気は、スリット5dから空気ノズル4の側面にそって尿素水の噴射方向と同一の方向である空間5cの下流側にむけて加圧空気が吐出可能に構成される。このようにして、空気ノズル4の側面には、加圧空気が吐出される側面吐出口であるスリット5dが構成される。なお、本実施形態において、側面吐出口をスリット5dから構成したが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、複数の孔5e・5e・・から構成してもよい。
【0045】
以上より、尿素水噴射ノズル1は、一側(下流側)端部に尿素水を噴射する液ノズル3、および空気ノズル4を具備し、NOx触媒18に向けて尿素水を噴射するように構成される。なお、尿素水噴射ノズル1の構成は、本実施形態において、液ノズル3と空気ノズル4とから尿素水流路3c、気体流路4d、および混合流路4cを構成しているが、特に限定するものではなく、尿素水流路3c、気体流路4d、および混合流路4cがそれぞれ構成されていればよい。
【0046】
以下では、図1を用いて、加圧空気弁8と切替弁11との動作態様について説明する。
【0047】
図1に示すように、エアタンク7は、加圧空気弁8を介して第二供給流路15によって尿素水噴射ノズル1の気体供給ポート2hに接続される。
【0048】
上述の通り、通常、加圧空気弁8は、位置Vに保持される。この場合、第二供給流路15が閉塞されているので、加圧空気は尿素水噴射ノズル1の気体供給ポート2hに供給されない。
【0049】
制御部13が加圧空気弁8のソレノイドに通電した場合、加圧空気弁8は、位置Vから位置Wに切り替えられる。この場合、第二供給流路15が連通されるので、加圧空気は尿素水噴射ノズル1の気体供給ポート2hに供給される。
【0050】
制御部13が加圧空気弁8のソレノイドへの通電を停止した場合、加圧空気弁8は、位置Vに切り替えられる。この場合、第二供給流路15が閉塞されるので、加圧空気は尿素水噴射ノズル1の気体供給ポート2hに供給されない。
【0051】
図1に示すように、尿素水タンク10は、尿素水供給ポンプ9、切替弁11を介して第一供給流路14によって尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gに接続される。
【0052】
上述の通り、通常、切替弁11は、位置Xに保持される。この場合、第一供給流路14が閉塞されているので、尿素水は尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gに供給されない。また、尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gが流路15aを介してドレンポット16内で大気開放されている。
【0053】
制御部13が切替弁11のソレノイドに通電した場合、切替弁11は位置Yに切り替えられる。この場合、第一供給流路14が連通されるので、尿素水は尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gに供給される。また、ドレンポット16との連通が遮断され、尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gは大気開放されない。
【0054】
制御部13が切替弁11のソレノイドへの通電を停止した場合、切替弁11は位置Xに切り替えられる。この場合、第一供給流路14が閉塞されるので、尿素水は尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gに供給されない。また、ドレンポット16に連通されるので、尿素水噴射ノズル1の尿素水供給ポート2gがドレンポット16内で大気開放される。
【0055】
以下では、図1図2、および図5を用いて、尿素水噴射ノズル1の動作態様について説明する。
【0056】
図1に示すように、排気管21の内部に尿素水の供給(噴射)が開始される場合、制御部13が切替弁11を位置Yとすることによって、尿素水が尿素水噴射ノズル1(二重管2)の尿素水供給ポート2gに供給される。図2、および図5(a)に示すように、尿素水は、図5(a)における黒塗り矢印の如く、所定の圧力で二重管2の尿素水流路2c、および液ノズル3の尿素水流路3cを介して、液ノズル3の凸部3aから空気ノズル4の混合流路4cに噴射される。
【0057】
この状態で、図1に示すように、制御部13が加圧空気弁8を位置Wとすることによって、加圧空気が尿素水噴射ノズル1(二重管2)の気体供給ポート2hに供給される。図2、および図5(a)に示すように、加圧空気は、図5(a)における白抜き矢印の如く、所定の圧力で二重管2の気体流路2d、空気ノズル4の気体流路4dを介して、空気ノズル4の混合流路4cに噴射される。この結果、尿素水は、空気ノズル4の混合流路4cの内部で加圧空気と衝突して霧化され、空気ノズル4の噴射口4eから噴射される。
【0058】
空気ノズル4の気体流路4dに供給された加圧空気の一部は、分岐流路4fを介して空間5cに供給される。空間5cに供給された加圧空気は、均一な圧力でスリット5dから空気ノズル4の下流側(噴射口4e側)に向けて吐出される。スリット5dから吐出された加圧空気は、その粘性によって空気ノズル4の側面にそって空気ノズル4を包み込むように進む。加圧空気は、砲弾状に形成されている空気ノズル4の側面である曲面4bにそって進むことで噴射口4eに到達する。これにより、噴射口4eから噴射された尿素水が空気ノズル4の側面に近づいてきても加圧空気によって吹き飛ばされる。また、空気ノズル4の表面に付着している尿素水は、加圧空気によって順次吹き飛ばされる。
【0059】
図1に示すように、排気管21の内部への尿素水の供給(噴射)が停止される場合、制御部13が切替弁11のポジションを位置Xとすることによって、尿素水噴射ノズル1(二重管2)の尿素水供給ポート2gへの尿素水の供給が停止される。これに伴い、二重管2の尿素水供給ポート2gは、第一供給流路14、切替弁11、を介して大気開放される。
【0060】
以上のごとく、本実施形態に係る尿素水噴射ノズル1は、尿素水流路2c・3cと気体流路2d・4dとが構成され、尿素水と気体とが混合されて噴射口4eから噴射される尿素水噴射ノズル1であって、尿素水噴射ノズル1の側面の曲面4bに沿って尿素水の噴射方向と同一の方向に気体が吐出されるように側面吐出口であるスリット5dが構成され、スリット5dと気体流路4dとが分岐流路4fによって連通されるものである。このように構成することにより、尿素水噴射用の気体を利用して、尿素水噴射ノズル1の側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズル1の表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【0061】
また、側面の曲面4bは、噴射口4eから所定の範囲内において噴射口4eに近接するにつれて気体と尿素水との流路である混合流路4cからの距離が短くなるように形成されるものである。このように構成することにより、尿素水噴射ノズル1の側面吐出口であるスリット5dから噴射口4eまで間の側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズル1の表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【0062】
また、前記側面吐出口は、側面の曲面4bに沿って尿素水噴射ノズル1を囲むように構成されるスリット5dから構成されるものである。このように構成することにより、尿素水噴射ノズル1の全ての側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズル1の表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【0063】
また、尿素水噴射ノズル1を囲むように気体が滞留する空間5cが更に構成され、分岐流路4fと側面吐出口であるスリット5dとが気体が滞留する空間5cに連通されるものである。このように構成することにより、側面吐出口であるスリット5dから吐出される気体の圧力が均一になり、むら無く尿素水噴射ノズル1の全ての側面に付着した尿素水を飛ばすことができる。これにより、尿素水噴射ノズルの表面に尿素が析出し成長することを抑制する。
【符号の説明】
【0064】
1 尿素水噴射ノズル
2c 尿素水流路
3c 尿素水流路
2d 気体流路
4d 気体流路
4e 噴射口
4f 分岐流路
図1
図2
図3
図4
図5