(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108465
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】防錆剤組成物
(51)【国際特許分類】
C23F 11/02 20060101AFI20170327BHJP
C23F 11/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
C23F11/02
C23F11/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-267369(P2013-267369)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124392(P2015-124392A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591213173
【氏名又は名称】住鉱潤滑剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】城 幸久
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−145490(JP,A)
【文献】
特開昭64−024897(JP,A)
【文献】
特開2000−178773(JP,A)
【文献】
特開2011−179115(JP,A)
【文献】
特開平11−050276(JP,A)
【文献】
特開昭56−041388(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/125787(WO,A1)
【文献】
特開平06−100038(JP,A)
【文献】
特開昭49−123948(JP,A)
【文献】
特開2004−255672(JP,A)
【文献】
特開2002−327190(JP,A)
【文献】
特開2013−095969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00 − 11/18
C23F 14/00 − 17/00
B22C 1/00 − 3/02
B22C 11/00 − 25/00
B29C 45/00 − 45/24
B29C 45/46 − 45/63
B29C 45/70 − 45/72
B29C 45/74 − 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化性防錆剤と、リン脂質と、溶剤とを含有し、
前記気化性防錆剤は、アミン類、アミンの塩類及び亜硝酸塩から選択される少なくとも1種であり、含有量が組成物全体の2〜5重量%であることを特徴とする防錆剤組成物。
【請求項2】
前記リン脂質は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンであり、含有量が組成物全体の2〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の防錆剤組成物。
【請求項3】
更に、染料を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の防錆剤組成物。
【請求項4】
前記染料は、油溶染料を少なくとも含み、含有量が組成物全体の0.01〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防錆剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品、機械部品や自動車部品、可動部を有する部品、金型等に容易かつ開放空間であっても防錆処理を施すことができる気化性の防錆剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な防錆剤には、防錆油や気化性防錆剤などがある。防錆油は、防錆対象物の金属表面に塗布して油膜を形成することにより、大気中における変色や錆の発生を防止する油脂のことである。防錆油の塗布により金属製品を一時的に錆から守る方法は、手軽且つ安価であり、しかも特別な技術を要しないため、古くから非常に多くの分野で利用されている。
【0003】
しかしながら、防錆油は、上述したように簡易で安価であるという利点を有しているが、用済み後の油膜の拭き取りに多大な手間と時間を要するという欠点がある。特に防錆箇所が可動部分である場合、例えば射出成形機の突き出しピンなどの場合には、一旦塗布した防錆油を完全に除去することは困難である。更に、防錆油の油膜の除去が不完全である場合には、残った防錆油が他の部分に付着して、汚染をもたらす可能性もある。
【0004】
一方、気化性防錆剤は、それ自体がガス化して密閉空間内に充満し、その密閉空間内にある防錆対象物の金属表面に対して防錆効果を発揮するものである。気化性防錆剤は、ガス化した防錆剤成分が金属表面を覆うため、直接塗布する必要がない。また、防錆対象物を密閉空間から出す際に、用済みの防錆剤を除去する必要がないか若しくは除去が非常に簡易である。このような利点から、気化性防錆剤は、機械部品や自動車部品などを保管、搬送又は輸送する際の防錆剤として、防錆油よりも好まれている。
【0005】
気化性防錆剤は、VCI(Volatile Corrosion Inhibitor)あるいはVRI(Volatile Rust Inhibitor)と公用語化されている。従来から知られている気化性防錆剤としては、粉末状ないしペレット状などのほか、紙又は合成樹脂フィルムに塗布又は含浸したものがあり、それぞれ気化性防錆紙又は気化性防錆フィルムとも呼ばれている。
【0006】
例えば、特許文献1や特許文献2には、粉末状の気化性防錆剤、あるいは粘結剤を含有させて粒状ないし錠剤状とした気化性防錆剤が記載されている。また、特許文献3には、熱可塑性樹脂粒に発泡剤と防錆剤を含浸させたペレット状の気化性防錆剤が記載されている。更に、特許文献4には、防錆剤成分としてブチンジオールを含有し、通気性の袋に収容された気化性防錆剤が記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至4に記載された気化性防錆剤は、適用場所が限られるという問題がある。即ち、これらの気化性防錆剤は、防錆剤成分が自然に気化して金属表面に付着し、薄い塗膜を形成することにより防錆効果を発揮する。そのため、保管容器内などの密閉された空間内で実施しなければ、ほとんどの防錆剤成分が大気中に拡散してしまい、充分な防錆効果を発揮することができない。例えば、ペレット状の気化性防錆剤は、金型内などの密閉空間では有効であるが、開放された空間では適用が困難である。また、ペレットなどに成形する際の加熱工程で気化性防錆剤成分が昇華し、防錆剤成分のロスが生じるという欠点も有している。
【0008】
また、特許文献5には、熱可塑性樹脂中に気化性防錆剤を含有したフィルムが記載されている。この気化性防錆フィルムは、防錆対象の金属製品を包装することによって、自ら密閉空間を形成して防錆効果を発揮するものである。しかしながら、気化性防錆フィルムは、サイズを防錆対象物の形状に応じて変更する必要があるため、一つの形態で全ての場合に適用することは難しく、簡易性に劣っている。また、フィルム状に成形する際の加熱工程にでは、気化性防錆剤成分が昇華するためロスが生じるという欠点も有している。
【0009】
更に、気化性防錆剤としては、気化性防錆剤成分を有機溶剤と共に噴射機に封入し、エアゾール状に噴射して使用するタイプのものも知られている。このような気化性防錆剤は、噴霧することで簡単に適用でき、用済みの防錆剤成分の除去も簡易である。しかしながら、この気化性防錆剤は、防錆剤成分が大気中に拡散しやすいため、防錆対象物の特定箇所に噴霧したとしても、防錆剤成分が被膜として留まらず大部分が大気中に拡散してしまう。そのため、この気化性防錆剤は、密閉空間で適用しなければ大気中に拡散する防錆剤成分の量が増え、満足すべき防錆効果が得られないという欠点がある。
【0010】
また、気化性防錆剤は、プラスチック成型における金型の短期防錆として使用される場合がある。防錆期間が短期の場合とは、例えば、気化性防錆剤を金型に塗布してから半日で成型を行う場合である。このような場合には、気化性防錆剤が成型品へ転写或いは移着し、捨て打ち回数が多くなる。その結果、捨て打ち回数が多くなると共に成形品の不良品も比例して多くなる欠点がある。
【0011】
そこで、気化性防錆剤は、対象物に直接塗布する必要がなく、使いやすいという利点を有しつつも、上述した問題があるため、これらの問題を解決することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−031966号公報
【特許文献2】特開2003−213462号公報
【特許文献3】特公平02−57092号公報
【特許文献4】特開平09−031672号公報
【特許文献5】特開平11−071471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、上述した従来の事情に鑑みて提案されたものであり、簡単に適用でき且つ用済み後は簡易に除去することができるうえ、密閉空間だけでなく、開放空間においても適用でき、高い防錆効果、且つ金型成型における捨て打ち回数を低減できる防錆剤組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、本発明に係る防錆剤組成物は、気化性防錆剤と、リン脂質と、溶剤とを含有
し、気化性防錆剤は、アミン類、アミンの塩類及び亜硝酸塩から選択される少なくとも1種であり、含有量が組成物全体の2〜5重量%であることを特徴とする。
【0016】
リン脂質は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンであり、含有量が組成物全体の2〜5重量%であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る防錆剤組成物は、更に染料を含有し、染料としては油溶染料を少なくとも含み、含有量が組成物全体の0.01〜1.0重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、簡単に適用でき且つ用済み後は簡易に除去することができるうえ、密閉空間だけでなく、開放された空間においても適用でき、高い防錆効果、且つ金型成型における捨て打ち回数を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を適用した防錆剤組成物について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
【0020】
<1.防錆剤組成物>
本発明を適用した防錆剤組成物は、金属製品、機械部品や自動車部品、可動部を有する部品、短期間の防錆を必要とするプラスチック成型における金型等を対象物とし、これらの変色や錆の発生を防止する。
【0021】
この防錆剤組成物は、霧状に噴霧して使用することができるため、簡単に適用でき、用済み後は簡易に除去することが可能な、気化防錆力(初期防錆能及び長距離の有効到達性能)に優れたものである。また、この防錆剤組成物は、従来のように密閉空間だけでなく、開放空間においても適用することができ、且つ大小や形状の如何にかかわらず幅広い対象物への適用が可能である。また、防錆剤組成物が対象物に残っていても成型品への移着が少ないため、二次加工を施す成型品にも転写が少ない。
【0022】
このような防錆剤組成物は、気化性防錆剤、リン脂質、溶剤を含有する。更に、防錆剤組成物は、染料が含有してもよい。この防錆剤組成物は、液体状のものである。
【0023】
<2.気化性防錆剤>
気化性防錆剤は、従来から使用されているものでよく、アミン類、アミンの塩類及び亜硝酸塩から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。気化性防錆剤としては、例えば、脂肪酸アミン塩、有機酸アミン塩、特殊脂肪酸塩、トリアゾール類、無機酸塩などを用いることができる。具体的に、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、オレイルアミン、ジドデシルアミン、ベンゾトリアゾールトリエチルアミン、ジエチルアミン、トリデシルアミン、ヘキサメチレンジアミン等を挙げることができる。
【0024】
<3.リン脂質>
リン脂質は、卵黄レシチン、大豆レシチン等が挙げられる。リン脂質には、精製度の高い粉状のものと粗製の液状のものがある。リン脂質は、どの様な形状のものでも良いが液状の方が気化性防錆剤や溶剤に溶かしやすくハンドリング性が良いため好ましい。また、リン脂質自体にも防錆効果を有し、且つ成型品への移着が少ない特徴を持つ。
【0025】
<4.染料>
染料は、有機溶剤や油脂の着色に用いられるものを用いることができる。染料には、少なくとも油溶染料を含むことが好ましい。染料としては、例えば、モノ・ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系等を挙げることができる。このような染料は、主として有機溶剤、油脂等の着色に用いられる染料であり、適宜添加することができる。染料を添加した場合には、対象物に防錆組成物で防錆処理をした後、処理した箇所の視認性を高めることができる。
【0026】
溶剤は、炭化水素系溶剤等が挙げられる。溶剤としては、例えばシクロヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソパラフィン等である。
【0027】
なお、防錆剤組成物には、従来から防錆剤組成物に通常配合されている添加剤、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、ハードケーキ防止剤、沈降防止剤、その他各種の添加剤を任意に選択して配合することができる。これら各種の添加剤の含有量についても、それぞれ要求される性能に応じて任意に定めることができる。
【0028】
防錆剤組成物は、エアスプレー及びエアゾール処方を用いて防錆手法とすることが有用である。この場合、防錆剤組成物中における気化性防錆剤及びリン脂質の含有量は、防錆効果を考慮して定める。
【0029】
ただし、JIS K2246 5.39に準拠する気化性さび止め性試験に適合するためには、気化性防錆剤、リン脂質の各々の含有量を組成物全体の各2重量%以上とする。しかしながら、気化性防錆剤及びリン脂質の各々の含有量が組成物全体の5重量%を超えると、金型に使用した場合に成型物に転写する可能性がある。従って、気化性防錆剤及びリン脂質のそれぞれの含有量は、組成物全体の2〜5重量%とすることが好ましい。
【0030】
染料の含有量は、組成物全体の0.01〜1.0重量%とすることが好ましい。含有量が組成物全体の0.01重量%未満では、着色性が乏しく、視認性が低くなってしまう。一方、含有量が1.0重量%以上では、染料が溶剤に溶解しづらく、他の部品に転写したり、金型に使用した場合には成型品へ転写する可能性がある。溶剤の含有量は、気化性防錆剤、リン脂質を除いた残部、必要に応じて染料や他の添加剤を添加した場合には気化性防錆剤、リン脂質、染料、添加剤を除いた残部とする。
【0031】
防錆剤組成物は、溶剤に、気化性防錆剤及びリン脂質、必要に応じて染料や他の添加剤を添加して、通常の撹拌機等で撹拌して得られる。
【0032】
以上のような防錆剤組成物は、気化防錆力(初期防錆能及び長距離の有効到達性能)が高い優れた防錆効果を有しつつ、次のような効果も有する。この防錆剤組成物は、対象物を配置した密閉空間で噴霧するか、あるいは開放空間で対象物に向かって噴霧することで、対象物の表面に防錆剤成分を含む被膜を形成することができる。この防錆剤組成物は、気化性であるにも関わらず、リン脂質が含まれていることにより、密閉空間だけではなく、開放空間であっても対象物に対して防錆処理を適切に施すことができる。防錆剤組成物は、開放空間で防錆処理を施しても大気中に拡散しないため、組成物を使い過ぎることがなく、無駄な使用をなくすことができる。また、防錆剤組成物は、対象物に噴霧するだけで防錆処理を施すことができるため、簡単に処理を施すことができる。
【0033】
また、この防錆剤組成物は、用済み後、対象物から容易に除去することができるため、例えば防錆箇所が可動部であっても容易に除去することができる。これにより、この防錆剤組成物は、対象物からの除去に手間と時間がかからず、ほぼ完全に除去することができ、残らないため、他の部分に付着して汚すこともない。
【0034】
更に、この防錆剤組成物は、リン脂質が含有されているため、対象物に塗布してから短時間経過して成型を行うような金型に使用しても、気化性防錆剤が成形品に転写又は移着することが防止できる。これにより、この防錆剤組成物を使用することで、捨て打ち回収を少なくすることができる。
【0035】
また、この防錆剤組成物は、更に染料を添加することで、対象物の防錆処理を施した箇所の目視により容易に確認することができる。
【0036】
以上のような防錆剤組成物は、防錆性に優れ且つ気化性防錆性能を併せ持った適用範囲の広い防錆組成物である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
先ず、実施例及び比較例で作製した防錆剤組成物の防錆性評価1、2について説明する。
【0039】
「防錆性評価1:塩水噴霧試験(JIS K 2246に準拠)」
防錆評価1は、塩水噴霧試験装置を使用した。塩水噴霧試験とは、試験片に防錆剤組成物を塗布し温度35℃において塩水を噴霧した装置内に規定時間保持した後の錆発生度を調べる試験である。本評価においては、試験片は鋼板(#240で表面研磨)、塩水濃度は5%とする。試験片全体が錆びた時点で終了とする。得られた結果を下記表1に示した。
【0040】
「防錆性評価2:気化性錆止め試験(JIS K 2246に準拠)」
防錆性評価2は、気化性防錆試験を行った。気化性防錆試験は、気相状態にある防錆剤組成物の気化防錆力を評価した。即ち、気化性防錆試験は、1リットルの広口瓶内に、防錆剤組成物(噴射物)と鋼(SDG3)試験片を隔てて配置し、35%グリセリン水溶液を用いて瓶内を20℃×90%RHに保って行った。一定時間経過後(H型1時間、L型20時間)、鋼試験片の表面に穿った穴部に冷水(2.0±0.5℃)を注いで鋼試験片を結露させ、更に3時間経過後に鋼試験片の発錆の有無を調べた。
【0041】
上記試験は、鋼試験片3個で同時に行い、3個中2個以上に錆びが認められた場合に錆びの発生有りと判定する。また、鋼試験片3個中の1個に錆びが認められた場合には、再度鋼試験片3個について試験を繰り返し、再び3個中の1個以上に錆びが認められた場合に錆びの発生有りと判定する。得られた結果を下記表1に示した。なお、判定結果は、錆びの発生無しを○、錆びの発生有りを×として表示した。得られた結果を下記表2、3に示した。
【0042】
次に、各実施例及び比較例を説明する。
<実施例1>
実施例1では、気化性防錆剤のジシクロヘキシルアミンが2重量%、リン脂質の大豆レシチンが2重量%、溶剤のシクロヘキサンが96重量%となるように、溶剤にジシクロヘキシルアミン及び大豆レシチンを添加し撹拌して防錆剤組成物を作製した。
【0043】
<実施例2>
実施例2では、ジシクロヘキシルアミン5重量%、大豆レシチン5重量%、シクロヘキサン90重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0044】
<実施例3>
実施例3では、ジシクロヘキシルアミン2重量%、卵黄レシチンが2重量%、シクロヘキサン96重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0045】
<実施例4>
実施例4では、ジシクロヘキシルアミン5重量%、卵黄レシチン5重量%、シクロヘキサン90重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0046】
<比較例1>
比較例1では、ジシクロヘキシルアミンを主成分とするカルボン酸塩(C8〜C18)との複合物が8重量%、溶剤のイソオクタンが92重量%となるように、イソオクタンに複合物を添加し撹拌して防錆剤組成物を作製した。
【0047】
<比較例2>
比較例2では、ジエタノールアミンを主成分とするカルボン酸塩(C8〜C18)との複合物8重量%、イソオクタン92重量%となるようにしたこと以外は、比較例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0048】
<比較例3>
比較例3では、ジシクロヘキシルアミン2重量%、大豆レシチン6重量%、シクロヘキサン92重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0049】
<比較例4>
比較例4では、ジシクロヘキシルアミン6重量%、大豆レシチン2重量%、シクロヘキサン92重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0050】
<比較例5>
比較例5では、気化性防錆剤を添加せず、大豆レシチン5重量%、シクロヘキサン95重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0051】
<比較例6>
比較例6では、リン脂質を添加せず、ジシクロヘキシルアミン5重量%、シクロヘキサン95重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様に防錆剤組成物を作製した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表1に示す結果から、気化性防錆剤及びリン脂質を共に含有する実施例は、いずれの比較例よりも、塩水噴霧試験における評価が高く、防錆性に優れていることがわかる。さらに、実施例では、塩水噴霧試験の結果から、開放空間においても防錆処理を施すことができ、かつ高い防錆性が得られることがわかる。
【0056】
表2に示す結果から、実施例1乃至4では、H型試験において合格であったが、比較例3及び5では不合格となった。
【0057】
表3に示す結果から、L型試験では、実施例2及び4では、3つの試験片すべて錆が発生しなかったが、それ以外のものは少なくとも2つの試験片で錆が発生した。したがって、実施例2及び4では、処理してから長時間経過しても防錆効果を維持できることがわかる。
【0058】
以上より、実施例では、3つの試験のうち少なくとも2つ試験で良好な評価が得られている。一方、比較例では、2つ、又は3つの試験で悪い評価となった。したがって、比較例に比べて、本発明を適用した実施例は、防錆性に優れ且つ気化性防錆性能を併せ持ったものであることがわかる。