(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のエネルギー源により電力を発電する第1の発電設備と、第2のエネルギー源により電力を発電する第2の発電設備と、前記第2の発電設備が出力する発電電力を制御する第2の発電設備制御装置と、前記第1の発電設備が出力する発電電力と前記第2の発電設備が出力する発電電力とを合計した電力を商用電力系統へ供給する制御を行うハイブリッド発電制御装置と、を備えてなるハイブリッド発電システムに含まれる前記ハイブリッド発電制御装置であって、
前記第1の発電設備の発電電力を予測する発電電力予測手段と、
前記商用電力系統に対して予め設定された上限の電力である連系容量から前記発電電力予測手段により予測された前記第1の発電設備の発電電力の予測値を差し引いた電力値に基づき、前記第2の発電設備の発電電力の制約値を算出し、前記算出した制約値を前記第2の発電設備制御装置に設定する制約値設定手段と、
を有すること
を特徴とするハイブリッド発電制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において、共通する構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
≪第1の実施形態≫
図1は、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッド発電システム10の構成の例を示した図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るハイブリッド発電システム10は、太陽光発電設備11と、風力発電設備13と、風力発電制御装置15と、ハイブリッド発電制御装置16と、を含んで構成される。そして、太陽光発電設備11および風力発電設備13のそれぞれから出力される電力線には、それぞれの発電電力を計測する電力計12,14が設けられている。
【0017】
なお、
図1において、矢印付きの太実線は、電力線および電力が流れる方向を表し、矢印付きの細実線は、制御または情報の伝送線およびその伝送方向を表している。また、この電力線(矢印付きの太実線)の途中には、直流電力を交流電力に変換するインバータや変圧器などが適宜設けられているが、ここでは、その図示を省略している。また、太陽光発電設備11に用いられる太陽光発電パネルは、多結晶シリコン型発電素子、単結晶シリコン型発電素子、薄膜型発電素子などで構成されるものとするが、素子の種類をとくに限定するものではない。
【0018】
本実施形態に係るハイブリッド発電制御装置16は、太陽光発電設備11および風力発電設備13で発電された電力を、予め設定された商用電力系統20に対する連系容量を超えないように調整して、商用電力系統20へ供給する役割を果たす。ハイブリッド発電制御装置16には、この調整を適切に行うために、太陽光発電電力予測部161が設けられている。また、風力発電設備13には、風力発電制御装置15の指示に従って風車の羽根(以下、ブレードという)の角度を制御(ピッチ制御)し、発電電力を調整する機能が備えられている。
【0019】
すなわち、太陽光発電電力予測部161は、所定の時間(例えば30分)ごとに気象観測所30から取得される情報に基づき、現時点から前記所定の時間の間の日射量などを予測し、その予測結果に基づき太陽光発電設備11の発電電力を予測する。
【0020】
次に、太陽光発電電力予測部161は、連系容量から前記予測した太陽光発電設備11の発電電力を差し引いた電力値を、風力発電電力制約値として風力発電制御装置15へ送信する。風力発電制御装置15は、この風力発電電力制約値を受信すると、次の風力発電電力制約値を受信までの間、風力発電設備13の発電電力がこの風力発電電力制約値を超えないように指示する。
【0021】
その結果、風力発電設備13は、その発電電力がこの風力発電電力制約値を超えるような場合があっても、ブレードのピッチ制御などにより、発電電力を前記風力発電電力制約値以内に抑えることができる。したがって、ハイブリッド発電制御装置16は、連系容量を超えない電力を商用電力系統20へ供給することができる。
【0022】
太陽光発電電力予測部161における太陽光発電電力を予測する方法としては、様々な方法を用いることができる。例えば、気象衛星による雲画像を利用した日射量予測、気象予報に基づく日射量予測、当該太陽光発電設備11による過去の発電データを利用した日射量予測、さらには、これらを組み合わせた予測など、そのいずれを用いてもよい。また、これらの太陽光発電電力の予測において、日射量の他に、気圧、気温、降水量、相対湿度、風速、および、これらの時間的な変化量から選ばれた1つまたは複数のデータを組み合わせて用いることは、予測の精度向上を図る上で有効である。
【0023】
本実施形態では、以上のような太陽光発電電力の予測をする基礎となる日射量などのデータは、気象観測所30から得られるものとしている。したがって、ここでいう気象観測所30とは、気象衛星、気象台、測候所、その他の気象観測ポイントで観測された気象データを提供する気象情報提供センタのことを指す。
【0024】
さらに、気象観測所30は、太陽光発電設備11の近傍に独自に設けられたものであってもよい。この場合には、太陽光発電設備11の近傍で観測された日射量、気圧、気温、降水量、相対湿度、風速などのデータを用いることができるため、太陽光発電電力予測部161は、太陽光発電電力の予測精度を向上させることができる。また、独自の気象観測所30の設置時に、その設置場所を予め最適化しておくことは、太陽光発電電力の予測精度向上を図る上で効果があることは言うまでもない。
【0025】
また、ここでいう独自の気象観測所30は、気象観測機器に加えて、気象衛星データを入手するシステムや、全天空写真を撮影するための魚眼カメラなどを備えていてもよい。あるいは、気象観測機器を備えず、その他の機器だけで構成されていてもよい。魚眼カメラでは、全天空における太陽の位置と雲の位置関係を直接に表した画像を得ることができることから、その画像の解析により数秒あるいは数分先の日射量を高精度に予測することができる。
【0026】
本実施形態に係るハイブリッド発電制御装置16は、気象観測所30から得られた様々なデータとくに太陽光発電電力予測部161での予測に利用されたデータを、日時、予測結果、実績発電電力などに関連付けて蓄積するための記憶部162を備えている。このようなデータが記憶部162に蓄積されると、太陽光発電電力予測部161は、その後の太陽光発電電力の予測時に、過去の類似した日時における同様の気象条件下での予測結果および実績発電電力を利用することができる。その結果、太陽光発電電力予測部161は、そのとき予測した太陽光発電電力の予測値を過去の実績値やその統計値に照らして補正したりすることが可能になるので、予測精度の向上が図られる。
【0027】
なお、以上に説明したいずれの予測方法においても、気象観測データや太陽光発電電力の予測データには必ず誤差が伴うことを考慮しておく必要がある。そして、それらのデータの誤差の傾向や相関関係がわかっている場合には、バイアス補正などの手法を適用するなど、誤差を予測し加味した補正をすることが可能となる。このような誤差を考慮した予測値の補正は、太陽光発電電力の予測値の精度が向上するだけでなく、より適切な風力発電電力制約値を設定することが可能になる。
【0028】
以上、本実施形態に係るハイブリッド発電制御装置16においては、太陽光発電電力予測部161により精度の高い太陽光発電電力の予測が可能となり、風力発電制御装置15には、精度の高い風力発電電力制約値が送信される。したがって、風力発電設備13からは、風力発電電力制約値より大きな電力は発電されなくなる。よって、商用電力系統20へは、予め設定された連系容量を超える電力が供給されないので、ハイブリッド発電システム10の設備利用率が向上する。
【0029】
表1は、第1の実施形態に係るハイブリッド発電システム10の効果の例を示した表である。表1には、太陽光発電設備11のみの設備利用率、風力発電設備13のみの設備利用率および太陽光発電と風力発電とを組み合わせたハイブリッド発電システム10の設備利用率を、1年間にわたって月別に評価した例が示されている。
【表1】
【0030】
この評価では、日射計で測定した強度を換算して太陽光発電電力を求め、また、風況測定器で測定した風速を風車の高さ補正しパワーカーブで補正し、その補正した風速を換算して風力発電電力を求めた。これら日射および風速の測定地点は、事前検討において、太陽光発電と風力発電の補完関係が大きくなる国内地域をあらかじめ選択した。
【0031】
表1に示すように、太陽光発電のみの発電設備の設備利用率は、5月〜9月頃にやっと20〜24%に達する程度であり、また、風力発電のみの発電設備の設備利用率は、10月〜2月頃に30〜35に達する程度である。これに対し、太陽光発電と風力発電とを組み合わせたハイブリッド発電システム10では、その設備利用率は、年間を通して39%を超えることがわかった。
【0032】
なお、このハイブリッド発電システム10の設備利用率は、太陽光発電のみの発電設備の設備利用率と風力発電のみの発電設備の設備利用率とを合わせた合計値よりも小さい。これは、ハイブリッド発電システム10では、前記合計値が予め設定された連系容量を超えることがあることを示すものに他ならない。
【0033】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッド発電システム10によって発電される3日間の発電電力の時間推移の例を示した図である。
図2において、グラフの横軸は時間(時)を表し、縦軸は発電電力(MW)を表す。また、小さいドットが付された領域21は、太陽光発電電力を表し、斜線が付された領域22は、風力発電電力を表す。さらに、このハイブリッド発電システム10では、連系容量として太陽光発電設備11の定格出力である20MWが設定されているものとしている。
【0034】
また、
図2では、1日目、2日目は晴天だったが、3日目は厚い雲に覆われていたため、太陽光発電電力(領域21)が非常に小さくなっているとしている。そして、このハイブリッド発電システム10では、ハイブリッド発電制御装置16によって太陽光発電電力(領域21)と風力発電電力(領域22)の合計値が20MWの連系容量を超えないように調整されるものとしている。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッド発電システム10が太陽光発電電力と風力発電電力の合計値を連系容量以下に調整する機能を備えていないとした場合の発電電力の時間推移の例を示した図である。この場合には、例えば、1日目と2日目の正午前後に網目が付された出力制限領域31が現れている。この領域31は、ハイブリッド発電システム10が20MWの連系容量を超えた電力を発電したものである。仮に、連系容量を超える電力が商用電力系統20に送電されてしまうと、送電線の発熱などに影響が生じ、ヒューズや送電線の劣化の恐れがある。
【0036】
図2に示したように、本実施形態に係るハイブリッド発電システム10では、風車のピッチ制御により発電電力が20MWの連系容量を超えないように制御されるので領域31は現れない。ただし、この領域31が表す電力は捨てられることを意味する。したがって、領域31に相当する部分を極力小さくすることが望ましい。
【0037】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッド発電システム10において、ハイブリッド発電制御装置16および風力発電制御装置15が実行する制御手順の例を示した図である。
図4に示すように、ハイブリッド発電制御装置16は、まず、電力計12を介して太陽光発電設備11により発電される太陽光発電電力値Psを計測する(ステップS11)。次に、ハイブリッド発電制御装置16は、太陽光発電電力予測部161を介して太陽光発電電力予測値Pssを算出し(ステップS12)、さらに、風力発電電力制約値Pwrを算出する(ステップS13)。ここで、風力発電電力制約値Pwrは、当該ハイブリッド発電システム10に予め設定されている連系容量Pcから、ステップS12で算出した太陽光発電電力予測値Pssを差し引いた値をいう。続いて、ハイブリッド発電制御装置16は、ステップS13で算出した風力発電電力制約値Pwrを風力発電制御装置15に送信する(ステップS14)。
【0038】
ハイブリッド発電制御装置16は、以上の制御手順を実行しつつ、太陽光発電設備11が出力する太陽光発電電力値Psと風力発電設備13が出力する風力発電電力値Pwとを合わせた電力を商用電力系統20に供給する。このとき、商用電力系統20に供給される電力が連系容量Pcを超えることが防止されるのは、風力発電制御装置15により、次のような制御が行われるからである。
【0039】
風力発電制御装置15は、ハイブリッド発電制御装置16から送信された風力発電電力制約値Pwrを受信すると(ステップS21)、その風力発電電力制約値Pwrを風力発電設備13の出力最大値Pwxに設定する(ステップS22)。続いて、風力発電制御装置15は、電力計14を介して風力発電設備13が出力する風力発電電力値Pwを計測し(ステップS23)、その風力発電電力値Pwが風力発電設備13の出力最大値Pwxより大きいか否かを判定する(ステップS24)。
【0040】
その判定の結果、風力発電電力値Pwが風力発電設備13の出力最大値Pwxより大きい場合(ステップS24でYes)、風力発電制御装置15は、風力発電電力値Pwが出力最大値Pwxを超えないよう、ブレードのピッチを制御を実行する(ステップS25)。逆に、風力発電電力値Pwが風力発電設備13の出力最大値Pwxより大きくない場合には(ステップS24でNo)、ブレードのピッチ制御を停止する(ステップS26)。
【0041】
なお、以上の制御手順において、ハイブリッド発電制御装置16によるステップS11〜ステップS14の手順は、太陽光発電電力を予測する所定の時間周期で(例えば、10分ごとに)実行される。一方、風力発電制御装置15によるステップS21およびステップS22の手順は、風力発電電力制約値が受信されるたびに実行される。また、ステップS23〜ステップS26の手順は、常に実行されることになるが、その実行の周期は、実際にはブレードのピッチ制御の応答速度などによって制約される。
【0042】
以上のように、本実施形態では、ブレードのピッチ制御により、風力発電設備13の風力発電電力値をステップS22で設定された出力最大値Pwx、つまり、風力発電電力制約値Pwrを超えないこととなる。また、風力発電電力制約値Pwrは、ステップS13において連系容量Pcから太陽光発電電力予測値Pssを差し引いた値として算出されているので、太陽光発電電力予測値Pssと風力発電電力値Pwの合計は、連系容量Pc以下の値となる。したがって、太陽光発電電力予測値Pssに予測誤差のマージンを見込んでおけば、本実施形態に係るハイブリッド発電システム10では、連携容量Pcを超える電力が商用電力系統20へ供給されるのを防止することができる。
【0043】
図5は、太陽光発電電力の予測値に応じて発電される風力発電電力およびハイブリッド発電電力の時間推移の例を示した図である。
図5において、上段のグラフは、太陽光発電電力の時間推移を表し、中段のグラフは、風力発電電力の時間推移を表し、下段のグラフは、太陽光発電電力と風力発電電力とを合計したハイブリッド発電電力の時間推移を表している。
【0044】
図5の例におけるハイブリッド発電システム10に設定された連系容量Pcは、太陽光発電設備11の定格出力の20MWであるとし、各段のグラフにおいて、連系容量Pcは、実線52で表わされている。また、
図5の上段のグラフにおいて、現在以降未来の丸く囲まれた領域51に含まれる折れ線53は、太陽光発電電力予測部161によって予測された太陽光発電電力予測値Pssを表している。このような太陽光発電電力予測値Pssは、太陽光発電電力予測部161により、例えば1時間先までの値が算出され、適宜、例えば10分ごとに修正されるものとしている。
【0045】
風力発電電力制約値Pwrは、10分ごとに修正された太陽光発電電力予測値Pssの10分間の最大値に予測誤差のマージンを見込んで求められる。したがって、
図5では、風力発電電力制約値Pwrは、実線52の値から破線の階段状の折れ線54の値を差し引いた差分値55で表される。こうして求められた風力発電電力制約値Pwrは、例えば、10分ごとに風力発電制御装置15に送信される。
【0046】
本実施形態では、風力発電電力値Pwは、この風力発電電力制約値Pwrを超えることはできない。もし、超える場合には、その超過分は、ブレードのピッチ制御により捨てられる。したがって、
図5の中段のグラフの現在以降未来の丸く囲まれた領域56において折れ線57で表わされる風力発電電力値Pw(現在以降の実績値)は、風力発電電力制約値Pwrに応ずるように小さくなっている。その結果、本実施形態では、
図5の下段のグラフの折れ線58に示すように、太陽光発電電力値Psと風力発電電力値Pwとを合わせたハイブリッド発電電力が連系容量Pcを超えることはなくなる。
【0047】
以上の
図5の説明からも容易に分かるように、太陽光発電電力予測部161が太陽光発電電力の予測をする時間間隔は短いほどその予測精度は向上し、ブレードのピッチ制御により捨てられる電力も小さくなる。例えば、5分先の太陽光発電電力を予測するとした場合、1時間先の予測に比べて予測誤差(予測値と実測値の差)が平均で10%以上も小さくなり、予測精度が向上することが確認されている。
【0048】
さらに、太陽光発電電力予測部161で予測された太陽光発電電力予測値Pssに沿って風力発電電力制約値Pwr(
図5では符号55)を求め、その求めた風力発電電力制約値Pwrを風力発電制御装置15に送信する時間間隔も短いほどよい。すなわち、この時間間隔が短いほど、
図5に示された階段状の破線54は、太陽光発電電力予測値Pssを表す折れ線53により近似したものとなる。その結果、ブレードのピッチ制御により捨てられる電力は小さくなる。
【0049】
なお、近年、風車のブレード制御の応答時間の短縮化が進み、現状では、その応答時間は、分単位、さらには秒単位で表されるものとなっている。したがって、風力発電電力制約値Pwrを風力発電制御装置15に送信する時間間隔は、風車のブレード制御のこの応答時間までは短縮化することができる。
【0050】
以上の通り、本実施形態では、太陽光発電電力値Psと風力発電電力値Pwとの合計電力、すなわち商用電力系統20へ供給する電力が連系容量Pcを超えることはなくなる。また、本実施形態では、連系容量Pcとして太陽光発電設備11の定格出力が定められているため、太陽光発電設備11を最大限に利用することができる。したがって、ハイブリッド発電システム10としての設備利用利率が向上する。
【0051】
≪第2の実施形態≫
図6は、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッド発電システム10aの構成の例を示した図である。
図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッド発電システム10aは、第1の実施形態のハイブリッド発電システム10の構成に蓄電設備17、蓄電池制御装置19、電力計18などが追加されたものとなっている。さらに、ハイブリッド発電制御装置16aは、第1の実施形態での太陽光発電電力予測部161に代えて、太陽光・風力発電電力予測部163を備える構成となっている。
【0052】
ここで、蓄電設備17の蓄電池としては、鉛電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、ニッケル水素電池、レドックスフロー電池、燃料電池、キャパシタ電池などを使用することができる。また、蓄電池制御装置19は、ハイブリッド発電制御装置16からに指示に従い、蓄電設備17の充放電を制御する。なお、蓄電池の場合、その劣化などを考慮する必要があり、蓄電池サイクル数や充電率(SOC:State of Charge)の管理など特有の制御が必要となるが、ここではその制御については説明を省略する。
【0053】
太陽光・風力発電電力予測部163は、気象観測所30から得られる様々なデータに基づき、太陽光発電設備11の発電電力だけでなく、風力発電設備13の発電電力を予測する。したがって、ここでいう太陽光・風力発電電力予測部163は、前記第1の実施形態でいう太陽光発電電力予測部161に、風力発電設備13の発電電力を予測する風力発電電力予測部が新たに追加されたものということができる。
【0054】
また、本実施形態でも、気象観測所30から得られた様々なデータとくに太陽光・風力発電電力予測部163での予測に利用されたデータは、日時、予測結果、実績発電電力などに関連付けて記憶部162に蓄積される。その結果、その後の太陽光発電電力および風力発電電力の予測時に、過去の類似した日時における同様の気象条件下での予測結果および実績発電電力を利用することができることとなり、予測精度の向上を期待することができる。
【0055】
以上のような構成により、太陽光発電設備11で発電される太陽光発電電力と風力発電設備13で発電される風力発電電力との合計が予め設定された連系容量を超える場合には、その超えた電力の少なくとも一部を蓄電設備17に蓄えることができる。そのため、本実施形態では、ブレードのピッチ制御により捨てる電力が少なくなるので、電力をより有効に活用できるようになるといえる。また、供給すべき電力が不足する場合には、その不足する電力を蓄電設備17からの放電電力で補うことができる。すなわち、本実施形態では、発電電力の時間的な変動を抑制することが可能になるという効果を期待することができる。なお、本実施形態では、当該ハイブリッド発電システム10aには、太陽光発電設備11の定格出力以上の連系容量が設定されているものとする。
【0056】
ところで、発電事業者がハイブリッド発電システム10aを用いて商用電力系統20に電力を供給する場合、供給する電力の上限値は、連系容量だけでなく計画値に依存する。計画値とは、発電事業者が商用電力系統20に電力を供給するとき、商用電力系統20を所有する電力会社に対し申告する供給電力量の約束値をいう。発電事業者は、例えば6時間前までに6時間以降例えば1日分の計画値を電力会社に申告する。この1日分の計画値は、1日を例えば30分ごとに区分した各時間帯の計画値によって構成される。したがって、発電事業者が申告する電力供給の計画値は、30分ごとに変動するように設定することが許容される。ただし、電力の安定供給のため、その30分内で供給する電力量は、所定の変動幅(例えば3%以内)に抑制することが求められる。なお、このような発電事業者と電力会社との間の取り決めは、計画値同時同量などと呼ばれる。
【0057】
以上のように申告され設定される計画値は、例えば所定の30分間に供給すべき電力量であるが、以下では、簡単のために、計画値とは、この30分間の電力量を実現するための各時刻の平均の電力値であるとする。このように定めた場合、計画値は、連系容量を超えることはできない。すなわち、計画値は、連系容量以下の値となる。
【0058】
本実施形態に係るハイブリッド発電システム10aでは、計画値を遵守した電力を商用電力系統20へ供給することが容易になる。すなわち、太陽光発電電力と風力発電電力の合計値が計画値を超える場合には、超過した電力を蓄電設備17に蓄えることができ、さらに必要に応じてブレードのピッチ制御により捨てることもできる。また、太陽光発電電力と風力発電電力の合計値が計画値に達しない場合には、不足する電力を蓄電設備17からの放電電力で補充することができる。
【0059】
図7は、第2の実施形態に係るハイブリッド発電システム10aにおいてハイブリッド発電制御装置16aが実行する制御手順の例を示した図である。なお、以下の説明では、当該ハイブリッド発電システム10aには、連系容量Pcおよび
図7の制御手順が実行される時点での計画値Ppが予め設定されているものとする。
【0060】
ハイブリッド発電制御装置16aは、まず、電力計12(
図6参照)を介して太陽光発電設備11により発電される太陽光発電電力値Psを計測する(ステップS31)。次に、ハイブリッド発電制御装置16aは、太陽光・風力発電電力予測部163を介して太陽光発電電力予測値Pssを算出し(ステップS32)、さらに、風力発電電力制約値Pwrを算出する(ステップS33)。ここで、風力発電電力制約値Pwrは、第1の実施形態と同様に、連系容量PcからステップS32で算出した太陽光発電電力予測値Pssを差し引いた値をいう。次に、ハイブリッド発電制御装置16aは、ステップS33で算出した風力発電電力制約値Pwrを風力発電制御装置15に送信する(ステップS34)。ハイブリッド発電制御装置16aは、以上の制御手順を実行しつつ、太陽光発電設備11が出力する太陽光発電電力値Psと風力発電設備13が出力する風力発電電力値Pwとを合わせた電力を商用電力系統20に供給する。
【0061】
以上、ここまでの制御手順は、
図4に示したステップS11〜ステップS14の制御手順と実質的に同じである。また、風力発電制御装置15が風力発電電力制約値Pwrを受信したとき実行する制御手順は、
図4に示したステップS21〜ステップS26の制御手順と同じになるので、その図示および説明を省略する。そして、ここまでの制御手順が実行されることにより、風力発電電力Pwが風力発電電力制約値Pwrを超えた場合には、超えた分の電力は、ブレードのピッチ制御により捨てられることになる。そのため、ハイブリッド発電システム10aから商用電力系統20に供給される電力が連系容量Pcを超えることが防止される。
【0062】
次に、ハイブリッド発電制御装置16aは、電力計12,14を介して太陽光発電設備11および風力発電設備13によりそれぞれ発電される太陽光発電電力値Psおよび風力発電電力Pwを計測する(ステップS35)。そして、ハイブリッド発電制御装置16aは、その計測した太陽光発電電力値Psおよび風力発電電力Pwの合計値(Ps+Pw)が予め設定された計画値Ppを超過しているか否かを判定する(ステップS36)。
【0063】
その判定の結果、合計値(Ps+Pw)が計画値Ppを超過している場合には(ステップS36でYes)、ハイブリッド発電制御装置16aは、蓄電池制御装置19へ充電指令を送信する(ステップS37)。この充電指令は、次に
図8を用いて説明するように、計画値Ppを超過した分の電力を蓄電設備17に充電させるための指令である。この指令により計画値Ppを超過した分の電力が蓄電設備17に充電されると、商用電力系統20に供給される電力は、計画値Ppまで減少する。
【0064】
また、合計値(Ps+Pw)が計画値Ppを超過していない場合には(ステップS36でNo)、ハイブリッド発電制御装置16aは、蓄電池制御装置19へ放電指令を送信する(ステップS38)。この放電指令は、計画値Ppに達しない分の電力を蓄電設備17に放電させるための指令である。この指令により計画値Ppに達しない分の電力が蓄電設備17から放電されると、商用電力系統20に供給される電力は、計画値Ppまで増加する。
【0065】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッド発電システム10aにおいて蓄電池制御装置19が実行する制御手順の例を示した図である。なお、この制御手順が実行されるとき、蓄電池制御装置19には予め所定の目標SOC範囲が設定されているものとする。目標SOC範囲とは、その時点で適正と判断される蓄電設備17の充電率(SOC)の範囲をいう。そして、ここでは、蓄電設備17は、充電率が目標SOC範囲の上限値を上回った場合には、充電ができないものとし、充電率が目標SOC範囲の下限値を下回った場合には、放電ができないものとする。
【0066】
また、目標SOC範囲は、一定でなく、状況に応じて適宜変更されるものであってもよい。例えば、太陽光発電電力予測値Pssと風力発電電力予測値Pwwとの合計値が今後増大することが見込まれる場合には、目標SOC範囲は低めに変更される。逆に、太陽光発電電力予測値Pssと風力発電電力予測値Pwwとの合計値が今後減少することが見込まれる場合には、目標SOC範囲は高めに変更される。なお、このような目標SOC範囲の設定、変更の方法については、ここではその説明を省略する。
【0067】
図8に示すように、蓄電池制御装置19は、充電指令または放電指令を受信すると(ステップS41)、それが充電指令であるか否かを判定する(ステップS42)。そして、充電指令を受信した場合には(ステップS42でYes)、そのときの蓄電設備17の充電率が予め設定された目標SOC範囲内であるか否かを判定する(ステップS43)。
【0068】
ステップS43の判定で、そのときの蓄電設備17の充電率が目標SOC範囲内であった場合には(ステップS43でYes)、蓄電池制御装置19は、蓄電設備17を充電モードに設定する(ステップS44)。この場合には、計画値Ppを超過した分の電力は、蓄電設備17に充電されるので、ハイブリッド発電システム10aから出力される電力は、計画値Ppとほぼ同じになる。
【0069】
また、ステップS43の判定で、そのときの蓄電設備17の充電率が目標SOC範囲内でなかった場合には(ステップS43でNo)、蓄電池制御装置19は、蓄電設備17を非充放電モードに設定する(ステップS45)。したがって、この場合には、ハイブリッド発電システム10aから出力される電力は、計画値Ppを超過することになる。
【0070】
さらに、ステップS42の判定の結果、充電指令を受信していなかった場合(ステップS42でYes)、つまり放電指令を受信した場合には、そのときの蓄電設備17の充電率が予め設定された目標SOC範囲内であるか否かを判定する(ステップS46)。
【0071】
ステップS46の判定で、そのときの蓄電設備17の充電率が目標SOC範囲内であった場合には(ステップS46でYes)、蓄電池制御装置19は、蓄電設備17を放電モードに設定する(ステップS44)。この場合には、計画値Ppに達しない分の電力は、蓄電設備17から放電されるので、ハイブリッド発電システム10aから出力される電力は、計画値Ppとほぼ同じになる。
【0072】
また、ステップS46の判定で、そのときの蓄電設備17の充電率が目標SOC範囲内でなかった場合には(ステップS46でNo)、蓄電池制御装置19は、蓄電設備17を非充放電モードに設定する(ステップS48)。したがって、この場合には、ハイブリッド発電システム10aから出力される電力は、計画値Ppに達しないことになる。
【0073】
なお、ステップS45およびステップS48のケースでは、ハイブリッド発電システム10aは、計画値Ppを達成できないことになるが、目標SOC範囲を適切に管理することにより、このようなケースを可能な限り減らすことができる。また、前記のように、申告する計画値は、例えば30分間の積算電力量であるから、瞬時的に計画値Ppを達成できないことは許容される。
【0074】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッド発電システム10aに設定された計画値Ppおよび商用電力系統20へ供給される電力の時間推移の例を示した図である。
図9において、階段状の太実線71は、計画値Ppを表し、折れ線72は、太陽光発電電力値Psを表し、折れ線73は、太陽光発電電力値Psと風力発電電力値Pwの合計値を表している。また、階段状の太実線71に近似する値の細実線の折れ線74は、ハイブリッド発電システム10aが商用電力系統20の出力電力値を表している。
【0075】
以上、本発明の第2の実施形態によれば、ブレードのピッチ制御により捨てられる電力は小さくなるとともに、いわゆる計画値同時同量が実現される。その結果、ハイブリッド発電システム10a設備利用利率が向上し、また、太陽光発電電力値Psと風力発電電力値Pwとの合計電力、すなわち、商用電力系統20へ供給される電力が連系容量Pcを超えることはなくなる。
【0076】
≪その他の実施形態≫
以上に説明した実施形態におけるハイブリッド発電システム10,10aでは、発電に用いられるエネルギーは、太陽光と風力の組み合わせであったが、その組み合わせは、太陽光および風力に限定されない。例えば、太陽光と河川の水力の組み合わせや太陽光と海洋の波力の組み合わせなどであってもよい。ただし、本発明の特徴を考慮すると、その組み合わせは、発電電力の出力制御がしにくいエネルギーと発電電力の出力制御がしやすいエネルギーの組み合わせが好ましい。
【0077】
本発明は、以上に説明した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態および変形例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態や変形例の構成の一部を、他の実施形態や変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態や変形例の構成に他の実施形態や変形例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態や変形例の構成の一部について、他の実施形態や変形例に含まれる構成を追加・削除・置換することも可能である。
ハイブリッド発電制御装置16は、太陽光発電設備11の発電電力を予測する太陽光発電電力予測部161を備え、商用電力系統20に対して予め設定された上限の電力である連系容量から、太陽光発電電力予測部161により予測された太陽光発電電力予測値を差し引いた電力を、風力発電設備13により発電される電力の最大値として風力発電制御装置15に設定する。風力発電制御装置15は、ブレードのピッチ制御により、風力発電設備13が発電する電力を前記設定された電力の最大値以内に抑制する。