【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)研究集会名 2012年度環境都市系(計画系)卒業論文発表会 (2)主催社名 立命館大学 (3)公開日 平成25年2月19日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開閉可能な消火栓格納箱(1)と、消火栓格納箱(1)内に配設された消火栓弁(2)と、消火栓格納箱(1)内に回転自在に支持され、前面にホース引き出し用の開口(3a)を有すると共に、外周面にホース基端部取り出し口(3d)を備えたドラム状のホース収納体(3)と、ホース収納体(3)内に外側から内側へ向って渦巻き状に巻き回された状態で収納され、基端部が消火栓弁(2)に接続されると共に、先端部にノズル4が接続された保形性を有するホース(5)と、消火栓格納箱(1)とホース収納体(3)との間に設けられ、ホース収納体(3)の回転を阻止する固定手段(6)とを具備し、前記ホース収納体(3)は、ドラム状に形成されており、背面側の側板(3c)が消火栓格納箱(1)の背面板に設けた回転軸(9)に回転自在に支持されていると共に、前面側の側板(3b)及び背面側の側板(3c)の外周縁部が消火栓格納箱(1)内に配設した複数の受け車(10)により回転自在に支持されていることを特徴とする消火栓装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、歴史的な町並みには、多くの文化財が存在し、木造住宅が密集するため、ひとたび火災が発生すると、延焼火災に発展する可能性がある。
また、このような地域には、細い道路が多く、大型の消防車が通行できないため、消防隊の到着までに時間がかかって被害が拡がることがある。
【0003】
そこで、このような地域においては、町並みの保存を目的として、道路脇や道路に面している建物の軒先等に地域住民が使用できる消火栓装置を地域において自主設置し、この消火栓装置を使用して地域住民が消火訓練や初期消火活動を行えるようにし、地域住民の防災力を高めるようにしている。
また、このような地域においては、火災等の緊急時に消火栓装置を即座に使用できるように、地域住民が消火訓練を兼ねて日頃より打ち水等の散水目的で消火栓装置を使用している。
【0004】
従来、この種の消火栓装置としては、保形性を有するホースをドラム内に渦巻き状に巻き取った状態で収納保持するようにしたドラム型の消火栓装置(特許文献1参照)や、渦巻き状に巻き取った保形性を有するホースを複数本の縦向き又は横向きのバーで保持するようにしたバー型の消火栓装置(特許文献2参照)が知られている。
【0005】
図14は従前のドラム型の消火栓装置の一例を示すものであり、また、
図15(A)及び(B)は従前のバー型の消火栓装置の一例を示すものであり、
図15(A)はバー型の縦型の消火栓装置、
図15(B)はバー型の横型の消火栓装置である。
【0006】
前記ドラム型の消火栓装置は、
図14に示す如く、開閉扉30aを有する消火栓格納箱30と、消火栓格納箱30内に固定状態で設置され、前面の中央に円形の開口部31aを形成したドラム31と、ドラム31内に外側から内側に向って渦巻き状に巻き回された状態で収納され、基端部が消火栓弁32に接続されると共に、先端部にノズル33が接続された保形性を有するホース34とを備えており、消火の際には、消火栓弁32を開放すると共に、ノズル33及びホース34の先端部を持ってホース34をドラム31の開口部31aから順次繰り出し、ホース34を火災位置近傍まで引き出した後、ノズル33を開放して火災位置へ向って放水するようにしたものである。
【0007】
一方、バー型(縦型及び横型)の消火栓装置は、
図15(A)及び(B)に示す如く、開閉扉30aを有する消火栓格納箱30と、消火栓格納箱30内に消火栓格納箱30の背面板との間に空間を空けて横向き姿勢で平行に配置された複数のコ字状のバー35と、消火栓格納箱30の背面板と複数のバー35との間に渦巻き状に巻き回された状態で収納され、基端部が消火栓弁32に接続されると共に、先端部にノズル33が接続された保形性を有するホース34とを備えており、消火の際には、消火栓弁32を開放すると共に、ノズル33及びホース34の先端部を持ってホース34をバー35の間から順次繰り出し、ホース34を火災位置近傍まで引き出した後、ノズル33を開放して火災位置へ向って放水するようにしたものである。
【0008】
前記各消火栓装置は、何れも保形性を有するホース34を使用しているため、一人で操作が可能であり、放水操作までは高い操作性を有している。
【0009】
しかし、前記各消火栓装置は、何れも使用後におけるホース34内の水抜き作業やホース34の収納作業に時間がかかり、日常的に使用するにはホース34の収納時における操作性が悪いと云う問題があった。
【0010】
また、ホース34内の水抜き作業においては、ホース34をドラム31内又は消火栓格納箱30の背面板とバー35との間の空間内へ収納する際に、ノズル33を開放してホース34内の水をノズル33から抜くようにしているが、ホース34内の水が完全に抜けず、ホース内34に水が残った状態で収納されることになる。
この場合には、ホース34内に残った水の重量でホースの引き出し操作に必要以上の力を要することとなる。更に、磨耗を増大することとなり、新しいホース34に交換するまでの期間が短くなると云う問題があった。
尚、ホース34を消火栓格納箱30内から全て引き出して水抜き作業を行えば、ホース34内の水を殆んど抜くことができるが、この場合、ホース34の収納作業がより面倒になる。
【0011】
更に、ホース34の収納作業においては、ホース34をドラム31内又は消火栓格納箱30の背面板とバー35との間の空間内へ丁寧に収納して行かないと、ホース34の収納半径が小さくなってキンクした状態で収納されたり、或いは、ドラム31や消火栓格納箱30の背面板とバー35との間の空間からはみ出した状態で収納されることがある。
ホース34がキンクした状態で収納された場合には、ホース34に折れ癖が付き、ホース34内の水路の一部が狭くなってホース34が持っている本来の放水性能を得られないと云う問題がある。
また、ホース34がドラム31や消火栓格納箱30の背面板とバー35との間の空間からはみ出した状態で収納された場合には、ホース34の引き出し時にホース34が絡み合う危険性があり、消火活動に支障を来たすことがある。
【0012】
尚、ホース34を使用した消火栓装置には、図示していないが、上述したドラム型又はバー型の消火栓装置の他に、回転自在なホースリールにホースを巻き付けたホースリール式の消火栓装置がある。
【0013】
このホースリール式の消火栓装置は、ホースリールの中心部にホースをその基端部側から巻き取って行くため、ホースの基端部を消火栓弁側に接続した後、ホースをホースリールに巻き付けて収納しなければならない。
【0014】
しかし、この場合には、ホースの基端部側が閉鎖された状態となっているため、ホース内の水が自然排水されず、ホース内に多量の水が残った状態で収納されることになる。
そのため、ホースの収納前に、ホースをホースリールから全て引き出し、ホースの基端部を消火栓弁側から取り外してホース内の水抜きを行わなければならず、ホースの水抜き作業と収納作業を別々に行わなければならないうえ、ホース内の水抜き作業が極めて面倒である。
【0015】
また、ホースの収納作業においては、ホースリールを回転させながらホースを手で持ってホースのホースリールへの巻き取り位置を決めて行かなければならず、慣れていないと、収納に手間取ることがある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図6は本発明の実施の形態に係る消火栓装置を示し、当該消火栓装置は、多くの文化財が存在し、木造住宅が密集する歴史的な町並みのある地域の道路脇や建物の軒先等に所定間隔毎に設置されており、地域住民の消火訓練や初期消火活動、散水目的に日常的に使用されるものである。
【0032】
即ち、前記消火栓装置は、
図1及び
図2に示す如く、開閉可能な消火栓格納箱1と、消火栓格納箱1内に配設された消火栓弁2と、消火栓格納箱1内に鉛直回転自在に支持され、前面にホース引き出し用の開口3aを有すると共に、外周面にホース基端部取り出し口3dを備えたドラム状のホース収納体3と、ホース収納体3内に外側から内側へ向って渦巻き状に巻き回された状態で収納され、基端部が消火栓弁2に接続されると共に、先端部にノズル4が接続された保形性を有するホース5と、消火栓格納箱1とホース収納体3との間に設けられ、ホース収納体3の回転を阻止する固定手段6とから構成されている。
【0033】
具体的には、前記消火栓格納箱1は、
図1及び
図2に示す如く、左右の側面板、背面板、天井板及び底面板から成る前面が開放された箱型の本体1aと、本体1aの開口周縁部に手前方向へ回動自在に取り付けられ、本体1aの前面側の開口を開閉する開閉扉1bとから構成されており、道路脇等に設けた据え付け架台(図示省略)上に起立姿勢で設置固定されている。
【0034】
前記消火栓弁2は、
図1及び
図2に示す如く、消火栓格納箱1の本体1aの右側の側面板に取り付けられており、その吸入口が給水配管7等を介して高圧水源に接続されている。この消火栓弁2には、手動式のアングル弁が使用されている。
【0035】
前記ホース収納体3は、
図1及び
図2に示す如く、中心部にホース引き出し用の円形の開口3aを形成した円板状の前面側の側板3bと、前面側の側板3bの背面側に対向状に配設された背面側の側板3cと、両側板3b,3c間に同心円上に配設され、両側板3b,3cを連結すると共に、ホース5の基端部が挿通されるホース基端部取り出し口3dを形成した筒状の外周板3eとによりドラム状に形成されており、両側板3b,3cの外周縁部が外周板3eの外周面よりも少し外方へ突出した状態となっている。
また、ホース収納体3の開口3aの内周縁部内面には、開口3aからのホース5の引き出し時にホース5が開口3aの内周縁部に引っ掛って傷付かないように環状の保護リング3fが設けられている。
更に、ホース収納体3の外面(外周板3eの外周面)には、消火栓弁2から外されたホース5の基端部をホース収納体3側へ保持固定する保持手段8を設けられている。
この実施の形態においては、保持手段8は、ホース収納体3の外周板3eの外面にリベット金具18により取り付けた面ファスナー構造のバンドから成る。尚、保持手段8は、前記面ファスナー構造のバンドに替えて保持機能を有するベルトを使用しても良い。
更に、ホース収納体3の前面側の側板3b前面には、ホース収納体3へのホース5収納後に、ホース収納体3を手動で回転させてホース5内に残留する水を排水させるための折り畳み式のハンドル19が設けられている。
このハンドル19は、
図3に示す如く、ホース収納体3の前面側の側板3bに固定した支持部材20に手前方向へ回動自在に取り付けた回動軸21にスライド自在に支持されており、ハンドル19に内装した圧縮コイルスプリング22の弾性力によって、前面側の側板3bに対して平行になる折り畳み位置(
図3の実線位置)又は前面側の側板3bに対して垂直になる引き起こし位置(
図3の一点鎖線位置)に保持され、また、圧縮コイルスプリング22の弾性力に抗してハンドル19を回動軸21から抜ける方向へスライド移動させることによって、回動操作できるようになっている。
更に、ホース収納体3の外周板3eには、前記ハンドル19によりホース収納体3を回転させてホース5内の水抜きを行った場合に、ホース収納体3内に水が溜まるのを防止するための水抜き孔3hが一つ又は複数形成されている。
【0036】
そして、前記ホース収納体3は、背面側の側板3cが消火栓格納箱1の背面板に設けた水平姿勢の回転軸9に片持ち状態で鉛直回転自在に支持されていると共に、両側板3b,3cの外周縁部が消火栓格納箱1の本体1aの底面板に設けた四つの受け車10により回転自在に支持されている。
【0037】
尚、各受け車10は、その外周面にホース収納体3の前面側の側板3b又は背面側の側板3cの外周縁部が嵌り込む断面形状がU字状の環状溝が形成されており、消火栓格納箱1の本体1aの底面板に立設した四つの支持脚11にそれぞれホース収納体3の中心へ向く傾斜姿勢でもって取り付け固定されている。
【0038】
前記ホース5は、合成繊維製のたて糸と合成繊維製のよこ糸とを筒状に織成して成るジャケットと、ジャケットの内周面にライニングされた合成樹脂製又はゴム製の円筒状の内張り層とから構成されており、保形性を有するものである。
このホース5の基端部は、接続金具12を介して消火栓弁2に着脱自在に接続され、また、ホース5の先端部は、接続金具12を介して可変噴霧式のノズル4に着脱自在に接続されている。
尚、この実施の形態においては、ドラム収納スペースを有する既設品の改修も可能となり、既設格納箱の内部部品を撤去後、後述する固定手段6の格納箱側固定金具6c、ベース付回転軸9、受け車10の支持脚111をビスやボルト類で固定し、ホース収納体3をセットする。
この場合に使用するホース5には、下記の表1に示す仕様のもの(改善型ホース)が使用される。
【0040】
前記改善型ホースは、既存のホースに比べて口径を5mm小さくしたものを使用しているため、満水状態での重量が軽くなり、柔軟性も向上する。
また、この改善型ホースは、既存のホースに比べて口径を5mm細くしたため、長く収納することが可能になり、災害時により遠くまで引き出せる。
更に、この改善型ホースは、表側のたて糸の種類を変更し、織り組織を表を増やしたことにより耐摩耗性が向上する。また、裏側のよこ糸の打ち込み回数を少なくしたことにより柔軟性が向上する。
更に、この改善型ホースは、最小曲げ半径が既存のホースに比べて小さいため、放水、水抜き、収納時の操作性の向上が考えられる。
更に、この改善型ホースは、磨耗試験結果では、既存のホースに比べてもより永く使用できるものと考えられる。
【0041】
前記固定手段6は、ホース5の引き出し時には、ホース収納体3の回転を阻止すると共に、ホース5の収納時には、ホース収納体3をフリーの状態にして回転できるようにするものであり、
図4(A)及び(B)に示す如く、ホース収納体3の外周板3eの外面に設けられ、ホース収納体3の半径方向に沿う係止孔6aを形成した収納体側固定金具6bと、消火栓格納箱1の本体1aの背面板に設けられ、収納体側固定金具6bに対向し得る格納箱側固定金具6cと、格納箱側固定金具6cにホース収納体3の半径方向へ移動自在に支持され、収納体側固定金具6bの係止孔6aに抜き差し自在な縦向き姿勢の係止ピン6dと、格納箱側固定金具6cに設けられ、係止ピン6dが係止孔6aに挿通される係止位置(
図4(A)に示す位置)と係止ピン6dが係止孔6aから引き抜かれる非係止位置(
図4(B)に示す位置)とに亘って係止ピン6dを前記各位置にそれぞれ保持する保持機構6eとから成る。
また、係止ピン6dは、その中間部が水平方向に180度折り曲げられており、上端部及び下端部が格納箱側固定金具6cに上下自在に挿通支持されている。
更に、保持機構6eは、格納箱側固定金具6cに上下方向に一定の間隔を空けて配設され、係止ピン6dの折り曲げた中間部が着脱自在に係止される水平な上部保持板6e
1及び下部保持板6e
2から成り、係止ピン6dの折り曲げられた中間部を上部保持板6e
1に係止させると、係止ピン6dが係止孔6aから引き抜かれる非係止位置に保持され、係止ピン6dの折り曲げられた中間部を下部保持板6e
2に係止させると、係止ピン6dが係止孔6aに挿通される係止位置に保持されるようになっている。
尚、係止ピン6dは、これを回転操作することによって、上部保持板6e
1又は下部保持板6e
2への係止を行えると共に、上部保持板6e
1又は下部保持板6e
2からの離脱を行える。
【0042】
次に、上述した消火栓装置を用いて消火訓練や消火活動を行う場合について説明する。
尚、消火栓装置は、非使用時には、ホース5がホース収納体3内に渦巻き状態で収納されていると共に、ノズル4が渦巻き状に巻かれたホース5の中心部に形成された空間内に収納保持されている。また、ホース収納体3が固定手段6より回転不能になっていると共に、消火栓弁2及びノズル4がそれぞれ閉じた状態となっている。
【0043】
消火訓練や消火活動時においては、消火栓格納箱1の開閉扉1bを開き、ノズル4を持って、消火栓弁2を開放し、ノズル4及びホース5の先端部を持って火災方向へ走ると、ホース5がホース収納体3の開口3a部から順次繰り出し、ホース5を火災位置近傍まで引き出した後、その位置でノズル4を開放して火災位置へ向って放水する。
【0044】
そして、消火訓練や消火活動が終了すると、次の手順によりホース5等を消火栓格納箱1内へ収納する。
先ず、消火栓弁2を閉じ、ホース5先端部のノズル4をホース5から取り外すと共に、ホース5の基端部を消火栓弁2から取り外し、ホース5の基端部を面ファスナー構造のバンドから成る保持手段8によりホース収納体3の外周面に保持固定する(
図5参照)。
【0045】
次に、固定手段6を操作してホース収納体3の固定状態を解除してホース収納体3を回転フリーの状態とし、この状態でホース5を持ってこれをホース収納体3の開口3aからホース収納体3内へ押し込んで行く(
図6参照)。
【0046】
このとき、ホース5をホース収納体3内ヘ押し込む力によって、ホース収納体3がホース5を巻き取る方向へ回転し、ホース5がホース収納体3内の外側から内側へ向って渦巻き状に巻き回された状態で順次収納されて行くことになる。その結果、大きな力を必要とすることなく、ホース5をホース収納体3内に楽に収納することができると共に、ホース5の収納も迅速且つスムースに行うことができ、ホース5の収納時における操作性が高められる。
また、ホース収納体3を手で回転させる必要がないため、ホース5を両手で持って収納操作を行うことができ、ホース5の手繰り寄せと巻き取り位置を容易に決めることができ、ホース5がホース収納体3からはみ出した状態で収納されたり、或いは、ホース5がキンクした状態で収納されたりすると云うことがなく、ホース5をホース収納体3内の所定の位置に正しく収納することできる。
更に、ホース5の両端が開放された状態となっているため、ホース収納体3の回転及びホース5の巻き取り作業と同時にホース5内に残っている水が落差(ホース5のホース収納体3内に収納された部分と地面に置かれているホース5の先端部分との落差)によりホース5の先端から自然排水されることになる。
そのうえ、ホース収納体3が回転軸9及び複数の受け車10により回転自在に支持されているため、ホース収納体3がホース5の収納に伴って重くなっても、ホース収納体3を楽に回転させることができると共に、ホース収納体3がスムースに回転することになり、ホース5の収納に支障を来たすことがない。
加えて、ホース5の基端部を保持手段8によりホース収納体3の外周面へ保持固定しているため、ホース収納体3の回転時にホース5の基端部がホース収納体3の回転の邪魔になると云うことがなく、ホース収納体3の回転をスムースに行える。
更に、ホース5を全て引き延ばさなかった場合は、ホース5の収納後、ホース収納体3内のホース5内に水が残留することとなるが、ホース収納体3の前面側の側板3bに設置された折り畳み式のハンドル19を折り畳み位置から引き起こし位置に引き起こし、ホース収納体3を回転させることで、残留した水を排水することができる。そのため、水抜きを行うためにホース5を全て引き延ばす必要がなくなる。
尚、ホース5の収納後にホース収納体3を回転させてホース5の水抜きを行った場合、ホース収納体3内に水が溜まる恐れがあるが、この水はホース収納体3の外周板3eに設けた水抜き孔3hから排水することができる。
【0047】
そして、ホース5を全てホース収納体3内へ収納したら、ホース5の先端部にノズル4を接続すると共に、ホース5の基端部をホース収納体3の外周面から取り外して消火栓弁2に接続し、ホース収納体3を固定手段6により固定状態にする。
【0048】
このように、上述した消火栓装置は、ホース5の収納作業やホース5内の水抜き作業を簡単且つ容易に行えてホース5の収納時における操作性を高められると共に、ホース5の収納作業時にホース5がキンクした状態で収納されたり、はみ出した状態で収納されたりすることがなく、ホースをホース収納体内の所定の位置に正しく収納することでき、消火栓の性能を維持することができる。
【0049】
下記の表2及び表3は、従前の消火栓装置を本発明の消火栓装置へ改修したものと、従前の消火栓装置の操作性能を比較した試験の試験方法と試験結果を示すものである。
尚、表2及び表3のAは、従前のバー型(横型)の消火栓格納箱と表1に示す本発明の消火栓装置への改修に使用する改善型ホースを組み合せた消火栓装置、Bは、従前のバー型(横型)の消火栓格納箱と表1に示す既存のホースとを組み合せた消火栓装置、Cは、本発明の回転ドラム型の消火栓格納箱と表1に示す本発明の消火栓装置(改修用)に使用する改善型ホースとを組み合せた消火栓装置、Dは、従前のバー型(縦型)の消火栓格納箱と表1に示す既存のホースとを組み合せた消火栓装置、Eは、従前の固定ドラム型の消火栓格納箱と表1に示す既存のホースとを組み合せた消火栓装置である。
【0052】
上記試験は、災害時想定と日常利用時の二つの使用状況を想定して行った。
災害時を想定した試験では、ホース(既存のホース30m、改善型ホース35m)を最大まで引き出した。また、ホースの引き出し方向に二つの障害物を設置し、一つ目の障害物は右側を通り、二つ目の障害物は左側を通ってホースを引き出した。
一方、日常利用時を想定した試験では、ホースを10m引き出した。また、障害物は通らなかった。
尚、ホースの放水圧は、災害時想定及び日常利用時とも、易操作性1号消火栓の最低基準水圧である0.17MPaを計測し、その際の1次側水圧0.38MPaで一定にして各消火栓装置を使用した。
【0053】
上記表3の試験結果からも明らかなように、改善型ホース(本発明の消火栓装置改修用に使用するホース)と既存のホースの引き出し力を比較すると、改善型ホースがより楽に引き出せることが判明した。また、改善型ホースと回転ドラム式の消火栓格納箱を組み合せた消火栓装置と既存の消火栓装置で比較すると、ホースのみの比較と同様の結果が得られた。
尚、引き出し力の測定は、日常利用時の引き出しではあまり差が表れないことが考えられるので、測定をしなかった。
【0054】
また、災害時想定におけるホースの引き出し時間を比較すると、ホースのみ異なるA及びBの消火装置でAの消火栓装置は11.2秒、Bの消火栓装置は14.2秒となり、本発明仕様のCの消火栓装置は12.4秒、既設仕様のD及びEの消火装置でDの消火栓装置は12.8秒、Eの消火栓装置は12.5秒であった。
更に、日常利用時におけるホースの引き出し時間を比較すると、Aの消火栓装置は4.6秒、Bの消火栓装置は4.9秒、Cの消火栓装置は5.7秒、Dの消火栓装置は4秒、Eの消火栓装置は5.6秒であった。
【0055】
この試験結果からも明らかなように、改善型ホースは、既存のホースより5m長いことを考慮すると、災害時では改善型ホースがより早く放水地点まで到達できたことが判る。また、日常利用時(引き出し距離10m)では、改善型ホースと既存のホースは殆んど差がでなかった。
【0056】
また、災害時想定におけるホースの収納時間を比較すると、Aの消火栓装置は157.2秒、Bの消火栓装置は240.4秒、Cの消火栓装置は180.6秒、Dの消火栓装置は167秒、Eの消火栓装置は155.3秒であった。
更に、日常利用時におけるホースの収納時間を比較すると、Aの消火栓装置は30.8秒、Bの消火栓装置は41.8秒、Cの消火栓装置は79.4秒、Dの消火栓装置は69秒、Eの消火栓装置は51.6秒であった。
【0057】
この試験結果からも明らかなように、改善型ホースと既存のホースでは、改善型ホースが早く収納できたことが判る。また、回転ドラム式の消火栓装置を使用した際にはホースが長いことを考慮してもあまり差がでなかった。
しかし、試験終了時のホースの収納状態を確認すると、
図16(A)及び(B)に示す従前型Dの消火栓装置、Eの消火栓装置ともに、ホース収納部へホースが収納しきれず、丁寧さが不足していたことが分かる。これに対して、本発明仕様においては、完全に収納された状態となる。
【0058】
尚、上記の実施の形態においては、ホース収納体3の前面側の開口3aを円形としたが、ホース収納体3の開口3aの形状は、上記実施の形態に係るものに限定されるものではなく、ホース5の引き出しを円滑且つスムースに行えれば、如何なる形状であっても良い。
また、ホース5の口径や長さは、表1に示す改善型ホースに限定されるものではなく、如何なるサイズであっても良い。何故なら、ホース3は、そのサイズに関係なく、外周板3eの幅や、前面側の側板3b、背面側の側板3cのサイズを変更することによりホース収納体3内へ収納可能となるからである。
【0059】
図7〜
図9は何れもホース収納体3の変形例を示すものであり、
図7に示す如く、ホース収納体3の開口3aをトラック形状としても良く、また、
図8に示す如く、ホース収納体3の前面側の側板3b中央部を直径方向に切り欠いてほぼトラック形状の開口3aを形成し、当該開口3aの直線状の内周縁部にガイドローラ3gを対向状に回転自在に取り付けるようにしても良く、更に、
図9に示す如く、ホース収納体3の少なくとも前面側の側板3bを通気性を有するパンチング材で形成したり、或いは、図示していないが、少なくとも前面側の側板3bに複数の開口を設けるようにしても良い。
尚、
図9に示すホース収納体3においては、前面側の側板3bの他に外周板3e及び背面側の側板3cも通気性を有するパンチング材で形成しても良く、また、外周板3e及び背面側の側板3cにも複数の開口を設けるようにしても良い。
特に、
図8に示すホース収納体3においては、開口3aの内周縁部にガイドローラ3gを設けているため、ホース収納体3の開口3aからホース5を引き出す際にホース5がガイドローラ3gに案内されるため、ホース5をホース収納体3の開口3aから円滑且つスムースに引き出すことができる。
また、
図9に示すホース収納体3においては、前面側の側板3bをパンチング材で形成したり、前面側の側板3bに複数の開口を設けているため、ホース収納体3の通気性が良くなり、ホース5をより早く乾燥させることができる。
【0060】
図10〜
図13は本発明の他の実施の形態に係る消火栓装置を示し、当該消火栓装置は、城や寺等の建物がある敷地内、或いは歴史的景観を有する町並み地区に所定間隔毎に設置されており、消火訓練や初期消火活動、散水目的に使用されるものである。
【0061】
即ち、前記消火栓装置は、開閉可能な消火栓格納箱1と、消火栓格納箱1内に配設された消火栓弁2と、消火栓格納箱1内に回転自在に支持され、前面にホース引き出し用の開口3aを有すると共に、外周面にホース基端部取り出し口(図示省略)を備えたドラム状のホース収納体3と、ホース収納体3内に外側から内側へ向って渦巻き状に巻き回された状態で収納され、基端部が消火栓弁2に接続されると共に、先端部にノズル4が接続された保形性を有するホース5と、消火栓格納箱1とホース収納体3との間に設けられ、ホース収納体3の回転を阻止する固定手段6とから構成されている。
【0062】
具体的には、前記消火栓格納箱1は、
図10〜
図12に示す如く、左右の側面板、背面板、天井板及び底面板から成り、内部空間をホース収納部S1、警報機器収納部S2及び給水配管収納部S3に区分けした前面が開放された箱型の本体1aと、本体1aのホース収納部S1の開口周縁部に手前方向へ回動自在に取り付けられ、ホース収納部S1の開口を開閉する主扉1cと、本体1aの警報機器収納部S2の開口周縁部に手前方向へ回動自在に取り付けられ、警報機器収納部S2の開口を開閉する火報扉1dと、本体1aの給水配管収納部S3の開口周縁部に手前方向へ回動自在に取り付けられ、給水配管収納部S3の開口を開閉する配管用扉1eとから構成されており、城や寺等の建物がある敷地内に設けたコンクリート製の据え付け架台13上に複数本のアンカーボルト14により起立姿勢で設置固定されている。
尚、火報扉1dには、常時赤色に点灯している表示灯15が設けられている。
【0063】
前記消火栓弁2は、消火栓格納箱1のホース収納部S1に配設されており、その吸入口が給水配管7等を介して高圧水源に接続されている。この消火栓弁2には、手動式で且つポンプの起動スイッチ16付のアングル弁が使用されている。
【0064】
前記ホース収納体3は、
図11及び
図12に示す如く、ホース引き出し用のトラック形状の開口3aを形成した円板状の前面側の側板3bと、前面側の側板3bの背面側に対向状に配設された背面側の側板3cと、両側板3b,3c間に同心円上に配設され、両側板3b,3cを連結すると共に、ホース5の基端部が挿通されるホース基端部取り出し口(図示省略)を形成した筒状の外周板3eとによりドラム状に形成されており、両側板3b,3cの外周縁部が外周板3eの外周面よりも少し外方へ突出した状態となっている。
また、ホース収納体3の開口3aの直線状の内周縁部には、ガイドローラ3gが対向状に回転自在に取り付けられている。
更に、ホース収納体3の外面には、消火栓弁2から外されたホース5の基端部をホース収納体3側へ保持固定する面ファスナー構造のバンドから成る保持手段8を設けられている。
【0065】
そして、前記ホース収納体3は、背面側の側板3cが消火栓格納箱1の背面板に設けた水平姿勢の回転軸9に片持ち状態で鉛直回転自在に支持されていると共に、両側板3b,3cの外周縁部が消火栓格納箱1の本体1aの底面板に設けた四つの受け車10と本体1aの背面板に設けた二つの受け車10とにより回転自在に支持されている。
【0066】
尚、受け車10は、その外周面にホース収納体3の前面側の側板3b又は背面側の側板3cの外周縁部が嵌り込む断面形状がU字状の環状溝が形成されており、消火栓格納箱1の本体1aの底面板に立設した四つの支持脚11と、本体1aの背面板に二つの支持板17にホース収納体3の中心へ向く傾斜姿勢でもって取り付け固定されている。
【0067】
前記ホース5は、
図1に示す消火栓装置のホース5と同様構造に構成されており、その基端部は、接続金具12を介して消火栓弁2に着脱自在に接続されていると共に、その先端部は、接続金具12を介して可変噴霧式のノズル4に着脱自在に接続されている。
【0068】
前記固定手段6は、
図13(A)及び(B)に示す如く、ホース収納体3の外周板3eの外面に設けられ、ホース収納体3の半径方向に沿う係止孔6aを形成した収納体側固定金具6bと、消火栓格納箱1の本体1aの背面板に設けられ、収納体側固定金具6bに対向し得る格納箱側固定金具6cと、格納箱側固定金具6cにホース収納体3の半径方向へ移動自在に支持され、収納体側固定金具6bの係止孔6aに抜き差し自在な縦向き姿勢の係止ピン6dと、格納箱側固定金具6cに設けられ、係止ピン6dが係止孔6aに挿通される係止位置(
図13(A)に示す位置)と係止ピン6dが係止孔6aから引き抜かれる非係止位置(
図13(B)に示す位置)とに亘って係止ピン6dを前記各位置にそれぞれ保持する保持機構6eとから成る。
また、保持機構6eは、格納箱側固定金具6cに回動自在に支持され、起立位置と傾倒位置とに亘って上下方向へ回動自在な操作レバー6e
3と、操作レバー6e
3と係止ピン6dとを連動連結するアーム部材6e
4とから成り、操作レバー6e
3を起立位置に回動操作すると、係止ピン6dが係止孔6aから引き抜かれる非係止位置に保持され、操作レバー6e
3を傾倒位置に回動操作すると、係止ピン6dが係止孔6aに挿通される係止位置に保持されるようになっている。
【0069】
図10〜
図13に示す消火栓装置も、
図1〜
図6に示す消火栓装置と同様の作用効果を奏することができる。