(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る画像処理装置及びX線撮影装置を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0015】
(第1実施形態)
画像処理装置20は、被写体12を撮影した画像に対して所定の画像処理を施すものである。画像処理装置20は、
図1に示すように、例えば、大容量メモリ記憶手段8と、画像処理手段10とを備えている。画像処理装置20は、単独の装置として構成できるが、以下では例えばX線撮影装置1が画像処理装置20を備えるものとして説明する。
【0016】
X線撮影装置1は、例えばデジタルパノラマX線撮影装置であり、
図1に示すように、X線源2と、画像検出器3と、アーム4と、旋回駆動手段5と、A/D変換手段6と、大容量フレーム画像記憶手段7と、大容量メモリ記憶手段8と、全画像表示記憶手段9と、画像処理手段10と、出力手段11とを備えている。
【0017】
X線源2は、例えば鉛からなる図示しない筐体に設けられたスリット(鉛スリット)を介してX線を照射することにより生成されるスリット状のX線ビームを所定のタイミングで被写体12に照射するものである。
【0018】
画像検出器3は、被写体12の所定点を通過したX線を受光する画素が2次元配列された画素アレイを有するX線画像検出記録媒体からなる。画像検出器3は、被写体12のX線が通過した部分を所定のフレームレートで撮像する。画像検出器3は、X線イメージセンサやX線検出器、またはそれらの組合せである。
【0019】
ここで、イメージセンサは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOSイメージセンサ、TFT(Thin Film Transistor)センサ、CdTeセンサ等である。また、X線検出器は、X線イメージインテンシファイア(Image Intensifier:I.I.)、フラットパネル検出器(Flat Panel Detector:FPD)等である。
【0020】
本実施形態では、画像検出器3は、FPDであるものとして説明する。この場合、画素の1画素サイズを、例えば100μm×100μmとして、例えば水平方向1024画素×垂直方向1024画素で配列されたものとして画像検出器3を構成することができる。
【0021】
アーム4は、X線源2と画像検出器3とを所定の間隔を空けて保持するものである。この間隔は、X線源2と画像検出器3との間に被写体12が収まるように、例えば、30cm〜1mに設定される。なお、X線源2のX線管が配置された照射部と画像検出器3の受光面とは対向して配置される。また、アーム4は、回転中心Oの周りに回転及びスライド可能に構成されている。アーム4は、画像検出器3側では、図示しない基台を介して画像検出器3を固定保持している。
【0022】
旋回駆動手段5は、X線源2および画像検出器3を被写体12の周りに回転及びスライドさせることで画像検出器3をX線入射方向に直交する方向に移動させるものである。旋回駆動手段5は、モータやアクチュエータ等から構成され、アーム4を所定の角速度で回転するように旋回させる。本実施形態では、旋回駆動手段5は、アームを回転させることで、画像検出器3を回転中心Oの周りに回転及びスライドさせる。
【0023】
この旋回駆動手段5と、X線源2と、画像検出器3とは、図示しないコントローラにより制御され、旋回駆動手段5がアーム4を回転及びスライド動作させながら、X線源2がX線の照射を繰り返し、X線の照射タイミングに同期して画像検出器3が被写体12のフレーム画像を撮像してA/D変換手段6に出力する。
【0024】
A/D変換手段6は、画像検出器3の出力信号を取得し、A/D変換し、A/D変換した画像検出器3の出力信号を、大容量フレーム画像記憶手段7に格納する。画像検出器3の出力信号は、画像検出器3に2次元配列された複数の画素の出力信号であり、フレーム画像のことである。
【0025】
大容量フレーム画像記憶手段7と、大容量メモリ記憶手段8と、全画像表示記憶手段9と、画像処理手段10とは、例えば、一般的なコンピュータ(計算機)で実現することができ、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)と、入力/出力インタフェースとを含んで構成されている。
【0026】
大容量フレーム画像記憶手段7は、一般的な画像メモリやハードディスク等から構成され、画像検出器3から所定のフレームレートで送られてくる出力信号(フレーム画像)を記憶する。大容量フレーム画像記憶手段7は、A/D変換されたフレーム画像を記憶する。
【0027】
大容量メモリ記憶手段8は、一般的な画像メモリやハードディスク等から構成される。本実施形態では、画像処理手段10は、大容量メモリ記憶手段8を用いて、周波数変換フィルタ処理を行ったり、パノラマ断層画像の構築処理を行ったりする。
【0028】
大容量メモリ記憶手段8には、画像(ここではフレーム画像)における各ピクセルの座標位置にそれぞれ合わせたピクセル毎の記録領域を有し、ピクセル毎の記録領域を横にM行(Mは2以上の整数)に分割し縦にN列(Nは2以上の整数)に分割することで画像をM×N倍に拡大した座標空間に対応する拡張されたメモリ空間が設定されている。以下では、一例として、MとNが同じ値であるものとする。この拡張されたメモリ空間は、周波数変換フィルタ処理で用いられる。
【0029】
大容量メモリ記憶手段8には、フレーム画像における各ピクセルに1対1に対応したメモリ空間が設定されている。この1対1のメモリ空間は、パノラマ断層画像の構築処理のために用いられる。なお、パノラマ断層画像の構築のために用いる記憶手段は、別体の記憶装置としてもよい。
【0030】
全画像表示記憶手段9は、一般的な画像メモリ等から構成され、画像処理手段10で生成されたパノラマ断層画像(表示対象とする画像)を記憶する。このパノラマ断層画像は、例えば、輝度値で表される。
【0031】
画像処理手段10は、大容量フレーム画像記憶手段7から、フレーム画像を読み出して大容量メモリ記憶手段8に転送し、大容量メモリ記憶手段8上で所定の画像処理を行う。つまり、画像処理手段10は、A/D変換手段6が変換して出力したフレーム画像を取得して画像処理を行う。本実施形態では、画像処理手段10は、周波数変換フィルタ処理の機能と、パノラマ断層画像を構築する処理の機能とを備えている。
【0032】
周波数変換フィルタ処理の機能として、画像処理手段10は、入力された画像(ここではフレーム画像)におけるピクセルの信号値を大容量メモリ記憶手段8に転送する。そして、画像処理手段10は、ピクセル毎に、拡張されたメモリ空間に設定された当該ピクセルの記録領域に相当するM×M個のメモリに同じ信号値を書き込む。そして、画像処理手段10は、拡張されたメモリ空間において拡大された画像に対して周波数変換フィルタ処理を施す。ここで、周波数変換フィルタ処理は、拡張されたメモリ空間において拡大された画像を空間周波数領域でみたときに、その画像に含まれる信号の周波数成分を変化させる処理である。
【0033】
具体的には、周波数変換フィルタ処理は、例えば平滑化フィルタ(smoothing)、エッジ抽出フィルタ(edge detection)、アンシャープマスク(unsharp masking)、周波数フィルタ(Frequency Filter)及びマルチ周波数処理(Multi-Objective Frequency Processing:MFP)から選択されるいずれかであることが好ましい。平滑化フィルタとしては、例えば移動平均処理(Moving Average)、ガウシアンフィルタ(Gausian Filter)、メディアンフィルタ(Median Filter)等を挙げることができる。
【0034】
移動平均処理は、注目画素の周辺の濃度値(輝度値)を用いて、濃度値を平均し、処理後画像の濃度値とする処理である。ガウシアンフィルタは、注目画素に近いほど重みが大きくなるようなガウス分布の関数を用いて、濃度値を平均し、処理後画像の濃度値とする処理である。メディアンフィルタは、注目画素の周辺の濃度値(輝度値)を小さい順に並べ中央値を、処理後画像の濃度値とする処理である。これらのフィルタは、画像の実空間領域で行う平滑化処理である。
【0035】
エッジ抽出フィルタは、例えば、微分フィルタ(Differential filter)等である。一次微分の場合、例えば、ソーベルフィルタ(Sobel filter)、プリューウィットフィルタ(Prewitt filter)、ロバーツフィルタ(Roberts filter)等を挙げることができる。二次微分の場合、例えば、ラプラシアンフィルタ(Laplacian filter)等を挙げることができる。
アンシャープマスクは、鮮鋭化フィルタの1つで、画像のぼやけた部分をマスクすることで、画像のぼやけた部分の輪郭を強調する処理である。
【0036】
周波数フィルタは、高域通過フィルタ(High-Pass Filter:HPF)等を用いて画像の鮮鋭度を調整する処理である。周波数フィルタは、画像のフーリエ変換後の周波数領域で行う処理である。
【0037】
マルチ周波数処理は、複数の空間周波数帯域の成分を強調する処理である。
【0038】
画像処理手段10は、入力画像に周波数変換フィルタ処理を施した後、入力画像に比べて100倍のサイズの画像を出力することもできるが、以下では、一例として、入力画像と同じサイズの画像を出力するものとして説明する。この場合、画像処理手段10は、周波数変換フィルタ処理を施した後、拡張されたメモリ空間において、ピクセルの記録領域毎にM×M個のメモリの平均濃度を求め、入力された画像における各ピクセルの信号値と置換することで、入力画像と同じサイズの画像を出力する。
【0039】
パノラマ断層画像を構築する処理として、画像処理手段10は、大容量フレーム画像記憶手段7から、信号値が置換されたフレーム画像を複数枚読み出す。そして、画像処理手段10は、大容量メモリ記憶手段8に設定されたメモリ空間(画素に1対1に対応したメモリ空間)において、被写体12の歯列等の所定の断層面に対応した所定のずれ幅で、複数枚のフレーム画像を重ね合わせる。これにより、被写体12の歯列等の所定の断層面に対応したパノラマ断層画像が構築される。このパノラマ断層画像を構築する処理は公知である。通常は画像検出器3で検出されてA/D変換されたフレーム画像をそのまま用いるが、本実施形態のX線撮影装置1では、周波数変換フィルタ処理後に信号値が置換されたフレーム画像を用いてパノラマ断層画像を構築する。
【0040】
なお、画像処理手段10は、CPUがROM等に格納された所定のプログラムをRAMに展開して実行することによりその機能が実現されるものである。このプログラムは、通信回線を介して提供することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで提供することも可能である。
【0041】
出力手段11は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、EL(Electronic Luminescence)等から構成される。
【0042】
次に、大容量メモリ記憶手段8において、画像(ここではフレーム画像)をM×M倍に拡大した座標空間に対応して設定される拡張されたメモリ空間について、通常の座標空間に対応して設定されるメモリ空間と対比しながら説明する。
【0043】
まず、通常の座標空間に対応して設定されるメモリ空間について
図2A〜
図2Cを参照して説明する。
図2Aは、画像検出器3の受光面の一部を拡大して模式的に示す図である。ここでは、画素サイズがd[μm]×d[μm]の画素P
1〜P
9が3行3列で配列されている領域に着目する。以下、画素サイズを単に一辺の長さ(画素幅)dで表す。
図2Bは、比較例のメモリ記憶手段(メモリ記憶手段18と表記する)において設定された例えば5×5のメモリ(番地)を模式的に示す図である。これら5×5のメモリは、画像検出器3の5×5の画素に位置及びサイズを合わせて対応している。
図2Aに示す画像検出器3の画素サイズとして、例えばd=100[μm]のものを使用したら、メモリ記憶手段18の1個のメモリもd=100[μm]の画素に対応している。
【0044】
図2Bにおいて中央部の3×3のメモリに書き込まれた数値は、画像検出器3の各画素P
1〜P
9の出力信号の信号レベルの一例を示している。この例では、画素P
5の出力信号のレベルを100とした。また、画素P
2,P
4,P
6,P
8の出力信号のレベルを80とした。さらに、画素P
1,P
3,P
7,P
9の出力信号のレベルを60とした。この場合、信号レベル100がメモリ記憶手段18の画素P
5の位置に相当するメモリに書き込まれている。同様に、画素P
5の右隣の画素P
6の信号レベル80がメモリ記憶手段18において画素P
6の位置に相当するメモリに書き込まれている。このようにメモリ記憶手段18では、通常の座標空間の各画素P
1〜P
9の位置に対応して画素毎に、画素の出力信号の信号レベルを記録する記録領域が設定されている。
【0045】
図2Cは、メモリ記憶手段18に記録される画像を周波数領域でみたときのMTF(Modulation Transfer Function)を模式的に示すグラフである。グラフの横軸は空間周波数ω[cycles/mm]である。グラフの縦軸はMTFであって、ω=0のときのMTFの値を1に正規化している。ここで、MTFは光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)の絶対値であり、画像の鮮鋭性を表す数値として用いられる。なお、OTFは線像分布関数(Line Spread Function:LSF)をフーリエ変換したものである。ここでは、撮影系の解像力を画像検出器3の画素サイズd[μm]だけに依存することとしている。この場合、MTFのカットオフ周波数は、ナイキスト周波数で表されるので、500/d[cycles/mm]となる。d=100の場合、MTFのカットオフ周波数は5[cycles/mm]となる。
【0046】
次に、大容量メモリ記憶手段8において設定される拡張されたメモリ空間について
図3A〜
図3Cを参照して説明する。
図3Aは、画像検出器3の受光面の一部を拡大して模式的に示す図であり、
図2Aと同じものである。
【0047】
図3Bは、大容量メモリ記憶手段8において設定された例えば50×50のメモリ(番地)を模式的に示す図である。これら50×50のメモリは、画像検出器3の5×5の画素に位置を合わせて対応している。つまり、画像検出器3の1つの画素が、大容量メモリ記憶手段8において設定された10×10のメモリに位置を合わせて対応している。これは、画像検出器3の1つの画素の縦横の分割数Mを10とした例である。
ここで、
図3Aに示す画像検出器3の各画素P
1〜P
9の出力信号の信号レベルが前記した比較例と同様であるものとする。すなわち、画素P
5の出力信号のレベルを100、画素P
2,P
4,P
6,P
8の出力信号のレベルを80、画素P
1,P
3,P
7,P
9の出力信号のレベルを60とする。
【0048】
この場合、例えば画素P
5の出力信号が大容量メモリ記憶手段8に転送されると、
図4に示すように、画素P
5の位置に相当する10×10のメモリに信号レベル100がそれぞれ書き込まれる。同様に、画素P
5の右隣の画素P
6の信号レベル80は、大容量メモリ記憶手段8において画素P
6の位置に相当する10×10のメモリにそれぞれ書き込まれる。このように大容量メモリ記憶手段8では、画像検出器3の各画素P
1〜P
9の位置に対応して画素毎に、画素の出力信号の信号レベルを記録するための10×10の記録領域が設定されている。
【0049】
図3Aに示す画像検出器3の画素サイズとして、例えばd=100[μm]のものを使用した場合、大容量メモリ記憶手段8の1個のメモリは、より細かなd=10[μm]の画素に対応していることになる。この場合、大容量メモリ記憶手段8には、画像検出器3で取得するフレーム画像を10×10倍に拡大した座標空間に対応する拡張されたメモリ空間が設定されている。
【0050】
図3Cは、
図2Cと同様のグラフであって、大容量メモリ記憶手段8に記録される画像を周波数領域でみたときのMTFを模式的に示すグラフである。撮影系の解像力が画像検出器3の画素サイズd[μm]だけに依存する場合、MTFの曲線は実線で表される。例えば、画像検出器3の画素サイズとしてd=100[μm]のものを実際に使用すれば、周波数領域では、MTFのカットオフ周波数は5[cycles/mm]となる。このように実際にはd=100[μm]の画素を使用しつつも、仮に画素サイズをd=10[μm]に置き換えて計算してみると、周波数領域では、MTFの曲線は破線で表され、カットオフ周波数は50[cycles/mm]となる。したがって、画像検出器3で取得する現実のフレーム画像を10×10倍に拡大した座標空間に対応するように設定された大容量メモリ記憶手段8を用いると、画像を周波数領域でみた場合、MTFのカットオフ周波数の値を実際の10倍に増加させたのと同じ効果を奏することになる。なお、
図3Cのグラフでは見易くするために、破線の曲線の傾斜を誇張している。
【0051】
次に、画像処理手段10による処理の具体例について
図5を参照して説明する。ここでは、周波数変換フィルタ処理として、移動平均処理を行う場合について説明する。仮に移動平均処理を行わなければ、
図4に例示したように、画像検出器3の各画素の出力信号の信号レベルを大容量メモリ記憶手段8の対応する座標位置に一度加算するだけである。一方、移動平均処理を行う場合、大容量メモリ記憶手段8の対応する座標位置から例えば上下左右にずらしたものも加算し、合計5回の加算を行う。
【0052】
図5は、これらの加算処理を模式的に示す図である。
図5において左上段に示す大容量メモリ記憶手段8は、
図4に示す大容量メモリ記憶手段8の一部を模式的に示すものであり、
図3Aに示す画像検出器3の画素P
5の位置に相当する10×10のメモリとその周囲のメモリを示している。
【0053】
ここで、
図3Aに示す画像検出器3の各画素P
1〜P
9の出力信号の信号レベルが前記した比較例と同様であるものとする。すなわち、画素P
5の出力信号のレベルを100、画素P
2,P
4,P
6,P
8の出力信号のレベルを80、画素P
1,P
3,P
7,P
9の出力信号のレベルを60とする。
【0054】
図5において右上段に符号51で示すメモリ空間に符号40で示す太線の矩形を重ねた図は、1回目の加算処理を模式的に示している。太線の矩形40は、
図4に示すように画素P
5の信号レベルであって10×10の同一値を表している。符号51で示すように、画像処理手段10が移動平均処理を行う場合、大容量メモリ記憶手段8に設定された拡張されたメモリ空間において、各画素P
1〜P
9に対して初期設定されている位置に相当する10×10のメモリに各画素P
1〜P
9の出力信号の信号レベルを書き込む。なお、
図5では信号レベルの数値を省略した。
【0055】
図5において左中段に符号52で示すメモリ空間に符号40で示す太線の矩形を重ねた図は、2回目の加算処理を模式的に示している。2回目には、大容量メモリ記憶手段8の対応する座標位置から、メモリ空間上で例えば左に1画素(実空間上では0.1画素)ずらしたものを加算する。この場合、
図4に示す例では、左から例えば2列目の信号レベル80が書き込まれているメモリに信号レベル100が書き込まれる。これにより、メモリ空間上において、画像検出器3の画素P
4の出力信号に、画素P
5の出力信号が影響を及ぼすことになる。このとき、
図4に示す例では、右から例えば3列目の信号レベル100が書き込まれているメモリに信号レベル80が書き込まれる。これは、メモリ空間上において、画像検出器3の画素P
5の出力信号に、画素P
6の出力信号が影響を及ぼすことになる。よって、画素P
4,P
5,P
6の濃度が平滑化される。
【0056】
図5において右中段に符号53で示すメモリ空間に符号40で示す太線の矩形を重ねた図は、3回目の加算処理を模式的に示している。3回目には、大容量メモリ記憶手段8の対応する座標位置から、メモリ空間上で例えば右に1画素(実空間上では0.1画素)ずらしたものを加算する。この場合、
図4に示す例では、右から2列目の信号レベル80が書き込まれているメモリに信号レベル100が書き込まれる。これは、メモリ空間上において、画像検出器3の画素P
6の出力信号に、画素P
5の出力信号の影響を及ぼし、また、画像検出器3の画素P
5の出力信号に、画素P
4の出力信号の影響を及ぼすことから、各画素の濃度の平滑化に寄与する。
【0057】
図5において左下段に符号54で示すメモリ空間に符号40で示す太線の矩形を重ねた図は、4回目の加算処理を模式的に示している。4回目には、大容量メモリ記憶手段8の対応する座標位置から、メモリ空間上で例えば上に1画素(実空間上では0.1画素)ずらしたものを加算する。この場合、
図4に示す例では、上から2列目の信号レベル80が書き込まれているメモリに信号レベル100が書き込まれる。これは、メモリ空間上において、画像検出器3の画素P
2の出力信号に、画素P
5の出力信号の影響を及ぼし、また、画像検出器3の画素P
5の出力信号に、画素P
8の出力信号の影響を及ぼすことから、各画素の濃度の平滑化に寄与する。
【0058】
図5において右下段に符号55で示すメモリ空間に符号40で示す太線の矩形を重ねた図は、5回目の加算処理を模式的に示している。5回目には、大容量メモリ記憶手段8の対応する座標位置から、メモリ空間上で例えば下に1画素(実空間上では0.1画素)ずらしたものを加算する。この場合、
図4に示す例では、下から2列目の信号レベル80が書き込まれているメモリに信号レベル100が書き込まれる。これは、メモリ空間上において、画像検出器3の画素P
8の出力信号に、画素P
5の出力信号の影響を及ぼし、また、画像検出器3の画素P
5の出力信号に、画素P
2の出力信号の影響を及ぼすことから、各画素の濃度の平滑化に寄与する。
【0059】
ここで、画像処理手段10が入力画像に周波数変換フィルタ処理を施した後、拡張されたメモリ空間において、ピクセルの記録領域毎にM×M個のメモリの平均濃度を求める処理について説明する。仮に位置をずらさずに上記5回の加算処理を行うと、メモリ空間上で画素P
5の位置に相当する10×10のメモリに加算された信号レベルの総和は、100×100×5=50000なので、1回の加算処理当たり且つメモリ1個当たりの信号レベルの平均値(平均濃度)は、100である。一方、メモリ空間上で上下左右にも1画素ずらす移動平均処理を行うと、信号レベルの平均値(平均濃度)は計算の結果98.4となる。画像処理手段10は、この信号レベルの平均値98.4を、入力されたフレーム画像における画素P
5の位置の信号レベル100と置換する。同様にして、画像処理手段10は、画素P
5以外の各画素についても信号レベルの平均濃度を求め、入力されたフレーム画像における各画素P
1〜P
9の信号レベルと置換する。
【0060】
上記移動平均処理において、5回の加算を行う順序は入れ替えても構わない。また、メモリ空間上で上下左右にずらす画素数は1画素に限定されるものではない。また、上記移動平均処理では、M×M個のメモリの値そのものを用いて5回の加算を行った。つまり、加算処理において、
図4にて符号40で示す太線の矩形(つまり方形波になる関数)等を用いたことになる。これを、正弦波になるような関数をかけることで、
図4にて符号40で示す太線の矩形のエリアの中心部の値が高くなるようにしてから、上下左右に加算するようにしてもよい。なお、入力画像に周波数変換フィルタ処理を施した後、入力画像における各画素の信号レベルと置換することなく、入力画像に比べて100倍のサイズの画像を出力してもよい。
【0061】
本実施形態のX線撮影装置1によれば、大容量メモリ記憶手段8に設定されたメモリ上の処理によって、MTFの利得を変化させることができ、従来ならば大きく解像力が低下するところを、低コストで粒状性に優れ、より視認しやすい解像度を持った画像が得られる。このX線撮影装置1によれば、画像処理手段10が周波数変換フィルタ処理として、移動平均処理を行うことで、フレーム画像の粒状性を改善することができる。よって、X線撮影装置1の画像処理手段10が、粒状性が改善された複数のフレーム画像を所定のずれ幅で重ね合わせることでパノラマ断層画像を構築したときに、このパノラマ断層画像も粒状性が改善される。
さらに、画像処理手段10が、移動平均処理以外の周波数変換フィルタ処理をフレーム画像に施しても、フレーム画像の粒状性を改善し、その画質を向上させることができる。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るX線撮影装置1において
図1に示す構成と同じものには同じ符号を付して説明を適宜省略し、
図1を参照して説明する。第2実施形態に係るX線撮影装置1は、画像処理手段10が、さらに、超解像技術であるDetector Moving and Frame Additional Technique (以下、DEMOT法という)による画像処理も行うこととしたものである。DEMOT法による画像処理については特許文献1及び特許文献3に記載されているが、以下にDEMOT法の画像再構築アルゴリズムについて図面を参照しながら説明する。
【0063】
一例としてエッジ像の撮影について
図6A及び
図6Bを参照して説明する。ここでは、画像検出器3として、記録媒体であるFlat Panel Detector(FPD)を使用し、被写体12を金属プレート(鉛エッジ)とするエッジ法による撮影を行うこととする。
【0064】
図6Aに、FPD63と鉛エッジ64の配置を示す。FPD63は、微小な直線移動が可能な図示しないステージに載置されている。
図6Aの符号65はFPD63の移動方向を示す。FPD63の上に鉛エッジ64を近接させて置く。
図6Aに示す一点鎖線における断面の画素列の一部を
図6Bに示す。FPD63が微小移動する前の初期状態及びスタート時には、鉛エッジ64の端縁部は、FPD63の画素間の境界線と一致していることとする。FPD63の画素のうち鉛エッジ64に隠れた画素をP
1とし、X線66に照射されている画素をP
2とする。
【0065】
画素P
1,P
2,…は、多数の画素を有するFPD63の
図6Aに示す一点鎖線上に1次元配列されている。以下では、この1次元のラインに着目してFPD63を説明する。画素幅よりも小さな距離を想定する。具体的には画素幅を複数に分割した微小距離を想定し、この微小距離だけFPD63を移動しては撮影を行う、という動作を分割数と同じ数だけ繰り返し、最終的にFPD63を画素サイズだけ移動させるものとする。ここで、例えば画素サイズをd、画素の分割数を10とすると、FPD63をd/10だけ微小移動しては撮影を行う、という動作を10回繰り返すことになる。
図6Bに示すように鉛エッジ64はFPD63の表面から僅かに離間して配置され、図示しない保持具で固定されている。よって、FPD63が移動しても鉛エッジ64は初期の配置のまま動かない。
【0066】
X線66がFPD63に垂直に照射されて、鉛エッジ像を撮影すると、画素P
2から入射X線量に対応した出力信号が得られる。このFPD63の2次元画像を大容量メモリ記憶手段8に転送する。大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間には、予めFPD63の画素とサイズ及び位置を合わせ、FPD63の画素の分割数に対応して、FPD63の1次元のラインの1画素に対してその10倍の画素数が設定されている。したがって、大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間には、2次元のFPD63の総画素数の100倍の画素数が設定されている。FPD63の1次元のライン上の1画素の出力信号は、その画素位置に相当する大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上の10画素にそれぞれ同じように転送される。
【0067】
ここで、画素の出力信号のレベルについて説明する。
図6Bに示すようにFPD63の微小移動のスタート時の撮影では、画素P
2では画素全体にX線66が照射されている。このときの画素P
2の出力信号のレベルを画素の分割数に対応して便宜的に10とする。一方、画素P
1では鉛エッジ64に遮られてX線66が照射されていないので、このときの画素P
1の出力信号のレベルを0とする。
【0068】
FPD63の画素P
2から転送される出力信号(レベル10)は、大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上のP
2画素の位置に相当する10画素にそれぞれ書き込まれる。
FPD63の画素P
1から転送される出力信号(レベル0)は、大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上のP
1画素の位置に相当する10画素にそれぞれ書き込まれる。
【0069】
次に
図7において符号65で示すようにFPD63を画素サイズの1/10だけ
図7において左に微小移動させる。すると、この1回目の移動によって、画素P
2は、画素面積の1/10が鉛エッジ64で遮蔽されることになる。よって、P
2画素は、画素全体の90%の面積に、X線66が照射されることになる。したがって、このときの画素P
2の出力信号のレベルは9となる。その出力信号(レベル9)を大容量メモリ記憶手段8に転送し、書き込んだものが
図7の中段に示す数値である。この出力信号(レベル9)は、大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上においてP
2画素が画素サイズの1/10だけ微小移動した後の位置に相当する10画素に転送するものとする。
【0070】
図7において上段に示すFPD63の画素P
2の位置は、微小移動のスタート時の位置である。
図7において中段に示す大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上の画素の位置は、1回目の移動時の位置を示している。大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上において、レベル9の出力信号が書き込まれた10画素のうち最左端の画素は、微小移動のスタート時に画素P
1から転送された出力信号(レベル0)が書き込まれていた画素である。すなわち1回目の移動に伴う書き込み処理では、スタート時の大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上の画素から1画素分だけ左にずれた画素を含む10画素にレベル9が書き込まれることになる。したがって、1回目の移動において、例えば画素P
1から転送される出力信号(レベル0)は、スタート時の大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上の画素から1画素分だけ左にずれた画素を含む10画素に書き込まれることになる。
【0071】
FPD63の1回目の移動と出力信号の書き込みとが終わった後、さらにFPD63を画素サイズの1/10だけ
図7において左に微小移動させてエッジ像を撮影する。2回目の移動により、最初の位置からの移動量は、画素サイズの2/10となる。すると、この2回目の移動によって、画素P
2は、画素面積の2/10が鉛エッジ64で遮蔽されることになる。よって、P
2画素は、画素全体の80%の面積に、X線66が照射されることになる。したがって、このときの画素P
2の出力信号のレベルは8となる。その出力信号(レベル8)を大容量メモリ記憶手段8に転送し、書き込んだものが
図7の下段に示す数値である。
【0072】
このようにFPD63の移動と撮影を行いながら、その都度、各画素の出力信号を大容量メモリ記憶手段8に転送する処理を行う。このとき、大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上の画素位置と鉛エッジ64は、初期の設定位置から動かない。このようなFPD63の微小移動に合わせた各画素の出力信号を、大容量メモリ記憶手段8に転送した信号列として一覧にしたものが
図8である。
【0073】
ここでは、画素サイズの1/10ずつの移動であるので、10回の移動によって一巡し、スタート時に戻ることになる。つまり、一巡すると、鉛エッジ64の端縁部は、FPD63の次の画素間の境界線と一致する。スタート時に戻るまでの移動時に大容量メモリ記憶手段8のメモリ空間上の各画素に書き込まれる出力信号は逐次加算される。この処理は
図8の表の信号レベルを縦列方向に加算する処理である。
【0074】
最終的な加算結果を、
図8では、大容量メモリ記憶手段8の下に、「0,0,0,1,3,6,…,100」のように記載した。この数値列は、鉛エッジ64を撮影したものであり、距離のディメンジョンを持っている。この数値列で表される曲線は、Edge Spread Function(ESF)と呼ばれる。ESFの距離微分から算出したLine Spread Function(LSF)を
図8の最下段に、「0,0,1,2,3,…,0」のように記載した。理論的に求めたESFのグラフを
図9Aに示す。理論的に求めたLSFのグラフを
図9Bに示す。LSFの形状は全体的には三角波の形状であるが、2つの対称な鋸歯状波を合わせた形状となっている。
【0075】
図9Bから、LSFの形状が鋸歯状波である場合に求めたMTFを
図10に実線で示す。なお、比較としてLSFの形状が矩形波である場合に求めたMTFを
図10に破線で示す。LSFの形状が矩形波である場合、MTFのカットオフ周波数は、画素サイズをdとすると1/(2d)、すなわちナイキスト周波数で表される。一方、DEMOT法によれば、MTFのカットオフ周波数は、画素サイズをdとすると1/dとなり、理論的にはナイキスト周波数の2倍で表され、解像力が向上する。
【0076】
前記したDEMOT法の画像再構築アルゴリズムにおいては、説明を単純化するために
図6Aに示す一点鎖線に着目してFPD63を説明した。実際にはFPD63には画素が2次元配列されている。DEMOT法において、画像の横方向(一方の軸方向)および縦方向(他方の軸方向)の2方向に対して解像力を向上させる技術については特許文献3に開示されている。よって、第2実施形態に係るX線撮影装置1は、画像の2方向に対して解像力を向上させるために、旋回駆動手段5で画像検出器3を移動させる方向に対して、画像検出器3の画素アレイにおける任意の一列の画素群の配列方向が傾斜するように画素を配設することとした。
【0077】
この傾斜角は任意であるが、得られる画像において縦方向の解像力と横方向の解像力とを均等に向上させるためには、傾斜角が45度であることが好ましい。つまり、旋回駆動手段5で画像検出器3を移動させる方向の角度を基準の方位(0度)とすると、画像検出器3の画素アレイにおける縦の列に並んだ画素群が例えば45度の方向に配列し、横の列に並んだ画素群が例えば135度の方向に配列することが好ましい。以下、この傾斜角が45度であるものとして説明する。
【0078】
具体的には、画像検出器3を移動させる方向の角度を基準の方位(0度)とすると、画像検出器3の画素アレイにおける縦の列に並んだ画素群を例えば45度の方位に配列し、横の列に並んだ画素群を例えば−45度の方位(すなわち135度の方位)に配列する。この場合、旋回駆動手段5が画像検出器3を基準の方位(0度)に対して画素サイズの1/Mの微小距離の1.41倍ずつ移動させると、相対的に、画像検出器3の縦の列に並んだ画素群を45度の方位に画素サイズの1/Mずつ微小移動させることができる。同時に、相対的に、画像検出器3の横の列に並んだ画素群を−45度の方位に画素サイズの1/Mずつ微小移動させることができる。
【0079】
本実施形態では、画像処理手段10は、画像検出器3を移動方向の基準の方位からみて45度の方位に画素サイズの1/Mずつ微小移動させたときの画像検出器3の画素の出力信号を、画像検出器3の移動中の位置に応じて、拡張したメモリ空間において当該画素の位置に相当するM×M個のメモリに案分して順次書き込む。これは
図8に模式的に示す画素の微小移動中のDEMOT法による画像処理の一部である。
【0080】
次いで、画像処理手段10は、大容量メモリ記憶手段8のピクセル毎にM×M個のメモリに案分された画素の信号レベルに対応した拡大された画像に対して周波数変換フィルタ処理を順次施す。これは第1実施形態に係るX線撮影装置1において説明した画像処理の一部である。具体的には、画像処理手段10は、画像検出器3を画素サイズの1/Mだけ微小移動させ、1回目の移動と出力信号の書き込みとが終わった後、大容量メモリ記憶手段8のピクセル毎のM×M個のメモリで拡大された画像に対して、1回目の周波数変換フィルタ処理を施す。そして、画像処理手段10は、画像検出器3を画素サイズの2/Mだけ微小移動させ、2回目の移動と出力信号の書き込みとが終わった後、大容量メモリ記憶手段8のピクセル毎のM×M個のメモリで拡大された画像に対して、2回目の周波数変換フィルタ処理を施す。以下同様に、画像検出器3を画素サイズだけ微小移動させ、M回目の移動と出力信号の書き込みとが終わった後、大容量メモリ記憶手段8のピクセル毎のM×M個のメモリで拡大された画像に対して、M回目の周波数変換フィルタ処理を施す。そして、画像処理手段10は、画像検出器3を画素サイズだけ微小移動させるまでの移動時に大容量メモリ記憶手段8のピクセル毎のM×M個のメモリに書き込まれる周波数変換フィルタ処理後の信号値を逐次加算する。この処理は
図8の表の信号レベルを縦列方向に加算する処理と同様である。
【0081】
以上説明したように、第2実施形態に係るX線撮影装置1によれば、第1実施形態と同様に、大容量メモリ記憶手段8に設定されたメモリ上の処理によって、MTFの利得を変化させることができ、従来ならば大きく解像力が低下するところを、低コストで粒状性に優れ、より視認しやすい解像度を持った画像が得られる。さらに、第2実施形態に係るX線撮影装置1によれば、DEMOT法を用いた画像処理によって、空間周波数領域におけるMTFのカットオフ周波数をナイキスト周波数の2倍に引き上げることができ、低コストで超解像しつつも粒状性に優れ、より視認しやすい解像度を持った画像が得られる。
【0082】
[実施例]
本発明のX線撮影装置1の性能を確かめるために以下の実験1〜実験3を行った。
各実験では第2実施形態に係るX線撮影装置1による効果を確かめた。適宜
図1を参照しながら説明する。各実験では、共通の被写体12として、周知のジーメンススターチャート(以下、単にスターチャートと呼ぶ)を用いた。スターチャートは、鉛製で円盤状に形成され、中心から周辺に向かって放射状に広がる複数の扇形が白黒の縞模様のパターンとなっている。これにより、放射状の白黒の縞模様のパターンがスターチャートの中央付近まで見えるほど、撮影装置の解像力が高い、ということがわかるものである。
【0083】
<実験1>
実験1は、事前の予備実験であり、スターチャートを撮影して、DEMOT法による解像力の向上を確かめるための実験である。このため、取得した画像に対して周波数変換フィルタ処理を施していない。単に、DEMOT法を用いた画像と用いていない画像とを対比する実験である。
【0084】
図11の左側に示す画像は、画像処理にDEMOT法を用いない場合に出力された画像である。
図11の右側に示す画像は、画像処理にDEMOT法を用いた場合に出力された画像である。各画像においてスターチャートの表面は背景よりも暗い。なお、各画像は、スターチャートの中心付近の拡大図である。
図11において右側に示す画像は左側に示す画像よりも、スターチャートの白黒の縞模様のパターンが鮮明である。よって、DEMOT法を用いた場合、解像力が向上することを確かめた。
【0085】
<実験2>
実験2は、スターチャートを撮影して、第2実施形態に係るX線撮影装置1が解像力を低下させずに画像のノイズを低減することを確かめるための実験である。ここでは、取得した画像に対して周波数変換フィルタ処理を施さずにDEMOT法を用いる場合を比較例とした。また、周波数変換フィルタ処理として移動平均処理を施し且つDEMOT法を用いる場合を実施例とした。
【0086】
<実験2−1>視覚評価
図12の左側に示す画像は比較例の画像である。
図12の右側に示す画像は実施例の画像である。
図12では、撮影画像を白黒反転したので、各画像においてスターチャートの表面は背景よりも明るくなっている。なお、各画像は、スターチャートの中心付近の拡大図である。視覚評価では、
図12の左右の画像では解像力の差がないことが読み取れる。また、
図12において右側に示す画像は左側に示す画像よりも、概ねノイズの低減効果があることが分かる。
【0087】
<実験2−2>空間分解能測定
図12の左右に示す画像について、エッジ法により、空間分解能をそれぞれ測定した。その測定結果を、
図13A,
図13Bに示す。
図13Aは、比較例の場合のMTFを示すグラフであり、
図13Bは、実施例の場合のMTFを示すグラフである。各グラフの横軸は空間周波数ω[cycles/mm]である。各グラフの縦軸はMTFであって、ω=0のときのMTFの値を1に正規化している。撮影に用いた画像検出器3の画素サイズはd=100[μm]である。
【0088】
比較例の場合、画像に移動平均処理を施していないが、DEMOT法を用いているので、
図13Aに示すように、MTFのカットオフ周波数は、理論的には10[cycles/mm]になる。ただし、エラー成分等も考慮すると、破線で示すように、カットオフ周波数は、8.0[cycles/mm]程度になると考えられる。
【0089】
実施例の場合、画像に移動平均処理を施しているが、DEMOT法を用いているので、
図13Bに示すように、MTFのカットオフ周波数は、理論的には10[cycles/mm]になる。ただし、エラー成分等も考慮すると、破線で示すように、カットオフ周波数は、8.0[cycles/mm]程度になると考えられる。
図13Bと
図13Aとを比較しても解像力の低下はないと考えられる。
【0090】
<実験3>
実験3は、スターチャートを撮影して、第2実施形態に係るX線撮影装置1によりノイズがどの程度減ったかを確かめるための実験である。ここでは、取得した画像に対して周波数変換フィルタ処理を施さずにDEMOT法を用いる場合を比較例とした。また、周波数変換フィルタ処理として移動平均処理を施し且つDEMOT法を用いる場合を実施例とした。
【0091】
図14の左側に示す画像は比較例の画像である。
図14の右側に示す画像は実施例の画像である。各画像においてスターチャートの表面は背景よりも暗い。なお、各画像は、スターチャートの中心付近の拡大図である。実験3では、
図14の左右の画像において矩形の枠内の領域を選択し、この選択した領域にあるピクセルの濃度をそれぞれ測定し、濃度の標準偏差値を算出した。測定結果を表1に示す。
【0093】
表1において、No.1は比較例の結果であり、No.2は実施例の結果である。
Areaは、画像の選択した領域にあるピクセルの総数である。
Meanは、画像の選択した領域にあるピクセルの濃度の平均値である。
StdDevは、画像の選択した領域にあるピクセルの濃度の標準偏差値である。
Minは、画像の選択した領域にあるピクセルの濃度の最小値である。
Maxは、画像の選択した領域にあるピクセルの濃度の最大値である。
【0094】
濃度の標準偏差値が小さいほど、ノイズが少ないことを表している。表1によれば、明らかに実施例の画像は、比較例の画像よりもノイズが低減されている。実施例の濃度の標準偏差値は、比較例の濃度の標準偏差値の約88%であった。よって、本発明に係るX線撮影装置によれば、解像力の低下を抑えて画像の粒状性を改善し、画質を向上させることができる。
【0095】
[変形例]
本発明は、前記した各実施形態に限定されるものではない。例えば、大容量メモリ記憶手段8において設定されるメモリ空間において画像に対して施す周波数変換フィルタ処理が移動平均処理であるものとして説明したが、一般的なフィルタ関数を用いてもよい。すなわち、従来、原画像そのもののピクセル座標空間上で行うフィルタ処理に用いられている一般的なフィルタ関数を用いることができる。また、上記移動平均処理の場合、画像の実空間領域で演算処理を行ったが、例えば周波数フィルタの場合、画像のフーリエ変換後の周波数領域で演算処理を行えばよい。
【0096】
ここで、周波数領域でのフィルタ処理の概念について
図15A〜
図15Cを参照して説明する。
図15Aのグラフの横軸は空間周波数ω[cycles/mm]であり、縦軸はMTFであって、ω=0のときのMTFの値を1に正規化している。画素サイズがd=100[μm]である画素からなる画像検出器3を用いて被写体を撮影する場合、画像検出器3のナイキスト周波数は5[cycles/mm]である。通常、画素サイズがd=100[μm]である画像検出器3の場合、
図15Aにおいて破線で示す特性で画像を検出する。ここで、解像力は、画像検出器3のナイキスト周波数に依存する。
【0097】
画素サイズがd=100[μm]であったとしても、画像処理にDEMOT法を用いた場合、実線で示すように理論的にはMTFのカットオフ周波数は10[cycles/mm]になる。この場合、解像力は、画像検出器3のナイキスト周波数の2倍の値に依存する。ただし、MTFの特性は、
図15Aにおいて実線で示すように、空間周波数ωが5〜10[cycles/mm]の範囲で下に凸である曲線となっている。
【0098】
通常、画素サイズがd=100[μm]である場合、
図15Aにおいて破線で示すように、空間周波数ωが5[cycles/mm]より大きな範囲ではMTFの値は何もない。そのため、解像力に対応したカットオフ周波数(5[cycles/mm])の箇所でMTFの利得を上げようとすると画像の粒状性が悪くなり、診断にはとても利用できない画像となってしまう。ここで、MTFの利得を上げるとは、原画像に対する画像処理によって、所定の空間周波数ωについてのMTFの値を原画像のものよりも大きくさせることを指す。
【0099】
一方、X線撮影装置1は、例えば
図3Bに示すように、画像検出器3の1つの画素が、大容量メモリ記憶手段8において設定された10×10のメモリに位置を合わせて対応している。そして、
図3Cに破線で示すように、画像を周波数領域でみた場合、MTFのカットオフ周波数の値を実際の10倍に増加させたのと同じ効果を奏することになる。よって、100[μm]の画素による撮影では、実際には空間周波数ωが5[cycles/mm]より大きな範囲ではMTFの値は何もないが、拡張されたメモリ空間上では、空間周波数ωが50[cycles/mm]となるまでのMTFの情報を考慮することが可能である。
【0100】
そして、この50[cycles/mm]の帯域を利用した帯域通過フィルタ等の特殊なフィルタを想定することができる。このフィルタはラプラシアンフィルタでもよい。
図15Bは、空間周波数ωが5〜10[cycles/mm]の範囲を強調する帯域通過フィルタの一例を示す図である。
図15Bのグラフの横軸は空間周波数ω[cycles/mm]であり、縦軸は相対強度であって、ω=0のときの強度を1に正規化している。
【0101】
図15Aにおいて破線の曲線で示す通常のMTFに、
図15Bに示す帯域通過フィルタをコンボリューション(重畳積分)することで、MTFを改善し、粒状性に優れ、より視認し易い画像を得ることができる。具体的には、
図15Bに示す帯域通過フィルタを用いる場合、画像処理手段10は次の手順で動作する。まず、画像処理手段10は、入力された画像を、大容量メモリ記憶手段8に設定されたメモリ空間(座標空間)においてM×M倍に拡大してコピーし、次にこの拡大画像をフーリエ変換する。次に、画像処理手段10は、周波数空間において、このフーリエ変換した画像に帯域通過フィルタを掛ける。そして、画像処理手段10は、帯域通過フィルタを掛けることで生成された画像をフーリエ逆変換することで、大容量メモリ記憶手段8に設定されたメモリ空間(座標空間)において、拡大画像の濃度分布を求める。
【0102】
さらに、上記周波数領域でのフィルタ処理とDEMOT法とを組み合わせることもできる。
図15Aにおいて実線の曲線で示すDEMOT法を用いた場合のMTFと、
図15Bに示す帯域通過フィルタとをコンボリューション(重畳積分)した結果を
図15Cに示す。
図15Cに示す改善されたMTFのカットオフ周波数は、10[cycles/mm]であり、
図15Aに実線で示すDEMOT法を用いた場合のMTFと同様である。よって、解像力は変わっていない。ただし、
図15Cに示す改善されたMTFの曲線と縦軸と横軸とで囲まれた領域に着目すると、コンボリューション後の画像では原画像と比べて、この領域の特に空間周波数ωが5〜10[cycles/mm]の範囲でMTFの大きい側に向かって拡張するように領域面積が大きくなっている。つまり、解像力に対応したカットオフ周波数よりも低い低周波の領域において、MTFの利得を上げることができる。そのため、低コストで超解像しつつも粒状性に優れ、より視認し易い画像を得ることができる。これにより、解像力を変えることなく、診断に利用できる画像が得られる。
【0103】
X線撮影装置1は、DEMOT法を用いない場合も用いる場合もどちらであっても、大容量メモリ記憶手段8に、画像をM×M倍に拡大した座標空間に対応する拡張されたメモリ空間を備えており、このような大きいメモリにおいて、非常に大きい高周波成分の帯域をもっているがゆえに、本来のMTFを、改善されたMTFに作り変えることができる。
【0104】
前記第2実施形態では、大容量メモリ記憶手段8に設定されたメモリ空間において行う画像処理に、解像力を向上させるDEMOT法の画像処理を併用することとしたが、DEMOT法の画像処理は本発明に必須ではない。また、第1及び第2実施形態では、大容量メモリ記憶手段8において設定されるメモリ空間において、フレーム画像に周波数変換フィルタ処理を施したが、代わりにパノラマ断層画像(表示対象とする画像)に周波数変換フィルタ処理を施してもよいし、フレーム画像とパノラマ断層画像の両方に周波数変換フィルタ処理を施してもよい。さらに、本発明は、パノラマ断層画像に限らず、X線CT画像の粒状性を改善させるために用いることができる。例えばX線CT画像の場合、大容量メモリ記憶手段8において設定されるメモリ空間において、最終的に表示対象とするCT画像に対して周波数変換フィルタ処理を施せばよい。
【0105】
また、大容量メモリ記憶手段8に設定されたピクセル毎の記録領域の横の分割数Mと縦の分割数Nとを等しいものとして説明したが、MとNの値が異なっていてもよい。例えば分割数Mは10に限定されず、任意である。
DEMOT法を用いる場合、画像検出器3の1つの画素の横の分割数と縦の分割数とは異なっていてもよいが、等しくすると、得られる画像において縦の解像力と横の解像力とが同様に向上するので好ましい。また、画素の分割数は10に限定されず、任意である。装置の処理負荷や処理時間等を考慮すると、例えば、3〜20であることが好ましく、特に5〜10であることがさらに好ましい。
【0106】
また、各実施形態では、歯科用のX線撮影装置1で説明したが、本発明は、歯科用のX線撮影に限定されるものではなく、一般的な医療用画像の粒状性を改善させるために用いることができる。例えば、内科用として、胸部X線撮影装置に適用してもよい。また、本発明において、被写体は人体に限定されるものではなく、例えば、鉱物等の自然に存在するものや各種産業の製品でもよい。この場合には、各種分析や被破壊検査等を行うことができる。
【0107】
また、各実施形態では、X線撮影装置1が画像処理装置20を備えるものとして説明したが、本発明は、X線撮影手段を分離した単独の画像処理装置20であっても同様の効果を奏する。本発明は、一般的なカメラで撮影した画像にも適用できる。本発明は、放射線を用いて撮影した画像だけでなく、可視光や赤外線等を用いて撮影した画像にも適用できる。